(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の脈動防止装置において、前記脈動吸収室の膨張により前記ダイヤフラムが前記適正変動範囲を超えて弾性変形したときに前記ダイヤフラムの膨張側の弾性変形を規制する膨張規制用のストッパと、前記脈動吸収室の収縮により前記ダイヤフラムが前記適正変動範囲を超えて弾性変形したときに前記ダイヤフラムの収縮側の弾性変形を規制する収縮規制用のストッパと、を前記ケース体に設けた、脈動防止装置。
請求項1または2記載の脈動防止装置において、前記ケース体に軸方向に往復動自在に往復動部材を設け、当該往復動部材に前記ダイヤフラムと前記実位置表示部とを設けた、脈動防止装置。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の脈動防止装置において、前記実位置表示部を外部に目視させる窓部を、前記ケース体に設け、前記窓部を覆う透明性のカバーを前記適正変動範囲表示部とする、脈動防止装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示されるように、脈動防止装置10は、装置本体としてのポートブロック10aを有している。このポートブロック10aには、ポンプに連通する一次側ポート11と、液体吐出具に連通する二次側ポート12とが設けられている。ポートブロック10aの一次側ポート11と二次側ポート12との間には、ポンプと液体吐出具との間の流路に連通し、液体が流入する脈動吸収室13が形成されている。
【0014】
ポートブロック10aがポンプに直接装着されるときには、一次側ポート11はポンプの吐出口に連結され、ポートブロック10aに液体吐出具が直接装着されるときには、二次側ポート12には液体吐出具が直接装着される。一方、ポンプとポートブロック10aとが配管により接続されるときには、一次側ポート11にポンプ側の配管が接続される。ポートブロック10aと液体吐出具とが配管により接続されるときには、二次側ポート12に液体吐出具側の配管が接続される。それぞれのポート11,12に配管等がねじ止めされるときには、それぞれのポート11,12にはねじ孔が形成される。一方、ポートブロック10aがポンプに突き当てられて、ねじ部材により脈動防止装置10がポンプに装着される形態のときには、一次側ポート11にはねじ孔は形成されない。二次側ポート12についても、液体吐出具の取付形態によっては、ねじ孔は形成されない。
【0015】
装置本体としてのポートブロック10aには、
図1に示されるように、ケース体14が装着される。ケース体14は円筒形状の部材により形成されており、一端部には開口部15が形成され、他端部には端壁部16が設けられている。ケース体14の一端部には径方向外方に突出するフランジ17が設けられている。フランジ17に突き当てられる固定プレート18は、締結ねじ19によりポートブロック10aに締結される。ケース体14は、固定プレート18によりポートブロック10aに締結される。
【0016】
ケース体14の開口部15には、脈動吸収室13を形成するためのダイヤフラム21が設けられている。ダイヤフラム21は、径方向中央部の連結部21aと、径方向外周部の固定部21bと、これらの間の弾性変形部21cとを有している。ダイヤフラム21の固定部21bが、ポートブロック10aとケース体14との間に締め付けられた状態となって、ダイヤフラム21はポートブロック10aに装着される。ケース体14内には、往復動部材22が軸方向に往復動自在に装着されている。この往復動部材22は、ピストン形状となっており、円筒部22aと、この一端部に設けられた端壁部22bとを有し、円筒部の他端部は開口されている。往復動部材22の端壁部22bにはねじ孔23が設けられており、このねじ孔23には、ダイヤフラム21の連結部21aに設けられた雄ねじ部24がねじ結合される。
【0017】
ケース体14内には、ダイヤフラム21に対して脈動吸収室13を収縮させる方向にばね力を付勢するためのばね部材として、圧縮コイルばね25が装着される。ケース体14の端壁部16には、圧縮コイルばね25の弾性変形量を調整するために、ばね力調整部材26が装着されている。このばね力調整部材26は、端壁部16に設けられたねじ孔27にねじ結合される雄ねじ部26aと、この一端部に設けられたばね受け部26bとを有している。圧縮コイルばね25の一端は往復動部材22の端壁部22bに突き当てられ、他端部はばね受け部26bに突き当てられている。雄ねじ部26aの他端部には、つまみ部つまり操作部26cが設けられている。この操作部26cを操作することにより、ばね力調整部材26を回転させると、圧縮コイルばね25の軸方向の弾性変形量が調整される。
