【文献】
Anal. Biochem. (2001) vol.299, no.1, p.24-30
【文献】
Nucleic Acids Res. (1994) vol.22, no.20, p.4167-4175
【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2002) vol.99, no.8, p.5261-5266
【文献】
Genome Res. (May 2003) vol.13, no.5, p.954-964
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)ゲノム断片の増幅された表示的集団を、固定化されたプローブ−断片ハイブリッドが形成される条件下で、少なくとも10,000の異なる固定化された核酸プローブのアレイと接触させることであって、該ゲノム断片の増幅された表示的集団が、少なくとも1μg/μlのDNA濃度を含み、1.7ギガ塩基以上のゲノム配列を表し、かつ、該プローブが多くとも100ヌクレオチドの長さの標的−相補領域を含む、前記接触させること;
(b)該ゲノム断片にハイブリダイズされた状態で該固定化されたプローブを修飾し、それにより、修飾された固定化プローブを形成すること;
(c)該プローブ−断片ハイブリッドから該ゲノム断片を除去すること;及び、
(d)該ゲノム断片を除去した後に、該修飾された固定化プローブを検出し、それにより、該ゲノム断片の型決定可能な遺伝子座を検出すること;を含む、方法。
前記修飾が、前記プローブへの検出部分の付加を含み、該検出部分が、親和性リガンドを含み、それにより、親和性リガンド−標識プローブを形成することを含む、請求項1または21記載の方法。
前記親和性リガンド−標識プローブを結合部分および増幅試薬と接触させることをさらに含み、該結合部分は該リガンドに結合することができる1つ以上の部位を有し、かつ、該増幅試薬は該結合部分に対する親和性を有し、それにより、該親和性リガンド−標識プローブ、該結合部分および該増幅試薬の間にマルチマー複合体が形成される、請求項24記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(定義)
本明細書中で用いるように、用語「ゲノム」とは真核生物細胞の核内で見出される染色
体DNAの全相補体を意味することを意図する。上記用語は原核生物、ウイルス、ミトコ
ンドリアまたは葉緑体の全ゲノム相補体、または真核生物種のハプロイド核ゲノム相補体
をいうのにも用いることができる。
【0020】
本明細書中で用いるように、用語「ゲノムDNA」または「gDNA」とは、真核生物
細胞の核、または原核生物、ウイルス、ミトコンドリアまたは葉緑体、天然で生じ、かつ
天然でRNAに転写される配列、ならびに当該細胞によって天然ではRNAに転写されな
い配列を含有する1つ以上の染色体ポリマーデオキシリボヌクレオチド分子を意味するこ
とを意図する。真核生物細胞のgDNAは少なくとも1つの動原体、2つのテロメア、1
つの複製起点および、例えば、イントロンまたは転写プロモータを含めた真核生物細胞に
よってRNAに転写されない1つの配列を含有する。原核生物細胞のgDNAは、少なく
とも1つの複製起点、および、例えば、転写プロモータを含めた原核生物細胞によってR
NAに転写されない1つの配列を含有する。真核生物ゲノムDNAは、例えば、真核生物
ゲノムDNA中のイントロンの存在、および他のもののgDNA中のイントロンの不存在
に従って、原核生物、ウイルスまたはオルガネラゲノムDNAから区別することができる
。
【0021】
本明細書中で用いるように、用語「検出」とは、特異的ヌクレオチド配列を有する核酸
等の特定の分子の存在を測定するいずれの方法をも意味することを意図する。核酸を検出
するのに用いる技術は、例えば、検出すべき配列へのハイブリダイゼーションを含む。し
かしながら、本発明の特別な実施形態は、検出すべき配列の直接的なハイブリダイゼーシ
ョンを必要とせず、むしろ、ハイブリダイゼーションは検出すべき配列の近くで、または
、検出すべき配列に隣接して起こり得る。用語「近く」の使用は、検出すべき配列から約
150塩基以内を含むことを意味する。他の場合も、核酸に沿って約150塩基以内であ
る。従って、近い核酸に沿っての他の距離は、例えば、検出すべき配列から、約100、
50、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、1
0、9、8、7、6、5、4、3、2または1塩基を含む。ハイブリダイゼーションは、
例えば、約250塩基、500塩基、1キロベース以上の距離を含む、かつ検出すべき標
的核酸またはゲノム断片の長さを含めた検出すべき遺伝子座または配列より長い距離を有
する配列において起こり得る。
【0022】
検出で有用な試薬の例は、限定されるものではないが、放射性標識プローブ、フルオロ
フォア−標識プローブ、量子ドット−標識プローブ、クロモフォア−標識、酵素−標識プ
ローブ、親和性リガンド−標識プローブ、電磁スピン標識プローブ、重原子標識プローブ
、ナノ粒子光散乱標識または他のナノ粒子もしくは球状シェルで標識されたプローブおよ
び当業者に既知のいずれかの他のシグナル発生標識で標識されたプローブを含む。本発明
での検出で有用な標識部分の非限定的例は、限定されるものではないが、ホースラディッ
シュペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシラーゼ、またはアセ
チルコリンエステラーゼ等の適切な酵素;ストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビ
オチン、または例えば、ウサギIgGおよび抗ウサギIgGを含めた抗原/抗体複合体等
の複合体を形成することができる結合対のメンバー;ウンベリフェロン、フルオレセイン
、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン
、緑色蛍光蛋白質、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリ
ーン、スチルベン、ルシフェールイエロー、カスケードブルー
TM、テキサスレッド、ジ
クロロトリアジミルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、フィコエリスリン、ユーロピ
ウムおよびテルビウムを含むもの等の蛍光ダンタニド複合体、Cy3、Cy5、分子ビー
コンおよびその蛍光誘導体等のフルオロフォア、ならびに、例えば、Principle
s of Faluorescence Spectroscopy、Joseph R
.Lakowicz(編集者)、Plenum Pub Corp,第2版(1999年
7月)およびRichard P.HoaglandによるMolecular Pro
bes Handbookの第6版に記載されている当該分野で既知の他のもの;ルミノ
ール等のルミネセント材料;金または銀粒子または量子ドット等の光散乱またはプラズモ
ン共鳴材料を含み;あるいは放射性材料は
14C、
123I、
124I、
125I、
13
1I,Tc99m、
35Sまたは
3Hを含む。
【0023】
本明細書中で用いるように、用語「型決定可能な遺伝子座」とは核酸中の配列特異的な
位置を意味することを意図する。上記用語は、単離された核酸分子に存在すると予測され
る所定のまたは予測された核酸配列を含むことができる。用語型決定可能な遺伝子座は単
一ヌクレオチド多型(SNP)突然変異、可変数のタンデムリピート(VNTR)および
単一タンデムリピート(STR)、他の多型、挿入、欠失、スプライス変異型またはいず
れかの他の公知の遺伝子マーカーを含むことを意図する。公知のSNPおよび他の遺伝子
変異を供する例示的源は、限定されるものではないが、NCBIによって管理されたdb
SNP、およびncbi.nlm.nih.gov/snp/における利用可能なオンラ
イン、およびFredman et al.Nucleic Acids Resear
ch、30:387−91、(2002)に記載されたHCVBASEデータベース、お
よびhgvbase.cgb.ki.se/における利用可能なオンラインを含む。
【0024】
本明細書中で用いるように、用語「表示的に増幅する」とは核酸コピーを生じさせるた
めの核酸テンプレートの複製を意味することを意図し、ここで、コピー中の全ての他の配
列に対するコピー中の各配列の割合は核酸テンプレート中の割合と実質的に同一である。
上記用語に含まれる核酸テンプレートは染色体等の単一分子、またはゲノムまたはゲノム
の一部分を形成する染色体のコレクション等の複数の分子であり得る。同様に、核酸コピ
ーは単一の分子または複数の分子であり得る。核酸はDNAまたはRNAまたはその模倣
体または誘導体であり得る。コピー核酸は、テンプレートDNAよりも小さな複数の断片
であり得る。従って、上記用語は、集団中の全ての他のゲノム断片に対するゲノム断片に
由来する各々の割合がゲノム中の他のゲノム断片配列に対するその配列の割合と実質的に
同一であるように、ゲノム、またはその部分を複製することを含むことができる。複製す
べきDNAは組織または血液試料から、法医学試料から、ホルマリン−固定細胞から、ま
たは他の源から単離することができる。本発明で用いるゲノムDNAは無傷、ほぼ無傷、
または断片化であり得る。テンプレートまたはそのコピー等の核酸分子は、限定されるも
のではないが多くとも約1mb、0.5mb、0.1mb、50kb、10kb、5kb
、3kb、2kb、1kb、0.5kb、0.25、0.1、0.05または0.02k
bを含めた種々のサイズのいずれかであり得る。
【0025】
従って、用語「増幅された表示」とは、コピー中の全ての他の配列に対するコピー中の
各配列の割合が核酸テンプレート中の割合と実質的に同一である核酸コピーを意味するこ
とを意図する。ゲノム断片の集団に言及するのに用いる場合、例えば、上記用語は、集団
中の全ての他のゲノム断片に対する各ゲノム断片の割合がゲノム中の他のゲノム断片配列
に対するその配列に対する割合に実質的に同一であるゲノム断片の集団を意味することを
意図する。増幅された表示およびテンプレートゲノムDNA中の配列の割合の間の実質的
同様性は、上記表示中の遺伝子座の少なくとも60%が5倍過剰表示または過少表示以下
であることを意味する。そのような表示において、遺伝子座の少なくとも70%、80%
、90%、95%または99%は、例えば、5、4、3または2倍以下に過剰表示または
過少表示され得る。上記用語に含まれる核酸はDNA、RNAまたはそのアナログであり
得る。増幅された表示的集団における各核酸配列のコピーの数は、例えば、テンプレート
よりも少なくとも2、5、10、25、50、100、1000、1×10
4、1×10
5、1×10
6、1×10
7、1×10
8または1×10
10倍以上であり得る。
【0026】
ゲノムの一部と同一である配列を含むゲノム断片の例示的集団が、例えば、高複雑性表
示または低複雑性表示を含む。本明細書中で用いるように、用語「高複雑性表示」とは、
そのテンプレートの配列の少なくとも約50%を有する核酸コピーを意味することを意図
する。かくして、ゲノムDNAの高複雑性表示は、限定されるものではないが、テンプレ
ートゲノム配列の少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95
%または99%を含むことができる。本明細書中で用いるように、用語「低複雑性表示」
とは、そのテンプレートの配列の多くとも約49%を有する核酸コピーを意味することを
意図する。かくして、ゲノムDNAの低複雑性表示は、限定されるものではないが、下の
配列の多くとも約49%、40%、30%、20%、10%、5%または1%を含むこと
ができる。特別な実施形態において、本発明のゲノム断片の集団はゲノム配列の少なくと
も約5%、10%、20%、30%または40%を表す複雑性を有することができる。
【0027】
本明細書中で用いるように、用語「直接的に検出する」とは、核酸に言及するのに用い
る場合に、試料中の核酸のレベルに基づいて試料中の核酸の特性を認識または識別するこ
とを意味することを意図する。上記用語は、例えば、試料中の核酸を増幅することなく試
料中の核酸の特性を認識または識別すること、または増幅なしでの検出を含むことができ
る。認識または識別することができる例示的特性は、限定されるものではないが、ヌクレ
オチド配列、配列中の特定の部位における多型または突然変異等の特定のヌクレオチドの
存在等を含む。直接的検出方法の1つの非限定的例は、核酸に対して標識されたプローブ
をハイブリダイズさせ、次いで、ハイブリダイズした標識の存在に基づいて核酸の存在を
測定することによる核酸の検出である。直接的検出法の他の例は本明細書中に記載され、
例えば、単一塩基伸長(SBE)および対立遺伝子特異的プライマー伸長(ASPE)を
含む。当業者であれば、検出に従い、未増幅ゲノムDNA断片の試料等の未増幅核酸の試
料を増幅することができることを理解するであろう。
【0028】
特別な実施形態において、直接的検出は、型決定可能な遺伝子座およびその相補的配列
の間の二本鎖核酸複合体の創製、および型決定可能な遺伝子座のさらに別のコピーを創製
することなく複合体を認識することを含むことができる。一部の実施形態において、型決
定可能な遺伝子座の直接的検出は、単一ハイブリダイゼーション複合体の形成、それによ
り、型決定可能な遺伝子座を有する特定の核酸分子に対する反復されたハイブリダイゼー
ションを排除する意味を含むことができる。
【0029】
型決定可能な遺伝子座または型決定可能な遺伝子座に遺伝的に連結した配列等の検出可
能位置を検出する方法は、例えば、質問位置へのオリゴヌクレチドによるハイブリダイゼ
ーション、または質問位置近くの、またはそれに隣接するオリゴヌクレオチドによるハイ
ブリダイゼーション、続く、質問位置全般に亘ってのハイブリダイズしたオリゴヌクレオ
チドの伸長を含むことができる。
【0030】
本発明で有用であって、本明細書中に記載された、限定されるものではないが、SBE
およびASPEを含めた一部の直接的な検出方法は、ゲノム断片を捕獲すると共に、断片
上の特定のSNP遺伝子座の存在を示すシグナルを生成するプローブを使用する。特に、
本発明の方法は、ゲノム断片等の捕獲されたオリゴヌクレオチドのSNPまたは他の特徴
の検出が外因的に付加された問合せオリゴヌクレオチドを必要としない条件下で行うこと
ができる。しかしながら、所望であれば、外因的に付加された問合せオリゴヌクレオチド
を用いることができる。オリゴ連結アッセイ(OLA)、伸長連結(GoldenGat
e
TM)、ローリングサークル−ベースの検出方法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチ
ド(ASO)ハイブリダイゼーションその他のような外因的に付加された問合せオリゴヌ
クレオチドを使用する例示的方法は以下に記載する。
【0031】
本明細書中で用いるように、用語「増幅する」とは、一本鎖核酸に言及するのに用いる
場合、上記一本鎖核酸の1つ以上のコピー、またはその一部分を生じさせることを意味す
ることを意図する。
【0032】
本明細書中で用いるように、用語「ゲノム断片」とは、染色体の一部と実質的に同一で
ある配列を有する単離された核酸分子を意味することを意図する。染色体は、複製された
遺伝子の大半または全てを含有するウイルス、原核生物、または真核生物核の線状または
時々は環状DNA−含有体であると理解される。ゲノム断片の集団は、実質的に全ゲノム
またはその一部分と同一の配列を含むことができる。ゲノム断片は、例えば、染色体の少
なくとも約25、50、70、100、200、300、400、500、600、70
0、800、900または1000以上のヌクレオチドと実質的に同一である配列を有す
ることができる。ゲノム断片はDNA、RNA、またはそのアナログであり得る。チミン
の代わりにウラシルの存在によって異なるRNA配列およびDNA染色体配列は配列が実
質的に同一であることは当業者によって理解されるであろう。
【0033】
本明細書中で用いるように、用語「天然」とは、ゲノムに言及するのに用いる場合、細
胞または他の宿主からの単離によって生じることを意味することを意図する。上記用語は
、インビトロ合成、複製または増幅によって生じたゲノムを排除する意図である。
【0034】
本明細書中で用いるように、用語「に対応する」とは、型決定可能な遺伝子座に言及す
るのに用いる場合、型決定可能な遺伝子座の配列、またはその診断的部分と同一、または
それに相補的なヌクレオチド配列を有することを意味することを意図する。例示的診断部
分は、例えば、注目する型決定可能な遺伝子座に隣接する、またはそれに近い核酸配列を
含む。
【0035】
本明細書中で用いるように、用語「多重」とは、1つ以上の試料について複数のアッセ
イを同時に行うことを意味することを意図する。多重化は、さらに、複数の個別の試料の
各々において複数のアッセイを同時に行うことを含む。例えば、分析すべき反応混合物の
数は、マルチ−ウェルプレート中のウェルの数に基づくことができ、各ウェルで行ったア
ッセイの数は各ウェルの内容物に接触するプローブの数に基づくことができる。かくして
、当業者によって理解されるように、各マイクロタイターウェルは個々のアレイを含む必
要はないが、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルマイクロタイタープレート
は96、384および1536の個々のアレイを含む複合アレイを利用するであろう。マ
イクロタイタープレートのサイズおよび個々のアレイのサイズに依存して、非常に多くの
数のアレイを同時に実行することができる;例えば、2,000の個々のアレイおよび9
6ウェルマイクロタイタープレートを用い、192,000の実験を一度に行うことがで
き;384マイクロタイタープレートにおける同一アレイは同時に768,000の実験
を生じ、1536マイクロタイタープレートは3,072,000実験を与える。多重化
はマイクロタイタープレートに対して例示してきたが、例えば、米国特許第2002/0
102578 A1に記載されたものを含めた多重化で他のフォーマットを用いることが
できるのが理解されよう。
【0036】
本明細書中で用いるように、用語「ポリメラーゼ」とは、テンプレートストランドとし
て核酸を用いて核酸分子の相補的レプリカを生じる酵素を意味することを意図する。DN
Aポリメラーゼはテンプレートストランドに結合し、次いで、テンプレートストランドを
下方に動かし、ヌクレオチドを核酸の成長する鎖の3’末端の遊離ヒドロキシル基に加え
る。DNAポリメラーゼはDNAまたはRNAテンプレートから相補的DNA分子を合成
し、RNAポリメラーゼはDNAテンプレートからRNA分子を合成する(転写)。DN
Aポリメラーゼは、一般には、プライマーと呼ばれる短い予め存在するRNAまたはDN
Aストランドを用いて、鎖成長を開始する。一部のDNAポリメラーゼは一本鎖テンプレ
ートを複製できるに過ぎないが、他方、他のDNAポリメラーゼは、それらが塩基を鎖に
加えている部位の上流のストランドを置き換える。本明細書中で用いるように、用語「ス
トランド置き換え」とは、ポリメラーゼに言及するのに用いる場合、ポリメラーゼによっ
て読まれるテンプレートストランドから相補的ストランドを除去する活性を有することを
意味することを意図する。ストランド置き換え活性を有する例示的ポリメラーゼは、限定
されるものではないが、Bst(Bacillus stearothermophil
us)ポリメラーゼ、exo
−クレノウポリメラーゼまたは配列決定グレードのT7 e
xo−ポリメラーゼの大きな断片を含む。
【0037】
さらに、一部のDNAポリメラーゼはそれらの前面にあるストランドを分解し、それを
背後の成長する鎖で効果的に置き換える。これは、エキソヌクレアーゼ活性として既知で
ある。商業的にまたは研究室で用いられる一部のDNAポリメラーゼは、エキソヌクレア
ーゼ活性を低下または排除するために、突然変異その他によって修飾されている。さらな
る突然変異または修飾は、しばしば行われて、基質として非天然ヌクレオチドを用いるD
NAポリメラーゼの能力を改善する。
【0038】
本明細書中で用いるように、用語「反応促進性」とは、複製すべきテンプレート核酸か
ら脱着させたポリメラーゼに先立ってポリメラーゼによって合成される核酸に付加された
、平均の、塩基の数をいう。低反応促進性のポリメラーゼは、平均して、高反応促進性の
ポリメラーゼと比較してより短い核酸鎖を合成する。低反応促進性のポリメラーゼは、平
均して、複製すべきテンプレート核酸から脱着するに先立って長さが約100塩基未満で
ある核酸を合成するであろう。複製すべきテンプレート核酸からの脱着に先立って低反応
促進性ポリメラーゼによって合成された核酸についてのさらに別の例示的平均長さは、限
定されるものではないが、約80、50、25、10または5塩基未満を含む。
【0039】
本明細書中で用いるように、用語「ニックド」とは、二本鎖核酸に言及するのに用いる
場合、第一のストランド中の隣接配列に連結し、かつ第一ストランド中の隣接配列の双方
にハイブリダイズした相補的第二ストランドを有する骨格の少なくとも1つの共有結合を
欠くことを意味することを意図する。
【0040】
本明細書中で用いるように、用語「ニッキング剤」とは、最初の核酸ストランド中の隣
接配列を結合する共有結合を切断し、それにより、隣接配列が同一相補的ストランドにハ
イブリダイズした生成物を生じる物理的、化学的または生化学的存在を意味することを意
図する。例示的なニッキング剤は、限定されるものではないが、バクテリオファージf1
のN,BstNBI、MutHまたは遺伝子II蛋白質等の特異的配列を認識する一本鎖
ニッキング制限エンドヌクレアーゼ;DNAseI;フリーラジカル等の化学試薬;また
は超音波を含む。
【0041】
本明細書中で用いるように、用語「単離された」とは、生物学的物質に言及するのに用
いる場合、その天然環境中の物質と関連した、またはそれと共に生じる分子の少なくとも
一部から除去されたことを意味することを意図する。従って、用語「単離する」とは、生
物学的物質に言及するのに用いる場合、その天然環境から物質を取り出すこと、またはそ
の天然環境中の核酸または物質と関連した、またはそれと共に生じる分子の少なくとも一
部を取り出すことを意味することを意図する。単離することができる例示的物質は、限定
されるものではないが、核酸、蛋白質、染色体、細胞組織等を含む。核酸等の単離された
生物学的物質は他の生物学的物質を実質的に含まないようにすることができる。例えば、
単離された核酸はそれと天然で関連した非ヌクレオチド物質を少なくとも約90%、95
%、99%または100%含まないようにすることができる。単離された核酸は、例えば
、その配列が、配列がそこから取られた細胞におけるよりも注目する溶液中に存在する全
核酸の有意により高い分率まで増加するように、他の核酸を実質的に含まないようにする
ことができる。例えば、単離された核酸は、そこからそれが取られた細胞におけるレベル
に対してインビトロにて他の核酸よりも2、5、10、50、100または1000倍以
上高いレベルで存在させることができる。これは、存在する他のDNAまたはRNAの量
の優先的低下によって、または特異的DNAまたはRNA配列の量の優先的増加によって
、または2つの組合せによって引き起こすことができる。
【0042】
本明細書中で用いるように、用語「複雑性」とは、核酸配列に言及するのに用いる場合
、ゲノムにおけるユニークな配列の全長を意味することを意図する。ゲノムの複雑性は、
ゲノム(すなわち、ハプロイド配列)の単一コピーの長さと同等、またはそれ未満とする
ことができる。ゲノム複雑性の見積もりは、反復した配列の存在に関してもし調整されれ
ば、全長未満とすることができる。そのような見積もりで用いられる反復配列の長さは、
特別な分析に適合するように調整することができる。例えば、複雑性は、ハプロイドゲノ
ム配列におけるユニークな配列単語の数+配列単語の長さの合計であり得る。配列単語は
、少なくとも10のヌクレオチドの規定された長さの連続的配列である。反復された配列
の数、かくして、ゲノムにおけるユニークな配列の長さは配列単語の長さに依存するであ
ろう。より具体的には、配列単語の長さは、例えば、15、20、25、30、50、1
00以上のヌクレオチドまで増加されるので、複雑性の見積もりは、一般には、ハプロイ
ドゲノムの長さの上限に近づくまで増加するであろう。
【0043】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つの目的は、DNA試料中の複数の遺伝子座に同時に質問する感度がよくか
つ正確な方法を提供することにある。特に、本発明の方法を用いて、個体のゲノムDNA
またはcDNAの試料中での複数の単一ヌクレオチド多型の直接的検出によって個体の遺
伝子型を決定することができる。本発明の利点は、少量のゲノムDNAを個体から得、そ
れを増幅して、上記ゲノム断片の増幅された表示的集団が得られ、これを本発明の方法で
質問することができることである。かくして、上記方法は、バイオプシーまたは保管され
た試料等の比較的小さな組織試料から得られたゲノムDNAを遺伝子型分類するのに特に
有用である。一般に、上記方法は、比較的少数のテンプレートゲノムコピーを増幅するの
に用いられるであろう。特別な実施形態において、ゲノムDNA試料は、単一細胞から得
、次いで、遺伝子型分類することができる。
【0044】
本発明の方法における遺伝子座の直接的検出法のさらに別の利点は、標的ゲノムDNA
断片が、一旦それが適切なプローブによって捕獲されれば増幅する必要がないことである
。かくして、上記方法は、捕獲に続く検出のための高級で高価な手段の必要性を低下させ
るまたは軽減するという利点を提供することができる。もし充分なDNAが存在すると、
型決定可能な遺伝子座の検出は、単一塩基伸長(SBE)または対立遺伝子特異的プライ
マー伸長(ASPE)等の捕獲された標的の増幅を必要としない技術によって行うことが
できる。直接的検出の他の方法は連結、伸長−連結、インベーダアッセイ、標識された相
補的配列とのハイブリダイゼーション等を含む。そのような直接的検出技術は、例えば、
後記する捕獲されたプローブ−標的複合体に対して直接的に行うことができる。標的増幅
−ベースの検出方法は本発明の方法では要求されないが、上記方法は所望であれば用いる
ことができるインベーダ、PCR−ベースの、またはオリゴヌクレオチド連結アッセイ−
ベースの(OLA−ベースの)技術等の種々の増幅ベースの検出方法と適合する。
【0045】
本発明は、ゲノム中の型決定可能な遺伝子座の検出等の遺伝子評価に先立ってゲノムD
NAを増幅するのに用いることができる全ゲノム増幅の方法を提供する。本発明の全ゲノ
ム増幅方法を用いて、与えられた配列のいずれの場合においても質または表示を危うくす
ること無くゲノムDNAの量を増加させることができる。かくして、上記方法を用いて、
配列独立的に比較的少量のゲノムDNAを増幅して、遺伝子型分類できるゲノムDNAの
レベルを提供することができる。驚くべきことに、複雑なゲノムは、低反応促進性ポリメ
ラーゼで増幅して、ゲノムに代表的であり、高い複雑性を有し、典型的な核酸アレイに対
するハイブリダイゼーションについての好都合なサイズを有する断片を含有するゲノム断
片の集団を得ることができる。
【0046】
後にさらに詳しく記載するように、ゲノム断片の複雑な表示的集団は、複数のプローブ
、および注目する遺伝子座を有し、具体的には、断片の集団に存在する実質的に多量の他
のゲノム配列の存在にも拘らず検出された比較的小さな割合のこれらの断片と共にインキ
ュベートすることができる。さらに、もしプローブハイブリダイゼーションをゲノム断片
集団を多量かつ高濃度で行う場合でさえ、特異的検出はそのような複雑な表示で起こり得
る。かくして、本発明の利点は、高複雑性ゲノムDNAバックグラウンドの存在下で全ゲ
ノム遺伝子分けを行うことができることである。
【0047】
さらに、本明細書中に開示された方法におけるゲノムDNAの増幅はポリメラーゼ鎖反
応を必要としない。具体的には、増幅は、配列が等温条件下で数倍増幅されるように行う
ことができる。かくして、温度上昇の工程を用いて、例えば、ゲノムDNAテンプレート
を最初に変性することができるが、温度サイクリングは用いる必要がない。従って、通常
ハイブリッドを変性するのに用いられる温度の反復した上昇およびハイブリダイゼーショ
ン温度への反復した復帰を用いる必要がない。
【0048】
アレイでの型決定可能な遺伝子座の捕獲および分離の後、個々の型決定可能な遺伝子座
は、ASPEまたはSBE等のその後の続く検出アッセイを介してインポシタス(所定の
場所で)スコア取りすることができる。かくして、低反応促進性ポリメラーゼでの全ゲノ
ム増幅によって得られたゲノム断片の集団は、プローブのアレイによって捕獲することが
でき、ゲノムの遺伝子型は、後に記載し、実施例で証明するように、個々に各プローブで
検出された型決定可能な遺伝子座に基づいて決定することができる。インポシタス(in
positus)遺伝子型分類の手法は、それが所望であればアッセイの広い多重化を
可能とする点で顕著な利点を有する。
【0049】
cDNA試料等の、全ゲノムまたは完全なDNA試料中での型決定可能な遺伝子座の検
出のための高密度DNAアレイ技術の使用は、本発明の増幅方法によって容易ならしめる
ことができる。なぜならば、上記方法は型決定可能な遺伝子座、または型決定可能な遺伝
子座に相補的な配列の多数のコピーを、テンプレート試料におけるその表示に対する相対
的割合のスケールまで生じさせることができるからである。比較的均一な表示を維持する
ことは多くの適用で有利である。なぜならば、もし特異的遺伝子マーカーを含むゲノムの
一部の領域が高い信頼性をもって複製されなければ、それらは平均的増幅に関して調整さ
れたアッセイで検出されないからである。
【0050】
本発明は、所望により同時にまたは順次に所望の数の型決定可能な遺伝子を検出するよ
うなスケールとすることができる。上記方法を用いて、同時に、少なくとも10の型決定
可能な遺伝子座、少なくとも100、1000、1×10
4、1×10
5、1×10
6、
1×10
7の型決定可能な遺伝子座 以上を検出することができる。同様に、これらの数
の型決定可能な遺伝子座は、所望であれば順次のフォーマットで測定することができる。
かくして、本発明を用いて、所望であれば、ゲノム−幅スケールにて個体を遺伝子型分類
することができる。
【0051】
本発明の全ゲノム増幅方法および本発明の全ゲノム遺伝子型分類方法は、単独で、ある
いは組み合わせて、例えば、単一細胞精子ハプロタイプ分析、高スループット様式での多
数の個体の遺伝子型分類、または新規なハプロタイプの同定を含めた多数の適用で有用で
ある。さらに、本発明は、多くの現行のアレイアッセイで必要なDNAまたはRNA試料
の量を低下させる。なおさらに、本発明で利用できる改善されたアレイ感度は低下した試
料の要件、改善されたLODスコアリング能力、およびより広いダイナミックレンジに導
くことができる。
【0052】
本発明を用いて、上記でリストしたもの等の特性の診断である新規のマーカーまたはハ
プロタイプを同定することができる。そのような研究は、共有された特性または特性の組
を有する個体の群についての遺伝子型を、病気または応答のない同様な人々のグループに
おけるよりも、特定の病気、または薬物、ワクチン、病原体または環境因子に対する応答
等の共有された特性を持つ人々のグループに対し遺伝子構成要素がより高い頻度で寄与し
ているという例外に基づいて、特性を欠く対照グループと比較することによって行うこと
ができる。従って、本発明の方法を用いて、人々の2つのグループにおいて異なるハプロ
タイプ分布を有する染色体領域、病気または応答を持つそれら、およびそれがないものを
見出すことができる。次いで、各領域をより詳細に調べて、領域中のいずれの遺伝子にお
けるいずれの変異型が病気または応答に寄与し、より効果的な介入に導くかを発見するこ
とができる。これは、いずれの薬物またはワクチンが薬物代謝に影響する遺伝子について
の特定の遺伝子型を持つ個体で効果的であるかを予測するためのテストの開発も可能とす
る。かくして、本発明を用いて、いずれの遺伝子マーカーが個体のゲノムで見出されるか
の同定に基づいて固体の遺伝子型を決定することができる。個体の遺伝子型の知識を用い
て、環境因子に対する応答、感染に対する感受性、特定の薬物またはワクチンの有効性、
または薬物またはワクチンに対する有害または応答に対するリスクに対する種々の特性を
測定することができる。
【0053】
本発明は、ここでは、全ゲノムに対する型決定可能な遺伝子座の増幅および/または検
出に関して例示する。当業者であれば、上記方法を、例えば、染色体または染色体のサブ
セット等のゲノムの一部;宿主ならびに1つ以上の寄生体からのゲノムDNAを有するバ
イオプシー試料、または特定の環境からの複数生物を有する生態学的試料;またはcDN
Aまたは増幅されたcDNAの表示さえが複数の異なるゲノムを有する試料を含めた他の
複雑な核酸試料で用いることのできることをここでの教示から理解するであろう。従って
、上記方法を用いて、ゲノムの一部、または混合されたゲノム試料で見出される型決定可
能な遺伝子座を特徴付けることができる。本発明は、与えられたゲノム内に含まれる1つ
または数個の型決定可能な遺伝子座を検出する方法を提供する。上記方法は、(a)その
ような型決定可能な遺伝子座を有するゲノム断片の増幅された表示的集団を提供し;(b
)上記ゲノム断片を、プローブ−断片ハイブリッドが形成される条件下で、型決定可能な
遺伝子座に対応する配列を有する複数の核酸プローブと接触させ;次いで、(c)プロー
ブ−断片ハイブリッドの型決定可能な遺伝子座を検出する工程を含む。特別な実施形態に
おいて、これらの核酸プローブは長さが多くとも125ヌクレオチドである。
図1は、ゲ
ノムの型決定可能な遺伝子座を検出する例示的方法の一般的概要を示す。
図1に示すよう
に、ゲノム断片の集団をゲノムから得、変性し、各々がゲノムの特定の型決定可能な遺伝
子座に相補的な配列を有する核酸プローブのアレイと接触させることができる。プローブ
に表されたタイパフル遺伝子座を有するゲノム断片は、注目する遺伝子座を欠く他の断片
はバルク溶液中に残りつつ、アレイ上の区別される位置においてプローブ−断片ハイブリ
ッドとして捕獲される。プローブ−断片ハイブリッドは、(
図1においてはシグナル部分
という)検出部分のプローブへの酵素−介在付加によって検出することができる。
図1の
例示的実施形態において、ポリメラーゼはビオチン標識ヌクレオチドをプローブ−断片ハ
イブリッド中のプローブに選択的に付加させる。次いで、例えば、ビオチニル化プローブ
が選択的に結合される条件下で蛍光標識アビジンをアレイに接触させ、次いで、蛍光を発
するアレイ中の位置を検出することによってビオチニル化フローブを検出することができ
る。各位置におけるプローブについての既知の配列に基づき、特定の型決定可能な遺伝子
座の存在を測定することができる。
【0054】
本発明の方法を用いて、ゲノムDNA(gDNA)を増幅し、またはいずれかの生物か
らのゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出することができる。上記方法は、典型的には、
真核生物単細胞および多細胞生物で見出されるもの等の大きなゲノムの増幅および分析に
理想的には適合する。本発明の方法で用いることができる例示的真核生物gDNAは、限
定されるものではないが、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、有蹄動物、
ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ネコ、イヌ、霊長類、ヒトまたはヒト以外の霊長類等
の哺乳動物;Arabidopsis thaliana、トウモロコシ(Zea ma
ys)、ソルガム、オート麦(Oryza sativa)、麦、コメ、カノーラ、また
は大豆等の植物;Chlamydomonas reinhardtii等の藻類;Ca
enorhadditis elegans等の線虫;Drosophila mela
nogaster、蚊、ハエ、ミツバチまたはクモ等の昆虫;ゼブラフィッシュ(Dan
io rerio)等の魚類;は虫類;カエルまたはXenopus laevis等の
両生類;dictyostelium discoideum;pneumocysti
s carinii、Takifugu rubripes、酵母、Saccharam
oyces cerevisiaeまたはSchizosaccharomyces p
ombe等の真菌;またはplasmodium falciparumからのものを含
む。また、本発明の方法を用いて、細菌、Escherichia coli、stap
hylococciまたはmycoplasma pneumoniae等の原核生物;
古細菌;C型肝炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス等のウイルス;またはビロイドか
らのもの等のより小さなゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出することもできる。
【0055】
本発明で用いるゲノムDNAは1つ以上の染色体を有することができる。例えば、1つ
の染色体を含む原核生物ゲノムDNAを用いることができる。別法として、複数の染色体
を含む真核生物ゲノムDNAを本発明の方法で用いることができる。かくして、上記方法
を用いて、例えば、2以上、4以上、6以上、8以上、10以上、15以上、20以上、
23以上、25以上、30以上、または35以上の染色体と等しいnを有するゲノムDN
Aの型決定可能な遺伝子座を増幅し、または検出することができ、ここに、nはハプロイ
ド染色体の数であって、ジプロイド染色体のカウントは2nである。また、本発明の方法
で用いるゲノムDNAのサイズは、染色体相補体の塩基対の数またはヌクレオチドの長さ
に従って測定することができる。本発明で有用なゲノムのいくつかについての例示的サイ
ズの見積もりは約3.1Gbp(ヒト)、2.7Gbp(マウス)、2.8Gbp(ラッ
ト)、1.7Gbp(ゼブラフィッシュ)、165Mbp(ミバエ)、13.5Mbp(
S.erevisiae)、390Mbp(フグ)、278Mbp(蚊)または103M
bp(C.elegans)である。当業者であれば、例えば、より小さなまたはより大
きなゲノムを含めた上記例示のもの以外のサイズを有するゲノムを本発明の方法で用いる
ことができるのを理解するであろう。
【0056】
ゲノムDNAは1つ以上の細胞、体液または組織から単離することができる。公知の方
法を用いて血液、汗、涙、リンパ液、尿、唾液、精液、脳脊髄液、糞またはヒツジ膜液等
の体液を得ることができる。同様に、既知のバイオプシー方法を用いて頬綿棒、マウスウ
ォッシュ、外科的除去バイオプシー吸入等のような細胞または組織を得ることができる。
また、ゲノムDNAは、一次培養、増殖した細胞系、固定された保管試料、法医学試料ま
たは考古学的試料中の1つ以上の細胞または組織から得ることもできる。
【0057】
それからgDNAが本発明の方法で得ることができる例示的細胞型は、限定されるもの
ではないがBリンパ球、Tリンパ球、白血球、赤血球、マクロファージまたは好中球等の
血液細胞;骨格細胞、平滑筋細胞または心筋細胞等の筋肉細胞;精子または卵子等の生殖
細胞;上皮細胞;脂肪細胞、線維芽細胞または骨芽細胞等の結合組織細胞;ニューロン;
星状神経膠細胞;間質細胞;腎臓細胞;膵臓細胞;肝臓細胞;またはケラチノサイトを含
む。それからgDNAが得られる細胞は、例えば、造血幹細胞または赤血球細胞、Bリン
パ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好虫球、塩基球、好酸球、単またはマクロフ
ァージ血小板等の造血幹細胞から生起する細胞を含めた特定の発生レベルであり得る。他
の細胞は骨髄間質細胞(腸間幹細胞)または骨細胞(オステオサイト)、軟骨細胞(コン
ドロサイト)、脂肪細胞(アジプサイト)等のそれから発生する細胞、または腱で見出さ
れるもの等の結合組織細胞の他の種類;神経幹細胞または、例えば、神経細胞(ニューロ
ン)、星状神経膠細胞または稀突起神経膠細胞を含めたそれが生起させる細胞;上皮幹細
胞または吸収細胞;ゴブレ細胞、パネス細胞、腸内分泌細胞等の上皮幹細胞から生起する
細胞;皮膚幹細胞;表皮幹細胞;または小胞幹細胞を含む。一般に、限定されるものでは
ないが、胚性幹細胞、成人幹細胞、多能性幹細胞を含めたいずれのタイプの幹細胞も用い
ることができる。
【0058】
それからgDNA試料が本発明で用いるのに得られる細胞は正常細胞、または特定の疾
患または症状の1つ以上の徴候を呈する細胞であり得る。かくして、本発明の方法で用い
るgDNAを癌細胞、新形成細胞、壊死細胞等から得ることができる。当業者であれば、
SAambrook et al.,Molecular Cloning:A Lab
oratory Manual,第三版,Cold Spring Harbor La
boratory,New York (2001)またはAusuben et al
.,Current Protocols in Molecular Biology
,John Waley and Sons,Baltimore,Md.(1998)
に記載されたもの等の当該分野で既知の方法を用いて細胞、流体または組織からgDNA
を単離するための方法を知っているか、またはそれを容易に決定することができる。
【0059】
本発明の方法は、さらに、特定のタイプの細胞または組織を単離する工程を含むことが
できる。集団中の他の細胞から特定の細胞を単離するために本発明の方法で用いることが
できる例示的方法は、限定されるものではないが、例えば、Shapiro,Pract
ical Flow Citemetry,第三版 Wiley−Liss(1995)
に記載された蛍光活性化細胞分類(FACS);密度勾配遠心、顕微鏡の援助を借りたミ
クロ操作方法を用いる手動分離を含む。本発明で有用な例示的細胞分離デバイスは、限定
されるものではないが、Beckman JE−6遠心浄化システム、Beukman
Coulter EPICS ALTRAコンピュータ −制御フローサイトメーター
−セルソーター、Cytomation,Inc.からのモジュラーフローサイトメータ
ー、コールターカウンタオーおよびチャネライザーシステム、密度勾配装置、細胞遠心、
BeckmanJ−6 遠心機、EPICS Vデュアルレーザーセルソーター、または
EPICS PROFILEフローサイトメーターを含む。細胞の組織または集団を、外
科的技法によって取り出すこともできる。例えば、腫瘍または腫瘍からの細胞を外科的方
法によって組織から取り出すことができ、あるいは逆に、非癌性細胞を腫瘍の近隣から取
り出すことができる。後にさらに詳細に記載するもの等の方法を用い、本発明を用いて、
例えば、同一個体から、または異なる個体から単離した癌性および非癌性細胞を含めた異
なる細胞に関して型決定可能な遺伝子座を比較することができる。
【0060】
DNAを含有する細胞を溶解させることによって、本発明の方法で用いるためにgDN
Aを調製することができる。典型的には、実質的に細胞のgDNAの完全性を保持する条
件下で細胞を溶解させる。特に、アルカリ性pHへの細胞の曝露を用いて、比較的少ない
損傷をgDNAに引き起こしつつ、本発明の方法で細胞を溶解させることができる。例え
ば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を含めた種々の塩基性化合物のいずれかを溶解
で用いることができる。加えて、比較的損傷していないgDNAは、細胞壁を分解する酵
素によって溶解された細胞から得ることができる。天然でまたは酵素除去により細胞壁を
欠く細胞は浸透圧応力への曝露によって溶解させることもできる。細胞を溶解するのに用
いることができる他の条件は洗剤への曝露、機械的破壊、音波処理加熱、フレンチプレス
デバイスにおけるような圧力差、またはDounceホモゲナイゼーションを含む。例え
ば、ヌクレアーゼ阻害剤、キレート化剤、塩緩衝液等を含めたgDNAを安定化させる剤
を細胞溶解物または単離されたgDNA試料に含ませることができる。細胞を溶解させて
gDNAを得るための方法は、例えば、Sambrook et al.,前掲(200
1)またはAusubel et al.,前掲(1998)に記載されている当該分野
で既知の条件下で行うことができる。
【0061】
本発明の特別な実施形態において、gDNAを含有する粗製細胞溶解物を、gDNAの
さらに別の単離なくして、直接的に増幅または検出することができる。別法として、gD
NAは、増幅または検出に先立って他の細胞構成要素からさらに単離することができる。
従って、本発明の検出または増幅方法は、精製されたまたは部分的に精製されたgDNA
で行うことができる。ゲノムDNAは、例えば、液相抽出、沈殿、固相抽出、クロマトグ
ラフィー等を含めた公知の方法を含めた単離することができる。そ等の方法は、しばしば
ミニプレプといわれ、例えば、Sambrook et al.,前掲(2001)また
はAesuben et al.,前掲(1998)に記載されており、あるいは例えば
、Qiagen(Vanencia,CA)またはPromega(Madison,W
I)を含めた種々の市販元から入手できる。
【0062】
ゲノム断片の増幅された表示的集団は、ゲノムDNA(gDNA)テンプレートを複製
して、各コピーされた配列の相対的割合が元のgDNAにおけるその割合と実質的に同一
である1つ以上のコピーを生じる条件下で天然ゲノムを増幅することによって供すること
ができる。かくして、本発明の方法は、天然ゲノムを表示的に増幅する工程を含むことが
できる。配列独立的にゲノムDNAを複製する種々の方法のいずれかを本発明で用いるこ
とができる。
【0063】
本発明の方法を用いて、少数のゲノムコピーからゲノム断片が上記増幅された断片が増
幅された表示的集団を生じさせることができる。従って、例えば、低い豊富さ、バイオプ
シー拘束または高いコストのため比較的少数の細胞を有する同一組織試料または他の試料
をゲノム−幅スケールで遺伝子型分類または評価することができる。本発明の方法を用い
て、例えば、単一細胞から得られた単一天然ゲノムコピーからの上記ゲノム断片の増幅さ
れた表示的集団を生じさせることができる。本発明の他の例示的実施形態において、天然
ゲノム断片の増幅された表示的集団を、限定されるものではないが、約1,000コピー
(ヒトゲノムについては、ほぼ3ナノグラムのDNA)以下、10,000コピー以下、
1×10
5コピー(ヒトゲノムについてはほぼ300ナノグラムのDNA)以下、5×1
0
5コピー以下、1×10
6コピー以下、1×10
8コピー以下、1×10
10コピー以
下、または1×10
12コピー以下を含めた非常に多数の天然ゲノムコピーから生じさせ
ることができる。
【0064】
本発明で表示的に増幅されるDNA試料は上記したもの、またはミトコンドリアDNA
等の他のDNAテンプレート、またはゲノムDNAの一部のサブセット等のゲノムであり
得る。ゲノムDNAのサブセットの1つの非限定的例は、1つの特別な染色体または特定
の染色体の1つの領域である。一般に、本発明で用いる増幅方法は、テンプレート核酸に
ハイブリダイズドして、ハイブリダイゼーション複合体を形成する少なくとも1つのプラ
イマー核酸、ヌクレオチド三リン酸(NTP)、およびNTPをプライマーの3’ヒドロ
キシルと反応させ、それによりテンプレートの少なくとも一部を複製することによってプ
ライマーを修飾するポリメラーゼを用いて行うことができる。例えば、PCRベースの方
法は、一般には、DNAテンプレート、2つのプライマー、dNTPおよびDNAポリメ
ラーゼを利用する。かくして、本発明の典型的な全ゲノム増幅方法においては、ゲノムD
NA試料は、上記したもの等の増幅構成要素を含む反応混合物と共にインキュベートし、
上記ゲノム断片の増幅された表示的集団が形成される。
【0065】
本発明の方法で用いるプライマーは、それが、配列特異性を持つテンプレート核酸にハ
イブリダイズする能力を有し、かつテンプレートの複製に参画することができる限り、種
々の組成物またはサイズのいずれかを有することができる。例えば、プライマーは、天然
構造またはそのアナログを有する核酸であり得る。天然構造を持つ核酸は、一般には、ホ
スホジエステル結合を含有する骨格を有し、例えば、デオキシリボ核酸またはリボ核酸で
あり得る。アナログの構造は、限定されるものではないが、ホスホルアミダイト(例えば
、Beaucage et al.,Tetrahedron 49(10):1925
(1993)およびその中の文献;Letsinger,J.Org.Chem.35:
3800(1970);Sprinzl et al.,Eur.J.Biochem.
