(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯の捩れ方向は、前記リングギヤと連係する前記ピニオン側ヘリカル外歯の捩れ方向と同一の方向に設定されている請求項1に記載のスタータ。
前記ピニオン側ヘリカル外歯、前記ピニオン側ヘリカル内歯および前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯の捩れ方向は、前記リングギヤの歯部の捩れ方向に基づき規定される請求項1または2に記載のスタータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、スムーズにリングギヤとピニオンとを連係させるという点では優れているが、以下の点で課題が残されている。
例えば、エンジンの回転中(すなわちリングギヤの回転中)に運転者がキー操作を誤るなどしてスタータを作動させた場合には、ピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度よりも遅い状態で、ピニオンがリングギヤ側に押し出される場合がある。
また、例えばアイドリングストップ機能を備えた自動車にあっては、エンジンの燃料噴射を停止した直後にエンジンを再始動させる場合、リングギヤが惰性回転している場合がある。したがって、エンジンの再始動時には、上述同様にピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度よりも遅い状態で、ピニオンがリングギヤ側に押し出されることがある。
このとき、ピニオンギヤとリングギヤの歯同志の噛合位相がずれていれば、ギヤ同志が噛合うことはなく、また、噛合位相が合ってピニオンギヤとリングギヤが噛合ってしまった場合でも、スタータに組み込まれているワンウェイクラッチが作動して、リングギヤ側の回転がモータ部に伝達されることはないよう設定されている。
しかしながら、歯同志が噛合った状態が継続すると、スタータのクラッチ機構にリングギヤの回転力による負荷が継続して伝達されるため、スタータの部品の寿命が低下する可能性がある。
【0008】
そこで本発明は、リングギヤとピニオンとの良好な連係性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができるスタータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の態様によれば、スタータは、モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、前記出力軸上にスライド移動可能、かつエンジンのリングギヤと連係可能に設けられ、前記出力軸の回転を前記リングギヤに伝達するためのピニオン機構と、前記モータ部への通電および遮断を行うとともに、前記ピニオン機構に前記リングギヤ側へ向かう押圧力を付勢する電磁装置と、を備える。前記ピニオン機構は、前記出力軸に外挿され、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なピニオンインナと、前記ピニオンインナの径方向外側に、前記ピニオンインナと同心円状に設けられ、前記リングギヤと
噛合って連係可能なピニオンと、前記ピニオンと前記ピニオンインナとの間に配置され、前記ピニオンを前記リングギヤ側に向かって付勢するピニオンスプリングと、を備える。前記ピニオンには、捩れ角を有し前記リングギヤに連係するピニオン側ヘリカル外歯と、捩れ角を有し前記ピニオンインナに連係するピニオン側ヘリカル内歯とが形成されている。一方、前記ピニオンインナには、捩れ角を有し前記ピニオン側ヘリカル内歯に連係するピニオンインナ側ヘリカル外歯が形成されている。前記ピニオン側ヘリカル外歯は、前記リングギヤと前記ピニオンと
が噛合されずに衝突した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が遅い場合、前記リングギヤから離反する方向に向かって前記
ピニオン側ヘリカル外歯にスラスト荷重が発生するように形成され、かつ前記リングギヤと前記ピニオンと
が噛合した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が速い場合、前記リングギヤに接近する方向に向かって前記
ピニオン側ヘリカル外歯にスラスト荷重が発生するように形成されるとともに、前記ピニオン側ヘリカル内歯および前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯は、前記リングギヤと前記ピニオンと
が噛合されずに衝突した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が遅い場合、前記リングギヤ
から離反する方向に向かって前記ピニオンにスラスト荷重が発生するように形成され、かつ前記リングギヤと前記ピニオンと
が噛合した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が速い場合、前記リングギヤ
に接近する方向に向かって前記ピニオンにスラスト荷重が発生するように形成されている。
【0010】
このように構成することで、リングギヤの回転速度よりもピニオンの回転速度が遅い場合において、リングギヤとピニオンとが連係してリングギヤからピニオンに回転力が伝達されたときに、リングギヤから離反する方向にピニオンを容易にスライド移動させることができる。つまり、ピニオンがピニオンインナ側ヘリカル外歯とピニオン側ヘリカル内歯とのヘリカル角度に沿って軸方向に下がることで、端面接触時のピニオンの衝撃力を緩和し、ピニオンとリングギヤとの連係時における部品の摩耗を抑制することができる。これにより、リングギヤの回転力による負荷がスタータに伝達するのを抑制できるので、部品の延命化を図ることができる。
