(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957002
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】廃ワックス容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20160714BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
G01N1/10 N
G01N1/00 102B
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-538258(P2013-538258)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公表番号】特表2013-542447(P2013-542447A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】GB2011001568
(87)【国際公開番号】WO2012063014
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】1018862.1
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513113596
【氏名又は名称】サーモ シャンドン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイトン クリストファー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】デイビス ロバート
【審査官】
渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−505776(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/023898(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3159663(JP,U)
【文献】
国際公開第2008/032841(WO,A1)
【文献】
米国特許第05665398(US,A)
【文献】
米国特許第04623308(US,A)
【文献】
特開2007−292580(JP,A)
【文献】
特開2001−296220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理関連装置とともに使用し、前記病理関連装置から高温の廃液体ワックスを回収するためのワックス容器であって、
前記ワックス容器は、ワックスを受け入れるためのベース部と、前記ベース部の上面に嵌る蓋部を含み、
前記ワックス容器は、5リットル以上のワックスを受け入れ、
前記蓋部は、ワックス支持手段を含み、
前記ワックス支持手段は、使用時に前記ベース部に受け入れられたワックスと接触し、かつ、前記ベース部のワックスが固化すると、前記固化したワックスが前記蓋部を前記ベース部に固定するワックス容器。
【請求項2】
前記ワックス容器は、回収されたワックスを保持するための筐体を画定し、
前記ワックス支持手段は、前記蓋部から前記筐体に延伸するように配置可能である請求項1に記載のワックス容器。
【請求項3】
前記蓋部は、1以上の開口部を含むように形成され、前記開口部を通ってワックスが前記ベース部に受け入れ可能である請求項1または2に記載のワックス容器。
【請求項4】
前記ワックス支持手段は、前記蓋部の外面に凹部を有する請求項1または2に記載のワックス容器。
【請求項5】
前記蓋部は、1以上の開口部を含むように形成され、前記開口部を通ってワックスが前記ベース部に受け入れ可能であり、
前記1以上の開口部の少なくとも一つは、前記凹部内に設けられる請求項4に記載のワックス容器。
【請求項6】
前記1以上の開口部の少なくとも一つは、前記凹部の底面に設けられる請求項5に記載のワックス容器。
【請求項7】
前記凹部は、前記1以上の開口部に液体ワックスを導く手段を提供する請求項5または6に記載のワックス容器。
【請求項8】
前記凹部の一部は溝を形成し、
前記ワックス容器は、前記溝の端部に開口部を含む請求項7に記載のワックス容器。
【請求項9】
