(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957014
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】共有される電力供給に対するアクセスをキューイングすること
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20160714BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20160714BHJP
【FI】
H02J3/14
G06Q50/06
【請求項の数】28
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-555566(P2013-555566)
(86)(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公表番号】特表2014-514896(P2014-514896A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012026355
(87)【国際公開番号】WO2012116205
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】61/463,946
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/402,283
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513215535
【氏名又は名称】イーカーブ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルメイダ、エディソン
(72)【発明者】
【氏名】スタール、ジョナサン オー.
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−295134(JP,A)
【文献】
特開2008−146105(JP,A)
【文献】
特開2010−213367(JP,A)
【文献】
特開2010−176373(JP,A)
【文献】
特表2010−516192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F19/00
G06Q10/00−10/10、
30/00−30/08、
50/00−50/20、
50/26−99/00
H02J3/00−5/00、
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのハードウェア・プロセッサと、
電力アクセス・ポイントのセットによって共有される電力供給に対するアクセスをキューイングする方法を提供するために、前記ハードウェア・プロセッサによって実行されるコンピュータ・プログラム命令を保持するコンピュータ・メモリと
を備えた装置であって、前記方法が、
それぞれのアクセス・ポイントに関して、オン状態である前記アクセス・ポイントに関連する電力引出し値を識別するステップであって、前記電力引出し値が負荷持続曲線に関連する、ステップと、
前記アクセス・ポイントの動作状態のセットに関する前記負荷持続曲線を正規化して、確率分布関数を生成するステップであって、前記確率分布関数が、動作状態の数に対応する確率しきい値のセットを有し、前記確率しきい値が、前記電力供給に対するアクセスがキューイングされるべき特定のサービス等級(GoS)を表す、少なくとも1つのしきい値を含む、ステップと、
前記サービス等級を表す前記しきい値が満たされたとき、動作状態の第1の変化に応答して、前記電力供給に対するアクセスをキューイングするステップと
を含む、装置。
【請求項2】
前記確率分布関数が変換されたアーランC確率分布である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変換されたアーランC確率分布の関数が、前記特定のサービス等級に関する総電力需要に関連する負荷持続曲線をモデル化する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも第1及び第2のアクセス・ポイントが独立した電力引出しを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1及び前記第2のアクセス・ポイントが互いから地理的に分散されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
1つ又は複数の器具が特定のアクセス・ポイントと関連付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電力供給に対するアクセスをキューイングする前記ステップが、特定のアクセス・ポイントに関連する器具のターン・オンを調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ターン・オンは、前記特定のアクセス・ポイントにアクセス優先順位コードを提供することによって調整され、
前記アクセス優先順位コードは、前記特定のアクセス・ポイントを含む前記アクセス・ポイントに提供されるアクセス優先順位コード(APC)のセットのメンバーであり、
アクセス優先順位コードの前記セットは、前記アクセス・ポイントの相対的なキューイング順序を規定して、アクセス・ポイント・キューイング時間と、前記電力供給からの電力引出し競合とを最小にする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記方法が、前記サービス等級を表す前記しきい値が満たされなくなったとき、動作状態の第2の変化に応答して、前記電力供給に対するアクセスをキューイング解除するステップをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
アクセス優先順位コード(APC)のセットが継続的に生成される、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記方法が、1つ又は複数の参加エンティティのためのサービスとして実施される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
そのそれぞれのスイッチが電力アクセス・ポイントに関連し、前記電力アクセス・ポイントが、電力供給に対する共有されるアクセスを提供する電力アクセス・ポイントのセットのうちの1つである、スイッチのセットと、
電力ルータであって、
それぞれのアクセス・ポイントに関して、オン状態である前記アクセス・ポイントに関連する、負荷持続曲線に関連した電力引出し値を識別し、
動作状態の数に対応し、前記電力供給に対するアクセスがキューイングされるべき特定のサービス等級(GoS)を表す少なくとも1つのしきい値を含む、確率しきい値のセットを有する確率分布関数を生成するために、前記アクセス・ポイントの動作状態のセットに関する前記負荷持続曲線を正規化し、
前記サービス等級を表す前記しきい値が満たされたとき、動作状態の第1の変化に応答して、前記電力供給に対するアクセスをキューイングする
ように構成されたソフトウェアを動作させるハードウェア要素を備えた電力ルータと
を備える電力需要管理システム。
【請求項13】
