(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956977
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】並列分離システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/46 20060101AFI20160714BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20160714BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20160714BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20160714BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20160714BHJP
G01N 30/64 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
G01N30/46 E
G01N30/26 M
G01N30/32 A
G01N30/86 G
G01N30/86 Q
G01N30/86 V
G01N30/74 E
G01N30/64 A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-502535(P2013-502535)
(86)(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公表番号】特表2013-524212(P2013-524212A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】SE2011050361
(87)【国際公開番号】WO2011123039
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年3月20日
(31)【優先権主張番号】1050303-5
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ゲバウアー,クラウス
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭36−001698(JP,B1)
【文献】
特表2002−530674(JP,A)
【文献】
特表2002−523075(JP,A)
【文献】
特開平02−051061(JP,A)
【文献】
特開昭60−115854(JP,A)
【文献】
特開2006−292636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がクロマトグラフィーモジュール(M1,M2,...Mn;M1’,M2’,...Mn’)を備える並列流体経路(F1,F2...Fn;F1’,F2’,....Fn’)を備える分離システム(1;31)での方法であって、
各々の流体経路に調節可能な流量制限器(R1,R2,...Rn;R1’,R2’,...Rn’)を設ける段階と、
すべての他の流体経路を通る流体流を停止しながら、各々の流体経路の流体力学的抵抗を順次に且つ別々に測定することによって、或いは、1つを除くすべての流体経路の流体力学的抵抗を順次測定し、さらにシステム全体の流体力学的抵抗を測定し、それらの測定値を用いて最後の流体経路の流体力学的抵抗も得ることによって、最も大きい流体力学的抵抗を有する流体経路を識別する段階と、
各々の流体経路の流体力学的抵抗が、最も大きい流体力学的抵抗を有すると識別された流体経路の流体力学的抵抗と等しく、又はそれより大きくなるように、すべての他の流体経路を通る流体流を停止しながら、前記流体経路の前記調節可能な流量制限器を順次に且つ別々に調節することによって、前記並列流体経路の各々の流体力学的抵抗を実質的に同じになるように調節する段階と
を含む、方法。
【請求項2】
前記識別する段階及び調節する段階が自動化されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記クロマトグラフィーモジュール(M1,M2,...Mn;M1’,M2’,...Mn’)がクロマトグラフィーカラムである、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記クロマトグラフィーモジュール(M1,M2,...Mn;M1’,M2’,...Mn’)が使い捨てである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記並列流体経路(F1’,F2’,....Fn’)のすべての流体経路又は前記並列流体経路の1つを除くすべての流体経路に同じ形式のセンサ(S1,S2,...Sn)を設ける段階と、
前記並列流体経路のセンサで特徴的な流体特性を測定する段階と、
前記分離システム(31)の出口に配置されたシステムセンサ(45)で同じ特徴的な流体特性を測定する段階と、