81:579(1977);Letsinger et al.,Nucl.Acids
Res.14:3487(1986);Sawai et al.,Chem.Let
t.805(1984,Letsinger et al.,J.Am.Chem.So
c.110:4470(1988);およびPauwels et al.,Chemi
ca Scripta 26:141 (1986)参照)、ホスホロチオエート(例え
ば、Mag et al.,Nucleic Acids Res.19:1437(1
991);および米国特許第5,644,048号参照)、ホスホロジチオエート(例え
ば、Briu et al.,J.A.M.Chem.Soc.11 1:2321(1
989)参照)、O−メチルホスホロアミダイト結合(例えば、Eckstein,Ol
igonucleotides and Analogues:A Practical
Approach.Oxford University Press参照)、および
ペプチド核酸骨格および結合(例えば、Egholm,J.Am.Chem.Soc.1
14:1895(1992);Meier et al.,Chem.Int.Ed.E
ngl.31:1008(1992);Nielsen,Nature,365:566
(1993);Carlsson et al.,Nature 380:207(19
96参照)を含めた別の骨格を有することができる。他のアナログ構造は陽性骨格(例え
ば、Denpcy et al.,Proc.Latl.Acad.Aci.USA 9
2:6097(1995)参照);)非イオン性骨格(例えば、米国特許第5,386,
023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号
および第4,469,863号;Kiedrowshi et al.,Angew.C
hem.Intl.Ed.English30:423(1991);Letsinge
r et al.,J.Am.Chem.Soc.110:4470(1988);Le
tsinger et al.,Nucleoside & Nucleotide 1
3:1597(1994);Capters 2and3,ASC Simposium
Series 580,「Carbohidrate Modifications
in Antisense Research」,Y.S.Sanghui and P
.Dan Cook編;Mesmaeker et al.,Bioorganic &
Medicinal Chem.Left.4:395(1994);Jeffs e
t al.,J.Biomolecular NMR34:17(1994); Tet
rahedron Lett.37:743(1996)参照)および、例えば、米国特
許第5,235,033号および第5,034,506号、およびCapters 6
and 7,ASC Symposium Series 580,「Carbohyd
rate Modifications in Antisense Research
」,Y.S.Sanghui and P.Dan Cook編に記載されたものを含め
た非リボース骨格を持つものを含む。1つ以上の炭素環 糖を含有するアナログ構造も上
記方法で有用であり、例えば、Jenkins et al.,Chem.Soc.Re
v.(1995)pp169−176に記載されている。本発明で有用な一部の他のアナ
ログ構造はRawls,C & E News Jun.2,1997 page 35
に記載されている。
【0066】
本発明で有用なアナログ構造を持つ核酸のさらに別の例はペプチド核酸(PNA)であ
る。PNAの骨格は、天然に生じる核酸の高度に荷電されたホスホジエステル骨格とは対
照的に、中性条件下で実質的に非イオン性である。これは、2つの非限定的利点を供する
。まず、PNA骨格は改善されたハイブリダイゼーションキネティックスを呈する。第二
に、PNAは、ミスマッチ vs パーフェクトマッチした塩基対のための融解温度(T
m)のより大きな変化を有する。DNAおよびRNAは、典型的には、内部ミスマッチに
関してTmの2〜4℃で降下を呈する。非イオン性PNA骨格では、上記降下は7〜9℃
により近い。これは、良好な配列区別を提供することができる。同様に、それらの非イオ
ン性性質のための、これらの骨格に付着した塩基のハイブリダイゼーションは塩濃度に対
して比較的非感受性である。
【0067】
本発明で有用な核酸は骨格に非天然の糖部分を含むことができる。例示的な糖は、限定
されるものではないが、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、アルカリール、アラ
ルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br
、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH
2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリア
ルキルアミノ、置換されたシリル等の付加などの2’修飾を含む。同様な修飾を糖上の他
の位置、特に、3’末端ヌクレオチドの糖の3’位置、または2’−5’連結オリゴヌク
レオチドおよび5’末端ヌクレオチドの5’位置で行うこともできる。
【0068】
本発明で用いる核酸は天然または非天然塩基を含むこともできる。この点について、天
然デオキシリボ核酸はアデニン、チミン、シトシンまたはグアニンよりなる群から選択さ
れる1つ以上の塩基を有することができ、リボ核酸はウラシル、アデニン、シトシンまた
はグアニンよりなる群から選択される1つ以上の塩基を有することができる。天然骨格ま
たはアナログ骨格を有するかを問わず、核酸に含めることができる例示的非天然塩基は、
限定されるものではないが、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イ
ソグアニン、5−メチルシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン、2−アミノアデニン
、6−メチルアデニン、6−メチルグアニン、2−プロピルグアニン、2−プロピルアデ
ニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、2−チオシトシン、15−ハロウラシル、1
5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシル、5−プロピニルシトシン6―アゾウラシル
、6−アゾシトシン、6−アゾチミン、5−ウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデ
ニンまたはグアニン、8−アミノアデニンまたはグアニン、8−チオールアデニンまたは
グアニン、8−チオアルキルアデニンまたはグアニン、8−ヒドロキシアデニンまたはグ
アニン、5−ハロ置換ウラシルまたはシトシン、7−メチルグアニン、7−メチルアデニ
ン、8−アザグアニン、8−アザアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザアデニン、
3−デアザグアニン、3−デアザアデニン等を含む。特別な実施形態は核酸においてイソ
シトシンおよびイソグアニンを利用して、一般的には、米国特許第5,681,702号
に記載されたように非特異的ハイブリダイゼーションを低下させることができる。
【0069】
本発明の核酸で用いる非天然塩基は不偏的な塩基対合活性を有することができ、ここに
、それはいずれかの他の天然に生じる塩基とで塩基対合することができる。普遍的な塩基
対合活性を有する例示的塩基は3−ニトロピロールおよび5−ニトロインドールを含む。
用いることができる他の塩基は、その塩基がシトシン、アデニンまたはウラシルと対合す
るイノシン等の天然に生じる塩基のサブセットにて塩基対合活性を有するものを含む。
【0070】
修飾されたまたはアナログ構造を有する核酸は本発明で用いて、例えば、標識の付加を
容易としまたは増幅条件または本発明に従って用いられる他の条件下で分子の安定性また
は半減期を増加させることができる。当業者に理解されるように、例えば、天然またはア
ナログ構造を持つ分子を含めた混合物として、上記核酸の1つ以上を本発明で用いること
ができる。加えて、本発明で用いられる核酸プライマーは、以下に記載するもの等の本発
明で用いる特定の増幅技術に関して望まれる構造を有することができる。
【0071】
特別な実施形態において、本発明で有用な核酸は検出部分を含むことができる。検出部
分を用いて、例えば、後に記載するもの等の方法を用い、上記ゲノム断片の増幅された表
示的集団の1つ以上のメンバーを検出することができる。検出部分は、例えば、一次標識
との直接的または間接的相互作用を介して、間接的に検出することができる直接的に検出
可能なまたは二次的標識である一次標識であり得る。例示的一次標識は、限定されるもの
ではないが、天然に生じる少量の放射性または安定同位元素等の同位体標識;クロモフォ
ア;ルミノフォア;フルオロフォア;比色剤;磁気物質;金属等の電子−豊富材料;Ru
(bpy)
32+等のエレクトロケミルミネセント標識;または核磁気、常磁性、電気、
質量に対する電荷、または熱的特徴に基づいて検出することができる部分を含む。本発明
で有用なフルオロフォアは、例えば、ユーロビウムおよびテルビウムのそれを含めた蛍光
ランタノイド錯体、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、
エリスロシン、クマリン、メチル−クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、Cy3、C
y5、スチルレン、ルシフェールイエロー、カスケードブルー
TM、テキサスレッド、ア
レクサ色素、フィコエリスリン、ボジピ、およびHaugland,Molecular
Probs Handbook,(Eugene,OR)第六版;Synthegen
カタログ(Houston,TX.),Lakowicz,Principles of
Fluorescense Spectroscopy,第二版,Plenum Pr
ess New York(1999)、またはWO 98/59066に記載されたも
の等の当該分野で既知の他のものを含む。標識はホースラディッシュペルオキシダーゼま
たはアルカリ性ホスファターゼ、あるいは磁気粒子または光学的にコードされたナノ粒子
等の酵素を含むこともできる。
【0072】
例示的二次標識は結合部分である。結合部分を核酸に付着させて、受容体に対する特異
的親和性を介する核酸の検出または単離を行うことができる。2つの結合パートナーの間
の特異的親和性は、系における他の構成要素または汚染物に対するパートナーの結合と比
較したさらに別のパートナーに対する1つのパートナーの優先的結合を意味する。特異的
に結合した結合パートナーは、典型的には、非特異的結合を除去するための洗浄工程を含
めた、本明細書中に記載した検出または分離条件下で結合したままである。用いる特定の
結合条件に依存して、対の解離定数は、例えば、約10
−4、10
−5、10
−6、10
−7、10
−8、10
−9、10
−10、10
−1、または10
−12M
−1未満であり
得る。
【0073】
本発明で用いることができる結合部分および受容体の例示的対は、限定されるものでは
ないが、抗原および免疫グロブリンまたはFAb等のその活性断片;免疫グロブリンおよ
び免疫グロブリン(または各々、活性断片);アビジンおよびビオチン、またはイミノ−
ビオチン等のアビジンに対する特異性を有するそのアナログ;ストレプトアビジンおよび
ビオチン、またはイミノ−ビオチン等のストレプトアビジンに対する特異性を有するその
アナログ;炭水化物およびレクチン;および他の公知の蛋白質およびそれらのリガンドを
含む。上記した対におけるいずれかのパートナーは核酸に結合させ、各パートナーへの結
合に基づいて検出または単離することができるのが理解されよう。さらに、核酸に結合さ
せることができる一部の部分は本発明の方法で一次および二次双方の標識として機能する
ことができるのが理解されよう。例えば、ストレプトアビジン−フィコエリスリンはフィ
コエリスリン部分からの蛍光による一次標識として検出することができるか、あるいはそ
れは、シグナル増幅方法に関して後にさらに詳細に記載するように、抗ストレプトアビジ
ン抗体に対するその親和性により二次標識として検出することができる。
【0074】
特別な実施形態において、二次標識は化学的に修飾することができる部分であり得る。
この実施形態において、反応性官能基を有する標識は核酸に取り込むことができる。官能
基は、引き続いて、一次標識と共有結合反応させることができる。適切な官能基は、限定
されるものではないが、アミノ基、カルボキシ基、マレイミド基、オキソ基およびチオー
ル基を含む。結合部分は、gDNAの増幅で用いられるプライマーに付着させる場合に特
に有用であり得る。そのようなプライマーで生じたゲノム断片が上記増幅された表示的な
集団を上記結合部分を介してアレイに付着させることができる。さらに、結合部分が、増
幅された断片を増幅反応の他の構成要素から分離し、上記ゲノム断片の増幅された表示的
集団を濃縮し、あるいはアレイ上の捕獲プローブに結合した場合、ゲノム断片の増幅され
た表示的集団の1つ以上のメンバーを検出するのに有用であり得る。付着した結合部分を
有する核酸分子のための例示的分離および検出方法を以下にさらに詳しく記載する。
【0075】
結合部分、検出部分またはいずれかの他の有用な部分を、当該分野で既知の方法を用い
、増幅されたゲノム断片等の核酸に付着させることができる。例えば、核酸を増幅するの
に用いられるプライマーは核酸またはそのアナログにおける塩基、リボース、リン酸、ま
たは類似の構造に付着した部分を含むことができる。特別な実施形態において、例えば、
増幅または検出工程の間に、成長するヌクレオチドストランドに付加される修飾されたヌ
クレオチドを用いて部分を一体化させることができる。ヌクレオチドは、例えば、塩基ま
たはリボース、または核酸アナログにおける類似の構造において修飾することができる。
かくして、本発明の方法は、上記した1つ以上の修飾を有する上記ゲノム断片の増幅され
た表示的集団を生じさせるためにゲノム断片を標識する工程を含むことができる。本発明
の方法でgDNAを増幅するのに用いることができる核酸プライマーは、充分な安定性お
よび特異性でもってテンプレートgDNAを結合させて、ポリメラーゼ複製活性の起点と
することができるいずれかの長さである相補的配列を含むことができる。相補的配列は増
幅で用いるプライマーの全てまたは一部を含むことができる。本発明の方法において増幅
で用いられるプライマーの相補的配列の長さは、一般には、gDNAテンプレート上の起
点部位の間の距離に逆比例する。かくして、増幅は、例えば、長さが多くとも5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25
、30、35、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400
、500ヌクレオチドを含む比較的短い相補的配列を有するプライマーで行うことができ
る。
【0076】
当業者であれば、ハイブリダイゼーションの特異性は、一般には、核酸プライマーの長
さが増大するにつれ増大することを理解するであろう。かくして、より長い核酸プライマ
ーを用いて、例えば、所望であれば、複製の特異性または再現性を増加させることができ
る。従って、本発明の方法で用いる核酸は少なくとも5、6、7、8、9、10、11、
12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、5
0、60、70、80、90、100、200、300、400、500以上のヌクレオ
チド長であり得る。当業者であれば、本発明で用いる核酸プローブは上記した例示的長さ
のいずれを用いることもできることを理解するであろう。
【0077】
本発明で用いることができる全ゲノム増幅に対する2つの一般的アプローチは、ユニバ
ーサルPCRによって増幅可能なゲノム表示のランダム起点増幅または創製の一部の形態
の使用を含む。ランダム起点増幅についての例示的技術は、限定されるものではないが、
PEP−PCEまたはDOP−PCR等のPCRに基づくもの、またはランダム−プライ
マーの増幅等のストランド−置き換え増幅に基づくものを含む。ユニバーサルPCRによ
って増幅可能なゲノム表示を創製する例示的方法は、例えば、Lucito et al
.,Proc.Nat‘l.Acad.Sci.USA 95:4487−4492(1
998)に記載されている。ゲノム表示の1つの実行は、gDNAの制限消化を介して短
いゲノムインサート(例えば、30〜2000塩基)を作り出し、アダプター連結によっ
てユニバーサルPCRテイルを加えることである。典型的には、gDNAの増幅または検
出は、gDNAテンプレートの異なる部分にハイブリダイズする核酸の集団で行われる。
本発明で用いる核酸の集団は、配列のランダムまたはセミ−ランダム相補体を有するメン
バーを含むことができる。かくして、核酸の集団は固定された配列長さを持つメンバーを
有することができ、そこでは、配列に沿った1つ以上の位置が集団内でランダム化されて
いる。その例として、12量体プライマーの集団は、4つの天然DNAヌクレオチドのう
ちのいずれかが組み込まれ、それにより、4つの異なるプライマーメンバーを有する集団
が生じる1つの特別な位置、例えば、位置5を除いて同一である配列を有することができ
る。特別な実施形態において、配列に沿った複数位置は組合せによりランダム化すること
ができる。例えば、核酸プライマーはランダム化された2、5、10、15、20、25
、30、35、40、50、60、70、80、90、100以上の位置を有することが
できる。例えば、4つの可能な天然DNAヌクレオチドにて各位置がランダム化された1
2量体プライマーは4
12=1.7×10
7メンバーまでを含むであろう。
【0078】
特別な実施形態において、本発明で用いる核酸の集団は、合理的アルゴリズムまたはプ
ロセスに基づいて設計された配列を持つメンバーを含むことができる。同様に、核酸の集
団は、各々が、合理的アルゴリズムまたはプロセスに基づいて設計されたそれらの配列の
少なくても一部を有するメンバーを含むことができる。合理的設計アルゴリズムまたはプ
ロセスを用いて、区別される配列を有する核酸生成物の合成を指令し、または優先的に特
定の配列を含むよう偏った核酸混合物の合成を指令することができる。
【0079】
合理的設計方法を用い、集団における核酸についての配列を、例えば増幅すべき、また
は検出すべきgDNA中の既知の配列に基づいて選択することができる。上記配列は、集
団が、所望の範囲を持つgDNAにハイブリダイズする配列を優先的に含むように選択す
ることができる。例えば、プライマーの集団は、コーディング領域または非コーディング
領域のような特定の染色体またはgDNAの一部にハイブリダイズするメンバーを優先的
に含むよう設計することができる。また、核酸の集団の他の特性を選択して、相互から所
望の平均の最小または最大長さにおけるgDNA配列に沿った位置で優先的なハイブリダ
イゼーションを達成するように選択することもできる。例えば、プライマーの長さは、g
DNA配列に沿って相互から少なくとも約64、256、1000、4000、1600
0以上の塩基ごとにおいてハイブリダイズし、起点となるよう選択することができる。
【0080】
また、本発明で有用な核酸は、例えば、Aluリピートを含めた既知のリピートまたは
反復的エレメント等の、増幅または検出すべきgDNA中の特定の配列にハイブリダイズ
する配列を優先的に省略または低下させるよう設計することもできる。従って、任意の−
プライマー増幅で用いられるもの等の単一プローブまたはプライマーは、特定の配列を含
み、またはそれを排除するよう設計することができる。同様に、ランダムプライマー増幅
で用いるプライマーの集団等の、プローブまたはプライマーの集団は、Aluリピート等
の特定の配列を優先的に排除し、または含むように合成することができる。また、ランダ
ムプライマーの集団は、AおよびTヌクレオチドと比較して、より高い含有量のGおよび
/またはCヌクレオチドを優先的に含むように合成することもできる。得られたランダム
プライマー集団はGCが豊富であって、従って、非コーディングgDNA領域よりも高い
GC含有量を典型的には有するヒトゲノムの遺伝子コーディング領域等のゲノムの高GC
領域にハイブリダイズするより高い確率を有する。逆に、ATが豊富なプライマーは、ヒ
トゲノムの非コーディング領域等のATが豊富な領域を優先的に増幅し、またはそれにア
ニールするように合成することができる。核酸の設計に影響されるために用いることがで
きる他のパラメーターは、そこでプライマーダイマーの形成の傾向があるまたは、ヘアピ
ン形成、または所望の最大、最小または平均Tmを有する配列の優先的選択の傾向がある
、例えば、プライマー自身を相補的にする配列の優先的除去を含む。プローブを設計する
ために本発明で用いることができる例示的方法およびアルゴリズムは、US 2003/
0096986A1に記載されているものを含む。
【0081】
ランダムプライマーの集団中のプライマーは、ユニバーサルテイルのような同一配列の
領域を有することができる。ユニバーサルテイルは、その後の増幅工程のためのユニバー
サルプライミング部位、または増幅された配列を単離し、または検出するのに有用な特定
の結合剤にアニールする部位を含むことができる。ユニバーサルテイルを持つランダムプ
ライマーの集団を作成し、それを用いる方法は、例えば、Singer et al.,
Nucl.Acid.Res.25:781−786(1997)またはGrothue
s et al.,Nucl.Acids Res.21:1321−2(1993)に
記載されている。
【0082】
当業者であれば、プローブ等の本発明で用いる種々の核酸のいずれも1つ以上の特性を
有することができるか、あるいはプライマーとの関係で供された例を含めて上記したよう
に、それを作り出すことができる。
【0083】
ゲノムを増幅するための本発明の方法は、ゲノムDNAを表示的に増幅するための条件
下で、gDNAをポリメラーゼと接触させる工程を含むことができる。本発明の方法にお
ける増幅で用いられるポリメラーゼのタイプおよび条件は、所望の長さを有するゲノム断
片を得るように選択することができる。特別な実施形態において、例えば、低反応促進性
のポリメラーゼでgDNAを増幅されることによって、あるいはエンドヌクレアーゼまた
は化学剤等の核酸切断剤でgDNAテンプレートまたはその増幅生成物を断片化すること
によって、比較的小さな断片を本発明の方法で得ることができる。例えば、本発明の方法
を用いて、限定されるものではないが、長さが多くとも約10kb、5kb、4kb,3
kb、2kb、1kb、0.8kb、0.6kb、0.5kb、0.4kb、0.2kb
、または0.1kbである上記ゲノム断片の増幅された表示的集団を得ることができる。
【0084】
別の実施形態において、本発明の方法を用いて、gDNAを増幅し、比較的大きなゲノ
ムDNA断片を形成することができる。そのような実施形態によると、本発明の方法を用
いて、長さが少なくとも約10kb、15kb、20kb、25kb、30kb以上であ
る上記ゲノム断片の増幅された表示的集団を得ることができる。
【0085】
比較的に小さなサイズを有するゲノム断片を含めた増幅された表示的集団は、例えば、
低反応促進性のポリメラーゼでgDNAを増幅することによって得ることができる。本発
明の方法で用いる低反応促進性ポリメラーゼは、重合事象当たり100塩基未満を合成す
ることができる。所望であれば、増幅の条件下にて、重合事象当たり50、40、30、
20、10または5未満の塩基を合成するポリメラーゼを用いることによって、より短い
断片を得ることができる。増幅のために低反応促進性ポリメラーゼを用いる非限定的利点
は、比較的小さな断片が得られ、それにより、核酸アレイへの効果的なハイブリダイゼー
ションが可能となることである。低反応促進性ポリメラーゼは、断片化されたゲノム試料
を増幅するのに特に有用であり得る。後に記載するように、個々の分析の特に有用な方法
は、例えば、プローブのアレイ中の区別される位置における断片の捕獲を含むことができ
る。
【0086】
特別な実施形態において、変性されたまたは一本鎖のゲノムDNAテンプレートは、本
発明の方法において低反応促進性ポリメラーゼを用いて増幅することができる。gDNA
テンプレートは、例えば、熱、ヘリカーゼ等の酵素、塩または洗剤等の化学剤、pHなど
によって変性することができる。低反応促進性が可能であって、本発明でgDNAを増幅
するのに有用な例示的ポリメラーゼは、限定されるものではないがTaqポリメラーゼT
4ポリメラーゼ、(ベーターサブユニットを欠く)「モノマー」E.coli Pol
III.またはE.coli DNA Pol Iまたはクレノウポリメラーゼとして既
知のその5‘ヌクレアーゼ結合断片を含む。
【0087】
本発明は、さらに、gDNAテンプレートが変性されない条件下で増幅が起こる実施形
態を提供する。例示的な条件は、単離されたゲノムDNAが実質的に二本鎖でとどまる温
度である。DNAの高温変性が必要とされない条件は、典型的には、等温条件という。ゲ
ノムDNAは、ストランド置き換え活性を有するポリメラーゼを用いて本発明における等
温条件下で増幅することができる。特別な実施形態において、低反応促進性およびストラ
ンド置き換え活性双方を有するポリメラーゼを用いて、上記ゲノム断片の増幅された表示
的集団を得ることができる。低反応促進性およびストランド置き換えが可能な例示的ポリ
メラーゼは、限定されるものではないが、E.coli Pol I、exo
−クリノウ
ポリメラーゼまたは配列決定グレードのT7 exo−ポリメラーゼを含む。
【0088】
一般に、例えば、反応促進性およびストランド置き換え活性を含めたポリメラーゼ活性
は、pH,温度イオン強度、および緩衝液の組成のような因子によって影響され得る。当
業者であれば、例えば、Eun,Enzymology Primer for Rec
ombinant DNA Technology,Academic Press,S
an Diego(1996)に記載されたポリメラーゼの活性に関して何が既知である
かを考慮して、いずれのタイプのポリメラーゼおよび条件を用いて所望の長さを有する断
片を得ることができるかを知っており、あるいはゲル電気泳動または質量分析等の公知の
アッセイを用いる全体的テストによって適切なポリメラーゼおよび条件を決定して、増幅
された断片の長さを測定することができる。
【0089】
E.coli Pol Iまたはそのクレノウ断片を、例えば、約5℃および37℃の
間の温度でインキュベートした低塩(I=0.085)反応おいて、小さなゲノムDNA
断片を生じさせるためのゲノムの等温増幅で用いることができる。クレノウ断片でgDN
Aを増幅するのに用いることができる例示的な緩衝液およびpH条件は、例えば、37℃
にて16時間インキュベートした50mMトリスHCl(pH7.5)、5mM MgC
l
2、50mM NaCl、50μg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、0.2mM
の各dNTP、2μg(マイクログラム)ランダムプライマー(n=6),10ng g
DNAテンプレートおよび5ユニットのクレノウexo−を含む。1つ以上の反応成分を
省略し、または置換する場合同様な反応条件を実行することができる。例えば、緩衝液を
50mMリン酸塩(pH7.4)で置き換えることができるか、あるいは約7.0〜7.
8の範囲の他のpH値を用いることができる。増幅すべきgDNAテンプレートは、限定
されるものではないが、本明細書中において先に記載したものを含めた種々の量のいずれ
かで供することができる。別の実施形態において、増幅の条件は、例えば、10ngのゲ
ノムDNAテンプレート、2mMのdNTP、10mMのMgCl
2、0.5U/μl(
マイクロリットル)のポリメラーゼ、50uM(マイクロモラー)のランダムプライマー
(n=6),および37℃における16時間の等温のインキュベーションを含む。
【0090】
特別な実施形態において、増幅反応は、例えば、最初のアニーリング工程、続く伸長工
程を含めた二つの工程で行うことができる。例えば、95℃での短時間のインキュベーシ
ョンによって30μlの10mMトリス−HCl(pH7.5)中で、10ngのgDN
Aを100uMのランダムプライマー(n=6)でアニールすることができる。反応を室
温まで冷却し、等用量の20mMのトリス−HCl(pH7.5)、20mMのMgCl
2、15mMのジチオスレイトール、4mMのdNTPおよび1U/μlのクレノウex
o−を添加し、37℃にて16時間インキュベートすることによってアニーリング工程を
行うことができる。クレノウ−ベースの増幅を例示したが当業者であれば後に記載するも
の等の他のポリメラーゼで行う増幅反応のために、別のアニーリングおよび伸長工程を用
いることができるのを理解するであろう。
【0091】
特別な実施形態において、異なる長さ(n)のランダムアニーリング領域を有するプラ
イマーをクレノウ−ベースの増幅方法で置き換えることができる。例えば、上記例示の条
件におけるn=6ランダムプライマーを、限定されるものではないがn=7,8,9,1
0,11つまたは12ヌクレオチドを含めた他のランダム配列長さを有するプライマーで
置き換えることができる。再度、クレノウ−ベースの増幅に関して例示したが、当業者で
あれば、後に記載するもの等の他のポリメラーゼで行う増幅反応のために異なるランダム
配列長さ(n)を有するランダムプライマーを用いることができるのを理解するであろう
。
【0092】
T4 DNAポリメラーゼは、例えば、50mMのHEPES pH7.5、50mM
のトリス‐HCl pH8.6、または50mMのグリシネートpH9.7中での一本鎖
または変性gDNAの増幅で用いることができる。また、典型的な反応混合物は、37℃
にて少なくとも一時間インキュベートする50mMのKCl、5mMのMgCl
2、5m
Mのジチオスレイトール(DTT)、40μg/mlのgDNA、0.2mMの各dNT
P、50μg/mlのBSA、100uMのランダムプライマー(n=6)および10ユ
ニットのT4ポリメラーゼを含むことができる。温度をサイクルさせて、複数ラウンドの
増幅用の複製ストランドを置き換えることができる。
【0093】
T7ポリメラーゼは、典型的には、高度に反応促進性であり、テンプレートDNAから
の解離前の数千のヌクレオチドの重合を可能とする。T7ポリメラーゼは高度に反応促進
性である典型的な反応条件が40mMのトリス−HCl pH7.5,15mMのMgC
l
2、25mMのNaCl、5mMのDTT、0.25mMの各dNTP、50μg/m
lの一本鎖gDNA、100uMのランダムプライマー(n=6)および0.5〜1ユニ
ットのT7ポリメラーゼである。しかしながら、37℃未満の温度では、T7ポリメラー
ゼの反応促進性は大いに低下する。T7ポリメラーゼの反応促進性は、高いイオン強度、
例えば、100mMのNaClを超えてはやはり低下し得る。形態IIのT7ポリメラー
ゼは、典型的には、二本鎖DNAを増幅することができる。しかしながら、形態IのT7
ポリメラーゼおよび修飾されたT7ポリメラーゼ(28アミノ酸領域Lys118〜Ar
g145を欠くSEQUENASE
TMバージョン2.0)はストランド置き換え複製を
触媒することができる。従って、小さなゲノム断片は、上記したもののような修飾された
T7ポリメラーゼまたは修飾された条件を用いる本発明の方法で増幅することができる。
特別な実施形態において、増大したストランド置き換えのために、E.coli一本鎖結
合蛋白質(SSB)の存在下でSEQUENASE
TMを用いることができる。また、S
SBを用いて、所望であれば、SEQUENASE
TMの反応促進性を増加させることも
できる。
【0094】
Taqポリメラーゼは、10倍モル過剰のテンプレートおよびランダムプライマー(n
=6)と反応させる場合、70℃程度の温度で高度に反応促進性である。これらの条件下
で行う増幅反応は、さらに、約20mMのトリス‐HCl、約7のpH、約1〜2mMの
MgCl2、および0.2mMの各dNTP等の緩衝液を含むことができる。加えて、グ
リセロール、ゼラチン、BSAまたは非イオン性洗剤等の安定化剤を加えることができる
。Taqポリメラーゼは70℃未満の温度にて低い反応促進性を有する。したがって、g
DNAの小さな断片は、本発明の方法において、あるいはTaqが低い反応促進性を有す
るさらに別の条件において、低温でTaqポリメラーゼを用いて得ることができる。さら
に別の実施形態において、TaqポリメラーゼのN−末端289アミノ酸残基を欠き、7
5℃にて低い反応促進性を有するStoffel断片を用いて、本発明の方法において、
比較的小さなgDNA断片を生じさせることができる。Taqを用いて、本発明の方法に
おいて、一本鎖または変性DNAテンプレートを増幅することができる。温度をサイクル
させて、複数ラウンドの増幅のために、複製ストランドを置き換えることができる。
【0095】
当業者であれば、上記した種々のポリメラーゼでの増幅のための条件は例示であること
を理解するであろう。かくして、実質的に活性を変化させない些細な変化を行うことがで
きる。さらに、条件を実質的に変化させて、所望の増幅活性を達成し、または本発明の特
別な適用に適合させることができる。
【0096】
本発明は、上記したポリメラーゼの変異型がポリメラーゼ活性を保持する限り、それら
で行うこともできる。例示的な変異型は、限定されるものではないが、減少したエキソヌ
クレアーゼ活性、増加した忠実度、増大した安定性、またはヌクレオシドアナログに対す
る増大した親和性を有するものを含む。例示的変異型ならびに本発明の方法でいうような
他のポリメラーゼは、限定されるものではないがバクテリオファージphi29 DNA
ポリメラーゼ(米国特許第5,198,543号および第5,001,050号)、ex
o(−)Bca DNAポリメラーゼ(Walker and Linn,Clinic
al Chemistry 42:1604−1608(1996))、ファージM2
DNAポリメラーゼ(Matsumono et al.,Gene 84:247(1
989))、ファージphiPRD1 DNAポリメラーゼ(Jung et al.,
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:8287(1987))、ex
o(−)VENT
TM DNAポリメラーゼ(Knog et al.,J Biol.
