(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956992
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】スクアラミンの眼用製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20160714BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20160714BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20160714BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20160714BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20160714BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20160714BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20160714BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20160714BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P27/02
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/12
A61K47/32
A61K47/40
A61K47/14
A61K47/04
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-524928(P2013-524928)
(86)(22)【出願日】2011年8月16日
(65)【公表番号】特表2013-537551(P2013-537551A)
(43)【公表日】2013年10月3日
(86)【国際出願番号】US2011047920
(87)【国際公開番号】WO2012024298
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年7月24日
(31)【優先権主張番号】61/374,524
(32)【優先日】2010年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513037797
【氏名又は名称】オーエイチアール・ファーマシューティカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OHR PHARMACEUTICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】イラク・ビー・タラポレワラ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・アイ・バッケンロス
【審査官】
田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/009034(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/031113(WO,A1)
【文献】
特表2009−501726(JP,A)
【文献】
米国特許第05631004(US,A)
【文献】
特開平04−211011(JP,A)
【文献】
特表2008−539243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における眼症状を予防または処置するための医薬組成物であって、
ジラクテート塩としてのスクアラミン;
ポビドンK-30;
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;
リン酸緩衝剤;および
水
を含んでおり、
治療上有効量にて予防または処置が必要な哺乳動物の眼に投与され、前記スクアラミンを哺乳動物の眼の後部強膜および脈絡膜に選択的に送達する、医薬組成物。
【請求項2】
該眼症状が、ウェット型加齢性黄斑変性症(ウェット型AMD)、脈絡膜血管新生、網膜症またはドライ型加齢性黄斑変性症(ドライ型AMD)および網膜色素上皮の中心窩地図状萎縮からなる群から選択される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
局所投与される、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
該眼症状が、ウェット型AMDである、請求項2または3記載の医薬組成物。
【請求項5】
スクアラミンを、それを必要とする哺乳動物の眼の後部強膜および脈絡膜に選択的に、治療上有効量にて送達するための医薬組成物であって、
ジラクテート塩としてのスクアラミン;
ポビドンK-30;
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;
リン酸緩衝剤;および
水
を含み、房水または硝子体液中には無視できる濃度の前記スクアラミンをもたらす、医薬組成物。
【請求項6】
局所投与される、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
さらにn-ドデシル-β-D-マルトシドを含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項8】
点眼薬、ゲル、ローション、クリームもしくは軟膏の形態であるか、または薬剤溶出眼用コンフォーマー、侵食性眼用インプラント、強膜近傍(juxtascleral)インプラント、涙管ステント、イオントフォレーシス眼送達系もしくは眼用スプレー薬剤送達デバイスに組み込まれる、請求項1〜7のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項9】
ジラクテート塩としてのスクアラミン;
ポビドンK-30;
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;
リン酸緩衝剤;および
水
を含む、眼用組成物。
【請求項10】
非イオン性張度改変剤、塩、防腐剤、界面活性剤、可溶化剤および安定化剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項9記載の眼用組成物。
【請求項11】
該非イオン性張度改変剤が、約50〜350ミリオスモル/kgの張度をもたらすのに十分な量で存在する、請求項10記載の眼用組成物。
【請求項12】
該塩が、0.3〜1重量%の量で存在する、請求項10記載の眼用組成物。
【請求項13】