一体に固化した回収されたワックスは、使用時に前記ベース部と前記凹部とのそれぞれに位置する要素を形成し、
前記要素は、前記開口部を通じて、前記蓋部を前記ベース部に対して所定の位置に保持するように接続される請求項5から8のいずれか一項に記載のワックス容器。
【請求項10】
前記ワックス容器内に含まれるガスを、回収されたワックスから放出させるための放出手段を含む請求項1から9のいずれか一項に記載のワックス容器。
【請求項11】
前記放出手段は、さらなる開口部を含む請求項10に記載のワックス容器。
【請求項12】
前記蓋部は、前記放出手段を含む請求項10または11に記載のワックス容器。
【請求項13】
前記放出手段は、前記蓋部の外面に設けられた凹部の外に設けられる請求項12に記載のワックス容器。
【請求項14】
前記蓋部は、前記ベース部の上縁部の周囲で外側に延在する縁部、および、前記ベース部の前記上縁部の周囲で内側に延在する隆起部の少なくとも一方を含む請求項1から13のいずれか一項に記載のワックス容器。
【請求項15】
生理学的な組織サンプルの水分を液体ワックスに置き換えて、前記組織サンプルにワックスを浸漬する病理関連装置であって、請求項1から14のいずれか一項に記載のワックス容器を有し、前記ワックス容器の中に汚れた廃液体ワックスを集めることを特徴とする病理関連装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理関連装置とともに使用し、病理関連装置から液体ワックスを回収するためのワックス容器に関する。特に、本発明は、このような機器から回収されたワックスの安全な処分を可能とし、使い勝手がよい使い捨てのワックス容器に関する。
【0002】
病理関連装置は、組織(組織学的)サンプルなどの生体サンプルを分析用に調製するために使用される。このようなサンプルを調製するために使用される病理関連装置の一種として、ティッシュプロセッサーがある。このような装置では、生検サンプルなどの組織サンプルにワックス、通常にはパラフィンワックスを含浸させることによって組織サンプルを切片化し、極めて容易に取り扱うことができる。例えば、ティッシュプロセッサーを使用すれば、自動的に組織学的(組織)サンプルの保存、脱水およびワックス含浸を行うことができる。一連の試薬の種類が組織サンプルの入った反応容器へ順次供給される。これらの試薬は、(組織を化学的に安定化させ、それ以上の劣化を防ぐことによって)組織を「固定」し、(大部分の水をアルコールに置き換えることによって)組織を脱水し、(アルコールを有機溶剤、例えばキシレンに置き換えることによって)組織を透明化する、かつ、組織に液体ワックスを浸潤させる働きをする。
【0003】
この処理は、その水分が液体パラフィンワックスに置き換えられた化学的に安定な組織サンプルを作製する。ワックスが浸潤した組織サンプルは、ティッシュプロセッサーから取り出して冷却すると、強固に支持され、診断行為が行えるような極めて薄い(数ミクロンの)切片を採ることができる。
【0004】
この処理は組織サンプルの液体成分を他の液体に置き換えるものであるので、この処理サイクルでは、使用する液体に前の液体が徐々に混入する(例えば、液体ワックス浸潤試薬に、最後に使用した透明化有機溶剤が混入する)。この混入を解消するために、周期的に、試薬をティッシュプロセッサーから排出し、新しいものに入れ替える。
【0005】
このワックス包埋組織サンプル作製法では、廃ワックスが高温の液体ワックスの形で生成される。高温の液体ワックスは、その温度のために取り扱いが危険であるだけでなく、該ワックスは生体材料(病理学的生体材料である場合が多い)を含有する可能性があり、溶媒が混入する可能性があるので、不測の混入/使用者の感染を避けるために注意を払って取り扱い、処分しなければならない。本発明者らは、このワックス除去法と顧客との接点(カスタマーインタラクション)を、できる限り簡単かつ危険のないものとすることが重要であると考えた。
【0006】
現在、多くの場合、廃ワックスは、ティッシュプロセッサーなどの病理関連装置により、
図1に示されるような(廃)ワックス容器に蓄積されている。このような従来の廃ワックス容器は、多くの場合、成型されたプラスチックベース部1002とベース部に嵌る蓋部1003を有する再利用可能な、すなわち、非使い捨ての容器1001の形態で提供される。
【0007】