【0018】
操作部26cを一方向に回転させて、端壁部22bとばね受け部26bとの間の距離を短くすると、圧縮コイルばね25が軸方向に収縮するように弾性変形する。これにより、往復動部材22を介してダイヤフラム21に加えられるばね力は、強くなるように調整される。一方、操作部26cを逆方向に回転させて、端壁部22bとばね受け部26bとの間の距離を長くすると、圧縮コイルばね25が軸方向に延びるように弾性変形する。これにより、往復動部材22を介してダイヤフラム21に加えられるばね力は、弱くなるように調整される。雄ねじ部26aにはロックナット28がねじ結合されている。ロックナット28をケース体14に締結すると、ばね力調整部材26の回転が防止される。
【0019】
往復動部材22の軸方向往復動を案内するために、往復動部材22の円筒部22aには軸方向に延びるガイド溝29が形成され、ケース体14にはガイド溝29に入り込むガイドピン30が設けられている。これにより、往復動部材22は、回転することなく、軸方向に移動する。
【0020】
往復動部材22がばね力により脈動吸収室13に向けて前進移動すると、脈動吸収室13は収縮される。一方、脈動吸収室13内の液体の圧力によりばね力に抗して往復動部材22が後退移動すると、脈動吸収室13は膨張する。したがって、ポンプから脈動吸収室13に供給された液体の圧力が高くなると、ダイヤフラム21が脈動吸収室13を膨張させる方向に弾性変形して、脈動吸収室13の圧力上昇が防止される。一方、脈動吸収室13内に供給される液体の圧力が低下すると、ダイヤフラム21が脈動吸収室13を収縮させる方向に弾性変形し、脈動吸収室13の圧力低下が防止される。このように、脈動吸収室13内に供給される液体の圧力が変動しようとすると、ダイヤフラム21の弾性変形により、脈動吸収室13内の圧力変動が吸収されるので、二次側ポート12から吐出される液体の圧力は一定圧に調圧される。
【0021】
脈動吸収室13が液体の圧力により膨張したときに、ダイヤフラム21が過度に弾性変形するのを規制するために、膨張規制用のストッパ31がケース体14に設けられている。この膨張規制用のストッパ31は、ケース体14に形成された段差部により形成されており、脈動吸収室13が膨張限となったときのダイヤフラム21の位置を規制する。往復動部材22の開口側の端面が段差部からなるストッパ31に当接すると、往復動部材22の移動が規制される。これにより、ダイヤフラム21が脈動吸収室13を膨張させる方向に、過度に弾性変形することが防止される。
【0022】
脈動吸収室13が液体の圧力が低下してばね力により収縮したときに、ダイヤフラム21が過度に弾性変形するのを規制するために、収縮規制用のストッパ32がケース体14に設けられている。この収縮規制用のストッパ32は、ケース体14の内周面に突出して設けられた環状ないし棒状の部材により形成されており、脈動吸収室13が収縮限界となったときのダイヤフラム21の位置を規制する。往復動部材22の端壁部側の端面がストッパ32に当接すると、往復動部材22の移動が規制される。これにより、ダイヤフラム21が脈動吸収室13を収縮させる方向に、過度に弾性変形することが防止される。
【0023】
ケース体14には、ガイドピン30に対して円周方向にずらして窓部33が設けられている。この窓部33は、往復動部材22の円筒部22aの一部を外部に目視させるために設けられている。円筒部22aには、窓部33に露出させて実位置表示部34が設けられている。これにより、実位置表示部34はケース体14の外部から目視自在となっている。この実位置表示部34は、脈動防止装置10が実際に使用されて脈動吸収室13に液体が供給された状態のもとで、実際のダイヤフラム21の位置に対応した位置をダイヤフラム21から離れた位置で表示する。この実位置表示部34は、円筒部22aの外周面にV字形の凹部つまりVノッチを設けることにより形成されている。ただし、実位置表示部34としては、Vノッチに代えて、円筒部22aに凸部を設けたり、円筒部22aに円筒部22aと相違した色彩のマークを施すようにしたりしても良い。