点眼薬、ゲル、ローション、クリームもしくは軟膏の形態であるか、または薬剤溶出眼用コンフォーマー、侵食性眼用インプラント、強膜近傍インプラント、涙管ステント、イオントフォレーシス眼送達系もしくは眼用スプレー薬剤送達デバイスに組み込まれる、請求項9〜12のいずれか一項記載の眼用組成物。
【請求項14】
該スクアラミンジラクテートが0.005〜5.0重量%の量で存在する、請求項9〜13のいずれか一項記載の眼用組成物。
【請求項15】
さらにn-ドデシル-β-D-マルトシドを含む、請求項9〜14のいずれか一項記載の眼用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、米国特許第5,192,756(1993年3月9日に発行)、米国特許第6,962,909(2005年11月8日に発行)および米国特許第7,981,876(2011年7月19日)と技術的に関係しており、その全てを参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、眼の症状、例えばウェット型加齢性黄斑変性症(ウェット型AMD)、脈絡膜血管新生、網膜症、ドライ型加齢性黄斑変性症(ドライ型AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症、眼科手術後の血管新生、黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、下脈絡膜血管新生、網膜上皮剥離、翼状片または網膜色素上皮の中央窩地図状萎縮などの処置のための、スクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩の眼用製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
加齢性黄斑変性症(AMD)は、アメリカ合衆国の中で52歳またはそれ以上の年齢の人々の中で不可逆的な中心視力損失の主要病因であり、アメリカ合衆国、カナダ、英国およびオーストラリアにおける失明の最も一般的な総合的原因である。AMDは、罹患患者の黄斑にて進行する幾つかの異常症状を含む。黄斑変性症には2つの形態が存在する:ドライ型(萎縮型としても知られる)およびウェット型(円盤状、滲出性、網膜下血管新生または脈絡膜血管新生としても知られる)。ウェット型の前兆ともいえるこのドライ型は、網膜により生成した不要物質を排出する黄斑色素上皮の能力欠損により生じる。ウェット型は、新しい血管が網膜下、特に黄斑で成長する場合におこる。
【0004】
スクアラミン(IUPAC名:([6-[(3S,5R,7R,10S,13R,4S)-3-[3-(4-アミノブチルアミノ)プロピルアミノ]-7-ヒドロキシ-10,13-ジメチル-2,3,4,5,6,7,8,9,11,12,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル]-2-メチルヘプタン-3-イル]硫酸水素塩)は、抗血管形成特性を示すアミノステロールであって、疾患の進行を特徴づける網膜における新血管形成および血管形成異常を防止するように働くウェット型AMDの効果的処置のための静脈内点滴として用いられている(Sills Jr. et al., "Squalamine Inhibits Angiogenesis and Solid Tumor Growth in Vivo Perturbs Embyronic Vasculature", Jul. 1, 1998,
Cancer Research, 58, 2784-2792;Higgins et al., "Squalamine Improves Retinal Neovascularization", May 2000,
Investigative Ophthalmology & Visual Science, vol. 41, No. 6, pp. 1507-1512.;PRNEWSWIRE, "Genaera Reports Squalamine Continues to Improve Vision at Four Months Timepoint in Age-Related Macular Degeneration",Oct. 7, 2003,
http://www.eyesightnews.com/topic/28.html.)。スクアラミンは、Zasloffらの米国特許第5,192,756の主題であり、その全ては出典明示により本明細書に組み込まれる。スクアラミンの全体の化学合成は、米国特許第6,262,283および6,610,866に記述されており、その全ては出典明示により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者の使用およびリスク的見地より、静脈内点滴、あるいは特に眼への直接的な注射を月に一度必要とする現行の治療標準とは異なり、眼に直接適用するために利用できる局所製剤が強く望まれる。医療施術管理下での高価な施与が必要であり、かつ眼内炎および網膜剥離などの重篤な合併症をもたらす可能性がある侵襲性が高い技術(例えば、静脈内点滴)と比べて、局所製剤(例えば、溶液、懸濁、クリームまたは軟膏などの形態にある製剤)は、患者による自主投与が容易である。しかし、眼用点眼薬が持つ一般的な問題とは、その投与後に、通常点眼薬中の薬剤成分の5%未満が、角膜を透過して、眼球内組織に到達することである。その代わりに、投与用量の主要部は、溶液排出および全身吸収により排除される(Jarvinen K. et al., "Ocular absorption following topical delivery", Adv. Drug Deliv. Rev. 1995; 16(1):3-19. See also Conroy C.W., "Sulfonamides do not reach the retina in therapeutic amounts after topical application to the cornea", Ocul. Pharmacol. Ther. 1997; 13(5):465-472 and Maurice D.M., "Drug delivery to the posterior segment from drops", Surv. Ophthalmol. 2002;47(suppl. 1):S41-S52)。
【0006】