前記並列流体経路のセンサで測定された特徴的な流体特性を前記システムセンサ(45)で測定された特徴的な流体特性と比較して、前記分離システムの性能を評価及び/又は認定する段階と
をさらに含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記分離システムの評価が滞留時間及び/又はクロマトグラフィー効率の測定を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
評価及び/又は認定すべき性能が、以下のa)〜c)の少なくとも1つを含む、請求項5又は請求項6記載の方法。
a)前記システムセンサ(45)で測定されたシステムレベルでの応答曲線の平均滞留時間との比較における、前記並列流体経路のセンサで測定された並列組立部品の各々のクロマトグラフィーモジュールでの平均滞留時間、
b)前記システムセンサ(45)で測定されたシステムレベルでの応答曲線に関するピーク幅(バンド広がり)との比較における、前記並列流体経路のセンサで測定された並列組立部品の各々のクロマトグラフィーモジュールでのピーク幅に関するクロマトグラフィー効率、及び
c)前記システムセンサ(45)で測定されたシステムレベルでの応答曲線の対称性との比較における、前記並列流体経路のセンサで測定された並列組立部品の各々のクロマトグラフィーモジュールについての応答曲線に関するピーク対称性。
【請求項8】
前記特徴的な流体特性が、流体流量、濃度、伝導率、pH、力、圧力、温度、或いは光又はエネルギーの吸収、反射、又は消衰の変化の形式のものである、請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記センサ応答の比較は、前記システムの性能を、監視又は記録する目的のために行われる、請求項5乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々が分離モジュールを備える並列流体経路を備える分離システムでの方法と、各々の並列流体経路が分離モジュールを備える複数の並列流体経路を備えるシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
並列構成でのクロマトグラフィーカラム又はカートリッジのような分離システムの使用は、コストを削減し、パイロット及びプロセススケールバイオ製造での柔軟性を増加させる可能性を有している。しかしながら、この概念に関連するいくつかの問題が存在する。これらの問題の1つは、分離効率が、並列組立部品の個々のモジュール間の不均一な流れによって低下することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1850129号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、分離モジュールの並列組立部品の分離効率を、並列組立部品内のすべての個々のモジュール間の均一な流れを達成することによって改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これは、請求項1に係る方法及び請求項10に係るシステムによって達成される。これによって、方法及びシステムは、各々の流体経路の流体力学的抵抗を、システムのすべての流体経路が実質的に同じ流体力学的抵抗を有するように調節することができる場合、達成される。
【0006】
本発明の他の目的は、有効な医薬品成分、診断学、食品、医薬品、及び、医療用具の製造及び試験で使用される品質システムの必要条件を満たし超える並列構成の分離システムを提供することである。このような品質システムの例は、製品の品質に影響を与える可能性がある製造及び試験のアスペクトを概観する「適正製造基準」すなわち「GMP」である。GMPの基本的な原理は、例えば、製造プロセスが明確に定義され、制御される必要があるということである。すべての重要なプロセスは、仕様との整合性及び準拠性を保証するために検証する必要がある。さらに、製造中、手動又は器具によって記録が行われるべきであり、これらの記録は、追跡すべきバッチの完全な履歴が理解可能でアクセス可能な形態で保持されることを可能にしなければならない。GMPは、規制機関によって、米国では米国FDAによって、例えば、1938年の食品医療品化粧品法(21USC351)のセクション501(B)の下で施行される。この規制はこれらのガイドラインを記述するために、現行の適正製造基準というフレーズを使用する。
【0007】
本発明の他の目的は、並列構成で分離システムを使用する場合に、プロセス及び洗浄バリデーションのようなGMPに属するバリデーション要件を特に満たすことである。
【0008】
