(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957069
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】サンスクリーン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20160714BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20160714BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20160714BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20160714BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20160714BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q17/04
A61K8/40
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/36
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-501519(P2014-501519)
(86)(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公表番号】特表2014-509618(P2014-509618A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2012054342
(87)【国際公開番号】WO2012130605
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年1月13日
(31)【優先権主張番号】0958/MUM/2011
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】IN
(31)【優先権主張番号】11170209.8
(32)【優先日】2011年6月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チヤバン,モハン・ビジヤイクマール
(72)【発明者】
【氏名】デユツガル,チヤル
(72)【発明者】
【氏名】ガウラブ,クマール
(72)【発明者】
【氏名】ラウト,ジヤンハビ・サンジヤイ
(72)【発明者】
【氏名】ワイデイヤ,アシシユ・アナント
【審査官】
松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−535779(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/129321(WO,A1)
【文献】
特表2010−501515(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/000586(WO,A1)
【文献】
特表2002−515851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンスクリーン組成物であって、
a)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチルジベンゾイルメタン、4−メチル−ジベンゾイル−エタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−tert−ブチルジベンゾイルメタン、2,4−ジメチルジベンゾイルメタン、2,5−ジメチルジベンゾイルメタン、4,4’−ジイソプロピル−ジベンゾイルメタン、2−メチル−5−イソプロピル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−tert−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン、2,4−ジメチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンもしくは2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタンから選択される、0.01から10重量%の、ジベンゾイルメタンもしくはその誘導体;
b)ケイ皮酸、サリチル酸、ジフェニルアクリル酸及びこれらの誘導体からなる群から選択される、0.01から10重量%の、油溶性のUV−B有機サンスクリーン剤
(ただし、成分d)における式Aの化合物ではない)、
c)0.01から10重量%の、非イオン性界面活性剤;
d)0.05から15重量%の式:
【化1】
の化合物[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素
、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C30アルコキシ基
、アリルオキシ、又はプロピルオキシを介して共有結合しているポリシロキサンであり、R1及びR2は同時に水素であることはなく;
ならびにR3は直鎖もしくは分岐鎖のC1−C30アルキル基である];及び
e)化粧品として許容される基剤であって、化粧品として許容される基剤の5から25重量%の脂肪酸を含む、10から99重量%の、化粧品として許容される基剤、
を含み、少なくとも6重量%の脂肪酸を含む、組成物。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤が少なくとも9のHLB値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤が、