さらに、IV点滴によるAMD処置に対するスクアラミンの効力を試験する先の臨床試験により、長期的使用についての潜在的問題が明らかとなった。IV製剤での静脈投薬療法は、薬物動態分析を用いると最適以下であると見なされ、様々な理由により商業規模では利用できなかった。一例として、40mgの投薬時のヒト対象中のスクアラミンの短期血漿半減期は、4〜6日後には脈絡膜血管新生(CNV)を防止するためには不十分な脈絡膜中の濃度となる。月に1回の"維持"点滴に対してこの投薬を忘れた場合、わずか一週まではCNVを阻害できるが、その後3週間に活発な新規血管新生がおこる可能性がある。この治療方法は、投与最初の4〜5週間後に視力の良好な回復をもたらし、その後の第5週後に改善率の低下をもたらした。静脈内投薬は、局所輸注反応を引き起こした(投薬は、局所製剤に使用される投薬量よりも非常に多い)。「現実社会」の状況下では、ウェット型AMDの高齢患者が長時間の点滴のために週一回の頻度で来院できると期待することは非現実である。殆どの網膜の眼用処置は、このような静脈内点滴としても設定されていない。
【0007】
本発明は、静脈内投薬に関連がある上記欠点と比べて、疾患を処置するための、眼の後部に治療薬の選択的送達を達成できる局所投与用の安全かつ非刺激性の眼用製剤の発見を示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の一態様は、スクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩、1以上の粘膜接着剤および1以上の浸透増強剤を含む、局所用の眼用用途のための組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の別の態様において、該組成物は、さらに増粘剤、張度改変剤、抗菌性防腐剤、緩衝剤、界面活性剤、安定化剤、可溶化剤および再懸濁剤の少なくとも一つを含む。
【0010】
本発明の別の態様は、眼症状の予防および/または処置が必要なヒトなどの哺乳動物の眼に、治療上有効量のスクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩を、局所投与することを含む、眼症状を予防および/または処置するための方法である。
【0011】
例示的な実施形態において、該眼症状は、ウェット型加齢性黄斑変性症(ウェット型AMD)、脈絡膜血管新生、網膜症またはドライ型加齢性黄斑変性症(ドライ型AMD)および網膜色素上皮の中央窩地図状萎縮からなる群から選択される。
【0012】
例示的な実施形態において、スクアラミンは、そのジラクテート塩として存在する。
【0013】
例示的な実施形態において、該組成物は、さらに非イオン性張度改変剤、塩、防腐剤、緩衝剤、界面活性剤、可溶化剤および安定化剤の少なくとも一つを含む。
【0014】
例示的な実施形態において、該組成物は局所投与される。
【0015】
例示的な実施形態において、該組成物は、点眼薬、ゲル、ローション、クリーム、軟膏の形態にて存在しており、薬剤溶出眼用コンフォーマー、侵食性インプラント、強膜近傍(juxtascleral)インプラント、涙管ステント、イオントフォレーシス眼送達系または眼用スプレー薬剤送達デバイスに組み込まれる。
【0016】
本発明の態様は、スクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩;1以上の粘膜接着剤;および1以上の浸透増強剤を含む組成物を投与することにより、哺乳動物の眼の後部強膜にスクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩を治療上有効量にて送達し、同時に房水または硝子体液中に該組成物の無視できる濃度をもたらす、方法である。
【0017】
例示的な実施形態において、粘膜接着剤は、カルボポール980、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドンK-30およびポリビニルアルコールからなる群から選択される。
【0018】
例示的な実施形態において、浸透増強剤は、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ラウロカプラムおよびグリセロールモノラウレート、およびPGML(ポリエチレングリコールモノラウレート)からなる群から選択される。
【0019】
例示的な実施形態において、眼症状はウェット型AMDである。
【0020】
例示的な実施形態において、スクアラミンジラクテートは、0.005〜5.0重量%の量で存在する。
【0021】
例示的な実施形態において、非イオン性張度改変剤は、約50〜350ミリオスモル/kgの張度とするために十分な量で存在する。
【0022】
例示的な実施形態において、該塩は、ヒトの涙の塩濃度および/または張度に近づけるために十分な量で存在する。
【0023】
例示的な実施形態において、該塩は、0.3%〜1重量%の範囲の量で存在する。
【0024】
例示的な実施形態において、該防腐剤は、約12時間〜約72時間の間、微生物濃度を維持または減少させるための微生物バリアを生み出すのに十分な量で存在する。
【0025】
図は、本発明の範囲の単に代表的実施形態を示すものであり、本発明の範囲を別途制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、スクアラミンによるヒト血管内皮細胞(HUVEC)の血管形成の妨害を表す。
【0027】
(発明の詳細な説明)
例示的な実施形態において、本発明の眼用製剤は、スクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩、粘膜接着剤および浸透増強剤を含有する。該製剤は、所望により以下の少なくとも1つの成分を含むが、これに限定するものではない:(a)張度改変剤;(b)抗菌性防腐剤;(c)緩衝剤;(d)界面活性剤;(e)安定化剤;(f)可溶化剤または再懸濁剤;(g)別の粘膜接着剤;および(h)別の浸透増強剤。
【0028】
本発明の局所製剤は、眼の後部を標的とすると考えられる。眼の後部を標的とする際に有利である局所製剤として、それは十分な濃度で眼の後部強膜に到達できる特性を有するべきである。理想としては、該製剤は、眼の背面へ、例えば、前方強膜から後部強膜へ拡散する前に涙で流されずに角膜上での滞留時間を増加すべきである。薬剤分子が眼の水晶体に悪影響を及ぼすかも知れないので(例えば、水晶体混濁により)、該薬剤分子は眼の前面から球体内を通過して、任意の相当量まで眼球内の房水および硝子体液へ入るべきではない。本発明の製剤は、眼の前面に適用される薬剤分子、例えばスクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩を、薬剤分子の治療濃度が目的とする疾患の処置に必要とされる眼の後面に有効に送達するために必要とされる所望のかつ独特な特徴を有している。眼の表面上に投与した後に、該組成物は、結膜および前方強膜に入り、角膜層に入る。粘膜接着剤は、薬剤が後部強膜まで時間をかけてゆっくりと拡散できるように角膜中の滞留時間を増加させて、後部強膜中のスクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩濃度の徐放性送達をもたらすと考えられる。該粘膜接着剤は、該薬剤の損失、例えば鼻涙管からの排出、流涙および涙のターンオーバーを遅延させることによりこの目的を達成する。また、該粘膜接着剤は、一般的に所望の鎮静または潤滑効果をもたらすことができる粘度増強特性を有する。該製剤に所望により添加してもよい浸透増強剤は、角膜上皮層への該製剤の浸透性を増強して、眼内のスクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩の滞留時間をさらに増強する。該安定化剤は、抗酸化剤として作用し得るか、またはスクアラミン製剤の化学的分解を遅延させ得る。該緩衝剤は、該製剤を眼投与に適合し得る安定なほぼ中性pHに緩衝する。該製剤中の張度改変剤は、眼用製剤の適切な張度を提供する。