Chen.268.1965−1975(1993)),T5 DNAポリメラーゼ(C
hatterjee et al.,Gene 97:13−19(1991))、およ
びPRD1 DNAポリメラーゼ(Zhu et al.,Biochim.Bioph
ys.Acta.1219:267−276(1994))を含む。
【0097】
本発明の方法で有用なさらなるポリメラーゼ変異型は、その野生型未修飾バージョンと
比較すると、核酸の3’末端へ非テンプレート指向性ヌクレオチドを加える低下したまた
は排除された能力を有する修飾されたポリメラーゼである。例示的な変異型は、全てのタ
イプのヌクレオチドまたはピリミジンヌクレオチド、プリンヌクレオチド、A、C、T、
UまたはG等の1つ以上のタイプのヌクレオチドを加えることに向けられたポリメラーゼ
の活性に影響するものを含む。修飾は、ポリメラーゼ中のアミノ基の化学的修飾、または
アミノ酸の欠失、付加または置換等の配列突然変異を含むことができる。核酸の3’末端
に非テンプレート指向性ヌクレオチドを加える低下したまたは排除された能力を有する修
飾されたポリメラーゼの例は、例えば、米国特許第6,306,588号、またはYan
g et al.,Nucl.Acids Res.30:4314−4320(200
2)に記載されている。特別な実施形態において、そのようなポリメラーゼ変異型は、本
明細書中に記載されたSBEまたはASPE検出方法で用いることができる。
【0098】
本発明の特別な実施形態において、ストランド置き換えポリメラーゼによって増幅すべ
き二本鎖を持つDNAをニッキング剤と反応させて、ゲノムDNAテンプレートの共有結
合構造において単一のストランド破壊を生じさせることができる。gDNAテンプレート
中への単一のストランド破壊の導入は、例えば、等温増幅において増幅効率または再現性
を増加させるのに用いることができる。ニッキングは、例えば、ランダムプライマー増幅
反応、または任意―起点増幅反応で用いることができる。一本鎖破壊を増幅反応に導入す
る非限定的利点は、それを熱変性の代わりに用いることができることである。熱変性は、
例えば、Lage et al.,Geneme Res.13:294−307(20
03)に記載されているように、ある種のランダム−起点増幅反応に対して有害である。
この点に関して、gDNAテンプレートをニックする位置は、ポリメラーゼ活性のための
プライミング部位を提供することができる。かくして、gDNAをニッキング剤と接触さ
せると、gDNAテンプレート中のプライミング部位の数を増加させることができ、それ
により、増幅の効率を改善することができる。ニックの数またはニックの位置、あるいは
双方は所望のニッキング活性レベルに好都合な特定の条件の使用あるいは配列特異的であ
るニッキング剤の使用によって影響され得る。かくして、ニッキング剤の使用は増幅の再
現性を改善することができる。
【0099】
従って、本発明は、さらに、(a)単離された二本鎖ゲノムDNAを提供し;(b)上
記二本鎖ゲノムDNAをニッキング剤と接触させ、それによりニックされた二本鎖ゲノム
DNAを生じさせ;次いで、(c)上記ニックされた二本鎖ゲノムDNAをストランド置
き換えポリメラーゼおよび複数のプライマーと接触させ、ここに、ゲノムDNAは増幅さ
れる工程を含む、ゲノムDNAを増幅する方法を提供する。上記したように、上記複数の
プライマーは、例えば、ランダムプライマー増幅反応においてランダムプライマーの集団
とすることができる。
【0100】
本発明の方法で用いるニッキング剤は、第一の核酸ストランド中の隣接配列を連結する
共有結合を切断し、隣接配列が同一相補ストランドにハイブリダイズした生成物を生じる
いずれの物理的、化学的または生化学的存在でもあり得る。例示的ニッキング剤の例は、
限定されるものではないが、DNAse I,N.BstNBI,MutH、またはバク
テリオファージf1の遺伝子II蛋白質等の一本鎖−ニッキング酵素;フリーラジカル等
の化学試薬;または超音波を含む。
【0101】
ニッキング剤は、上記剤を溶液中でgDNAを一緒に混合することによって二本鎖gD
NAと接触させることができる。当業者であれば、例えば、Promega Corp.
(Madison,Wisconsin)、またはRoche applied Sci
encies (Indianaposis,IN)等の種々の商業的供給業者から入手
できるニッキング剤の活性に関して当該分野で既知であるものに基づいて、gDNAをニ
ッキングするための適切な条件を知っているか、あるいはそれを決定することができる。
化学的または生物学的ニッキング剤は、DNAとは異なる源からの由来するゲノムDNA
に対して内因性であるものであり得る。別法として、その天然環境においてゲノムDNA
と共に通常は見出されるニッキング剤を、本発明の方法でgDNAと接触させることがで
きる。そのような内因性ニッキング剤を活性化させてそのニッキング活性を増加させるこ
とができるか、あるいはそれをゲノムDNAから単離し、引き続いて例えば、gDNAで
のその天然環境と比較してより高い濃度にて、gDNAと混合することができる。ニッキ
ング剤は、gDNAに対して内因性であろうが外因性であろうが、本発明の方法において
gDNAと接触させるに先立って単離することができる。
【0102】
当業者であれば、上記ゲノム断片の増幅された表示的集団は新たに単離された試料、あ
るいは試料の完全性を保持するための適切な条件下で貯蔵されていたものから供すること
ができる。かくして、本発明の方法で提供された試料は、当該剤がハイブリダイゼーショ
ンおよび検出工程、および本明細書中に記載された種々の実施形態で用いる他の工程に干
渉しない限り断片を安定化剤を含むことができる。上記方法に干渉する安定化剤を試料に
含める場合に断片は、公知の精製および分離方法を用いて剤から分離することができる。
当業者であれば、例えば、Sambrook et al.,前掲(2001)およびA
usubel et al.,前掲(1998)に記載された核酸を貯蔵するための当該
分野で既知の条件に基づき、ゲノム断片の表示的集団を貯蔵するための適切な条件を知っ
ているか、またはそれを容易に決定することができる。特別な実施形態において、gDN
Aは、加熱変性gDNAテンプレートでのランダムまたは変性オリゴヌクレオチド起点ポ
リメラーゼを利用する方法によって増幅することができる。例示的方法はプライマー伸長
プレ増幅(PEP)として既知である。この技術は、ゲノムを通じてのコピーを開始させ
るためにTaq DNAポリメラーゼと組み合せてランダム15−量体を用いる。この技
術を用いて、例えば、Zhang et al.,Proc.Natl.Acat.Sc
i.USA,89:5847−51(1992);Snabes et al.,Pro
c.Natl.Acat.Sci.USA,91:6181−85(1995);または
Barrett et al.,Nucleic Acids Res.,23:348
8−92(1995)に記載された条件を用いて単一細胞と同程度に少ないものからゲノ
ムDNAを増幅することができる。
【0103】
本発明で有用なさらに別のgDNA増幅方法は、例えば、Grothues et a
l.Nucleic Acids Res.21(5):1321−2(1993)に記
載されたように、一定5‘領域、続いて、ランダム3’領域を有する2−ドメインクライ
マーの集団を用いるタグ化PCRである。第一ラウンドの増幅を行って、ランダムに合成
された3‘領域からの個々のハイブリダイゼーションに基づいて、熱変性DNAについて
の開始の多重度を可能とする。3’領域の性質のため、開始の部位はゲノム全体を通じて
ランダムであろう。しかる後、未結合プライマーを除去することができ、一定5’領域に
相補的なプライマーを用いて更なる複製が起こることができる。
【0104】
本発明の方法でgDNAを増幅するのに用いることができる更なるアプローチは、例え
ば、Cheung et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,9
3:14676−79(1996)または米国特許第5,043,272号によって記載
された条件下での変性オリゴヌクレオチド起点ポリメラーゼ鎖反応(DOP−PCR)で
ある。少量のgDNA、例えば、15pgのヒトgDNAを、本発明の方法で好都合には
検出されるレベルまで増幅されることができる。Cheung et al.の方法で用
いる反応条件は、ヒトゲノムの殆ど完全な範囲を有する上記ゲノム断片の増幅された表示
的集団の生成に関して選択することができる。LL−DOP−PCR(Long Pro
ducts from Low DNA quantities(低DNA量からの長い
生成物)−DOP−PCR)として既知のプロトコルにおける、Kittler et
al.によって記載されたもの等の、DOP−PCRのさらに別の修飾されたバージョン
を用いて、本発明に従ってgDNAの増幅することができる(Kittler et a
l.,Anal.Biochem.300:237−44(2002))。
【0105】
プライマー−伸長プレ増幅ポリメラーゼ鎖反応(PEP−PCR)を本発明の方法で用
いてgDNAを増幅することもできる。PEP−PCRを用いるgDNAの増幅のための
有用な条件は、例えば、Casas et al.,Biotechniques 20
:219−25(1996)に記載されたものを含む。
【0106】
本発明の方法におけるgDNAの増幅を、変性されているgDNAテンプレートで行う
こともできる。従って、本発明は、等温条件下でgDNAテンプレートから上記ゲノム断
片の増幅された表示的集団の生成する工程を含むことができる。本発明の方法で用いるこ
とができる例示的等温増幅方法は、限定されるものではないが、Dean et al.
,Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:5261−66(2002)
に記載されているもの等の条件下での多重置き換え増幅(MDA)、または米国特許第6
,214,587号に記載された等温ストランド置き換え核酸増幅を含む。本発明で用い
ることができる他の非PCR−ベースの方法は、例えば、Walker et al.,
Morecular Methods for Virus Detection,Ac
ademic Press,Inc.,1995;米国特許第5,455,166号およ
び第5,130,238号、およびWalker et al.,Nucl.Acids
Res.20:1691−96(1992)に記載されているストランド置き換え増幅
(SDA),またはLage et al.,Geneme Research 13:
294−307(2003)に記載されている過剰分岐ストランド置き換え増幅を含む。
等温増幅方法は、ゲノムDNAのランダムプライマー増幅では、ストランド−置き換えφ
29ポリメラーゼまたはBst DNAポリメラーゼ大断片、5‘−>3’exo
−で用
いることができる。これらのポリメラーゼの使用は、それらの高い反応促進性およびスト
ランド置き換え活性を利用する。高い反応促進性は、ポリメラーゼが長さが10〜20k
bである断片を生じさせるようにする。上記したように、小さな断片はクレノウポリメラ
ーゼ等の低い反応促進性およびストランド−置き換え活性を有するポリメラーゼを用いて
等温条件下で生成することができる。
【0107】
本発明の特別な実施形態において、ゲノムDNA、または増幅されたgDNA断片の集
団は、インビトロにてゲノムRNA(gRNA)断片に転写することができる。本発明の
方法におけるgRNAの生成はDNAアレイベースのプライマー伸長アッセイ等のプライ
マー伸長アッセイにおける型決定可能な遺伝子座の検出のための一部の非限定的利点を供
する。アレイ−ベースのプライマー伸長は、典型的には標的DNAの固定化されたプロー
ブDNAへのハイブリダイゼーション、その後のDNAポリメラーゼでのプローブ−標的
ハイブリッドの修飾または伸長の工程を含む。これらのアッセイは、しばしば、アレイ表
面のそれらの物理的均一性、およびこられのプローブ−プローブハイブリッドのその後の
異所性伸長のため、プローブ−プローブハイブリッドの望ましくない形成から生起するア
ーチファクトによって危うくなり得る。gDNAがgRNAに変換される本発明の実施形
態において、そのようなアーチファクトは回避することができる。なぜならば、それらは
DNA−DNAハイブリッドであって、逆転写酵素はRNAテンプレートを有するハイブ
リッドに対して選択的であるので、DNAポリメラーゼはプローブ−プローブハイブリッ
ドを効果的に修飾または伸長しない逆転写酵素(RT)で置き換えられるからである。さ
らに、標的プローブハイブリッドの検出のためのgRNAおよび逆転写酵素の使用は、直
接的ハイブリダイゼーション‐アレイ‐ベースのプライマー伸長アッセイにおいて異所性
伸長を最小化する。アレイ‐ベースのプライマー伸長反応においてプローブ間およびプロ
ーブ内自己―伸長(異所性伸長)は共に高いバックグラウンドに導きかねない。異所性伸
長によるアーチファクトをRTおよびgRNAの使用は妨げる。なぜならば、RTはRN
A標的にハイブリダイズしたDNAプローブを容易に伸長できないが、それはDNA−D
NA複合体を効果的には伸長しないからである。
【0108】
したがって、本発明はゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する方法を提供する。上記
方法は(a)増幅されたgDNA断片の集団をインビトロ転写し、それにより、ゲノムR
NA(gRNA)断片が得られ;(b)gRNA断片を、型決定可能な遺伝子座に対応す
る配列を有する複数の核酸プローブとハイブリダイズさせ;次いで、(c)プローブにハ
イブリダイズするgRNA断片の型決定可能な遺伝子を検出する工程を含む。
【0109】
gDNAを増幅してgRNAを断片を生じさせる方法の模式的例を
図8に示す。パネル
8Aに示すように、gDNAをDNAポリメラーゼおよびランダムDNAプライマーの集
団で増幅して、インビトロ転写工程に先立ってゲノム断片の表示的集団を生じさせること
ができる。示した例において、gDNAは、9つのヌクレオチドのランダム領域およびユ
ニバーサルプライミング配列(U1)およびT7プロモーター配列(T7)を有する固定
化された領域を含むプライマーの集団を用いてランダム−起点標識(RPL)する。
図8
に示された例では、ランダム配列は9ヌクレオチド長である。しかしながら、種々のラン
ダム配列長さのいずれかを用いて、例えば、3、4、5、6、7,8,10,11,12
,13,14、15以上のヌクレオチド長のランダム配列を含めた本発明の特定の適用に
適合されることができる。さらに、本発明の方法で用いるプライマーのランダム配列は、
所望であれば、固定されたヌクレオチドを有する散在位置または2つ以上のヌクレオチド
の固定された配列を有する領域を含むことができる。
【0110】
パネルBに示すように、T7プロモーター標識ゲノム断片の表示的な集団は、T7 R
NAポリメラーゼおよび相補的なT7プライマー(cT7)を用いてgRNAにインビト
ロ転写することができる。gDNAのgRNA断片への転写は、T3またはSP6等の他
のプロモーター、および後にさらに詳細に記載するそれらの各ポリメラーゼで行うことも
できる。
【0111】
インビトロ転写によって生じたゲノム断片のgRNA−ベースの表示的な集団は、本明
細書中に記載された種々の方法のうちのいずれかで操作し、検出することができる。例え
ば、
図8Bに例示した方法によって生じたgRNA−ベースのゲノム断片はU1標識テイ
ルを有するであろう。これらのテイルを用いて、例えば、固相に付着した相補的捕獲配列
を用い、gDNA、および他の増幅反応成分からgRNA断片を単離することができる。
ゲノムRNA断片は逆転写酵素を用いて検出することができるか、あるいはDNAにコピ
ーすることができる。ゲノム断片のgRNA−ベースの表示的集団は後に記載するもの等
の方法を用いて直接的に検出することができるか、あるいは別法として、検出に先立って
DNAにコピーすることができる。
図8Cの例示的増幅工程に示されるように、gRNA
断片の集団は、第2のユニバーサル配列(U2)を所望により有する遺伝子座−特異的プ
ライマー、および逆転写酵素を用いて複製することができる。この工程に続いて、U1お
よびU2プライマーと共にユニバーサルPCRを用いて増幅することができる。かくして
、gRNA断片を複製して、ゲノム断片の遺伝子座−特異的な増幅された表示的集団を生
じさせることができる。さらに詳細に後に記載するように、遺伝子座−特異的プライマー
でのgRNAの逆転写酵素−指向性複製は複雑性の低下をもたらすことができ、所望によ
り、U2ユニバーサルプライミング部位を加えることができる。U2配列が存在する実施
形態においては、遺伝子座特異的プライマーでの複製によって生じたゲノム断片の集団は
、各々、集団を検出しまたは増幅するのに有用なフランキングU1およびU2配列を有す
る。かくして、十分に伸長された生成物は、U1およびU2プライマー部位を起点とする
ユニバーサルPCR反応で増幅することができる。
【0112】
さらに、
図8Dに示されたように「プライマー−ダイマー」とは検出工程で伸長させる
ことができない。なぜならば、逆転写酵素はDNAテンプレートを非常に効果的には伸長
できないからである。対照的に、DNAポリメラーゼはL1−L2プライマーダイマーを
伸長することができ、これは、潜在的に検出アーチファクトに導く。かくして、ゲノム断
片のgRNA−ベースの表示的集団の使用は、一部の多重検出方法においてアーチファク
トを回避する非限定的利点を供することができる。かくして、gRNAの使用は、多数の
型決定可能な遺伝子座の多重化検出についての増大した有効性の利点を供することができ
る。
【0113】
gDNAをゲノム断片のgRNA−ベースの表示的集団に転写しまたはgRNAを逆転
写する本発明の方法で用いる核酸プライマーは、他のポリメラーゼおよびテンプレートで
用いるプライマーに関して本明細書中に記載した長さ、組成、または他の特性を有するこ
とができる。当業者であれば、本明細書中に記載されたガイダンスおよび教示、および先
に記載され、かつ例えばEun et al.,前掲(1996)に記載された逆転写酵
素またはRNAポリメラーゼに関して既知であるものに基づき、本発明のインビトロ転写
または逆転写酵素工程で用いられる核酸プライマーの適切な特性を知っているか、あるい
はそれを決定することができる。
【0114】
さらに、
図8の実施形態に関して上記で例示したプライマー集団は単一のU1配列およ
び単一のU2配列を有するが、本発明で有用なプライマーの集団は1を超える一定の配列
領域を含むことができるのは理解されるであろう。かくして、各々が異なる一定の配列領
域を有する複数のランダムプライマーサブグループは、本発明の方法においてハイブリダ
イゼーションまたは増幅で用いたより大きな集団に存在させることができる。DNAテン
プレートから相補的RNAを合成することができるいずれのRNAポリメラーゼも本発明
の方法で用いることができる。本発明で有用な例示的RNAポリメラーゼはT7 RNA
ポリメラーゼである。T7 RNAポリメラーゼでのインビトロ転写についての本発明の
方法で用いることができる条件は、限定されるものではないが、50マイクロリットル中
の40mMトリス−HCl pH8.0(37℃)、6mM MgCl
2、5mMのDT
T、1mMのスペリミジン、50μg/mlのBSA、40μg/mlのファージプロモ
ーターを含むgDNA断片、0.5〜8.5mMのNTP、および200〜300ユニッ
トのT7 RNAポリメラーゼを含む。本発明の方法で用いることができるさらに別のR
NAポリメラーゼはSP6 RNAポリメラーゼである。用いられる例示的条件は、限定
されるものではないが、50マイクロリットル中の40mMトリス−HCl pH8.0
(25℃)、6mM MgCl
2、10mMのDTT、2mMのスペルミジン、50μg
/mlのBSA、50μg/mlのSP6プロモーターを含むgDNA断片、0.5mM
のNTP、および10ユニットのSP6 RNAポリメラーゼを含む。
【0115】
また、T3 RNAポリメラーゼは、例えば、50マイクロリットル中の50mMトリ
ス−HCl pH7.8(37℃)、25mMのNaCl、8mM MgCl
2、10m
MのDTT、2mMのスペルミジン、50μg/mlのBSA、50μg/mlのT3プ
ロモーターを含むgDNA断片、0.5mMのNTP、およびT3 RNAポリメラーゼ
を含めた条件下での、インビトロ転写についての本発明の方法で用いることができる。
【0116】
RNAテンプレートからの相補的DNAの合成を触媒する逆転写酵素(RT)は本発明
の方法で用いることができる。本発明の方法で用いることができる例示的RTは、限定さ
れるものではないが、鳥類筋芽細胞腫ウイルス(AMV)RT、モロニーネズミ白血病ウ
イルス(MoLV)RT、HIV−1 RTまたはラウス肉腫ウイルス(RSV)RT等
のレトロウイルスからのものを含む。一般には、本発明の方法で用いる逆転写反応はRN
Aテンプレート、1つ以上のdNTP、および3’OH基を持つ核酸プライマーを含む。
所望であれば、RNAse阻害剤を加えて、転写された生成物の分解を阻害することがで
きる。特定の反応条件を用いて、特定のRTまたは本発明の特定の適応に適合させること
ができる。
【0117】
AMV RTでの修飾または伸長の有用な条件は、例えば、50マイクロリットル中の
50mMトリス−HCl(42℃におけるpH8.3)、150mMのNaCl(または
100mMのKCl)、6〜10mMのMgCl
2、1mMのDTT、50μg/mlの
BSA、50ユニットのRNasin、0.5mMのスペルミジンHCl、4mMのNA
−PBi、0.2mMの各dNTP、1〜5μgのgRNA、0.5〜2.5μgのプラ
イマーおよび10ユニットのAMV RTを含む。しかしながら、そうでなければ同様な
条件で25℃においてpH8.1にて反応を行うことも可能である。AMV RT活性に
関して、特に、DNA−依存性DNA合成を阻害するのに用いることができる他の条件は
、例えば、Lokhava et al.,FEBS Lett.274:156−15
8(1990)またはLokhava et al.,Mol.Biol.(USSR)
24:396−407(1990)に記載されている。
【0118】
MoLV RTを用いる実施形態において、修飾または伸長のための例示的条件は、限
定されるものではないが、50マイクロリットル中の50mMトリス−HCl(25℃に
おけるpH8.1)、75mMのKCl、3mMのMgCl
2、10mMのDTT、10
0μg/mlのBSA、20ユニットのRNasin、50μg/mlのアクチノマイシ
ンD、0.5mMの各dNTP、5〜10μgのgRNA、0.5〜4μgのプライマー
および200ユニットのMoLV RTを含む。
【0119】
本発明の方法で用いるRTは、例えば、B型肝炎ウイルスまたはカウリモウイルス等の
DNAウイルス、Myxococcus xanthusまたはE.coliの一部の株
のような細菌、Tyレトロトランスポゾンを担うもののような酵母、真菌、ショウジョウ
バエのcopia―様エレメントを担うもののような無脊椎動物、または植物を含めた非
レトロウイルス源からのものでもあり得る。さらに、所望であれば、逆転写はE.col
i DNA Pol i 等のRT活性を有するDNAポリメラーゼを用いて本発明の方
法で行うことができる。しかしながら、上記した理由で、例えば、DNA−依存性DNA
合成が可能でないRTを用い、またはDNA−依存性DNA合成を阻害するpH.イオン
強度またはMg
2+濃度等の条件を用い、DNAテンプレートに向けての活性が阻害され
、または実質的に存在しない条件下で逆転写を行うのが望ましいであろう。さらに、所望
であれば、アクチノマイシンDまたはピロフォスフェート(Na−PPi)のようなDN
A−依存性DNA合成の阻害剤を加えることができる。
【0120】
RT活性が可能な例示的DNAポリメラーゼは、Mn
2+の存在下で用いる場合にはT
th polである。Tth pol RTでのgRNAの逆転写についての例示的条件
は、限定されるものではないが、20分間の70℃における50mMトリス−HCl(p
H8.8)、16mMのNH
4SO
4、1mMのMnCl
2、200μMのdNTP,0
.25u/μlのTth pol、100fmol/μlのRNAテンプレートを含む。
【0121】
本発明の方法におけるgDNAの増幅は、所望の複雑性を有する上記ゲノム断片の増幅
された表示的集団が生じるように行うことができる。例えば、所望の複雑性を有する上記
ゲノム断片の増幅された表示的集団は、増幅反応の間におこるプライミングまたは断片化
事象の頻度または多様性を特定することによって生じさせることができる。従って、本発
明を用いて、断片の集団の所望の使用に応じて、高いまたは低い複雑性を有する上記ゲノ
ム断片の増幅された表示的集団を生じさせることができる。上記した、および後に実施例
に記載する増幅条件のいくつかは高い複雑性表示を提供する。本発明の方法は複雑性を低
下させる工程を含むことができ、あるいは所望であれば、低い複雑性表示を生じる増幅方
法で行うことができる。
【0122】
低い複雑性の表示を生じさせるための例示的方法は、例えば、Lucito et a
l.,Genome Res.10:1726−36(2000)に記載された、制限エ
ンドヌクレアーゼでのDNAの初期ランダム消化、アダプターオリゴヌクレオチドでの消
化された断片の連結、および熱変性アダプター誘導体化断片のPCR増幅を必要とするリ
ン化アダプター−PCRである。上記方法におけるgDNA消化の条件の変更を用いて、
生じる上記ゲノム断片の増幅された表示的集団の複雑性に影響させることができる。特に
、低い複雑性の表示は、例えば、6塩基またはより長い認識モチーフを有する頻繁な−切
断のエンドヌクレアーゼを用いて得ることができる。従って、頻繁なカッターを用いて、
高い複雑性の表示を得ることができる。例えば、4つのヌクレオチド部位GATCを認識
し、かくして、gDNAを比較的頻繁に制限するDpn IIは、ゲノムの約70%を含
有するヒトゲノム断片の表示的な集団を表示させることができる。対照的に、比較的頻繁
ではないカッターを用いて、低い複雑性の表示を生じさせることができる。例えば、6つ
のヌクレオチド部位AGATCTを認識し、かくして、gDNAを比較的頻繁ではなく制
限するBgl iiを用いて、ゲノムのほぼ2.5%を含むに過ぎないヒトゲノム断片の
表示的な集団を表示させることができる。さらに、gDNAは、増幅で用いるポリメラー
ゼの反応促進性よりも小さな平均長さまで断片化し、それにより、生じる上記ゲノム断片
の増幅された表示的集団の複雑性を低下させることができる。
【0123】
低い複雑性の表示を生じさせるための更なる方法は、係留したリン化アダプターPCR
についての2つ以上のアダプターの使用である。特別は実施形態において、複雑性の低下
は、少なくとも2つの制限酵素を用いてgDNA試料を断片化し;アダプターを得られた
断片に連結し;次いで、一方の末端については1つの制限酵素によって、他方の末端につ
いては異なる制限酵素によって切断された断片を選択的に増幅することによって達成する
ことができる。もし1つの酵素が6−カッターであって、他方が4−カッターであれば、
上記表示は、4−カッター消化(約256塩基毎)の頻度によって決定された平均サイズ
を持つ6−カッター部位の当たりに係留されるであろう。得られた試料の複雑性は、特定
の頻度で切断される酵素を選択することによって調節することができる。また、選択的増
幅は、1つのアダプターが5’突出を有するように、第2のアダプターが3’突出を有す
るように設計することによって達成することができ、ここに、上記突出は断片を複製する
のに用いられる増幅プライマーについてのアニーリング部位を有する。複雑性低下のため
の複数アダプターの使用のための例示的条件はUS 2003/0096235 A1に
記載されている。
【0124】
また、複雑性低下は遺伝子座−特異的に行うこともできる。従って、本発明は、さらに
、ゲノム断片の複雑性が低下した遺伝子座−特異的な増幅された表示的集団を生じさせる
方法を提供する。上記方法は、(a)天然のゲノムを複数のランダムプライマーで複製し
、それにより上記ゲノム断片の増幅された表示的集団を生じさせ;(b)上記ゲノム断片
の増幅された表示的集団のサブグループを複数の異なる遺伝子座−特異的プライマーで複
製し、それにより、ゲノム断片の遺伝子座−特異的な増幅された集団を生じさせ;次いで
、(c)上記サブグループを単離し、それにより、ゲノム断片の複雑性が低下した遺伝子
座−特異的な増幅された表示的集団を生じさせる工程を含む。
【0125】
複雑性低下のために用いることができる例示的方法は、
図8に示し、かつ上記したgR
NA断片を生じさせる増幅である。ゲノム断片の複雑性が低下した遺伝子座−特異的な増
幅された表示的集団を生じさせる方法のダイアグラム例は
図9に示す。
図9Aに示すよう
に、gDNA試料は、各々が、gDNAにアニーリングするためのランダム3‘配列およ
び5’ユニバーサルプライミングテール(U1配列)を有する核酸プライマーの集団を使
用するランダム−起点標識(RPL)技術によって増幅することができる。かくして、ラ
ンダム−起点標識反応は、ユニバーサルプライミング部位が近接する上記ゲノム断片の増
幅された表示的集団を生じさせることができる。
図9に示す例において、ランダム配列は
9つのヌクレオチドを有する。しかしながら、種々のランダム配列の長さまたは組成のい
ずれかを用いて、例えば、本明細書中で先に記載したものを含めた本発明の特定の適用に
適合させることができる。一般に、ランダムプライマーの集団のランダムアニーリング部
分の長さが低下するにつれ、ゲノム上の潜在的アニーリング部位の数は増加し、それによ
り、増幅された表示の複雑性を増加させる。
【0126】
図9Bに示すように、上記ゲノム断片の増幅された表示的集団は、例えば、固相ビーズ
上への固定化によってゲノムDNAから単離することができる。
図9Aの例では、増幅さ
れた断片の固定化は、N
9−U1プライマーに結合したビオチンによって容易とすること
ができる。ビオチニル化増幅生成物は、アビジンまたはストレプトアビジンで誘導体化さ
れた固相によって捕獲し、所望であれば、引き続いて、gDNAテンプレートから単離す
ることができる。ランダムプライマー増幅のためにプライマーで用いることができる他の
例示的捕獲部位およびそれらの固定化された受容体は上記した。かくして、gDNAを増
幅する方法は、さらに、上記ゲノム断片の増幅された表示的集団を捕獲または単離する工
程を含むことができる。上記ゲノム断片の増幅された表示的集団を捕獲または単離するの
に用いることができる例示的基質は、例えば、核酸ハイブリッドからの単一の標準核酸の
分離に関して後に記載するものを含む。
【0127】
当業者であれば、増幅されたゲノム断片は、上記で例示した固相基質を用いて本発明の
方法において他の反応成分から分離することができる。同様に、増幅されたゲノム断片は
それらのサイズ等の断片の他の特性に基づいて分離することができる。かくして、濾過、
またはサイズ排除クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー方法を用いて、アニールさ
れないプローブ等の他の反応成分からゲノム断片を分離することができる。
【0128】
本発明の方法は、上記ゲノム断片の増幅された表示的集団のサブグループを、各々が、
3‘遺伝子座特異的配列領域および5’一定配列領域を有する複数の異なる遺伝子座−特
異的プライマーで複製する工程を含むことができる。
図9Bの例に続き、固定化されたラ
ンダムプライマー増幅生成物は、L1、L2またはL3および5‘第二ユニバーサルテイ
ル(U2)として確認される異なる遺伝子座−特異的3’配列を有する異なるプライマー
の集団とハイブリダイズさせることができる。この時点において、所望であれば、洗浄工
程を含ませて、誤ってアニールされた過剰のプライマーを除去することができる。洗浄の
ための条件は、特異的ハイブリッドを維持しつつ非特異的に結合した核酸を除去するいず
れのものも含むことができる。次いで、プライマー伸長を用いて、遺伝子座−特異的プラ
イマーに相補的な配列を有する上記ゲノム断片の増幅された表示的集団のサブグループを
複製することができる。このサブグループは、元のgDNA、およびN9−U1プライマ
ーで生じたゲノム断片が上記増幅された集団と比較してより低い複雑性を有するであろう
。さらに、複雑性低下は、第二の増幅工程において遺伝子座−特異的プライマーでの選択
により遺伝子特異的であろう。異なる遺伝子座−特異的プライマーの数および遺伝子座−
特異的配列の長さを変化させて、本発明の方法で得られた表示の複雑性を増加または減少
させることができる。
【0129】
図9Bに示された例における捕獲された断片の全長に沿ったU2含有プライマーの伸長
は、第一の一定領域(U1)および第二の一定領域(U2)で標識されたゲノム断片の遺
伝子座−特異的な増幅された表示的集団を生じるであろう。かくして、十分に伸長された
生成物は、U1およびU2プライマー部位を起点とするユニバーサルPCR反応で増幅す
ることができる。従って、本発明の方法は、フランキング第一および第二一定領域に対し
て、相補的プライマーでゲノム断片の複雑性が低下した遺伝子座特異的な増幅された表示
的集団を複製する工程を含むことができる。さらに、断片の検出は、例えば、修飾された
OLAプローブの検出に関して後に記載される技術を用いてU1およびU2双方の配列の
存在に基づいて行うことができる。
【0130】
また、複雑性低下は、ゲノム断片の集団から特定の配列を除去することによって行うこ
ともできる。1つの実施形態において、ゲノム断片の試料における高コピー数のまたは豊
富な配列を、検出または捕獲プローブにハイブリダイズすることを阻害することができる
。例えば、Cot分析を用いることができ、そこでは、単一コピーの種をプローブへのハ
イブリダイゼーションが可能な一本鎖状態に残しつつ、豊富な種を動的に再度アニールす
るよう駆動する。かくして、特別な実施形態において、プローブのアレイへの試料の曝露
に先立ち、ゲノム断片の試料を、特定の反復された配列、または試料から滴下測定が望ま
れる他の配列に対して相補的なcotオリゴヌクレオチドで予め処理することができる。
さらに別の例において、ゲノム断片の試料は、過剰表現された配列の実質的な一部分に対
して十分である短い時間の間で室温まで冷却して、再度アニールさせることができるが、
低コピー数で存在する配列の実質的再アニーリングには不十分である。得られた試料は、
プローブのアレイとのその後の相互作用のために利用可能な低下した量の反復された配列
を有するであろう。
【0131】
例えば、Cot分析またはゲノム断片再アニーリングにおいて二本鎖種を形成する望ま
しくない断片は、一本鎖および二本鎖核酸の異なる特性に基づいて一本鎖種から分離する
ことができる。特別な実施形態において、二本鎖DNAを優先的に切断する酵素を用いる
ことができる。例えば、DNAse Iは既知の条件下で一本鎖DNAよりも100〜5
00倍速く二本鎖DNAを切断することができる。従って、望ましくない断片は、Cot
オリゴヌクレオチドでの処理によって、または断片再アニーリング、および望ましくない
断片が優先的に二本鎖種を形成し、切断される条件下でのDNAse Iでの処理によっ
て除去することができる。さらに、一本鎖種と比較して優先的に二本鎖種を修飾し、それ
を切断しまたはそれに結合する他の酵素を用いて、配列特異的制限エンドヌクレアーゼま
たはKamchatka二重鎖−特異的エンドヌクレアーゼ等の本発明の方法における種
を分離することができる。
【0132】
また、任意プライマー(arbitrary−primer)PCRを用いて、本発明
の方法においてゲノムDNAを増幅することもできる。任意−プライマーPCRは、プラ
イマーが任意にgDNA中の種々の位置にアニールするように、非ストリンジェントな条
件下でgDNA試料をプライマーで複製することによって行うことができる。その後のP
CR工程をより高いストリンジェンシーにおいて行って、先の工程における任意のプライ
ミングにより生じた断片を増幅することができる。任意−プライマーの長さ、配列または
双方は、gDNAに沿った特定の間隔でのプライミングの確率に従って選択することがで
きる。この点に関して、他の増幅条件の変化はないと仮定し、プライマーの長さが増加す
るにつれ、任意に起点となる位置の間の平均間隔は増大する。同様に、反復された配列に
相補的な、またはそれに同様な配列を有するプライマーがよりしばしば起点となり、増幅
すべきゲノム中の反復した配列と同様な配列を欠くプライマーよりも増幅された断片間の
より短い間隔を生じる。任意−プライマー増幅は、例えば、Bassam et al.