一般に、使用者は、ライナーとして機能させ、かつ、排出された廃(液体)ワックスを受け入れるために、使い捨てポリエチレンバッグ1004をベース部に置く。必要な処理の後、廃ワックス容器は装置から取り出されるが、使用者は、そのワックスを使い捨てポリエチレンバッグ中で固化した後に、そのバッグと固化したワックス本体の双方を「ブロック」として取り出して処分するか、または使用者は(高温の)液体ワックスを使い捨てバッグから別の容器へ注ぎ、そこでそれを固化させた後に処分するか、のいずれかを行う。
【0008】
いずれにしても、次に、使用者は、次回のワックス廃棄物が装置から回収される必要に備えて、新たな空のポリエチレンバッグを同じ容器に装着する。
【0009】
しかしながら、第1の場合では、ワックスが固化するのに長い時間がかかる場合があるので、使用者は都合のよい時期に新たな空のポリエチレンバッグをワックス容器に再装着することができない場合がある。さらに、固化したワックスとポリエチレンバッグの「ブロック」を処分するためにワックス容器から取り出さなければならないので、生物学上有害な可能性があり、かつ溶媒が混入した材料に使用者が曝されるリスクがある。
【0010】
第2の場合では、高温の液体ワックスで満たされたポリエチレンバッグを容器から取り出す際に使用者が火傷を負うおそれがあるという大きな危険性がある。また、この場合にも、生物学上有害であり、かつ、溶媒が混入した材料に曝される危険性がある。
【0011】
本発明は少なくともこれらの問題を鑑みて考案されたものである。
【発明の概要】
【0012】
第1の態様において、本発明は、病理関連装置とともに使用し、病理関連装置から(例えば高温の)液体ワックスを回収するためのワックス容器であって、容器はワックスを受け入れるためのベース部と、ベース部の上面に嵌る蓋部とを含み、蓋部はワックス支持手段を含み、ワックス支持手段は、使用時にベース部に受け入れられたワックスと接触し、かつ、ベース部のワックスが固化すると、固化したワックスが蓋部を所定の位置に保持するように延在するワックス容器を提供する。
【0013】
このワックス容器は、ワックスが固化する前または固化した後に装置から取り出すことができるが、一度ワックスが固化したら、支持手段と固化したワックスの係合により容器は開かないようにロックされる点が有利である。その後、固化したワックスと使い捨てワックス容器とが一緒に、安全かつ確実な方式で処分することができる。さらに、本発明は、有利なことに、固化したワックスが実質的に密閉された容器に保持されるようにし、それにより、ワックス中に含まれる可能性がある生物学上有害で、かつ、溶媒が混入した材料に使用者が曝されるリスクを最小とする。
【0014】
本発明のワックス容器は、病理関連装置、例えば(密閉型)ティッシュプロセッサーとともに使用するのに適した専用容器である。ワックス容器は、病理関連装置により排出された液体廃パラフィンワックスを受け入れるのに適している。容器は約65℃の温度までの液体ワックスとの接触に耐えることができなければならない。保持するのに適するワックスは、パラフィンワックスでよい。
【0015】
別の態様において、本発明は、病理関連装置とともに使用し、病理関連装置から液体ワックスを回収するためのワックス容器であって、容器はワックスを受け入れるためのベース部とベース部の上面に嵌る蓋部とを含み、蓋部はベース部の上縁部の周囲で外側に延在する縁部(リップ)を含み、さらに、(好ましくは)ベース部の上縁部の周囲で内側に延在する隆起部(リッジ)を含むワックス容器を提供する。
【0016】
この隆起部は容器の構造的な剛性を向上させる点で有利であるが、ワックス容器は高温の溶けたワックスで満たされている場合があり、ワックス容器は使い捨てされることから、それ自体、構造的な剛性が比較的低いと考えられる薄く、軽く、安価な材料からなることを考えれば、前述のことは極めて重要である。
【0017】
好ましくは、縁部(付加的な隆起部を用いずに提供され得る)は、蓋部とベース部を一緒にロックし、前記ロックは解除可能であるようにベース部の上縁部と係合可能であり、例えば、その結果、容器は高温の液体ワックスが入っていても安全に操作することができる。好ましくは、ベース部の上縁部は、蓋部の縁部と解除可能かつロック可能に係合される。
【0018】