【0029】
得られる製剤は安定であって、滅菌後に梱包されても、貯蔵されても、直接使用されてもよい。例示的な実施形態において、該製剤は、点眼薬とするために通常使用される様式の液滴形態で存在しうる。通常のスクイーズ型の液滴適用装置は、本発明の眼用製剤を適用する際に使用するために非常に好適である。例示的な実施形態において、該製剤は、使用者の罹患眼(複数含む)へ該製剤の液滴を添加することにより便宜的に投与される。
【0030】
防腐剤を含有する本発明の製剤は、多回投与用容器における使用に特に有利である。本明細書で使用した多回投与用容器は、該容器内に存在する眼用製剤を2回以上別々に適用できる容器をいう。かかる容器は、再封入可能である−即ち、該容器キャップは、最初の適用のために取り外すことができ、その後該キャップを該容器上で再置することにより、実質的な液体の不浸透性密閉を再度提供できる。例示的な実施形態において、抗菌性防腐剤は、約12時間〜約72時間、例えば約12時間〜約48時間、例えば約12時間〜約24時間の間、微生物濃度を減少させるために十分な量で存在する。
【0031】
例示的な実施形態において、防腐剤を含有しないそれらの製剤は、単回用量容器に梱包される―即ち、単回用量が所定の容器により提供できる場合。かかる防腐剤不含組成物は、使用者が一旦該容器の密封を破ると、制御できない微生物増殖に付される。そのため、使用者は、最初の投与後に該容器の廃棄が指示される。好適な単位用量系、例えば成型同時充填(blow-fill-seal)単位用量の防腐剤不含梱包システムは、防腐剤不含製剤のために一般的に使用される。
【0032】
本発明のスクアラミンまたはその塩の局所眼用投与のための医薬組成物は、従来の眼科的に適合し得る賦形剤、例えば軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾールまたは油の中に製剤され得る。
【0033】
本明細書で使用されたとおりに、用語"黄斑変性症"は、黄斑変性症の全ての形態を包含し、高齢者にて特に発症する片眼または両眼に通常影響を及ぼす中心視力の段階的損失を含むことが意図される。通常ドライ型といわれる黄斑変性症のゆっくりとした進行形態は、特に網膜の黄色沈着物の蓄積および網膜の薄化を特徴とする。通常ウェット型としていわれる黄斑変性症の急速な進行形態は、出血を示す痕跡化および網膜下で形成された新規血管からの液体漏出を特徴とする。黄斑変性症は、ウェット型またはドライ型のいずれかとして存在し得る。
【0034】
本明細書に規定されるとおり、"治療上有効量"とは、全体的または部分的に症状の進行を阻害するか、または少なくとも部分的に1以上の症状の徴候を緩和する有効成分(例えば、スクアラミン)の量である。治療上有効量は、予防的に有効な量でもあり得る。治療上有効である量は、患者の大きさ、性別、処置される症状、症状の重症度および目的とする結果に依存する。所定の患者について、治療上有効量を、当業者には既知の方法により決定する。スクアラミンまたはその医薬上許容し得る塩の濃度は、通常、約0.005〜約5.0重量%、例えば約0.010〜約4.0重量%、例えば約0.020〜約3.0重量%、例えば約0.030〜約2.0重量%、例えば約0.050〜約1.0重量%で存在し得る。
【0035】
例示的な実施形態において、該スクアラミンは、ジラクテート塩の形態である。例示的な実施形態において、スクアラミンジラクテート塩を、約0.1〜約0.3% w/v、例えば約0.1〜0.2% w/vの濃度で用いる。
【0036】
所望により、本発明の製剤は、張度改変剤を含有する。例示的な実施形態において、該張度改変剤が非イオン性である。該張度改変剤は、次のものから選択され得るが、これらに限定するものではない:マンニトール、ソルビトール、デキストロース、精製白糖、尿素、グリセロール、ポリエチレングリコールおよびその任意の混合物。例示的な実施形態において、該張度改変剤は、約50〜約350 ミリオスモル/kg(mOsmol/kg)、例えば約65〜約325 mOsmol/kg、例えば約80〜約310 mOsmol/kg、例えば約95〜約295 mOsmol/kg、例えば約110〜約280 mOsmol/kg、例えば約125〜約265 mOsmol/kg、例えば約140〜約250 mOsmol/kg、例えば約155〜約235 mOsmol/kg、例えば約170〜約220 mOsmol/kg、例えば約185〜約205 mOsmol/kgの張度を生み出す十分な量で存在する。
【0037】
該製剤は、下記から選択されるイオン性塩を含有し得るが、これらに限定するものではない:約0.3〜約1重量%の量またはヒトの涙の塩濃度および/または張度に近づけるために十分な量のアルカリ金属ハライド(例えば、NaCl、KCl、NaBrなど)。この群からの選択された塩は、イオン性張度改変剤ともいえる。
【0038】
防腐剤が本発明の製剤に使用される場合、殺菌剤は、微生物濃度を維持または減少させるために、約12時間〜約72時間、例えば約12時間〜約48時間、例えば約12時間〜約24時間の間、微生物バリアを生み出すのに十分な量で存在する。防腐剤には、次のものを含むが、これらに限定するものではない:塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、セトリモニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ポリアミノプロピルビグアニド、フェニルエチルアルコール、クロロヘキシジン、クロロヘキシジンジグルコネート、クロロクワット、安定化オキシクロロ錯体またはその任意の組合せ。
【0039】
本発明の製剤に使用され得る緩衝剤は、ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩および/またはリン酸、酢酸、クエン酸またはホウ酸から調製された緩衝液を含むが、これらに限定されない。例示的な実施形態において、該緩衝液は、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸ナトリウムまたはホウ酸/ホウ酸ナトリウムである。本発明の緩衝液は、約5.5〜約8.0、例えば約5.7〜約7.7、例えば約6.0〜約7.4、例えば約6.3〜約7.1、例えば約6.6〜約6.8の生成物pH、または約5.7、約5.9、約6.1、約6.3、約6.5、約6.7、約6.9、約7.1、約7.3、約7.5、約7.7または約7.9のpHを維持するのに十分な量で存在すべきである。
