特許第5956980号(P5956980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956980
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】キラル化合物の調製の方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 249/16 20060101AFI20160714BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20160714BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20160714BHJP
   C07C 251/76 20060101ALI20160714BHJP
   C07C 243/28 20060101ALI20160714BHJP
   C07C 241/04 20060101ALI20160714BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20160714BHJP
   C07D 405/14 20060101ALN20160714BHJP
   C07C 239/20 20060101ALN20160714BHJP
   C07B 49/00 20060101ALN20160714BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20160714BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160714BHJP
【FI】
   C07C249/16CSP
   A61K31/496
   A61P31/10
   C07C251/76
   C07C243/28
   C07C241/04
   C07F7/18 P
   C07F7/18 L
   !C07D405/14
   !C07C239/20
   !C07B49/00
   !C07B53/00 B
   !C07B53/00 G
   !C07B61/00 300
【請求項の数】36
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2013-510612(P2013-510612)
(86)(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公表番号】特表2013-530946(P2013-530946A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】EP2011058035
(87)【国際公開番号】WO2011144655
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年5月14日
(31)【優先権主張番号】10163212.3
(32)【優先日】2010年5月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】305008042
【氏名又は名称】サンド・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト,マルテイン
(72)【発明者】
【氏名】デ・ソーザ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ザルヒエツガー,イエルク
(72)【発明者】
【氏名】オーバーフーバー,ミヒヤエル
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−500658(JP,A)
【文献】 特開2006−008649(JP,A)
【文献】 SAKSENA,STEREOSELECTIVE GRIGNARD ADDITIONS TO N-FORMYL HYDRAZONE: A CONCISE SYNTHESIS OF NOXAFIL(R) SIDE CHAIN AND A SYNTHESIS OF NOXAFIL(R),TETRAHEDRON LETTERS,2001年 4月20日,V45 N44,P8249-8251
【文献】 CHEMISTRY EUROPEAN JOURNAL,2004年,10 (15),P3673-3684
【文献】 JOURNAL OF ORGANANIC CHEMISTRY,2004年,69 (18),P5966-5973
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラル化合物の調製の方法であって、
(1)式(I)
【化1】
(式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分である。)
のキラル化合物を提供するステップ、
(2)式(I)の化合物とHN−NH−CHOとを溶媒中で反応させることで、式(II)
【化2】
の化合物を得るステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(1)において、式(I)の化合物が、溶媒中でプロピオンアルデヒドと、式(i)
O=N−Y (i)
の化合物とを、場合によって促進剤をさらに含む触媒系の存在下において反応させることによって提供される、前記方法。
【請求項3】
プロピオンアルデヒドと式(i)の化合物との反応が、−15℃から+5℃の範囲の温度で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プロピオンアルデヒドと式(i)の化合物との反応が、触媒的量の酸の存在下で実施される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(2)において、式(I)の化合物が、分子篩の存在下で、HN−NH−CHOと反応させられる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、式(I)の化合物が、−10℃から+20℃の範囲の温度で、HN−NH−CHOと反応させられる、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップ(1)の後に、式(I)の化合物が、ステップ(2)におけるHN−NH−CHOとの反応の前にステップ(1)から得られる反応混合物から分離されない、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
(3)ステップ(2)から得られる反応混合物から溶媒抽出によって式(II)の化合物を分離させるステップをさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の方法であって、(4)溶媒中で式(II)の化合物と、残基−SiRaabbccを含むシリル化剤とを反応させることで、式(III)
【化3】
(式中、残基Raa、RbbおよびRccは同一でも異なってもよい、アルキル残基またはアリール残基である。)の化合物を得るステップをさらに含む、前記方法。
【請求項10】
シリル化剤が、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、ビストリメチルシリルアセトアミド、またはこれらの化合物の2種もしくは3種の混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(4)における反応が15℃から70℃の範囲の温度で実施される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
(5)式(II)の化合物または式(III)の化合物と、求核性残基Rを含む求核性化合物とを溶媒中で反応させることで、式(IV)
【化4】
の化合物を得るステップ
をさらに含む、請求項1から8または9から11のいずれかに記載の方法であって、該求核性残基Rがアルキル残基である、前記方法。
【請求項13】
求核性化合物が、グリニャール化合物RMgX(式中、Xは、Cl、BrおよびIからなる群から選択され、Rはアルキル残基である。)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
求核性化合物がCHCHMgClである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(5)において、式(II)の化合物または式(III)の化合物が求核性化合物と、−80℃から0℃の範囲の温度で反応させられる、請求項12から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ステップ(5)における式(II)の化合物または式(III)の化合物と求核性化合物との反応のために、トルエンまたは少なくとも1種のエーテルが溶媒として使用される、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップ(4)の後、式(III)の化合物が、ステップ(5)における求核性化合物との反応の前にステップ(4)から得られる反応混合物から分離されない、請求項12から16が請求項9から11のいずれかに従属する場合の請求項12から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
(6)式(IV)の化合物を、水素化によって還元することで、式(V)
【化5】
の化合物を得るステップ
をさらに含む、請求項12から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ステップ(6)において、水素化が、15℃から35℃の範囲の温度で、0.5バールから50バールの範囲の水素圧にて、貴金属含有触媒の存在下で実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(6)において式(IV)の化合物を還元するため、1個から4個の炭素原子を含む少なくとも1種のアルコールを含む溶媒混合物が用いられる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
式(V)の化合物を結晶化することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式(V)の化合物がMTBEおよびシクロヘキサン(CHX)の混合物から結晶化される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式(V)の化合物がクロマトグラフィーによる精製にかけられない、請求項18から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
(7)溶媒中で式(V)の化合物と、残基−SiRを含むシリル化剤とを反応させることで、式(VI)
