特許第5956956号(P5956956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956956
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】多重系制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   H02J13/00 301A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-123028(P2013-123028)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-241679(P2014-241679A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】張 飛
(72)【発明者】
【氏名】狼 智久
(72)【発明者】
【氏名】中山 直人
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−77115(JP,A)
【文献】 特開2012−50210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
G06F 1/26 − 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御装置及び第2の制御装置を備える多重系制御システムであって、
制御に用いる電圧を検出する電圧検出手段と、
保護のために回路が切断される第1の保護手段と、
保護のために回路が切断される第2の保護手段とを備え、
前記第1の制御装置は、
前記電圧検出手段により検出された電圧を、前記第1の保護手段を介して、受信する第1の電圧受信手段と、
前記第1の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、多重化された複数の制御のうち第1の制御を行う第1の制御手段と、
前記第1の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、電圧の喪失を検出する第1の電圧喪失検出手段と、
前記第1の電圧喪失検出手段により電圧の喪失を検出した場合、前記第1の制御を停止させる第1の制御停止手段とを備え、
前記第2の制御装置は、
前記電圧検出手段により検出された電圧を、前記第2の保護手段を介して、受信する第2の電圧受信手段と、
前記第2の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、多重化された複数の制御のうち第2の制御を行う第2の制御手段と、
前記第2の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、電圧の喪失を検出する第2の電圧喪失検出手段と、
前記第2の電圧喪失検出手段により電圧の喪失を検出した場合、前記第2の制御を停止させる第2の制御停止手段とを備え、
前記第1の電圧喪失検出手段及び前記第2の電圧喪失検出手段により共に電圧の喪失が検出された場合、前記多重系制御システムを停止するシステム停止手段と
を備えることを特徴とする多重系制御システム。
【請求項2】
前記第1の制御装置は、
前記第2の制御装置の前記第2の電圧喪失検出手段により電圧の喪失が検出された場合、前記第2の制御装置から電圧の喪失が検出されたことを示す第2の電圧喪失信号を受信する第1の電圧喪失信号受信手段と、
前記第1の電圧喪失検出手段により電圧の喪失が検出され、かつ前記第1の電圧喪失信号受信手段により前記第2の電圧喪失信号を受信した場合、両系の電圧が喪失されたことを示す第1の両系電圧喪失信号を出力する第1の両系電圧喪失信号出力手段とを備え、
前記第2の制御装置は、
前記第1の制御装置の前記第1の電圧喪失検出手段により電圧の喪失が検出された場合、前記第1の制御装置から電圧の喪失が検出されたことを示す第1の電圧喪失信号を受信する第2の電圧喪失信号受信手段と、
前記第2の電圧喪失検出手段により電圧の喪失が検出され、かつ前記第2の電圧喪失信号受信手段により前記第1の電圧喪失信号を受信した場合、両系の電圧が喪失されたことを示す第2の両系電圧喪失信号を出力する第2の両系電圧喪失信号出力手段とを備え、