好ましくは、縁部は、その縁部の周囲で外側に延在するフランジを含んでもよい。ベース部の上縁部は、蓋部の隆起部および/または縁部と係合し、好ましくは合致する形状であり、例えば、その結果、ベース部と蓋部は相互に(互いに)解除可能にロック可能となる。
【0019】
別の態様において、本発明は、病理関連装置とともに使用し、病理関連装置から液体ワックスを回収するためのワックス容器であって、容器はワックスを受け入れるためのベース部とベース部の上面に嵌る蓋部とを含み、ベース部と蓋部とは、(例えば、容器がワックスで満たされる前において)、蓋部がいつでも開閉可能にベース部に取り付けられている状態を維持するように、一つの部品として製造されるワックス容器を提供する。
【0020】
そして、蓋部とベース部は、完全には分離できないことが有利であり、そうでなければ、望ましくないことに、適切な蓋を探している間に病理関連装置の操作を中断することがある。それはまた、廃ワックスで満たされたベース部を(実質的に)密閉するためにいつでも利用できる蓋部があり、それにより、火傷から防護し、ワックス中に含まれている生物学上有害であり、かつ、溶媒が混入した材料から防護するという付加的な有利な安全上の特徴をもたらす。
【0021】
別の態様において、本発明は、病理関連装置とともに使用し、病理関連装置から液体ワックスを回収するためのワックス容器であって、容器はワックスを受け入れるためのベース部とベース部の上面に嵌る蓋部とを含み、ベース部と蓋部とは壁断面の平均の厚さが約1mmより小さいポリエステル(PET)で製造されるワックス容器を提供する。よって、ワックス容器は比較的安価に製造することができ、消費者が本発明のワックス容器を使い捨てであると認識しやすい。さらに、使用される材料の重量が軽いため、有利なことに、廃棄物の処分による影響も小さく抑えられる。
【0022】
本発明によれば、前述した1以上の態様を他の1以上の態様と組み合わせてもよい。さらに、このような組合せ(または、実際には一つの態様)のいずれかを、本明細書に述べたいずれかの付加的な特徴と組み合わせてもよい。
【0023】
好ましくは、容器は回収されたワックスを保持するための筐体を画定し、支持手段は蓋部から筐体に延伸するように配置可能である。よって、使用時には、液体ワックスが固化し、支持手段と係合し、蓋部をベース部に対して所定の位置に保持する。
【0024】
好ましくは、蓋部は、1以上の開口部を含むように形成され、開口部を通ってワックスがベース部に受け入れ可能であり、好ましくは、1以上の開口部のうち少なくとも一つは凹部内に設けられる。凹部(この凹部は開口部を通じてベース部内の(固化した)ワックスと接している)中に保持された(固化した)ワックスは、蓋部が開かないように保持するように協働する。好ましくは、1以上の開口部のうち少なくとも一つは凹部の底面に設けられる。
【0025】
有利なことに、このことが、(ベース部にワックスを受け入れるために利用可能な空間が存在しつつ)凹部内の液体ワックスが漏斗のようにベース部に集められ、固化して早期に開口部を遮断するほど長くは凹部に留まらないようにするのに役立つ。
【0026】
実際には、好ましくは、凹部は液体ワックスを1以上の開口部へ導くための手段となるように構成され、その結果、漏斗のように液体を集めるのに役立つ。
【0027】
好ましくは、凹部の一部は溝を形成し、容器は溝の端部に開口部を含む。従って、使用中、ワックス容器が水平でなくても、凹部中に蓄積されたワックスは漏斗のように適切にベース部に集められる。さらに、例えばワックスが早期に固化して開口部の一つが望ましくない閉鎖をしても、本発明はワックスが底部へと流出できる別の手段を提供する。
【0028】
好ましくは、一体に固化した回収されたワックスは、ベース部と凹部とのそれぞれに位置する要素を有するように形成可能であり、これらの要素は開口部を通じて、蓋部をベース部に対して所定の位置に保持するように接続される。
【0029】
好ましくは、容器は、容器内に含まれる流体、例えば気体、特に空気を、回収されたワックスから放出させるための放出手段を含む。有利なことに、このことは、ベース部内の(液体)ワックスのレベルが、蓋部に形成された(好ましくは、凹部に形成された)開口部に達した際に、ワックスの「泡」(ヘッド)が凹部内には形成されず、容器の有効容積が廃ワックスを受け入れるために使用できることを意味する。従って、好ましくは、放出手段は蓋部に形成される。さらに好ましくは蓋部の凹部以外の領域に形成されるさらなる開口部を含み、それを通して気体、例えば空気、を容器内から放出させることができる。