【0040】
界面活性剤もまた本発明の製剤に添加できる。例示的な実施形態において、該界面活性剤は、該製剤に対して増強された湿潤特性を提供するために、約0.001%〜約0.3%、例えば約0.005%〜約0.2%、例えば約0.01%〜約0.1%、例えば約0.05%〜約0.1%の濃度範囲で存在する。該界面活性剤は、次のものを含むが、これらに限定するものではない:ポロキサマー、ポリソルベート80、ポリソルベート20、チロキサポール、ポリオキソエチレン、Brij 35、Brij 58、Brij 78、Aptet 100、G1045、Spans 20、40および85、Tweens 20、40、80または81、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルサルコシンナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸ポリオキシル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、デカグリセリルモノラウレート)、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(poloxamer)、デカグリセリルモノラウレート、ステアリン酸ポリオキシル40、およびポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、またはその任意の組合せ。
【0041】
安定化剤もまた本発明の製剤に添加できる。好適な安定化剤には次のものを含むが、これらに限定するものではない:メタ重亜硫酸ナトリウム塩、硫酸水素ナトリウム、アセチルシステイン、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、αトコフェロール、カルノシン、レチニル・パルミテート、エチレンジアミンテトラ酢酸塩(EDTA)(例えば、ジナトリウム、テトラナトリウム、カルシウムまたはカルシウムエデト酸ナトリウム)、またはその組合せ。
【0042】
記述された製剤に存在する粘膜接着剤は、角膜接触時間を増加し、バイオアベイラビリティーを増強し、および/または潤滑効果を提供し、そして次のものを含むがこれらに限定されない:アクリル酸ポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、Carbopol
(登録商標) ポリマー(例えば、Carbopol
(登録商標)674、676、690、980 NF、ETD-2691、ETD 2623、EZ-2、EZ-3、EZ-4、Aqua 30およびNovethix
(登録商標)L-10)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、フタレート、アルギネート、ゼラチン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、または任意のその組合せ。
【0043】
記述された製剤に存在する浸透増強剤は、次のものを包含するが、これらに限定するものではない:ラウロカプラム(azone)、胆汁酸およびそのアルカリ金属塩、例えばケノデオキシコール酸、コール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸またはウルソデオキシコール酸、グリココレート、n-ドデシル-β-D-マルトシド、シュクロースドデカノエート、オクチルマルトシド、デシルマルトシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルマルチドシド、ヘキサメチレンラウラミド、ヘキサメチレンオクタンアミド、グリセロールモノラウレート、PGML(ポリエチレングリコールモノラウレート)、ジメチルスルホキシド、メチルスルホニルメタン、フシジン酸ナトリウム、サポニンまたはその任意の組合せなど。
【0044】
さらに、可溶化剤または再懸濁剤を、本発明の製剤に添加してもよい。好適な可溶化剤または再懸濁剤には、次のものを包含するが、これらに限定するものではない:シクロデキストリン(CD)、例えばヒドロキシプロピルγ-CD(Cavasol
(登録商標))、スルホブチルエーテル4β-CD(Captisol
(登録商標))およびヒドロキシプロピルβ-CD(Kleptose
(登録商標))、ポリソルベート80(Tween80
(登録商標))またはヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩。該シクロデキストリンは、特に透過増強特性も示し得る。
【0045】
スクアラミンの医薬上許容し得る塩は、酸付加塩、例えば酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、デカン酸塩、ドデシル硫酸塩、ヘプタン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トルエン-p-スルホネート;およびウンデカン酸;および塩基性塩、例えばアンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウム塩、有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン塩およびアミノ酸、例えばアルギニンとの塩を含むが、これらに限定されない。
【0046】
スクアラミンのモノおよびジ塩双方は、本発明の製剤にとって好適な塩として含まれることが意図される。一例として、スクアラミンのモノラクテートおよびジラクテート塩の双方が含まれる。
【0047】
特定の実施形態において、該塩はジラクテート塩である。スクアラミンのジラクテート塩は、非晶質形態または結晶形態にて存在する。発明の例示的実施形態において、ジラクテート塩の結晶形態は、溶媒和物として存在する。別の例示的な実施形態において、該結晶形態は、水和物として存在しており、別の実施形態において、ジラクテート塩は溶媒和物および水和物として存在する。スクアラミンジラクテートの結晶形態は、溶媒分子が結晶構造内に組み込まれる場合には、溶媒和物として存在しても良い。例として、該溶媒がエタノールを含有する場合、該結晶はエタノール分子を含有し得る。別の実施形態において、該溶媒和物は水を含有してもよく、該結晶は結晶構造中に水を含有する水和物であってもよい。別の実施形態において、該結晶は、溶媒和物および水和物の双方であってもよい。スクアラミンジラクテートの様々な結晶形態についての記述は、米国特許第7,981,876に見いだされ、この全てを出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0048】