前記システム停止手段は、前記第1の両系電圧喪失信号出力手段から出力された前記第1の両系電圧喪失信号又は前記第2の両系電圧喪失信号出力手段から出力された前記第2の両系電圧喪失信号を受信した場合、前記多重系制御システムを停止すること
を特徴とする請求項1に記載の多重系制御システム。
【請求項3】
前記第1の制御装置は、前記第1の電圧喪失検出手段により電圧の喪失が検出された場合、電圧の喪失が検出されたことを示す第1の電圧喪失信号を出力する第1の電圧喪失信号出力手段を備え、
前記第2の制御装置は、前記第2の電圧喪失検出手段により電圧の喪失が検出された場合、電圧の喪失が検出されたことを示す第2の電圧喪失信号を出力する第2の電圧喪失信号出力手段を備え、
前記システム停止手段は、前記第1の電圧喪失信号出力手段から出力された前記第1の電圧喪失信号を受信し、かつ前記第2の電圧喪失信号出力手段から出力された前記第2の電圧喪失信号を受信した場合、前記多重系制御システムを停止すること
を特徴とする請求項1に記載の多重系制御システム。
【請求項4】
前記システム停止手段は、遮断器をトリップさせる信号を出力して、前記多重系制御システムを停止すること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多重系制御システム。
【請求項5】
前記システム停止手段は、継電器に遮断器をトリップさせる信号を出力して、前記多重系制御システムを停止すること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多重系制御システム。
【請求項6】
第1の制御装置及び第2の制御装置を備える多重系制御システムの制御方法であって、
制御に用いる電圧を検出し、
前記第1の制御装置が、検出された電圧を、保護のために回路が切断される第1の保護手段を介して受信し、
前記第1の制御装置が、受信した電圧に基づいて、多重化された複数の制御のうち第1の制御を行い、
前記第1の制御装置が、受信した電圧に基づいて、電圧の喪失を検出し、
前記第1の制御装置が、電圧の喪失を検出した場合、前記第1の制御を停止させることを含み、
前記第2の制御装置が、検出された電圧を、保護のために回路が切断される第2の保護手段を介して受信し、
前記第2の制御装置が、受信した電圧に基づいて、多重化された複数の制御のうち第2の制御を行い、
前記第2の制御装置が、受信した電圧に基づいて、電圧の喪失を検出し、
前記第2の制御装置が、電圧の喪失を検出した場合、前記第2の制御を停止させることを含み、
前記第1の制御装置及び前記第2の制御装置が共に電圧の喪失を検出した場合、前記多重系制御システムを停止すること
を含むことを特徴とする多重系制御システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重系制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、重要なシステムでは、制御盤などを多重化(例えば、二重化)して、システムの信頼性の向上を図ることが知られている。例えば、システム監視制御装置が二重化された監視制御システムが開示されている(特許文献1参照)。一方、制御システムとしては、無効電力補償装置(SVC, static var compensator)のように、電圧を検出して制御を行うシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−113840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多重化された制御装置が共に同じ電圧を検出する場合、次のような課題がある。例えば、電圧検出器よりも制御装置側にヒューズが設けられているシステムで、ヒューズが断線した場合、多重化された制御装置の全てが電圧喪失を検出して、システムを停止させるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、運転継続性を向上した多重系制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の観点に従った多重系制御システムは、第1の制御装置及び第2の制御装置を備える多重系制御システムであって、制御に用いる電圧を検出する電圧検出手段と、保護のために回路が切断される第1の保護手段と、保護のために回路が切断される第2の保護