【化6】
(式中、残基R、RおよびRは同一でも異なってもよい、アルキル残基またはアリール残基である。)
の化合物を得るステップ
をさらに含む、請求項18から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ステップ(1)において提供される式(I)のキラル化合物の分子の少なくとも95%が、式(Ia)
【化7】
の異性体として存在する、請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
式(II)
【化8】
(式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分である。)
の場合によって結晶質のキラル化合物であって、前記場合によって結晶質の化合物の分子の少なくとも95%が、式(IIa)
【化9】
の異性体として存在する、前記場合によって結晶質のキラル化合物。
【請求項27】
式(III)
【化10】
(式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分であり、残基Raa、RbbおよびRccは同一でも異なってもよい、アルキル残基またはアリール残基である。)
のキラル化合物であって、前記キラル化合物の分子の少なくとも95%が、式(IIIa)
【化11】
の異性体として存在する、前記キラル化合物。
【請求項28】
式(IV)
【化12】
(式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分であり、Rはアルキル残基である。)
のキラル化合物であって、前記キラル化合物の分子の少なくとも95%が、式(IVa)
【化13】
の異性体として存在する、前記キラル化合物。
【請求項29】
Yが、場合によって置換されているフェニル部分である、請求項26から28のいずれかに記載のキラル化合物。
【請求項30】
式(V)
【化14】
(式中、Rはアルキル残基である。)
の結晶質のキラル化合物であって、前記結晶質化合物の分子の少なくとも95%が、式(Va)
【化15】
の異性体として存在する、前記結晶質のキラル化合物。
【請求項31】
がエチルである、請求項30に記載の式(V)
【化16】
の結晶質のキラル化合物であって、前記結晶質化合物の分子の少なくとも95%が、少なくとも以下の反射
【表1】
(ここで、100%は、X線回折パターンにおける最大ピークの強度に関する。)
を含むX線回折パターンを有する式(Vb)の異性体として存在する、前記結晶質のキラル化合物。
【請求項32】
式(VI)
【化17】
(式中、Rはアルキル残基であり、残基R、RおよびRは同一でも異なってもよい、アルキル残基またはアリール残基である。)
の場合によって結晶質のキラル化合物であって、前記場合によって結晶質の化合物の分子の少なくとも95%が、式(VIa)
【化18】
の異性体として存在する、前記場合によって結晶質のキラル化合物。
【請求項33】
抗真菌剤の調製のための、請求項30から32のいずれかに記載のキラル化合物、または請求項18から24、および請求項25が請求項18から24のいずれかに従属する場合の請求項25、のいずれかに記載の方法によって得られるまたは得られたキラル化合物の使用。
【請求項34】
抗真菌剤の調製のために、キラル化合物が、アニリンまたはその誘導体およびホスゲンまたはその誘導体もしくはイソシアネートと反応させられる、請求項33に記載の使用であって、
アニリン誘導体が
【化19】
であり、ホスゲン誘導体が
【化20】
である、前記使用。
【請求項35】
請求項33または34に記載の使用であって、キラル化合物が、請求項30または31に記載のキラル化合物、または請求項18から23、および請求項25が請求項18から23のいずれかに従属している場合の請求項25、のいずれかに記載の方法によって得られるまたは得られたキラル化合物であり、Rがエチルである式(V)
【化21】
の結晶質キラル化合物であり、前記結晶質化合物の分子の少なくとも99%が式(Vb)
【化22】
の異性体として存在する前記結晶質キラル化合物である、前記使用。
【請求項36】
抗真菌剤が
【化23】
である、請求項35に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル化合物の調製の方法、特に、抗真菌剤、好ましくはポサコナゾールの調製のための中間体として使用することができるキラル化合物の調製の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポサコナゾール(CAS登録番号171228−49−2;CAS名称:2,5−アンヒドロ−1,3,4−トリデオキシ−2−C−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−[[4−[4−[4−[1−[(1S,2S)−1−エチル−2−ヒドロキシプロピル]−1,5−ジヒドロ−5−オキソ−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル]フェニル]−1−ピペラジニル]フェノキシ]メチル]−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−D−トレオ−ペンチトール)は、構造
【0003】
【化1】
で表されるトリアゾール抗真菌薬である。
【0004】
ポサコナゾールは、例えば、免疫不全患者、および/または該疾患がアンホテリシンB、フルコナゾールまたはイトラコナゾールなどの他の抗真菌剤に難治性である患者、および/またはこれらの抗真菌剤に耐容性を示さない患者において、カンジダ(Candida)種、Mucor(Mucor)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、フサリウム(Fusarium)種、またはコッシジオイデス(Coccidioides)種によって引き起こされる侵襲性真菌症を予防および/または治療するために使用される。ポサコナゾールの調製のための重要な中間体の1つは、式(V)
【0005】
【化2】
の化合物、特にR=エチルである式(V)
【0006】
【化3】
の化合物である。
【0007】
式(V)の化合物、特にR=エチルである式(V)の化合物を、とりわけ高いエナンチオマー、ジアステレオマーの純度および収率で与える方法はこれまで知られていない。下記に示されている対応するベンジル保護化合物のみが、文献上これまでに記載されている。残念ながら、R=エチルである式(V)の化合物は、標準的な水素化分解条件を使用するベンジル保護誘導体の脱保護を介して容易に到達するのが可能ではない。
【0008】
ポサコナゾールを調製するための方法における通常の中間体は、式
【0009】
【化4】
の化合物である。
【0010】
この中間体の調製の方法は、WO95/17407に開示されている。この方法の全収率はおよそ25%であり、式
【0011】
【化5】
の異性体に関するジアステレオマー純度は94−99%の範囲であり、エナンチオマー純度は出発原料の乳酸メチルエステルの品質に依存する。WO95/17407は、前記中間体の精製については全く言及していない。
【0012】
WO97/22579およびSaksenaら、Tetrahedron Lett.2004、45(44)、8249−8251は、WO95/17407に記載されている反応順序の過程において実施されるグリニャール反応のための改善された方法を開示している。シリル化ステップ、およびグリニャール反応にtert−BuMgClを添加することが、クロマトグラフィーによる追加の精製を使用することなく95%の純度を有する中間体を与えるために記載されている。しかし、本発明の発明者らは、この特定の化学的分野における高度の技術を有する技術者であるが、これらの結果を再現することはできなかった。WO97/22579およびSaksenaらの教示にいずれの妥当な修正がなされようと、該中間体は常に複雑な混合物として得られ、主張されている純度に達するため二重のクロマトグラフィーにかけなければならなかった。
【0013】
WO96/33163に開示されているさらなる方法は、上記の中間体を高い光学純度で得るために、キラル酸(例えばジベンゾイル−L−酒石酸、L−DBTA)を用いて塩形成を介する中間体の立体化学的な分割、および得られたジアステレオマー塩の結晶化を伴う。WO97/33178に開示されているまた別の方法は、所望の異性体に関して0−94%の選択率を有する高価な試薬での還元によってキラル中心を導入するために、1個のヒドラジン窒素の保護を要する。WO96/33163またはWO97/33178にも、立体化学的な分割を除いて生成物の精製は記載されていない。
【0014】
従来技術のこれらの方法は全て、重大な欠点を有する。
【0015】
第一に、記載されている手法は共通して、中間体ヒドラジドの合成中および抗真菌剤の後続の調製のための両方において、OH保護基を要する。さらに、合成経路に沿う厳しい反応条件は、シリルエーテルおよびエステルを含めて広く使用される保護基には禁止的であると見なされることがある。エーテルだけが十分安定であると考えられており、これが、全ての具体的な例においてベンジルエーテルのみが一貫して開示されている理由であり得る。
【0016】
第二に、従来技術のこれらの方法のいずれもが、式(V)の非保護化合物の直接的調製、および例えば、後続の反応に合わせた所望の保護基を用いる式(V)の化合物のOH基の後続の保護を不可能にしている。
【0017】
第三に、上述されている通り、クロマトグラフィーまたは立体化学的な分割のいずれか一方による油性生成物の入念な精製が、従来技術の反応経路の不十分な化学選択性および立体選択性を釣り合わせるために必要とされる。
【0018】
第四に、大過剰の高価な試薬を含めて、従来技術の反応経路に対する複数の酸化状態調整は、個別ステップの数を増加し、全収率を低下させる。これらの短所は、式(V)および特にR=エチルである式(V)、
【0019】
【化6】
ならびにそれらのそれぞれに保護されている誘導体の所望のヒドラジドの収率を大幅に減少させる。同時に、多量の所望でない廃棄物が得られ、従来技術の方法をまたさらに不利にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第95/17407号
【特許文献2】国際公開第97/22579号
【特許文献3】国際公開第96/33163号
【特許文献4】国際公開第97/33178号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Saksenaら、Tetrahedron Lett.2004、45(44)、8249−8251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、キラルヒドラジドの生成の有効な方法、特に、アゾール抗真菌剤、特にポサコナゾールの生成のための中間体として有利に使用することができるR1=エチルである式(V)