、 Australes Biotechnol.4:232−6(1994)に記載さ
れたものと同様な条件下で行うことができる。本発明に従い、増幅は、任意のプライマー
、低ストリンジェンシーアニーリング条件、およびストランド−置き換えポリメラーゼを
用いて等温条件下で行うことができる。
【0133】
本発明においてゲノムを増幅するのに用いることができるさらに別の方法はAlu間P
CRである。この方法においては、プライマーは、ゲノムを通じて反復されるAlu配列
にアニールするように設計される。これらのプライマーでのPCR増幅は、Alu反復に
よって近接して挟まれる断片を生じる。当業者であれば、同様の方法を、転写調節領域、
スプライス部位等のような注目するゲノム中の他の反復した配列にアニールするプライマ
ーで行うことができる。さらに、反復した配列に対するプライマーをここに記載したもの
等の等温増幅方法で用いることができる。
【0134】
プライマーの特定の組での増幅に由来する表示の複雑性および程度は、異なるプライマ
ーハイブリダイゼーション条件を用いて調整することができる。限定されるものではない
が、Sambrook et al.,前掲(2001)またはAusubel et
al.,前掲(1998)に記載されたものを含めた高、中程度または低ストリンジェン
シー条件等の種々のハイブリダイザーション条件を本発明で用いることができる。ストリ
ンジェントな条件は特異的配列−依存性ハイブリダイゼーションに好都合である。一般に
、より長い配列および上昇した温度は特異的な配列−依存性ハイブリダイゼーションに好
都合である。核酸のハイブリダイゼーションに対する有用なガイドは、Tijssen,
Techniques in Biochemistry and Molecular
Biology ―― Hybridization with Nucleic A
cid Probes,“Overview of Principles of hy
bridization and the strategy of nucleic
acid assays”(1993)に見出される。
【0135】
本発明で用いる増幅および検出工程は、一般に、相補的配列存在下でハイブリダイゼー
ション複合体の形成を選択的に可能とするストリンジェンシー条件下で行われる。ストリ
ンジェンシーは、限定されるものではないが、温度、ホルムアミド濃度、塩濃度、カオト
ロピック塩濃度、pH、有機溶媒の濃度等を含めた熱力学的変数である工程パラメーター
を変化させることによって制御することができる。また、これらのパラメーターを用いて
、一般には、米国特許第5,681,697号に概説されているように、非特異的結合を
制御することもできる。かくして、所望であれば、非特異的結合を低下させる比較的高い
ストリンジェンシー条件下で、ある工程を行うことができる。
【0136】
一般に、高ストリンジェンシー条件は、特定のイオン強度およびpHにおけるアニーリ
ング配列のための熱融解温度(Tm)よりも低い約5〜10℃である温度を含む。高スト
リンジェンシー条件は、第一の核酸が、その長さに沿って少なくとも約90%の相補的塩
基対を有し、例えば、少なくとも約95%、98%、99%または100%相補的である
相補的核酸に結合させるものを含む。ストリンジェントな条件は、さらに、例えば、塩濃
度が約1.0M未満のナトリウム塩(または他の塩)、典型的にはpH7.0〜8.3に
おいて約0.01〜1.0M濃度であって、温度は短いアニーリング配列(例えば、10
〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃であり、より長いアニーリング配列
(例えば、50ヌクレオチドを超える)では少なくとも約60℃であるものを含む。また
、高ストリンジェンシー条件は、例えば、42℃における50%ホルムアミド、5×デン
ハルトの溶液、5×SSPE、0.2%SDS中でのハイブリダイゼーション、続く65
℃における0.1×SSPE、および0.1%SDSでの洗浄と同等な条件を含むことが
できる。核酸ハイブリッドは、さらに、1つ以上の架橋剤での共有結合修飾によって安定
化させることができる。
【0137】
中程度にストリンジェントな条件は、第一の核酸が、上記第一の核酸に対してその長さ
に沿って少なくとも約60%相補的塩基対を有する相補的核酸に結合させるものを含む。
用いる中程度のストリンジェンシーの特定の条件に応じて、ハイブリッドは、ハイブリダ
イズした領域の長さに沿って塩基対の少なくとも約75%、85%または90%について
の相補性を有する配列の間で形成できる。中程度にストリンジェントな条件は、例えば、
42℃における50%ホルムアミド、5×デンハルトの溶液、5×SSPE、0.2%S
DSにおけるハイブリダイゼーション、続く65℃における0.2×SSPE、0.2%
SDSにおける洗浄と同等な条件を含む
【0138】
低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、例えば、42℃における10%ホル
ムアミド、5×デンハルトの溶液、6×SSPE、0.2%SDS中のハイブリダイゼー
ション、続く、50℃における1×SSPE、0.2%SDSにおける洗浄と同等な条件
を含む。デンハルトの溶液およびSSPEは、他の適切なハイブリダイゼーション溶液の
ように当業者において十分に既知のものである(例えば、Sambrook et al
.,前掲(2001)またはAusubel et al.,前掲(1998)参照。
【0139】
ハイブリッドが、例えば、ポリメラーゼによって修飾される本発明の実施形態において
、条件は、さらに、特定の修飾反応に適合するように選択されることができる。例えば、
修飾が特性または増幅を含む場合、特定のポリメラーゼに関して上記したもの等の条件を
用いることができる。ポリメラーゼ等の修飾剤を、例えば、修飾反応の核酸成分の付加に
先立って、その間、またはその後を含めた、増幅または検出工程の間のいずれかの時点で
加えることができるのは理解されるであろう。
【0140】
本発明の方法を用いて、単一反応工程において、または単一反応容器中で天然ゲノムを
増幅させ、高い複雑性を有する上記ゲノム断片の増幅された表示的集団を生じさせること
ができる。単一の工程または反応容器を用いる能力が、複数の工程または反応容器を必要
とする方法と比べて、増大する増幅効率の非限定的利点を提供する。さらに、特別な実施
形態において、ゲノム断片の高い複雑性の増幅された表示的集団は、複数の増幅反応から
の生成物のプーリングを必要としない条件下で得ることができる。かくして、上記ゲノム
断片の増幅された表示的集団における断片は、本発明の種々の実施形態において順次より
はむしろ平行して得ることができる。しかしながら、異なる反応が個別の容器中で順次に
行われる、または複数反応の生成物がプールされて、例えば、特定の適用に適合される実
施形態において上記方法を用いることが可能である。
【0141】
天然ゲノムまたはその断片等の核酸を増幅するために本発明で用いることができる例示
的方法のさらに別の記載は米国特許第6,355,431号に見出すことができ、これは
、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅、ランダム起点、PCR、任意起点PCR、ストラ
ンド置き換え増幅、核酸配列ベースの増幅および転写介在増幅を含む。
【0142】
ゲノムまたはゲノム断片の集団の複製に続き、所望の修飾を含む核酸は未反応プライマ
ーまたはテンプレート等の未修飾核酸から分離することができる。例えば、未伸長または
未反応プライマーを除去するのは望ましくあり得る。なぜならば、未伸長プライマーは、
本発明で用いられる種々の検出方法において伸長されたまたは標識されたプライマーと競
合でき、それにより、シグナルを減少させるからである。従って、多数の技術を用いて、
未伸長プライマーの除去を容易とすることができる。以下の議論は明瞭性のために増幅反
応に指向されるが、これらの技術を用いて、修飾されたおよび未修飾核酸を検出工程で分
離することもできるのが理解されるであろう。
【0143】
核酸の分離は、例えば、本明細書中で先に記載された一次または二次標識の1つ以上を
含めた標識の選択的一体化によって介在することができる。二次標識が取り込まれた核酸
は、例えば、標識に対して特異性を有する受容体への結合に基づいて標識を欠くものから
分離することができる。受容体は、例えば、
図9に例示した実施形態に関して上記した固
相基質に付着させることができる。一次標識を用いて、蛍光活性化セルソーティング等の
ソーティング技術において核酸を分離することができる。同様に、一体化された二次標識
を有する核酸は、核酸−受容体複合体に対して一次標識を供する受容体の検出に基づいて
ソーティング方法において標識を欠くものから分離することができる。分離は、G−50
樹脂等の標準サイズ排除樹脂、AmiconまたはCentriconカラムでの限外濾
過、またはエタノール−様沈殿方法を用いて達成することもできる。
【0144】
核酸は、標識されたプライマー、標識されたヌクレオチド前駆体または双方を介して、
増幅または修飾反応の間に導入された部分によって本発明の方法において好都合には標識
することができる。特別な実施形態において、核酸を複製するのに用いる1つ以上のNT
Pは、標識を欠く未修飾プラマーから修飾されたプライマーを分離するのに用いることが
できる二次的検出可能な標識を含むことができる。二次的標識は、SBE、OLAまたは
侵襲的切断等の標識されたおよび未標識のプローブの分離のための工程を含む検出技術で
特別な用途を見出す。特に有用な標識は、限定されるものではないが、結合パートナー対
;化学的修飾可能な部分;またはヌクレアーゼ阻害剤のうちの1つを含む。
【0145】
その例として、二次的標識は、固体支持体に付着した免疫グロブリン、またはその機能
的断片に対する親和性を有するハプテンまたは抗原であり得る。免疫グロブリンに結合し
た標識された核酸は、固体支持体および可溶性画分の物理的分離によって未標識核酸から
分離することができる。加えて、例えば、ストレプトアビジン、ビオチン模倣体または双
方を利用するものを含めたアビジン/ビオチンシステムを用いて、未標識であるものから
修飾された核酸を分離することができる。典型的には、2つの結合パートナーのうちのよ
り小さいものを核酸に付着させる。しかしながら、より大きなパートナーの付着を用いる
こともできる。例えば、アビジンの核酸への付加はそのサイズを増加させ、その物理的特
性を変化させ、これは分離のために利用することができる。従って、ストレプトアビジン
標識核酸は、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティグロマトグラフィ、濾過また
は分別沈殿等の技術を用いて混合物中の未標識核酸から分離することができる。
【0146】
固体支持体への結合パートナーの付着を含めた実施形態において、固体支持体は、例え
ば、検出アッセイに関して本明細書中に記載したものから選択することができる。特に有
用な基質は、例えば、磁性ビーズを含み、これは容易に核酸試料に導入し、容易に磁石で
除去することができる。他の公知のアフィニティークロマトグラフィー基質を同様に用い
ることができる。既知の方法を用いて、結合パートナーを固体支持体に結合させることが
できる。
【0147】
典型的には、ゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する方法は、例えば、上記した方法
によって得られた上記ゲノム断片の増幅された表示的集団で行われる。別法として、型決
定可能な遺伝子座は、増幅方法以外の方法によってゲノムから誘導されたゲノム断片の表
示的集団に関して決定することができる。1つの実施形態において、ゲノム断片の表示的
集団は、天然ゲノムを断片化することによって得ることができる。ゲノムを断片化するの
に用いることができる例示的方法は後に記載する。当業者であれば、断片化方法を本明細
書中に記載した増幅方法に対する代替法として、あるいは所望であれば増幅技術と組み合
わせて用いることができる。
【0148】
単離された天然ゲノムは、DNA中に二本鎖破壊を作り出すいずれかの物理的、化学的
または生化学的実態によって断片化することができる。特別な実施形態において、天然ゲ
ノムはエンドヌクレアーゼで消化することができる。本発明の方法で有用なエンドヌクレ
アーゼは、特異的認識配列において切断するもの、またはDNaseI等のDNAを非特
異的に切断するものを含む。エンドヌクレアーゼは当該分野で入手可能であるが、例えば
、とりわけ、New England BioLab(Beverley,Mass.)
またはLife Technologies Inc.(Rockville,Md.)
等の商業的源から得ることができる。特異的エンドヌクレアーゼを用いて、酵素を曝露し
てランダム配列をそれによって切断する頻度に従って特定の平均サイズのポリヌクレオチ
ド断片を作り出すことができる。例えば、6つのヌクレオチド認識配列を有するエンドヌ
クレアーゼは、平均して、4096塩基対長である断片を生じると予測される。平均断片
長は、ランダム配列としてDNAを処理し、次いで、関係4
n=s(式中、nはエンドヌ
クレアーゼによって認識された塩基の数であって、sは生じた断片の平均サイズである)
に従ってランダム配列中の認識部位の頻度を見積もることによって見積もることができる
。また、後に記載するようにインキュベーション条件を修飾して、エンドヌクレアーゼの
酵素効率を変化させ、それにより、生じた断片の平均サイズを変化することができる。6
塩基対認識部位を有するエンドヌクレアーゼの例を用い、酵素効率の減少は、平均して4
096よりも長い塩基対長である断片を生じさせることができる。
【0149】
また、非特異的エンドヌクレアーゼを用いて、所望の平均サイズのゲノム断片を生じさ
せることができるエンドヌクレアーゼ反応は二分子であるので、断片化の速度は、エンド
ヌクレアーゼDNAまたは双方の濃度のような条件を変化させることによって操作するこ
とができる。具体的には、エンドヌクレアーゼ、DNAまたは双方いずれかの濃度の低下
を用いて、反応速度を低下させる、これは、増加した平均断片サイズをもたらす。エンド
ヌクレアーゼ、DNA認識配列または双方いずれかの濃度を増加させると、特定の酵素に
対する最大速度(Vmax)に近づく増大した効率を可能とし、これは、低下した平均断
片サイズに導かれる。また、条件の同様な変化を部位特異的エンドヌクレアーゼに適用す
ることもできる。なぜならば、DNAとのそれらの反応もまた二分子だからである。例え
ば、温度、塩濃度および反応の時間を含めた他の反応条件もまた切断の速度に影響し得る
。エンドヌクレアーゼ反応速度を変化させて測定された平均サイズのポリヌクレオチド断
片を生じさせるための方法は、例えば、Sambrook et al.,前掲(200
1)またはAusbel et al.,前掲(1998)に記載されている。
【0150】
ゲノム断片を生じさせるのに用いることができる他の方法は、例えば、フリーラジカル
メカニズム、UV光、機械的破壊等によって結合を切断するもの等のDNAのホスホジエ
ステル骨格を破壊する化学的剤での処理を含む。これらのおよび上記した方法を用いて、
天然ゲノムからゲノム断片を生じさせ、さらにゲノム断片を切断し、または本発明で用い
る他の核酸を切断することができる。ゲノム断片を生じさせるのに用いることができるさ
らなる例示的機械的破壊方法は、超音波および剪断を含む。
【0151】
ランダムプライマー全ゲノム増幅は、典型的には、無傷のゲノムDNAを断片化された
テンプレートと比較してテンプレートとして用いる場合、典型的には、より高い増幅収率
および増大した表示を生じさせる。断片化されたゲノムDNAの増幅が望まれる本発明の
適用において、断片を一緒に連結して、連結したDNAを生じさせることも可能である。
次いで、連結されたDNAを、本明細書中にて先に記載した全ゲノム増幅方法で用いるこ
とができる。ゲノム断片連結反応で用いることができる例示的条件は、例えば、WO 0
3/033724 A1に記載されている。
【0152】
標的核酸試料の断片化が望まれない実施形態においては、断片は本発明の方法で用いる
ために修飾することができる。例えば、ゲノムDNAを修飾して、増幅を容易とすること
ができる。増幅を容易とすることができる例示的修飾は、例えば、ランダムプライマー増
幅によって効果的に増幅することができる伸長されたテンプレートを形成するためのゲノ
ム断片の連結である。連結は、例えば、McCoy et al.,Biochem.1
9:635−642(1980)に記載されたもの等の当該分野で既知の条件下で、ゲノ
ム断片の集団をT4 RNAリガーゼで処理することによって行うことができる。また、
連結はAPエンドヌクレアーゼポリメラーゼおよびリガーゼの混合物を用いて行うことも
できる。損傷したDNAは、Sigma−Aldrichから入手可能なRestora
se
TMポリメラーゼ混合物(R1028)等の適切な酵素を用いて修復することができ
る。用いることができるさらに別の修飾は、ユニバーサルテイルのゲノム断片への付加で
ある。ユニバーサルテイルと一体化させる例示的方法は、限定されるものではないが、d
GTP等のモノヌクレオチドでの3’末端にテイルするターミナルデオキシヌクレオチド
トランスフェラーゼでの断片の処理を含む。従って、ポリGテイルをユニバーサルテイル
としてゲノム断片に付加することができる。ポリC.T,U,Aまたは他のヌクレオチド
テイルと同様に添加することができる。また、ユニバーサルテイルは、ユニバーサルテイ
ル配列をゲノム断片の一方または双方の端部に付加される条件下で、ゲノム断片をT4
RNAリガーゼおよびランダム4−量体二重鎖アダプターおよびユニバーサルテイル配列
を有するオリゴヌクレオチドで処理することによって付加することもできる。
【0153】
実施例Xは、メチル化されたDNAの亜硫酸水素塩処理によって生じた断片を増幅する
方法を記載する。当業者であれば、実施例Xに記載された増幅方法は、種々のメカニズム
のうちのいずれかによって生じた種々の組成のうちのいずれかの核酸断片試料で用いるこ
とができるのを理解するであろう。本発明で有用なDNA断片のさらに別の例は、限定さ
れるものではないが、例えば、貯蔵されたホルマリン−固定された、ホルムアルデヒド−
固定された、パラフィンに包埋された、ポリマーに包埋された、エタノール包埋された、
またはその何らかの組合せ処理されたもの等の保管された組織または細胞からのcDNA
または分解されたゲノムのDNAを含む。また、断片化されたDNAは法医学試料、考古
学試料、古生物学試料、ミイラ化した試料、石化した試料、および細胞または組織の死滅
およびそのゲノムDNAの分析の間の長い時間のため崩壊が生じた他の試料から得られた
ものであり得る。ゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する方法は、ゲノム断片を、プロ
ーブ−断片ハイブリッドが形成される条件下で型決定可能な遺伝子座に対応する配列を有
する複数の核酸プローブと接触させる工程を含むことができる。本発明の方法で用いるプ
ローブは、それが配列特異性を持って標的核酸に結合する能力を有する限り、種々の組成
またはサイズのいずれをも有し得る。典型的には、上記方法で用いるプローブは、例えば
、天然構造またはそのアナログを有するものを含めた核酸である。本発明の方法で用いる
ことができる例示的核酸プローブは、限定されるものではないが、本発明で有用なプライ
マーおよび他の核酸に関して上記したものを含む。さらに、例えば、ペプチド、蛋白質ま
たは他のポリマー化合物を含めた他の配列特異的プローブを本発明の方法で用いることも
できる。
【0154】
本発明のプローブは、型決定可能な遺伝子座、またはゲノム断片の表示的集団中の型決
定可能な遺伝子座の存在を示す他の検出位置に相補的であり得る。かくして、ゲノム断片
の型決定可能な遺伝子座を検出する工程は、例えば、遺伝子座それ自体の検出、または遺
伝子的に連結した、または関連したさらに別の配列の検出を含むことができる。この相補
性は完全である必要はない。例えば、ミスマッチが、用いるべき条件下で検出のための十
分に安定なハイブリダイゼーション複合体の形成を妨げない限り、ハイブリダイズした核
酸複合体内のいずれかの数の塩基対ミスマッチがあり得る。
【0155】
さらに、本発明の方法で用いる核酸プローブは、ゲノム断片の特定の集団に存在する標
的配列または他の配列に相補的でない配列領域を含むことができる。これらの非標的相補
的配列領域は、例えば、プローブを基質に付着させ、プライマーまたは他の所望の配列の
ような他の核酸用の部位をアニーリングするためのリンカー配列を含むことができる。核
酸プローブの標的−相補性配列領域は、例えば、長さが少なくとも10ヌクレオチドであ
る長さを有することができる。また、限定されるものではないが、長さが少なくとも約1
5、20、25、35、50、70、100、500、1000または5000ヌクレオ
チド以上であるものを含めた、より長い標的−相補性領域も有用であり得る。上記したよ
うに、本発明の特定の実施形態は、天然ゲノムを増幅して、比較的小さなゲノム断片の表
示的集団を生じさせる能力を提供する。小さなゲノム断片上のゲノムの型決定可能な遺伝
子座を検出する非限定的利点は、比較的近い遺伝子座が個々の検出のために分離できるこ
とである。従って、小さな標的配列の検出等の特別な実施形態において、核酸プローブの
標的−相補性領域は長さが多くとも約100、90、80、70、60、50、40、3
5、30、25、20または10ヌクレオチドであり得る。
【0156】
本発明で有用な例示的標的−相補性配列は種々の検出技術の関係で後に記載する。当業
者であれば、プローブは例示した特定の検出技術で用いるのに限定されず、むしろ、本発
明の特定の適用で望まれる種々の異なる検出技術のいずれでも用いることができる。
【0157】
本発明の方法で用いるプローブは、さらに、例えば、特定の検出方法を指示するための
修飾を有することができる。例えば、特定のプローブの増幅または修飾が望まれない実施
形態において、プローブは、修飾に対して抵抗性である構造を有することができる。特別
な例として、プローブは3’OH基を欠き得、または3’キャップ部分を有することがで
き、それにより、ポリメラーゼでの修飾に対して不活性である。特別な実施形態において
、プローブは、限定されるものではないが、上記した一次または二次核酸標識の1つ以上
を含めた検出可能な標識を含むことができる。別法として、検出は、標識が必要ないよう
にプローブ、断片またはハイブリッドの固有の特徴に基づくことができる。検出すること
ができる固有の特徴の例は、限定されるものではないが、質量、電導度、エネルギー吸収
、蛍光などを含む。
【0158】
種々の条件のいずれかを用いて、プローブを、限定されるものではないが、標的に対す
るプライマーアニーリングに関して上記したものを含めたゲノム断片をハイブリダイズさ
せることができる。特別な実施形態において、ハイブリダイゼーション条件は、プローブ
、ゲノム断片または双方の修飾または特性を支持することができる。しかしながら、プロ
ーブが適用される検出方法に依存して、ハイブリダイゼーション条件はプローブ−断片ハ
イブリッドの修飾を支持する必要はない。従って、特定の断片の存在は、ゲノム断片、プ
ローブまたは双方の検出可能な特性に基づいて測定することができる。さらなる例示的ハ
イブリダイゼーション条件は、特定の検出方法に関して後に記載する。
【0159】
本発明の方法においてプローブと接触させる複数のゲノム断片は、ゲノム配列の全てま
たは一部を表すことができる。従って、上記複数のゲノム断片の複雑性は、それが増幅さ
れ、またはそうでなければ生じるゲノムのサイズと同等であり得る。例えば、プローブと
接触させる複数のヒトゲノム断片は、全長ゲノムと概略同等な約3.1ギガ塩基の複雑性
を有することができる。また、より低い複雑性の表示を用いることができる。再度、ヒト
ゲノムを非限定的例として用いて、プローブと接触させる複数のゲノム断片は少なくとも
約2ギガ塩基の複雑性を有することができ、これはヒトゲノムの約60%の表示であり、
あるいは少なくとも約1ギガ塩基の複雑性を有することができ、これは、ヒトゲノムの少
なくとも約30%の表示である。本発明の方法においてプローブと接触させた複数のプロ
ーブの複雑性は、例えば、少なくとも約0.1ギガ塩基、0.2ギガ塩基、0.5ギガ塩
基、0.8ギガ塩基、1ギガ塩基、1.5ギガ塩基、2ギガ塩基、2.5ギガ塩基、3ギ
ガ塩基、3.5ギガ塩基、4ギガ塩基、4.5ギガ塩基、5ギガ塩基以上であり得る。
【0160】
より高い複雑性の複数のゲノム断片を本発明の方法で用いるので、典型的には、より大
きな量のDNAを用いるのが望ましい。従って、本明細書中に開示した方法においてプロ
ーブと接触させる複数のゲノム断片におけるDNAの量は少なくとも約1μg、10μg
、50μg、100μg、150μg、200μg、300μg、400μg、500μ
g、1000μg以上(ここではμgはマイクログラムをいう)であり得る。複数のゲノ
ム断片は、プローブおよび断片の間の配列特異的ハイブリダイゼーションの所望のレベル
、または検出された遺伝子座の量等の所望の結果を与えるいずれかの濃度にて流体中に存
在させることができる。例えば、本発明の方法においてプローブと接触させる複数のゲノ
ム断片の濃度は少なくとも約0.1μg/μl、0.2μg/μl、0.5μg/μl、
0.8μg/μl、1μg/μl、1.5μg/μl、2μg/μl、5μg/μl、1
0μg/μlであり得る(ここではμlはマイクロリットルをいう)。
【0161】
複数のゲノム断片と接触させるプローブの数は当該方法の所望の適用に基づいて選択す
ることができる。用いることができる例示的プローブ集団およびアレイは当該分野で既知
でありおよび/または本明細書中に記載されたものを含むことができる。ゲノム断片とで
配列特異的ハイブリッドを形成する異なるプローブの数は、例えば、少なくとも約100
、500、1000、5000、1×10
4、5×10
4、1×10
5、5×10
5、1
×10
6、5×10
6以上であり得、これは、当該分野で既知のおよび/または本明細書
中に記載された集団またはアレイにおける多数のプローブを含む。
【0162】
ハイブリダイゼーション後、所望であれば、ハイブリダイズしなかった核酸はハイブリ
ッドから分離することができる。一本鎖の核酸およびハイブリッド核酸は、例えば、サイ
ズ、質量、エネルギー吸収、蛍光、電導度、電荷、または特定の基質に対する親和性を含
めた2つの種に関して異なる特性に基づいて分離することができる。2つの種では異なる
特性に基づいて一本鎖の核酸およびハイブリッド核酸を分離するのに用いることができる
例示的方法は、限定されるものではないが、サイズ排除クロマトグラフィー、特定のサイ
ズカットオフを有する膜を通じての濾過、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気
泳動、毛細管電気泳動、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などを含む。
【0163】
特別な実施形態において、ハイブリッド核酸からのプローブ、標的または双方のような
一本鎖核酸の分離は、プローブまたは標的の基質への付着によって促進することができる
。固相基質を用いる核酸の分離を含む例示的方法は
図9に示され、後に記載する。基質結
合核酸で形成されたハイブリッドは、反応混合物からの基質の物理的分離によってハイブ
リダイズしていない核酸から分離することができる。そのような分離で用いることができ
る例示的基質は、限定されるものではないが、磁性ビーズ、Sephadex
TM、制御
されたポアのガラス、アガロースなどのような粒子;またはガラス表面、プラスチック、
セラミックなどのような表面を含む。核酸は、当該分野で既知の方法を用い、核酸二次的
標識に関連して上記されたもの等の公知のリンカーおよびリガンドを介して基質に付着さ
せることができる。基質は、例えば、磁気引力、重力沈積、遠心沈積、濾過、FACS、
電気的引力などを含めた種々の方法のいずれかによって溶液から物理的に分離することが
できる。分離は、例えば、手またはロボットデバイスを用いて基質の手動での移動によっ
て行うこともできる。
【0164】
本発明の方法は、さらに、プローブ−ゲノム断片ハイブリッドの型決定可能な遺伝子座
を検出する工程を含むことができる。本発明の特定の適用に応じて、プローブ−ゲノム断
片ハイブリッドは、直接的検出技術、あるいは別法として増幅−ベースの技術を用いて検
出することができる。直接的検出技術は、プローブ−断片ハイブリッドにおける核酸のレ
ベルが検出されたシグナルを供するものを含む。例えば、特定のアレイ位置で形成された
ハイブリッドの場合には、捕獲されたハイブリッドまたはその構成要素核酸から生起する
位置からのシグナルは、ハイブリッドまたはその構成要素核酸を増幅すること無く検出す
ることができる。別法として、検出は、検出される核酸のレベルを増大させるための、プ
ローブまたはゲノム断片または双方の増幅を含むことができる。種々の例示的検出技術の
関係で後に記載するように、プローブ核酸、ゲノム断片または双方を標識することができ
る。さらに、プローブ−断片ハイブリッドにおける核酸は、そのような標識の検出に基づ
いて、ハイブリッド形成および型決定可能な遺伝子座の検出に先立って、その間に、また
はその後に標識することができる。
【0165】
従って、ゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する方法は、(a)そのような型決定可
能な遺伝子座を有するゲノム断片の増幅された表示的集団を提供し、(b)上記ゲノム断
片を、プローブ−断片ハイブリッドが形成される条件下で、型決定可能な遺伝子座に対応
する配列を有する複数の核酸プローブと接触させ;次いで、(c)上記プローブ−断片ハ
イブリッドの型決定可能な遺伝子座を直接的に検出する工程を含むことができる。
【0166】
一般に、直接的か、または増幅技術に基づくかを問わず、検出は、核酸またはそれらの
関連した標識に固有の特性を検知する方法によって達成することができる。有用な特性は
、例えば、遺伝子座を欠くものから型決定可能な遺伝子座を有する核酸を区別するのに用
いることができるものを含む。そのような検出された特性を用いて、異なる核酸を単独で
、または検出アレイの区別される位置への付着等の他の方法と組み合わせて区別すること
ができる。検出がそれに基づくことができる例示的特性は、限定されるものではないが、
質量、電導度、エネルギー吸収、蛍光などを含む。
【0167】
蛍光の検出は、核酸またはその標識に励起波長の放射線を照射し、当該分野で既知であ
り、かつ例えば、Lakowicz,Principles of Fluoresce
nce Spectroscopy,第2版,Plenum Press New Yo
rk(1999)に記載された方法によってそこでのフルオロフォアから発せられた放射
線を検出することによって行うことができる。フルオロフォアは、例えば、発光波長、励
起波長、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)強度、消光、異方性または寿命を含めた種
々の蛍光現象のうちのいずれかに基づいて検出することができる。FRETを用いて、励
起されたドナーからアクセプターへのエネルギーの移動による、ドナーフルオロフォアに
結合した第一のポリヌクレオチド、およびアクセプターフルオロフォアに結合した第二の
ポリヌクレオチドの間のハイブリダイゼーションを測定することができる。かくして、ハ
イブリダイゼーションは、ドナー発光の低下、およびハイブリッドについてのアクセプタ
ー発光の出現によって引き起こされた波長のシフトとして検出することができる。加えて
、光脱色後の蛍光回復(FRAP)を用いて、蛍光標識標的ポリヌクレオチドの結合によ
る先に光脱色したアレイ位置で起こる蛍光の増加に従ってハイブリダイゼーションを同定
することができる。
【0168】
型決定可能な遺伝子座を有する核酸を検知しまたは同定するのに用いることができる他
の検出技術は、例えば、その質量に基づいて核酸を検知するのに用いることができる質量
分析;表面固定化相補的配列への結合に基づいて核酸を検知するのに用いることができる
表面プラズモン共鳴;それが吸収するエネルギーの波長に基づいて核酸を検知するのに用
いることができる吸収分光分析;相補的配列への結合によりその環境の温度変化に基づい
て核酸を検知するのに用いることができる熱量測定;その電気的特性またはその環境の電
気的特性の変化に基づいて核酸を検知するのに用いることができる電気的コンダクタンス
またはインピーダンス、磁性核の存在に基づいて核酸を検知するのに用いることができる
磁気共鳴、または他の公知の分析的分光測定またはクロマトグラフィー技術を含む。
【0169】
特別な実施形態において、プローブ−断片ハイブリッドの型決定可能な遺伝子座は、ハ
イブリッド種のその後の修飾無くして、ハイブリッド中のプローブ、断片または双方の存
在に基づいて検出することができる。例えば、特定の型決定可能な遺伝子座を有するプレ
−標識された断片は、遺伝子座の核酸相補体が存在する特定のアレイ位置での標識の存在
に基づいて同定することができる。
【0170】
本発明は、さらに、(a)型決定可能な遺伝子座を有する上記ゲノム断片の増幅された
表示的集団を提供し;(b)ゲノム断片を、固定化されたプローブ−断片ハイブリッドが
形成される条件下で、型決定可能な遺伝子座に対応する配列を有する複数の固定化された
核酸プローブと接触させ;(c)上記固定化されたプローブ−断片ハイブリッドを修飾し
;次いで、(d)修飾されているプローブまたは断片を検出し、それにより、ゲノムの型
決定可能な遺伝子座を検出する工程を含むゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する方法
を提供する。
【0171】
特別な実施形態において、整列させた核酸プローブは、検出のためにゲノム断片にハイ
ブリダイズする間に修飾することができる。そのような実施形態は、例えば、米国特許第
6,355,431号B1、米国特許出願第10/177,727号および/または後に
記載されるASPE、SBE、オリゴヌクレオチド連結増幅(OLA)、伸長連結(Go
ldenGate
TM)、インベーダ技術、プローブ切断またはパイロシーケンシングを
利用するものを含む。かくして、本発明は、固定化されたプローブがプローブによって捕
獲されたゲノム断片の代わりに修飾される態様で行うことができる。別法として、検出は
、プローブにハイブリダイズした間でのゲノム断片の修飾を含むことができる。例示的な
修飾は、ポリメラーゼ等の酵素によって触媒されるものを含む。有用な修飾は1つ以上の
ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの1つ以上の、テンプレートにハイブリダイズ
したプライマーへの一体化であり得、そこでは、プライマーはプローブ−ゲノム−断片ハ
イブリッドにおけるプローブまたはゲノム断片いずれかであり得る。そのような修飾はプ
ライムドテンプレートの全てまたは一部の複製を含むことができる。テンプレートプロー
ブまたはゲノム断片の一部のみの複製に導く修飾は、テンプレートの増幅無くしての検出
であると理解される。というのは、テンプレートはその全長に沿って複製されるのではな
いからである。
【0172】
伸長アッセイは型決定可能な遺伝子座の検出で有用である。伸長アッセイは、一般には
、第二の核酸にハイブリダイズした場合に、第一の核酸の3’末端を修飾することによっ
て行われる。第二の核酸は、例えば、第一の核酸のポリメラーゼ−ベースの伸長の間に起
こって、1つ以上のヌクレオチドを取り込む塩基対合相互作用によって、修飾のタイプを
指令するテンプレートとして働くことができる。ポリメラーゼ伸長アッセイは、例えば、
ポリメラーゼの相対的高忠実度、およびその実行の相対的容易性のため、特に有用である
。伸長アッセイを行って、例えば、アレイ等の基材に結合した場合に、遊離3’末端を有
する核酸プローブを修飾することができる。用いることができる例示的アプローチは、例
えば、対立遺伝子特異的プライマー伸長(ASPE)、単一塩基伸長(SBE)、または
パイロシーケンシングを含む。
【0173】
特別な実施形態において、単一塩基伸長(SBE)を型決定可能な遺伝子座の検出で用
いることができる。SBEの例示的ダイアグラム表示を
図2に示す。簡単に述べれば、S
BEは、検出部位に近接する、または隣接する位置における標的ゲノム断片にハイブリダ
イズする伸長プローブを利用し、検出位置は特定の型決定可能な遺伝子座を示す。ポリメ
ラーゼを用いて、本明細書中で先に記載したもの等の検出標識で標識されたヌクレオチド
アナログでプローブの3’末端を伸長させることができる。酵素の忠実度に基づき、もし
それが標的ゲノム断片中の検出位置に相補的であれば、ヌクレオチドは伸長プローブに取
り込まれるだけである。所望であれば、上記ヌクレオチドは、さらなる伸長が起こり得ず
、かくして、単一ヌクレオチドのみが付加されるように誘導体化することができる。伸長
されたプローブにおける標識されたヌクレオチドの存在は、例えば、アレイ中の特定の位
置で検出することができ、付加されたヌクレオチドを同定して、型決定可能な遺伝子座の
同一性配列を決定することができる。SBEは、米国特許出願第09/425,633号
に記載されたもの等の公知の条件下で行うことができる。標識されたヌクレオチドは、上
記した、またはSyvanen et al.,Genomics 8:684−692
(1990); Syvanen et al.,Human Mutation 3:
172−179(1994);米国特許第5,846,710号および第5,888,8
19号;Pastinen et al.,Genomics Res.7(6):60
6−614(1997)等のどこかに記載されたもの等の方法を用いて検出することがで
きる。
【0174】
SBE検出で有用なヌクレオチドアナログはジデオキシヌクレオシド三リン酸(デオキ
シヌクレオチドまたはddNTP、すなわち、ddATP、ddTTP、ddCTPおよ
びddGTPとも呼ばれる)、または鎖停止するように誘導体化された他のヌクレオチド
アナログも含むことができる。標識された鎖停止ヌクレオチドの使用は、例えば、検出位
置を超えての伸長による偽陽性を防ぐように、存在するdNTPの1を超えるタイプを有
する反応で有用である。例示的アナログはジデオキシ−三リン酸ヌクレオチド(ddNT
P)またはアシクロターミネーター(Perkin Elmer,Foster Cit
y,CA)である。一般に、ddATP、ddCTP、ddGTPおよびddTTPを含
むヌクレオチドの組を用いることができ、その少なくとも1つは標識を含む。特定の適用
で望まれれば、全ての4つが標識されたヌクレオチドの組を用いることができる。標識は
全て同一であるか、あるいは別法として、異なるヌクレオチドタイプは異なる標識を有す
ることができる。当業者によって理解されるように、ポリメラーゼ酵素が、型決定可能な
遺伝子座を示す質問位置において注目する特定のヌクレオチドを取り込む限り、いずれか
の数のまたはそのアナログをプライマーに加えることができる。
【0175】
SBE検出方法で用いるヌクレオチドは、さらに、例えば、一次または二次検出可能標
識のいずれかであり得る検出可能標識を含むことができる。本明細書中において先に記載
された種々の核酸標識のいずれかをSBE検出方法で用いることができる。また、二次標
識の使用は、特別な実施形態において未伸長プローブの除去を促進することができる。
【0176】
SBE用の溶液はDNAポリメラーゼ等の伸長酵素を含むこともできる。適切なDNA
ポリメラーゼは、限定されるものではないが、DNAポリメラーゼI、SEQUENAS
E
TM 1.0およびSEQUENASE
TM 2.0(U.S.Biochemica
l)、T5 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、Thermose
quenase
TM(Tabor−Richardson突然変異を持つTaq)、およ
び当該分野で既知の、または本明細書中に記載されたその他のクレノウ断片を含む。もし
ヌクレオチドが、伸長プライマーと隣接する標的配列の検出位置の塩基に相補的であれば
、伸長酵素はそれを伸長プライマーに加えるであろう。かくして、伸長プライマーは修飾
され、すなわち、伸長されて、修飾されたプライマーを形成する。
【0177】
反応における未伸長プライマーの量が得られた伸長された−標識プライマーを大幅に超
え、かつ過剰の未伸長プライマーが標識プライマーの検出に競合する実施形態において、
未伸長プライマーを除去することができる。例えば、未伸長プライマーは、少量のDNA
標的で実行されるSBE反応から除去することができる。未伸長プライマーを除去するた
めの有用な方法は本明細書中に記載する。さらに、一本鎖プローブはプローブのアレイか
ら優先的に除去でき、エキソヌクレアーゼ処理等の後にさらに詳しく記載する方法を用い
て二本鎖プローブ−標的ハイブリッドを残す。そのような方法は、例えば、非テンプレー
ト指向性プローブ標識から生起するバックグラウンドを除去することによって、増大した
アッセイ感度および選択的検出を供することができる。
【0178】
当業者に理解されるように、SBE反応の配置は一部の形態のうちのいずれかを取るこ
とができる。特別な実施形態において、反応は溶液中で行うことができ、次いで、塩基−
特異的検出可能標識を持つ新たに合成されたストランドを検出することができる。例えば
、それらは直接的にハイブリダイズさせて、伸長プライマーに相補的なプローブを捕獲す
ることができ、次いで、標識の存在を検出することができる。そのような配置は、例えば
、ゲノム断片を捕獲プローブとして整列させた場合に有用である。別法として、SBE反
応は表面で起こり得る。例えば、ゲノム断片は、断片の第一の標的ドメインにハイブリダ
イズする第一の捕獲プローブを用いて捕獲することができ、反応は、プローブが
図2Aに
示されたように修飾されるように進行することができる。
【0179】
検出位置における塩基の測定は、一部の方法のいずれかで進行させることができる。特
別な実施形態において、混合した反応を2、3または4の異なるヌクレオチドで行うこと
ができ、各々は異なる標識を備えたものである。この実施形態において、プローブ上の標
識を取り込まれなかった標識から区別して、いずれのヌクレオチドがプローブを取り込ん
だかを決定することができる。別法として、区別される反応は、各々、異なる標識ヌクレ
オチドで行うことができる。これは、単一基材結合プローブおよび順次の反応を用いるこ
とによって、あるいは複数基材−結合プローブに同一反応を曝露することによって行うこ
とができ、後者の場合は
図2Aに示される。例えば、dATPをプローブ−断片ハイブリ
