【氏名又は名称】アソシアティオン プーラ リシェルシェ エ ル デベロップメン デ メソッド エ プロセサス アンダストリエル(ア.エル.エム.イ.エヌ.エ.エス.)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一実施例では、重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーの融点より20〜100℃高い温度、好ましくはこの融点より30〜80℃高い温度で水の存在下で押出段階を実施する。
本発明の一実施例では、重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーに対する水の重量比率を1〜50%、好ましくは5〜30%にする。
本発明の一実施例では、重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーがコポリエーテル−ブロック−アミド、コポリエーテル−ブロック−ウレタン、コポリエステル−ブロック−ウレタン、コポリエーテル−ブロック−エステルおよびこれらの混合物から選択され、好ましくはコポリエーテル−ブロック−アミドである。
【0008】
本発明の一実施例では、重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーは1〜80重量%のポリエーテルブロックと20〜99重量%のポリアミドブロック、好ましくは4〜80重量%のポリエーテルブロックと20〜96重量%のポリアミドブロックを含むコポリエーテル−ブロック−アミドである。
本発明の一実施例では、コポリエーテル−ブロック−アミドが軟質ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックである。
【0009】
本発明の一実施例では、ポリアミドがポリアミド12である。
本発明の一実施例では、重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーを、水を除く他の全ての化合物の非存在下で押し出す。
本発明の一実施例では、重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーを、重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーと一緒に複合材料を形成できる追加の化合物の存在下で押し出す。この追加の化合物は好ましくは感熱充填剤である。
【0010】
本発明の一実施例では、押出段階の最後に少なくとも一つの成形品を製造する段階を含む。
本発明の一実施例では、押出段階の最後に顆粒を製造する段階を含む。
本発明の一実施例では、顆粒の溶融、押出し、金型中への射出の一連の段階を含み、それによって少なくとも一つの成形品を得る。
【0011】
本発明方法によって従来技術の欠点を克服することができる。特に、本発明は従来技術の方法に比べて押出中のポリマーの分解が少ない重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーの成形方法を提供する。
【0012】
これは、ポリマーの押出中に水を添加することによって達成される。重縮合したエラストマー状の熱可塑性ポリマーは一般に加水分解に弱い(特にポリアミドブロックおよび脂肪族エステル基)ので、この結果は驚くべきものである。特定の理論に拘束されるものではないが、本発明者は水の存在によって押出中に材料を可塑化でき、潤滑でき、それによって熱分解から保護されると考える。さらに、加水分解の反応速度が比較的遅くなり、ポリマーと水との接触時間が短くなる(一般に約30秒以内)ため、水の存在によって実質的加水分解が生じることはない。
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
「エラストマー状の熱可塑性ポリマー」とは、少なくとも2つの遷移温度すなわち温度T1での第1遷移(これは一般にガラス遷移温度である)とT1より高い温度T2での第2遷移(これは一般に融点である)とを示す多相材料を構成するポリマーを意味する。この材料はT1以下の温度ではリジッドであり、T1とT2との間では弾性的挙動を有し、T2以上では溶解する。このようなポリマーはゴムタイプの材料の弾性的挙動と、熱可塑性樹脂の変換特性とを併せ持つ。
【0014】
「重縮合したポリマー」とは縮合段階の組み合わせで得ることができるポリマーを意味する。縮合段階の各段階でさい分子(例えば水分子)は除去される。
本発明で用いるポリマーはコポリエーテル−ブロック−アミド、コポリエーテル−ブロック−ウレタン、コポリエステル−ブロック−ウレタン、コポリエーテル−ブロック−エステルおよびこれらの混合物から成る群の中から選択できる。
【0015】
本発明方法の実施には、相対的に疎水性のポリマーを除いて、水と良好な混和性を示すポリマーを使用することが前提になる。分解の制限の点で特に驚くべき且つ有利な結果は、コポリエーテル−ブロック−アミドで得られる。
【0016】