(a)飽和の炭素鎖を有し、並びに15.5を超えるHLBを有する、脂肪アルコールエトキシレート;もしくは
(b)不飽和の炭素鎖を有し、12を超えるHLBを有する、脂肪アルコールエトキシレート
(c)15を超えるHLBを有する、アルキルフェノールエトキシレート;
(d)飽和のC12からC16炭素鎖を有し、並びに12を超えるHLBを有する、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル;もしくは
(e)不飽和のC18炭素鎖を有し、並びに9を超えるHLBを有する、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル
を含むクラスから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ジベンゾイルメタン誘導体が4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ジベンゾイルメタンもしくはその誘導体が0.1から5重量%存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
UV−B有機サンスクリーン剤が、組成物の0.1から5重量%で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
油溶性のUV−Bサンスクリーン剤が2−エチル−ヘキシル−4−メトキシシンナメートである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
全有機サンスクリーン剤を10重量%未満で含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
化粧品として許容される基剤が0.1から10重量%の石鹸を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンスクリーン組成物に関する。本発明はより詳細には、強化された太陽光線保護を提供するだけでなく、組成物を皮膚へ局所的に塗布後長時間にわたって太陽光線から保護するサンスクリーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光線は波長200nmから400nmの紫外線(UV)を含んでいる。UV−A(320から400nm)及びUV−B(290から320nm)への皮膚の暴露は、皮膚の発赤、局所的な炎症、日焼け、黒色腫及びしわの形成など種々の問題の原因となる。紫外線はまた、髪へのダメージを与えることも知られている。従って、UV−A及びUV−B双方の光線の悪影響から、皮膚及びその他の人体のケラチン基質を保護することが望ましい
【0003】
紫外線から皮膚を保護するためにサンスクリーン剤を含む化粧品組成物が使用される。最も一般的に使用されるUV−Aサンスクリーン剤はジベンゾイルメタンクラスのものである。これは、広くサンスクリーン範囲を得るために、しばしばUV−Bサンスクリーン剤と一緒に使用される。ジベンゾイルメタン化合物が、幾つかの油溶性の有機サンスクリーン剤と一緒にサンスクリーン組成物に使用されると、皮膚に塗布されて太陽光線に曝されたとき、ジベンゾイルメタンサンスクリーン剤の安定性が低いことが報告されている。
【0004】
さらに、太陽光線からの保護の尺度である、良好な太陽光線保護指数(SPF)を得るために、処方する者はUV−A(例えばジベンゾイルメタン化合物)及びUV−Bサンスクリーン剤のそれぞれを大量に含める必要があるが、UV−Bサンスクリーン剤はジベンゾイルメタンクラスの化合物の安定性の問題を悪化させる。本発明者らは特定の類の非イオン性の界面活性剤を特定の安定剤と共に含めると、低量の有機サンスクリーン剤により高いSPF効果が提供されるだけでなく、有機サンスクリーン剤が組成物中でより安定になることで長期間のSPFが得られることを見出した。
【0005】
非イオン性界面活性剤は、皮膚組成物における使用のために従来開示されてきた。WO2008/022946(Unilever)は0.1から10%のジベンゾイルメタンもしくはその誘導体、0.1から10重量%のp−メトキシケイ皮酸もしくはその誘導体、0.5から8重量%のC8からC18脂肪アルコールエトキシレート及び0.5から8%のポリアルキレングリコールを含む光安定性化粧品組成物を開示している。
【0006】
公開インド特許出願第514/MUM/2006号(Hindustan Unilever Ltd)は新規なシリコーンサンスクリーン剤を用いる安定なサンスクリーン組成物を開示しており、サンスクリーン剤の1つはアリルオキシ官能化シアノアクリレートサンスクリーン剤である。
【0007】
US2009/039322 (Hallstar)はUV−分解性光反応性化合物の光安定性を増加させるためのアルコキシポリエステル化合物及び方法を開示している。
【0008】
上記で参照した特許文献はサンスクリーン剤含有組成物の安定性を改善することを目的としているが、これらの特許は、本発明が請求するような、少ない量の有機サンスクリーン剤を用いながらSPFの強化及び持続が得られるサンスクリーン組成物を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/022946号