ッドに加えることができ、シグナルの生成を評価することができ;dATPを除去し、d
TTPを加えることができるなどである。別法として、4つのアレイを用いることができ
;第一のものをdATPと反応させ、第二のものをdTTPと反応させるなどであり、シ
グナルの存在または不存在を各アレイで評価する。
【0180】
別法として、放射分析を行うことができ;例えば、2つの基材(例えば、2つのアレイ
)上の2つの標識「A」および「B」を検出することができる。この実施形態において、
プライマー伸長反応の2つの組を行い、各々は2つのアレイ上にあり、各反応は4つの鎖
停止NTPの完全な組を含む。第一の反応は2つの「A」標識ヌクレオチドおよび2つの
「B」標識ヌクレオチドを含む(例えば、AおよびCは「A」標識でき、GおよびTは「
B」標識できる)。第二の反応は2つの標識を含むが、スイッチされ;例えば、Aおよび
Gは「A」標識され、TおよびCは「B」標識される。この反応組成は、二対立遺伝子マ
ーカーが放射線スコア取りできるようにし;すなわち、単一基材上の2つの異なる「色」
チャネルにおける2つの標識の強度を、2つのハイブリダイズしたアレイの組からのデー
タを用いて比較する。例えば、もしマーカーがA/Gであれば、第一のアレイ上の第一の
反応を用いて、放射遺伝子型分類スコアを計算し;もしマーカーがA/Cであれば、第二
のアレイ上の第二の反応を計算で用い;もしマーカーがG/Tであれば、第二のアレイを
用いる、などである。この概念は全ての可能な二対立遺伝子マーカー組合せに適用するこ
とができる。このように、単一繊維放射スコアを用いる遺伝子型のスコア取りは、2つの
異なるアレイの間の絶対的または正規化された強度の比較を用いて遺伝子型をスコア取り
するよりも頑強な遺伝子型分類を可能とすることができる。
【0181】
図2に例示されたSBE反応は、4つの個別の反応が単一標識を用いて4つの個別のア
レイで行われる実施形態を示す。さらなる実施形態は、4よりも少ないプローブ集団また
はアレイと組み合わせた1を超えるタイプの標識の使用を含むことができる。例えば、S
BEは、単一の反応および単一のプローブ集団を用いて2色モードで行うことができる。
このモードにおいては、全ての4つの鎖停止ヌクレオチドは、第一のタイプの標識を担う
ヌクレオチドの2つ、および第二のタイプの標識を担う他の2つにて存在させることがで
きる。第一の標識はAおよびCで用いることができ、他方、第二の標識はGおよびT(ま
たはGおよびU)で用いられる。この例示的標識スキームは天然で生じるヒトSNPのほ
ぼ80%の検出を可能とする。というのは、最も豊富なヒトSNPはA/GおよびC/T
多型だからである。当業者であれば、所望であれば、他の標識スキームを用いて、例えば
、特定の生物における多型の豊富さを確認し、または特定の適用で検出すべき多型の所望
のタイプを確認することができるのを理解するであろう。複数の標識タイプでのSBEの
使用は、遺伝子型分類データを得るのに必要なアレイおよび反応の数を低下させる非限定
的利点を提供することができる。
【0182】
単一塩基配列決定(SBE)は、1つ以上の非鎖停止ヌクレオチドを伸長反応に含める
以外は、SBEに関して上記したように行うことができる伸長アッセイである。かくして
、本発明によると、1つ以上の非鎖停止ヌクレオチドを、例えば、上記したものを含めた
SBE反応に含めることができる。
【0183】
SBSの例示的実施形態は、2つの個別のプローブ集団について2つの個別の反応を行
うことである。2つの個別の反応は、有利には、単一標識を用いて行われ;しかしながら
、所望であれば、1を超えるタイプの標識を用いることができる。第一の反応は、伸長可
能であって、ゲノムDNA中の4つの天然に生じるヌクレオチドのうちの2つにハイブリ
ダイズできる2つの異なる標識されたヌクレオチドを含むことができる。第二の反応は2
つの異なるヌクレオチドを含むことができ、上記ヌクレオチドは標識され、かつゲノムD
NA中の他の2つの天然に生じるヌクレオチドにハイブリダイズすることができる。2つ
の反応の各々は他の反応に見出されるヌクレオチドを欠乏させることができるか、あるい
は他の反応で見出されるヌクレオチドの鎖停止アナログを含めることができる。その例と
して、第一の反応(ホットAC反応)はdATP−ビオチンおよびdCTP−ビオチンを
含むことができる。この第一の反応はGTP、UTPおよびTTPを欠くことができる。
別法として、第一の反応はジデオキシGTPおよびジデオキシUTP(またはジデオキシ
GTPおよびジデオキシTTP)を含むことができる。上記例を継続し、第二の反応(ホ
ットGU反応)はdGTP−ビオチンおよびdUTP−ビオチン(またはdGTP−ビオ
チンおよびdTTP−ビオチン)を含むことができる。この第二の反応はCTPまたはA
TPを欠くことができる。別法として、第二の反応はジデオキシCTPおよびジデオキシ
ATPを含むことができる。この例示的標識スキームは天然に生じるヒトSNPのほぼ8
0%の検出を可能とする。というのは、豊富なヒトSNPの大半はA/GおよびC/T多
型だからである。
【0184】
ASPEは、それらの3’末端においてヌクレオチド組成が異なる伸長プローブを利用
する伸長アッセイである。ASPEの例示的ダイアグラム表示を
図2Bに示す。簡単に述
べれば、ASPEは、標的ゲノム断片を、検出位置に対して相補的な3’配列部分、およ
び検出位置に隣接する配列に対して相補的である5’部分を有する伸長プローブにハイブ
リダイズさせることによって行うことができる。例えば、ポリメラーゼによる標識された
ヌクレオチドの付加による、プローブの3’部分のテンプレート指向性修飾により標識さ
れた伸長生成物が得られるが、テンプレートが標的配列を含む場合のみである。次いで、
そのような標識されたプライマー−伸長生成物の存在は、例えば、アレイ中のその位置に
基づいて検出して、特定の型決定可能な遺伝子座の存在を示すことができる。
【0185】
特別な実施形態において、ASPEは、検出位置に相補的な3’末端を有するプローブ
のみがポリメラーゼによって修飾されるように、それらが異なる3’末端を除いて標的ゲ
ノム断片中の同一検出位置に隣接してアニールされるように、同様な5’末端を有する複
数伸長プローブで行うことができる。
図2Bに示すように、特定の検出位置に相補的な3
’末端塩基を有するプローブを、上記位置についてのパーフェクトマッチ(PM)プロー
ブといい、他方、3’末端ミスマッチ塩基を有し、ASPE反応で伸長できないプローブ
は、上記位置に関してミスマッチ(MM)プローブである。PMプローブにおける標識さ
れたヌクレオチドの存在を検出することができ、プローブの3’配列を決定して、特定の
型決定可能な遺伝子座を同定することができる。ASPE反応は、例えば、区別されるア
レイ位置における1、2または3の異なるMMプローブを含むことができ、上記数はアッ
セイすべき特定の遺伝子座で起こる多様性に依存して選択される。例えば、2つのプロー
ブを用いて、特定の遺伝子座についての2つの対立遺伝子のいずれが試料に存在するかを
決定することができ、他方、3つの異なるプローブを用いて、3−対立遺伝子の座の対立
遺伝子を区別することができる。
【0186】
特別な実施形態において、ASPE反応は、鎖停止するように誘導体化されたヌクレオ
チドアナログを含むことができる。かくして、プローブ−断片ハイブリッドにおけるPM
プローブは、さらなる伸長無くして単一ヌクレオチドアナログを取り込むように修飾する
ことができる。例示的な鎖停止ヌクレオチドアナログは、限定されるものではないが、S
BE反応に関して上記したものを含む。さらに、それらが鎖停止するものであるか否かを
問わず、ASPE反応で用いる1つ以上のヌクレオチドは、本明細書中において先に記載
したもの等の検出標識を含むことができる。例えば、ASPE反応は、実施例IIIに例
示された単一ビオチン標識dNTPを含むことができる。所望であれば、ASPE反応に
おける1を超えるヌクレオチドを標識することができる。例えば、実施例IIに記載した
もの等の反応条件を修飾して、ビオチニル化dCTPならびにビオチニル化dGTPおよ
びビオチニル化dTTPを含むようにすることができる。ASPE反応は全ての4つのヌ
クレオチドA、C、TおよびGの存在下で、あるいは、例えば、実質的な量のA、C、T
またはGの1つ以上を欠くサブセットを含めたこれらのヌクレオチドのサブセットの存在
下で行うことができる。
【0187】
パイロシーケンシングは、1つ以上のヌクレオチドを検出位置に加えるのに用いること
ができる伸長アッセイである;型決定可能な遺伝子座の同定が、ヌクレオチドに付着した
標識上よりはむしろ、伸長されたプローブへのdNTPの付加の間に生じた、反応生成物
のピロホスフェート(PPi)の検出に基づく以外はSBEと同様である。PPiの1つ
の分子が、伸長プライマーに加えられたdNTP当たりに生じる。すなわち、ヌクレオチ
ドの各々との順次の反応を実行し、反応生成物をモニタリングすることによって、付加さ
れた塩基の同一性を判断することができる。パイロシーケンシングは、US 2002/
0001801に記載されたもの等の条件を用いて本発明で用いることができる。
【0188】
特別な実施形態において、固定化されたプローブ−断片ハイブリッドの修飾は、1つ以
上のミスマッチした塩基対を有するハイブリッドの切断または分解を含むことができる。
本明細書中に記載した他の修飾に関しては、パーフェクトマッチしたハイブリッドと比較
して1つ以上のミスマッチを有するハイブリッドの選択的修飾をもたらす条件を使用する
ことができる。例えば、ASPE−ベースの検出方法においては、ミスマッチプローブ−
断片ハイブリッドは、パーフェクトマッチプローブ−断片ハイブリッドと比較して選択的
に切断または分解することができる。例えば、ハイブリッドを、塩基対ミスマッチを認識
し、結合切断によるなどしてミスマッチしたハイブリッドを修飾することができる剤と接
触させることができる。例示的剤は、DNAグリコシラーゼ、Cel I、T4エンドヌ
クレアーゼVII、T7エンドヌクレアーゼI、マングリーンエンドヌクレアーゼまたは
Mut−y、またはBradley et al.,Nucl.Acids Res.3
2:2632−2641(2004)に記載されたもの等の他のもののごときミスマッチ
した塩基対を有するハイブリッドを認識し、それを切断する酵素を含む。ミスマッチした
ハイブリッドから生じた切断生成物は、例えば、洗浄によって除去することができる。
【0189】
従って、本発明の方法は、ミスマッチプローブ−断片ハイブリッドの切断と共にASP
Eを用いて固定化されたプローブ−断片ハイブリッドを修飾することを含むことができる
。組み合わせて双方の修飾工程を用いる利点は、工程の1つのみの使用と比較して特異性
を増大させることができることである。例えば、ASPE検出を用いる場合、特異性の第
一のレベルは、伸長ポリメラーゼによるマッチおよびミスマッチプライマーの区別により
得られる。望ましくないミスマッチプライマー伸長が起こる場合、ミスマッチしたハイブ
リッドの切断はミスマッチプローブによる人工的シグナルを妨げるよう働くことができ、
それにより、アッセイの特異性および感度を増加させる。同様に、特異性および感度は、
連結ベースのアッセイ等の本明細書中に記載された他の検出方法で形成されたミスマッチ
ハイブリッドにより生起する人工的シグナルを除去することによって増加させることがで
きる。ミスマッチハイブリッドは、本明細書中に開示された方法に従って液相または固相
固定化ハイブリッドから除去することができる。
【0190】
特別な実施形態において、ASPE反応は、パーフェクトマッチプローブ−断片ハイブ
リッドの伸長が完了するように駆動され、実質的な量のミスマッチプローブ−断片ハイブ
リッドもまた伸長される条件下で行うことができる。例えば、AおよびB対立遺伝子を有
する遺伝子座の場合には、パーフェクトマッチプローブは、AA個体を持つ完全なハイブ
リッドを形成するホモ接合性対立遺伝子Aに対して設計することができ、ミスマッチプロ
ーブはBB個体を持つ完全なハイブリッドを形成するホモ接合性対立遺伝子Bに対して設
計することができる。従って、パーフェクトマッチおよびミスマッチプローブの役割は、
観察下での試料に応じて留保することができる。ミスマッチ伸長の生成物は、伸長した生
成物において1つのミスマッチ塩基対を有し、パーフェクトマッチはミスマッチを含まな
いであろう。ミスマッチプローブによって生じたシグナルの特異的除去は、パーフェクト
マッチ伸長からのシグナルを無傷としつつ、パーフェクトマッチおよびミスマッチの間の
より大きな区別を作り出す第二の区別工程を付け加えることができ、パーフェクトマッチ
プローブのポリメラーゼ−ベースの修飾のみに基づく検出と比較して、より特異的な遺伝
子型分類アッセイを創製する。
【0191】
所望ならば、プローブ−断片ハイブリッドの一部ではない固定化されたプローブはプロ
ーブ−断片ハイブリッドと比較して選択的に修飾することができる。ハイブリダイズしな
かったプローブの選択的修飾を用いて、例えば、ポリメラーゼ伸長アッセイの間にテンプ
レート独立的に標識されたプローブを除去することによってアッセイの特異性および感度
を増加させることができる。特に有用な選択的修飾は、ハイブリダイゼーション条件下で
の標的との接触に続いて、集団またはプローブのアレイに存在する一本鎖プローブの分解
または切断である。一本鎖核酸を分解する例示的な酵素は、限定されるものではないが、
エキソヌクレアーゼ1つまたはラムダエキソヌクレアーゼを含む。
【0192】
その3’末端における反応性ヒドロキシルを持つプローブ、およびポリメラーゼ伸長を
利用する実施形態において、有用なエキソヌクレアーゼは、3’〜5’方向に一本鎖DN
Aを優先的に消化するものである。かくして、特定のアッセイ条件下で形成される二本鎖
プローブ−標的ハイブリッドは、プローブのポリメラーゼ伸長用のテンプレートとして働
く標的の3’突出の場合のように、分解から優先的に保護される。しかしながら、アッセ
イ条件下で標的にハイブリダイズしない一本鎖プローブは優先的に分解される。さらに、
そのようなエンドヌクレアーゼ処理は、断片または核酸が、標的核酸の非プローブ相互作
用部分との相互作用のためアレイにより保持される場合に、ゲノム断片または他の核酸の
一本鎖領域を優先的に分解することができる。かくして、エキソヌクレアーゼ処理は、プ
ローブに結合した2つ以上の核酸のブリッジ形成ネットワークのため生起し得るアーチフ
ァクトを妨げることができる。エキソヌクレアーゼでの消化は、典型的には、プローブ伸
長工程の後に行われる。
【0193】
一部の実施形態において、型決定可能な遺伝子座の検出は、プローブ−断片ハイブリッ
ドの形成に続くゲノム−断片標的の増幅を含むことができ、それは、標的分子の数の有意
な増加をもたらす。標的増幅−ベースの検出技術は、例えば、ポリメラーゼ鎖反応(PC
R)、ストランド置き換え増幅(SDA)、または核酸配列ベースの増幅(NASBA)
を含むことができる。別法として、標的を増幅するよりはむしろ、代替技術はテンプレー
トとしての標的を用いて、ハイブリダイズしたプローブを複製し、少数の標的分子が多数
のシグナリングプローブをもたらし、次いで、これは検出することができる。プローブ増
幅−ベースの戦略は、例えば、リガーゼ鎖反応(LCR)、サイクリングプローブ技術(
CPT)、インベーダ(Invader)TM技術等の侵襲性切断技術、Q−Betaレ
プリカーゼ(QβR)技術またはサンドイッチアッセイを含む。そのような技術は、例え
ば、米国特許出願第60/161,148号、第09/553,993号および第090
/556,463号;および米国特許第6,355,431号B1に記載され、あるいは
後に記載される条件下で行うことができる。これらの技術は、整列された核酸プローブに
ハイブリダイズする標的核酸として用いられるゲノム断片との関係で後に例示する。その
ような実施形態においては、ゲノム断片はプローブとして整列させ、合成核酸標的にハイ
ブリダイズさせることができるのは理解されよう。
【0194】
オリゴヌクレオチド連結増幅(OLA)での消化は、テンプレートとしてゲノム−断片
標的配列を用いて、2つのより小さなプローブを単一の長いプローブにテンプレート−依
存的に連結することを含む。特別な実施形態において、一本鎖標的配列は第一の標的ドメ
インおよび第二の標的ドメインを含み、それらは隣接し、かつ連続したものである。第一
のOLAプローブおよび第二のOLAプローブは、各標的ドメインの相補的配列にハイブ
リダイズさせることができる。次いで、2つのOLAプローブを相互に共有結合させて、
修飾されたプローブを形成する。プローブが相互に直接的に隣接してハイブリダイズする
実施形態において、共有結合はリガーゼを介して起こることができる。1つの実施形態に
おいて、連結プローブの一方はアレイまたは粒子等の表面に付着させることができる。さ
らに別の実施形態において、双方の連結プローブをアレイまたは粒子等の表面に結合させ
ることができる。
【0195】
別法として、伸長連結(Goldengate
TM)アッセイを用いることができ、そ
こでは、ハイブリダイズしたプローブは連続するものではなく、1つ以上のヌクレオチド
が、付加されたヌクレオチドを介してプローブを接合する1つ以上の剤と共に加えられる
。例示的剤は、例えば、ポリメラーゼおよびリガーゼを含む。所望であれば、修飾された
プローブおよび標的の間のハイブリッドを変性することができ、連結されたプローブのプ
ールの創製に導く増幅に関して上記プロセスを反復することができる。上記したように、
これらの伸長−連結プローブはアレイまたは粒子等の表面に付着させることができるが、
その必要はない。本発明で有用な伸長連結アッセイのためのさらに別の条件は、例えば、
米国特許第6,355,431号B1および米国出願第10/177,727号に記載さ
れている。
【0196】
OLAは、二本鎖ゲノム断片標的を用いる場合には、連結鎖反応(LCR)といわれる
。LCRにおいては、標的配列を変性し、プローブの2つの組を加える:1つの組は標的
の1つのストランドに関して上記で概説した通りであり、別の組(すなわち、第三および
第四プライマープローブの核酸)は標的の他のストランドについて上記で解説した通りで
ある。第一および第二のプローブが標的にハイブリダイズし、伸長されたプローブを形成
するように修飾される条件を用いることができる。標的−修飾プローブハイブリッドの変
性に続き、第二の標的配列に加えて、第三および第四のプローブの付着のために、修飾さ
れたプローブをテンプレートとして用いることができる。同様に、連結した第三および第
四のプローブは、第一の標的ストランドに加えて、第一および第二のプローブの付着用の
テンプレートとして働くことができる。このようにして、丁度直線状よりはむしろ指数関
数的な増幅が、変性および連結のプロセスを反復した場合に起こり得る。
【0197】
修飾されたOLAプローブ生成物は種々の方法のいずれかで検出することができる。特
別な実施形態において、テンプレート−指向性プローブ修飾反応は、溶液中で行うことが
でき、修飾されたプローブはアレイ中の捕獲プローブにハイブリダイズする。捕獲プロー
ブは、一般には、修飾されたOLAプローブの少なくとも一部に対して相補的である。例
示的な実施形態において、第一のOLAプローブは検出可能な標識を含むことができ、第
二のOLAプローブは捕獲プローブに対して実質的に相補的であり得る。この実施形態の
非限定的利点は、アッセイで修飾されなかった標識プローブの存在によるアーチファクト
が最小化されることである。何故ならば、未修飾プローブは、捕獲プローブによってハイ
ブリダイズされる相補的配列を含まないからである。また、OLA検出技術は、反応混合
物を、例えば、米国特許第6,355,431号B1に記載された捕獲プローブと接触さ
せるに先立ち、反応混合物から未修飾標的プローブを除去する工程を含むこともできる。
【0198】
別法として、ゲノム断片標識は固相表面に固定化することができ、ハイブリダイズした
OLAプローブを修飾する反応は固相表面で行うことができる。未修飾プローブは適切な
ストリンジェンシー下での洗浄によって除去することができる。次いで、修飾されたプロ
ーブを、0.1N NaOH等の変性条件を用いてゲノム断片標的から溶出させることが
でき、本明細書中に記載したように検出することができる。ゲノム断片が、OLA技術に
おいて標的配列として用いる場合に検出できる他の条件は、例えば、米国特許第6,35
5,431号B1、第5,185,243号、第5,679,524号および第5,57
3,907号;EP 0 320 308 B1;EP 0 336 731 B1;E
P 0 439 182 B1;WO90/01069;WO 89/12696;WO
97/31256;およびWO 89/09835および米国出願第60/078,1
02号および第60/073,011号に記載されたものを含む。
【0199】
型決定可能な遺伝子座は、ローリングサークル増幅(RCA)を用いて本発明の方法で
検出することができる。第一の実施形態において、単一プローブを、上記プローブが標的
にハイブリダイズしている間に環状化されるように、ゲノム断片標的にハイブリダイズさ
せることができる。上記プローブの各末端は標的核酸上に隣接してハイブリダイズし、ポ
リメラーゼの付加の結果、環状プローブが伸長される。しかしながら、プローブは末端を
有しないので、ポリメラーゼはプローブを反復して伸長し続ける。この結果、環状プロー
ブが増幅される。RCAに続き、増幅された環状プローブを検出することができる。これ
は、種々の方法で達成することができ;例えば、プライマーを標識することができ、ある
いはポリメラーゼを標識されたヌクレオチドに組み込み、標識された生成物を検出アレイ
において捕獲プローブによって検出することができる。ローリング−サークル増幅は、一
般には、Baner et al.(1998) Nuc.Acids Res.26:
5073−5078;Barany,F.(1991) Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 88:189−193;およびLizardi et al.(19
98) Nat Genet.19:225−232に記載されたもの等の条件下で行う
ことができる。
【0200】
さらに、本発明で用いるローリングサークルプローブは、標的にアニールしない場合に
それらを複製できなくする構造的特徴を有することができる。例えば、標的にアニールす
る末端の一方または双方は、ヘアピン構造等の分子内ステム構造を形成する配列を有する
ことができる。ステム構造は、正当な標的配列にハイブリダイズする場合にオープンサー
クルプローブが環状化されるようにするが、環状化されないオープンサークルプローブの
不活化をもたらす配列で作成することができる。この不活化は、検出アッセイにおいて修
飾されたプローブの合成の起点となり、またはローリングサークル増幅のためのテンプレ
ートとして働くオープンサークル能力を低下させ、または排除する。分子内ステム構造を
形成することができる例示的プローブ、および本発明で用いることができるそれらの使用
方法は米国特許第6573051号に記載されている。
【0201】
さらに別の実施形態において、検出はOLA、続くRCAを含むことができる。この実
施形態において、固定化されたプライマーをゲノム断片標的と接触させることができる。
相補的配列は相互にハイブリダイズし、その結果、固定化されていない二重鎖がもたらさ
れる。また、第二のプライマーを標的核酸と接触させることができる。第二のプライマー
は第一のプライマーに隣接した標的核酸とハイブリダイズする。OLA反応を行って、第
一および第二のプライマーを、例えば、上記した修飾されたプライマー生成物として付着
させることができる。次いで、ゲノム断片を除去し、固定化された修飾プライマー生成物
を、未修飾固定化プライマーではなく修飾されたプライマー生成物に相補的なRCAプロ
ーブとハイブリダイズさせることができる。次いで、RCA反応を行うことができる。
【0202】
特別な実施形態において、パドロックプローブをOLAのため、およびRCA用の環状
テンプレートとして用いることができる。パドロックプローブの各末端は、ゲノム断片標
的に相補的な配列を含むことができる。より具体的には、パドロックプローブの第一の末
端は第一の標的ドメインに対して実質的に相補性とすることができ、RCAプローブの第
二の末端は、第一のドメインに隣接した第二の標的ドメインに対して実質的に相補的とす
ることができる。ゲノム断片標的へのパドロックプローブのハイブリダイゼーションの結
果、ハイブリダイゼーション複合体が形成される。単一オリゴヌクレオチドの区別される
末端の連結の結果、RCAテンプレート複合体として作用する環状プローブを含有する修
飾されたハイブリダイゼーション複合体が形成される。RCAテンプレート複合体へのポ
リメラーゼの付加は、増幅された生成物の核酸の形成を可能とすることができる。RCA
に続いて、増幅された生成物の核酸を、例えば、アレイに対するハイブリダイゼーション
によって直接的にまたは間接的に検出することができ、関連した標識を検出することがで
きる。
【0203】
本発明で用いるパドロックプローブは、さらに、アダプター配列、コンカテマーを切断
するための制限部位、標識配列、または、例えば、米国特許第6,355,431号B1
に記載されたRCA反応の起点となるプライミング部位を含むことができる。この同一特
許は、本発明の方法においてゲノム断片標的の型決定可能な遺伝子座を検出するのに用い
ることができるパドロックプローブ方法も記載する。
【0204】
本発明の方法において型決定可能な遺伝子座を検出するのに用いることができるLCR
の変形は、米国特許第5,616,464号および第5,767,259号に記載された
もの等の条件下での化学的連結を利用する。この実施形態においては、酵素修飾と同様に
、プローブの対を利用することができ、そこでは、第一のプローブは標的ゲノム断片の第
一のドメインに対して実質的に相補的であって、第二のプローブは標的の隣接する第二の
ドメインに対して実質的に相補的である。各プローブは、標的配列を結合するよりはむし
ろプローブの間に非共有結合ステム構造の1つの半分を形成する「側鎖」として働く部分
を含むことができる。特別な実施形態は、側鎖として実質的に相補的な核酸を利用する。
かくして、プローブの標的配列へのハイブリダイゼーションに対して、プローブの側鎖は
空間的に近接させる。側鎖の少なくとも1つは、一般的には、活性化に際して、隣接プロ
ーブとで化学的架橋または化学的連結をもたらす、側鎖に共有結合した活性化可能架橋剤
を含むことができる。活性化可能基は、側鎖の架橋を可能とするいずれの部位も含むこと
ができ、それは、光活性化可能基等の化学的に、光学的(フォトミック)にまたは熱的に
活性化された基を含む。一部の実施形態において、側鎖の1つ上の単一の活性化可能基は
、他の側鎖上の官能基への相互作用を介する架橋をもたらすのに十分であり;別の実施形
態において、活性化可能基は各側鎖に含めることができる。プローブの一方または双方は
標識することができる。
【0205】
一旦ハイブリダイゼーション複合体が形成されれば、プローブが相互に共有結合される
ように、架橋剤は活性化されており、反応はハイブリダイゼーション複合体の解離を可能
とする条件に付すことができ、かくして、標的を遊離させて、次の連結または架橋のため
のテンプレートとして働かすことができる。このようにして、シグナル増幅が起こること
ができ、架橋した生成物は、例えば、アレイへのハイブリダイゼーションによって直接的
にまたは間接的に検出することができ、解離した標識は検出することができる。
【0206】
特別な実施形態において、増幅−ベースの検出は、侵襲的切断技術を用いて達成するこ
とができる。そのようなアプローチを用い、ゲノム断片標的を2つの区別されるプローブ
にハイブリダイズさせることができる。2つのプローブは、ゲノム断片標的の第一の部分
に対して実質的に相補的であるインベーダプローブ、および検出位置を有する配列に対し
て実質的に相補的な3’末端、および一本鎖テイルを形成することができる5’非相補的
末端を有するシグナルプローブである。上記テイルは検出配列を含むことができ、典型的
には、少なくとも1つの検出可能標識も含む。しかしながら、シグナルプローブ中の検出
配列は捕獲プローブ用の標的配列として機能することができるので、標識プローブを利用
するサンドイッチ配置を本明細書中に記載したように用いることができ、シグナルプロー
ブは検出可能な標識を含む必要がない。
【0207】
上記インベーダ、およびゲノム断片標的上のさらに別の近くの、またはそれに隣接する
シグナルプローブのハイブリダイゼーションは、プローブ−断片ハイブリッドの検出で有
用な一部の構造のうちのいずれかを形成することができる。例えば、フォーク型の切断構
造を形成することができ、それにより、検出配列をシグナルプローブから切断するヌクレ
アーゼに対する基質を供することができる。切断の部位は、インベーダプローブの3’末
端およびシグナルプローブの下流フォークの間の距離または重複によって制御することが
できる。従って、誤整列した場合、あるいはゲノム断片標的に付着しなかった場合、いず
れのオリゴヌクレオチドも切断されない。
【0208】
特別な実施形態において、フォーク型切断構造を認識し、テイルの放出を触媒する熱安
定性ヌクレアーゼを用いることができ、それにより、切断反応の熱サイクリンを行うこと
が可能となり、所望であれば、増幅する。用いることができる例示的ヌクレアーゼは、限
定されるものではないが、Thermus aqaticis、Thermus fla
vus、またはThermus thermophinusに由来するもの;米国特許第
5,719,028号および第5,843,669号に記載されたもの、または例えば、
米国特許第5,843,669号およびLyamichev et al.,Natur
e Biotechnology 17:292−297(1999)に記載されたFl
apエンドヌクレアーゼ(FEN)を含む。
【0209】
所望であれば、切断されたシグナルプローブの3’部分を、例えば、ビーズ結合ストレ
プトアビジン等の固相捕獲タグへ結合させることによって、または捕獲タグを通じて架橋
させて凝集体を生じさせることによって、抽出することができる。シグナルプローブの5
’検出配列は、アレイ上のプローブへのハイブリダイゼーション等の後に記載する方法を
用いて検出することができる。侵襲的切断技術は、さらに、例えば、米国特許第6,35
5,431号;第5,846,717号;第5,614,402号;第5,719,02
8号;第5,541,311号;または第5,843,669号に記載された条件および
検出方法を用いて本発明で用いることができる。
【0210】
型決定可能な遺伝子座を検出するのに用いることができるさらなる増幅−ベースの検出
技術はサイクリングプローブ技術(CPT)である。CPTプローブは分裂可能な結合に
よって分離された2つのプローブ配列を含むことができる。上記CPTプローブはゲノム
断片標的配列に対して実質的に相補的であって、かくして、それにハイブリダイズして、
プローブ−断片ハイブリッドを形成する。上記CPTプローブは本発明の方法においてゲ
ノム断片標的にハイブリダイズさせることができる。典型的には、一次プローブが結合し
、一次プローブのより短い切断された一部分が解離するように、温度およびプローブ配列
を選択する。特定の適用に依存して、CPTは溶液中で行うことができるか、あるいは標
的または分裂可能プローブを固体支持体に結合させることができる。上記方法で形成され
たプローブ−断片ハイブリッドは、標的配列を切断すること無く、分裂可能結合を選択的
に切断させ、それにより、2つのプローブ配列を分離する切断条件に付すことができる。
2つのプローブ配列は、次いで、標的から解離させることができる。特別な実施形態にお
いて、過剰のプローブを用いることができ、有効な量の切断されたプローブが増幅される
ように、反応をいずれかの回数反復させる。
【0211】
プローブがハイブリダイゼーション複合体である場合、すなわち、二本鎖複合体が形成
される場合、選択的に切断できるCPTプローブ内のいずれかの結合を分裂可能結合とし
て用いることができる。例えば、DNA:RNAハイブリッドにおける場合、リボヌクレ
アーゼ等の種々の二本鎖ヌクレアーゼによって切断することができるRNAを含めた種々
の分裂可能結合のいずれかを本発明で用いることができる。そのようなヌクレアーゼは、
そのようなハイブリッドまたは一本鎖DNAにおけるDNAよりはむしろ、RNA:DN
Aハイブリダイゼーション複合体からRNAヌクレオシドを選択的にニックし、またはそ
れを切り出す。本発明で用いることができる分裂可能結合および切断剤のさらに別の例は
、米国特許第6,355,431号B1およびそこに引用された文献に記載されている。
【0212】
CPT切断反応の完了に際して、切断されたプローブの検出に先立って、切断しなかっ
た分裂可能プローブを除去し、または中和して、所望であれば、偽陽性シグナルを回避す
ることができる。これは、例えば、CPT反応に続いて、溶液に放出された切断プローブ
を支持体上に残る切断されていないプローブから物理的に分離することができるような切
断に先立ち、例えば、支持体へのプローブの結合を含めた種々の方法のうちのいずれかで
行うことができる。切断されなかった、および切断されたプローブは、例えば、米国特許
第6,355,431号に記載された方法を用い、長さの差、特定の結合標識または配列
の捕獲に基づいて分離することもできる。
【0213】
CPT反応によって生じた切断プローブは、アレイへのハイブリダイゼーション等の方
法、または本明細書中に記載された他の方法を用いて検出することができる。例えば、切
断されたプローブは、直接的にまたは間接的に捕獲プローブに結合することができ、関連
した標識を検出することができる。CPT技術は、例えば、米国特許第5,011,76
9号;第5,403,711号;第5,660,988号;および第4,876,187
号、およびPCT公開出願WO 95/05484;WO 95/1416、およびWO
95/00667、および米国出願第09/014,304号に記載された条件下で行
うことができる。
【0214】
特別な実施形態において、分裂可能結合を含有するプローブでのCPTを用いて、米国
特許第5,660,988号およびWO 95/14106に一般的に記載されているよ
うに、ミスマッチを検出することができる。そのような実施形態において、分裂可能結合
の配列は、検出すべき特定の配列、すなわち、推定ミスマッチの領域に対応するより長い
配列内の位置に位置させることができる。ミスマッチ検出の一部の実施形態において、放
出された断片の創製速度は、上記方法が実質的に是/非結果を供するようなものであり、
それにより、実質的にいずれの放出された断片の検出も所望の型決定可能な遺伝子座の存
在を示す。別法として、あるいは加えて、最終量の切断された断片を定量して、型決定可
能な遺伝子座の存在または不存在を示すことができる。
【0215】
プローブ−断片ハイブリッドの型決定可能な遺伝子座は、サンドイッチアッセイを用い
て本発明の方法で検出することもできる。サンドイッチアッセイは増幅−ベースの技術で
あって、そこでは、典型的には標識された多数のプローブが単一のゲノム断片標的に結合
される。例示的な実施形態において、ゲノム断片標的は相補的捕獲プローブを介して固体
基材に結合することができる。典型的には、ユニークな捕獲プローブを、検出すべき各パ
イパブル遺伝子座配列に対して存在させる。ビーズアレイの場合には、各ビーズはユニー
クな捕獲プローブの1つを有することができる。所望であれば、捕獲エクステンダープロ
ーブを用いることができ、これはユニバーサル表面が、複数標的配列を検出するのに用い
ることができる単一タイプの捕獲プローブを有するようにすることができる。捕獲エクス
テンダープローブは捕獲プローブの全てまたは一部にハイブリダイズする第一の部分、お
よび検出すべき標的配列の第一の部分にハイブリダイズする第二の部分を含む。従って、
慣用化された多様性プローブを生じさせることができ、これは、当業者に理解されるよう
に、単純化することができ、本発明の多くの適用においてコストを低下させることができ
る。特別な実施形態において、2つの捕獲エクステンダープローブを用いることができる
。これは、例えば、検出すべき標的配列が大きい場合、または大きなアンプリファイアー
プローブ(特に、分岐したまたはデンドリマーアンプリファイアープローブ)を用いる場
合に、アッセイ複合体を安定化する非限定的利点を供することができる。
【0216】
一旦、捕獲プローブを介して、ビーズ等の固体基材にゲノム断片標的が結合してしまっ
たならば、アンプリファイアープローブを断片にハイブリダイズさせて、プローブ−断片
ハイブリッドを形成することができる。本発明の方法で用いることができる例示的アンプ
リファイアープローブ、およびサンドイッチアッセイでそれを用いるための条件は米国特
許第6,355,431号に記載されている。簡単に述べれば、アンプリファイアープロ
ーブは、少なくとも1つのプローブ配列、および少なくとも1つの増幅配列を有する核酸
である。アンプリファイアープローブの第一のプローブ配列を直接的にまたは間接的に用
いて、ゲノム断片標的配列にハイブリダイズさせることができる。アンプリファイアープ
ローブの増幅配列は、直接的または間接的に用いて、標識プローブの第一の部分に結合す
る種々の配列のいずれかであり得る。典型的には、アンプリファイアープローブは複数の
増幅配列を含むであろう。増幅配列は、例えば、相互への、または介入配列もしくは化学
的部分への直接的共有結合を含めた種々の方法で相互に連結させることができる。
【0217】
検出可能な標識を含む標識プローブはゲノム断片にハイブリダイズさせることができ、
それにより、プローブ−断片ハイブリッドを形成させ、標識を検出して、型決定可能な遺
伝子座の存在を決定することができる。アンプリファイアープローブの増幅配列を直接的
または間接的に用いて、標識プローブを結合させて、検出を可能とすることができる。増
幅生成物の直接的検出、および標識プローブを利用する間接的検出(すなわち、サンドイ
ッチアッセイ)を含めた本発明の増幅反応の検出は、標識を有するアッセイ複合体を検出
することによって行うことができる。サンドイッチアッセイを用いるための例示的方法、
および本発明で用いることができる関連した核酸は、さらに、米国特許出願第60/07
3,011号、および米国特許第6,355,431号;第5,681,702号;第5
,597,909号;第5,545,730号;第5,594,117号;第5,591
,584号;第5,571,670号;第5,580,731号;第5,571,670
号;第5,591,584号;第5,624,802号;第5,635,352号;第5
,594,118号;第5,359,100号;第5,124,246号および第5,6
81,697号に記載されている。
【0218】
本発明の方法の特別な適用に応じて、上記した検出技術を用いて、一次ゲノム断片標的
を検出することができるか、または上記ゲノム断片の増幅された表示的集団中の標的を検
出することができる。
【0219】
特別な実施形態において、検出に先立って反応混合物から伸長しなかったまたは反応し
なかった核酸を除去するのが望ましくあり得る。というのは、伸長しなかった、または反
応しなかったプライマーは、時々、修飾されたプローブと検出中に競合し、それにより、
シグナルを低下させるからである。修飾されたプローブに対する未修飾プローブの濃度は
、しばしば、例えば、大過剰のプローブを用いる実施形態においては比較的高くなり得る
。従って、多数の異なる技術を用いて、伸長しなかったプライマーの除去を促進すること
ができる。伸長しなかったプライマーを除去するのに用いることができる例示的方法は、
例えば、米国特許第6,355,431号に記載されたものを含む。
【0220】
上記したように、本発明を用いて、1つ以上の型決定可能な遺伝子座を検出することが
できる。特に、本発明は複数の型決定可能な遺伝子座の検出によく適合する。何故ならば
、上記方法は個々の遺伝子座が大きくかつ複雑な複数のもの内で検出できるようにするか
らである。個々の型決定可能な遺伝子座は、遺伝子座の個々のゲノム断片への分離、プロ
ーブ−断片ハイブリッドの形成、および物理的に分離されたプローブ−断片ハイブリッド
の検出に基づいて本発明で区別することができる。プローブ−断片ハイブリッドの物理的
分離は、ハイブリッドまたはそれらの構成要素を1つ以上の基材に結合させることによっ
て本発明で達成することができる。特別な実施形態において、プローブ−断片ハイブリッ
ドは、アレイ等の基材の表面のハイブリッドの物理的位置に基づいて、複数のものにおけ
る他のプローブおよび断片から区別することができる。プローブ−断片ハイブリッドを粒
子に結合させることもできる。粒子は、それらの位置に基づいて直接的に検出され、ビー
ズアレイ等の表面の粒子、またはフローサイトメーターでの流体流れ等の流体試料中での
区別される検出に従って、他のプローブおよび断片から区別することができる。個々の型
決定可能な遺伝子座の検出用のプローブ−断片ハイブリッドを区別する為の例示的フォー
マットは、後にさらに詳しく記載する。
【0221】
ゲノム断片の増幅された表示的集団における型決定可能な遺伝子座の検出は、アレイを
使用することができる。比較的多数の遺伝子座を検出すべき実施形態においては、アレイ
は、好ましくは、高密度アレイである。本発明で用いることができる例示的マイクロアレ
イは、限定されるものではないが、Butte,Nature Revues Drug
Discov.1:951−60(2002)または米国特許第5,429,807号
;第5,436,327号;第5,561,071号;第5,583,211号;第5,
658,734号;第5,837,858号;第5,874,219号;第5,919,
523号;第6,136,269号;第6,287,768号;第6,287,776号
;第6,288,220号;第6,297,006号;第6,291,193号;第6,
346,413号;第6,416,949号;第6,482,591号;第6,514,
751号および第6,610,482号;およびWO 93/17126、WO/119
95;WO 95/35505;EB 742 287;および欧州特許EP 799
897に記載されたものを含む。本発明で有用なアレイフォーマットのさらに別の例示は
米国特許第6,355,431号B1、US 2002/0102578およびPCT公
開番号WO 00/63437に記載されている。マイクロ流体デバイスを用いて流体試
料中のビーズを区別するために本発明で用いることができる例示的フォーマットは、例え
ば、米国特許第6,524,793号に記載されている。ビーズを区別するための商業的
に入手可能な流体フォーマットは、例えば、LuminexからのxMAP