手段とを備え、前記第1の制御装置は、前記電圧検出手段により検出された電圧を、前記第1の保護手段を介して、受信する第1の電圧受信手段と、前記第1の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、多重化された複数の制御のうち第1の制御を行う第1の制御手段と、前記第1の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、電圧の喪失を検出する第1の電圧喪失検出手段と、前記第1の電圧喪失検出手段により電圧の喪失を検出した場合、前記第1の制御を停止させる第1の制御停止手段とを備え、前記第2の制御装置は、前記電圧検出手段により検出された電圧を、前記第2の保護手段を介して、受信する第2の電圧受信手段と、前記第2の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、多重化された複数の制御のうち第2の制御を行う第2の制御手段と、前記第2の電圧受信手段により受信された電圧に基づいて、電圧の喪失を検出する第2の電圧喪失検出手段と、前記第2の電圧喪失検出手段により電圧の喪失を検出した場合、前記第2の制御を停止させる第2の制御停止手段とを備え、前記第1の電圧喪失検出手段及び前記第2の電圧喪失検出手段により共に電圧の喪失が検出された場合、前記多重系制御システムを停止するシステム停止手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転継続性を向上した多重系制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る多重系制御システム1の構成を示す構成図。
図2】本発明の第2の実施形態に係る多重系制御システム1Aの構成を示す構成図。
図3】本発明の第3の実施形態に係る多重系制御システム1Bの構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る多重系制御システム1の構成を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0011】
多重系制御システム1は、A系とB系からなる二重系のシステムである。多重系制御システム1は、例えば、無効電力補償装置(SVC)である。なお、多重系制御システム1は、無効電力補償に限らず、どのような制御を行うシステムでもよい。また、ここでは、主に電圧喪失の検出に関連する部分の制御について説明し、他の部分の制御(例えば、無効電力補償制御)については図示及び説明を省略する。
【0012】
多重系制御システム1は、二重化された2つの制御盤2a,2b、電圧喪失検出回路3、電圧検出器4、2つのヒューズ5a,5b、及び外部遮断器6を備える。
【0013】
電圧検出器4は、多重系制御システム1の制御対象の電力系統の交流電圧を検出する検出器である。電圧検出器4により検出された電圧は、多重系制御システム1の制御に用いられる。例えば、電圧検出器4は、計器用変圧器(PT, potential transformer)である。電圧検出器4は、A系ヒューズ5aを介して、A系制御盤2aに検出した電圧を出力し、B系ヒューズ5bを介して、B系制御盤2bに検出した電圧を出力する。ヒューズ5a,5bは、過電流が流れると溶断(断線)して制御盤2a,2bを過電流から保護する。なお、保護のために回路(電線)が切断されるようなものであれば、ヒューズ5a,5bに限らず、NFB(no fuse breaker)などの他の機器でもよい。
【0014】
2つの制御盤2a,2bは、それぞれ電圧検出器4により検出された電圧に基づいて、制御を行うための演算処理をする盤である。2つの制御盤2a,2bは、互いに通信可能な伝送路により接続されている。
【0015】
A系制御盤2aは、電圧検出回路21a、電圧喪失検出部22a、運転停止部23a、及びAND回路24aを備える。B系制御盤2bは、電圧検出回路21b、電圧喪失検出部22b、運転停止部23b、及びAND回路24bを備える。なお、B系制御盤2bは、A系制御盤2aと同様に構成されている。このため、主にA系制御盤2aについて説明し、B系制御盤2bについては、A系制御盤2aと異なる部分について主に説明し、同様に構成されている部分については説明を適宜省略する。
【0016】