【0024】
ケース体14には、透明性を有するカバー35が巻き付けられており、窓部33は透明性のカバー35により覆われている。カバー35を通して実位置表示部34が外部から目視観察される。実際に脈動防止装置10が使用されて、脈動吸収室13が膨張したときにおけるダイヤフラム21の適正変動範囲38を表示するために、膨張側の適正範囲端部36が透明性のカバー35の内面に設けられている。この適正範囲端部36は、脈動吸収室13が膨張したときにおけるダイヤフラム21の適正変動範囲38の膨張側の境界値に対応している。
【0025】
さらに、実際に脈動防止装置10が使用されて、脈動吸収室13が収縮したときにおけるダイヤフラム21の適正変動範囲38を表示するために、収縮側の適正範囲端部37が透明性のカバー35の内面に設けられている。この適正範囲端部37は、脈動吸収室13が収縮したときにおけるダイヤフラム21の適正変動範囲38の収縮側の境界値に対応している。
【0026】
それぞれの適正範囲端部36,37は、透明部としてのカバー35の内面に、V字形の凸部を設けることにより形成されており、両方の適正範囲端部36,37の間が適正変動範囲38となる。ただし、それぞれの適正範囲端部36,37としては、カバー35の外面に凸部を設けたり、凸部に代えて、カバー35に凹部を設けたりしても良い。このように適正範囲端部36,37としては、実位置表示部34と同様に、凹凸部により形成するようにしても良く、カバー35の内面または外面に円筒部22aと相違した色彩のマークを施すようにしたりしても良い。
【0027】
図3は、実位置表示部34とそれぞれの適正範囲端部36,37との位置関係を示す概略図である。
図4はダイヤフラム21の軸方向の変位と抗力との関係を示す抗力特性線図である。
図3に示されるように、実位置表示部34が膨張側の適正範囲端部36と収縮側の適正範囲端部37の間の適正変動範囲38を移動するときには、
図4に示されるように、ダイヤフラム21の弾性変形領域は低抗力領域となる。
図4において、符号Sは低抗力領域を示す。
【0028】
実位置表示部34が低抗力領域Sの中間位置となっているときには、ダイヤフラム21には圧力や力が全くかからない。このときには、実位置表示部34は中立位置ないし自由位置となっている。操作部26cを回転させて圧縮コイルばね25の圧縮量(ばねの力)を調整することにより、脈動吸収室13の平均的圧力に対抗する力をダイヤフラム21に与えて、ダイヤフラム21を中立位置、自由位置になるべく近付けて位置させることができる。
【0029】
膨張規制用のストッパ31により規制される位置を超えてダイヤフラム21が膨張すると、ダイヤフラム21が永久変形を起こしたり、破損したりする可能性がある。したがって、ストッパ31によりダイヤフラム21の膨張側の限界位置が規制される。同様に、収縮規制用のストッパ32により規制される位置を超えてダイヤフラム21が収縮すると、ダイヤフラム21が永久変形を起こしたり、破損したりする可能性がある。したがって、ストッパ31によりダイヤフラム21の収縮側の限界位置が規制される。適正変動範囲38における実位置表示部34の移動ストロークをSとすると、両方のストッパ31,32の間の距離Tは、ストロークSよりも大きく設定されている。このように、ダイヤフラム21が膨張方向の低抗力領域を超えて変形したときには、ストッパ31により膨張限界位置が規制される。ダイヤフラム21が収縮方向の低抗力領域を超えて変形したときには、ストッパ32により収縮側限界位置が規制される。
【0030】
図2(A)は、実位置表示部34が適正変動範囲38の中間位置となった状態を示す。
図2(B)は、実位置表示部34が膨張側の適正範囲端部36に近づいた状態を示す。
図2(C)は、実位置表示部34が収縮側の適正範囲端部37に近づいた状態を示す。
【0031】
図2に示すように、実位置表示部34が両方の適正範囲端部36,37の間に位置して作動しているとき、つまり
図1および