TM技術、ま
たはLynx TherapeuticsからのMPSS
TM方法で用いられるものを含
む。種々の技術およびテクノロジーを、基材または支持体上、またはその中の生物学的物
質のアレイを合成して、マイクロアレイを形成するのに用いることができる。例えば、A
ffymetrix(登録商標) GeneCxip(登録商標)アレイは、VLSIP
S
TM(Very Large Scale Immobilized Polymer
Synthesis(非常に大規模な固定化されたポリマー合成))技術と時々呼ばれ
る技術に従って合成することができる。VLSIPS
TMおよび他のマイクロアレイ、お
よび(蛋白質を含めた)ポリマーアレイ製造方法および技術の一部の態様は米国特許第0
9/536,841号、国際公開番号WO 00/58516;米国特許第5,143,
854号、第5,242,974号、第5,252,743号、第5,324,633号
、第5,445,934号、第5,744,305号、第5,384,261号、第5,
405,783号、第5,424,186号、第5,451,683号、第5,482,
867号、第5,491,074号、第5,527,681号、第5,550,215号
、第5,571,639号、第5,578,832号、第5,593,839号、第5,
599,695号、第5,624,711号、第5,631,734号、第5,795,
716号、第5,831,070号、第5,837,832号、第5,856,101号
、第5,858,659号、第5,936,324号、第5,968,740号、第5,
974,164号、第5,981,185号、第5,981,956号、第6,025,
601号、第6,033,860号、第6,040,193号、第6,090,555号
、第6,136,269号、第6,269,846号、第6,022,963号、第6,
083,697号、第6,291,183号、第6,309,831号および第6,42
8,752号;およびPCT出願番号PCT/US99/00730(国際公開番号WO
99/36760)およびPCT/US01/04285に記載されている。
【0222】
VLSIPSTMを用い、5−インチ平方水晶ウエハーのヒドロキシル化表面をシラン
と反応させることによって、GeneChipアレイを製造することができる。次いで、
リンカーをシラン分子に付着させることができる。これらのシラン分子の間の距離はプロ
ーブの充填密度を決定し、アレイを、ただ1.28平方センチメートル内で500,00
0を超えるプローブの位置あるいは特徴において保持することを可能とする。数百万の同
一DNA分子は、個々の特徴の寸法に対応する18〜20平方ミクロンのウインドウを運
ぶマスクをコートされたウエハー上に置かれる写真印刷プロセスを用いて、各特徴におい
て合成することができる。紫外光を合成の最初の工程でマスク上に照らすと、曝露された
リンカーは脱保護され、ヌクレオチドカップリングで利用できる。一旦所望の特徴が活性
化されれば、除去可能な保護基を持つ単一タイプのデオキシヌクレオチドを含有する溶液
をウエハーの表面にフラッシュすることができる。ヌクレオチドは活性化されたリンカー
に結合し、合成プロセスを開始させる。キャッピング工程を用いて、未反応のリンカー(
またはその後の工程におけるポリヌクレオチド)を切形することができる。次の合成工程
において、さらに別のマスクをウエハー上において、次のラウンドの脱保護およびカップ
リングを可能とすることができる。プローブがそれらの全長(通常は25ヌクレオチドに
到達するまで、上記プロセスを反復する。しかしながら、本明細書中の他の箇所に記載し
たもの等の他の長さを有するプローブを各特徴において結合させることもできる。一旦合
成が完了すれば、ウエハーを脱保護し、ダイシングし、得られた個々のアレイをフローセ
ルカートリッジでパッキングすることができる。
【0223】
また、スポットしたアレイを本発明の方法で用いることもできる。例示的なスポットし
たアレイはAmersham Biosciencesから入手可能なCodeLink
TMアレイである。CodeLink
TM活性化スライドを、アミン−反応性基を含有す
る長鎖の親水性ポリマーでコートする。このポリマーをそれ自体に、およびスライドの表
面に共有結合により架橋させる。プローブの結合は、オリゴヌクレオチドプローブのアミ
ン−修飾された5’末端およびポリマーに存在するアミン反応性基の間の共有結合相互作
用を通じて達成することができる、プローブは、スポッティングペンを用いて区別される
位置に結合させることができる。有用なペンは、個々にバネを装備したステンレス鋼キャ
ピラリーペンである。ペンの負荷用量は約200nL未満とすることができ、送達用量は
約0.1nL以下である。そのようなペンを用いて、例えば、約140〜160μmのス
ポット直径を有する特徴を作り出すことができる。好ましい実施形態において、各スポッ
トした特長における核酸プローブは30ヌクレオチドの長さとすることができる。しかし
ながら、本明細書中の他の箇所に記載したもの等の他の長さを有するプローブを各スポッ
トに結合させることもできる。
【0224】
また、本発明で有用なアレイは、Agilent Technologiesから入手
可能なSurePrint
TM技術等のインクジェット印刷方法を用いて製造することが
できる。そのような方法を用いて、インサイチュにてオリゴヌクレオチドプローブを合成
し、または基材表面と反応性である部分を有するプレ−合成プローブを結合させることも
できる。印刷されたマイクロアレイは、標準的なスライド寸法(約1インチ×3インチ)
を有する表面上に22,575の特徴を含有することができる。典型的には、印刷された
プローブは長さが25または60ヌクレオチドである。しかしながら、本明細書中の他の
箇所に記載されたもの等の他の長さを有するプローブを各位置で印刷することもできる。
【0225】
本明細書中に記載した実施形態のいくつかについては、核酸プローブは、それらが酵素
または他の剤による修飾に関して遊離3’末端を有するように、基材に結合させることが
できる。当業者であれば、3’から5’の方向の核酸の合成に関して上記で例示した方法
を修飾して、遊離3’末端を有する核酸を生じさせることができる。例えば、固体支持体
への5’結合を有する、5’から3’の方向に核酸を合成するための当該分野で既知の合
成方法はインクジェット印刷、または写真印刷方法で用いることができる。さらに、基材
結合核酸のインサイチュ逆転は、3’基材−結合核酸がその5’末端で基材に結合するよ
うになり、その3’末端で脱着するように行うことができる。インサイチュ逆転は、Kw
iatkowski et al.,Nucl.Acids Res.27:4710−
4714(1999)に記載されたもののように、当該分野で既知の方法に従って行うこ
とができる。
【0226】
例示的な高密度アレイはアレイのアレイ、または複数試料の処理を可能とするように配
置された複数の個々のアレイを有する複合アレイである。そのようなアレイは型決定可能
な遺伝子座の多重検出を可能とする。例えば、多重検出フォーマットで本発明で用いるこ
とができる例示的複合アレイは、米国特許第6,429,027号およびUS 2002
/0102578に記載されている。特別な実施形態において、各個々のアレイはマイク
ロタイタープレートの各ウェル内に存在させることができる。かくして、マイクロタイタ
ープレートのサイズ、および個々のアレイのサイズに応じて、非常に多数のアレイを同時
に実行することができ;例えば、2,000の個々のアレイ、および96ウェルマイクロ
タイタープレートを用いて、192,000のアッセイを平行して行うことができ;38
4マイクロタイタープレートの各ウェルにおける同一数のアレイは768,000の同時
アッセイが行え、1536マイクロタイタープレートでは、3,072,000アッセイ
を生じる。
【0227】
特定の実施形態において、ゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出するのに有用な核酸は
、整列させた、またはそうでなければ空間的に区別される粒子に結合させることができる
。例示的な粒子はマイクロスフィアーまたはビーズを含む。しかしながら、本発明で用い
る粒子は球形である必要はない。むしろ、限定されるものではないが、ディスク、プレー
ト、チップ、スライバーまたは不規則な形状を含めた他の形状を有する粒子を用いること
ができる。加えて、本発明で用いる粒子は多孔性とすることができ、かくして、結合、ま
たはプローブ−断片ハイブリッドのアレイで利用可能な表面積を増加させる。粒子サイズ
は、例えば、約100nmビーズ等のナノメートルから、約1mmビーズ等のミリメート
ルまでの範囲とすることができ、多くとも約0.2ミクロン、0.5ミクロン、5ミクロ
ンまたは200ミクロン等の中間サイズの粒子は有用である。ビーズの組成は、例えば、
本発明の適用または合成の方法に応じて変化させることができる。適切なビーズの組成は
、限定されるものではないが、プラスチック、セラミック、ガラス、ポリスチレン、メチ
ルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾル、炭素グラファイト、二酸化チ
タン、ラテックス、またはSepharose
TM等の架橋したデキストラン、セルロー
ス、ナイロン、架橋したミセルまたはTeslon
TM等の、ペプチド、核酸および有機
部分合成で用いられるものを含む。有用な粒子は、例えば、Bangs Laborat
ories,Sishers IndからのMicrosphere Detectio
n Guideに記載されている。
【0228】
本発明におけるアレイ−ベースの検出の一部の実施形態は、ビーズまたはマイクロスフ
ィアーに関して後に例示される。当業者であれば、上記したもののような他の形状および
サイズの粒子を、これらの実施形態に関して例示したビーズまたはマイクロスフィアーの
代わりに用いることができるのを理解するであろう。
【0229】
ゲノム断片の集団における型決定可能な遺伝子座の検出で用いる各粒子は関連した捕獲
プローブを含むことができる。しかしながら、所望であれば、1つ以上の粒子を、捕獲プ
ローブを含有子内粒子のアレイまたは集団に含めることができる。捕獲プローブは、型決
定可能な遺伝子座等の標的配列を有する核酸に直接的にまたは間接的に結合するいずれか
の分子または材料であり得る。捕獲プローブは、例えば、相補的核酸、または配列特異的
に核酸に結合するさらに別の分子にハイブリダイズする配列を有する核酸であり得る。
【0230】
特別な実施形態において、各ビーズまたは他のアレイ位置は、単一タイプの捕獲プロー
ブを有することができる。しかしながら、所望であれば、複数のプローブを各ビーズに結
合させることができる。例えば、ビーズまたは他のアレイ位置は、同一ゲノム断片の異な
る一部分にアニールする1つ以上のプローブを有することができる。上記プローブは隣接
する位置、または捕獲された標的核酸上で相互から分離された位置にアニールすることが
できる。この複数プローブ捕獲実施形態の使用は、唯一のプローブの使用と比較して、検
出の特異性を増加させることができる。かくして、より小さなプローブが望まれる場合、
多数プローブ戦略を使用して、より長いプローブを利用する実施形態と匹敵する特異性を
供することができる。同様に、特定の捕獲プローブを含有する1を超えるマイクロスフィ
アーのサブグループを用いて、本発明におけるゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する
ことができる。かくして、特定のプローブのためのマイクロスフィアーのサブグループの
使用によって、冗長性をアッセイシステムに形成することができる。
【0231】
一部の実施形態において、核酸またはペプチド等のポリマープローブは、ビーズまたは
スライド表面等のアレイで用いる固体支持体上への直接的なモノマーユニットの順次の付
加によって合成することができる。ペプチド、有機部分および核酸の固相合成のための方
法等の、固体支持体上での種々の異なる化学化合物の合成について当該分野で既知の方法
を本発明で用いることができる。別法として、まずプローブを合成し、次いで、固体支持
体に共有結合させることができる。プローブは固体支持体上の官能基に結合させることが
できる。官能性化固体支持体は当該分野で既知の方法により生じさせることができ、所望
であれば、使用者によって、所望の官能性の結合を容易とする表面化学を有するビーズお
よび他の支持体のための一部の商業的供給業者のいずれかから入手することができる。本
発明で有用な例示的表面化学は、限定されるものではないが、脂肪族および芳香族アミン
等のアミノ基、カルボン酸、アルデヒド、アミド、クロロメチル基、ヒドラジド、ヒドロ
キシル基、スルホネートまたはスルフェートを含む。所望であれば、プローブは化学的リ
ンカーを介して固体支持体に結合させることができる。そのようなリンカーは、例えば、
安定な結合、可逆的結合、十分な柔軟性を提供して、検出すべき型決定可能な遺伝子座を
有するゲノム断片との望まれる相互作用を可能とし、または望ましくない結合反応を回避
する特徴を有することができる。ポリマープローブを固体支持体に結合させるために本発
明で用いることができるさらなる例示的方法は、Pease et al.,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 91(11):5022−5026(1994)
; Khrapko et al.,Mol Biol(Mosk)(USSR)25:
718−730(1991);Stimpson et al.,Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 92:6379−6383(1995) またはGuo e
t al.,Nucleic Acids Res.22:5456−5465(199
4)に記載されている。
【0232】
一般に、アレイのアレイは一部の方法のうちいずれかで配置することができる。特別な
実施形態において、後により十分記載するように、1構成要素システムを用いることがで
きる。すなわち、マイクロタイタープレート等の複数のアッセイ位置を有する第一の基材
は、各アッセイ位置が個々のアレイを含むように配置させることができる。かくして、ア
ッセイ位置およびアレイ位置は同一とすることができる。例えば、マイクロタイタープレ
ートのプラスチック材料は、アッセイウェルの各々の底部に複数のビーズアレイを含むよ
うに形成することができる。次いで、本発明の捕獲プローブを含有するビーズを、後によ
り十分に記載するように、各アッセイ位置におけるビーズウェルに負荷することができる
。
【0233】
別法として、2構成要素システムを用いることができる。この実施形態においては、個
々のアレイを第二の基材上に形成することができ、第二の基材は、次いで、第一のマイク
ロタイタープレート基材にフィッティングさせ、または浸漬させることができる。特別な
実施形態は、捕獲プローブを含有するビーズを繊維光学束の末端に負荷するように、一般
には、各個々の繊維の1つの表面にエッチングされたビーズウェルを備えた個々のアレイ
としての繊維光学束を利用する。上記複合アレイは、かくして、マイクロタイタープレー
トのウェル内にフィットするよう配置された多数の個々のアレイを含むことができる。
【0234】
したがって、本発明は、複数のアレイ位置を有する表面を持つ少なくとも第一の基材を
有する複合アレイを提供する。アレイ様式で複数の候補剤を有する種々のアレイのいずれ
も本発明で用いることができる。本発明で用いられるアレイのサイズは、プローブ組成お
よびアレイの所望の使用に応じて変化させることができる。何百万に対する約2つの異な
るプローブを含有するアレイを作成することができ、非常に大きな繊維光学アレイが可能
である。一般には、アレイは、平方cm当たり2から10億以上と多くのアレイ位置を有
することができる。アレイの位置は、例えば、それに対してプローブまたは同様なプロー
ブの集団を結合させる表面の領域、または粒子とすることができる。粒子の場合には、そ
のアレイ位置は、フローサイトメーターを通る流れ等の流体試料中の1つ以上の他の参照
粒子の位置と比較して、それに対してそれが結合または関連する基材上の固定された座標
、または相対的座標であり得る。例えば、約10,000,000アレイ位置/cm
2〜
約2,000,000,000アレイ位置/cm
2、あるいは約100,000,000
アレイ位置/cm
2〜約1,000,000,000アレイ位置/cm
2を有するものを
含めた、非常に高密度のアレイは本発明で有用である。例えば、約100,000アレイ
位置/cm
2〜10,000,000アレイ位置/cm
2、または約1,000,000
アレイ位置/cm
2〜約5,000,000アレイ位置/cm
2の範囲のものを含めた高
密度アレイを用いることもできる。本発明で有用な中密度アレイは約10,000アレイ
位置/cm
2〜約100,000アレイ位置/cm
2、または約20,000アレイ位置
/cm
2〜約50,000アレイ位置/cm
2の範囲とすることができる。低密度アレイ
は、一般には、10,000粒子/cm
2未満であり、約1,000アレイ位置/cm
2
〜約5,000アレイ位置/cm
2は特別な実施形態で有用である。1,000未満のア
レイ位置/cm
2、約10アレイ位置/cm
2〜約1000アレイ位置/cm
2、または
約100アレイ位置/cm
2〜約500アレイ位置/cm
2を有する非常に低密度なアレ
イも一部の適用で有用である。本発明の方法は、例えば、1つまたは少数の遺伝子座を検
出するべき実施形態においてアレイ様式で実行する必要はない。所望であれば、例えば、
異なるまたは同一の組成を有する基材を含めた多数の基材を有するアレイを用いることが
できる。かくして、例えば、大きなアレイは複数のより小さな基材を含むことができる。
【0235】
一部の適用では、個々のアレイの数は使用するマイクロタイタープレートのサイズによ
って設定され;かくして、96ウェル、384ウェルおよび1536ウェルのマイクロタ
イタープレートは、96、384および1536の個々のアレイを含む複合アレイを利用
する。当業者によって理解されるように、各マイクロタイターウェルは個々のアレイを含
む必要はない。複合アレイは、同一、同様または異なる個々のアレイを含むことができる
ことに注意すべきである。例えば、96の同様なアレイを有する複合アレイを、96の異
なる試料に関して同一の2,000の型決定可能な遺伝子座の存在または不存在を決定す
るのが望ましい適用で用いることができる。別法として、各々が2,000の異なるプロ
ーブを備えた96の異なるアレイを有する複合アレイを、単一試料に関して192,00
0の型決定可能な遺伝子座の存在または不存在を決定するのが望ましい適用で用いること
ができる。マイクロタイターフォーマットのアレイの列、行または他の部分が同一である
別の組み合わせを、例えば、冗長性が望まれる場合に用いることができる。当業者によっ
て理解されるように、システムを配置させるのに種々の方法がある。加えて、アレイのラ
ンダムな性質は、ビーズの同一集団を2つの異なる表面に加えることができ、その結果、
実質的に同様であるが、恐らくは同一ではないアレイが得られることを意味することがで
きる。
【0236】
本発明のアレイで用いられる基材は、区別される個々の部位を含むように修飾すること
ができ、かつ少なくとも1つの検出方法に使用できるいずれかの材料で作成することがで
きる。粒子のアレイを用いる実施形態においては、1つ以上のタイプの粒子と結合または
関連できる材料を用いることができる。有用な基材は、限定されるものではないが、ガラ
ス;修飾されたガラス;官能性化ガラス;アクリル、ポリスチレンおよびスチレンおよび
他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、
テフロン(登録商標)等のようなプラスチック;および多糖;ナイロン;ニトロセルロー
ス;樹脂;シリカ;ケイ素または修飾されたケイ素等のシリカ−ベーベースの材料;炭素
;金属;無機ガラス;光ファイバー束、または種々の他のポリマーのいずれかを含む。有
用な基材は、例えば、所望の検出波長のエネルギーに対して不透明であり、および/また
は所望の検出波長においてそれ自己認識可能に蛍光を発しないことによって、光学検出を
可能とするものを含む。
【0237】
一般に、本発明のアレイで用いる基材は平坦なまたは平面状の表面を有する。しかしな
がら、基材の他の配置も同様に用いることができる。例えば、三次元配置は、ビーズアレ
イ等のアレイを、アレイ位置への試料アクセス、および検出用の共焦点顕微鏡の使用を可
能とする、プラスチックのブロックコポリマー等の多孔性材料に埋め込むことによって用
いることができる。同様に、アレイの位置はフロー−スルー試料分析のためにチューブの
内側表面に置くことができる。本発明で有用な例示的基材は、限定されるものではないが
、光ファイバー束、ガラス等の平坦で平面状の基材、ポリスチレンまたは他のプラスチッ
クおよびアクリルを含む。
【0238】
基材の表面は、相互に物理的に分離された複数の個々のアレイ位置を含むことができる
。例えば、物理的分離は、マイクロタイタープレートにおけるように、アレイウェルの存
在によることができる。物理的にアレイ位置を分離するのに用いることができる他のバリ
アーは、例えば、水性溶媒の誘導を妨げる疎水性領域、または無極性または疎水性溶媒の
流動を妨げる親水性領域を含む。
【0239】
相互から物理的に分離されたアレイ位置はアッセイ位置を形成する。アッセイ位置は、
プローブのアレイを含むことができ、流体がプローブに接触するように、流体を保持する
ための容器を供することができる。例えば、ゲノム断片を含有する流体を、本明細書中に
記載された、または当該分野で公知のハイブリダイゼーション条件下でプローブと接触さ
せることができる。同様に、洗浄流体、または他の試薬または本明細書中に記載した分析
物を含有する流体を、アレイ位置に配置した場合にプローブのアレイと接触させることが
できる。アレイ位置は、所望であれば、包むことができる。例示的な包みは、限定される
ものではないが、カセット、包んだウェル、またはバスケットもしくは膜双方によって包
まれたスライド表面を含む。本発明で有用なさらなる例示的包みは、WO 02/003
36、米国特許出願公開02/0102578、または異なるタイプのアレイに関して本
明細書中で先に引用した刊行物に記載されている。
【0240】
また、アッセイ位置は、フローセルの内部とすることができる。プローブのアレイはフ
ローセルの内部表面に配置することができ、流体はセルに流入することによって導入され
る。本発明で有用なフローセルはキャピラリーギャップフローセルであり得る。キャピラ
リーギャップフローセルは、流体を毛細管作用によってセルに保持することができ、引き
続いて、第二の流体により開口に作用する正圧によって置き換えることができる。正圧は
、例えば、重力流動によって供することができる。本発明で有用な例示的キャピラリーフ
ローセルは、BeadChipアレイ(Illumina,Inc.,San Dieg
o CA)およびCoverplate(ThermoShandon,Inc.,Pi
ttsburgh,PH)等のスライド−ベースのアレイの表面の間に形成されたもので
ある。さらに別の有用なキャピラリーギャップフローセルは、Tecan(Maenne
dorf,Switzerland)から入手可能なシステムを通じるGenePain
t
TM流動で用いるものである。したがって、本発明は、キャピラリーギャップフローセ
ルにおいて、基材結合プローブ等の核酸の酵素的修飾の方法を提供する。当業者であれば
、キャピラリーフローセルは、当該分野で既知の種々のアレイで形成して、同様な流体流
動能力を達成することができることを理解するであろう。
【0241】
上記部位は、規則的な設計または配置等のパターンとすることができるか、あるいは上
記部位はパターン化しないものとすることができる。部位の規則的パターンの非限定的利
点は、上記部位が好都合には、X−Y座標平面にアドレスさせることである。この意味に
おけるパターンは、ビーズの高密度を基材上で可能とするもの等の反復ユニットセルを含
む。
【0242】
特別な実施形態において、アレイ基材は、一般には、米国特許出願第08/944,8
50号、米国特許第6,200,737号;WO9840726およびWO985078
2に記載されているように、光ファイバー束またはアレイであり得る。また、本発明で有
用なのは、共軸配置され、それらの長さに沿って接合される区別される個々の繊維光学ス
トランドを有する予め形成された単位繊維光学アレイである。他の繊維光学フォーマット
と比較した予め形成された単位繊維光学アレイの区別される特徴は、上記繊維が個々には
物理的に操作できないことであり;すなわち、1つのストランドは、一般には、さらに別
の繊維ストランドからその長さに沿っていずれかの点で物理的に分離できない。
【0243】
本発明のアレイの部位は区別される部位である必要はない。例えば、いずれかの位置に
おける粒子の結合を可能とする、例えば、接着剤または化学的官能性の均一な表面を用い
ることが可能である。すなわち、アレイ基材の表面は、それらの部位が他の部位と連続し
ているか連続していないかに拘らず、個々の部位におけるマイクロスフィアーの結合また
は解剖を可能とするように修飾することができる。かくして、基材の表面を修飾して単一
のビーズのみが上記部位と関連するように区別される部位を形成することができるか、あ
るいは別法として、ビーズが種々の数にてランダムに集団形成する部位をおえるように上
記表面を修飾することができる。
【0244】
特別な実施形態において、基材の表面は、基材の表面にウェルまたは窪みを含むように
修飾することができる。これは、限定されるものではないが、写真印刷、スタンピング技
術、成型技術またはミクロエッチング技術を含めた種々の技術を用いて成すことができる
。当業者に理解されているように、用いる技術は基材の組成および形状に依存するであろ
う。複合アレイのための基材がマイクロタイタープレートである場合、成型技術を利用し
て、アレイウェルのそこにビーズウェルを形成することができる。
【0245】
特別な実施形態においては、物理的な変化を基材の表面でなして、アレイ位置を生じさ
せることができる。例えば、基材が繊維光学束である場合、基材の表面は、一般には、米
国特許第6,023,540号および第6,327,410号に記載されているように、
繊維束の末端とすることができる。この実施形態において、ウェルは、一部の個々の繊維
を有する繊維光学束の末端側または遠位端部に作成することができる。この実施形態にお
いては、個々の繊維のコアは、小さなウェルまたは窪みが繊維の1つの端部に形成される
ように、クラッドに関してエッチングすることができる。ウェルの深さは、異なるエッチ
ング条件を用いて変化させて、特定のサイズまたは形状の粒子を収容することができる。
この実施形態においては、一般には、ウェルは、加えて、粒子の共有結合のために官能性
化することができるが、マイクロスフィアーはウェルに非共有結合的に関連される。後に
さらに詳細に記載するように、架橋剤を用いることができるか、あるいは粒子上にフィル
ムまたは膜等の物理的バリアーを用いることができる。
【0246】
特別な実施形態において、基材の表面は、プローブまたはプローブが付着した粒子を共
有結合により、または共有結合にはよらずに付着させるのに有用な化学的に修飾された部
位を含むように修飾することができる。この意味における化学的に修飾された部位は、限
定されるものではないが、例えば、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基またはチオール基
を含めた化学的官能基のパターンの付加を含む。そのような基を用いて、対応する反応性
官能基を含有するプローブまたは粒子を共有結合させることができる。他の有用な表面修
飾は、例えば、粒子を結合させるのに用いることができる接着剤のパターンの付加;プロ
ーブまたは粒子の静電気的付着のための荷電基のパターンの付加;適切な条件下での同様
に疎水性または親水性のプローブまたは粒子の付加の結果、ヒドロ親和性を基礎とした部
位への関連がもたらされるように、上記部位を異なって疎水性または親水性とすることが
できる。化学官能基のパターンの付加を含む。
【0247】
一旦マイクロスフィアーが生成したならば、それらは基材に加えてアレイを形成するこ
とができる。アレイは、例えば、ビーズの溶液またはスラリーを、ビーズ用の結合部位を
含む基材に加えることによって作成することができる。ビーズ用のキャリアー溶液はpH
緩衝液、水性溶媒、有機溶媒、または混合物であり得る。基材へのビーズスラリーの曝露
に続き、溶媒を蒸発させ、過剰のビーズを除去することができる。非共有結合方法を用い
、ビーズをアレイ基材に関連させる実施形態においては、ビーズは、基材を粒子の溶液に
曝露し、次いで、例えば、混合物を攪拌または振動させることによってエネルギーを適用
することによって基材に負荷することができる。しかしながら、所望であれば、静的負荷
を用いることもできる。本発明で用いることができるビーズおよび他の粒子をアレイ基材
に負荷するための方法は、例えば、米国特許第6,355,431号に記載されている。
ビーズ負荷は、プローブの修飾に先立って、本明細書中に記載した検出方法で行うことが
できる。別法として、ビーズ負荷は、本発明の方法でゲノム断片のハイブリダイズさせる
ビーズ固定化プローブの修飾後に行うことができる。
【0248】
一部の実施形態においては、例えば、化学的結合を行う場合、プローブ、またはプロー
ブが関連した粒子を非ランダムまたは秩序立ったプロセスで基材に結合させることができ
る。例えば、光活性化可能結合リンカーまたは光活性化可能接着剤またはマスクを用い、
活性化されたアレイ基材に曝露された場合にプローブまたは粒子の規定された集団が規定
された位置におかれるように、アレイ基材上の選択された部位を、結合のために順次に活
性化することができる。
【0249】
別法として、プローブまたはプローブが関連した粒子は基材上にランダムに沈積させる
ことができ、アレイにおけるそれらの位置は解読工程によって決定することができる。こ
れはアレイの使用前、使用中または使用後に行って、本明細書中に記載されたもの等の方
法を用いて型決定可能な遺伝子座を検出することができる。プローブの設置がランダムで
ある実施形態においては、暗号化または解読システムを用いて、アレイ中の各位置におけ
るプローブを突き止め、および/または同定することができる。これは、例えば、米国特
許第6,355,431号に記載されているように、種々の方法のうちのいずれかで行う
ことができる。
【0250】
粒子が用いられる実施形態において、ユニークな光学シグニチャーを粒子に一体化させ
ることができ、これを用いて、化学的官能性または粒子と関連した核酸を同定することが
できる。例示的光学シグニチャーは、限定されるものではないが、ビーズに捕獲されまた
は付着された色素、通常はクロモフォアまたはフルオロフォアを含む。異なるタイプの色
素、異なるタイプの色素の混合物、または異なる濃度の色素、またはこれらの差の組合せ
を本発明における光学的シグニチャーとして用いることができる。本発明で用いることが
できる検出可能なシグニチャーを有する粒子および他の支持体のさらに別の例はCuni
n et al.,Nature Materials 1:39−41(2002);
米国特許第6,023,540号または第6,327,410号;またはWO98407
26に記載されている。この実施形態に従うと、核酸の合成はアレイ上のそれらの設置か
ら分離することができる。かくして、捕獲プローブをビーズ上で合成することができ、次
いで、ビーズをパターン化された表面にランダムに分布させることができる。ビーズはま
ず光学的シグニチャーで暗号化されるので、これは、アレイを後に解読することができる
ことを意味する。かくして、アレイが作成された後、アレイ上の個々のアレイ位置の位置
とそのプローブ同一性との相関を行うことができる。これは、アレイ位置をアレイ上にラ
ンダムに分布させることができることを意味し、これは、一般には、米国特許出願第98
/05025号、第99/14387号、第08/818,199号または第09/15
1,877号に概説されたインサイチュまたは合成スポッティング技術いずれかと比較し
て、本発明の多くの適用において迅速かつ安価なプロセスである。しかしながら、所望で
あれば、インサイチュ合成またはスポッティング技術によって作成されるアレイを本発明
で用いることができる。
【0251】
アレイの全ての部位がプローブまたは粒子を含む必要は無いことに注意すべきである。
かくして、アレイは、空である基材上の1つ以上のアレイ位置を有することができる。一
部の実施形態において、アレイ基材は、1を超えるビーズまたはプローブを含有する1つ
以上の部位を含むことができる。
【0252】
当業者によって理解されるように、ランダムアレイは必ずしも解読される必要はない。
この実施形態において、ビーズまたはプローブはアレイ基材に結合させることができ、検
出アッセイを行うことができる。特定の型決定可能な遺伝子座を持つプローブ−断片ハイ
ブリッドの存在に対する陽性シグナルを有するアレイ位置をマークし、またはそうでなけ
れば、それを同定して、他のアレイ位置からそれらを区別し、または分離することができ
る。例えば、ビーズが蛍光色素で標識された適用では、陽性または陰性ビーズについての
アレイ位置は光脱色によってマークすることができる。さらなる例示的マークは、限定さ
れるものではないが、適切な波長の光での照射に際して、標識または基材でプローブまた
は粒子を誘導体化することができる光活性化または光架橋性基によって蛍光形態に変換さ
れる非蛍光前駆体を含む。
【0253】
特別な実施形態において、冗長性の一部のレベルを本発明で用いるアレイに内蔵するこ
とができる。アレイへの内臓冗長性は、データについての信頼性および感度の実質的上昇
の定量的な見積もりをなす能力を含めた、一部の非限定的利点を与えることができる。当
業者によって理解されるように、アレイに内蔵することができる少なくとも2つのタイプ
の冗長性があり;異なる化学的官能性を有する以外は、多数の同一プローブの使用または
同一標的に向けられた多数のプローブの使用。例えば、核酸の検出では、センサーの冗長
性は、プローブ等の同一の結合リガンドを有するビーズ等の複数のセンサーエレメントを
利用する。標的冗長性は同一標的に対する異なるプローブを備えたセンサーエレメントを
利用し:1つのプローブは標的の最初の25塩基に及ぶことができ、第二のプローブは標
的の第二の25塩基に及ぶことができる。これらのタイプの冗長性のいずれかまたは双方
をアレイに内蔵することによって、種々の統計学的数学解析を大きなデータ組の分析で行
うことができる。本発明で用いることができる冗長なセンサーエレメントおよび標的エレ
メントで解読するための他の方法は、例えば、米国特許第6,355,431号に記載さ
れている。
【0254】
プローブ−断片ハイブリッドの型決定可能な遺伝子座は、本明細書中において先に記載
された方法を用いてアレイ上で検出することができる。特別な実施形態において、プロー
ブ冗長性を用いることができる。この実施形態において、同一の配列を有する複数のプロ
ーブをアレイに存在させる。かくして、各々が同一のプローブを備えた複数のビーズを有
する複数のサブグループをアレイで存在させることができる。与えられたアレイに対して
一部の同一のプローブを用いることによって、各アレイ位置からの光学シグナルを組み合
わせて、統計学的方法を用いて分析することができる。かくして、冗長性は、所望な場合
、データの信頼性を有意に増大させることができる。
【0255】
当業者によって理解されるように、サブグループ中の同一のプローブの数は特定のアレ
イの適用および使用で変化するであろう。一般に、例えば、約5、10、20、50また
は100の同一のプローブまたは粒子を含めた、2〜1000のいずれかの同一のアレイ
位置を用いることができる。
【0256】
一旦得られたならば、複数のアレイ位置からのプローブ−断片ハイブリッドを示すシグ
ナルを、ベースライン調整、平均化、標準偏差解析、分布およびクラスター解析、信頼区
間解析、平均テスト等を含めた種々の方法で操作し、分析することができる。データ操作
のさらに別の記載は後に記載し、多くの場合、ビーズアレイで検出されたプローブ−断片
ハイブリッドに関して例示される。当業者であれば、同様な操作を、例えば、他のアレイ
位置が後の例におけるビーズと同様に処理されるものを含めた、プローブ−断片ハイブリ
ッドの他の集団で行うことができる。
【0257】
所望により、アレイまたはプローブ−断片ハイブリッドの他の混合物から検出された複
数のシグナルをベースライン調整することができる。例示的手法において、光学シグナル
を調整して、全てのデータ点から整数1.0を差し引くことによって、0.0の値におい
て開始することができる。これを投与することは、一緒に合計されたランダムな応答シグ
ナルノイズをキャンセルする場合においてさえ、ベースライン−ループデータが0のまま
とする。試料が流体である場合、しかしながら、流体パルス−ループの一時的領域は、試
料パルスに先立って、陽性、陰性または中性いずれかの、応答の特徴的変化を頻繁に呈し
、しばしば、CCDカメラにおける電荷形成による最初の数個のデータ点におけるドリフ
トに関連するノイズを克服するためにベースライン調整を必要とする。もしドリフトが存
在しなければ、典型的には、各ビーズについての最初のデータ点からのベースラインを、
同一ビーズタイプについての全ての応答データから差し引くことができる。もしドリフト
が観察されれば、各ビーズについての最初の10のデータ点からの平均ベースラインを、
同一のビーズタイプに関して、全ての応答データから差し引くことができる。このベース
ライン調整を適用することによって、複数のアレイ位置の応答を一緒に加えると、それら
は、ベースラインがゼロに止まりつつ増幅させることができる。全てのアレイ位置は試料
に対して同時に応答するので(例えば、試料パルス)、それらは全て正確に同一時点にお
けるパルスを見ているのであり、それらの応答を重ね合わすために必要な登録または調整
はない。加えて、用いるシステムの要件および出力に応じて、当該分野で既知の他のタイ
プのベースライン調整を行うことができる。
【0258】
種々の可能な統計学的解析のいずれかを行って、既知の統計学的パラメータを生じさせ
ることができる。冗長性に基づく分析は既知のものであり、一般には、Freund a
nd Walpole,Mathematical Statistics,Prent
ice Hall Inc.,New Jersey(1980)等のテキストに記載さ
れている。
【0259】
所望であれば、シグナルの合計は特定の時点において全ての強度の値を加えることによ
って行うことができる。特別な実施形態において、シグナルは一部の時点において合計す
ることができ、それにより、全てのビーズ応答の合計よりなる一時的応答を生じさせる。
これらの値はベースライン−調整することができるか、または生である。シグナル合計は
、リアルタイムにて、またはデータ獲得後データ換算および分析の間に行うことができる
。1つの実施形態において、シグナル合計は、光学応答データが収集された後に、市販の
スプレッドシートプログラム(Excel,Microsoft,Redmond,Wa
sh.)で行うことができる。本発明で用いることができるさらなる例示的シグナル合計
方法は米国特許第6,355,431号に記載されている。
【0260】
特別な実施形態において、統計学的分析を行って、限定されるものではないが、分布ま
たはクラスター分析を含めた技術を用いることによって、特定のデータ点がサブグループ
内に統計学的有効性を有するか否かを見積もることができる。これを行って、そうでなけ
れば結果を非対称としかねず、いずれかの特定の実験のシグナル−対−ノイズ比率を増加
させかねない孤立値を統計学的に捨てることができる。データ点が統計学的有効性を有す
るか否かを判断するための有用な方法は、例えば、米国特許第6,355,431号に記
載されており、限定されるものではないが、信頼区間、平均テスト、または分布解析の使
用を含む。
【0261】
特別な実施形態は、シグナル型決定可能な遺伝子座に向けられるが、それらの現実の配
列は異なる複数の核酸プローブを利用する。例えば、単一標的ゲノム断片は、各々が異な
るプローブを有する2つ以上のアレイ位置を有することができる。これは、非特異的結合
相互作用は特定の配列で起こる適用においてあるレベルの信頼性を付け加えることができ
る。従って、冗長な核酸プローブは、重複し、隣接し、または空間的に分離された配列を
有することができる。
【0262】
本発明の方法は、さらに、核酸プローブのアレイをシャペロンプローブと接触させる工
程を含むことができる。シャペロンプローブは、ゲノム断片を検出または捕獲するのに用
いられるプローブについてのハイブリダイゼーション部位に対して近位にある部位におけ
る標的ゲノム断片にハイブリダイズする核酸である。シャペロンプローブは、捕獲工程ま
たは検出工程の前または間に加えて、ゲノム断片に対する捕獲プローブまたは検出プロー
ブのハイブリダイゼーションに好都合とすることができる。シャペロンプローブは、適切
なテンプレートストランドが、検出または捕獲プローブにアニーリングするのに利用でき
るように、ゲノム断片の相補的ストランドの関連を妨げることによって検出または捕獲プ
ローブのハイブリダイゼーションに好都合とすることができる。
【0263】
シャペロンプローブは、例えば、本発明で有用な他の核酸に関して本明細書中で先に記
載されたものを含めた種々の長さまたは組成のいずれかを有することができる。シャペロ
ンプローブは、さらに別のプローブについてのアニーリング部位に直ぐに隣接した、また
は他のプローブについてのアニーリング部位から分離された部位における標的配列にハイ
ブリダイズすることができる。プローブの間のギャップは長さが1以上、2以上、3以上
、5以上、10以上のヌクレオチドまたはそれよりも長くすることができる。シャペロン
プローブは、例えば、標的ゲノム断片のモル当たりシャペロンプローブの約100モル、
10モル、5モル、2モル、1モル、0.5モルまたは0.1モルの比率を含めた、さら
に別のプローブのアニーリングに有効に好都合であることが判明するいずれかの化学量論
的濃度にて供することができる。
【0264】
本発明の方法は、さらに、核酸に結合した検出可能な標識の数が増大するシグナル増幅
の工程を含むことができる。1つの実施形態において、シグナル増幅工程は、特定の受容
体に対する親和性を有するリガンドで標識された核酸を供することを含むことができる。
リガンドに結合することができる1つ以上の部位を有する最初の受容体を、上記受容体お