【特許文献2】インド特許出願公開第514/MUM/2006号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/039322号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、本明細書で使用されているUV−Aサンスクリーン剤の効果を確実に持続させながら、従来技術の欠点を取り除いて、高SPF光保護サンスクリーン組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は比較的に低量のサンスクリーン剤を用いることによってコストを抑えて、上記の目的を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はサンスクリーン組成物であって、
a)0.01から10重量%の、ジベンゾイルメタンもしくはその誘導体;
b)0.01から10重量%の、油溶性のUV−B有機サンスクリーン剤、
c)0.01から10重量%の、非イオン性界面活性剤;
d)0.05から15重量%の式:
【0013】
【化1】
の化合物[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又は直鎖もしくは分岐鎖のC1−C30アルコキシ基であり、R1及びR2は同時に水素であることはなく;
ならびにR3は直鎖もしくは分岐鎖のC1−C30アルキル基である];及び
e)化粧品として許容される基剤
を含む、組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これらの態様およびその他の態様、特徴ならびに優位性は、以下の詳細な記載及び添付の特許請求の範囲を読むことによって、通常の技術者に明らかになろう。誤解を避けるために、本発明の1つの態様の特徴はいずれも、本発明の他の任意の態様において利用することができる。用語「含む(comprising)」は「含む(including)」を意味するものであり、必ずしも「からなる」もしくは「から構成される」ことを意味しない。言い換えるなら、掲げられた段階もしくは選択肢は網羅的である必要はない。明細書中に提供される下記実施例は本発明を明確にするものであり、本発明をこれら実施例そのものに限定しようとする意図はないことに留意されたい。同様に、すべての百分率は他に指示がない限り、重量/重量百分率である。実施例及び比較例において、又は他に明確に指示している場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲の中で材料の量もしくは反応の条件、材料の物性及び/又は使用を示しているすべての数値は「約」という言葉で修飾されているものと解釈される。「xからy」という形式で表現されている数値範囲は、x及びyを含むものと解釈される。「xからy」という形式で複数の好ましい範囲が記載される特定の場合にも異なる端点を組み合わせたすべての範囲が意図されていると理解される。
【0015】
本明細書に使用される場合「サンスクリーン組成物」は、哺乳動物、特に人の皮膚及び/又は毛髪の、太陽光線に暴露される部分への局所適用のための組成物を含むことを意味する。このような組成物は一般的にリーブ−オンもしくはリンスオフと分類され、人体に適用されて、やはり外観、洗浄、匂い制御もしくは全般的な美的感覚を改善するための製品が含まれる。より好ましくはリーブオン製品である。本発明の組成物はリキッド、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ジェルもしくは化粧水の形態であることができ、あるいは器具を用いて又はフェイスマスク、パッドもしくはパッチを介して適用することができる。このようなサンスクリーン組成物の非限定的な例は、リーブオンスキンローション、クリーム、デオドラント剤、消臭剤、口紅、ファウンデーション、マスカラ、日焼け剤、およびサンスクリーンローションを含む。本明細に使用される場合「皮膚」は顔および体(例えば、首、胸、背中、腕、脇、手、脚、臀部及び頭皮)の皮膚特にこれらのうちの太陽光線に曝される部分を意味する。本発明の組成物はまた、例えば毛髪などの皮膚以外の人体のケラチン性基質のいずれかへの適用に関連し、製品は光保護を提供する特定の手段により配合される。
【0016】
本発明の優位性は、サンスクリーン組成物が15、より好ましくは16、さらにより好ましくは18、いっそうさらにより好ましくは20を超えるSPFを、及び最も好ましい態様においては25を超えるSPFを提供することができることである。組成物は、組成物の重量に対して、10重量%未満、好ましくは8重量%未満、より好ましくは7重量%未満、及びさらにより好ましくは6重量%未満の全有機サンスクリーン剤を含むのが好ましい。
【0017】
本発明のサンスクリーン組成物は、ジベンゾイルメタンもしくはその誘導体である、UV−Aサンスクリーン剤を含む。好ましいジベンゾイル誘導体は4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチルジベンゾイルメタン、4−メチル−ジベンゾイル−エタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−tert−ブチルジベンゾイルメタン、2,4−ジメチルジベンゾイルメタン、2,5−ジメチルジベンゾイルメタン、4,4’−ジイソプロピル−ジベンゾイルメタン、2−メチル−5−イソプロピル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−tert−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン、2,4−ジメチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンもしくは2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタンから選択される。最も好ましいジベンゾイルメタン誘導体は4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンである。好ましくは本発明の組成物は、組成物の総重量を基準として0.1から5重量%、より好ましくは0.2から5重量%、さらにより好ましくは0.4から3重量%のジベンゾイルメタンもしくはその誘導体を、前記範囲に包含されているすべての範囲を含めて、含む。