【0030】
好ましくは、蓋部は、ベース部の上縁部の周囲で外側に延在する縁部および/またはベース部の上縁部の周囲で内側に延在する隆起部を含む。より好ましくは、この縁部は、蓋部とベース部とを一緒にロックするようにベース部の上縁部と係合可能であり、前記ロックは解除可能である。
【0031】
好ましくは、ベース部と蓋部とは、蓋部がいつでも開閉可能にベース部に取り付けられる状態を維持するように、一つの部品として製造される。
【0032】
好ましくは、蓋部とベース部とは、常に(例えば使用前、従って支持手段が、蓋が閉じている状態を保持するために(固化した)ワックスによって係合される前)、蓋部がベース部に開閉可能に取り付けられている状態を維持するように可動手段により相互に取り付けられ、それにより、ワックス容器の内部を利用できる。
【0033】
従って、好ましくは、蓋部とベース部とは、蓋部がベース部に開閉可能に取り付けられている状態を維持する可動手段により相互に取り付けられている。好ましくは、この手段は、蓋部および/またはベース部と一体形成されたフレキシブル部を含み、それにより、一つの部品として安価に製造できるワックス容器となる。実際には、好ましくは、ベース部、蓋部および可動手段は全て同じ材料から一体形成され、それにより、一つの部品として安価に製造できるワックス容器となる。
【0034】
好ましくは、可動手段、ベース部および蓋部は、全て、例えば、壁断面の平均の厚さがおよそ1mm未満の、ポリエステル(PET)またはポリプロピレン(PP)から形成される。好ましくは、それらはおよそ0.6mmより大きい厚さを有するように形成される。
【0035】
よって、ベース部の、その壁面または各壁面は、好ましくは、上縁部とベース部の底面との間にかかる圧縮力による変形に耐える形状である。より好ましくは、ベース部の、その壁面または各壁面は、上縁部とベース部の底面との間にかかる圧縮力による変形に耐えるための1以上のリブを含む。より好ましくは、そのリブまたは各リブは、ベース部の側壁の内側で延在するように形成される。リブまたは各リブは、側壁内の細長い溝の形態で設けることができる。有利なことに、このことは、また、ワックス容器のベース部の表面積を大きくする効果を有し、これにより、容器内に含まれる液体ワックスがより速く冷め、従って、より速く固化する。
【0036】
好ましい実施形態では、ベース部は、ワックス容器のより容易かつ安全に取り扱うための取手を含む。
【0037】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるワックス容器を含む病理関連装置、特に、ティッシュプロセッサーを提供する。
【0038】
以下、添付の図面を参照し、本発明の一例をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】病理関連装置から廃ワックスを受け入れるための従来のワックス容器を示す図である。
【
図6】蓋部とベース部とを一緒に解除可能にロックして保持するための係合手段の横断面図である。
【
図7】蓋部とベース部とを一緒に解除可能にロックして保持するための係合手段の横断面図である。
【0040】
図1に従来の廃ワックス容器1001を示す。容器1001は、再利用可能な、すなわち、使い捨てでない形で提供される場合が多い。容器1001は、成型プラスチックのベース部1002と、ベース部に嵌る成型プラスチックの蓋部1003を有する。蓋部1003は開口部1005を含み、それを通って液体ワックスがベース部1002に流入できる。
【0041】
一般に、使用者は、使い捨てポリエチレンバッグ1004(内装(ライナー)として機能する)をベース部に入れることが期待される。病理関連装置からの廃ワックス(多くの場合、高温の液体ワックス)は、この容器に受け入れられ、ベース部1002を覆うバッグ内に留まる。
【0042】
見て取れるように、一般に、この蓋はその外辺部に、ベース部1002の上縁部の上に設置するための、外側に突出したフランジ1006を含む。このフランジの存在は、使い捨てバッグ1004を所定の位置に保持するようにし、ベース部1002の上縁部とフランジ1006とが協働して、バッグ1004を所定の位置に保持するように挟み込む。
【0043】