よびリガンド−標識核酸の間で複合体が形成される条件下で標識された核酸と接触させる
ことができる。さらに、受容体を、受容体に対する親和性を有する増幅試薬と接触させる
ことができる。増幅試薬、例えば、リガンド、リガンドの模倣体、または第一の受容体に
対する親和性を有する第二の受容体であり得る。増幅試薬は、今度は、リガンド受容体お
よび増幅試薬の間でマルチマー複合体が形成できるように、リガンドで標識することがで
きる。次いで、例えば、受容体または増幅試薬上の検出可能な標識の存在を検出すること
によって、マルチマー複合体の存在を検出することができる。シグナル増幅工程に含まれ
る成分は、検出可能な複合体が形成される限り、いずれの順序で加えることもできる。さ
らに、本明細書中で先に記載したもの等の他の結合部分および結合パートナー対をシグナ
ル増幅で用いることができる。
【0265】
図10の例示的シグナル増幅スキームに示すように、シグナル増幅は、ストレプトアジ
ビンフィコエリスリン(SAPE)によって標識された核酸およびビオチニル化抗SAP
E抗体を用いて行うことができる。1つの実施形態において、3工程プロトコルを使用す
ることができ、そこでは、ビオチンを取り込むように修飾されている整列させたプローブ
をまずストレプトアビジン−フィコエリスリン(SAPE)と共にインキュベートし、続
いて、ビオチニル化抗ストレプトアビジン抗体と共にインキュベートし、最後に、再度S
APEと共にインキュベートする。このプロセスはカスケーディング増幅サンドイッチを
作り出す。というのは、ストレプトアビジンは複数の抗体結合部位を有し、抗体は複数の
ビオチンを有するからである。当業者であれば、本明細書中の教示から、アビジン、アビ
ジンの修飾されたバージョン、または抗体等の他の受容体を増幅複合体で用いることがで
き、Cy3、Cy5または本明細書中で先に記載されたもの等の異なる標識を用いること
ができることを理解するであろう。本発明で用いることができるさらなる例示的シグナル
増幅技術および成分は、例えば、米国特許第6,203,989号B1に記載されている
。
【0266】
本発明の方法は、さらに、プローブの修飾に続き、および修飾されたプローブの検出に
先立ち、プローブ−断片ハイブリッドからゲノム断片を除去する工程を含むことができる
。低塩、ホルムアミド等の有機溶媒、熱、または他の編成剤への曝露等の塩基−対合相互
作用を破壊するための当該分野で公知の方法を用いて断片−プローブハイブリッドを変性
することによってゲノム断片を取り出すことができる。上記方法で有用なハイブリッド核
酸を変性するための例示的方法はSambrook et al.,前掲(2001)ま
たはAusubel et al.,前掲(1998)に記載されている。ゲノム断片は
変性に先立って洗浄することができる。別法として、ゲノム断片は検出の間に変性条件下
で存在させることができる。
【0267】
本発明の方法は、さらに、検出される少なくとも1つの型決定可能な遺伝子座を同定す
るレポートを生じさせる工程を含むことができる。検出された型決定可能な遺伝子座は、
例えば、配列、染色体上の位置によって、または遺伝子座の認識される名称によって直接
的に同定することができる。別法として、上記レポートは、引き続いて分析して、1つ以
上の検出された遺伝子座を同定することができるフォーマットにて、本発明の方法から得
られたデータを含むことができる。
【0268】
かくして、本発明は、さらに、本発明の方法によって得られた少なくとも1つの結果の
レポートを提供する。本発明のレポートは、例えば、電子伝達、コンピュータリーダブル
メモリー、コンピュータグラフィックユーザーインターフェースへの出力、コンパクトデ
ィスク磁気ディスクまたはペーパーを含めた種々の認識可能なフォーマットのいずれかと
することができる。ヒト、機械または双方の間の通信に適した他のフォーマットを本発明
のレポートで用いることができる。
【0269】
本発明は、さらに、ゲノム断片の固相固定化された表示的集団を含めたアレイを提供す
る。ゲノム断片の表示的集団は、本明細書中にて先に記載されたもの等の方法を用いて生
じさせ、固定化することができる。例えば、ビオチンまたは反応性架橋剤等の二次標識を
有するプライマーを用いてゲノムを増幅し、引き続いてアビジン、または架橋基と反応性
の化学部位等の固相受容体との相互作用を介して固定化することができる。ゲノム断片の
固相固定化された表示的集団は、高い、低い、または中程度の複雑性等の本明細書中にて
先に記載した特徴の1つ以上を有することができる。
【0270】
ゲノム断片の固相固定化された表示的集団は、本発明の方法を用いて直接的に質問する
ことができる。一般には、検出アッセイおよび方法は、固定化されたプローブおよび可溶
性ゲノム断片標的に関して上記にて例示されている。当業者であれば、ゲノム断片の表示
的集団が固定化された実施形態において、しかしながら、上記方法は、上記例におけるプ
ローブおよび上記例における標的として処理されたプローブを置き換えるゲノム断片で同
様に行うことができるのを理解するであろう。
【0271】
固相ゲノムDNA標的の使用は、例えば、伸長または連結技術において、プライマーの
その後の酵素修飾の前にいずれかの貧弱にハイブリダイズされた、または過剰の検出プロ
ーブが洗浄除去することによって、高度なアッセイ多重化の利点を供することができる。
プライマー−ダイマー形成によって悪影響される適用は、検出に先立ってプライマーダイ
マーを除去することによって改善することができる。また、固相標的DNAフォーマット
は速いハイブリダイゼーションキネティックスを可能とすることができる。というのは、
プライマーは、例えば、約100pMよりも大きな比較的高い濃度にてハイブリダイズす
ることができるからである。
【0272】
ゲノムDNAを増幅するための本明細書中に記載された方法は、比較的少量のゲノムD
NAが大量に増幅されるのを可能とする。大量のゲノムDNAの固相への固定化は、その
後の増幅の必要性なくして、例えば、プライマー伸長または連結−ベースのアッセイにお
いて型決定可能な遺伝子座が直接的に問い合わせることができるようにする。増幅の排除
は、プレ−増幅−ベースの検出を用いる場合にしばしば利用可能なものよりも頑強かつ定
量的遺伝子型分類に導くことができる。
【0273】
固相ゲノムDNA標的を用いるさらに別の利点は、それを再度用いることができること
である。かくして、固定化されたゲノム標的は、異なる組の核酸プローブで反復して用い
ることができる保管試料であり得る。さらに、一部の適用において、固定化されたgDN
Aを用いることによってキャリーオーバー汚染を低下させることができる。というのは、
増幅は、SNP特異的検出反応前に起こるからである。本発明の方法を行うための上記し
た肯定は、説明のために特定の順序で記載したことは理解されるであろう。当業者であれ
ば、上記工程は、所望の結果が達成される限り、種々の順番のうちいずれかで行うことが
できるのを理解するであろう。例えば、上記した反応の成分は同時に、または順次に、記
載した結果の1つ以上を生じるにおいて効果的である順番で加えることができる。加えて
、本明細書中に記載された反応は、例えば、塩、緩衝液、中性蛋白質、アルブミン、洗剤
等を含めた種々の他の試薬を含めることができる。そのような試薬を加えて、最適なハイ
ブリダイゼーションおよび検出を容易とし、非特異的な、またはバックグラウンド相互作
用を低下させ、または使用する他の試薬を安定化することができる。また、試料調製方法
および標的の純度に応じて、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等の
本発明の方法の効率をそうでなければ改善する試薬を用いることができる。当業者であれ
ば、そのような結果を達成するための適切な試薬を知っており、またはそれを決定するこ
とができる。
【0274】
また、ゲノムDNAの型決定可能な遺伝子座の検出に関して本明細書中に例示した方法
のいくつかを、遺伝子発現分析に適用することができる。特に、プライマー伸長方法を用
いるプローブ核酸のオン−アレイ標識のための方法をRNAまたはcDNAの検出で用い
ることができる。プローブ−cDNAハイブリッドは、本明細書中にて先に記載したポリ
メラーゼ−ベースのプライマー伸長方法によって検出することができる。別法として、ア
レイ−ハイブリダイズドmRNAでは、逆転写酵素−ベースのプライマー伸長を使用する
ことができる。遺伝子発現分析のためのオン−アレイ標識の一部の非限定的利点がある。
標識コストは劇的に減少させることができる。というのは、使用する標識されたヌクレオ
チドの量は、捕獲された標的を標識するための方法と比較して実質的に少ないからである
。第二に、交差−ハイブリダイゼーションは劇的に低下させることができる。というのは
、標的はハイブリダイズしなければならないと共に、プライマー伸長反応において標識取
り込みのためのその3’末端における完全な相補性を含まなければならないからである。
同様に、ハイブリダイズしたcDNAまたはmRNAの検出のために、OLAまたはGo
ldenGate
TMアッセイを用いることができる。後者の2つの方法は、典型的には
、問い合わせられた各遺伝子座についての外因性核酸の付加を必要とする。しかしながら
、そのような方法は、プライマー伸長の使用が許容できないレベルの異所性伸長に導く適
用においては有利であり得る。
【0275】
また、プライマー伸長での上記したオン−アレイ標識を用いて、標的cDNAまたはm
RNAのスプライス接合と合致するように3’プローブ末端を設計することによって別の
スプライス部位をモニターすることもできる。上記末端は、特定の遺伝子についての全て
の関連する可能なアクセプタースプライス部位をユニークに同定するように配置すること
ができる。例えば、最初の45の塩基を完全にドナーエクソン内に存在するように選択す
ることができ、最後の5つの3’−塩基は、最初の45の塩基に隣接してスプライスされ
るようになる可能なスプライスアクセプターエクソンの組内に存在させることができる。
【0276】
型決定可能な遺伝子座を同定するための本明細書中に先に記載された方法におけるgD
NAの代わりにcDNAまたはmRNAの標的を用いることができる。例えば、cDNA
またはmRNAの標的は、遺伝子型分類アッセイで用いることができる。遺伝子型分類c
DNAまたはmRNAは、対立遺伝子特異的発現の差が、例えば、「定量的遺伝子型分類
」、または二対立遺伝子SNPマーカーにおける1つの対立遺伝子vs他の対立遺伝子の
割合の測定を介してモニターできるようにする。対立遺伝子発現の差は、例えば、転写速
度、転写体プロセッシングまたは転写体安定性の差から由来することができる。そのよう
な効果は、調節領域、プロモータ、スプライス部位またはスプライス部位モディファイヤ
ー領域または他のそのような領域における多型(または突然変異)に由来することができ
る。加えて、メチル化等のクロマチンにおけるエピゲノミック変化もまた対立遺伝子発現
の差に寄与することもできる。かくして、上記方法を用いて、発現された生成物において
そのような多型または突然変異を検出することができる。
【0277】
「正規化された」表示は、cDNA表示上にユニバーサルPCRテールを置くことに基
づいたもの等のいくらかの方法のいずれかによってcDNAまたはmRNA標的から作り
出すことができる(例えばbRADY,Yeast,17:211−7(2000)参照
)。上記正規化プロセスを用いて、集団中の各型決定可能な遺伝子座が比較的同一のコピ
ー数で存在するcDNA表示を作り出すことができる。これは、cDNA試料の定量的遺
伝子型分類プロセスを助けることができる。というのは、アレイ−ベースのプライマー伸
長アッセイからのシグナル強度は、正規化プロセスなくしてよりも均一だからである。
【0278】
さらなる実施形態において、本発明の方法を用いて、mRNAまたはcDNA試料を特
徴付けることができる。mRNAまたはcDNA試料を本発明の方法における標的試料と
して用いることができ、型決定可能な遺伝子座の表示的組を検出することができる。型決
定可能な遺伝子座の表示的組は、mRNAまたはcDNA試料の診断または特徴となるよ
うに選択することができる。例えば、特定の型決定可能な遺伝子座のレベルを試料におい
て検出し、これらの遺伝子座についての参照レベルと比較することができ、上記参照レベ
ルは、試料は所望の遺伝子をカバーする発現された配列を含む程度を示す。かくして、上
記方法を用いて、mRNAまたはcDNA試料の量または特定の適用についてのその適切
性を決定することができる。
【0279】
ビーズ等の典型的なアレイ位置は、比較的密にパッキングされたプローブ核酸の大きな
集団を含むことができる。多くの条件下での標的核酸のハイブリダイゼーションに続き、
検出アッセイにおけるプローブの一部のみが相補的標的で占められるであろう。そのよう
な条件下では、密にパッキングされたプローブは、異所性プライマー伸長に感受性である
プローブ間構造を形成する可能性がある。さらに、
図13Aに示すように、自己相補性配
列を有するプローブもまた、異所性プライマー伸長に感受性である構造を検出することが
できる。異所性伸長は、伸長反応の間における、プローブ間またはプローブ内ハイブリッ
ドにおける一方または双方のプローブの修飾をいう。異所性伸長は、アレイに対するハイ
ブリダイズされた標的の存在にかかわらず起こり得る。
【0280】
従って、本発明は、プライマー伸長アッセイにおいてプローブの異所性伸長を阻害する
方法を提供する。上記方法は、(a)複数のプローブ核酸を、プローブ−標的ハイブリッ
ドが形成される条件下で複数の標的核酸と接触させ;(b)上記複数のプローブ核酸を、
プローブ−異所性伸長阻害剤ハイブリッドが形成される条件下で異所性伸長阻害剤と接触
させ;次いで、(c)プローブ−異所性伸長阻害剤ハイブリッドにおけるプローブと比較
して、プローブ−標的ハイブリッドにおけるプローブを選択的に修飾する工程を含む。
【0281】
本発明で有用な異所性伸長阻害剤は、一本鎖核酸プローブに結合することができ、それ
により、プローブの第二のプローブへのハイブリダイゼーションを妨げるいずれの剤でも
あり得る。例示的剤は、限定されるものではないが、一本鎖核酸結合蛋白質(SSB)、
核酸アナログを含めた上記したもの等の核酸、小分子を含む。そのような剤は、ヌクレオ
チド配列にかかわらず、二本鎖核酸よりも一本鎖核酸に対して優先的に結合する一般的特
性を有する。本発明で用いることができる例示的一本鎖核酸結合蛋白質は、限定されるも
のではないが、Eco SSB、T4 gp32、T7 SSB、L4 SSB、Ad
SSB、UP1等、および例えば、Chase et al.,Ann.Rev.Bio
chem.,55:103−36(1986);Coleman et al.,CRC
Critical Revues in Biochemistry,7(3):24
7−289(1980)および米国特許第5,773,257号に記載された他のものを
含む。上記したプライマー伸長アッセイのいずれかにおける異所性伸長は、本発明の方法
を用いて阻害することができる。プライマー伸長アッセイにおけるプローブの異所性の伸
長を阻害するための方法の例示的実施形態は
図13に示し、後にさらに詳細に記載する。
【0282】
図13Bに示すように、異所性伸長は、SSB、T4遺伝子32等等の一本鎖核酸に選
択的に結合する蛋白質または他の剤と共にプローブの集団をインキュベートすることによ
って最小化することができる。上記剤または蛋白質は、それが、標的核酸にハイブリダイ
ズせず、それにより、それらの自己−アニーリングおよびその後の伸長を妨げる一本鎖プ
ローブをコート条件下で加えることができる。一本鎖プローブに結合する蛋白質等の剤は
、プライマー伸長反応に先立って、またはその間に、例えば、アニーリング工程に先立っ
て、またはその間に、プローブの集団に加えることができる。
【0283】
また、1つ以上のブロッキングオリゴヌクレオチド(オリゴ)を用いて異所性発現を低
下させることもできる。
図13Cに示すように、プローブの3’末端に相補的なブロッキ
ングオリゴを、それが、標的核酸にハイブリダイズしていないプローブにハイブリダイズ
する条件下で加えることができる。一部のプローブが存在する適用においては、プローブ
の3’末端にアニールするように設計された複数のブロッキングオリゴヌクレオチドに加
えることができる。プライマー伸長反応に先立って、またはその間に、例えば、アニーリ
ング工程に先立って、またはその間に、1つ以上のブロッキングオリゴをプローブの集団
に加えることができる。
【0284】
図13Dに示すように、プローブは、プライマー伸長アッセイにおいてプライマー伸長
工程で用いられる条件下で伸長できないヘアピン構造を形成することができる相補的配列
な部分で設計することができる。
図13Dに示す例においては、プローブの3’末端はプ
ローブの5’末端にアニールし、5’末端は読むことができるテンプレートに隣接しない
ので、ヘアピンは異所的に伸長できない。プローブは、ヘアピンが、伸長できない3’突
出とで形成されるように、プローブの第二の配列領域に相補的なプローブの3’末端に隣
接する第一の配列領域を有するように設計することができる。ヘアピン構造は、さらに、
それが、プライマー伸長反応のアニーリング工程の条件下で標的核酸へのアニーリングを
阻害しないように設計される。例えば、プローブの2つの領域は、標的ハイブリダイゼー
ションの間に用いられる温度では実質的にアニールしないが、一旦温度が伸長のために低
下すれば、アニールしてヘアピンを形成するようになる相補的配列を有することができる
。
【0285】
異所性伸長を低下させる方法は整列させたプローブに関して上記では例示したが、当業
者であれば、上記方法は、液相反応または流体相において空間的に分離されたビーズ等の
他のフォーマットでの伸長反応に同様に適用できることを理解するであろう。
【0286】
一部の伸長アッセイ条件下では、ポリメラーゼは、ハイブリダイズしたテンプレート核
酸が存在しなければ、一本鎖プローブの3’末端の端部にて過剰のヌクレオチドを配置す
ることができる。そのような活性は一部の条件下で二本鎖核酸の平滑端部の3’末端で起
こることも既知であり、これは、末端エクステンダーゼ活性といわれる(例えば、Hu
et al.,DNA and Cell Biology,12:763−770(1
993)参照)。従って、本発明で用いる伸長反応は、末端エクステンダーゼ活性を阻害
する条件下で行うことができる。例えば、用いるべき伸長反応条件下で十分に低いレベル
の末端エクステンダーゼを有するポリメラーゼを選択することができるか、あるいは特定
のポリメラーゼのエクステンダーゼ活性によって優先的に一体化されるヌクレオチドを伸
長反応から排除することができるか、あるいはハイブリダイズしていないプローブをブロ
ックするか、または伸長反応から除去することができる。
【0287】
核酸標的の直接的ハイブリダイゼーション検出は、一部のアッセイ条件下での交差−ハ
イブリダイゼーション反応のためアッセイ特異性の減少を被りかねない。核酸標的のアレ
イ−ベースの酵素的検出は特異性を増加させるための強力なアプローチを提供する。先に
議論した遺伝子型分類の分野に加えて、本発明は、DNAコピー数、微生物剤、遺伝子発
現等の検出において特異性を増加させるのに適用することができる。これは、核酸試料の
複雑性がヒトゲノム複雑性のレベルまで増加するので、特に重要となる。例えば、標識さ
れたゲノムDNAがDNAアレイにハイブリダイズするDNAコピー数実験は、しばしば
、特異性の問題によって危うくなる。プライマー伸長または本明細書中で記載した他のも
の等のアレイ−ベースの酵素的工程と組み合わせて直接的ハイブリダイゼーションを使用
することによって、特異性は劇的に改善することができる。これは、酵素的検出工程によ
る標識は完全な3’相補性により起こるので、交差−ハイブリダイジング標的は検出され
ないからである。
【0288】
本発明のさらに別の実施形態によると、本明細書中で先に記載した方法の1つ以上を行
うための診断システムが提供される。本発明の診断システムは、所望ならば、適切なパッ
ケージング材料を含むキットの形態で提供することができる。1つの実施形態において、
例えば、診断システムは、例えば、アレイフォーマットでの複数の核酸プローブ、および
アレイのプローブにハイブリダイズしたgDNA断片または他の標的核酸を検出するのに
有用な1つ以上の試薬を含むことができる。従って、特定の方法に関して本明細書中にて
先に記載したもの等の本発明の方法で有用な試薬または成分のいずれの組合せも、本発明
によって提供されるキットに含めることができる。例えば、キットは、アレイに結合し、
かつプライマー伸長検出反応で有用な他の試薬と共に遊離3’末端を有する1つ以上核酸
プローブを含むことができる。
【0289】
本明細書中で用いるように、フレーズ「パッケージング材料」とは、核酸プローブまた
はプライマー等の、キットの内容物を収容するのに用いられる1つ以上の物理的構造をい
う。パッケージング材料をよく既知の方法によって構築して、好ましくは、滅菌された汚
染のない環境を提供することができる。ここに使用されるパッケージング材料は、例えば
、核酸−ベースの診断システムで慣用的に利用されるものを含むことができる。例示的パ
ッケージング材料は、限定されるものではないが、単離された核酸、オリゴヌクレオチド
、またはプライマー等の本発明の方法で有用な成分を固定された制限内に保持することが
できるガラス、プラスチック、紙、ホイル等を含む。
【0290】
パッケージング材料は、本発明の核酸を特定の方法で用いることができることを示す標
識を含むことができる。例えば、標識は、上記キットが型決定可能な遺伝子座の特定の組
を検出するのに有用であり、それにより、個々の遺伝子型を決定することを示すことがで
きる。さらに別の例において、標識は、上記キットが特定のゲノムDNA試料を増幅する
のに有用であることを示すことができる。
【0291】
パッケージされた試薬または成分を用いるための指令書も、典型的には、本発明のキッ
トに含まれる。「用いるための指令書」とは、典型的には、試薬または成分の濃度、また
は混合すべきキット成分および試料の相対的量、試薬/試料混合のための維持時間、温度
、緩衝液条件等のような、少なくとも1つのアッセイ方法パラメータを記載する有形の表
現を含む。
【0292】
本発明の方法は、試薬、成分、または本明細書中に開示した工程の1つ以上についての
望ましいまたは望ましくない結果を判断するための対照を含むことができる。対照につい
ての結果と、調べるべき試料についての結果と比較を本発明の方法で行うことができ、そ
れにより、結果を有効なものとし、結果の反復するまたは影響する解釈を担う工程を同定
することができる。もし1つ以上の対照についての結果が結果の所望の範囲の外側にあれ
ば、本発明の方法は、調べるべき試料で得られた値または他のデータ点を修飾する工程を
含むことができる。本発明の方法は、後に記載する対照の1つ以上についての結果および
、もし結果が所望の範囲の外側であれば、上記方法の1つ以上の工程を反復することを含
むことができる。かくして、対照からのシグナルおよび条件の修飾の検出は、条件の所望
の組が得られるまで反復して行うことができる。
【0293】
増幅対照は、表示的にゲノムを増幅しおよび/またはゲノム断片を生じさせる工程を含
めた方法等の本発明の方法で用いることができる。例示的増幅対照は固有のゲノムスパイ
クである。例えば、少量の微生物ゲノムDNAを、ヒトゲノムのランダムプライマー増幅
のための反応にスパイクすることができる。加えられた微生物ゲノムDNAの量は、典型
的には、他のDNA試料からの可能な汚染と競合するのに十分であるが、ヒトゲノムDN
A試料の増幅と実質的に競合するには不十分なものである。例えば、ヒト遺伝子座ではな
く微生物遺伝子座に選択的にハイブリダイズするプローブのサブセットを用いるヒトゲノ
ムと比較して微生物ゲノムに対してユニークである遺伝子座の検出を用いて、失敗した増
幅が、誤ったRPA反応成分または貧弱な質のヒトゲノムDNAによるものか否かを判断
することができる。さらに詳しくは、RPA反応から得られた微生物遺伝子座の検出可能
なレベルは、ヒトゲノムDNAが貧弱な量であって、RPA反応成分が機能的であること
を示し、対照においては、微生物遺伝子座の検出可能なレベルの不存在は反応成分の失敗
を示す。
【0294】
ゲノム断片を核酸プローブと接触させる工程を含む方法等の本発明の方法で、ハイブリ
ダイゼーション対照を用いることができる。典型的には、ハイブリダイゼーション対照は
、プローブハイブリダイゼーション工程の間に標的核酸と共インキュベートされる合成核
酸である。有用なハイブリダイゼーション対照の例は、ストリンジェンシー対照標的の配
列に対する一連のミスマッチを形成する配列を有するストリンジェンシー対照プローブの
組である。プローブのシリーズは、ストリンジェンシー対照標的の配列にパーフェクトマ
ッチする配列を有する第一のプローブ、ストリンジェンシー対照標的の配列とのミスマッ
チを有する第二のプローブ、第二のプローブおよび第二のミスマッチと同一のミスマッチ
を有する第三のプローブ、第三のプローブおよび第三のミスマッチと同一の2つのミスマ
ッチを有する第四のプローブを含むことができる。このシリーズにおいてプローブ当たり
2つ以上のミスマッチを有することが可能である。シリーズにおけるミスマッチが、1つ
以上のマッチするヌクレオチドが配列に介在するように、相互に隣接し、または相互から
間隔を設けることができる。シリーズにおけるミスマッチは、プローブの全てがストリン
ジェンシー対照標的とパーフェクトマッチする3’末端を有するようにプローブの5’末
端近くに位置することができる。
【0295】
ストリンジェンシー対照標的にハイブリダイズするストリンジェンシー対照プローブの
数および/または同一性は、ハイブリダイゼーションの条件のストリンジェンシーと相関
させることができる。最高のストリンジェンシーレベルにおいては、上記シリーズにおけ
る第一のストリンジェンシー対照プローブ(パーフェクトマッチ対照プローブ)のみが標
的対照プローブにハイブリダイズする。より低いストリンジェンシーの条件の結果、スト
リンジェンシー対照標的にハイブリダイズするシリーズ中のより多いストリンジェンシー
対照プローブをもたらす。かくして、ストリンジェンシー対照プローブを用いて、ゲノム
断片およびプローブについてのハイブリダイゼーションのための所望のストリンジェンシ
ーを供する条件を同定することができる。
【0296】
用いることができるさらなる対照は濃度対照である。濃度対照プローブの配列とパーフ
ェクトマッチする配列を有する濃度対照標的を用いることができる。濃度対照標的は対照
プローブに対して異なる濃度で供することができる。アッセイ条件の特定の組についての
検出のより低い制限は、検出された標的の最低濃度を測定することによって定量すること
ができる。所望であれば、濃度対照標的は、例えば、標的配列の3’末端において対照プ
ローブに対して1つ以上のミスマッチを有することができる。従って、ストリンジェンシ
ーまたは特異性評価も濃度プローブで行うことができる。
【0297】
プローブ修飾対照は、ゲノム断片にハイブリダイズさせつつプローブを修飾する工程を
含む方法等の本発明の方法で用いることができる。プローブ修飾対照の例は、本発明の方
法においてポリメラーゼによってプローブ伸長の例を示す伸長対照である。例示的伸長対
照は、ヘアピンプローブまたはマッチおよびミスマッチヘアピンプローブの組である。上
記組は4ヌクレオチドに関して生起するマッチおよびミスマッチの16の可能な組合せの
うち2つ以上を含むことができる(例えば、GCマッチおよびGA、GTおよびGGの少
なくとも1つ)。ヘアピンプローブは、典型的には、それらの5’末端において基材に結
合し、それらが許容されるストリンジェンシー条件下でそれらの3’末端においてヘアピ
ン構造を形成できるように回文配列を有する。マッチプローブは3’塩基対マッチで終了
するヘアピンを有し、他方、ミスマッチプローブは3’ミスマッチで終了する。マッチヘ
アピンプローブの修飾は、伸長アッセイ成分が使用される条件下で機能的であることを示
す。ヘアピン対照プローブの利点は、上記表示が標的核酸の存在から独立していることで
ある。かくして、失敗した伸長反応では、マッチヘアピン対照についての結果を用いて、
問題が標的核酸試料または他の伸長反応試薬から生じたかを決定することができる。ミス
マッチヘアピンプローブの修飾をモニターして、伸長反応試薬がテンプレート独立的にプ
ローブを修飾するかを決定することができる。ヘアピン対照プローブを伸長反応に関して
上記にて例示してきたが、当業者であれば、それらが連結反応等の他のテンプレート−依
存性修飾反応で用いることができるのを理解するであろう。
【0298】
さらに別の有用なプローブ修飾対照は、伸長効率対照である。伸長効率対照は、プロー
ブの3’末端が、各々、4ヌクレオチド配列のA、C、TまたはGヌクレオチドに相補す
るように、伸長効率対照標的の重複する配列に相補的な伸長効率対照プローブの組を含む
ことができる。かくして、4つのそのような伸長効率対照プローブと伸長効率対照標的と
の配列の整列は、1つのヌクレオチドだけそれらの3’末端における配列オフセットのス
タッガードセットとして出現する。伸長効率対照は、選択された伸長反応条件が、用いる
ヌクレオチドの全てを一体化させることに関してバランスしているか否か、または1つ以
上のヌクレオチドが選択的に一体化されるかを決定するのに有用であり得る。
【0299】
本発明の方法は、さらに、非多型対照の評価を含むことができる。非多型対照は、ゲノ
ムにおける非多型配列についてのパーフェクトマッチおよびミスマッチプローブの組であ
る。パーフェクトマッチおよびミスマッチプローブは、それらの3’末端が、各々、ゲノ
ム配列領域に対して相補的であるか、または相補的でないかを除いて、ゲノムの同一領域
に対して相補的である。例えば、ストリンジェンシーをモニターするための異なるGC含
有量を有する、および/または、マッチおよびミスマッチの全ての可能な組合せの1つ以
上を有する1つ以上の組を用いることができる。多型プローブは、複数個体でのクラスタ
リングデータと比較した場合、単一または混合した個体試料を用いるアッセイ最適化を容
易とすることができる。
【0300】
ストリップ対照は、複数のプローブからゲノム断片を除去する工程を含む方法等の本発
明の方法で用いることができる。例えば、一旦、ハイブリッドを処理して、ゲノム断片を
除去したならば、標識された標的の存在または不存在を検出し、各々、満足されないまた
は満足される断片除去と相関させることができるように、複数のプローブとのハイブリダ
イゼーションに先立って、標識されたストリップ対照標的をゲノム断片試料にスパイクす
ることができる。特別な実施形態において、標識は、相補的プローブにハイブリダイズさ
せつつ、ストリップ対照標的に一体化させることができる。例えば、ストリップ対照標的
の3’末端は、標的がテンプレート依存的に修飾できるようにプローブにハイブリダイズ
させることができる。典型的には、ストリップ対照標的およびその相補的プローブは、プ
ローブが標的と同一の工程で修飾されないように設計される。例えば、プローブは、修飾
に使用できない3’ヌクレオチドアナログを有することができ、および/またはプローブ
の3’末端は標的とでミスマッチを形成することができる。さらに、ストリップ対照標的
と相補的なプローブは、本発明の方法で検出されるべきゲノム断片のいずれかと相補的で
ない配列を有するように設計することができる。
【0301】
検出対照は、プローブ−断片ハイブリッドの型決定可能な遺伝子座を検出する工程を含
む方法等の本発明の方法で用いることができる。例えば、既知の量の関連した標識を有す
る標識対照プローブの組を用いることができる。標識対照プローブは滴定曲線として分析
して、ゲノム断片の型決定可能な遺伝子座を検出するのに用いられる標識についての感度
または検出の範囲を決定することができる。標識対照プローブは、ゲノム断片の検出で用
いるプローブと同一のタイプの分子である必要はない。従って、標識対照プローブは、ア
レイ表現の特定の位置に直接的にまたは間接的に結合させた標識であり得る。オン−アレ
イビオチン−ベースの検出の場合には、標識対照プローブは、既知の量の共有結合したビ
オチンを有するアレイ位置であり得る。
【0302】
本発明を固定化されたプローブのアレイに関して本明細書中で例示したが、当業者であ
れば、他の検出フォーマットを同様に使用することができるのを理解するであろう。例え
ば、本明細書中に記載した方法は、固相よりはむしろ液相で行うことができる。従って、
液相プローブは、上記した方法における固定化されたプローブを置き換えることができる
。検出標識または検出部分に関して上記したもの等の特性に従って、液相プローブを検出
することができる。例えば、プローブは同定可能な電荷、質量、質量に対する電荷の比率
、または他の区別する特性を有することができる。そのような区別する特性は、例えば、
毛細管電気泳動、アクリルアミドゲル、アガロースゲル等のクロマトグラフィーシステム
において、あるいは質量分光分析のような分光分析システムで検出することができる。か
くして、本発明は、さらに、(a)型決定可能な遺伝子座を有するゲノム断片の増幅され
た表示的集団を提供し;(b)上記ゲノム断片を、プローブ−断片ハイブリッドが形成さ
れる条件下で、型決定可能な遺伝子座に対応する配列を有する複数の核酸プローブと接触
させ;(c)プローブ−断片ハイブリッドを修飾し;次いで、(d)修飾されたプローブ
または断片を検出し、それにより、ゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する工程を含む
ゲノムの型決定可能な遺伝子座を検出する方法を提供する。
【実施例】
【0303】
(実施例I)
(ランダム−起点増幅(RPA)を用いる全ゲノム増幅)
本実施例は、酵母ゲノムからの上記ゲノム断片の増幅された表示的集団の生成を示す。
【0304】
Qiagen Genomic DNA抽出キットを用いてS.Cerevisiae
株S228Cからの酵母ゲノムDNAを調製し、10ngのゲノムDNAをクレノウポリ
メラーゼで増幅した。
【0305】
一部のパラメーターを見積もって、クレノウ(exo
−)ランダム−起点増幅反応の収
率に対するそれらの効果を決定した。増幅反応は、1つのパラメーターを系統的に修飾し
た以外は、同様な条件下で行った。
図3は、異なる濃度のデオキシヌクレオチド三リン酸
で行った増幅反応を比較する結果を示す。
【0306】
各反応に続き、増幅されたDNAをMontage限外濾過プレート(Millipo
re)で精製し、アガロースゲルに入れて、
図3Aに示したようにUV
260の表示によ
ってDNAを定量した。増幅収率は、各レーンにおける株の密度に基づいて測定し、結果
を
図3(B)中の表に示す。
図3Bの最後の2つの欄に示したように、10ngの酵母ゲ
ノムテンプレートを増幅して、約600〜8000倍の増幅を表す約6〜80マイクログ
ラムの範囲の量まで増幅した。テスト条件下での平均断片サイズは約200〜300bp
であった。
【0307】
結果は、増幅収率がプライマーまたはデオキシヌクレオチド三リン酸のより高い濃度に
おいて増加したことを示した。かくして、反応パラメーターを系統的に修飾し、評価して
、所望の増幅収率を測定することができる。
【0308】
(実施例II)
(BeadArrays
TMにハイブリダイズした酵母全ゲノム試料についての酵母遺
伝子座の検出)
本実施例は、BeadArrays
TMにハイブリダイズし、および対立遺伝子特異的
プライマー伸長(ASPE)でプローブした酵母全ゲノム試料についての酵母遺伝子座の
再現性がある検出を示す。
【0309】
600ナノグラムのランダムプライマー増幅(RPA)酵母gDNAを遺伝子座−特異
的BeadArrays
TM(Illumina)にハイブリダイズさせた。上記Bea
dArrays
TMは、S.cerevisiaeゲノム全体を通じて分布した異なる遺
伝子−ベースの遺伝子座を質問する96のオリゴヌクレオチドプローブ対(PMおよびM
M、長さは50塩基)よりなるものであった。増幅された酵母ゲノムDNAを、以下の条
件下でBeadArrays
TMにハイブリダイズさせた:標準1×ハイブリダイゼーシ
ョン緩衝液(1M NaCl、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、0.1
%Tween20、20%ホルムアミド)中の48℃における一晩のハイブリダイゼーシ
ョン。ハイブリダイゼーションの後、アレイを48℃にて1×ハイブリダイゼーション緩
衝液で5分間洗浄し、続いて、室温にて0.1×ハイブリダイゼーション緩衝液中で5分
間洗浄した。最後に、アレイをASPE反応緩衝液で5分間洗浄して、伸長工程前にアレ
イをブロックし、平衡化させた。ASPE反応緩衝液(10× GG伸長緩衝液(Ill
umina,Inc.,San Diego,CA)、0.1%Tween−20、10
0μg/mlのBSA、および1mMのジチオスレイトール、10%スクロース、500
mMベタイン)。
【0310】
ASPE反応は以下のようにアレイ上で直接的に行った。BeadArraysは、3
uM dNTP(1.5uM dCTP)、1.5uMビオチン−11−dCTP、〜0
.4μl Klentaq(DNA Polymerase Technology,I
nc.St.Louis,MO,63104)を補足した上記記載されたASPE反応緩
衝液を含有する50μlのASPE反応ミックスに浸漬した。BeadArrays
TM
を室温にてASPE反応中で15分間インキュベートした。BeadArrays
TMを
新鮮な0.2N NaOA中で2分間洗浄し、次いで、1×ハイブリダイゼーション緩衝
液中で30秒間の洗浄を2度行った。取り込まれたビオチン標識を、ストレプトアビジン
−フィコエリスリンおよびビオチニル化抗ストレプトアビジン染色を使用するサンドイッ
チアッセイによって検出した。これは以下のように行った:BeadArrays
TMを
エオシンブロック(Pierce,Rockford,IL)中で室温にて30分間ブロ
ックした。これに続いて、1×ハイブリダイゼーション緩衝液中で素早く洗浄し(1分)
、しかる後、ストレプトアビジン−フィコエリスリン(SAPE)溶液(1×ハイブリダ
イゼーション緩衝液,0.1%Tween20,1mg/ml BSA,3μg/mlス
トレプトアビジン−フィコエリスリン(Molecular Probes,Eugen
e,OR))で室温にて5分間染色した。染色の後、BeadArrays
TMを1×
Hyb.緩衝液で素早く洗浄し、しかる後、6mg/mlのヤギ血清、カゼインおよび0
.1%Tween20を補足した1× TBS中の10μg/mlビオチニル化抗ストレ
プトアビジン抗体(Vector Labs,Burlingame,CA)で対比染色
した。この工程に続いて、1× Hyb.緩衝液中で素早く洗浄し、次いで、記載したS
APE溶液で第二の染色を行った。染色の後、1× Hyb.緩衝液中の最終洗浄を行っ
た。
【0311】
図4の左側パネルは、増幅された全酵母ゲノム試料のハイブリダイゼーションおよびA
SPE検出に続くアレイのイメージを示す。
図4の右側パネルにおけるチャートはパーフ
ェクトマッチ(PM)およびミスマッチ(MM)強度(96のうち48の遺伝子座)のサ
ブセットを呈する。88%を超える遺伝子座は5よりも大きなPM/MM比率を有し、こ
れは、別の遺伝子型から遺伝子座の大半を区別する能力を示す。
【0312】
酵母よりも高い複雑性のゲノムにおける型決定可能な遺伝子座を識別する能力は、より
複雑な生物のゲノムバックグラウンドに酵母ゲノムDNAをスパイクすることによって評
価した。600ナノグラムの酵母ゲノムDNA(12Mb複雑性)を150μgのヒトゲ
ノムDNA(3000Mb複雑性)にスパイクして、ヒトと同等な複雑性を有するゲノム
における単一コピー遺伝子座の存在を模倣した。アレイへのこのスパイクされた試料のハ
イブリダイゼーションは、酵母DNAが単独でハイブリダイズした非常に少ない差を示し
、これは、複雑なゲノムバックグラウンド中の正しい標的配列を特異的に補足するアレイ
の能力を示す。
【0313】
これらの結果は、全ゲノム試料のアレイへのハイブリダイゼーションに続く酵母ゲノム
の一部の型決定可能な遺伝子座の検出を示す。これらの結果は、さらに、全ゲノム試料中
の複数の型決定可能な遺伝子座を検出するのに増幅が必要でないことを示す。さらに、結
果は再現性があり、上記方法が頑強であることを示す。
【0314】
(実施例III)
(BeadArrays
TMに直接的にハイブリダイズしたヒトgDNAの全ゲノム遺
伝子型分類(WGG))
本実施例は、ゲノム断片の表示的集団のアレイへのハイブリダイゼーション、およびハ
イブリダイズしたゲノム断片の一部の型決定可能な遺伝子座の直接的検出を示す。本実施
例は、さらに、2つの異なるプライマー伸長アッセイのいずれかを用いるアレイ上での型
決定可能な遺伝子座の検出を示す。
【0315】
(SBE−ベースの検出)
ヒト胎盤ゲノムDNA試料はCoriell Inst.Camden,NJから入手
した。ヒト胎盤gDNA試料(150μg)を、各々が24の異なる非多型プローブ(5
0−量体)の同一の組を含有する4つの個別の束を有するBeadArrays
TM(I
llumina)にハイブリダイズさせた。上記BeadArrays
TMは、ヒトゲノ
ム全体を通じてランダムに分布したヒト非多型遺伝子座に対する96のプローブよりなる
ものであった。プローブは50塩基の長さであり、約50%のGC含有量であり、隣接A
(16プローブ)、C(16プローブ)、G(16プローブ)またはT(16プローブ)
塩基を再度配列決定するように設計された。DNA試料(150μgのヒト胎盤DNA)
を、15μlの容量中の標準1×ハイブリダイゼーション緩衝液(1M NaCl、10
0mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、0.1%Tween20、20%ホルムア
ミド)中で48℃にて一晩ハイブリダイズさせた。
【0316】
4つの個別のSBE反応を、1つは各個別の束に対するものであるアレイで以下のよう
に直接的に行った。「A」反応はビオチン−標識ddATPおよび未標識ddCTP、d
dGTP、およびddTTPを含むものであった。他の3つのSBE反応は、標識された
および標識されていない表示は適切に調整した以外は同様であった。SBE反応条件は以
下の通りであった:BeadArrays
TMを50℃にてSBE反応ミックスに1分間
浸漬させた。4つの異なるSBE反応ミックス、A、C、GまたはT再配列決定ミックス
を提供した。例えば、50μlのA−SBE再配列決定ミックスは、1uMのビオチン−
11−ddATP(Perkin Elmer)、1uMのddCTP、1uMのddG
TP、および1uMのddUTP、1× Thermosequenase緩衝液、0.