前記確率分布関数が変換されたアーランC確率分布である、請求項12に記載の電力需要管理システム。
【請求項14】
前記変換されたアーランC確率分布関数が、前記特定のサービス等級に関する総電力需要に関連する負荷持続曲線をモデル化する、請求項13に記載の電力需要管理システム。
【請求項15】
少なくとも第1及び第2のアクセス・ポイントが独立した電力引出しを有する、請求項12に記載の電力需要管理システム。
【請求項16】
1つ又は複数の器具が特定のアクセス・ポイントにおけるスイッチと関連付けられる、請求項12に記載の電力需要管理システム。
【請求項17】
前記電力ルータが、特定のアクセス・ポイントにおけるスイッチを制御することによって、前記電力供給に対するアクセスをキューイングし、前記スイッチに関連する器具のターン・オンを調整する、請求項12に記載の電力需要管理システム。
【請求項18】
前記ターン・オンは、前記特定のアクセス・ポイントにおける前記スイッチにアクセス優先順位コードを提供する前記電力ルータによって調整され、
前記アクセス優先順位コードは、前記特定のアクセス・ポイントにおける前記スイッチを含む、スイッチの前記セットに提供されるアクセス優先順位コード(APC)のセットのメンバーであり、
アクセス優先順位コードの前記セットは、スイッチの前記セットの相対的なキューイング順序を規定して、個々のアクセス・ポイント・キューイング時間と、前記電力供給からの電力引出し競合とを最小にする、請求項17に記載の電力需要管理システム。
【請求項19】
アクセス優先順位コード(APC)が、前記アクセス・ポイントに位置する前記スイッチに関連する、少なくとも1つの電気器具に関連する最終使用サービス要件の関数である、請求項18に記載の電力需要管理システム。
【請求項20】
前記電力ルータが、前記サービス等級を表す前記しきい値が満たされなくなったとき、動作状態の第2の変化に応答して、前記電力供給に対するアクセスをキューイング解除する、請求項12に記載の電力需要管理システム。
【請求項21】
スイッチがSCADA準拠デバイスと関連付けられる、請求項12に記載の電力需要管理システム。
【請求項22】
アクセス優先順位コード(APC)のセットが継続的に生成される、請求項17に記載の電力需要管理システム。
【請求項23】
電力供給を共有する分散されたアクセス・ポイントのセットのうちの1つである電気アクセス・ポイントに関連する装置であって、
少なくとも1つのハードウェア・プロセッサと、
方法を提供するために、前記ハードウェア・プロセッサによって実行されるコンピュータ・プログラム命令を保持するコンピュータ・メモリと
を備えた装置であって、前記方法が、
前記アクセス・ポイントに関連する電力引出しを識別するデータを提供するステップと、
前記アクセス・ポイントに関するアクセス優先順位コード(APC)を周期的に受信するステップであって、前記APCが、個々のアクセス・ポイント・キューイング時間と、前記電力供給からの電力引出し競合とを最小にする前記アクセス・ポイントの相対的なキューイング順序を規定するために、アクセス・ポイントの前記セットに周期的に戻されるアクセス優先順位コードのセットのうちの1つであって、アクセス優先順位コードの前記セットが、前記電力供給に対するアクセスがキューイング又はキューイング解除されるべきサービス等級を表し、当該サービス等級は、確率分布関数の1つ若しくは複数の確率しきい値である、ステップと、
前記APCに従って、前記電力供給に対するアクセスを可能にするステップと
を含む、装置。
【請求項24】
1つ又は複数の電気デバイスが前記アクセス・ポイントと関連付けられる、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記1つ又は複数の電気デバイスがSCADA準拠デバイスを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記1つ又は複数の電気デバイスが、作動サイクルを有する電気器具の電気動作を調整する制御デバイスを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記確率分布関数が変換されたアーランC確率分布である、請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記APCが、前記アクセス・ポイントに関連する器具のターン・オンに関する相対的なキューイング順序を設定する、請求項23に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年2月25日に出願した、第61/463,946号に基づき、第61/463,946号からの優先権を主張するものである。
【0002】
著作権宣言
本出願は、著作権によって保護された主題を含む。不許複製。
【0003】
本開示の主題は、一般に、電力を調整することに関する。
【背景技術】
【0004】
近代の電力産業は1880年代に始まった。電力産業は、ガス及び電気の炭素アークによる商用及び街路照明システムを起源とする。最初の発電局は、近代の電力システムの4つの重要な要素、すなわち、信頼性のある集中発電、効率的な分配、最終使用の成功(電球)、及び競争価格を特徴とすることによって電力産業を世にもたらした。電力の主な、且つ唯一の最終使用が夜間電灯であったとき、信頼性のある集中発電は、電力供給サービスが常に電力需要のすべてに利用可能であったことを意味した。1880年後半に、電気モータに関する電力需要により、電力産業が主に夜間照明から24時間サービスになり、交通ニーズ及び産業ニーズに関する電気需要が劇的に高まった。さらに、最初の直流(DC)電気系統は、低周波(50〜60Hz)交流(AC)システムにたちまち取って代わられた。
【0005】
社会の経済発展において電力が決定的に重要であるため、信頼性のある電力供給のための中核的な電気系統設計計画要件は、電力供給が、常時、すべての電気需要最終使用にとって利用可能であるという仮定に基づいて広く定義された。電力システムは、歴史上、その年間の同時ピーク需要を処理するように、その大きさを決定されてきた。料金は、ピーク需要が存在する状況に基づく。これらの仮定すべてが、供給量増加(ワットでの発電容量電力)が需要増大(ワットでの平均需要電力)に常に先んずるという電力インフラストラクチャの工学技術に通じていた。発電容量電力による平均需要電力の比率(設備利用率(capacity factor)は40〜50%の間で安定しているが、電力産業が始まって以来、発電容量は平均需要容量より速く増大してきた。今日、家庭電化製品は電力に無制限にアクセスすることができる。多くのセンサ自動化器具は、人間とのやりとりなしに環境要因に応答する。例えば、天候の変化は、冷蔵庫や空調装置など温度感知式の器具上で電力引出し同期を引き起こす。複数の器具が電力を同時に引き出すとき、共振同時ピーク需要現象(resonant coincident peak demand phenomenon)が発生する。
【0006】
電力事業は電力をいつでもその最終使用者顧客に分配する責任がある。それらの同じ顧客は、そのニーズに役立てるために電力に対する即時アクセスの代金を支払い、その電力を適用し、最終使用者の特定の要件を満たす幅広い範囲の電気器具を駆動させる。ピーク需要は、電力のニーズ、すなわち、その電気器具を動作させるための顧客の電力利用が局所的なISO/RSOネットワークの基底負荷発電容量を超えるときに発生する。この同時ピーク事象は、その信頼責任を満たすために、公益事業提供者による追加の/より高いコストの発電容量の取得のきっかけとなり、そのコストは、多くの場合、その顧客に直接転嫁される。