図2は、ベース部12と蓋部14とを含む本発明のワックス容器10の一例の斜視図である。蓋部は、(使用前は)容器の内部を利用できるように、開閉可能であることが好ましい。
【0044】
ワックス容器は、好ましくは蓋部14内に形成された凹部16または凹みの形態の支持手段を含む。凹部16の好ましい構成は、
図3に示される蓋部14の平面図に示されている。見て取れるように、蓋部14は、好ましくは凹部16内に形成された、好ましくは(1または)2(または、それより多い)開口部20を含む。使用時に、高温の廃液体ワックスは、ティッシュプロセッサーなどの病理関連装置によって凹部16中に蓄積され、開口部20へと流れ、次に開口部20を通ってベース部12に流入すると考えられる。ベース部12にある間に、高温の液体ワックスは冷却され、固化する。この病理関連装置と容器とは、ワックスが凹部内に流入する必要がなく、廃ワックスが直接開口部20を通って蓄積されるように相互に構成してもよい。
【0045】
図2から見て取れるように、凹部は好ましくは、容器10の内部へ、すなわち、容器10により設けられているワックス保持空間に向かって延伸する。図示されている例では、このワックス保持空間は主としてベース部12により画定されている。
【0046】
図4で見て取れるように、蓋部の、ベース部の底面からの高さはXであり、凹部の底面の、ベース部の底面からの高さはYであり、Y<Xである。
【0047】
従って、使用時、ベース部12内の廃ワックスの水位は、廃ワックスが多く蓄積するにつれて上昇する。ワックスのレベルが高さYに達すると、凹部内に蓄積したワックスの少なくとも一部が凹部内に留まる(これは
図4に示されている破線により示される)。冷却し固化すると、単体の固体ワックスが形成され、これは凹部16に位置する第1の要素とベース部12に存在する第2の要素を有し、この第1および第2の要素は開口部20を通って互いに連結され、それにより、蓋部4をベース部12に効果的にロックする。
【0048】
言い換えれば、一般的には、本発明の支持手段は、容器10(好ましくはベース部12)に保持されるワックスと接触し、固化したワックス中に包埋されるように蓋部14から延在するように構成される。従って、本発明の態様において、包埋された支持手段は、蓋部14を所定の位置に保持するアンカーとして働く。
【0049】
よって、本発明は、前述したように、容器10の内部(ワックス受け入れ)空間へ延在し、蓋部14内に形成された凹部の形態で支持手段を有するが、本発明は、この実施形態に限定されると考えるべきではなく、他の構成も意図される。例えば、支持手段は、蓋部からワックス容器のワックス受け入れ空間に向かって突出した適切な形状の部材でもよく、この場合には、蓋部14の凹部またはくぼみは存在しない。この突出部材は、一般にT型に突出し、またはJ型(フック型)に突出した形態で設けてもよい。この突出部材には、(一般に)その部材の側方を外側に向かって延在する1以上のリブを設けてもよい。突出部材はねじ状であってもよい。複数の突出部材が支持手段として設けられてもよい。
【0050】
放出手段は、容器、例えば蓋部に、好ましくは、さらなる開口部22の形態で設けられることが好ましい。ベース部のワックスレベルは高さYまで上昇するが、蓋部14がベース部12の上縁部で良好な(例えば、気密性の)密閉状態を形成すれば、
図4に示されている領域「A」に存在し、圧縮に抵抗している空気(または他の気体もしくは流体)のために、凹部内に液体ワックスの「泡」(ヘッド)が生じるリスクがある。従って、本発明者は、この空気を放出させ、それにより、ベース部のワックスレベルの上昇を継続させ、凹部にワックスの泡が形成されることを防ぐのを助けるための手段を、付加的な機能として含めることを提案する。従って、容器内の廃ワックスのレベルは高さXに容易に達することができ、有効空間を最適に使用することができる。
【0051】
容器は一つの部品として製造される。このため、ベース部12と蓋部14とは、例えば容器にワックスが満たされる前は、蓋部がベース部と開閉可能に取り付けられ、連結されることが意図される。従って、蓋部14は、好ましくは、例えば蝶番などの可動手段によってベース部12に連結される(図には示されていない)。好ましくは、蓋部、蝶番手段およびベース部は全て一体に形成される。好ましくは、それらは全て同じ材料から形成される。
【0052】
図6および