【0023】
【化7】
の化合物の生成のための有効な方法を提供することが、本発明の目的であった。
【0024】
式(V)および特にR=エチルである式(V)
【0025】
【化8】
の結晶質化合物の調製、およびさらに、OH基で適切に保護されているこの結晶質化合物に基づく化合物のための有効な方法を提供することが、本発明のさらなる目的であった。
【0026】
このような前記結晶質化合物、ならびに前記適切に保護された化合物を提供することが、本発明のさらなる目的であった。
【0027】
驚くべきことに、上記で考察されている目的は、第1段階において、Yが場合によって置換されているアリール部分である式
【0028】
【化9】
の化合物が提供され、式
【0029】
【化10】
のキラル化合物が得られる適当な溶媒中でHN−NH−CHOと反応させる方法によって満たされることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0030】
(発明の要旨)
本発明は、
(1)式(I)
【0031】
【化11】
(式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分、好ましくは場合によって置換されているフェニル部分、より好ましくは非置換フェニルである。)
のキラル化合物を提供するステップ、
(2)式(I)の化合物とHN−NH−CHOとを溶媒中で反応させることで、式(II)
【0032】
【化12】
に従った化合物を得るステップ
を含む、キラル化合物の調製の方法に関する。
【0033】
さらに、本発明は、
(1)式(I)
【0034】
【化13】
(式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分、好ましくは場合によって置換されているフェニル部分、より好ましくは非置換フェニルである。)
のキラル化合物を提供するステップ、
(2)式(I)の化合物とHN−NH−CHOとを溶媒中で反応させることで、式(II)
【0035】
【化14】
に従った化合物を得るステップ、
(3)(3)の前に溶媒交換が好ましくは実施される、溶媒抽出によって(2)から得られた反応混合物から式(II)の化合物を分離させるステップ、
(4)溶媒中で式(II)の化合物と、残基−SiRaabbccを含むシリル化剤とを反応させることで、式(III)
【0036】
【化15】
(式中、残基Raa、RbbおよびRccは同一でも異なってもよく、好ましくはアルキル残基またはアリール残基であり、より好ましくは、1個から6個の炭素原子、好ましくは1個から4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル残基である。)
の化合物を得るステップ、
(5)式(II)の化合物または式(III)の化合物と、求核性残基Rを含む求核性化合物とを溶媒中で反応させることで、式(IV)
【0037】
【化16】
の化合物を得るステップ、
(6)式(IV)の化合物を、好ましくは水素化によって還元することで、式(V)
【0038】
【化17】
の化合物を得るステップ、
(7)溶媒中で式(V)の化合物と、残基−SiRを含むシリル化剤とを場合によって反応させることで、式(VI)
【0039】
【化18】
(式中、残基R、RおよびRは同一でも異なってもよく、好ましくはアルキル残基またはアリール残基である。)
の化合物を得るステップ
を含むキラル化合物の調製の方法に関する。
【0040】
本発明は、本発明の方法によって得られるまたは得られたキラル化合物にさらに関する。
【0041】
特に、本発明は、好ましくは式(V)に従った結晶質キラル化合物に関し、式中、Rは好ましくは、1個から6個の炭素原子、より好ましくは1個から4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を好ましくは有するアルキル残基であり、Rは特にエチルであり、ここで、前記結晶質化合物の分子の好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%が、式(Va)
【0042】
【化19】
の異性体として、特に式(Vb)
【0043】
【化20】
の異性体として存在する。
【0044】
さらに、本発明は、抗真菌剤の調製、特にポサコナゾールの調製のための、本発明によるキラル化合物、特に式(Vb)の化合物の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施例3に従って得られる通りの式(V)の化合物の赤外スペクトル(IR)を示すグラフである。図1において、%における透過率はy軸上に表示されており、一方、波数cm−1はx軸上に表示されている。以下のIRピークは、特に、3341、3298、2970、2881、1674、1497、1447、1319、1125、1071、945、910、876、775および650+/−2cm−1で見ることができる。
図2】本発明の実施例3に従って得られる通りの式(V)の化合物のX線回折図形を示すグラフである。図2において、300秒当たりカウントされる通りに測定された強度(線形スケール)はy軸上に表示されており、一方、2シータ値として度で表される位置はx軸上に表示されている。以下のXRDピークは、特に、9.0、13.9、17.4、18.1、20.0、20.7、23.4、24.6、27.5および29.2+/−0.2°2−シータで見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な記述
上述されている通り、本発明は、
(1)式(I)
【0047】
【化21】
(式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分、好ましくは場合によって置換されているフェニル部分、より好ましくは非置換フェニルである。)
のキラル化合物を提供するステップ、
(2)式(I)の化合物とHN−NH−CHOとを溶媒中で反応させることで、式(II)
【0048】
【化22】
に従った化合物を得るステップ
を含むキラル化合物の調製の方法に関する。
【0049】
ステップ(1)
本発明のステップ(1)に従って、式(I)の化合物が提供され、これを、ステップ(2)においてHN−NH−CHOと適当な溶媒中で反応させる。
【0050】
一般に、式(I)の化合物を提供することに関する限り、特定の制限はない。特に、式(I)の化合物の調製のためのあらゆる想定可能な方法が実施され得る。本発明の好ましい実施形態によると、高いエナンチオ選択性を有する式(I)の化合物の調製を可能にするような方法が好ましい。本発明のまたさらに好ましい実施形態によると、(1)において提供される式(I)のキラル化合物の分子の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%が、式(Ia)
【0051】
【化23】
の異性体として存在する化合物(I)の調製を可能にするような方法が好ましい。
【0052】
Y=フェニルに関して、優れたエナンチオ選択性を有する有機触媒反応における式(I)の化合物の調製が知られている。Brownら、J.Chem.Soc.2003、125(36)、10808−10809およびCordovaら、Chem.Eur.J.2004、10(15)、3673−3684;ならびにHayashiらJ.Org.Chem.2005、69(18)、5966−5973に参照されている。
【0053】
好ましい実施形態によると、式(I)の化合物は、本発明に従って、適当な溶媒中でプロピオンアルデヒドと、式(i)
O=N−Y (i)
の化合物とを反応させることによって提供される。
【0054】
式(i)の化合物の残基Yは、場合によって置換されているアリール部分、好ましくは場合によって置換されているフェニル部分、より好ましくは非置換フェニルである。「アリール部分」という用語は、本発明との関連で使用される場合、フェニルまたはナフチルなどの炭素環式芳香族基に関する。「置換されているアリール部分」および「置換されているフェニル」という用語は、それぞれ、本発明との関連で使用される場合、それぞれ、ハロ、アルキル、およびCアルコキシまたはCアルコキシまたはCアルコキシまたはCアルコキシまたはCアルコキシまたはCアルコキシからなる群から好ましくは選択される1個、2個または3個の置換基を好ましくは保有するようなアリール部分およびフェニルに関する。「アルキル」という用語は、本発明との関連で使用される場合、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を好ましくは有する直鎖または分枝のアルキル部分に関する。「ハロ」という用語は、本発明との関連において使用される場合、特に塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子に関する。
【0055】
したがって、特に、式(i)の化合物の残基Yはベンジル部分ではなく、特にアルキルアリール部分ではない。「アルキルアリール」部分という用語は、本発明との関連で使用される場合、少なくとも1つのアリール部分によって置換されているアルキル部分に関する。例示の目的で、ベンジル部分は、アルキルが1つのフェニル部分によって置換されているメチルであるアルキルアリール部分である。
【0056】
このようにして、本発明の好ましい実施形態によると、式(i)の化合物はニトロソベンゼンである。
【0057】
プロピオンアルデヒドと式(i)の化合物との反応に関する限り、特定の制限は存在しないが、ただし、式(I)の化合物、好ましくは、(1)において提供される式(I)のキラル化合物の分子の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%が、式(Ia)
【0058】
【化24】
の異性体として存在する化合物(I)が得られるという条件である。
【0059】
好ましくは、少なくとも1種、好ましくは正確に1種の有機触媒が、式(I)の化合物を提供するための反応において用いられる。より好ましくは、プロリン(Pro)、いっそう好ましくはD−プロリン(D−Pro)
【0060】
【化25】
が、有機触媒として用いられる。
【0061】
本発明の場合による実施形態によると、少なくとも1種の適当な促進剤が、ステップ(1)における反応、好ましくは有機触媒反応を促進するために用いられ得る。あらゆる想定可能な促進剤が使用できる一方で、本発明との関連で優先されるのは尿素誘導体であり、1−(2−ジメチルアミノ−エチル)−3−フェニル尿素がとりわけ好ましい。
【0062】