【0007】
電力事業の顧客は、多くの稼働中の器具を有する単一の建物/不動産を有する場合があり、且つ/又は、1つ若しくは複数の首都圏地域(動作環境)にわたって分散した多数の建物/不動産を有する場合もある。所与の建物/不動産内又は首都圏整備地域(MSA)内では、そのMSA内では外気温度が華氏2度の範囲内であったり、又は顧客の建物/不動産内の室内間の温度が類似の狭い範囲であったりというように、一連の共通の内部及び外部環境要因が明らかになるであろう。任意の所与の動作環境内で、類似の機能を備えた電気器具、例えば、センサ自動化環境冷却は、高度の同時「オン/オフ」動作挙動を示すことになる。これにより、例えば、これらの器具(空調装置や冷蔵庫など)は、目標室内温度など、最終使用者操作目的を維持するために、高い時間割合で同時に電力を要求していたことが分かっている。器具の大多数が同時に「オン」であるとき同時ピークが発生し、それらの器具の電力需要を満たすために追加の電力供給リソースが必要となる。所与の支払い請求周期の間、通常、5%未満の割合で発生する同時ピーク需要事象は、それでもなお、電力事業によってその最終使用者顧客に請求される総電力コストの20%の割合を占める場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
同時ピーク需要を系統的に制御するために、その電力供給に対する電気器具のアクセスを調整するシステムを提供する必要が当技術分野に存在する。本開示はこの要求に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一連の電気アクセス・ポイントによって共有される電力供給に対するアクセスをキューイングする方法が説明される。アクセス・ポイントは、互いに独立してターン・オン及びターン・オフすることができ、したがって、独立した電力引出しを有する。アクセス・ポイントはまた、典型的には、互いから離れて配置されている。1つ若しくは複数の電気器具又はデバイスが、特定のアクセス・ポイントと関連付けられることが可能である。それぞれのアクセス・ポイントは、それがオンであるとき(すなわち、電力供給から電力を引き出しているとき)、特定の電力引出しを有する。本開示によれば、アクセス・ポイントのそれぞれのオン状態と関連する電力引出しとが識別され、それぞれのアクセス・ポイントに関する負荷持続曲線が正規化されて(すなわち、他のアクセス・ポイントからの)負荷持続曲線と組み合わされて)確率分布関数になる。確率分布関数は、正規化された負荷持続曲線であり、したがって、(集合的に見たとき)一連のアクセス・ポイントに関して発生し得る「動作状態」の様々な組の原因を説明するものとなる。したがって、「n」個のアクセス・ポイントが存在する場合、そのアクセス・ポイントの組に関して2
n個の可能な動作状態が存在し、場合によっては、それぞれの動作状態は、「オン」又は「オフ」である(そのサブセットがアクセス・ポイントのすべてを含み得る)アクセス・ポイントのいくつかのサブセットに対応する同時の「事象」の組によって表される。それぞれの動作状態は関連する発生確率を有する。本方法によれば、(アクセス・ポイントの)動作状態の組が変化する(オン/オフ事象によって表される)につれて、電力供給に対するアクセスは選択的にキューイングされるか、又は(以前にキューイングされている場合)キューイング解除される(de-queued)。
【0010】
特定の動作状態の発生確率は、サービス等級(GoS)と関連付けられることが可能であり、この場合、GoSは、電力アクセスが指定された時間間隔を超えてキューイングされている確率である。好ましい実施例においては、確率分布関数は、所与のGoSに関する総電力需要に関連する(アクセス・ポイントの組み合わされた組を表す)負荷持続曲線をモデル化する、変換された(すなわち、「非正規化された」)アーランC確率分布である。
【0011】
代表的であるが、非限定的な実施例では、上述の方法は、集中コンピューティング・デバイス(「電力ルータ」と呼ばれることがある)内で実施され、それぞれのアクセス・ポイントは、デジタル電子スイッチなど、スイッチ内で実施される。説明される手法によれば、キューイングが、そのとき、実施されていない(「利用可能」モードである)と仮定すると、(特定のGoSを表す)動作状態確率が満たされているか又は超えていたとき、システムは、キューイング(又は、「ビジー」)モードに入り、それによって、共有された電力供給に1つ若しくは複数のアクセス・ポイントがアクセスすることができる「時間」を制御する。好ましくは、アクセス・ポイントに関する特定のターン・オン「時間」は、アクセス・ポイントに位置するデジタル電子スイッチに電力ルータが提供する「アクセス優先順位コード」を使用して制御される。電力ルータはアクセス優先順位コードを連続的に生成して、キューイング方式に従って、これらのコードをスイッチに提供する。特定の時点で、一連のアクセス優先順位コード(APC)は、これにより、個々のアクセス・ポイント・キューイング時間と、電力供給からの電力引出し競合とを最小にする、アクセス・ポイントの相対的なキューイング順序を定義する。
【0012】
前述の説明は、本発明のより適切な特徴のうちのいくつかを概説している。これらの特徴は、単なる例示であると解釈されるべきである。後述するように、開示される発明を異なる様式で適用することによって、又は本発明を修正することによって、多くのその他の有益な結果を達成することが可能であろう。
【0013】
本発明及びその利点をより完全に理解するために、次に、添付の図面と共に、以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】電気系統に関する負荷持続曲線(LDC)を例示する図である。
【
図3】変換されたアーランB分布によってモデル化された電気系統LDCを例示する図である。
【
図4】変換されたアーランC分布によってモデル化された電気系統LDCを例示する図である。
【
図5】
図3及び
図4の電気系統LDCモデルの比較を例示する図である。
【
図6】本開示のアクセスをキューイングする方法を実行するEAPRが一連のアクセス・ポイントの間で共有される電力供給に関する同時ピーク需要をどのように制御するかを例示する図である。
【
図7】本開示のキューイング・アクセス制御方法(queuing access control method)を組み込んだシステムを例示する図である。
【
図8】
図7に示されたシステムの別の実施例を例示する図である。
【
図9】本開示のデジタル電子スイッチ(DES)とEAPRとの間のインタラクションを例示する図である。
【
図10】本開示のキューイング優先順位付け技法を例示する流れ図である。
【
図11】代表的なデジタル電子スイッチ(DES)の構成を例示する図である。
【