本明細書に記述した眼用組成物に有用であり得る当業者には既知の典型的な担体、安定化剤およびアジュバントの例示としては、Gennaro (2005)
Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing、21
sted を参照されたい。
【0049】
本発明のスクアラミン含有組成物のインビボ投与は、単回用量、多回用量にて、処置期間中に連続的また断続的に実行できる。投与の最も有効な用量を決定する方法は、当業者によく知られており、治療に使用される組成物、治療目的および処置される対象によって変化する。単回または多回投与は、治療にあたる医師により選択された用量レベルおよび種類に従って実施できる。
【0050】
特定の実施形態において、溶液のpHは約7.0〜約7.5の範囲内である。例示的な実施形態において、該溶液は、好ましくは低張溶液である。特定の実施形態において、pHは約7.2〜約7.4である。
【0051】
様々な例示的な実施形態において、本発明の局所製剤は、軟膏、ゲル、クリームまたは点眼薬を含むが、これらに限定されるものではない。
【0052】
様々な特定および非限定製剤を以下に挙げる:
スクアラミンジラクテート+n-ドデシル-β-D-マルトシド+ポビドンK-30+リン酸塩緩衝液;
スクアラミンジラクテート+n-ドデシル-β-D-マルトシド+
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン+ポビドンK-30+リン酸塩緩衝液;
スクアラミンジラクテート+n-ドデシル-β-D-マルトシド+カルボポール980+ホウ酸塩緩衝液;
スクアラミンジラクテート+n-ドデシル-β-D-マルトシド+カルボポール980+リン酸塩緩衝液。
様々な特定の製剤および非限定製剤を下記実施例に記述する。これらの製剤は、本発明の単なる説明であって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1
製剤A
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、緩衝液として67 mM NaH
2PO
4+Na
2HPO
4(0.9%)、張度改変剤としてNaCl(〜0.4%)、キレート剤/安定化剤としてエデト酸ジナトリウム(0.01%)、防腐剤として塩化ベンザルコニウム(0.005%)および十分量の注射用の水または精製水USPを含む。
【0054】
製剤Aを次のとおり調製した:50 mLの精製水を、攪拌バーと共に250 mLの目盛り付きガラスビーカーに入れた;2.688 gのリン酸ナトリウム六水和物を、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;1.24 gのリン酸二水素ナトリウム一水和物を、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.400 gの塩化ナトリウムを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.005 gの塩化ベンザルコニウムを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.01 gのEDTA二ナトリウム塩を、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.200 gのスクアラミンジラクテートを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;約40 mLの精製滅菌水を、ビーカーに添加した;2N NaOHおよび1N HCl(必要な場合には)を用いて、pHを7.2に調整した;該容量は、十分な量の注射用の水または精製水USPであった。
【0055】
実施例2
製剤B
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、緩衝液として67 mM NaH
2PO
4+Na
2HPO
4(0.9%)、張度改変剤としてNaCl(〜0.4%)、キレート剤/安定化剤としてエデト酸二ナトリウム塩(0.01%)、粘膜接着剤としてカルボポール980NF(0.5%)および十分な量の注射用の水または精製水USPを含む。
【0056】
製剤Bを次のとおり調製した:50 mLの精製水を、250 mLの攪拌バーと共に250 mLの目盛り付きガラスビーカーに入れた;2.688 gのリン酸ナトリウム六水和物を、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;1.24 gのリン酸二水素ナトリウム一水和物を、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.400 gの塩化ナトリウムを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.01 gのEDTA二ナトリウムを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.200 gのスクアラミンジラクテートを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.500 gのカルボポール980NFを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;約40 mLの精製滅菌水を、ビーカーに添加した;該pHを、2N NaOHおよび1N HCl(必要な場合には)を用いて7.2に調整した;該容量を、100 mLまでとした;そして、該溶液を、0.22ミクロンフィルターを有する滅菌濾過アセンブリを用いて濾過した。
【0057】
実施例3
製剤C
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、緩衝液として67 mM NaH
2PO
4+Na
2HPO
4(0.9%)、張度改変剤としてマンニトール(〜0.8%)、キレート剤/安定化剤としてエデト酸ジナトリウム(0.01%)、粘膜接着剤としてカルボポール980NF(0.5%)、浸透増強剤としてn-ドデシル-β-D-マルトシド(0.05-0.1%)、防腐剤として塩化ベンザルコニウム(0.005%)および十分な量の注射用の水または精製水USPを含む。
【0058】