図7に示されるように、蓋部には、ベース部12の上縁部の周囲で外側に延在する縁部(リップ)24を設けることが好ましい。好ましくは、この縁部は、ベース部と蓋部の間を解除可能にロックできる嵌合を形成するように、ベース部12の上縁部と係合するように構成される。付加的には、ベース部の上縁部は、ベース部と蓋部との間に解除可能にロックできる嵌合を形成するよう縁部24と係合できる適切な形状にすればよい。
【0053】
好ましくは、
図7に示されるように、蓋部はまた、例えば蓋部が閉じた位置にある場合に、ベース部分の上縁部の周囲で内側に延在する隆起部(リッジ)26も含み、この隆起部はそれにより蓋部14に付加的な構造的剛性を与え、好ましくは、ベース部12の側壁が内側へのたわみの防止を助けることによって容器10全体に付加的な構造的剛性を与える。
【0054】
使用者は、本発明のワックス容器を使い捨てと見ることが想定される。従って、ベース部および/または蓋部(および/または、設けられている場合には可動手段)は、使用温度に耐え、かつ、病理関連装置、例えばティッシュプロセッサーに使用される処理溶媒に耐える材料から製造されることが好ましい。ベース部および/または蓋部(および/または設けられている場合には可動手段)は、製造コストを最小とし、それにより、使用者が1回だけ使用した後にためらいなく処分できる安価なものを生産する助けとするために、ポリエステル(PET)および/またはポリプロピレン(PP)製であることが好ましい。
【0055】
好ましくは、この容器は、壁断面の平均の厚さがおよそ1mmより小さくとなるように形成され、それにより、製造コストも輸送コストも低く抑えられ、また、製品の使い捨てという性質による環境上の影響を最小化するように形成される。好ましくは、その構造に十分な構造的剛性を与えるために、この容器の平均壁厚はおよそ0.4mm以上、より好ましくはおよそ0.5mm以上、または、さらに好ましくはおよそ0.6mmとする。好ましくは、平均壁厚はおよそ0.6mmである。好ましくは、本発明のワックス容器が空のときの総重量は、0.075kg以上、より好ましくは0.10kg以上であり、または、さらに好ましくは、およそ0.15kgである。本発明のワックス容器が空のときの総質量は、およそ0.15kgであることが好ましい。
【0056】
好ましくは、ワックス容器10の構造的剛性をさらに高めるために、1以上のリブ28を設ける。好ましくは、リブ28は、容器がベース部12の底面と蓋部14との間にかかる圧縮力に耐えるように構成される。好ましくは、リブ28は、ベース部12の側壁が内側および/または外側へのたわみに耐えるように構成される。好ましくは、これらのリブ28は、ベース部12の底面とベース部12の上縁部との間の少なくとも一部分に延在するように構成される。好ましくは、リブは、ベース部12の側壁の内側(または外側)に向かって突出する。リブ28は、ベース部12の側壁に凹みとして形成してもよい。リブ28は付加的な構造的剛性を与えるだけでなく、ベース部12の全表面積を大きくするためにも役立つ。このことは、容器10に保持された液体ワックスが早く冷めて固化するのを助ける。このことは、ワックスが固化するまでの時間を短縮することができるので、例えば、ワックスが液体状である高温のままでは、使用者がワックス容器を動かせない場合に有利である。
【0057】
好ましくは、ワックス容器10のより安全な取り扱いを容易にするために、取手30を好ましくはベース部12に設ける。取手30は、例えばベース部の側壁に、使用者の1本以上の指の少なくとも一部を受け入れるのに好適な突出部(リップ)が付いた凹部の形態で設けてもよい。
【0058】
使用者を助けるため、容器に保持されているワックスの容量を使用者に示すワックスレベル表示を、ワックス容器、好ましくは、ベース部に設けてもよい。ワックス容器は最大5または6リットルのワックスを保持することが想定される。この容器はそれより多いワックス、例えば、最大10リットルのワックスを保持してもよい。
【0059】
本発明を好ましい実施形態に関して記載してきたが、これらの実施形態の変形、さらなる実施形態およびその変形も当業者には明らかであり、従って、それらも本発明の範囲内にある。
【0060】
本発明は、記載されている態様および好ましい態様の組み合わせも、そのような組み合わせが明らかに許容されないものであるか、または明らかに避けられる場合を除いて含む。