図12】アクセス・ポイントにおける器具消費電力の統計的測度を表すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上で説明されたように、本開示は、一連の電気アクセス・ポイントによって共有される電力供給に対するアクセスをキューイングする方法に関する。アクセス・ポイントは、互いから独立してターン・オン及びターン・オフすることができ、したがって、独立した電力引出しを有する。アクセス・ポイントはまた、通常、互いから離れて配置されている。1つ若しくは複数の電気器具又は電気デバイスは、特定のアクセス・ポイントと関連付けられることが可能である。それぞれのアクセス・ポイントがオンであるとき(すなわち、電力供給から電力を引き出しているとき)、それぞれのアクセス・ポイントは特定の電力引出しを有する。
【0016】
一般に、(電力供給に対する)アクセスをキューイングすることは以下のように制御される。アクセス・ポイントのそれぞれのオン状態と関連する電力引出しとが識別され、それぞれのアクセス・ポイントに関する負荷持続曲線が正規化されて(すなわち、他のアクセス・ポイントからの(1つ又は複数の)負荷持続曲線と組み合わされて)確率分布関数になる。確率分布関数は、(集合的に見たとき)一連のアクセス・ポイントに関して発生し得る「動作状態」の様々な組の原因を説明する正規化された負荷持続曲線である。好ましくは、確率分布関数は、変換された(すなわち、非正規化された)アーランC確率分布関数である。
【0017】
本開示のアクセスをキューイングする方法は、電力供給を共有する1つ又は複数の電力アクセス・ポイントに関連するコンピューティング・デバイス内で実施可能である。一実施例では、確率分布関数は、共有される電力供給へのアクセスを調整して、同時ピーク需要を系統的に制御するコンピュータ・システムである電気器具電力ルータ(EAPR)内で実現される。詳細には、アクセス・ポイントに配置された、関連するデジタル電子スイッチ(DES)を通して、EAPRはアクセス・ポイントの「オン」又は「オフ」の電力引出し状態をバイナリ・データとして解釈し、様々なスイッチに供給するアクセス優先順位コード(APC)を用いて、電力供給に対するアクセスをキューイングする。特定のAPCは、アクセス・ポイント(詳細には、それに関連する1つ若しくは複数の電気器具又はデバイス)のターン・オンを制御する。さらに、電力に適用される確率分布関数(例えば、変換されたアーラン分布)に従うサービス等級(GoS)内で電力サービスを依然として分配しながら、同時ピーク需要は目標「ピーク電力」しきい値に制限される。好ましくは、サービス等級(GoS)は、その電気消費量の強度が最大である時の電気系統ピーク電力期間を参照して規定される。GoSは、小数で表される、指定された時間間隔を超えてキューイングされている送電線グループ内の電力アクセスの確率である。共有される電力供給に対するアクセスをこのようにキューイングすることによって、(アクセス・ポイントに関連する)電気器具はその電力供給に規則正しくアクセスし、これは、同時ピーク需要をもたらす電力引出しの競合を最小にする。
【0018】
電力に適用されるアーラン分布
以下の節は、確率分布関数、及び電力に適用されるアーランCの使用に関する追加の詳細を提供する。アーラン分布(及び、アーラン・データ表)が熟知されていると想定する。
【0019】
アーラン分布は、交換局オペレータに対して同時に行われている可能性がある電話呼出の数を調査するために、A. K. Erlangによって開発された連続的な確率分布である。電話トラフィック技術に関するこの研究は、後に、一般のキューイング・システム内での待ち時間を考慮する研究に拡張された。アーラン(E)は、サービス提供電話回線上で搬送される負荷の統計的測度として電話通信において使用される無次元単位である。(アーラン単位で)提供されるトラフィックは、呼到着率λと、平均呼保持時間hとに、h及びλが同じ時間単位を使用して表現される(秒と秒あたり呼数、又は分と分あたり呼数)ならば、以下の関係、すなわち、E=λhによって、関係付けられる。
【0020】
アーランBモデルは、回路のグループ内の失われた呼の確率を説明するためにアーラン分布から導出されるブロッキング確率に関する公式である。この公式は、失敗に終わった呼がキューイングされていないという条件の下で適用される。以下の公式は、すべてのサーバ(回路)がビジーであるため、回路グループ内に到着した新しい呼が拒絶される確率P
bを提供し、詳細には、トラフィックのEアーランがm個のトランク(通信チャネル)に提供されるときのB(E,m)である。
【0021】
【数1】
上記の公式で、P
bは、ブロッキングの確率であり、mは、グループ内のサーバ又は回路など、リソースの数であり、E=λhは、アーラン単位での、提供されたトラフィックの総量である。
【0022】
アーランCモデルは、キューイング・システム内の待機確率を表す。すべての回路がビジーである場合、その要求はキューイングされる。無限数の要求が同時にキュー内に保持される場合がある。以下の公式は、キューイングされた呼が処理され得るまで、そのシステム内に留まると仮定して、搬送されるトラフィックをキューイングする確率を計算する。
【0023】
【数2】
上記の公式で、Aは、アーランの単位での提供された総トラフィックであり、Nは、サーバの数であり、P
wは、顧客がサービスを待たなければならない確率である。
【0024】
本開示によれば、アーラン分布は変換されて、一組の仮定の下で、電力系統計画に適用される。これらの仮定は以下のとおりである。すなわち、(i)電気器具は、「オン」又は「オフ」のいずれかであり、共有される電力供給に対するアクセスを獲得するために回路(送電線)のグループを利用する、(ii)電気器具は、「オン」であるとき、その回路のグループの電力を使用する、(iii)(開示される、アクセスをキューイングする方法によって提供されるような)アクセス制御なしでは、電気器具は、アーランB分布に従って、その電力供給によってサービス提供され、アクセスはキューイングされない(且つ、電力供給は常に電気需要を満たす)、(iv)(本開示による)電気器具に関するキューイング・アクセス制御システムは、好ましくは、アーランC分布に従い、キューイングされた器具は、処理され得るまで、システム内に留まる、(v)電力供給容量は従来のアーラン分布における「サーバの数」と等価である、(vi)ある期間の平均電力需要は、アーラン分布内の「搬送される負荷」と等価である、(vii)電力供給容量は所与の時点で要求される電力に等しい、である。これらの仮定の下で、この技法は、以下の規則に従って、アーラン分布を電力需要に変換する。第1に、「サーバの数」はメガワット単位(MW)の電力供給容量(P
S)の定数因数「K」倍、すなわち、N〜P
S(MW)×Kと等価である。この関係は、
図1のプロットに表されている。第2に、「搬送されるトラフィック」は、メガワット単位(MW)の平均需要電力(P
D)の同じ定数因数倍、すなわち、E〜P
D(MW)×Kに等しい。
【0025】
さらなる背景として、「負荷持続曲線」(LDC)は、発電容量要件と容量利用との間の関係を例示するために発電において使用される。LDCは、負荷曲線に類似するが、需要データは、年代順ではなく、大きさの降順で順序付けられる。LDC曲線は、負荷のそれぞれの増分に関する容量利用要件を示す。それぞれのスライスの高さは、容量の測度であり、それぞれのスライスの幅は、利用率又は設備利用率の測度である。これら2つの積は、電気エネルギーの測度(例えば、キロワット時)である。
図2は、電気系統に関する代表的な負荷持続曲線を例示する。電力に適用される、変換されたアーランB分布は、メガワット(MW)単位での所与の平均需要電力に関する負荷持続曲線をモデル化し、ここで、「%時間」は、電気系統のサービス等級(GoS)を表す。