製剤Cを次のとおり調製した:50 mLの精製水を、攪拌バーと共に250 mLの目盛り付きガラスビーカーに入れた;2.688 g のリン酸ナトリウム六水和物を、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;1.24 gのリン酸二水素ナトリウム一水和物を、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.800 gのマンニトールを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.005 gの塩化ベンザルコニウムを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.01 gのEDTA二ナトリウムを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.500 gのカルボポール980NFを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.200 gのスクアラミンジラクテートを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;0.05 gのn-ドデシル-β-D-マルトシドを、ビーカーに添加して、それが溶解するまで攪拌した;約40 mLの精製滅菌水を、ビーカーに添加した;該pHを、2N NaOHおよび1N HCl(必要な場合には)を用いて7.2に調整した;該容量を、100 mLまでとした;そして、該溶液を、0.22ミクロンフィルターを有する滅菌濾過アセンブリを用いて濾過した。
【0059】
実施例4
製剤D
この製剤は、有効成分として0.1%スクアラミンジラクテート、緩衝液として50 mM NaH
2PO
4+Na
2HPO
4(0.9%)、張度改変剤としてNaCl(〜0.9%)、キレート剤/安定化剤としてエデト酸ジナトリウム(0.01%)、粘膜接着剤としてヒドロキシプロピル-メチルセルロース、防腐剤として塩化ベンザルコニウム(0.005%)および十分な量の注射用の水または精製水USPを含む。この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0060】
実施例5
製剤E
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、緩衝液として67 mM NaH
2PO
4+Na
2HPO
4(0.9%)、張度改変剤としてNaCl(〜0.4%)、キレート剤/安定化剤としてエデト酸ジナトリウム(0.01%)、粘膜接着剤としてヒドロキシプロピル-メチルセルロースおよび十分な量の注射用の水または精製水USPを含む。
【0061】
この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0062】
実施例6
製剤F
この製剤は、有効成分として0.1%スクアラミンジラクテート、緩衝液としてホウ酸(0.8%)+ホウ酸ナトリウム(0.12%)、張度改変剤としてマンニトール(〜0.8%)、キレート剤/安定化剤としてαトコフェロール(0.005%)、粘膜接着剤としてカルボポール980NF(0.5%)、浸透増強剤としてn-ドデシル-β-D-マルトシド(0.05−0.1%)、防腐剤として塩化ベンザルコニウム(0.005%)および十分な量の注射用の水または精製水USPを含む。
【0063】
この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0064】
実施例7
製剤G
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、緩衝液としてリン酸ナトリウム六水和物1.88% w/vおよびリン酸二水素ナトリウム一水和物1.0% w/v、皮膚軟化剤としてポビドンK-30 1.2% w/v、安定化剤としてエデト酸二ナトリウム0.01%、浸透増強剤としてn-ドデシル-β-D-マルトシド0.005% w/v、防腐剤として塩化ベンザルコニウム0.005% w/v、可溶化剤として
2-ヒドロキシプロピル-β‐シクロデキストリン0.9% w/vおよび精製水qsを含む。pH=6.70およびオスモル濃度=315 mOsm/kg。該溶液を、使用前に0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過した。
【0065】
この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0066】
実施例8
製剤H
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、皮膚軟化剤としてグリセリン1% w/v、緩衝液としてホウ酸1.18% w/vおよびホウ酸ナトリウム0.12% w/v、浸透増強剤としてn-ドデシル-β-D-マルトシド0.005% w/v、防腐剤として塩化ベンザルコニウム0.005%および精製水qsを含む。pH=6.90およびオスモル濃度=305 mOsm/kg。該溶液を、使用前に0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過した。
【0067】
この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0068】
実施例9
製剤I
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、緩衝液としてリン酸ナトリウム塩六水和物1.88% w/vおよびリン酸二水素ナトリウム塩一水和物0.87% w/v、張度改変剤として塩化ナトリウム0.3 % w/v、安定化剤としてエデト酸二ナトリウム0.01%、防腐剤として塩化ベンザルコニウム0.005% w/v、可溶化剤として
2-ヒドロキシプロピル-
β-シクロデキストリン0.9% w/vおよび精製水qsを含有した。pH= 6.72およびオスモル濃度=325 mOsm/kg。該溶液を、使用前に0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過した。
【0069】
この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0070】
実施例10
製剤J
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、緩衝液としてリン酸ナトリウム塩六水和物1.88% w/vおよびリン酸二水素ナトリウム塩一水和物1.0% w/v、皮膚軟化剤としてポピドンK-30 0.6% w/v、安定化剤としてエデト酸二ナトリウム0.01%、浸透増強剤としてn-ドデシル-β-D-マルトシド0.005% w/v、防腐剤として塩化ベンザルコニウム0.005% w/vおよび精製水qsを含む。pH=6.70およびオスモル濃度=295 mOsm/kg。該溶液を、使用前に0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過した。