また、リングギヤから離反する方向にスライド移動するピニオンにはリングギヤの回転によって回転力が付与され、この状態を繰り返す度にピニオンの回転速度は加速し、ピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
そして、リングギヤの回転速度に対してピニオンの回転速度が同じ(同期した状態)又は速くなって、一旦リングギヤとピニオンとが連係し始めると、ピニオンにはリングギヤに接近する方向に向かってスラスト荷重が発生するので、ピニオンをリングギヤにスムーズに連係させることができる。
また、ピニオンとピニオンインナとの間にピニオンスプリングを備えているので、ピニオンとリングギヤとの連係時における衝撃を吸収しつつピニオンとリングギヤとの回転速度を同期させながら、ピニオンスプリングの付勢力によりピニオンをリングギヤ側に押圧できる。したがって、ピニオンとリングギヤとの連係時における部品の摩耗を抑制するとともに、素早く連係させることができる。
したがって、リングギヤとピニオンとの良好な連係性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係るスタータによれば、前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯の捩れ方向は、前記リングギヤと連係する前記ピニオン側ヘリカル外歯の捩れ方向と同一の方向に設定されている。
【0012】
このように構成することで、ピニオンとリングギヤとの連係部分およびピニオンとピニオンインナとの連係部分に発生するスラスト荷重の方向を逆向きにすることができる。これにより、リングギヤの回転速度よりもピニオンの回転速度が遅い場合、ピニオンとリングギヤとの端面接触時にリングギヤから離反する方向にピニオンを移動させることができるとともに、リングギヤの回転速度よりもピニオンの回転速度が速い場合に、リングギヤに接近する方向にピニオンを移動させることができる。したがって、リングギヤとピニオンとのさらに良好な連係性を確保しつつ、さらなる部品の延命化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の第3の態様によれば、スタータは、前記ピニオン側ヘリカル外歯、前記ピニオン側ヘリカル内歯および前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯の捩れ方向は、前記リングギヤの歯部の捩れ方向に基づき規定される。
【0014】
このように構成することで、ピニオンとリングギヤとの間に、例えばアイドルギヤ等の他のギヤが介在している構造であっても、ピニオンのピニオン側ヘリカル外歯、ピニオン側ヘリカル内歯およびピニオンインナ側ヘリカル外歯の捩れ方向を簡単に設定できる。したがって、ピニオンとリングギヤとが直接噛合することなく連係される構造であっても、本発明の態様を適用できる。
【0015】
また、本発明の第4の態様によれば、スタータは、前記電磁装置は、筒状に設けられた励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記ピニオン機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、を備える。前記電磁装置は、前記出力軸と同軸に設けられている。
【0016】
このように構成することで、電磁装置と出力軸とが同軸に設けられた、所謂一軸式のスタータに好適に採用できる。したがって、一軸式のスタータにおいても、リングギヤとピニオンとの良好な連係性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記によれば、リングギヤの回転速度よりもピニオンの回転速度が遅い場合において、リングギヤとピニオンとが連係してリングギヤからピニオンに回転力が伝達されたときに、リングギヤから離反する方向にピニオンを容易にスライド移動させることができる。つまり、ピニオンがピニオンインナ側ヘリカル外歯とピニオン側ヘリカル内歯とのヘリカル角度に沿って軸方向に下がることで、端面接触時のピニオンの衝撃力を緩和し、ピニオンとリングギヤとの連係時における部品の摩耗を抑制することができる。これにより、リングギヤの回転力による負荷がスタータに伝達するのを抑制できるので、部品の延命化を図ることができる。
また、リングギヤから離反する方向にスライド移動するピニオンにはリングギヤの回転によって回転力が付与され、この状態を繰り返す度にピニオンの回転速度は加速し、ピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
そして、リングギヤの回転速度に対してピニオンの回転速度が同じ(同期した状態)又は速くなって、一旦リングギヤとピニオンとが連係し始めると、ピニオンにはリングギヤに接近する方向に向かってスラスト荷重が発生するので、ピニオンをリングギヤにスムーズに連係させることができる。
また、ピニオンとピニオンインナとの間にピニオンスプリングを備えているので、ピニオンとリングギヤとの連係時における衝撃を吸収しつつピニオンとリングギヤとの回転速度を同期させながら、ピニオンスプリングの付勢力によりピニオンをリングギヤ側に押圧できる。したがって、ピニオンとリングギヤとの連係時における部品の摩耗を抑制するとともに、素早く連係させることができる。
したがって、リングギヤとピニオンとの良好な連係性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(スタータ)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、スタータ1の断面図である。なお、