この反応を酸の存在下で実施することはまたさらに好ましいことが見出された。一般に、特定の制限が存在しないことがある一方で、優先されるのは、Bronstedt酸、特に有機Bronstedt酸である。なおさらに好ましい実施形態によると、酢酸もしくはプロピオン酸またはこれらの酸の混合物が用いられる。用いられる酸の量に関する限り、特定の制限は存在しない。触媒的量が好ましい。用いられる有機触媒の量と比較して、より低い量における酸を用いるのがまたさらに好ましい。想定可能な実施形態によると、および式(i)の化合物の1当量に対して、有機触媒の量は0.15当量から0.5当量の範囲、より好ましくは0.2当量から0.4当量の範囲、より好ましくは0.25当量から0.35当量の範囲であってよく、酸の量は0.01当量から0.1当量の範囲、より好ましくは0.02当量から0.09当量の範囲、より好ましくは0.03当量から0.08当量の範囲であってよい。
【0063】
ステップ(1)に従った反応が実施される適当な溶媒の化学的性質は、特定の出発原料、用いられる触媒(単数または複数)、用いられる場合の酸(単数または複数)、および/または用いられる場合の促進剤の存在(単数または複数)に主に依存する。1種の溶媒または2種以上の溶媒の混合物が想定可能である。プロピオンアルデヒドがニトロソベンゼンとD−Proの存在下ならびに酢酸および/またはプロピオン酸の存在下で反応させられる本発明の好ましい実施形態によると、該反応は好ましくは溶媒としてジクロロメタン(DCM)中で実施される。
【0064】
ステップ(1)に従った反応が実施される温度は、特定の出発原料、用いられる触媒(単数または複数)、用いられる場合の酸(単数または複数)、および/または用いられる場合の促進剤の存在(単数または複数)に主に依存する。特に、プロピオンアルデヒドがニトロソベンゼンとD−Proの存在下ならびに酢酸および/またはプロピオン酸の存在下にて溶媒としてDCM中で反応させられる本発明の好ましい実施形態によると、該反応は−15℃から+5℃、好ましくは−12℃から+3℃、より好ましくは−10℃から0℃の範囲の温度で好ましくは実施される。
【0065】
式(I)の化合物を提供するための反応が実施される雰囲気は、特定の出発原料、使用される溶媒(単数または複数)、用いられる触媒(単数または複数)、用いられる場合の酸(単数または複数)、および/または用いられる場合の促進剤の存在(単数または複数)に一般に依存する。プロピオンアルデヒドがニトロソベンゼンとD−Proの存在下で反応させられる本発明の好ましい実施形態によると、該反応はN雰囲気中など、不活性または本質的に不活性な雰囲気下で実施される。
【0066】
このようにして、ステップ(1)において実施される反応から、式(I)の化合物は、少なくとも1種の溶媒、好ましくはDCM中で好ましくは得られ、ここで、(1)において提供される式(I)のキラル化合物の分子の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%は、式(Ia)
【0067】
【化26】
の異性体として存在する。
【0068】
ステップ(2)
一般に、ステップ(1)から得られる反応混合物から式(I)の化合物を分離することは想定可能である。しかし、本発明の特に好ましい実施形態によると、こうした分離は必要ない。したがって、本発明は、(1)の後に、式(I)の化合物が(2)におけるHN−NH−CHOとの反応の前に(1)から得られる反応混合物から分離されない上記の方法にも関する。
【0069】
このようにして、想定可能な実施形態によると、ステップ(1)から得られる反応混合物は、このようにステップ(2)において用いることができる。別法として、該反応混合物は少なくとも1種の適当な溶媒でさらに希釈することができ、または所望であれば、適当な量の溶媒は適当な濃縮によって反応混合物から除去することができる。
【0070】
本発明のステップ(2)に従って、式(I)の化合物は、HN−NH−CHOと溶媒中で反応させられる。例えば、ステップ(1)から得られる反応混合物が、ステップ(1)から得られる反応混合物中に含有されている溶媒と異なる溶媒中に含有されているHN−NH−CHO(ホルミルヒドラジン)と添加混合されるならば、この溶媒は溶媒混合物であり得る。本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、ステップ(1)から得られる反応混合物に含有される溶媒は、ステップ(2)における反応を実施するために使用されるのと同じ溶媒である。特に、この溶媒はDCMである。
【0071】
ステップ(1)における反応に関して、ステップ(2)に従った反応が実施される温度は、互いに反応させられる特定の化合物、用いられる触媒(単数または複数)、用いられる場合の酸(単数または複数)、および/または用いられる場合の促進剤の存在(単数または複数)に主に依存する。特に、プロピオンアルデヒドがニトロソベンゼンとD−Proの存在下ならびに酢酸および/またはプロピオン酸の存在下にて溶媒としてDCM中でステップ(1)において反応させられる本発明の好ましい実施形態によると、その上ステップ(2)における反応が溶媒としてDCM中で実施されるならば、ステップ(2)における反応は、−10℃から+20℃、好ましくは−5℃から+5℃の範囲の温度で好ましくは実施される。
【0072】
好ましくは、ステップ(2)における反応は、少なくとも1種の分子篩の存在下で実施される。細孔についての少なくとも1種の分子篩の特徴は、特定の必要に応じさせることができる。しかし、DIN66131に従って決定され、0.3nmから0.5nm(ナノメートル;3オングストロームから5オングストローム)、好ましくは0.35nmから0.45nm(3.5オングストロームから4.5オングストローム)の範囲の孔径を有するようなシーブが好ましく、約0.4nm(4オングストローム)の孔径がとりわけ好ましい。
【0073】
式(II)の化合物を提供するためのステップ(2)における反応が実施される雰囲気は、やはり、互いに反応させられる特定の化合物、使用される溶媒(単数または複数)、用いられる触媒(単数または複数)、用いられる場合の酸(単数または複数)、および/または用いられる場合の促進剤の存在(単数または複数)に一般には依存する。プロピオンアルデヒドがニトロソベンゼンとD−Proの存在下ならびに酢酸および/またはプロピオン酸の存在下にて溶媒としてDCM中でステップ(1)において反応させられる本発明の好ましい実施形態によると、その上ステップ(2)における反応が溶媒としてDCM中で実施されるならば、ステップ(2)における反応はN雰囲気中など、不活性または本質的に不活性な囲気下で実施される。
【0074】
ステップ(3)
ステップ(2)から得られる反応混合物から、式(II)の化合物は分離することができる。こうした分離がどのように実施されるかについて特定の制限がない一方で、溶媒抽出は、本発明による好ましい方法である。こうした抽出の前に、適当な溶媒交換が好ましくは実施される。溶媒交換に関する限り、式(II)の化合物がステップ(2)に従って、以降に詳しく記載されている反応ステップ(4)など本発明の好ましいさらなる段階に適当である溶媒または2種以上の溶媒の混合物によって得られる溶媒を交換することがとりわけ好ましい。溶媒の特定の型は、式(II)の特定の化合物および後続の反応の特定の型に依存する。後続の反応がステップ(4)において下に記載されている反応である場合、および式(II)の化合物がステップ(3)に用いられ、好ましくはDCM中に含有されている場合、MTBE(メチル−tert−ブチルエーテル)、酢酸エチル、またはMTBEおよび酢酸エチルの混合物によってこの溶媒を交換することが好ましい。とりわけ好ましいのはMTBEである。
【0075】
本発明によると、好ましい抽出剤は、好ましくは少なくとも1種の適当な塩を含有する水、有機エーテル、有機エステル、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここで、前記塩は、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび塩化アンモニウムからなる群から好ましくは選択される。より好ましくは、該抽出剤は、少なくとも1種の適当な塩を含有する水、好ましくは1種の適当な塩を含有する水、より好ましくは塩化ナトリウムを含有する水である。水に含有される塩の量に関する限り、通常の実施形態は、10重量%から30重量%の塩を含有する水溶液である。
【0076】
さらに、ステップ(3)から得られる式(II)の化合物を適切に結晶化することが想定可能である。こうした結晶化に関する限り特定の制限は存在しないが、ただし、式(II)の化合物の少なくとも一部が結晶化するという条件である。
【0077】
したがって、本発明は、このような式(II)
【0078】
【化27】
の場合によって結晶質の化合物にも関し、式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分、好ましくは場合によって置換されているフェニル部分、より好ましくは非置換フェニルであり、ここで、前記場合によって結晶質の化合物の分子の好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%は、式(IIa)
【0079】
【化28】
の異性体として存在する。
【0080】
特に、本発明は、Y=フェニルである式(II)の場合によって結晶質の化合物に関し、ここで、前記場合によって結晶質の化合物の分子の少なくとも99%は、式(IIb)
【0081】
【化29】
の異性体として存在する。
【0082】
本発明の方法の利点は、ステップ(1)、(2)および(3)が単一の反応槽内で実施することができるという事実において見られる。反応混合物の複雑な移動は必要なく、特に、単純化された大規模な生成を可能にする。
【0083】
ステップ(4)
上述されている通り、塩水溶液が抽出剤として用いられ得る。したがって、後続の反応ステップの前に、溶媒抽出から得られる混合物から残留水を除去することが望ましいことがある。こうした水除去のため、少なくとも1種の分子篩を用いることが本発明によると可能である。細孔についての少なくとも1種の分子篩の特徴は、特定の必要に応じさせることができる。しかし、DIN66131に従って決定され、0.3nmから0.5nm(3オングストロームから5オングストローム)、好ましくは0.35nmから0.45nm(3.5オングストロームから4.5オングストローム)の範囲の孔径を有するようなシーブが好ましく、約0.4nm(4オングストローム)の孔径がとりわけ好ましい。生じる混合物の含水量は、最も好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%である。
【0084】