【0018】
油溶性UV−B有機サンスクリーン剤は、好ましくは、コハク酸、サリチル酸、ジフェニルアクリル酸もしくはこれらの誘導体の分類から選択される。市場購入可能であり並びに本発明の組成物中に含有させるのに有用な油溶性UV−Bサンスクリーン剤の非限定的な例として例示されるものは、Octisalate(商標)(サリチル酸オクチル)、Homosalate(商標)(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(eyclohexyl) 2−ヒドロキシベンゾエート)、Neo Heliopan(商標)(エチルヘキシル メトキシシンナメート(Neo Heliopan AV)及びサリチル酸エチルヘキシル(Neo Heliopan OS)を含む一連の有機UVフィルター)、Octocrylene(商標)(2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニル−2−プロペノエート)、オクシベンゾンもしくはParsol MCX(商標)(2−エチルヘキシル−4−メトキシシンナメート)である。使用している間、高SPFと共に持続性のUV−A安定性を提供する、本発明の目的は、組成物の0.1から7重量%、好ましくは0.5から6重量%、より好ましくは1から5重量%の範囲の全有機UV−Bサンスクリーン剤を用いることにより達成されることが好ましい。
【0019】
本発明の組成物は水溶性の有機サンスクリーン剤を実質的に含まないことが好ましい。水溶性のサンスクリーン剤を少量、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、及び最も好ましくは0.1%未満包含してもよいが、本発明の組成物に含まれないのが最適である。
【0020】
本発明の利益に貢献する重要な成分は非イオン性界面活性剤である。本発明の組成物に使用される非イオン性界面活性剤は少なくとも9のHLB値を有する。
【0021】
HLBはHLB=20×Mh/MというGriffin法を使用して計算され、ここでMhは分子の親水性部分の分子量であり、並びにMは分子全体の分子量であり、結果は0から20の任意の尺度で与えられる。種々の界面活性剤についての、代表的な値は以下の通りである。
【0022】
・ <10:脂溶性(非水溶性)
・ >10:水溶性
・ 4から8の値は泡立ち防止性剤を示す
・ 7から11の値はW/O(油中水)乳化剤を示す
・ 12から16の値は水中油乳化剤を示す
・ 11から14の値は湿潤剤を示す
・ 12から15の値は分散剤を示す
・ 16から20の値は可溶化剤もしくはヒドロトロープを示す
【0023】
非イオン性界面活性剤は、好ましくは下記5つのクラス:
(a)飽和の炭素鎖を有し並びに15.5を超えるHLBを有する、脂肪アルコールエトキシレート
(b)不飽和の炭素鎖を有し並びに12を超えるHLBを有する、脂肪アルコールエトキシレート
(c)15を超えるHLBを有する、アルキルフェノールエトキシレート
(d)飽和のC12からC16炭素鎖を有し並びに12を超えるHLBを有する、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル
(e)不飽和のC18炭素鎖を有し並びに9を超えるHLBを有する、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル
から選択される。
【0024】
(a)飽和の炭素鎖を有し並びに15.5を超えるHLBを有する脂肪アルコールエトキシレートの適切な例はBrij 35(ラウレス−23もしくはHO−(C
2H
4O)
23C
12H
25もしくはポリオキシエチレンラウリルエーテル(C12EO23化合物)としても公知)又はBrij 700
(ステアレス−100もしくはポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(C18EO100) としても公知)である。(b)不飽和の炭素鎖を有し、12を超えるHLBを有する脂肪アルコールエトキシレートの類の適切な例はBrij 97(オレス−10もしくはHO−(C
2H
4O)
10C
18H
35もしくはポリオキシエチレン
10オレイルエーテル(不飽和C18EO12) としても公知)、又はBrij 99(ポリオキシエチレン(20) オレイルエーテル(不飽和C18EO20))である。本発明の組成物に使用するための、(c)15を超えるHLBを有するアルキルフェノールエトキシレートの適切な例は、Triton X 165、Triton X 305、Triton 405、もしくはTriton X 705である。(d)飽和のC12からC16炭素鎖を有し並びに12を超えるHLBを有するポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、及び(e)不飽和のC18炭素鎖を有し並びに9を超えるHLBを有するポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの適切な例は、Tween 20、Tween 21
、Tween 40、Tween 80、Tween 81もしくはTween 85 トリオレエートである。非イオン性界面活性剤は組成物の0.1から5重量%、好ましくは0.2から4重量%、より好ましくは0.2から3重量%で含まれる。特に有用な非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレン/ヒドロキシプロピレンベースの界面活性剤である。