図3は、変換されたアーランBによってモデル化された代表的な負荷持続曲線を例示する。本開示によれば、電力に適用される、変換されたアーランC分布は、メガワット(MW)単位での所与の平均需要電力に関する負荷持続曲線をモデル化し、ここで、「%時間」は、システムの「キューイング(%時間)」を表す。
図4は、変換されたアーランCによってモデル化された代表的な負荷持続曲線を例示する。電力供給キューイング・アクセス・システム(power supply queuing access system)を本開示により実現するとき、電気系統負荷持続曲線プロファイルは変化し、同時ピーク需要が減少するとともに、設備利用率は増大する。
図5は、変換されたアーランB及びCによってモデル化された(1つ又は複数の)電気系統負荷持続曲線を例示し、比較を示す。例えば、2.7MWの平均電力需要を有する電気系統では、「80%ピーク需要」でのピーク需要目標しきい値と、「5%GoS」でのそれぞれのキューイング時間に対し、同時ピーク需要は20%削減される。
【0026】
本開示によれば、上で説明されたように、EAPRは、共有される電力供給に対するアクセスを調整して、同時ピーク需要を系統的に制御する。好ましくは、電力に適用される、変換されたアーランC分布に従うGoS内で電力サービスを依然として分配しながら、同時ピーク需要は目標「ピーク電力」しきい値に制限される。
図6は、本開示による、EAPR同時ピーク需要緩和の代表を例示する。
【0027】
実装形態
本発明の主題の一実施例が
図7に例示される。ここで説明される原理に従って動作する「システム」700は、一組のデジタル電子スイッチ(それぞれ、DES)704と共に、電気器具電力ルータ702を備える。EAPR又はDESなどの用語は、限定として解釈されるべきではない。一般に、EAPRは、コンピュータ・システムなど、自動計算器において実現される。EAPRは、既存の送電線グループの上の「層」として概念化されることが可能であり、電力供給アクセス層である。DESは、任意のSCADA準拠デバイス、又は、より一般的には、ネットワーク接続制御デバイスであってよい。例示されるように、それぞれのDESは、EAPR702に対するデータ接続705を有し、このデータ接続は、限定されるものではないが、固定回線、無線、又はそれらの何らかの組合せを含む、任意のタイプのネットワークを介することが可能である。
【0028】
無線通信が使用されるシナリオでは、DES及びEAPRのそれぞれは、トランシーバ・モジュールを含む、あるいはこれと関連付けられることが可能である。トランシーバ・モジュールは、様々なタイプのプロトコル、通信範囲、動作電力要件、RFサブバンド、情報タイプ(例えば、音声又はデータ)、使用シナリオ、アプリケーションなどを使用して通信するように構成されることが可能である。したがって、様々な実施例では、トランシーバ・モジュールは、GSM(登録商標)、UMTS、CDMA、及び/又はLTEのシステムなど、セルラー無線電話システムに関する音声通信をサポートするように構成された1つ若しくは複数のトランシーバを備えることが可能である。トランシーバ・モジュールは、WWANプロトコル(例えば、GSM/GPRSプロトコル、CDMA/1xRTTプロトコル、EDGEプロトコル、EV‐DOプロトコル、EV‐DVプロトコル、HSDPAプロトコル、ロング・ターム・エボリューション・プロトコルなど)、WLANプロトコル(例えば、IEEE802.11a/b/g/n、IEEE802.16、IEEE802.20など)、PANプロトコル、赤外線プロトコル、Bluetoothプロトコル、受動的又は能動的なRFIDプロトコルを含むEMIプロトコルなど、1つ又は複数の無線通信プロトコルに従ってデータ通信を実行するように構成された1つ又は複数のトランシーバを備えることも可能である。
【0029】
実装形態に応じて、例えば、インターネット・プロトコル(IP)ベースのネットワーキング技術、SCADA(監視制御及びデータ取得(Supervisory Control and Data Acquisition))準拠プロトコルなどを使用するその他のプロトコル及び通信方法を使用することも可能である。
【0030】
スイッチ704は、電力系統706に関する電力「アクセス・ポイント」を備える。電気系統(あるいは、「供給」)706はアクセス・ポイント間で共有される。それぞれのアクセス・ポイントは、電力供給から独立した電力引出しを有するという点で異なる。したがって、電力供給を共有しているそれぞれのアクセス・ポイントは、互いから独立してターン・オン/ターン・オフすることができる。典型的には、デジタル電子スイッチは、スイッチの対(それぞれ、別個のアクセス・ポイントである)がある動作環境では物理的に共同設置されるかもしれないが、互いから遠隔であり得る、複数の地理的に分散した位置に配置される。
図8で例示されるように、DESによって表されるアクセス・ポイントは、1つ若しくは複数の電気器具又はデバイス802及び804と関連付けられることが可能である。これらの器具又はデバイスは電力供給806を共有する。アクセス・ポイントごとに1つの器具若しくはデバイスが存在する場合があり、又は1つを超える器具若しくはデバイスが存在する場合もある。
【0031】
一般に、EAPR700は、信頼性があり、且つ許容可能な電力サービスをサービス等級(GoS)内で任意の個々の器具の最終使用者に分配しながら、電力供給706(又は、
図8において806)の設備利用率を最大にし、同時ピーク需要を最小にするキューイング順序によって、デジタル電子スイッチ(DES)を調整する。このために、EAPRは、好ましくは、アクセス・ポイントの「オン」又は「オフ」の電力引出し状態をバイナリ・データとして解釈する。EAPRは、デジタル電子スイッチを通して、いわゆる、「アクセス優先順位コード」(それぞれ、「APC」)によって、共有される電力供給(電力系統)に対するアクセスをキューイングする。特に、EAPRは、アクセス・ポイントに対して一組のAPCを生成し、それぞれのDESに特定のAPCを提供する。APCは、特定のDESに割り当てられた相対的なキューイング順序である。APCの組は、EAPRによって周期的に、かつ継続的に生成される。単に説明を簡単にするために、アクセス・ポイントは1つの電気器具と関連付けられていると仮定する。APCは、その送電線上の電気器具の電力引出しの統計的測度と、その最終使用サービス要件と、後述されるような「アクセス優先順位要求」(それぞれ、APR)とを使用して規定される。APRは、電力供給に対するアクセスが即時に必要とされるという、最終使用者によって提示される信号である。この信号は、ある動作環境で最終使用者最大許容可能キューイング時間をカスタマイズするために使用され得る。
【0032】