本発明の好ましい実施形態によると、好ましくは上記した通りの溶媒に含有されている式(II)の化合物、いっそう好ましくは上記の溶媒交換の後の、特にMTBE中に含有されている式(II)の化合物、および場合によって水の残留痕跡量の除去の後の式(II)の化合物は、ステップ(4)においてシリル化剤と反応させる。このようにして、この反応のために使用される溶媒は、最も好ましくはMTBEである。ステップ(4)におけるこの反応から、式(III)
【0085】
【化30】
の化合物が得られ、式中、残基Raa、RbbおよびRccは同一でも異なってもよく、好ましくはアルキル残基またはアリール残基であり、より好ましくは、1個から6個の炭素原子、好ましくは1個から4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル残基である。
【0086】
「アリール残基」という用語は、本発明との関連で使用される場合、フェニルまたはナフチルなどの炭素環式芳香族基に関する。「アルキル残基」という用語は、本発明との関連で使用される場合、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を好ましくは有する直鎖または分枝のアルキル部分に関する。好ましくは、残基Raa、RbbおよびRccは同一でも異なってもよく、アルキル残基である。より好ましくは、アルキル残基は、メチル、エチル、プロピルまたはブチルなど、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキル残基は1個または2個の炭素原子を有する。いっそう好ましくは、残基Raa、RbbおよびRccは同一であり、特にメチルである。
【0087】
このようなシリル化剤に関する限り、特別な制限は存在しないが、ただし、式(II)の化合物の少なくとも一部がシリル化されることで式(III)の化合物が得られるという条件である。Raa、RbbおよびRccがメチルである本発明の最も好ましい実施形態に関して、最も好ましいシリル化剤は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、ビストリメチルシリルアセトアミド、またはこれらの化合物の2種もしくは3種の混合物であり、好ましくはビストリメチルシリルアセトアミドである。
【0088】
ステップ(4)に従った反応が実施される温度は、式(III)の化合物の特定の性質、シリル化剤の特定の性質、および/または溶媒に主に依存する。本発明による好ましい温度は、15℃から70℃の範囲である。
【0089】
得られる反応混合物から、ステップ(4)から得られる式(III)の化合物を適切に結晶化することが想定可能である。こうした結晶化に関する限り特定の制限は存在しないが、ただし、式(III)の化合物の少なくとも一部が結晶化するという条件である。
【0090】
したがって、本発明は、想定可能な実施形態によると、少なくとも部分的に結晶質であってよい
【0091】
【化31】
のような式(III)の化合物にも関し、式中、Yは、場合によって置換されているアリール部分、好ましくは場合によって置換されているフェニル部分、より好ましくは非置換フェニルであり、式中、残基Raa、RbbおよびRccは同一でも異なってもよく、好ましくはアルキル残基またはアリール残基であり、より好ましくは、1個から6個の炭素原子、好ましくは1個から4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル残基であり、特にメチルであり、ここで、前記キラル化合物の分子の好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%は、式(IIIa)
【0092】
【化32】
の異性体として存在する。
【0093】
特に、本発明は、Y=フェニルである式(III)の化合物に関し、これは、想定可能な実施形態によると、少なくとも部分的に結晶質であってよく、ここで、前記場合によって結晶質の化合物の分子の少なくとも99%は、式(IIIb)
【0094】
【化33】
の異性体として存在する。
【0095】
上述されている通り、本発明のステップ(4)に従って、式(III)の化合物は、最も好ましくはMTBEである溶媒に含有されて得られる。この実施形態によると、式(III)の化合物は結晶化されない。本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、この反応混合物は、さらに精製することなく、以降に詳しく記載されているさらなるステップ(5)にかけられる。
【0096】
したがって、本発明は、(4)の後に、式(III)の化合物が、(5)における求核性化合物との反応の前に(4)から得られる反応混合物から分離されない上記の方法にも関する。
【0097】
ステップ(5)
本発明のこうした好ましいステップ(5)に従って、式(III)の化合物は、求核性残基Rを含む求核性化合物と溶媒中で反応させることで、式(IV)
【0098】
【化34】
の化合物を得る。
【0099】
本発明の別の想定可能な方法に従っても、上文に詳しく記載されている通りの式(II)の化合物は、求核性残基Rを含む求核性化合物と溶媒中で反応させることで、式(IV)
【0100】
【化35】
の化合物を得ることができる。
【0101】
この別の想定可能な方法に従って、本発明のステップ(4)を実施する必要がないことがある。
【0102】
この求核性化合物と式(III)の化合物または式(II)の化合物との反応が式(IV)の化合物を得ることを可能にするという条件で、求核性残基Rを含む求核性化合物に関係するかぎり特定の制限がない一方、この求核性化合物は好ましくはグリニャール化合物RMgXであり、式中、XはCl、BrおよびIからなる群から好ましくは選択される。好ましくは、残基Rは、1個から6個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子、より好ましくは1個から4個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個または4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子、特に2個の炭素原子を好ましくは有する直鎖または分枝のアルキル残基である。
【0103】
したがって、本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、求核性残基Rを含む求核性化合物は、グリニャール化合物CHCHMgXであり、式中、XはCl、BrおよびIからなる群から選択される。特に、求核性残基Rを含む求核性化合物はCHCHMgClである。
【0104】
本発明のステップ(5)の反応を実施するために使用される溶媒(単数または複数)が選択されることで、式(III)の化合物または式(II)の化合物の特定の性質、および求核性化合物の特定の性質の要求を満たすことができる。好ましくは、本発明のステップ(5)の反応に使用される溶媒はトルエンまたは少なくとも1種のエーテルであり、ここでエーテルは、テトラヒドロフラン(THF)、MTBE、ならびにTHFおよびMTBEの混合物からなる群から好ましくは選択される。
【0105】
ステップ(5)に従った反応が実施される温度は、式(III)の化合物もしくは式(II)の化合物の特定の性質、求核性化合物の特定の性質、および/または使用される溶媒に主に依存する。本発明による好ましい温度は、−80℃から0℃、好ましくは−75℃から−10℃、より好ましくは−70℃から−25℃の範囲である。
【0106】
本発明の方法の利点は、ステップ(4)および(5)が単一の反応槽内で実施することができるという事実において見て取れることである。反応混合物の複雑な移動は必要なく、特に、単純化された大規模な生成を可能にする。
【0107】
さらに、本発明によると、グリニャール試薬に対してより反応性であることが驚くべきことに判明した式(II)の新規な化合物および式(III)の新規な化合物も提供される。このようにして、上に記載されているグリニャール反応は、穏和な条件下にて本質的に定量的なジアステレオ選択性で実施することができる。
【0108】
このステップ(5)から得られる反応混合物から、式(IV)の化合物は、好ましくは水またはアルコールなどの適切な試薬で反応物をクエンチした後で分離することができる。好ましくはアルコールがクエンチするために使用され、より好ましくはメタノールが使用される。こうした分離がどのように実施されるかについて特定の制限がない一方で、溶媒抽出は本発明による好ましい方法である。こうした抽出の前に、適当な溶媒交換が実施されることがある。本発明によると、好ましい抽出剤は、少なくとも1種の適当な塩を好ましくは含有する水、有機エーテル、有機エステル、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここで、前記塩は塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび塩化アンモニウムからなる群から好ましくは選択される。より好ましくは、抽出剤は、少なくとも1種の適当な塩を含有する水、好ましくは1種の適当な塩を含有する水、より好ましくは塩化アンモニウムまたは塩化ナトリウムを含有する水である。水に含有されている塩の量に関する限り、通常の実施形態は、10重量%から30重量%の塩を含有する水溶液である。
【0109】
得られる反応混合物から、ステップ(5)から得られる式(IV)の化合物を適切に結晶化することは想定可能である。こうした結晶化に関する限り特定の制限は存在しないが、ただし、式(IV)の化合物の少なくとも一部が結晶化するという条件である。
【0110】
したがって、本発明は、このような式(IV)
【0111】
【化36】
の化合物にも関し、これは、想定可能な実施形態によると、少なくとも部分的に結晶質であってよく、式中Yは、場合によって置換されているアリール部分、好ましくは場合によって置換されているフェニル部分、より好ましくは非置換フェニルであり、式中Rは、好ましくは、1個から6個の炭素原子、より好ましくは1個から4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を好ましくは有するアルキル残基であり、Rは特にエチルであり、ここで、前記キラル化合物の分子の好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%は、式(IVa)
【0112】
【化37】
の異性体として存在する。
【0113】
特に、本発明は、Y=フェニルおよびR=エチルである式(IV)の化合物に関し、これは、想定可能な実施形態によると、少なくとも部分的に結晶質であってよく、ここで、前記場合によって結晶質の化合物の分子の少なくとも99%は、式(IVb)
【0114】
【化38】
の異性体として存在する。
【0115】