電圧検出回路21aは、電圧検出器4からA系ヒューズ5aを介して入力された電圧を受信して、電圧を計測する。電圧検出回路21aは、計測した電圧を電圧喪失検出部22aに出力する。
【0017】
電圧喪失検出部22aは、電圧検出回路21aにより計測された電圧に基づいて、電圧が喪失しているか否かを判断する。電圧喪失検出部22aは、電圧が喪失していると判断した場合、A系電圧喪失検出信号をAND回路24aに出力し、A系制御盤2aの運転を停止させるための指令を運転停止部23aに出力する。例えば、電圧喪失検出部22aは、予め設定された電圧よりも、電圧検出回路21aにより計測された電圧が低い場合、電圧が喪失していると判断する。
【0018】
運転停止部23aは、電圧喪失検出部22から運転を停止させるための指令を受信すると、A系制御盤2aの運転を停止させる。ここで、A系制御盤2aの運転の停止とは、少なくともA系制御盤2aによる制御を停止させればよい。従って、A系制御盤2aの制御電源は、入っていてもよいし、表示などの制御に直接関係ない機能については使用できる状態でもよい。
【0019】
AND回路24aには、電圧喪失検出部22aから入力されたA系電圧喪失検出信号及びB系制御盤2bの電圧喪失検出部22bから入力されたB系電圧喪失検出信号が入力される。AND回路24aは、A系電圧喪失検出信号及びB系電圧喪失検出信号が共に入力された場合、電圧喪失検出回路3に両系電圧喪失検出信号を出力(送信)する。なお、AND回路24aは、2つの制御盤2a,2bの通信時間を考慮した時限を設けて、B系電圧喪失検出信号が無くなった場合には、両系電圧喪失検出信号を出力しないようにしてもよい。
【0020】
電圧喪失検出回路3は、OR回路31を備える。OR回路31には、A系制御盤2aのAND回路24a及びB系制御盤2bのAND回路24bからそれぞれ両系電圧喪失検出信号が入力される。OR回路31は、A系制御盤2a又はB系制御盤2bの少なくとも一方から両系電圧喪失検出信号を受信すると、外部遮断器6を開放するトリップ信号を出力する。なお、電圧喪失検出回路3は、A系制御盤2a、B系制御盤2b、又は外部遮断器6の何処に実装されていてもよいし、これら以外の機器又は装置に実装されていてもよいし、単独の機器として備えられていてもよい。
【0021】
外部遮断器6は、電圧喪失検出回路3からトリップ信号を受信すると、開放される。外部遮断器6が開放されると、多重系制御システム1のシステム全体が停止する。外部遮断器6は、多重系制御システム1の制御出力(電流出力又は電圧出力など)側又は電力系統に設けられている。なお、外部遮断器6は、多重系制御システム1の運転(制御)を停止させられるのであれば、何処に設けられていてもよい。また、外部遮断器6は、多重系制御システム1として設けられていてもよいし、電力系統の一部として設けられていてもよい。
【0022】
次に、電力系統の系統電圧が喪失した場合の多重系制御システム1の動作について説明する。
【0023】
電力系統の系統電圧が喪失すると、電圧検出器4では電圧が検出されない。従って、A系制御盤2a及びB系制御盤2bは、共に電圧検出器4からの電圧が入力されないため、それぞれ電圧が喪失したと判断する。2つの制御盤2a,2bは、電圧喪失を検出すると、それぞれ運転を停止し、それぞれ電圧喪失検出回路3に両系電圧喪失検出信号を出力する。電圧喪失検出回路3は、2つの制御盤2a,2bのいずれか一方から両系電圧喪失検出信号を受信した時点で、外部遮断器6をトリップする。これにより、多重系制御システム1は、運転を停止する。
【0024】
次に、A系ヒューズ5aが溶断した場合の多重系制御システム1の動作について説明する。なお、B系ヒューズ5bが溶断した場合の多重系制御システム1の動作も同様である。
【0025】
ヒューズ5aが溶断すると、A系制御盤2aには、電圧検出器4からの電圧が入力されないため、電圧が喪失したと判断する。A系制御盤2aは、電圧喪失を検出すると、運転を停止する。
【0026】
一方、B系制御盤2bには、正常に、電圧検出器4からの電圧が入力されるため、運転を継続する。従って、2つの制御盤2a,2bのいずれからも両系電圧喪失検出信号が出力されることはない。
【0027】
よって、多重系制御システム1は、A系制御盤2aの制御運転が停止し、片系のB系制御盤2bによる制御運転が行われる。また、停止したA系制御盤2aは、故障部位の特定などの作業をすることができる。
【0028】