図1では、中心線より上側にスタータ1の静止状態を示し、下側にスタータ1の通電状態(ピニオン74とリングギヤ23とが噛合した状態)を示している。
【0020】
同図に示すように、スタータ1は、自動車の不図示のエンジンの始動に必要な回転力を発生するための部材であって、モータ部3と、モータ部3の一方側(
図1における左側)に連結されている出力軸4と、出力軸4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5、およびピニオン機構70と、モータ部3に対する電源供給路を開閉するスイッチユニット7と、スイッチユニット7の可動接点板8、およびピニオン機構70を軸方向に沿って移動させるための電磁装置9と、を有している。
【0021】
(モータ部)
モータ部3は、ブラシ付直流モータ51と、ブラシ付直流モータ51の回転軸52に連結され、この回転軸52の回転力を出力軸4に伝達するための遊星歯車機構2とにより構成されている。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
【0022】
モータヨーク53の軸方向他方側(
図1における右側)の端部には、モータヨーク53の開口部53aを閉塞するエンドプレート55が設けられている。エンドプレート55の径方向略中央には、回転軸52の他方側端を回転自在に支持するための滑り軸受56a、およびスラスト軸受56bが設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(
図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
【0023】
アーマチュアコア58は、放射状に形成された複数のティース(不図示)と、周方向に隣接する各ティース間に形成された複数のスロット(不図示)とを有している。周方向に所定間隔をあけた各スロット間には、コイル59が例えば波巻により巻装されている。コイル59の端末部は、コンミテータ61に向かって引き出されている。
【0024】
コンミテータ61には、複数枚(例えば、この実施形態では26枚)のセグメント62が周方向に沿って、かつ互いに電気的に絶縁されるように所定間隔を空けた状態で設けられている。各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されているコイル59の端末部が接続されている。
【0025】
コンミテータ61の径方向外側には、ブラシホルダ33が設けられている。ブラシホルダ33には、固定接点板34、スイッチシャフト30周りを保護するカバー45が装着されている。ブラシホルダ33およびカバー45は、モータヨーク53およびハウジング17に挟持された状態で固定されている。
【0026】
固定接点板34は、スイッチシャフト30を挟んでコンミテータ61側である径方向内側に配置された第一固定接点板34aと、コンミテータ61とは反対側である径方向外側に配置された第二固定接点板34bとに分割構成されている。
これら第一固定接点板34a、および第二固定接点板34bに、後述する可動接点板8が跨るように当接するように構成されている。可動接点板8が第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bに当接することにより、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bが電気的に接続される。
【0027】
第二固定接点板34bの外周側には、軸方向に折曲して一体形成された切起し部34cが設けられ、この切起し部34cの挿通孔34dを介して軸端子44aがブラシホルダ33の外壁を貫通してスタータ1の径方向外側に突出するよう設けられている。さらに、軸端子44aの突出側の先端には、バッテリの陽極が電気的に接続されるターミナルボルト44bが取付けられている。なお、このブラシホルダ33には、固定接点板34、スイッチシャフト30周りを保護するカバー45が装着されている。
【0028】
ブラシホルダ33には、コンミテータ61の周囲に4つのブラシ41が、径方向に沿って進退可能に配置されている。ブラシ41は、不図示の外部バッテリに電気的に接続され、コンミテータ61に外部バッテリの電力を供給するための部材である。各ブラシ41の基端側には、ブラシスプリング42が設けられている。このブラシスプリング42によって、各ブラシ41がコンミテータ61側に向かって付勢され、各ブラシ41の先端がコンミテータ61のセグメント62に摺接するように構成されている。
【0029】
4つのブラシ41は、2つの陽極側ブラシと2つの陰極側ブラシとで構成され、このうち2つの陽極側ブラシが不図示のピグテールを介して固定接点板34の第一固定接点板34aに接続されている。一方、固定接点板34の第二固定接点板34bには、ターミナルボルト44bを介して不図示のバッテリの陽極が電気的に接続される。
【0030】
すなわち、固定接点板34に可動接点板8が当接した際、ターミナルボルト44b、固定接点板34、ピグテール(不図示)を介して4つのブラシ41のうちの2つの陽極側ブラシに電圧が印加され、コイル59に電流が供給されるようになっている。
また、4つのブラシ41のうち、2つの陰極側ブラシは、不図示のピグテールを介してリング状のセンタープレートに接続されている。そして、このセンタープレート、ハウジング17、および不図示の車体を介して、バッテリの陰極に4つのブラシ41のうちの2つの陰極側ブラシが電気的に接続されるように構成されている。
【0031】