本発明の他の目的は、並列構成で分離システムを使用する場合に、プロセス及び設計時適格性評価(DQ)、構成要素適格性評価(CQ)、設備据付時適格性評価(IQ)、運転時適格性評価(OQ)、性能適格性評価(PQ)のようなGMPに属する適格性評価要件を特に満たすことである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、並列構成で自動化分離システムを使用する場合に、GMPに属する文書化要件を特に満たすことと、特に、バリデーション及び適格性評価要件を満たし超えるために必要な電子データ及び記録を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる好適な実施形態は、従属請求項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による分離モジュールの並列組立部品を備える分離システムを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による発明の方法のフローチャートである。
【
図3】3つの分離モジュールを備える並列組立部品の一例に関するパルス応答図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるセンサを備える分離システムを概略的に示す図である。
【
図5】
図4に示す実施形態による一例に関するパルス応答図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による分離モジュールM1,M2,....Mnの並列組立部品3を備える分離システム1を概略的に示している。並列組立部品3は、複数の並列流体経路F1,F2,....Fnを備えている。ここでは3つの流体経路が示されているが、どのような数の並列流体経路であってもよい。各々の流体経路F1,F2......Fnは、分離モジュールM1,M2,......Mnを備えている。本発明によれば、各々の流体経路F1,F2,...Fnは、調節可能な流量制限器R1,R2,....Rnも備えている。調節可能な流量制限器R1,R2,....Rnは、完全に開くことができるべきであり、すなわち、流量制限が与えられていない位置に調節することができるべきである。好適には、流量制限器は、完全に閉じることもできるべきであり、すなわち、流れがまったく通過することができないように調節することもできるべきである。代わりに又は相補的に、流体経路を開くことができる又は閉じることができるように、各々の流体経路F1,F2,...Fnにバルブを設けることができる。分離システム1は、並列組立部品3に入る入口流体経路5と、並列組立部品3を出て行く出口流体経路7とをさらに備えている。入口流体経路5は、本実施形態では、ポンプ9と、流量計11と、圧力センサ13とを備えている。代わりに、流量計を、流量計11’として示すように、並列組立部品3の下流に配置することができる。他の代替実施形態では、分離システムのポンプ9は計量型のポンプであり、これによって、ポンプの回転数、排水容積、又は類似のものからの計算による供給流量の演繹的な決定を可能にする。この選択肢では、流量が予め決定される場合、上述した流量計11及び11’を省略してもよい。さらにシステムの他の代替実施形態は、システムポンプのための較正曲線を用い、システム内の流量計の必要性を回避することができる。
【0013】
分離モジュールは、固定床のカテゴリに属する、多孔性マトリックスでパックされたクロマトグラフィーカラムであってもよい。代わりに、分離モジュールは、拡張又は流動床カラムであってもよい。本発明が、反応器内で粒子状物質との接触によって物質を変化させる、結合する、又は改質することを目的とする、ここでは、固定床システム、並びに拡張及び流動床システムを含む、反応モジュール及びカラムにも適用できることは明らかである。
【0014】
分離モジュールは、好適には使い捨てモジュールであり、これによって、特定の用途で必要とされる容量に適合するための並列様式での安価な標準化された使い捨てモジュールの使用を可能にする。
【0015】
使い捨てシステムとも呼ばれる単一使用システムは、バイオプロセス産業でますます使用されている。例えば、クロマトグラフィーシステム、フィルタシステム、又はバイオリアクターシステムのような分離又は反応システムは、今日少なくとも部分的に使い捨てシステムとして提供されている。これは、プロセス前、プロセス及びサイクル間、又は、再使用前のプロセス後の、従来の再使用可能な設備に必要とされるような洗浄及び洗浄バリデーションの必要をなくす。使い捨てシステムにより、相互汚染は回避される。
【0016】
調節可能な制限器R1,R2,....Rnの接液部は、対応する分離モジュールそれ自身の部分であってもよく、したがって、使い捨てで低コストのものであってもよい。調節可能な制限器の制御ユニットは、例えば、ピンチバルブ原理のように、再使用可能であってもよい。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態による本発明の方法のフローチャートである。方法ステップは以下の順序で説明される。
【0018】
S1:流量制限器R1,R2,....Rnの1つを完全に開き、同時にすべての他の流量制限器を完全に閉じ、すなわち、分離モジュールM1,M2,......Mnの1つのみを通る流れが存在する。
【0019】