電気器具電力ルータ(EAPR)は、いくつかの機能を実行する。それは、電気ネットワーク・サーバの電力引出しを監視して、電力需要を、所望されるサービス等級(GoS)に対する目標「計画ピーク電力」しきい値に制限する。このために、EAPRは、アクセス優先順位コード(APC)をそれぞれのDESに通信し、DES最大キューイング時間完全性を確実にして、個々のDESキューイング時間を最小にするように切り替える。EAPRは、DESデバイスを認証すること、DESデータを収集及び記録すること、必要に応じてDESファームウェア又はソフトウェアを更新すること、並びに、それを介して、許可されたユーザがシステムしきい値、警告、及び自動化ルーチンを設定又はプログラムすることができるか、又は報告を取得することができるユーザ・インターフェースを提供することなど、いくつかの運営管理機能も実行する。それぞれのデジタル電子スイッチ(DES)は、いくつかの機能を実行する。その主な動作は、電力供給に対するアクセスを要求すること、APCを受信すること、及びキュー上で(APCによって判断されるように)そのEAPRが指定する時刻に電力を「オン」にすることである。DESは、安全なデジタル通信をEAPRによって認証及び確立すること、最終使用者APRを捕捉すること、関連する器具の電力引出しを監視すること、並びにEAPRによって供給される自動ルーチン、及びマイクロコントローラ・ファームウェア又はプロセッサ・ベースのソフトウェア更新を実行することなど、運営機能も提供する。
【0033】
上で述べたように、アクセス優先順位コード(APC)は、特定のDESに割り当てられた相対的なキューイング順序である。EAPRによって特定のDESに提供されるAPCは、所与の時点(又は、期間)における電気器具の最大キューイング時間を規定する。DESにおいて受信されたAPCは、電気系統電力引出し(例えば、総電力引出し)が目標(例えば、「計画ピーク電力」)しきい値を超えて、EAPRがそのアクセス・キューイング・プロセスを開始するとき、総システム・キューイング時間を最小にするために使用される。APCは、典型的には、以下のうちの1つ又は複数を含む、それぞれの電気器具最終使用サービス要件を考慮に入れる。すなわち、(その作動サイクル内で電気器具が「オン」である時の平均電力引出しである、ワット単位の)電力引出し、(その作動サイクル内で電気器具が「オン」である平均分数である、分単位の)使用時間、(電気器具に関する「オン」時間同士の間の平均分数である、分単位の)使用頻度、(器具のおよその地理的位置を識別し、その器具がそれぞれのEAPR電気回路に属することを確実にするための)位置、(器具の最終使用者が器具を使用する際の遅延を受け入れることになる平均時間であり、この値は業界平均、最終使用者APR履歴、又はそれらの何らかの組合せであってもよい、秒単位の)最終使用者最大許容可能キューイング時間、並びに「アクセス優先順位要求」(APR)(上で述べたように、電力供給に対するアクセスが即時に必要とされるという、最終使用者によって提示される信号)である。1つ又は複数のパラメータの上記の組は、「APCパラメータ」と呼ばれることがある。
【0034】
図9は、特定のDESとEAPRとの間の基本的なインタラクションを例示する。この同じインタラクションがそれぞれのDESに関して実行される。ステップ900で、DESは、認証パラメータと(APRを含むことが可能な)APCパラメータとを渡して、EAPRに対するアクセス要求を開始する。ステップ902で、EAPRは、DES認証を完了して、そのキューイング・ルーチンを実行する。このキューイング・ルーチンは
図10に示され、以下で説明される。EAPRがキューイングが必要である(すなわち、システムが「ビジー」モードである)と判断した場合、EAPRはAPCをDESに送信する。(APCは、この時点で、それぞれのDESにも送信される。)これはステップ904である。他方で、EAPRがキューイングが必要ない(すなわち、システムは「利用可能」モードである)と判断した場合、EAPRはDESにアクセス要求「許可」応答を送信する。DESは、ステップ906で、(「ビジー」モードにある場合)APCに従って、又は、APRが存在する場合、あるいはアクセス要求「許可」が受信された場合(「利用可能」モードである場合)即時に、付属する器具をターン「オン」することによって応答する。ステップ908で、DESは実際のキューイング時間と電力引出し測度とを報告する。ステップ910で、EAPRは、そのDESデータを記憶して、DESプロファイルを更新する。これでこのインタラクションは完了する。
【0035】
図10は、アクセス・ポイントによって共有される電力供給に対するアクセスを許可するために使用される、本開示のEAPRキューイング優先順位付けプロセスの動作を例示する。この実施例によれば、電気系統の総電力引出しが設定された「計画ピーク電力」しきい値未満であるとき、電力供給に対するDESアクセスは許可される。これは「利用可能」モードである。しかし、電気ネットワークの総電力引出しが設定された「ピーク電力」しきい値を超えているとき、EAPRはそのアクセス・キューイング・プロセスを開始する。これは「ビジー」モードである。優先順位付けプロセスは、一般に、以下のように機能する。「オフ」状態にある電気器具が電力供給に対するアクセスを要求するとき、これらはキューイングされる。そのキュー内に「1つ」を超えるDESが存在する場合、DESキューイング順序はそれらのアクセス優先順位コードに基づく。好ましくは、APCは、それぞれのDES最大許容可能キューイング時間(好ましくは、サービスの完全性を保証するために超えるべきではない時間)も搬送する。所与のAPCを有するDES(例えば、より短い時間制約を表す)は、より大きな値のAPCを有するDESに対してキュー内でより高い優先順位を有することになる。所望される場合、APRを実施することが可能である。上で述べたように、APRは、キューを迂回して、電力供給に対する即時のアクセスを与える最終使用者要求である。
【0036】
プロセス・フローは、DESが電力供給アクセス要求を行って、ステップ1000で開始する。上で述べたように、複数のDESデバイスが存在する場合があり、それぞれのそのようなデバイスは、任意の時点で電力供給に対するアクセスを要求することができる。ステップ1002で、電力供給がその計画ピーク電力(又は、何らかのその他の指定された)しきい値未満で動作しているかどうかを判断するためのテストが実行される。ステップ1002におけるテストの結果が肯定的である場合、ルーチンはステップ1004に続き、DESアクセス要求は許可される。これは利用可能モードである。しかし、ステップ1002におけるテストの結果が否定的である場合、ピーク電力しきい値(GoS)が満たされているか、又は超えている。次いで、ルーチンは、ステップ1006に分岐して、前に説明されたようにキューイングが始まる。ステップ1008において、最終使用者APRがDES電力供給アクセス要求と関連付けられるかどうかを判断するためにテストが実行される。関連付けられる場合、ルーチンは、キューイング動作を迂回して、(ステップ1004に戻ることによって)その要求を許可する。その要求に関連するAPRが存在しない場合、ステップ1010で、そのDESに関するAPCが最大利用可能キューイング時間よりも大きいかどうかを判断するためにテストが実行される。大きい場合、ルーチンは、再度、ステップ1004に戻り、アクセス要求を許可する。しかし、ステップ1010におけるテストの結果が否定的である場合、ステップ1012で、DESアクセス要求がキュー上の次のものであるかどうかを判断するためにテストが実行される。そうでない場合、ルーチンは、ステップ1006に戻り、キューイング・プロセスが続く。しかし、テストステップ1012の結果が肯定的である場合、(キュー内のDESの位置に達しているため)アクセス要求は許可される。
【0037】