【0071】
この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0072】
実施例11
製剤K
この製剤は、有効成分として0.2%スクアラミンジラクテート、皮膚軟化剤としてグリセリン1.0% w/v、張度改変剤としてマンニトール0.05% w/v、緩衝液としてホウ酸1.18 % w/vおよびホウ酸ナトリウム0.12% w/v、張度改変剤として塩化ナトリウム0.4% w/v、浸透増強剤としてn-ドデシル-β-D-マルトシド0.005% w/v、防腐剤として塩化ベンザルコニウム0.005% w/vおよび精製水qsを含む。pH=5.86およびオスモル濃度=285 mOsm/kg。該溶液を、使用前に0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過した。
【0073】
この製剤を、上記製剤と同様の方法にて製造した。
【0074】
実施例12
スクアラミンラクテート製剤に対する安定性試験
製剤GおよびH(上記を参照されたい)を、2週間、1ヶ月、3ヶ月、および6ヶ月間、室温および40℃での安定性について試験した。スクアラミンラクテート濃度を、各時点でHPLCにより評価し(表1)、該製剤の安定性を肉眼観察およびpHにより評価した(表2)。スクアラミンラクテートおよび該製剤は、全ての時点で安定であることが判った。
【0075】
表1:
【表1-1】
【表1-2】
【0076】
表2:
スクアラミンラクテート製剤の安定性
【表2-1】
【表2-2】
【0077】
実施例13
ウサギの眼への局所投与によるスクアラミンラクテート製剤の耐性試験
スクアラミンラクテート製剤Gおよびスクアラミンラクテート製剤H(上記製剤を参照されたい)を、ダッチベルテッド種ウサギに、局所点眼により1日1回として28日間投与した場合の眼の滞留について評価した。ビヒクルコントロールは、スクアラミンラクテートを含まないスクアラミンラクテート製剤であった。
【0078】
試験計画は以下のとおりであった:
【表3】
【0079】
以下のパラメーターおよびエンドポイントをこの試験で評価した:臨床徴候、体重、体重変化、眼科学、眼球内圧、肉眼的眼試験、肉眼的剖検所見および組織学的試験。死亡は観察されず、体重および体重増加に対して処置と関連した効果はなかった。また、処置に関連した眼科的所見、眼球内圧に対する影響もなく、肉眼または顕微鏡的所見もなかった。これらの所見に基づいて、該製剤は安全であり、眼の毒性に関する徴候はなかった。
【0080】
処置と関連した眼の充血および/または分泌(discharge)および稀な膨潤が、
>38.4 μg/kg/日のスクアラミンラクテート製剤Gおよび/または
>39μg/kg/日のスクアラミンラクテート製剤Hおよび/またはビヒクルコントロールBを与えた動物の眼(両眼含む)で見られ、スクアラミンラクテート製剤Hを投与した動物では一般的に増大した事象を伴う。透明な分泌物の軽度の臨床徴候と相関した分泌物の所見は、両方のスクアラミンラクテート製剤を投与した動物およびビヒクルコントロールBを投与した動物において14日目に見られた。これらの所見から、その低い重症度(一般的には、正常からの非常に僅かまたは幾らかの逸脱)および眼科的、肉眼的または顕微鏡的相関性の欠如が示され、副作用がないと考察した。
【0081】
結論として、1日1回の局所点眼による0、38.4、57.6および96μg/kg/日でのスクアラミンラクテート製剤Gの投与および0、39、58.5および97.5μg/kg/日でのスクアラミンラクテート製剤Hの投与は、一般的にダッチベルテッド種ウサギにおいて十分耐性であった。これらの結果に基づいて、観察されない副作用レベル(NOAEL)は、96μg/kg/日(スクアラミンラクテート製剤G)または97.5μg/kg/日(スクアラミンラクテート製剤H)であると考えられ、スクアラミンラクテート製剤Hの全ての用量および時折ビヒクルコントロールBを投与した動物における充血および分泌物に関する僅かな眼の知見に基づくと、スクアラミンラクテート製剤GおよびビヒクルコントロールAは、スクアラミンラクテート製剤HおよびビヒクルコントロールBよりも、より耐性が高いと考えられる。
【0082】
実施例14
眼投与後のダッチベルテッド種ウサギにおけるスクアラミンラクテート製剤の眼の生体内分布試験
【0083】
本試験の目的は、雄ダッチベルテッド種ウサギへの眼投与により1回投与した場合の、スクアラミンラクテート製剤G(上記組成物を参照されたい)の眼の生体内分布を決定することであった。
【0084】
試験計画は下記のとおりである:
試験計画
【表4】
a この用量を各眼に局所点眼として1回投与した。
【0085】
体重測定
値を、無作為化/用量の算定目的のために
取得した。処置と関連する臨床徴候は、眼投与後に観察されなかった。用量投与後に、血液試料を、特定の時点で採取して、血
漿を調製した。血液試料の採取後に、動物を安楽死させて、剖検を行い、以下の眼組織を回収した:房水、硝子体液、感覚網膜および脈絡膜/強膜。血漿および眼の組織を分析して、これらの分析結果を下記表に示した。
【表5】
【0086】
スクアラミンの定量可能なレベルは、いずれの動物の房水または硝子体液中でも検出されず、スクアラミンが、角膜の全ての層を有意に透過しないか、あるいはレンズと接触しないことを確認した。結論として、スクアラミンラクテート量についての眼組織の分析結果は、3時間の時点でさえ、後部強膜および脈絡膜中でHUVAC血管形成を妨害するのに十分なレベルを示す(以下の
図1および実施例15を参照されたい)。それ故に、これらのレベルが、ウェット型AMDにて起こる有害な脈絡膜血管新生(CNV)過程を阻止するのに十分であることが推定される(例えば、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. February 2005 vol. 46 no. 2 454-460 and US patent application publication # 2010/0272719を参照されたい)。
【0087】
実施例15
スクアラミンを用いるHUVECによるVEGF誘導性血管形成の阻害
スクアラミンラクテートを、50、100または200nM濃度の溶液中でヒト血管内皮細胞(HUVEC)の懸濁液と共に混合した。次いで、該懸濁液を、直ぐに血管内皮細胞成長因子(VEGF)を含む複数の成長因子を含有したMatrigel上に播種した。該プレートを、24時間95%O
2/5%CO
2の大気中において37℃でインキュベートし、次いでプレートを撮影した。結果を
図1に示し、スクアラミンが50nM濃度でさえ血管形成を妨害することを示す。
【0088】
多くの文献を引用するが、この全ての開示内容を出典明示により本明細書に組み込む。