図3においてストロークSの適正変動範囲38で作動しているときには、脈動吸収室13の僅かな圧力変動に応じてダイヤフラム21は変形移動する。つまり、ダイヤフラム21が軽く移動し、ダイヤフラム21により最適な脈動吸収機能が得られる。これに対し、この適正変動範囲38を超えてダイヤフラム21を作動させようとする場合には、ダイヤフラム21に加えられる脈動吸収室13の圧力に応じない。つまり、ダイヤフラム21に加えられる脈動吸収室13の圧力が上昇、または収縮しても、ダイヤフラム21の変形量はごく僅かとなる。つまり、ダイヤフラム21により最適な脈動吸収機能が得られない。ダイヤフラム21が過度に変形することが、ストッパ31,32により規制されているので、ダイヤフラム21に永久歪みが発生したり、亀裂が発生したりする恐れがない。これにより、ダイヤフラム21の耐久性を向上させることができる。
【0032】
脈動吸収室13内に液体が供給された状態のもとで、実位置表示部34が膨張側の適正範囲端部36を超える位置まで移動したときには、ロックナット28を緩めて、操作部26cを回転操作して、圧縮コイルばね25を収縮方向に変位させる。これにより、圧縮コイルばね25により往復動部材22を介してダイヤフラム21に加えられるばね力が強められる。ばね力が強められると、脈動吸収のためのダイヤフラム21の弾性変形範囲が適正範囲端部36の位置を超えて弾性変形することがなくなる。このように、ダイヤフラム21が適正な弾性変形の作動範囲内で作動させることができると、ダイヤフラム21は、脈動を確実に防止する範囲で作動することになり、脈動吸収効果を高めることができる。
【0033】
脈動吸収室13内に液体が供給された状態のもとで、実位置表示部34が収縮側の適正範囲端部37を超える位置まで移動するときには、上述とは逆方向に操作部26cが操作される。これにより、圧縮コイルばね25により往復動部材22を介してダイヤフラム21に加えられるばね力が弱められる。ばね力が弱められると、脈動吸収のためのダイヤフラム21の弾性変形範囲が適正範囲端部37の位置を超えて弾性変形することがなくなる。ダイヤフラム21に加わる液体圧力が過度に高くなると、往復動部材22はストッパ31に当接する。一方、ダイヤフラム21に加わる液体圧力が過度に低いとき、および脈動吸収室13内に液体が供給されていないときには、往復動部材22はストッパ32に当接する。これにより、ダイヤフラム21には過度の外力が加わることが防止され、ダイヤフラム21は永久変形を起こすことなく、ダイヤフラム21の耐久性を向上させることができる。
【0034】
脈動防止装置10は、液体供給回路を形成する配管内の液体の脈動を防止するために使用される。例えば、ポンプから吐出された液体を液体吐出具に供給するための液体供給回路にこの脈動防止装置10が使用されると、ポンプから吐出された液体に脈動が発生していても、その脈動を吸収して一定流量の液体を液体吐出具に供給することができる。
【0035】
配管内を流れる液体の圧力に応じて、ダイヤフラム21に加えられるばね力を調整することができる。そのばね力の調整は、脈動防止装置10の初期設定の段階、または実際に配管内に液体を供給した状態のもとで、ばね力調整部材26により脈動吸収のための適正変動範囲38を調整することができる。これにより、脈動防止装置10が使用される液体供給回路における液体の圧力に応じて、確実に脈動を防止できる適正変動範囲38にダイヤフラム21を設定することができる。
【0036】
図5〜
図8は、上述した脈動防止装置10が設けられたポンプ41を示す。ポンプ41は、ポンプブロック42を有している。ポンプブロック42には、
図7に示されるように、径方向に弾性変形する2つのチューブ43a,43bがポンプ部材として設けられており、このポンプ41は、ツインタイプのチューブフラム型となっている。それぞれのチューブ43a,43bにより、内側のポンプ室44a,44bと外側の駆動室45a,45bとに仕切られており、チューブ43a,43bはポンプ室と駆動室とを仕切るための仕切り部材となっている。
【0037】
ポンプブロック42の一端には、供給ブロック46が設けられており、この供給ブロック46に設けられた供給ポート47には、
図6に示されるように、配管48が接続されるようになっている。配管48は、液体収容タンク49に連なっており、液体収容タンク49内の液体Lは、配管48により供給ポート47に案内される。供給ブロック46には、
図7に示されるように、供給ポート47から2つに分岐された流路47a,47bが設けられており、流路47aはポンプ室44aに連通し、流路47bはポンプ室44bに連通している。
【0038】
ポンプブロック42の他端には、上述した脈動防止装置10が取り付けられている。脈動防止装置10のポートブロック10aには、