好ましくは、システム状態が「ビジー」である場合、すべてのオフ状態のDESはすぐにキューイングされる。システム状態が変化するとき、EAPRは新しいピーク電力しきい値を設定することも可能である。好ましい実装形態では、システム状態が変化するたびに、この動的なピーク電力しきい値の変更が実行される。
【0038】
上記のキューイング方式は、著しい利点を提供する。この技法は、アクセス・ポイントを調整することによって(且つ、とりわけ、APCをDESに提供することによって)同時ピーク需要を制御する。この需要変調方式では、アクセス・ポイントのそれぞれのオン状態と関連する電力引出しとが識別され、それぞれのアクセス・ポイントに関する負荷持続曲線が正規化されて(すなわち、他のアクセス・ポイントからの負荷持続曲線と組み合わされて)キューイング・プロセスを実行するために使用される確率分布関数になる。実際には、確率分布関数は、正規化された負荷持続曲線であり、したがって、一連のアクセス・ポイント(集合的に見たとき、一連のDES)に関して発生し得る「動作状態」の様々な組の原因を説明するものとなる。したがって、「n」個のアクセス・ポイント(及び、DES)が存在する場合、そのアクセス・ポイントの組に関して2
n個の可能な動作状態が存在し、場合によっては、それぞれの動作状態は、「オン」又は「オフ」である(そのサブセットがアクセス・ポイントのすべてを含み得る)アクセス・ポイントのいくつかのサブセットに対応する同時の「事象」の組によって表される。例えば、3つのアクセス・ポイントが存在する場合、オン(2進値「1」)又はオフ(2進値「0」)である(A、B、及びCとラベル付けされた)DESデバイスのそれぞれに対応する8つの可能な動作状態が存在する。{0,0,1}などの動作状態は、DES「A」がオフであり、DES Bがオフであり、DES Cがオンであることを指す。それぞれの動作状態は関連する発生確率を有し、これらの確率は合計で100%になる。次いで、(
図10を参照して上で説明されたように)ある特定の動作状態を「ピーク電力」しきい値として設定することができる。ピーク電力しきい値は、典型的には、キューイングが所望される特定の動作状態に関連する(典型的に、割合又は小数として表される)サービス等級を表す(例えば、GoS=2%が、動作状態{1,1,1}に対応する、DES ABCがオンであるときの動作状態を表す)。キューイング動作をトリガするようなしきい値が、2つ以上、存在する場合がある。
【0039】
本方法によれば、(アクセス・ポイントの)動作状態の組が変化する(DESアクセス要求がEAPRにおいて受信されるときのオン/オフ事象によって表される)につれて、電力供給に対するアクセスが選択的にキューイングされるか、又は(以前にキューイングされている場合)キューイング解除される。これは、
図10に関して上で説明された動作である。1つ又は複数の確率しきい値(GoS値)は、実際には、最大電力消費量を要求する最も頻度が低い事象(集合的に見れば、アクセス・ポイントの動作状態)をフィルタリングして、システムが利用可能(キューイングなし)になるように、又はビジーになる(キューイングされる)ように設定される場合を規定する。本明細書で使用される「頻度が最も低い」及び「最大」という用語は、キューイング解決策を任意の特定の実装形態に限定すると解釈されるべきではない。より一般に、説明される手法は、電力需要を送波(「オン/オフ」デジタル波)に類似して取り扱うものであって、キューイング動作は、ある形態の位相変調を実現して、この波信号の位相を効果的に調整する。これにより、例えば、この変調は、第1の器具の動作頻度の位相を調整して、1つ又は複数の他の器具の信号との「競合」を最小限に抑え、したがって、システム集約電力需要を低減する。需要を低減することによって、電力顧客はかなりの経済的利益(すなわち、電力費の削減)を受ける。このように、キューイング技法は、電力系統に独特なチャネルアクセス方法を提供する。
【0040】
ある代替の実施例では、同時需要を増大させる(すなわち、個々の波信号に対して位相調整を行うことによって、集約波信号の振幅を変調する)ためにこの技法を使用することが可能である。
【0041】
図11は、代表的なDESを例示する。上で述べたように、好ましくは、アクセス・ポイントに関連するDESが存在し、1つ若しくは複数の電気器具又はデバイスが、ある特定のDESと関連付けられることが可能である。EAPRがシステムは「ビジー」であるか、又は「ビジー」のはずであると判断すると、DESはAPCを使用して、アクセス・ポイントにおいて必要とされるキューイングを実施する。DESは、典型的には、ハードウェア構成要素、又はハードウェア及びソフトウェア構成要素を使用して実現される。
図11に見られるように、DES1100の代表(しかし、非限定的な実装形態)は、いくつかの構成要素、すなわち、マイクロコントローラ1102と、スイッチ・リレー1104と、電力モニタ1106と、優先順位スイッチ1108とを備える。上で説明されたように、DESの主な役割は、電力供給に対するアクセスを要求して、EAPR命令に従ってそれを許可し、同時ピーク需要が変調されることである。さらに、DESは、その電力引出しを認証し、それをEAPRに報告し、自動化ルーチンを実行する。DESの機能不良を検出して、器具の電力使用パターンを描き出すために、電力引出しが電力モニタ1106によって監視される。電力引出し、使用頻度、位置、及びAPRが、電力供給に対するアクセスを許可するために、EAPRによって考慮される。DES優先順位スイッチ1108は、受信されたAPCが即時の最終使用者サービス要件を反映しない場合、最終使用者アクセス優先要求(APR)を生成する。マイクロコントローラ1102は、データ接続を通したEAPRとの安全なデジタル通信の認証及び確立、電力供給にアクセスするための(EAPRに対する)要求の発行、並びに、そのキューイング順序とAPCとに基づく、所与の時点で電力を「オン」にするためのスイッチ・リレー1104の制御を含む、様々な機能を制御する。マイクロコントローラは、また、優先順位スイッチ1108によって生成された最終使用者アクセス優先要求を捕捉して、他のEAPR供給自動化ルーチンを実行する。電力供給に対するアクセスが許可されると、DESは、確率分布関数(例えば、変換されたアーランC分布)という面においては、アクティブなネットワーク・サーバになる。したがって、その電力引出しが電気系統の総電力引出しに加算され、キューイング・アルゴリズムに関するピーク電力しきい値に対して検証される。
【0042】
1つ又は複数のセンサ自動化器具(図示されず)がDES「センサビット」入力1105に接続されている。器具センサはその器具をターン「オン」する責任を有するため、このビットは電力にアクセスするためのEAPR要求のトリガとなる。アクセスがEAPRによって許可されると、DES送電線モニタ回路1106が器具の電力引出しを測定する一方で、「スイッチ・ビット」出力信号1107は器具をターン「オン」する。
【0043】
図12は、特定のDESにおける器具電力引出しの統計的測度を表すプロットである。説明してきたように、EAPRキュー内の他の器具に対して、より短い使用時間とより高い使用頻度とを有する電気器具のキューイング順序を優先順位付けするAPCを規定するために、APCパラメータ(電力引出し、使用時間、使用頻度、位置、最終使用者最大キューイング時間、及び任意のAPR)がEAPRによって使用される。さらに、正規化された電力引出しにより、以下の関係(例示的なものであり、限定するものではない)に従って、同じ位置のDESのグループ内でより低い電力引出しを有するDESを優先する重み付け係数が与えられる。