【0025】
本発明の組成物は0.05から15重量%の式A:
【0026】
【化2】
の化合物[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又は直鎖もしくは分岐鎖のC1−C30アルコキシ基であり、R1及びR2は同時に水素であることはなく;並びにR3は直鎖もしくは分岐鎖のC1−C30アルキル基である]を含む。
【0027】
R3は、好ましくはC2−C20アルキル基である。
【0028】
基R1及び/又はR2は、好ましくは直鎖もしくは分岐鎖のC1 −C8アルコキシ基である。最も好ましくは、R1及び/又はR2はメトキシ基、もしくはアルコキシ基を介して繋がっているポリマーである。
【0029】
非常に好ましい態様はR1がメトキシであり、R2が水素であり並びにR3がエチルヘキシル基のものである。この場合の化合物は、エチルヘキシルメトキシクリレン(EHMC):
【0031】
他の有用な式Aの化合物はR1がアリルオキシであるもので、これはエチルアリルオキシクリレン:
【0033】
やはり他の有用な式Aの化合物は、R1がプロピルオキシを介して共有結合しているポリシロキサン(−OCH2CH2CH2−ポリシロキサン)であり、従って前記化合物はポリマープロピルオキシクリレン:
【0035】
式Aの化合物は好ましくは、組成物の0.1から10重量%、より好ましくは0.1から4重量%で存在する。本発明の好ましい組成物は、式Aの化合物に対するジベンゾイルメタン誘導体の重量比が10:1から1:10、好ましくは5:1から1:5、さらにより好ましくは2:1から1:2のものである。
【0036】
UV−Aサンスクリーン剤(例えばジベンゾイルメタンクラス)及びUV−Bサンスクリーン剤の組合せは既に高SPF効果を得るために使用されている。しかしながら、これら2つを一緒に使用すると、UV−A化合物が不安定になることが認められている。UV−Aサンスクリーン剤とUV−Bサンスクリーン剤を含む組成物における、オクトクリレンのような周知の光安定剤の使用は、サンスクリーン剤の量が少ない場合、所望の高SPFが得られないことが既に認められている。驚くべきことに、本発明の組成物における式Aの化合物の使用が高SPFを提供するだけでなく(安定性に面で)使用されるサンスクリーン剤の効果を強化することが見いだされた。理論に縛られるわけではないが、この安定性の強化は、最適な程度まで一重項励起状態の消光剤として作用する式Aの化合物と組合せた非イオン性界面活性剤を含む本発明の組成物に使用された場合のUVサンスクリーン剤の相乗効果によるものと考えられる。式Aの化合物の代わりに、他の周知の安定剤、例えばOctocrylene(商標)又はウンデシルクリレンジメチコン(Hallbrite型PSF)又はPolycrylene(商標)(末端をシアノジフェニルプロペン酸で封鎖したアジピン酸とネオペンチルグリコールのコポリマーであるPolyester 8)が使用された場合には、所望の効果が認められない。
【0037】
本発明の組成物は化粧品として許容される基剤を含む。化粧品として許容される基剤は、製品を好ましくはクリーム、ローション、ジェルもしくはエマルジョン形態で得るものである。より好ましい形態はクリーム、さらにより好ましくはバニシングクリームである。バニシングクリーム基剤は5から35%、より好ましくは5から20%の脂肪酸を含むものである。基剤は0.1から10%、より好ましくは0.1から3%の石鹸を含む。バニシングクリームにおいて、C
12からC
20脂肪酸が特に好ましく、C
14からC
18脂肪酸が、さらにより好ましい。クリームにおいて、好ましくは脂肪酸は実質的にステアリン酸とパルミチン酸の混合物である。バニシングクリーム中の石鹸は、脂肪酸のアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩を含む。石鹸は、好ましくは脂肪酸混合物のカリウム塩である。バニシングクリーム基剤中の脂肪酸はしばしば、ヒストリン酸(hystric acid)を使用して調製される。ヒストリン酸は実質的(一般的に約90から95%)にはステアリン酸とパルミチン酸の混合物である。従って、バニシングクリーム基剤を調製するための、ヒストリン酸及びその石鹸の含有は本発明の範囲内にある。
特に好ましくは、組成物は少なくとも6%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは12%の脂肪酸を含む。化粧品として許容される基剤は通常、組成物の10から99.9重量%、好ましくは50から99重量%である。このような高濃度の脂肪酸の使用は、高SPFにも寄与することが認められている。化粧品として許容される基剤は、好ましくは水を含む。水は、好ましくは組成物の35から90重量%、より好ましくは50から85重量%、さらにより好ましくは50から80重量%で含まれる。
【0038】
本発明の組成物中には、その他の太陽光線保護剤、例えば無機サンブロックが、好ましくは使われ得る。無機サンブロックは例えば、酸化亜鉛、酸化鉄、ヒュームドシリカなどのシリカ、もしくは酸化チタンを含む。好ましくは、本発明による組成物に組み込まれる無機サンブロックの総量は、組成物の0.1から5重量%である。
【0039】