図7に示されるように、ポンプ室44aに連通する一次側ポート11aと、ポンプ室44bに連通する一次側ポート11bとが設けられている。それぞれの一次側ポート11a,11bは脈動吸収室13に連通している。
図1に示した脈動防止装置10においては、1つの一次側ポート11のみが示されている。ただし、2つのポンプ部材を有するポンプ41に脈動防止装置10が設けられるときには、脈動防止装置10には、2つの一次側ポート11a,11bが設けられる。なお、脈動防止装置10が1つのポンプ部材から吐出される液体を液体吐出具に供給する場合には、脈動防止装置10の一次側ポートは1つのみとなる。
【0039】
それぞれの駆動室45a,45bに駆動媒体Mを供給すると、チューブ43a,43bは径方向に収縮してポンプ室44a,44bが収縮する。一方、駆動室45a,45b内の駆動媒体Mを外部に排出すると、チューブ43a,43bは径方向に膨張してポンプ室44a,44bが膨張する。チューブ43aの両端部内には逆止弁51a,52aが設けられ、チューブ43bの両端部内には逆止弁51b,52bが設けられている。チューブ43aが収縮すると、逆止弁51aがポンプ室44aを閉じ、逆止弁52aがポンプ室44aを開放してポンプ室44a内の液体Lが脈動吸収室13に供給される。逆に、チューブ43aが膨張すると、逆止弁51aが開放され、逆止弁52aは閉じられて、液体収容タンク49内の液体がポンプ室44a内に供給される。
【0040】
同様に、チューブ43bが収縮すると、逆止弁51bがポンプ室44bを閉じ、逆止弁52bがポンプ室44bを開放してポンプ室44b内の液体Lが脈動吸収室13に供給される。逆に、チューブ43bが膨張すると、逆止弁51bが開放され、逆止弁52bが閉じられて、液体収容タンク49内の液体がポンプ室44b内に供給される。したがって、ポンプ室44a,44bを交互に膨張収縮させると、連続的に脈動防止装置10の脈動吸収室13に液体Lが供給される。
【0041】
脈動吸収室13に供給された液体は、ダイヤフラム21の弾性変形により脈動吸収室13において液体の圧力変動が吸収されて一定の圧力となる。一定の圧力となった液体は、
図6に示されるように、二次側ポート12に接続された配管53により液体吐出具54に供給され、液体吐出具54から被塗布物に向けて液体が塗布される。
【0042】
ポンプ室44a,44bを交互に膨張収縮するために、ポンプブロック42には、2つのシリンダ孔55a,55bが設けられている。それぞれのシリンダ孔55a,55bには、ピストン56a,56bが軸方向に往復動自在に設けられており、ピストン56a,56bの先端面側は、駆動室45a,45bの一部を形成している。したがって、2つのピストン56a,56bの一方をポンプ室に向けて前進移動し、他方をポンプ室から離れる方向に後退移動させると、ポンプ室44a,44bは交互に膨張収縮し、ポンプ動作が行われる。
【0043】
図8に示されるように、ポンプブロック42には駆動ブロック57が取り付けられている。それぞれのピストン56a,56bと同軸となった駆動ロッド58a,58bが軸方向に往復動自在に駆動ブロック57に装着されている。それぞれの駆動ロッド58a,58bの一端部に設けられた凹部には、ピストン56a,56bに設けられ凸部59a,59bが挿入されている。駆動ブロック57に形成されたカム収容室61には、カム部材62が配置されており、カム部材62はカム軸62aとカム盤62bとを有している。
【0044】
駆動ブロック57には、連結ブロック63を介してモータ64が取り付けられている。モータ64の主軸65には継手66を介してカム軸62aが連結されており、カム部材62はモータ64により回転駆動される。それぞれの駆動ロッド58a,58bには、カム盤62bのカム面67に接触する駆動ローラ68a,68bが設けられている。それぞれの駆動ローラ68a,68bは、ピストン56a,56bに設けられた圧縮コイルばね60a,60bのばね力により、カム面67に押し付けられている。
【0045】
カム面67は、
図6に示されるように、傾斜面となっている。カム軸62aをモータ64により回転駆動すると、駆動ローラ68a,68bはカム面67に沿って転動する。カム軸62aの回転の半周期では、一方の駆動ロッドは前進駆動され、他方の駆動ロッドは後退駆動される。後の半周期では、一方の駆動ロッドは後退駆動され、他方の駆動ロッドは前進駆動される。