正規化された電力引出し=電力引出し/Max(システムのDES電力引出し)
APC=(正規化された電力引出し)×(使用時間)
2/(使用頻度)
ある実施例では、APC値は、分単位のDES最大キューイング時間であり、好ましくは、この値は、器具使用時間とその最終使用者最大許容可能キューイング時間の最小値を超えない。
APC<Minimum(最終使用者許容可能キューイング時間、使用時間)
【0044】
例えば、説明された解決策を実現するシステムは、EAPRと、電力ルータ内で実行する予測ソフトウェア・アルゴリズムに基づいて(一般に、遠隔である)位置におけるピーク需要を制御する一連のDES(例えば、SCADA準拠)デバイスとを備える。説明されてきたように、EAPRは、(動作位相偏移を予測的に計算及び実施することによって)アクセス・ポイント・キューイング時間と、電力供給からの電力引出し競合とを最小にするように動作し、それによって、EAPRが制御するサイクリング器具、デバイス、及びサービスからのピーク電力需要を低減する。DES機能は、ハードウェア、ファームウェア、又はソフトウェアにおいて実現可能である。
【0045】
EAPR(又は、その一部の機能)を「ソフトウェア・アズ・ア・サービス(software-as-a-service)」としてクラウド実施例内で実現することが可能である。
【0046】
このシステムは、単一の物理設備内でや、複数の物理設備を通して、などで実施可能である。ある代替の実施例では、このシステムは、例えば、地域サーバ上に常駐するソフトウェアがこれに無線接続されたDESデバイスの局所的監視及び制御を提供するのに対して、(その中でEAPRが実行する)中央サーバがその地域サーバを監督するような、モジュラ式の階層アーキテクチャで実施される。
【0047】
例示的な実施例では、DESデバイスは、通信シェルター、無線装置室、コンピュータ・サーバ室、商用不動産、組織及び学校の構内、石油・ガスの掘削現場並びに精油所の上流及び下流、電気自動車充電所、市営電力系統、政府施設、電力事業などの中に配置される。
【0048】
EAPRとDESとの間のリンクは安全であることが好ましい。APCコードは、任意のIPベースの、あるいは、電子メールメッセージとしてSMTPを経由して、NNTP(telnet)を経由して、SMS(テキスト)若しくはMMS(マルチメディア)メッセージを経由して、(ウェブサービスとして)SOAP上でHTTPを経由してなどを含むが、これらに限定されない、その他のトランスポート層プロトコルを介して送信されることが可能である。DESに送信されるAPCは、好ましくは、AT(アテンション)コマンドであり、したがって、アナログ形態で送信されることが可能である。DESに送信されるコマンドは、「時間」であると理解され得る値である。好ましくは、この値は、EAPRがDESとハンドシェークするたびに更新される。
【0049】
DES機能は、既存のSCADA準拠又はその他のタイプの電気デバイス若しくは器具の内に組み込むことが可能である。DESは独立型デバイスとして実施されることは必要とされず、むしろ、1つ若しくは複数の説明された機能を既存の電気デバイス/器具に、ソフトウェア又はその他の構成によって、追加することが可能である。この手法では、システム・プロバイダは、(例えば、クラウド・ベースのサービスとして)EAPR機能を提供して、説明されたアクセス・ポイントの機能及び動作を提供するように構成されているデバイス/器具に接続する。この手法は、コントロールポイントにおいて既存のハードウェアを活用し、ターンキー解決策を実施するコストを低減する。
【0050】
開示された主題によって提供される需要変調は、説明されてきたEAPR/DES機能の任意の物理的構成で実現可能である。
【0051】
本明細書で説明されたようなアーラン確率分布の使用は、好ましいが、開示された主題に限定することは意図されていない。アーラン確率分布は、ガンマ分布の特殊事例であり、任意のそのような分布を同様に使用することが可能である。適用され得る他の確率分布には、ポアソン分布、パレート分布、ベルヌーイ過程分布、及びEngset計算が含まれる。
【0052】
説明されてきたようなシステム構成要素は、代表的な実施例である。すべてのそのような構成要素が含まれること、又は識別された境界が示された通りであることは必要とされない。場合によっては、説明された主題の範囲から逸脱せずに、1つ若しくは複数の構成要素をこのシステム又は他のエンティティと組み合わせること、或いはそれらと関連付けることが可能である。構成要素が同じデータ・センター内に配置されることは必要とされない。EAPR又はDESは、必要に応じて、計算機、並びに関連する電子デバイス及び/又は機械デバイスを備える。説明された機能は、機械、デバイス、プログラム、コントローラ、スイッチ、プロセス、実行スレッドなどによって実施することが可能である。
【0053】
上記は、本発明のある種の実施例によって実行される動作の特定の順序を説明しているが、そのような順序は例示であって、代替の実施例では、これらの動作を異なる順序で行うこと、ある種の動作を組み合わせること、ある種の動作を重複させることなどが可能である点を理解されたい。本明細書における所与の実施例の参照は、説明された実施例が特定の特徴、構造、又は特性を含むことが可能であることを示すが、すべての実施例がその特定の特徴、構造、又は特性を含むとは限らない場合がある。
【0054】
本明細書の主題は、完全にハードウェア実施例の形をとってよく、完全にソフトウェア実施例の形をとってよく、又はハードウェア要素とソフトウェア要素の両方を含む実施例の形をとってもよい。ある実施例では、この機能は、1つ又は複数のサーバ機械内で実行するソフトウェアにおいて実施される。開示されたシステム(又は、その一部)は、コンピュータ若しくは任意の命令実行システムによる使用のための、又はこれに関連した、プログラム・コードを提供する、コンピュータ使用可能或いはコンピュータ読み取り可能媒体からアクセス可能なコンピュータ・プログラム製品の形をとってもよい。コンピュータ使用可能又はコンピュータ読み取り可能媒体は、命令実行システム、装置、若しくはデバイスによる使用のための、又はこれに関連した、プログラムを記憶することが可能な任意のデバイス又は装置であってよい。この媒体は、電子式、磁気式、光学式などであってよい。コンピュータ可読媒体の例は、半導体又はソリッドステートのメモリ、磁気テープ、取外し可能なコンピュータ・ディスケット、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、剛性の磁気ディスク及び光ディスクを含む。光ディスクの現在の例は、コンパクト・ディスク−読出し専用メモリ(CD‐ROM)、コンパクト・ディスク−読出し/書込み(CD‐R/W)、及びDVDを含む。
【0055】
システムの所与の構成要素が別個に説明されてきたが、これらの機能のうちのいくつかは、所与の命令、プログラム・シーケンス、コード部分などの中で組み合わされること、又は共有されることが可能である点を当業者は理解されよう。
【0056】
当発明者らの発明を説明してきたが、当発明者らが特許請求するのは以下のとおりである。