上述されている通り、本発明のステップ(5)に従って、式(IV)の化合物は、場合によって溶媒抽出の後で、式(III)の化合物と求核性化合物との反応のために使用される溶媒または溶媒混合物に含有されて得られる。この実施形態によると、式(IV)の化合物は結晶化されない。本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、この反応混合物は、さらに精製することなく、以降に詳しく記載されているさらなるステップ(6)にかけられる。ステップ(4)から得られ、ステップ(5)にかけられる反応混合物との関連ですでに示唆されている通り、ここでも、クロマトグラフィーによる精製などさらなる入念および退屈な精製は必要なく、本発明の方法を、大規模な生成にとって極めて端的および極めて有利な状態にすることが留意される。
【0116】
ステップ(6)
本発明の好ましい実施形態によると、本発明の方法は、
(6)式(IV)の化合物を、好ましくは水素化によって還元することで、式(V)
【0117】
【化39】
の化合物を得るステップ
をさらに含む。
【0118】
式(V)の化合物の還元に関する限り、水素化は好ましい方法である。化合物(V)の特定の化学的性質および使用される溶媒に依存性である一方で、本発明による水素化は、15℃から35℃、好ましくは20℃から30℃の範囲の温度で好ましくは実施される。通常の温度は、20℃から25℃の範囲であってよい。式(IV)の化合物が還元される水素圧は、好ましくは、0.5バールから50バール、好ましくは1バールから20バール、より好ましくは1バールから10バールの範囲である。通常の水素圧は、例えば、1バールから5バールまたは1バールから2バールの範囲である。
【0119】
通常、適当な水素化触媒が用いられる。一般に、同種の触媒が想定可能である一方で、異種の触媒が好ましい。異種の触媒として、PSEの第8亜族、第9亜族、第10亜族、第11亜族および第12亜族の元素が想定可能である。例として、Pt、Rh、Ru、Co、Fe、Cu(銅クロマイトの形態においてなど)、Zn(亜鉛クロマイトの形態においてなど)、PdまたはNiを挙げることができる。本発明によると、Pdがとりわけ好ましい。これらの元素は適切に担持することができる。例えば、より良好な元素分布、およびより大きな表面積を可能にするような担持体を挙げることができる。Pdに関する限り特に、炭素が好ましい担持体である。このようにして、炭素担持パラジウムは、本明細書においてPd/Cと称され、本発明によるとりわけ好ましい触媒である。
【0120】
したがって、本発明は、(6)において水素化が、15℃から35℃、好ましくは20℃から30℃の範囲の温度で、0.5バールから50バール、好ましくは1バールから20バール、より好ましくは1バールから10バールの範囲の水素圧にて、貴金属含有触媒、好ましくはパラジウム含有触媒、最も好ましくはPd/C触媒の存在下で実施される上記の方法にも関する。
【0121】
還元、好ましくは水素化が実施される溶媒に関する限り、特定の制限は存在しないが、ただし、式(IV)の化合物の少なくとも一部が還元されるという条件である。本発明の方法において好ましくは、少なくとも1種のアルコール、好ましくは1個から4個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個または4個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコールを含む溶媒混合物が用いられる。より好ましくは、溶媒混合物は、1個から3個の炭素原子、すなわち1個、2個または3個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコールを含む。より好ましくは、溶媒混合物は、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールを含む。最も好ましいアルコールはメタノールである。
【0122】
少なくとも1種のアルコール以外、最も好ましくはメタノール以外、溶媒混合物は、アルコールではない少なくとも1種のさらなる溶媒、好ましくはTHF、トルエン、MTBE、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるさらなる溶媒をさらに含むことができる。
【0123】
このようにして、本発明のステップ(6)に従った還元、好ましくは水素化のために用いられる本発明の好ましい溶媒混合物は、1個から4個の炭素原を有する子少なくとも1種のアルコール、好ましくはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコール、ならびにTHF、トルエン、MTBE、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含み、より好ましくは本質的にこれらのものからなる。本発明のステップ(6)に従った還元、好ましくは水素化のために用いられる本発明のとりわけ好ましい溶媒混合物は、メタノール、ならびにTHF、トルエンおよびMTBEからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒、特にMTBEを含み、より好ましくは本質的にこれらのものからなる。
【0124】
上記の還元から得られる反応混合物から、還元触媒は、濾過など少なくとも1種の適当な方法によって好ましくは分離される。このようにして分離された触媒は次いで、好ましくは還元反応のために使用されるのと同じ溶媒または溶媒混合物で、より好ましくはステップ(6)において使用されるアルコールで少なくとも1回洗浄することができる。
【0125】
一般に、本発明の想定可能な実施形態によると、ステップ(6)から最も好ましくは触媒の分離後に得られる式(V)の化合物は、還元反応および場合によって触媒の洗浄のために使用される溶媒または溶媒混合物中に含有されたまま、場合によるさらなる反応のために使用することができる。
【0126】
驚くべきことに、本発明のステップ(6)に従った還元的切断は、結晶質化合物としての式(V)の化合物をもたらすことが見出された。したがって、本発明の好ましい実施形態によると、式(V)の化合物は結晶化される。したがって、本発明は、式(V)の化合物を結晶化することをさらに含む上記の方法に関する。これに関連して、従来技術の教示、特に、R=エチルである式(V)の非結晶質ベンジル保護化合物が開示されているWO96/33163の教示によると、式(V)の化合物は結晶質化合物として到達可能ではないと考えられていることが留意される。このようにして、本発明は、本発明のとりわけ好ましい実施形態によると式(Va)の異性体に関して少なくとも99%の立体化学純度を有する結晶形態における式(V)の化合物の調製を可能にする方法を初めて提供するはずであり、ここで、前記立体化学純度は、本発明の実施例3に記載されている通りに決定される。さらに、上記されている新規な化合物を伴う新規な方法は、出発原料ニトロソベンゼンに対して約30%から40%である、式(V)の好ましくは結晶質の化合物の非常に良好な全収率をもたらす。
【0127】
したがって、本発明は、式(V)
【0128】
【化40】
による、好ましくは特に結晶質キラル化合物にも関し、式中、Rは好ましくは、1個から6個の炭素原子、より好ましくは1個から4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を好ましくは有するアルキル残基であり、Rは特にエチルであり、ここで、前記結晶質化合物の分子の好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%は、式(Va)
【0129】
【化41】
の異性体として、特に式(Vb)
【0130】
【化42】
の異性体として存在する。
【0131】
特に、本発明は、R=エチルである式(V)
【0132】
【化43】
の結晶質化合物に関し、ここで、前記結晶質化合物の分子の好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%は、式(Vb)の異性体として存在し、これは、少なくとも以下の反射
【0133】
【表1】
を含むX線回折パターンを有し、ここで、100%は、X線回折パターンにおける最大ピークの強度に関する。
【0134】
本発明の好ましい実施形態によると、式(V)の化合物の結晶化は、シクロヘキサン(CHX)およびMTBEの混合物を用いて実施される。結晶化温度は、好ましくは、−10℃から+10℃、より好ましくは−5℃から+5℃の範囲である。結晶化条件を改善するためには、さらに(6)から得られる反応混合物の適切な播種により行え得る。
【0135】
結晶の分離後、例えば適当な濾過によって、結晶は、適当な洗浄剤、好ましくはMTBEおよびCHXの混合物で洗浄することができる。
【0136】
本発明の場合による実施形態によると、式(V)のこのようにして得られた結晶質化合物は、少なくとも1回再結晶化することができる。他の想定可能な再結晶化実施形態の中で、式(V)の化合物を再結晶化することは、酢酸イソプロピル中で、またはMIBK(メチルイソブチルケトン)中で、または酢酸イソプロピルおよびMIBKの混合物中で好ましくは実施することができる。場合によって、こうした再結晶化は、それぞれの混合物にまだ含有されている特定の不純物を結合するのに適当な少なくとも1種の薬剤の追加の存在下で実施することができる。とりわけ、適当な追加の薬剤として木炭を挙げることができる。したがって、本発明は、式(V)の化合物の結晶化後に、この化合物が酢酸イソプロピル中で、またはMIBK中で、または酢酸イソプロピルおよびMIBKの混合物中で、場合によって木炭の存在下にて、少なくとも1回再結晶化される上記の方法に関する。
【0137】
このようにして得られた結晶は、結晶化後および/または再結晶化後のいずれか一方で適切に乾燥させることができる。好ましくは、乾燥温度は、1バール未満、好ましくは500mバール未満、より好ましくは100mバール未満の圧力で10℃から40℃、より好ましくは15℃から35℃、より好ましくは20℃から30℃の範囲である。
【0138】
上記ですでに示唆されている通り、好ましい実施形態によると、式(V)、特にR=エチルである式(V)の化合物は、好ましくは結晶質化合物として、式(Va)の異性体について少なくとも99%のエナンチオマー純度で、クロマトグラフィーによる精製など退屈な精製方法を用いる必要がなく得られる。したがって、本発明は、(V)の化合物がクロマトグラフィーによる精製にかけられない上記の方法にも関する。明らかに、本発明による方法は、特に式(V)の化合物の中規模または大規模な生成に関する限り、従来技術の方法より、このようにして高度に優れている。その結果として、本発明による方法は、式(V)の化合物が、例えば抗真菌剤など広く使用される化合物の生成のための出発原料として使用されるような方法のためにとりわけ、多大な利点を提供する。
【0139】