コポリエーテル−ブロック−アミド(ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するコポリマー(略称PEBA)ともよばれる)は下記(1)〜(3)のような反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの重縮合で得られる:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(2)ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化α、ω−ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素化して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール(この場合に得られる生成物を特にポリエーテルエステルアミドという)。
【0017】
ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジカルボン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジアミンの存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
ポリアミドブロックの数平均分子量Mnは400〜20000g/mol、好ましくは500〜10000g/molである。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。
【0018】
3つのタイプのポリアミドブロックが有利に使用できる。
第1のタイプでは、ポリアミドブロックはジカルボン酸、特に4〜20の炭素原子を有するもの、好ましくは6〜18の炭素原子を有するものと、脂肪族または芳香族ジアミン、特に2〜20からの炭素原子を有するもの、好ましくは6〜14の炭素原子を有するものとの縮合で得られる。
ジカルボン酸の例としては1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、コルク酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸およびダイマー化した脂肪酸を挙げることができる。
【0019】
ジアミンの例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)の異性体、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)の異性体、および、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、および、ジ(パラ−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、およびイソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、およびピペラジン(Pip)を挙げることができる。
【0020】
PA−4,12、PA−4,14、PA−4,18、PA−6,10、PA−6,12、PA−6,14、PA−6,18、PA−9,12、PA−10,10、PA−10,12、PA−10,14およびPA−10,18ブロックを使用するのが有利である。
【0021】
第2のタイプでは、ポリアミドブロックが一種または複数のα,ω−アミノカルボン酸および/または6〜12の炭素原子を有する一種または複数のラクタムを4〜12の炭素原子を有するジカルボン酸またはジアミンの存在下で縮合して得られる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリラクタムが挙げられる。α,ω−アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。
第2のタイプのポリアミドブロックはポリアミド−11、ポリアミド−12またはポリアミド−6ブロックであるのが有利である。
【0022】
第3のタイプでは、ポリアミドブロックは少なくとも一種のα,ω−アミノカルボン酸(またはラクタム)と、少なくとも一種のジアミンと、少なくとも一種のジカルボン酸との縮合で得られる。
【0023】
この場合は、ポリアミドPAブロックは下記(1)〜(3):
(1)Xの炭素原子を有する一種以上の直鎖の脂肪族または芳香族ジアミン、
(2)Yの炭素原子を有する一種以上のジカルボン酸、および、
(3)一種以上のコモノマー{Z}であって、Zの炭素原子を有するラクタムおよびα、ω−アミノカルボン酸およびX1の炭素原子を有する少なくとも一種のジアミンとY1の炭素原子を有する少なくとも一種のジカルボン酸との等モル混合物であって、(X1,Y1)が(X,Y)とは異なる等モル混合物の中から選択される一種以上のコモノマー{Z}、
の重縮合で調製され、
上記コモノマー{Z}は、ポリアミド先駆体モノマーの全重量に対して50%以下、好ましくは20%以下、さらに有利には10%以下の重量比率で導入され、
重縮合はジカルボン酸の中から選択される連鎖制限剤の存在下で行う。
【0024】
Yの炭素原子を有するジカルボン酸を連鎖制限剤として用い、一種以上のジアミンの化学量論に対して過剰に導入するのが有利である。
この第3のタイプの一変形例では、ポリアミドブロックは6〜12の炭素原子を有する少なくとも2種のα,ω−アミノカルボン酸または少なくとも2種のラクタムまたは一種のラクタムと、炭素原子の数が同じではない一種のアミノカルボン酸とを必要に応じて連鎖制限剤の存在下で縮合して得られる。