3UのThermosequenase、10μg/mlのBSA、1mMのDTT、お
よび0.1%Tween20を含有するものであった。他の3つのSBEミックスは、含
まれる適切な標識された塩基が同様であり、他の塩基は未標識であった。
【0317】
SBE反応の結果を
図5に示す。
図5において、96のプローブの組を、ビオチン−標
識ddATP反応のためのCA1〜CA24、ビオチン−標識ddCTP反応のためのC
C1〜CC24、ビオチン−標識ddGTP反応のためのCG1〜CG24、およびビオ
チン−標識ddTTP反応のためのCT1〜CT24と命名された4つの異なる反応に対
応する4つの群に分ける。
図5に示すように、プローブの大半は優れたシグナル識別を示
した。
【0318】
(ASPE−ベースの検出)
同様に調製したヒト胎盤gDNA試料(150μg)を、非多型遺伝子座を問い合わせ
る77の機能的パーフェクトマッチ(PM)およびミスマッチ(MM)プローブ対を含有
するBeadArrays
TMにハイブリダイズさせた。ASPEプローブはヒトゲノム
内の非多型部位に対して設計した。プローブは長さが50塩基であって、約50%GC含
有量であった。パーフェクトマッチ(PM)プローブは完全にゲノム配列にマッチし、他
方、ミスマッチ(MM)プローブは3’塩基におけるゲノム配列に対する単一塩基ミスマ
ッチを含んだ。ミスマッチタイプはモデリングA/GおよびC/T多型に向けて偏ってい
た。ハイブリダイゼーションおよび反応条件は実施例IIで先に記載した。
【0319】
対立遺伝子特異的プライマー伸長反応(ASPE)はアレイ表面で直接的に行い、取り
込まれたビオチン標識はストレプトアビジン−フィコエリスリン染色で検出した。ASP
E反応は以下のように行った。BeadArrays
TMを1×ハイブリダイゼーション
緩衝液中で2回洗浄し、次いで、室温にて(酵素およびヌクレオチドを含まない)ASP
E反応緩衝液で洗浄した。BeadArrays
TMを50μlのASPE反応ミックス
に室温にて15分間浸漬することによって、ASPE反応を行った。ASPEミックスは
以下の成分を含有した:3uMのdATP、1.5uMのdCTP、1.5uMのビオチ
ン−11−dCTP、3uMのdGTP、3uMのdUTP、1× GoldenGat
e
TM伸長緩衝液(Illumina)、10%スクロース、500mMベタイン、1m
MのDTT、100μg/mlのBSA、0.1%Tween20および0.4μlのK
lentaq(DNA Polymerase Inc.,St.Louis,MO)。
図6Aは、77のプローブ対を横切る生の強度値を示す。PMプローブ(視覚)は、プロ
ーブの大部分全般に亘ってのMMプローブよりも極めて高い強度を呈し、これは、効果的
に問い合わされた塩基が区別されることを可能とする。
図6は、77の遺伝子座について
の識別比率(PM/PM+MM)のプロットを示す。これらの結果は、遺伝子座の約2/
3が比率>0.8を有することを示した。
【0320】
本実施例の結果は、ゲノム断片の表示的集団のアレイへのハイブリダイゼーション、お
よびハイブリダイズしたゲノム断片の一部の型決定可能な遺伝子座の直接的検出が、遺伝
子型分類適用のための十分な遺伝子座識別を供することを示す。
【0321】
(実施例IV)
(増幅されたゲノムDNA断片の遺伝子型分類)
本実施例は、ゲノム断片が上記増幅された集団の遺伝子型分類を示す。
【0322】
ヒト胎盤ゲノムDNA試料はCoriell Inst.Camden,NJから入手
した。上記ゲノムを増幅し、テンプレートゲノムの量を変化させ、ランダムプライマーの
長さを
図7に示すように変化させた以外は、実施例Iに記載された条件下でランダムプラ
イマー増幅を用いてビオチン標識した。全ての反応についての増幅出力は、40μl反応
当たり約40μgの増幅されたゲノム断片において比較的一定であった。
【0323】
ゲノム断片が上記増幅された集団は以下のように遺伝子型分類した。上記遺伝子型分類
は、IllumiCode
TMアレイ上の所有GoldenGate
TMアッセイを用い
るIlluminaのSNP遺伝子型分類サービスによって行った。GenTrainス
コアは、どのようにしてよくSNP遺伝子座の遺伝子方強度が試料集団全般に亘ってクラ
スターを形成するかについての計量である。未増幅対照に対するGenTrainスコア
の比較は、遺伝子座の増幅および偏りの見積もりを供する。
【0324】
未増幅DNAについての遺伝子型分類の質を、
図7に示されたゲノム断片が上記増幅さ
れた集団と比較した。増幅反応で用いたゲノムテンプレートの量を各棒線の下方に示す。
増幅された試料のうち、最良のGenTrainスコアは、1000ngのテンプレート
ゲノムを用いる増幅反応で得られた(40×増幅)。1000ngのテンプレートゲノム
を用いる増幅反応についてのGenTrainスコアは、未増幅ゲノムDNAで得られた
のと同様であり、これは、増幅された生成物がゲノムを表すことを示す。許容されるGe
nTrainスコアは、100ng程度の少ないテンプレートゲノムを用いて増幅反応で
得られた(400×増幅)。
【0325】
これらの結果は、本発明に従って得られたゲノム断片が増幅された集団が遺伝子型分類
アッセイにおいてゲノム配列を表すことを示す。
【0326】
(実施例V)
(増幅されたゲノムDNA断片の全ゲノム遺伝子型分類(WGG))
本実施例は、DNAアレイへの直接的ハイブリダイゼーションおよびアレイ−ベースの
プライマー伸長SNPスコアリングによるゲノム断片が増幅された集団の全ゲノム遺伝子
型分類を示す。
【0327】
3×32 DNA試料の組(各々1μg)は、ランダムプライマー増幅によって増幅し
て、150μgのゲノムDNA断片を有する個別の標的試料を生じた。断片が上記増幅さ
れた集団は、192遺伝子座をカバーする50−量体ASPE捕獲プローブを有するBe
adArrays
TMにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションの後、ASPE
反応は実施例IIIに記載したように行った。イメージを収集し、所有GenTrain
ソフトウェア(Illumina)を用いて遺伝子型クラスターを分析した。ASPEで
検出されたBeadArrays
TMの例示的イメージを
図11Aに示す。
【0328】
図11Bは、1つの遺伝子座についてのシータvs強度のGenTrainプロットを
示す。強度は、特定のビーズについて検出された合計蛍光強度である。シータは、遺伝子
座の1つの対立遺伝子についての蛍光強度vs遺伝子座の第二の対立遺伝子についての蛍
光強度のバラツキプロットに対するビーズの蛍光強度の位置に対応する。特に、バラツキ
プロットに対するビーズの蛍光強度の位置は特定のx,y座標に対応し、シータはx軸お
よび原点からそのx,y座標へ引いた線の間の角度である。
図11Bに示すように、2つ
のホモ接合性(B/BおよびA/A)クラスターおよび1つのヘテロ接合性(A/B)ク
ラスターは明瞭に区別された。
【0329】
遺伝子座の約52%はよく分解されたクラスターを与え、これは「成功した」と呼び、
引き続いて、全ての試料全般に亘って遺伝子型に関して分析した。参照遺伝子型が既知の
3×16試料全般に亘っての遺伝子型要求(101/192遺伝子座)の分析は、100
%の要求率を持つ99.95%の一致(4090/4092)を示した(表12、パネル
A)。異なる遺伝子座におけるスコアを示すGenCallプロットは2つの異なる試料
について
図12BおよびCに示す。個々の遺伝子型要求についてのGenCallスコア
は0および1の間の値であり、これは、その要求における信頼性を示す。より高いスコア
は、上記要求におけるより高い信頼性を示す。
【0330】
2つの異なる遺伝子座についての例示的GenTrainプロットを
図12Cおよび1
2Dに示す。このデータは、試料の大部分に関して、3つのクラスターがホモ接合性(B
/BおよびA/A)および(A/B)遺伝子型に対応して明瞭に区別されることを示す。
2つの灰色の点は「標的対照無し」BeadArrays
TMからのものである。
【0331】
図12DおよびEにおけるバラツキプロットの調査は、プロット中の矢印によって示さ
れる、4092の要求のうち2つの質問可能な要求のみを示した。上記要求は、
図12B
およびC中の水平線によって示されるように、GenCallスコアに関して0.45の
閾値を適用することによって濾過した。
【0332】
(実施例VI)
(異所性シグナルの阻害)
本実施例は、アレイ−ベースのプライマー伸長反応における異所性発現を阻害するため
の一本鎖核酸結合蛋白質(SSB)の使用を示す。
【0333】
E.coli SSBおよびT4 Gene32等の一本鎖結合蛋白質を、クレノウお
よびKlentaqアレイ−ベースのASPE反応双方における異所性伸長を抑制するそ
れらの能力に関してテストした。使用した条件は以下の通りであった:アレイ−ベースの
クレノウASPE反応は80mMのトリス−酢酸(pH6.4)、0.4mMのEDTA
、1.4mMの酢酸マグネシウム、0.5mMのDTT、100μg/mlのBSA、0
.1%Tween−20、0.2U/μlのクレノウエキソポリメラーゼ、および0.5
uMのdNTPを含有し、dCTP、dGTP、およびdUTPについて「冷」ヌクレオ
チドに対するビオチン−11標識ヌクレオチドは1:1の比率であった。SSBでの実験
において、濃度は0.2μg/20μl rxnであった。アレイ−ベースのKlent
aq条件は実施例IIIに記載する。
【0334】
図14Aは、SSBの存在下における、および標的核酸試料(NTC=標的対照無し)
の不存在下における、BeadArrays
TMに対するクレノウポリメラーゼでのAS
PE反応の実行についてのバラツキプロットを示す。
図14Cによって示されるように、
異所性シグナルは、SSBの不存在下と比較してSSBの存在下で大いに低下した。同様
の結果が、KlentaqポリメラーゼでのASPE反応で得られた。
図14CおよびD
に示されたプロットは、増大する強度に従ったX−軸に沿ったバラツキプロットからのシ
グナルを分類することによって得られた。
図14Bに示すように、対立遺伝子特異的伸長
は、ゲノム断片の増幅した集団を含有する標的試料の存在下で行ったASPE反応につい
ての検出可能なレベルで起こった。
【0335】
これらの結果は、プライマー伸長アッセイにSSBを含めると、対立遺伝子特異的伸長
を維持または改善しつつ異所性伸長を抑制することを示す。さらなる実験は、アレイ−ベ
ースのASPE反応にSSBを含めると、対立遺伝子識別を改善することを示した。
【0336】
(実施例VII)
(ランダムプライマー増幅によって生じたゲノム断片集団の評価)
本実施例は、ランダムプライマー増幅(RPA)によって生じたヒトゲノム断片集団が
、対立遺伝子偏りをほとんど有しないそれらのゲノムテンプレートの代表であり、再現性
よく生じさせることができることを示す。
【0337】
RPA反応を用いて、実施例Vに記載された方法を用いてヒトゲノムDNAからゲノム
集団の増幅された集団を生じさせた。増幅反応は、プローブアレイと共に反応混合物をイ
ンキュベートするに先立って、反応成分または生成物の単離の必要性無くして単一チュー
ブフォーマットで行った。後に記載する修飾を例外として、反応混合物は実施例Vに記載
したようにBeadArrays
TMと共にインキュベートし、検出は実施例IIIに記
載したようにASPEを用いて行った。
【0338】
図15に示された結果は、増幅プロセスで達成された表示を示す。100μl中の10
0ngのヒトゲノムDNA(Coriell Cell Repositories,C
amden,NJ)で行った二連RPA反応は、1〜2μgのDNA/μlを有するゲノ
ム断片の集団を生じた。二連未増幅ゲノム試料は、DNAse Iで約200〜300塩
基の平均サイズに断片化されたヒト胎盤DNA(Sigma−Aldrich,Part
No.D3287)よりなるものであった。
【0339】
増幅した、および未増幅試料を、ゲノムの非多型領域に対して設計されたプローブでア
レイにハイブリダイズさせた。それ自体、全てのプローブはゲノムに対してパーフェクト
マッチであり、遺伝子型分類アッセイにおいて伸長すべきである。2つの異なる試料への
ハイブリダイゼーションに続いて個々のプローブで得られた強度値を
図15のバラツキプ
ロットでプロットする。
図15Aに示したように、高度な相関が二連未増幅試料の間で起
こった。同様に、かつ
図15に示すように、強力な相関が二連増幅試料の間で観察され、
これは、増幅方法が高度に再現性のある結果を与えることを示す。
図15Cの増幅された
vs未増幅バラツキプロットは、二連で観察されたものと比較したより散漫なクラスター
を示し、これは、一部の遺伝子座が過剰表現され、他方、他のものは増幅された試料にお
いて過少表現された。
【0340】
それにもかかわらず、結果は良好な表示を示した。増幅されたDNA入力に対する未増
幅についてのシグナル強度の特定の比率(増幅:未増幅の比率)を有するプローブの数(
カウント)を
図16Aにプロットする。データは、検出された遺伝子座の90.1%が、
未増幅ゲノムDNAについて測定された強度と比較して0.5−〜2−倍過剰ではなかっ
た増幅集団における強度偏差を有することを示した。かくして、増幅された集団における
検出された遺伝子座の90.1%が、未増幅ゲノムにおけるそれらの相対的量と比較して
、0.5倍以上の不足する、かつ2倍以下の過剰にて表された。さらに、増幅された集団
における検出された遺伝子座の97.4%は、未増幅ゲノムにおけるそれらの相対的量と
比較して、0.3倍以上不足、かつ3倍以下の過剰にて表された。
【0341】
ゲノム断片の表示的に増幅された集団を、GoldenGate
TMアッセイ(Ill
umina,Inc.San Diego,CA)においてみ増幅対照DNA試料と比較
した。4つの遺伝子座(1824、2706、3633および6126)についての例示
的データは、
図17の(GenTrainプロットとも呼ばれる)ゲノプロット(Gen
oplot)に示す。上記ゲノプロットは標準遺伝子型分類バラツキプロットの極座標再
プロットである。標準遺伝子型分類バラツキプロットは、(第一の対立遺伝子と相関する
)第一のチャネルで検出された強度vs(第二の対立遺伝子と相関する)第二の色チャネ
ルで検出された強度の軸を有し、および各チャネルにおけるその強度に従った各遺伝子座
についてのバラツキ点をプロットする。ゲノプロットは原点からバラツキ点(R)まで描
いた線の距離、および上記線およびx軸の間の角度(シータ)に従った各バラツキ点の再
プロットである。
図17に示すように、10ng、100ngまたは1μgゲノム入力か
ら生じたRPA混合物から生じたデータについてのバラツキ点の結果、未増幅ゲノムDN
Aからの対照クラスター(丸印)と比較して良好なクラスターをもたらし、これは、非常
に少ない対立遺伝子偏りを示す。
【0342】
遺伝子型分類アッセイにおける検出の限界(LOD)は、ゲノムDNAの増大する量が
RPA反応に入力されるにつれ増加することを示した。別のRPA反応は種々の量の入力
ゲノムDNAで行った(二連)。上記入力量は1フェムトグラム〜100ナノグラムの範
囲であり、これは、
図18Aのx−軸上にプロットされた量を示す。
図18Aは、ハイブ
リダイゼーション後に各アレイ(LOD)上の全てのプローブで検出された平均強度、お
よび入力ゲノムDNAの異なる量(入力)から生じたRPA反応混合物のASPE検出を
示す棒グラフである。
図18Aに示すように、10pg(ヒトゲノムのほぼ3コピー)以
上の入力ゲノムDNAの量の結果、入力ゲノムDNAを用いなかった(0g)対照RPA
反応と比較して実質的に増大したLOD値をもたらした。少なくとも100pg(30ゲ
ノムコピー)、1ng(300ゲノムコピー)、10ng(3,000ゲノムコピー)ま
たは100ng(30,000ゲノムコピー)の入力ヒトゲノムDNAを
図18Aに示す
ようにRPA反応で用いた場合、LODはバックグラウンドを超えて実質的に増大した。
【0343】
表示は、増大する量のゲノムDNAをRPA反応に入力するにつれて改善されることが
示された。
図18Bに示された棒グラフは、変化させる量の入力ゲノムDNA(入力)か
ら生じたRPA混合物をプローブするのに用いる場合のアレイの全てのプローブについて
のPM/(PM+MM)(比率)をプロットする。10pg(ヒトゲノムのほぼ3コピー
)以上の入力ゲノムDNAの量の結果、入力ゲノムDNA(0g)を用いない、または低
レベルのゲノムDNA(フェムトグラム量)を用いる対照RPA反応と比較した場合に、
表示の実質的改善をもたらした。表示は、少なくとも100pg(30ゲノムコピー)、
1ng(300ゲノムコピー)、10ng(3,000ゲノムコピー)または100ng
(30,000ゲノムコピー)の入力ヒトゲノムDNAをRPA反応で用いた場合にさら
に実質的に改善された。
【0344】
これらの結果は、RPAを用いて、数ピコグラムと低いゲノムDNAテンプレートの量
から数百マイクログラムのゲノム断片が上記増幅された集団を生じさせることができるこ
とを示す。RPAによって生じたゲノム断片が上記増幅された集団は良好な表示を有し、
再現性よく作成でき、かつ対立遺伝子の大半が偏りを有しない。かくして、RPAによっ
て生じたDNAは全ゲノム遺伝子型分類で十分な量および質のものである。
【0345】
(実施例VIII)
(全ゲノム遺伝子型分類アッセイの性能)
本実施例は、DNAアレイへの直接的ハイブリダイゼーションおよびアレイ−ベースの
プライマー伸長によるゲノム断片が増幅された集団のゲノム遺伝子型分類が、ヒト対象に
関して正確な高い質のSNPスコアリング結果を生じることを示す。
【0346】
ゲノムDNA(100ng)は、国際HapMapプロジェクト(試料の情報について
は、International HapMap Consortium,Nature
426:789−796(2003)参照)の質の対照で用いた組でのCentre
d’Etude du Polymorphisme Humain(CEPH)におけ
る95の試料から得られた。RPA反応は実施例Vに記載されたように行い、100μl
中に188μgのDNAを含有する反応混合物がもたらされた。未希釈反応混合物を、実
施例Vに記載された方法、続いて、実施例IIIに記載されたASPEを用い、遺伝子座
の1500HapMap QC組(遺伝子座の情報については、Internation
al HapMap Consortium,Nature 426:789−796(
2003))に特異的な50−量体プローブを有するBeadArrays
TMと共にイ
ンキュベートした。次いで、Gunderson et al.,Genome Res
.14:870−877(2004)に記載されているように電荷結合デバイスリーダー
でアレイをイメージした。SNP遺伝子型はGenCallソフトウェア(Illumi
na Inc.,San Diego,CA)を用いて読んだ。
【0347】
図19Aおよび19Bは、各々、860および954遺伝子座に関して(GenTra
inプロットとも呼ばれる)代表的ゲノプロットを示す。良好なクラスター分離が860
および954遺伝子座で得られ、各々、7.5および4.4の遺伝子クラスタースコア(
GCS)を生じた(GCS=Min[(Abs(θ
AB−θ
AA)/(σ
AB+σ
AA)
)、(Abs(θ
AB−θ
BB)/(σ
AB+σ
BB))]、ここに、θ
ABはABクラ
スターについての平均θであり(θは
図11に関連して上記した)、およびΔ
ABはθ
A
Bについての標準偏差である)。
図19Cは、遺伝子型クラスター分離スコアに従う遺伝
子座の分布を示す。75%を超える遺伝子座は3.0以上のGCSを有し(暗色の棒線)
、従って、遺伝子型分類で許容できると考えた。
【0348】
CEPH試料における遺伝子座のHapMap QC組の質問についての遺伝子型分類
に関する統計のまとめを表1に示す。アッセイ変換率は、従たる対立遺伝子を首尾よく検
出した遺伝子座の数をカウントすることによって評価した。非多型遺伝子座および高コピ
ー数遺伝子座は、現実のSNPアッセイを開発するに関してアッセイの失敗としてカウン
トされた。技術的には、非多型遺伝子座の多くは成功したアッセイであったが、それらは
カウントしなかった。何故ならば、それらは従たる対立遺伝子を呈しなかったからである
。同一ゲノムDNA試料を用いてGolden Gate Assay(Illumin
a,Inc.San Diego,CA)からの結果と比較したアッセイ変換率は95%
であった。要求率は99.5%において極めて高く、再現性は99.99%よりも大であ
った。
【0349】
一致は、上記したようにして得られた遺伝子型分類結果およびGolden Gate
Assay(Illumina,Inc.San Diego,CA)を用いて同一の
試料および遺伝子座に関して得られた遺伝子型分類結果の間で決定した。一致は99.9
%よりも大きかった。
【0350】
【表1】
これらの結果は、全ゲノム遺伝子型分類アッセイが、国際HapMapプロジェクトに
おいてゲノムの大きな部分を遺伝子型分類するのに現在用いられているGolden G
ateアッセイと同様に、高い質の遺伝子型分類データを提供することを示す。
【0351】
(実施例IX)
(検出に先立ってハイブリダイズした標的を除去するためのストリッピングアレイ)
本実施例は、標的−依存性ポリメラーゼ伸長によるプローブの修飾後に0.1N Na
OHでのストリッピングによるアレイからのハイブリダイズした標的の除去を示す。
【0352】
ゲノムDNAは、Coriell Cell Repositories(Camde
n,NJ)から入手した。RPA反応は実施例VIIに記載したように行った。得られた
反応混合物をBeadArrays
TMにハイブリダイズさせ、実施例IIIに記載した
ようにASPE反応を行った。ASPE反応の後であって、蛍光シグナルの検出に先立っ
て、アレイを水(+NaOH)中の0.1N NaOHまたはホルムアミド(−NaOH
)を欠く1×ハイブリダイゼーション緩衝液で処理した。アレイを実施例VIIIに記載
したように検出した。
【0353】
図20に示すように、NaOHでのアレイの伸長後ストリッピングはミスマッチプロー
ブからバックグラウンドシグナルを低下させ、ミスマッチおよびパーフェクトマッチプロ
ーブからのシグナルの間のより大きな比率の差をもたらした。
【0354】
これらの結果は、プローブ修飾後のアレイをストリッピングすることは、必要ではない
が、アッセイ特異性を大いに改善するのに用いることができることを示す。
【0355】
(実施例X)
(亜硫酸水素塩処理DNAの全ゲノム増幅)
本実施例は、亜硫酸水素塩処理DNAを全ゲノム増幅する方法を記載する。典型的には
、DNAの亜硫酸水素塩処理は実質的な脱プリン化およびDNAの同時断片化を生じる。
この断片化された生成物は、ランダムプライマー全ゲノム増幅アプローチにおいて、スト
ランド−置き換えポリメラーゼを用いて低い収率にて典型的には増幅される。増幅収率を
改善するための2つのアプローチは本明細書中に記載する。最初のアプローチは、断片化
された試料の連結、およびストランド−置き換えランダムプライマー増幅のためのテンプ
レートとしてのより長い連結された生成物の使用である。第二のアプローチは、ユニバー
サルプライミング部位の断片の末端への結合による断片化標的からの表示を作り出す。
【0356】
ゲノムDNAの亜硫酸水素塩処理は、典型的には、シトシンがウラシルに変換されるが
、5−メチルシトシンは非反応性のままでの反応に基づいてメチル化を検出するのに用い
られる(例えば、Feil et al.,Nucleic Acids Res,22
;695−696(1994);Frommer et al.,Proc Natl
Acad Sci USA,89;1827−1831(1992)参照)。DNAと亜
硫酸水素塩とのさらに別の反応は脱プリン化および同時断片化である。亜硫酸水素塩処理
によって生じたDNA断片は、3’末端にリン酸基を含む。このリン酸基は、一部の生物
学的酵素を用いる単一ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと3’末端との反応を効果的
にブロックする。
【0357】
(亜硫酸水素塩処理ゲノムDNAの連結)
亜硫酸水素塩処理ゲノムDNAの3’リン酸基は、供給業者によって推奨される標準的
条件を用いる、アルカリ性ホスファターゼでの処理、またはT4 DNAキナーゼの3’
ホスファターゼ活性によって除去される。T4 DNAキナーゼは(ATPの存在下で)
3’リン酸を除去しつつ5’リン酸を無傷に維持し、その結果、5’リン酸および3’ヒ
ドロキシルを有する生成物が得られる(
図21A参照)。対照的に、アルカリ性ホスファ
ターゼは5’および3’の双方のリン酸を除去し、その結果、3’および5’の両ヒドロ
キシルを有する生成物が得られる(
図21A参照)。
【0358】
T4 DNAキナーゼによる3’リン酸の除去の後、次いで、上記生成物をT4 RN
Aリガーゼと共にインキュベートして、McCoy et al.,前掲(1980)に
記載された条件を用いてコンカテマーを作る。種々のサイズを有する得られた線状および
環状コンカテマーは、例えば、実施例Vにてここに記載したようにランダムプライマー増
幅によって増幅される。次いで、この増幅された生成物を、例えば、実施例VIIにてこ
こに記載したように遺伝子型分類で用い、これは、ゲノムの広いメチル化プロファイリン
グを行うための手段を提供する。
【0359】
(亜硫酸水素塩処理ゲノムDNAのテイリング)
亜硫酸水素塩処理断片の3’リン酸は上記したようにして3’ヒドロキシルに変換され
る。3つの異なる方法の1つを用い、ユニバーサルテイルを生成物に加える。
【0360】
第一の方法は、ポリグアニレートテイルを3’末端に加えるためのターミナルデオキシ
ヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)およびdGTPでのDNA断片の処理である
(
図21C参照)。供給業者によって推奨される標準条件を用いて、DNAリガーゼ、お
よび3’ランダム4−量体二重鎖アダプターおよび5’ユニバーサルプライミング部位配
列を有するオリゴヌクレオチドとの断片インキュベーションの5’末端にユニバーサルテ
イルを加える(
図21C)。得られた断片を、上記断片の5’ユニバーサルプライミング
部位テイルに相補するユニバーサルプライマー(
図21CにおけるプライマーA)および
断片の3’ポリグアニレートテイルに相補するポリシチジレートプライマー(
図21Cに
おけるプライマーB)を用いるポリメラーゼ鎖反応によって増幅させる。
【0361】
第二の方法において、供給業者によって推奨される標準条件を用い、ユニバーサルプラ
イミング部位を有するオリゴヌクレオチドのT4 RNAリガーゼ−介在連結によって5
’テイルを加える。
図21Dに示すように、反応は2工程で行う。第一の工程において、
5’リン酸を有するが、3’ヒドロキシルを欠くユニバーサルプライミング部位オリゴヌ
クレオチドを、3’テイルが断片に加わるように上記断片と反応させる。第二の工程にお
いて、3’ヒドロキシルを有するが5’リン酸を欠くユニバーサルプライミング部位オリ
ゴヌクレオチドを、5’テイルが断片に加わるように上記断片と反応させる。2工程での
ブロックされたオリゴヌクレオチドの使用は、ユニバーサルプライミング部位オリゴヌク
レオチドの自己−連結により望ましくない副反応を低下させる。断片の5’ユニバーサル
プライミング部位テイルに相補するユニバーサルプライマー(
図21Dにおけるプライマ
ーA)および断片の3’ユニバーサルプライミング部位を相補するユニバーサルプライマ
ー(
図21DにおけるプライマーB)を用い、得られた断片をポリメラーゼ鎖反応によっ
て増幅する。次いで、この増幅された生成物を、例えば、実施例VIIにてここに記載し
た遺伝子型分類で用い、これは、ゲノムの広いメチル化プロファイリングを行うための手
段を提供する。
【0362】
第三の方法は、供給業者によって推奨される標準条件を用い、T4 RNAポリメラー
ゼを用いて、3’および5’両末端へのユニバーサルプライミング部位を有するオリゴヌ
クレオチドの直接的連結を使用する。次いで、相補的ユニバーサルプライマーを用いて、
ポリメラーゼ鎖反応による断片を増幅する。次いで、増幅された生成物を、例えば、実施
例VIIにてここに記載したように遺伝子型分類で用い、これは、ゲノムの広いメチル化
プロファイリングを行うための手段を提供する。
【0363】
本出願を通じて、種々の刊行物、特許および特許出願に言及した。これらの刊行物の特
許および特許出願の開示を、本出願においてここに引用してその全体を一体化させて、本
発明が属する技術分野をより十分に記載する。
【0364】
用語「含む」とは、ここでは、引用されたエレメントのみならず、いずれかのさらに別
のエレメントをさらに含むオープン−エンデッドであることをここでは意図する。
【0365】
本発明の種々の実施形態をここに広くかつ上位概念的に記載してきた。上位概念開示に
入るより狭いスピーシズおよびサブ上位概念的グループ分けの各々はこれらの発明の一部
を形成する。これは本発明の各々の上位概念的記載内に、除去すべき物質が実施形態に引
用されることにかかわらず、またはそうか否かにかかわらず、上位概念からいずれかの主
題を取り出すことを可能とする但書または否定的限定を含む。
【0366】
本発明を上記に掲げた実施例を参照して記載してきたが、本発明を逸脱することなく種
々の修飾を行うことができることは理解されるべきである。従って、本発明は特許請求の
範囲によってのみ制限される。