本実施形態によれば、片系(A系)のヒューズ5aが溶断した場合でも、多重系制御システム1を停止させることなく、ヒューズ5bが溶断していないもう一方の系(B系)の制御盤2bで、制御運転を継続することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る多重系制御システム1Aの構成を示す構成図である。
【0030】
多重系制御システム1Aは、図1に示す第1の実施形態に係る多重系制御システム1において、制御盤2a,2bの代わりに制御盤2Aa,2Abを設け、電圧喪失検出回路3の代わりに電圧喪失検出回路3Aを設け、外部継電器7を追加した構成である。その他の点は、第1の実施形態に係る多重系制御システム1と同様である。
【0031】
制御盤2Aa,2Abは、図1に示す第1の実施形態に係る制御盤2a,2bにおいて、AND回路24a,24bを取り除いた構成である。A系制御盤2aの電圧喪失検出部22aは、A系電圧喪失検出信号を電圧喪失検出回路3Aに出力する。B系制御盤2bの電圧喪失検出部22bは、B系電圧喪失検出信号を電圧喪失検出回路3Aに出力する。その他の点は、第1の実施形態に係る制御盤2a,2bと同様である。
【0032】
電圧喪失検出回路3Aは、AND回路31Aを備える。AND回路31Aには、A系電圧喪失検出信号及びB系電圧喪失検出信号が入力される。AND回路31Aは、A系電圧喪失検出信号及びB系電圧喪失検出信号を共に受信すると、外部遮断器6を開放するためのトリップ指令を外部継電器7に出力する。なお、電圧喪失検出回路3Aは、A系制御盤2Aa又はB系制御盤2Abに実装されていてもよいし、これら以外の機器又は装置に実装されていてもよいし、単独の機器として備えられたものでもよい。
【0033】
外部継電器7は、電圧喪失検出回路3Aからトリップ指令を受信すると、外部遮断器6を開放するトリップ信号を出力する。これにより、多重系制御システム1Aは、運転を停止する。
【0034】
次に、電力系統の系統電圧が喪失した場合の多重系制御システム1Aの動作について説明する。
【0035】
電力系統の系統電圧が喪失すると、電圧検出器4では電圧が検出されない。従って、A系制御盤2Aa及びB系制御盤2Abは、共に電圧検出器4からの電圧が入力されないため、それぞれ電圧が喪失したと判断する。2つの制御盤2Aa,2Abは、電圧喪失を検出すると、それぞれ運転を停止し、それぞれA系電圧喪失検出信号又はB系電圧喪失信号を電圧喪失検出回路3Aに出力する。電圧喪失検出回路3Aは、2つの制御盤2Aa,2AbからそれぞれA系電圧喪失検出信号及びB系電圧喪失信号を共に受信した時点で、外部継電器7を介して、外部遮断器6をトリップさせる。これにより、多重系制御システム1Aは、運転を停止する。
【0036】
次に、A系ヒューズ5aが溶断した場合の多重系制御システム1Aの動作について説明する。なお、B系ヒューズ5bが溶断した場合の多重系制御システム1Aの動作も同様である。
【0037】
ヒューズ5aが溶断すると、A系制御盤2Aaには、電圧検出器4からの電圧が入力されないため、電圧が喪失したと判断する。A系制御盤2Aaは、電圧喪失を検出すると、運転を停止し、A系電圧喪失検出信号を電圧喪失検出回路3Aに出力する。
【0038】
一方、B系制御盤2Abには、正常に、電圧検出器4からの電圧が入力されるため、運転を継続する。従って、B系制御盤2Abは、B系電圧喪失検出信号を出力しない。
【0039】
電圧喪失検出回路3Aでは、A系電圧喪失検出信号を受信するが、B系電圧喪失検出信号は受信しない。従って、電圧喪失検出回路3Aは、外部遮断器6をトリップさせない。
【0040】
よって、多重系制御システム1Aは、片系のB系制御盤2Abによる制御運転が行われる。また、停止したA系制御盤2Aaは、故障部位の特定などの作業をすることができる。
【0041】
本実施形態によれば、2つの制御盤2a,2bの間で相互に情報を送受信しなくても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
また、外部継電器7を介して、外部遮断器6をトリップさせることで、電圧喪失検出回路3Aは、外部遮断器6の仕様を考慮する必要がない。従って、電圧喪失検出回路3Aを汎用性の高い構成にすることができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る多重系制御システム1Bの構成を示す構成図である。