S2:流体力学的抵抗測定のための流量を調節する。流体力学的抵抗は、流体ラインに渡って測定された圧力低下を、このラインでの実際の流量に関係づけることによって測定され、後者は、流量計によって測定することができ、あるいは、計量ポンプの場合、又は較正曲線を使用する場合、既知であってもよい。本例では、流量は、規定された一定の流量に調節される。実際に、流量はしばしば、並列組立部品内のモジュールの数に比例して調節される。例えば、すべてのモジュールに渡って100l/hのシステム流量で並列に動作すべき5つのモジュールで構成されたシステムに関して、流体力学的抵抗の逐次同定を個々のモジュールで実行する場合と、流体力学的抵抗を引き続いて調節する場合にも、好適には100/5=20l/hの流量が個々のモジュールに適用される。しかしながら、本発明によって説明される並列組立部品の同期を保証する流体力学的抵抗の予測可能でスケーラブルな測定及び調節を可能にする限り、どのような一定の流量を適用することもできる。この条件に従うならば、異なった流量さえ、流体力学的抵抗を測定し調節するために用いることができる。好適には、実際に選択される流量は、一定で、分離モジュール及び並列組立部品に適した代表的な動作流量の範囲内であろう。
【0020】
S3:システムの、すなわち開いている流体経路のみの流体力学的抵抗を測定する。流体力学的抵抗は、好適には、特徴づけられるべき並列流体経路の上流に配置された圧力センサ(
図1の圧力センサ13)によって、開いている流体経路に渡る圧力損失を測定することによって測定される(
図1の圧力センサ13)。
【0021】
S3で測定されるシステムの流体力学的抵抗は、流量制限器が完全に開かれている場合の流体経路内の分離モジュールの流体力学的抵抗と実質的に等しい。
【0022】
S5:流量制限器R1,R2,....Rnの他の1つを完全に開き、他を完全に閉じる。
【0023】
S6:流量をS2と同じ一定レベルに保つ。流体経路及び分離モジュールに渡る圧力損失は、より広い範囲に渡る流量に線形比例し、流体力学的抵抗は、前記線形範囲内の異なった流量で測定することができる。しかしながら実際には、流量は、すべての並列ラインで抵抗を測定するために、同じ一定レベルに選択される。
【0024】
S7:システムの流体力学的抵抗、すなわち、現在完全に開いている流量制限器を備える流体経路に渡る圧力損失を測定する。それは現在、流体経路に備わる分離モジュールの流体力学的抵抗の測定である。
【0025】
S9:ステップS5〜S7を、すべての流量制限器R1,R2,....Rnが完全に開かれ、分離モジュールの各々の流量制限器の流体力学抵抗が単独で測定されるまで繰り返す。
【0026】
S11:分離モジュールM1,M2,......Mnのうち最も高い流体力学的抵抗を有するものを決定する。それは、上記S3及びS7からの測定結果を比較することによって決定される。
【0027】
S13:調節可能な流量制限器R1,R2,....Rnを、すべての並列流体経路F1,F2,....Fnが、最も高い流体力学的抵抗を有する分離モジュールの流体力学的抵抗と実質的に同じになるように調節する。目標は、すべての並列流体経路で同じ流体力学的抵抗を達成することである。実質的に同じことは、ここではまさに、正確に同じ流体力学的抵抗を達成することが困難であり、また、小さい違いは本発明によってカバーされるべきであることを明らかにするために使用されている。この違いは、10%を超えるべきではなく、好適には5%未満、最も好適には2.5%未満であるべきである。これによって、最も高い流体力学的抵抗を有する分離モジュールを備える流体経路に設けられた流量制限器は、調節される必要はないが開き続けられ、すべての他の流量制限器は、各々の流体経路の総流体力学的抵抗、すなわち分離モジュール及び流量制限器の流体力学的抵抗が、最も高い流体力学的抵抗を有する分離モジュールの流体力学的抵抗と等しくなるように調整される必要がある。調節を行う場合、流量はS2及びS6と同じ一定レベルに保たれる。調節すべき流量制限器を備える流路のみが開かれ、すべての他の流路が閉じられ、開いている流路に渡る圧力損失が圧力センサによって監視される。開いている流体経路の調節可能な制限器は、測定された圧力損失が、S3及びS5で測定されるような最も高い圧力損失(すなわち、流体力学的抵抗)を有する流体経路に関して測定された圧力損失と等しくなるまで調節される。各々の流路の流体力学的抵抗を調節し、上述したような最も高い抵抗を有する流路の特性と一致させることによって、完全な並列組立部品に渡る最終的な圧力低下は、できるだけ低く保たれ、それぞれ要求される。代わりに、もちろん、並列組立部品中の各々の流体経路で流体力学的抵抗を調節し、最も高い抵抗の流体経路での測定された最も高い流体力学的抵抗より高い流体力学的抵抗に一致させることができる。これによって、すべての流体経路間の流体力学的抵抗を同期させる全体的な目的は、依然として達成されるが、これは、動作流量でのシステムに渡るより大きい全体的な圧力低下の代償を伴うであろう。
【0028】