【0025】
脂肪族α,ω−アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリラクタムが挙げられる。脂肪族ジアミンの例としてはヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。脂環式二酸の例としては1,4−シクロヘキシルジカルボン酸が挙げられる。
【0026】
脂肪族二酸の例としてはブタンジオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー化脂肪酸(このダイマー化脂肪酸はダイマー含有量が少なくとも98%であるのが好ましく、水素化されているのが好ましく、UNICHEMA社から商品名Pripol(登録商標)で市販またはHENKEL社から商品名Empol(登録商標)で市販されている)およびα,ω−ポリオキシアルキレン二酸が挙げられる。
【0027】
芳香族二酸の例としてはテレフタル(T)酸およびイソフタル(I)酸が挙げられる。脂環式ジアミンの例としてはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)およびジ(パラ−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)の異性体が挙げられる。一般に用いられるその他のジアミンとしてはイソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンが挙げられる。
【0028】
第3のタイプのポリアミドブロックの例としては下記が挙げられる:
(1)6.6/6(6.6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を示し、6はカプロラクタムの縮合で得られる単位を示す)
(2)6.6/6.10/11/12(6.6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを示し、6.10はセバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを示し、11はアミノウンデカン酸の縮合で得られる単位を示し、12はラウリルラクタムの縮合で得られる単位を示す)
【0029】
ポリエーテルブロックの分子量Mnは100〜6000g/モル、好ましくは200〜3000g/モルである。
【0030】
ポリマーは、1〜80重量%のポリエーテルブロックと20〜99重量%のポリアミドブロック、好ましくは4〜80重量%のポリエーテルブロックと20〜96重量%のポリアミドブロックを含むのが好ましい。
【0031】
ポリエーテルブロックはアルキレンオキシド単位からなり、この単位は例えばエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位またはテトラヒドロフラン単位にすることができる(ポリテトラメチレングリコール鎖となる)。PEG(ポリエチレングリコール)ブロックすなわちエチレンオキシド単位からなるもの、PPG(プロピレングリコール)ブロックすなわちプロピレンオキシド単位からなるもの、PO3G(ポリトリメチレングリコール)ブロックすなわちトリメチレンエーテル単位からなるもの(ポリトリメチレンエーテルブロックを有するこのようなコポリマーは特許文献2に記載されている)およびPTMGブロックすなわちポリテトラヒドロフランともよばれるテトラメチレングリコール単位からなるものが用いられる。PEBAコポリマーはその鎖中に複数のタイプのポリエーテルを含むことができ、コポリエーテルをブロックまたはランダムタイプのコポリエーテルにすることができる。
【特許文献2】米国特許第6 590 065号明細書
【0032】
ビスフェノール、例えばビスフェノールAのオキシエチル化によって得られるブロックを用いることもできる。後者の化合物は下記文献に記載されている。
【特許文献3】欧州特許第613 919号公報
【0033】
ポリエーテルブロックはエトキシル化第1アミンで構成することもできる。エトキシル化第1アミンの例としては下記式の化合物が挙げられる:
【化1】
【0034】
(ここで、mおよびnは1〜20で、xは8〜18である)
この化合物はセカ(CECA)社から商品名NORAMOX(登録商標)およびCLARIANT社から商品名GENAMIN(登録商標)で市販されている。
【0035】
軟質ポリエーテルブロックはNH
2鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックを含むことができ、このブロックはポリエーテルジオールとよばれる脂肪族α,ω−ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックをシアノアセチル化して得ることができる。特に、ジェファミン(例えばハンツマン(Huntsmann社)の製品であるジェファミン(登録商標)D400、D2000、ED2003、XTJ542および特許文献4〜6に記載のもの)を用いることができる。
【特許文献4】特開2004‐346274公報
【特許文献5】特開2004‐352794公報
【特許文献6】欧州特許第1,482,011号公報
【0036】