このようにして、本発明は、抗真菌剤、特にポサコナゾールの生成のための出発原料の生成のための上記の方法の使用に特に関する。
【0140】
本発明の第1実施形態によると、式(V)の好ましくは結晶質の化合物、特にR=エチルである式(V)の化合物は、抗真菌剤、好ましくはポサコナゾールの生成のための出発原料など少なくとも1種のさらなる適当な反応のためにこのように使用することができる。完全性の目的で、好ましくは結晶質の化合物は任意の想定可能な反応のためにも使用することができ、使用は抗真菌剤の生成のための出発原料としての使用に限定されないことに留意される。
【0141】
本発明の第2実施形態によると、式(V)の化合物、特にR=エチルである式(V)の化合物は、抗真菌剤、好ましくはポサコナゾールの生成のための出発原料など少なくとも1種のさらなる適当な反応のための出発原料として使用される前に、OH基が少なくとも部分的に適切に保護される少なくとも1種の反応に場合によってかけることができる。一般に、特別な制限は存在しないが、ただし、OH基が適切に保護されるという条件である。一般に想定可能な基は、例えば、Greeneら、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、John Wiley&Sons、New York 1991 10−142に記載されている。
【0142】
ステップ(7)
本発明の実施形態によると、式(V)の化合物のOH基は、適切にシリル化される。好ましくは、シリル化は、式(VI)
【0143】
【化44】
の化合物を提供するために実施され、ここで、残基R、RおよびRは同一でも異なってもよく、好ましくはアルキル残基またはアリール残基である。したがって、本発明は、
(7)溶媒中で式(V)の化合物と、残基−SiRを含むシリル化剤とを反応させることで、式(VI)
【0144】
【化45】
(式中、残基R、RおよびRは同一でも異なってもよく、好ましくはアルキル残基またはアリール残基である。)
の化合物を得るステップ
をさらに含む上記の方法に関する。
【0145】
「アリール残基」という用語は、本発明との関連で使用される場合、フェニルまたはナフチルなどの炭素環式芳香族基に関する。「アルキル残基」という用語は、本発明との関連で使用される場合、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を好ましくは有する直鎖または分枝のアルキル部分に関する。
【0146】
本発明の想定可能な実施形態によると、式(VI)の化合物は、適切に結晶化することができる。
【0147】
したがって、本発明は、このように式(VI)
【0148】
【化46】
による場合によって結晶質なキラル化合物にも関し、式中、Rは好ましくは、1個から6個の炭素原子、より好ましくは1個から4個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を好ましくは有するアルキル残基であり、Rは特にエチルであり、式中、残基R、RおよびRは同一でも異なってもよく、好ましくはアルキル残基またはアリール残基であり、ここで、前記場合によって結晶質の化合物の分子の好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%は、式(VIa)
【0149】
【化47】
の異性体として、特に式(VIb)
【0150】
【化48】
の異性体として存在する。
【0151】
式(VI)の化合物の純度は、当技術の公知の方法に従って決定することができる。
【0152】
一般に、本発明は、上記した通りのステップのいずれかを伴う方法によって得られるまたは得られたキラル化合物にも関する。特に、本発明は、ステップ(1)、(2)および(3)を含む方法、またはステップ(1)、(2)、(3)および(4)を含む方法、またはステップ(1)、(2)、(3)、(4)および(5)を含む方法、またはステップ(4)がなくステップ(1)、(2)、(3)および(5)を含む方法、またはステップ(1)、(2)、(3)、(4)、(5)および(6)を含む方法、またはステップ(4)がなくステップ(1)、(2)、(3)、(5)および(6)を含む方法、またはステップ(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)および(7)を含む方法、またはステップ(4)がなくステップ(1)、(2)、(3)、(5)、(6)および(7)を含む方法によって得られるまたは得られたキラル化合物に関する。
【0153】
さらに、想定可能な実施形態によると、本発明は、式(II)の化合物の少なくとも1種の適当な塩、および/または式(III)の化合物の少なくとも1種の適当な塩、および/または式(IV)の化合物の少なくとも1種の適当な塩、および/または式(V)の化合物の少なくとも1種の適当な塩、および/または式(VI)の化合物の少なくとも1種の適当な塩にも関する。
【0154】
使用
上記ですでに示唆されている通り、共に本発明による方法によって場合によって得られるまたは得ることが可能な式(V)の好ましくは結晶質の化合物および/または式(VI)の場合によって結晶質の化合物、好ましくはR=エチルである式(V)
【0155】
【化49】
の結晶質化合物であって、この分子の好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、およびとりわけ好ましくは少なくとも99%が式(Vb)
【0156】
【化50】
の異性体として存在する前記結晶質化合物は、さらなる反応のための出発原料として、特に抗真菌剤の調製のための出発原料として使用される。
【0157】
このようにして、本発明は、抗真菌剤の調製の方法にも関し、ここで、共に本発明による方法によって場合によって得られるまたは得ることが可能な式(V)の好ましくは結晶質の化合物、特にR=エチルである式(V)の好ましくは結晶質の化合物、および/または式(VI)の場合によって結晶質の化合物、特にR=エチルである式(VI)の場合によって結晶質の化合物、好ましくはR=エチルである式(V)
【0158】
【化51】
の結晶質化合物であって、この分子の好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、およびとりわけ好ましくは少なくとも99%が式(Vb)
【0159】
【化52】
の異性体として存在する前記結晶質化合物は、さらなる反応のための出発原料として、特に抗真菌剤の調製のための出発原料として使用される。
【0160】
本発明の好ましい使用または方法に従って、本発明による方法によって場合によって得られるまたは得ることが可能なR=エチルである式(V)の好ましくは結晶質の化合物および/またはR=エチルである式(VI)の場合によって結晶質の化合物、好ましくはR=エチルである式(V)の結晶質化合物は、アニリンもしくはこの誘導体およびホスゲンもしくはこの誘導体またはイソシアネート、好ましくはホスゲン誘導体と反応させる。
【0161】
抗真菌剤が最終的に得られるという条件でアニリンの誘導体の化学的性質について特定の制限がない一方で、アニリン誘導体は、好ましくは、式
【0162】
【化53】
の化合物である。抗真菌剤が最終的に得られるという条件でホスゲンの誘導体の化学的性質について特定の制限がない一方で、ホスゲン誘導体は、好ましくは、式
【0163】
【化54】
の化合物である。
【0164】
本発明のとりわけ好ましい使用または方法に従い、最終的に得られる抗真菌剤は、式
【0165】
【化55】
のポサコナゾールである。
【0166】
本発明は以下の実施例によってさらに例証される。
【実施例】
【0167】
[実施例1]
Y=フェニルである式(II)の化合物の合成
a)ニトロソベンゼン1.70kg(MW:107.11;15.9mol;1.0当量)をDCM 6.16L中に、20−25℃でN雰囲気下で撹拌することによって溶解した。
【0168】
b)別の容器中で、2.76kgのプロピオンアルデヒド(MW:58.08;密度:0.798g/mL;47.5mol;3.0当量)およびDCM 5.28Lを、−6℃から−4℃にN雰囲気下で冷却した。生じた混合物に、氷酢酸0.057kg(MW:60.05;密度:1.049g/mL;0.95mol;0.06当量)およびD−プロリン0.55kg(MW:115.13;4.75mol;0.3当量)を添加し、微懸濁液が得られた。
【0169】
c)のこの懸濁液に、a)において得られたニトロソベンゼン溶液0.4Lを添加した。懸濁液の変色および1分以内の+3℃までの温度上昇により反応開始が示された。次いで、a)において得られたニトロソベンゼン溶液の残留ニトロソベンゼン溶液(約7L)を、反応温度を−5℃から−3℃の間に保持する速度で添加した。混合物は徐々に黒ずみ、添加完了時には澄明な液となった。撹拌を次いで10分間続け、HPLCを用いて完全変換を確定した。Y=フェニルである式(I)の化合物が、エナンチオマー純度がエナンチオマー過剰率(ee)>98%として表される中間体として得られ、即ちY=フェニルである式(I)のキラル化合物の分子の99%超が、Y=フェニルである式(Ia)の異性体として存在した。エナンチオマー純度は、Brownら、J.Chem.Soc.2003、125(36)、10808−10809に記載されている方法と類似の方法で決定し、キラルセルOD−Hおよびn−ヘプタン/イソプロパノール/ジエチルアミンを溶離液として用いた。
【0170】
d)引き続き、DCM 8.8L、0.4nmの直径を持つ細孔を有する分子篩3.0kg(ナノメートル;4オングストローム;Aldrichから市販されている。)、およびホルミルヒドラジン3.14kg(MW:60.06;52mol;3.3当量)を、0−5℃で添加し、温度の上昇をもたらした。N雰囲気下で0−5℃で撹拌を続けた。3時間後、HPLCを用いて完全変換を決定した。
【0171】
e)得られた固体を濾過し、DCM 4.4Lで洗浄した。溶液をこの元の体積の1/4に<10℃の浴温で濃縮した。次いで、MTBE 28Lを添加し、生じた溶液をこの元の体積の1/4に蒸留によって<10℃の浴温で低減した。生じた有機層を次いでMTBE 7Lで希釈し、20%塩化ナトリウム水溶液28Lで5回抽出した。次いで、DCM 8.8Lを、水の共沸除去のために添加した。生じた溶液を濃縮することで、Y=フェニルである式(II)の化合物のMTBE中溶液12kgを与え、これは、前記化合物2.86kg(MW207.23;80%の収率)を含有していた。
【0172】
f)Y=フェニルである式(II)の化合物を含有するこの溶液を、さらに精製することなく次のステップ(実施例2)において使用した。
【0173】
[実施例2]
Y=フェニルであり、Raa、RbbおよびRcc=メチルならびにR=エチルである式(III)および(IV)の化合物の合成