上述した流体力学的抵抗を測定する手順の代わりは、1つを除くすべての流体経路の流体力学的抵抗を順次測定し、加えてシステム全体の流体力学的抵抗を測定し、また最後の流体経路の流体力学的抵抗を達成するためにこれらの測定を使用する(すなわち、各々の別々に測定された流体経路の流体力学的抵抗を、システム全体の流体力学的抵抗から減算する)ことである。
【0029】
1つの圧力センサ13を使用して、流体力学的抵抗の調節中に各々及びすべての流体ラインに渡る圧力低下を決定する、
図1に記載された好適実施形態の代わりとして、圧力センサを、並列組立部品3の各々の流体経路内に、個々の分離モジュールM1,M2,...Mnの上流に設け、流体経路F1,...Fnでの圧力低下を測定することができる。しかしながら、本発明の目的は、並列組立部品を調節するために必要な計装及び設備を簡単にすることであり、したがって、システム1内の並列組立部品3の上流で単一の圧力センサを使用することが好適である。
【0030】
上述したこれらの方法ステップは、適切に自動化することができる。その場合、制御システムが設けられ、この制御システムは、a)センサ信号と、各々の流体ラインに関する圧力低下及び流量についての情報とを測定し、格納し、比較し、b)流体力学的抵抗を同期する逐次的手順を制御し、c)制限器の位置を制御する。
【0031】
上述した方法ステップを、プロセスサイクル間又はプロセスステップ間で適切に繰り返すこともできる。これは、流体経路の流体力学的抵抗が、例えば、分離モジュール内のクロマトグラフィーマトリックスの経時変化、変質、又は類似のものにより時間経過後幾分異なる場合、好適である。
【0032】
図3は、3つの分離モジュール、ここではクロマトグラフィーカラムを備える並列組立部品の一例に関するパルス応答図を示す。これは、並列組立部品の流体経路での異なった流体力学的抵抗が応答にどのように影響をおよぼすかを示す、単なる架空の例である。ここでの仮定は、すべてのカラムが(質量/カラム体積の点で)同じ目標容量と、プレート高さの点で同じクロマトグラフィー効率とを有することである。それらは、それらの個々の流体力学的抵抗によってのみ異なるものとする。第1曲線21がこの図に示されており、これは公称応答、すなわち、すべての流体経路の流体力学的抵抗がシステム中に送られるパルスに対する応答と等しい場合のシステムでの理想的な出力パルスである。第2曲線23は、それらの流体力学的抵抗に関して同期されない3つの分離モジュールの並列組立部品から結果として生じる、すべての3つのモジュールが異なった流体力学的抵抗のものである場合の、この特定の架空の例での実際の応答である。曲線23によって示される分離システムの実際の応答は、理想的な応答、曲線21から逸脱しているため、異なった流体経路の流体力学的抵抗が等しくないことを示している。第3、第4及び第5曲線25a、25b、25cは、流体経路の各々からの応答の理論的曲線である。ここで、第4及び第5曲線25b、25cが、第3曲線25aに対応する流体経路より大きい流体力学的抵抗を有する2つの流体経路に対応することは明らかであり、これは、曲線25aに関する平均滞留時間が曲線25b及び25cに関するより短いことにより明らかである。より短い滞留時間は、他の2つのラインと比較してこの流体ラインに渡るより小さい流体力学的抵抗による。
【0033】
本発明による並列組立部品での流体力学的抵抗の調節は、すべての曲線が公称パルス応答、曲線21と重なる場合、理想的には結果としてパルス応答図を生じる。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態による分離モジュールM1’,M2’,....Mn’の並列組立部品33を備える分離システム31を概略的に示す。並列組立部品33は、複数の並列流体経路F1’,F2’,....Fn’を備えている。3つの流体経路がここでは示されているが、どのような数の並列流体経路であってもよい。各々の流体経路F1’,F2’,....Fn’は、分離モジュールM1’,M2’,....Mn’を備えている。本発明によれば、各々の流体経路F1’,F2’,....Fn’は、上述したような調節可能な流量制限器R1’,R2’,....Rn’も備えている。分離システム31は、並列組立部品33に入る入口流体経路35と、並列組立部品33を離れる出口流体経路37とをさらに備えている。入口流体経路35は、本実施形態では、ポンプ39と、流量計41と、圧力センサ43とを備えている。本発明の本実施形態によれば、各々の流体経路F1’,F2’,....Fn’は、センサS1,S2,....Snも備えており、システム31の出口流体経路37は、少なくとも1つのシステムセンサ45を備えている。センサS1..Sn及びシステムセンサ45は、分離モジュールが並列で実行中で、同時に、これらの特徴が、システムセンサ45によってシステムレベルで測定できる場合、各々の個々の分離モジュールM1’,M2’,....Mn’に渡る滞留時間及び/又はクロマトグラフィー効率を測定することに適合する。これによって、システムセンサ45によって測定されるようなシステムレベルでの全体的な応答を、センサS1..Snによって測定されるような各々の分離モジュールの個々の応答と比較することができる。本発明の代わりの実施形態では、センサS1,....Snは、1つを除くすべての流体経路にのみ設けられている。最後の流体経路からのセンサ応答は、依然として、システムセンサからの応答を使用し、他のセンサ応答を減算することによって計算することができる。好適には、これらのセンサは、例えば、流量、濃度、力、圧力、温度、伝導率、pH又は吸収力、例えばUV吸収の測定に関する光の反射率又は放射のような、異なった流体特性を測定する使い捨てプローブである。