ポリエーテルジオールブロックをそのまま用い、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合するか、アミノ化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと縮合する。PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合を有するPEBAコポリマーの2段階調製の一般的な方法は公知であり、例えば下記文献に記載されている。
【特許文献7】フランス特許第2,846,332号公報
【0037】
PAブロックとPEブロックとの間にアミド結合を有する本発明のPEBAコポリマーを製造する一般的方法は公知であり、例えば下記文献に記載されている。
【特許文献8】欧州特許第1,482,011号公報
【0038】
ポリエーテルブロックと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを混合して、ランダムに分散した単位を含むポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーを製造することもできる(一段階法)。
本明細書のPEBAは、アルケマから市販のPEBAX(登録商標)ポリマー、Evonik(登録商標)から市販のVestamid(登録商標)ポリマー、EMSから市販のGrilamid(登録商標)、DSMから市販のKellaflex(登録商標)ポリマーまたはその他の供給業者からの他の任意のPEBAを意味することは理解できよう。
【0039】
PEBAコポリマーはPA6、PA11、PA12、PA6.12、PA6.6/6、PA10.10および/またはPA6.14からなるPAブロック、好ましくはPA11および/またはPA12ブロックと、PTMG、PPGおよび/またはPO3GからなるPEブロックとを有するのが有利である。主としてPEGから成るPEブロックをベースにしたPEBAは親水性PEBAに分類される。主としてPTMGから成るPEブロックをベースにしたPEBAは疎水性PEBAに分類される。
本発明の組成物中で用いられるPEBAは少なくとも一部がバイオ資源原料から得られるのが有利である。
【0040】
「再生可能原料」または「バイオ資源原料」とは、バイオ資源炭素または再生可能炭素を含む材料を意味する。すなわち、化石原料由来の材料に対して、再生可能原料から成る材料は
14Cを含む。「再生可能炭素の含有率」または「バイオ資源炭素の含有率」はASTM規格D6866(ASTM D 6866−06)およびASTM規格D7026(ASTM D 7026−04)で決定される。一例では、ポリアミド11をベースにしたPEBAは少なくとも一部がバイオ資源原料に由来するので、バイオ資源炭素含有率は少なくとも1%であり、これは少なくとも1.2×10
-14の
12C/
14C同位体比に対応する。本発明のPEBAは炭素の全重量に対して少なくとも50重量%のバイオ資源炭素を含むのが好ましい。これは少なくとも0.6×10
-12の
12C/
14C同位体比に対応する。この含有率はさらに高く、特に最大で100%であるのが有利であり、これは再生可能原料から得られるPO3G、PTMGおよび/またはPPGを有するPA11ブロックおよびPEブロックを有するPEBAの場合の1.2×10
-12の
12C/
14C同位体比に対応する。
【0041】
軟質ポリ(オキシアルキレン)ブロックとポリウレタンブロックとを含むコポリエーテル−ブロック−ウレタンも使用できる。
【0042】
ポリウレタンブロックはジイソシアネートとジオールの反応で得られる。
軟質ポリエーテルブロックはPEBAに関連して上記で説明したものにすることができる。
軟質ポリ(オキシアルキレン)ブロックとポリエステルブロックとを含むコポリエーテル−ブロック−エステルも使用できる。
【0043】
ポリエステルブロックは、ジカルボン酸、例えばイソフタル酸またはテレフタル酸またはバイオ起源のジカルボン酸(例えばフランジカルボン酸)を、グリコール、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコールまたはテトラメチレングリコールでエステル化することによる、重縮合によって得られる。
軟質ポリエーテルブロックはPEBAに関連して上記で説明したものにすることができる。
【0044】
本発明の方法は押出機(例えば二軸押出機)への固体状態の上記ポリマーの供給と、押出機への水の供給とを含む。ポリマーを溶かして水と混合する。水は水蒸気のベントで除去され(ベント口を介して)、その後、押出機からポリマーを出すか、または、必要に応じて両者を同時に押出機から出す。
【0045】
水の量はポリマーの量に対して1〜50%、好ましくは5〜30%の重量比率で導入するのが好ましい。押出機中の水の存在によって、コポリエーテル−ブロック−エステルアミドタイプのポリマーの場合は押出温度を例えば約10〜60℃だけ下げることができる。
【0046】
例えば、押出中の温度は材料(ポリマーおよび水)の融点より20〜100℃高い温度、好ましくはこの融点より30〜80℃高い温度にすることができる。
ポリマーは(水の存在にもかかわらず)単独で押し出すか、または、ポリマーと一緒に複合材料を形成できる追加の化合物の存在下で押し出すことができる。追加の化合物としては、特に感熱充填剤を用いるのが有利である。感熱充填剤としては特にデンプン、特に天然デンプンが挙げられる。