本発明の組成物は追加的に皮膚美白剤を含んでもよい。好ましくは、皮膚美白剤はビタミンB3化合物もしくはその誘導体、例えばナイアシン、ニコチン酸、ナイアシンアミドその他の周知の皮膚美白剤、例えばアロエエキス、乳酸アンモニウム、アゼライン酸、コウジ酸、クエン酸エステル、エラグ酸、グリコール酸、緑茶エキス、ハイドロキノン、レモンエキス、リノール酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、などのビタミン類、ジカルボン酸、レゾルシン誘導体、乳酸のようなヒドロキシカルボン酸及びその塩、例えば乳酸ナトリウム、並びにこれらの混合物から選択される。本発明に関して、ビタミンB3もしくはその誘導体、例えばナイアシン、ニコチン酸、ナイアシンアミドは好ましい皮膚美白剤であり、最も好ましいのはナイアシンアミドである。使用される場合、ナイアシンアミドは組成物の0.1から10重量%、より好ましくは0.2から5重量%の範囲の量で存在する。
【0040】
本発明による組成物はまた、その他の希釈剤を含んでいてもよい。希釈剤は、組成物を皮膚に適用した時、組成物中に存在する他の材料の分配を容易にするための分散剤もしくは担体として作用する。水以外の希釈剤には、液体もしくは固体のエモリエント、溶剤、保湿剤、増粘剤及び粉末が含まれ得る。
【0041】
本発明の組成物は化粧品として許容される担体として、慣習的な消臭剤基剤を含んでいてもよい。消臭剤によって、腋の下やそのほかの部分に塗布する個人的な消臭のため、制汗剤を含んでも含んでいなくともよい、スティック、ロール−オン、もしくは噴射剤媒体中の製品が意味される。
【0042】
消臭組成物は一般的に硬い固体、軟らかな固体、ジェル、クリーム、および液体の形態であることができ、組成物の物性にあったアプリケーターを使って使用される。
【0043】
本発明の組成物は広範囲の他の任意成分を含むことができる。参照により、その内容全体が本明細書に組込まれるCTFA Cosmetic Ingredient Handbook, Second Edition, 1992は一般的にスキンケア産業において使用される皮膚非限定的な化粧品及び医薬成分を広く記載しており、これらの成分は本発明の組成物における使用において適切である。例として:酸化防止剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、着色剤、増粘剤、ポリマー、収斂剤、香料、保湿剤、不透明化剤、コンディショナー、剥離剤、pH調整剤、防腐剤、天然エキス、精油、スキンセンセート(skin
sensates)、皮膚緩和剤、及び皮膚治癒剤が含まれる。
【0044】
以下の非限定的な実施例により、ここで、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1から3:本発明以外の組成物と比較した本発明の組成物の光安定性
表1に示す光保護性パーソナルケアバニシングクリーム組成物を調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示す組成物(実施例1から3)を4個の清浄なガラスプレート上に塗布(およそ3mg/cm
2)して均一な厚さの薄膜を形成させた。これらのうちから、3個のプレートをAtlas疑似太陽光放射(UVA束、5.5nW/cm
2)に曝した。プレートを1個ずつそれぞれUV暴露の30分、60分及び120分後に除去した。4個目のプレートは暴露しないまま保存し、対照とした。上記手順を完了した後、4個すべてのクリームの膜を個別に、適切なHPLC級のメタノールに溶解した。UVA(Parsol
1789)を、Perkin ElmerUV/可視分光計で定量した。各溶液について、水晶キュベット及び対応するブランク溶液分光計を使用して、200−800nm範囲のスキャニングで、吸収を測定したParsol 1789の残存%のデータを表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2のデータは、本発明による組成物(実施例1)が、式Aの化合物を使わない組成物(実施例2)に対し非常に優秀であり並びに他の周知のサンスクリーン剤安定剤(オクトクリレン(商標))を使用した組成物に対しても非常に優秀であることを示している。
【0050】
実施例4から6
表1に示す種々の組成物を、エチルヘキシルメトキシクリレン(EHMC)とBrij 35の濃度を、水の量を変えて調製した。インビトロのSPFを、標準手順ISO/WD 24445に従って、Optometries 290S装置モデルを用いて測定した。使用した基板は8cmのTransporeテープ(3M
社)である。試料は2mg/cm
2で塗布した。測定したSPFを表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3のデータは、非イオン性界面活性剤及びエチルヘキシルメトキシクリレンの使用により、ジベンゾイルメタンサンスクリーン剤及び油溶性UV−Bサンスクリーン剤を含むサンスクリーン組成物における太陽光線保護に大きな改善を与えたことを示す。
【0053】
実施例7:EHMCを用いた光保護性ヘアケア組成物
本発明の組成物をヘアケア組成物としても作製した。ヘアケア組成物をヘアスタイリングジェルの形態に作製した。Aristoflex AVC(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドンコポリマー及びBrij−35をホモジナイザーを用いて水中に溶解した。Parsol 1789(商標)、Parsol MCX及びEHMCを個別に、炭酸プロピレン中に溶解した。次いで上記2つの混合物を混合し、高速ホモジナイザーを用いて均一にした。組成物を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
本発明は従って、使用されるUV−Aサンスクリーン剤の効果を持続させながら、高SPF光保護サンスクリーン組成物を提供する。これらは全て低量のサンスクリーン剤を使用して達成され、よってコストが抑えられている。