【0035】
図5は、
図4に示す実施形態による一例に関するパルス応答図を示す。本例では、3つの流体経路F1’,F2’,F3’が存在し、したがって、3つの分離モジュールM1’,M2’,M3’が存在する。51で示される曲線は、システムレベルでの、すなわち、システムセンサ45によって測定される実際の応答を示す。ここで、滞留時間は、曲線に渡る積分によって計算される平均滞留時間として測定される。単純化された手順では、滞留時間を、最大パルス応答(ピークの最大高さ)での滞留時間から差し引いてもよい。曲線中のリーディングは、並列組立部品内のいずれか1つ(以上)のモジュールが、滞留時間の点で公称応答から逸脱している可能性があること、又は、少なくとも1つのモジュールが、過度のリーディングを示す充填床効率を有する可能性があることを示唆している。しかしながら、全体的な応答信号は、単独では、個々のモジュールの状態についての詳細な情報と、曲線中のリーディングの根本的な原因とを与えない。この情報は、個々のモジュールからの信号によってのみ提供することができる。53で示される曲線は、第1流体経路F1’内の第1センサS1で測定されるような実際の応答を示す。これは、したがってシステムの他の分離モジュールM2’、M3’と並列に実行する場合の、第1分離モジュールM1’からの実際の応答である。55で示す曲線は、第2流体経路F2’中の第2センサS2で測定されるような実際の応答を示す。これは、したがってシステムの他の分離モジュールM1’、M3’と並列に実行する場合の、第2分離モジュールM2’からの実際の応答である。57で示す曲線は、第3流体経路F3’中の第3センサS3で測定されるような実際の応答を示す。これは、したがってシステムの他の分離モジュールM1’、M2’と並列に実行する場合の、第3分離モジュールM3’からの実際の応答である。ここで論じる例に関して、分離モジュールのすべては、対称形状の滞留時間曲線を有するが、1つの分離モジュール、第1分離モジュールM1’は、減少した平均滞留時間を有する。これは、このモジュールに関する流体力学的抵抗が他のモジュールに関するより小さく、このモジュールに関する実際の流量が他のモジュールに関するより大きいことを明らかにする。結果として、サブシステムレベルでの信号の評価は、GMP製造プロセスに必要な並列組立部品の効率の完全な見識を与える。個々の分離モジュールの性能に加えて、(センサ45を使用して測定される)並列組立部品の全体的に性能に関する合格基準は、並列組立部品の設置時に加えて、プロセス前及びその間中に設定及び監視することができる。3つの主要パラメータ、
a)システムレベルでの応答曲線の平均滞留時間と比較した並列組立部品の各々のモジュールに関する平均滞留時間と、
b)システムレベルでの応答曲線に関するピーク幅と比較した並列組立部品の各々のモジュールに関するピーク幅(バンド広がり)の点でのクロマトグラフィー効率と、
c)システムレベルでの応答曲線の対称性と比較した並列組立部品の各々のモジュールに関する応答曲線に関するピーク対称性とが、代表的には、クロマトグラフィーモジュールの並列組立部品に関して測定及び評価される。
【0036】
本発明で説明されている制御及び測定の目的に関するシステムの複雑さ及び費用を減少させるために、多重化技術を使用することができる。多重化技術は、例えば、制御バルブの位置に順次にアクセスし、これを変更するために、制御システムからの、又は制御システムへの共通信号処理チャンネルの組み合わされた使用を可能にする。さらに、多重化技術は、送信機又は制御システムそれぞれへのセンサ情報の順次又は同時読み出しを可能にする。本発明で説明したような流体ラインの流体力学的抵抗の順次調節中、多重化原理は、制御システムを構築するために特に好適である。分離モジュールの性能監視のための、説明したようなセンサ情報の読み出しに関して、別々のセンサ信号の順次及び周期的な読み出しとして可能になる多重化も、カラムモジュール及びシステムで監視すべきパルス応答信号のむしろ遅い変化によって適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1、31 分離システム
3、33 並列組立部品
5、35 入口流体経路
7、37 出口流体経路
9、39 ポンプ
11、11’、41 流量計
13、13’、43 圧力センサ
45 システムセンサ
F1、F2、Fn、F1’、F2’、Fn’ 流体経路
M1、M2、Mn、M1’、M2’、Mn’ 分離モジュール
R1、R2、Rn、R1’、R2’、Rn’ 流量制限器
S1、S2、Sn センサ
21、23、25a、25b、25c、51、53、55、57 曲線