【0047】
押出段階の最後に材料を冷却し、必要に応じてさらにカットする。その後に押出機のダイの形状に応じてポリマー顆粒または、成形品(例えばパイプ、フィルム、異形要素等)が直接得られる。
【0048】
ポリマー顆粒を得た場合、この顆粒を用いて顆粒の押出成形や金型中への射出段階を経て成形品を製造することができる。成形物は加圧、冷却して成形品にする。押出中の温度は例えば材料の融点より20〜100℃高い温度、好ましくはこの融点より30〜80℃高い温度にすることができる。
【0049】
製品は下記の中から選択できる:自動車部品、テキスタイル、織布または不織布材料、衣類、靴、スポーツ用品、レジャー用品、電子機器、コンピュータ機器、健康器具、工業用添加剤、包装材料および家庭用品。特に、計器パネル、エアバッグ、運動靴の底、ゴルフボール、医療用チューブ、カテーテル、血管形成術用バルーン、蠕動バンド、コンベヤーベルト、通気性防水製品、合成皮革および/または外板、熱可塑性フィルムおよび/または包装フィルムが挙げられる。
【0050】
驚くことに、初期の押出し成形後に第2の押出し成形や射出成形を実施し、第2の押出成形を水の存在下で実施しなくても、本発明で得られるポリマーの分解を減らす効果は維持される、ということを本発明者は見出した。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
コポリエーテル−ブロック−アミド(PEBA)と水との混和性
アルケマ フランスから商品名Pebax(登録商標)で市販のポリアミド12をベースにしたPEBAを用いる。モル組成は24.8%のポリテトラメチレンエーテルグリコール、73%のポリアミド12および結合成分としての2.2%のアジピン酸である。
【0052】
低圧示差走査熱量計(Mettler Toledo HPDSC 827
e、最大圧力100バール)を用いて、高圧および高温での相分離またはPEBAと水との混和性を調べる。測定室をBrooks 弁制御器(ReadOut & Control Electronics 0152)によって制御された圧力制御弁(Brooks PC 5866)に接続する。
【0053】
すなわち、熱量計のオーブン内で温度および圧力を独立して設定し、低圧加熱または冷却曲線を得ることができ、それによって押出条件をシミュレーションできる。水とPEBA粉末とを70:30の重量比で混合し、サンプルの重さの合計は約10mgである。PEBA顆粒をグラインダー(Pulverisette 14, Fritsch)中で、14000回転/分で低温粉砕する。
【0054】
得られた結果は以下の通り:
(1)大気圧下では第1加熱曲線で2つのピークが観察される。第1ピーク(主)は100℃を超え、水の蒸発に対応する。第2ピークは171℃にあり、ポリマーの溶融に対応する。溶融温度は先に水が蒸発しているので、純粋なPEBAの溶融温度に等しい。冷却曲線も同様であり、ポリマーの結晶化の場合に単一のピークが146℃にある。
(2)高圧(80バール)では、単一ピークが153.5℃で観察される。水の沸騰ピーク(この圧力では通常295℃)は消失し、残っているピークはポリマーと水とを含む単一相の溶融に対応する。このピークは、PEBA単独のピークに対して17.5℃オフセットされる。
(3)その他の圧力(20、40または60バール)では、PEBA/水相の融点はやはり同じ153.5℃の温度で出現する。
【0055】
実施例2
PEBAの押出および分解への影響
実施例1のPEBAを、水噴射ポンプおよび2つのベント開口部を備えた共回転二軸押出機(Coperion Megacompounder、長さ1m、L/D比40、スクリュー径25mm)に導入する。水噴射ポイントで(70〜100バールの)スクリューが加える溶融圧力は水の蒸気圧力曲線より高い。
温度はスクリュー全体で190℃に設定され(真の温度は水噴射ポイントで20℃低い)、回転速度は200回転/分である。ポリマーを7kg/時の流量で導入し、水を3l/時の流量で導入する。
【0056】
90℃で16時間乾燥させた後に、ISO 527−2ダンベル(1Aタイプ)をKraus Maffei 80-160
Eで射出成形した。射出温度は190℃(供給帯域)〜230℃(ノズル)で調節した。成形温度は20℃、背圧は75バール、スクリューの回転速度は80mm/秒、保持圧力は29秒で400バールである。
【0057】
40℃で溶剤としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いる拡散排除クロマトグラフィー(GPC、Waters Alliance 2695)によって材料の分子量を評価する。サンプルを1g/lの濃度で24時間溶解する。228nmに調節された紫外線屈折率検出器を用い、較正はポリメチルメタクリレート基準で実施する。従って、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は「PMMA当量」で表す。
【0058】
得られた結果は[表1]にまとめてある:
【表1】
【0059】
押出し中に水を用いると、水の非存在下の場合よりもPEBAの変換(成形)中のこのPEBAの分子量が減少することがわかる。これは水の存在下でポリマーの分解が減少することを意味する。さらに、多分散性指数Mw/Mnは維持される。