a)HO約2重量%を含有しているMTBE中の溶液(総重量290g)として用いられる、実施例1に従って得られた式(II)の化合物0.887kg(MW:207.23;4.28mol;1.0当量)を、0.4nmの孔径を持つ細孔を有する分子篩1.54(4オングストローム;Aldrichから市販されている。)を用いて20−25℃で30分間乾燥させた。このようにして、含水量を0.1重量%未満の値に低減した。次いで、分子篩を濾過によって除去し、MTBE 1.7Lで洗浄した。生じた溶液をMTBE 16Lで希釈した。この溶液の含水量は約0.05%(0.5mol;0.12当量)であった。
【0174】
b)次いで、BSA(ビストリメチルシリルアセトアミド)2.8L(MW:203.43;密度:0.832g/mL;11.5mol;2.7当量)を濾液に添加した。生じた溶液を20−25℃で撹拌した。1時間後、H−NMRによって検出された通り、シリル化が完了した。Y=フェニルであり、Raa、RbbおよびRcc=メチルである式(III)の化合物が、中間体として得られた。
【0175】
c)次いで、溶液を−70℃から−60℃に冷却し、エチルマグネシウムクロリドのTHF中溶液8.65L(2mol/l;MW:88.82;密度:0.978g/ml;17.3mol;4.0当量)を、反応温度を−70℃から−60℃の間に保持する速度で添加した。この混合物を−60℃で1時間撹拌した。引き続き、温度を−25℃に上昇させ、撹拌を続けた。3時間後、完全変換がHPLCによって検出された。反応物を次いで、MeOH 5.5kgの滴下による添加によって−25℃の温度でクエンチした。クエンチ中、混合物を0−15℃まで温まらせた。
【0176】
d)生じた有機層を次いで、20−25℃にて10%塩化アンモニウム水溶液30Lで2回および20%塩化ナトリウム水溶液30Lで1回抽出した。有機層(20kg)は、Y=フェニルであり、R=エチルである式(IV)の化合物およそ0.89kg(MW:237.30;80%の収率)を含有しており、さらに精製することなく次のステップ(実施例3)のために使用した。
【0177】
[実施例3]
=エチルである式(V)の化合物の合成
a)実施例2に従って得られ、MTBE(総重量20kg)中溶液として使用される式(IV)の化合物0.89kg(MW:237.30;3.76mol;1.0当量)を、MeOH 1Lを用いて20−25℃で希釈した。
【0178】
b)次いで、炭素担持パラジウム(Pd/C;5%Pd;50%水)0.9kgを添加し、生じた溶液を激しく20−25℃で撹拌した。還元反応をHの1atmで実施した。容器を脱気および1atmのHで3回通気した。1.5時間にわたるH雰囲気下での撹拌後、完全変換がHPLCによって検出された。次いで、懸濁液を濾過し、触媒をMTBE/MeOH(1/1v/v)1.8Lで洗浄した。合わせた濾液を黄色い油に濃縮することで、R=エチルである式(V)の化合物約40%(約0.55kg)を含有するR=エチルである式(V)の粗化合物が生じた。
【0179】
c)この油を、MTBE 13.9Lを用いて20−25℃で希釈し、生じた溶液を播種した。20−25℃で1時間撹拌後、微懸濁液が得られた。次いで、CHX(シクロヘキサン)17Lを添加し、混合物を0℃に冷却し、0℃で3時間撹拌した結果、R=エチルである式(V)の化合物の濃厚な懸濁液が生じた。このようにして得られた結晶を回収し、MTBEおよびCHX(1/1v/v)の冷(0℃)混合物2.2Lで洗浄することで、乾燥後R=エチルである式(V)の化合物0.44kgを与えた(MW146.19;80%の収率;式(II)の化合物について64%の収率)。R=エチルである式(V)のキラル化合物の分子の99%超が、式(Vb)に従った異性体として得られた。
【0180】
この黄色い色の材料10.4gを酢酸イソプロピル50mLに添加し、溶液が得られるまで、生じた混合物を85℃から89℃の温度に加熱した。活性炭0.5gを黄色い溶液に添加し、数分間撹拌した後、熱混合物を濾過し、約5℃に撹拌下で冷却するままにした。2時間から3時間撹拌した後、沈殿生成物を濾過し、酢酸イソプロピル5mLで洗浄し、室温にて真空下で終夜乾燥させることで、生成物8.54gをオフホワイト固体(融点78℃から80℃)として、即ちR=エチルである式(V)の化合物を与え、ここで、前記化合物の分子の99%超が、式(Vb)に従った異性体として得られた。
【0181】
このステップc)において使用される種結晶の調製
ステップb)において得られた粗製油100gを、シリカゲル60(0.063−0.200mm、Merck)800gを固定相として、およびDCM/メタノール=20/1を移動相として使用するカラムクロマトグラフィーによって精製した。TLC(Merck、シリカゲル60F254、移動相CHX/酢酸エチル=1/1)によって決定された純粋な形態における所望の生成物を含有する画分を回収した。溶媒の蒸発後、得られた固体をジエチルエーテルから再結晶させた。生じた結晶を回収し、乾燥(20℃、<100mバール)後に種結晶として使用した。
【0182】
d)IRスペクトルおよびX線回折図形は、図1および2に示されている。
【0183】
実験データは以下の通り得られた。
【0184】
c)において得られた通りのR=エチルである式(V)の化合物のエナンチオマー純度を、HPLCによって以下の通りに測定した。
【0185】
クロマトグラフィー
HPLC装置:Agilent1200
カラム:Waters XBridge C18、2.5μm、50×4.6mm(製品番号186003090)
系:勾配
溶離液A:緩衝溶液pH7.0
溶離液B:緩衝溶液pH7.0/アセトニトリル=2/8(v/v)
流量:1.8mL/min
炉温度:40℃
注入体積:10μL(マイクロリットル)
停止時間:20分
検出:λ(ラムダ)=260nm
勾配
【0186】
【表2】
緩衝溶液pH7.0を以下の処方に従って調製:トリエチルアミン7.0mLを水900mL中に溶解し、pHを7.0にHPOで調整し、1000mLに水で希釈する。
【0187】
試薬溶液を以下の処方に従って調製:(S)−(−)−α−メチルベンジルイソシアネート80mgから90mgをアセトニトリル中に溶解し、1.0mLにアセトニトリルで希釈する。
【0188】
試料調製
a)試験原液を以下の処方に従って調製
0.01mgに正確に秤量した、試験するための該物質38mgから42mgを、アセトニトリル1.0mL中に溶解する。
b)試験溶液を以下の処方に従って調製
HPLCバイアル中で、試験原液100μL(マイクロリットル)および試薬溶液100μL(マイクロリットル)を混合する。室温で(20℃から25℃)30分間保持し、緩衝溶液800μL(マイクロリットル)pH7.0を添加し、よく振盪する。次いで溶液を氷浴(0℃)上で追加の30分間冷却し(試薬の沈殿)、試料を0.2μm(マイクロメータ)に通して直接別のHPLCバイアル中に濾過する。
【0189】
赤外スペクトル(IR)データを、環境条件で4cm−1分解能のBruker Tensor 27 FTIR分光計を用いるMKII Golden Gate(商標)Single Reflection Diamond ATR(減衰全反射)セル上に回収した。スペクトルを回収するため、先端量の試料を、粉末形態におけるダイヤモンドの表面上に塗布した。次いで試料をダイヤモンド上にサファイアアンビルで押し付け、スペクトルを記録した。無傷のダイヤモンドのスペクトルをバックグラウンドスペクトルとして使用した。波数値の通常の精密度は、約±2cm−1の範囲である。このようにして、1716cm−1で現れる赤外ピークは、標準条件下において最も多くの赤外分光計上にて1714cm−1から1718cm−1の間で現れ得る。
【0190】
X線データ(粉末回折パターンXRPD、X線回折図形)を、以下の獲得条件を用いて、平行ビーム光学系中にて位置敏感型検出器で、Unisantis XMD 300X線粉末回折装置上に回収した。チューブアノード:Cu、40kV、0.8mA;3−43°シータ/2シータ;検出器分解能1024を用いて1ステップ当たり10°の領域の同時検出、1ステップ当たりのカウント時間300秒。試料を回転試料スピナー上の標準試料ホルダー中にて室温で測定した。2−シータ値の通常の精密度は、±約0.2°2−シータの範囲である。このようにして、5.0°2−シータで現れる回折ピークは、標準条件下において最も多くのX線回折計上にて4.8°から5.2°2−シータの間で現れ得る。
【0191】
実施例1、c)およびd)、実施例2)、c)ならびに実施例3、b)に記述されている通りの変換の完了の決定のためのHPLCは、以下の通りに行った。
【0192】
カラム:Zorbax Eclipse XDB−C18、150*4.6mm、5μm(マイクロメータ)。
系:勾配
緩衝液:2.10gのKHPO+4.28gのKHPO/2.0LのHO、85%HPOでpH6.5に調整
移動相A:20mMリン酸緩衝液pH6.5/アセトニトリル、85/15、v/v
移動相B:20mMリン酸緩衝液pH6.5/アセトニトリル、50/50、v/v
溶媒:HO/アセトニトリル=50/50 v/v
流量:1.5mL/min
炉温度:60℃
注入体積:5〜20μL(マイクロリットル)
停止時間:30分
検出:λ(ラムダ)=210nm(Agilent 1200検出器)
オートサンプラー:5℃
勾配:
【0193】
【表3】
【0194】
試料調製
実施例1)、c)におけるHPLCのための試料溶液を以下の処方に従って調製した:反応混合物およそ100μL(マイクロリットル)をイソプロパノール0.2mL中に溶解し、NaBHおよそ50mgを添加し、25℃で10分間かき混ぜる。酢酸エチル0.2mLおよび5%KHPO緩衝液0.5mL(pH7.0)で抽出する。生じた有機層50μL(マイクロリットル)を10mL容量フラスコ中で希釈し、溶媒を印まで充填する。試料重量を機器要求事項に従って調節する。
【0195】
実施例1)、d)、実施例2)、c)および実施例3)、b)用のHPLCのための試料溶液を以下の処方に従って調製した:反応混合物およそ100μLをアセトニトリル2mL中に20mL容量フラスコ中で溶解し、溶媒を印まで充填する。試料重量を機器要求事項に従って調節する。
【0196】
引用文献の一覧
−WO95/17407
−WO97/22579
−Saksenaら、Tetrahedron Lett.2004、45(44)、8249−8251
−WO96/33163
−WO97/33178
−Brownら、J.Chem.Soc.2003、125(36)、10808−10809
−Cordovaら、Chem.Eur.J.2004、10(15)、3673−3684
−Hayashiら、J.Org.Chem.2005、69(18)、5966−5973
−Greeneら、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、John Wiley&Sons、New York 1991 10−142
図1
図2