図8においては、駆動ロッド58a,58bの軸方向の往復動ストロークの中央部となった状態を示す。この状態のもとで、カム軸62aが回転すると、一方の駆動ロッドは前進駆動され、他方の駆動ロッドは後退駆動される。
【0046】
駆動ロッド58aが前進駆動されると、チューブ43aが収縮してポンプ室44a内の液体は、逆止弁52aを介して脈動吸収室13に吐出される。このときには、駆動ロッド58bは後退駆動されてチューブ43bが膨張する。これにより、液体収容タンク49内の液体が逆止弁51bを介してポンプ室44b内に吸入される。したがって、カム軸62aが連続的に回転駆動されると、2つの駆動ロッド58a,58bが相互に逆方向に、つまり逆位相となって連続的に駆動される。これにより、脈動吸収室13内には連続的に液体Lが供給され、脈動吸収室13から連続的に液体Lが液体吐出具54に供給される。
【0047】
このように、2つのポンプ部材を交互に膨張収縮させると、両方のポンプ部材から吐出される液体の脈動が発生することがあるが、脈動吸収室13を形成するダイヤフラム21が弾性変形して、脈動が解消される。
【0048】
図9は、
図5〜
図8に示されたポンプ41を用いて液体吐出具54に液体を供給するようにした液体供給回路における脈動発生状態を、脈動防止装置10を用いた場合と、用いない場合とで比較して示すポンプの流量特性線図である。
【0049】
図9(A)は、脈動防止装置10を用いた場合の流量特性を示し、
図9(B)は、脈動防止装置10を用いない場合の流量特性を示す。
図9(B)に示すように、2つのポンプ部材を用いたツインタイプのポンプにおいては、一方のチューブの収縮による液体の吐出から、他方のチューブの収縮による液体の吐出に切り替わる際に、大きな脈動の発生が見られた。これに対し、
図9(A)に示すように、脈動防止装置10を液体供給回路に設けると、ポンプの吐出口から液体吐出具までの間の流路内では、脈動発生がなく、一定流量で液体を被塗布部材に塗布することができた。被塗布物に対する液体の塗布量を塗布時間で設定するようにすると、脈動発生がないので、塗布時間を設定することにより、一定量の液体を高精度で被塗布物に塗布することができる。
【0050】
したがって、フィルムに薬剤を塗布するような場合には、液体吐出具54から薬剤を塗布することになる。フィルムに薬剤を塗布するときには、液体吐出具54から吐出される薬剤に脈動が発生すると、膜厚が均一にならず、塗布ムラが発生することになる。これに対し、脈動防止装置10を使用すると、高精度の均一な膜厚の薬剤をフィルムに塗布することができる。
【0051】
ポンプ41から吐出される液体の流量が変化すると、吐出圧力も変化する。また、液体の粘度が相違すると、ポンプからの吐出流量が同じでも、吐出圧力は相違することになる。これに対し、脈動吸収室13の圧力に応じて、ダイヤフラム21が最適に作動するように、ダイヤフラム21に付勢されるばね力を調整することができる。しかも、ダイヤフラム21が最適な作動状態となっているか否かを、外部から容易に観察することができる。
【0052】
図10は脈動防止装置10の変形例を示す断面図であり、
図10においては、
図1示された部材と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0053】
図1に示した脈動防止装置10においては、往復動部材22とは別部材により形成されたダイヤフラム21が往復動部材22に設けられているのに対し、
図10に示す脈動防止装置10においては、ダイヤフラム21が往復動部材22に一体に設けられている。ダイヤフラム21の収縮規制用のストッパ32aは、ピン等の棒状部材により形成されており、このストッパ32aはケース体14に取り付けられている。
図10におけるこれらの構造を除いて、他の構造は
図1に示されたものと同様となっている。
【0054】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、ポンプ41の形態としては、図示するようなチューブフラム型のみならず、ベローズ型、ダイヤフラム型およびピストン型等のものを使用することができる。また、図示するポンプ41は、2つのポンプ部材を有するツインタイプであるが、1つのポンプ部材、または3つ以上のポンプ部材を有すポンプを使用する液体供給回路にも、この脈動防止装置10を適用することができる。