【0044】
多重系制御システム1Bは、図2に示す第2の実施形態に係る多重系制御システム1Aにおいて、電圧喪失検出回路3Aの代わりに上位制御盤3Bを設け、外部継電器7を取り除いた構成である。その他の点は、第2の実施形態に係る多重系制御システム1Aと同様である。
【0045】
上位制御盤3Bは、A系制御盤2Aa及びB系制御盤2Abの上位の制御を行う装置である。上位制御盤3Bには、電圧喪失検出回路31Bが実装されている。電圧喪失検出回路31Bには、A系制御盤2Aa及びB系制御盤2AbからそれぞれA系電圧喪失検出信号及びB系電圧喪失検出信号が入力される。電圧喪失検出回路31Bには、制御対象の電力系統の電圧喪失を検出するための電圧喪失検出ロジックが組み込まれている。
【0046】
電圧喪失検出回路31Bは、入力されたA系電圧喪失検出信号及びB系電圧喪失検出信号に基づいて、電圧喪失検出ロジックに従って、電圧が喪失したか否かを判断する。電圧喪失検出ロジックでは、それぞれの制御盤2Aa,2Abの伝送時間、検出器などの機器の特性、又は電力系統の構成などの様々な要因を考慮して、電圧喪失の判断をする。なお、電圧喪失検出回路31Bは、A系電圧喪失検出信号又はB系電圧喪失検出信号のいずれか一方でも受信していなければ、電圧喪失検出ロジックを実行しないようにしてもよい。電圧喪失検出回路31Bは、電圧喪失検出ロジックに従って判断し、電圧喪失を検出すると、外部遮断器6を開放するトリップ信号を出力する。
【0047】
外部遮断器6は、上位制御盤3Bの電圧喪失検出回路31Bからトリップ信号を受信すると、開放される。外部遮断器6が開放されると、多重系制御システム1Bは運転を停止する。
【0048】
次に、電力系統の系統電圧が喪失した場合の多重系制御システム1Bの動作について説明する。
【0049】
電力系統の系統電圧が喪失すると、第2の実施形態に係る多重系制御システム1Aと同様に、2つの制御盤2Aa,2Abは、それぞれ運転を停止し、それぞれA系電圧喪失検出信号又はB系電圧喪失信号を上位制御盤3Bに出力する。
【0050】
上位制御盤3Bは、電圧喪失検出回路31Bの電圧喪失検出ロジックに従って判断し、電圧喪失を検出すると、外部遮断器6をトリップさせる。これにより、多重系制御システム1Bは、運転を停止する。
【0051】
次に、A系ヒューズ5aが溶断した場合の多重系制御システム1Bの動作について説明する。なお、B系ヒューズ5bが溶断した場合の多重系制御システム1Bの動作も同様である。
【0052】
ヒューズ5aが溶断すると、第2の実施形態と同様に、A系制御盤2Aaは、電圧喪失を検出して、運転を停止し、A系電圧喪失検出信号を上位制御盤3Bに出力する。一方、B系制御盤2Abは、運転を継続して、B系電圧喪失検出信号は出力しない。
【0053】
上位制御盤3Bでは、A系電圧喪失検出信号を受信するが、B系電圧喪失検出信号は受信しない。このため、上位制御盤3Bの電圧喪失検出回路31Bは、電圧喪失検出ロジックを実行しても、電圧喪失を検出しない。
【0054】
よって、多重系制御システム1Bは、片系のB系制御盤2Abによる制御運転が行われる。また、停止したA系制御盤2Aaは、故障部位の特定などの作業をすることができる。
【0055】
本実施形態によれば、第2の実施形態による作用効果に加え、上位制御盤3Bに、電圧喪失検出ロジックを組み込みことで、電圧喪失をより正確に判断することができる。
【0056】
なお、各実施形態では、二重系の多重系制御システムについて説明したが、三重系以上の多重系制御システムも同様に構成することができる。
【0057】
第2の実施形態では、外部継電器7を設けた構成としたが、外部継電器7を介さずに、外部遮断器6をトリップする構成としてもよい。また、第1の実施形態及び第3の実施形態では、第2の実施形態のように、外部継電器7を介して、外部遮断器6をトリップする構成としてもよい。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…多重系制御システム、2a,2b…制御盤、3…電圧喪失検出回路、4…電圧検出器、5a,5b…ヒューズ、6…外部遮断器、21a,21b…電圧検出回路、22a,22b…電圧喪失検出部、23a,23b…運転停止部、24a,24b…AND回路、31…OR回路。
図1
図2
図3