センタープレートの径方向略中央には、ブラシ付直流モータ51の回転軸52が挿通可能な筒部43bがブラシホルダ33側(コンミテータ61側)に向かって突出するように一体成形されている。コンミテータ61には、筒部43bを受け入れ可能な略円環状の溝部61aが形成されており、この溝部61aに筒部43bが配置されている。これにより、後述の遊星歯車機構2等に使用される潤滑剤がブラシ付直流モータ51側に侵入してしまうのが防止される。
【0032】
モータヨーク53のエンドプレート55とは反対側には、有底筒状のトッププレート12が設けられている。トッププレート12には、アーマチュアコア58側の内面に、遊星歯車機構2が設けられている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体成形されているサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
【0033】
複数のプラネタリギヤ14は、キャリアプレート16により連結されている。キャリアプレート16には、各プラネタリギヤ14に対応する位置に、それぞれ支持シャフト16aが設けられており、ここにプラネタリギヤ14が回転自在に支持されている。また、キャリアプレート16の径方向略中央には、出力軸4がセレーション接合により噛合されている。
【0034】
内歯リングギヤ15は、トッププレート12のアーマチュアコア58側の内面に一体成形されている。トッププレート12の内周面における径方向略中央には、滑り軸受12aが設けられている。滑り軸受12aは、回転軸52と同軸上に配置されている出力軸4の他方側端(
図1における右側端)を回転自在に支持している。
【0035】
また、トッププレート12には、出力軸4、クラッチ機構5、ピニオン機構70、および電磁装置9等が内装されており、不図示のエンジンにスタータ1を固定するためのアルミニウム製のハウジング17が装着されている。ハウジング17は、軸方向一方側(
図1における左側)に底部17cを有し、軸方向他方側(
図1における右側)に開口部17aを有する有底筒状にダイカスト鋳造にて形成されている。
【0036】
ハウジング17の開口部17a側には、トッププレート12が開口部17aを閉塞するように接合されている。
ハウジング17の開口部17a側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部17bが刻設されている。また、モータヨーク53の軸方向他方側(
図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部17bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部17bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とハウジング17とが一体化される。
【0037】
ハウジング17の内壁には、後述するクラッチアウタ18のモータ部3側への変位を規制するリング状のストッパ94が設けられている。このストッパ94は、樹脂やゴム等により形成され、クラッチアウタ18が当接した際の衝撃を緩和できるように構成されている。
【0038】
ハウジング17の底部17cには、出力軸4と同軸に、有底の軸受孔47が形成されている。軸受孔47の内径は、出力軸4の外径よりも大きく設定されている。
また、軸受孔47には、出力軸4の一方側端(
図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受17dが圧入固定されている。この滑り軸受17dには所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、出力軸4を円滑に摺接させることができるように構成されている。
【0039】
また、軸受孔47の底部には、ハウジング17の底部17cと出力軸4の一方側端面4cとの間に、荷重受部材50が配置されている。荷重受部材50は、平板状の金属部材であり、例えばプレスにより形成されたリング状のワッシャが採用される。荷重受部材50は、硬度が出力軸4よりも高く耐摩耗性に優れた材料により形成されている。
【0040】
なお、荷重受部材50の周囲には、出力軸4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布されている。このグリスに、滑り軸受17dに含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されているため、滑り軸受17dの潤滑油を長期間保持できるように構成されている。
【0041】
一方、出力軸4の軸方向他方側端(
図1における右側端)には、回転軸52の一方側端(
図1における左側端)を挿入可能な凹部4aが形成されている。凹部4aの内周面には、滑り軸受4bが圧入されており、出力軸4と回転軸52とが相対回転可能に連結される。
【0042】
(クラッチ機構)
出力軸4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18、およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6とを有している。
【0043】
クラッチ機構5としては、所謂公知のワンウェイクラッチ機能が採用されている。すなわち、クラッチ機構5は、クラッチインナ22にクラッチアウタ18側からの回転力を伝達する一方、クラッチアウタ18にクラッチインナ22側からの回転力を伝達しないように構成されている。これにより、エンジン始動時に、クラッチアウタ18の回転速度よりもクラッチインナ22の回転速度が速くなるオーバーラン状態になった際、エンジンのリングギヤ23側からの回転力を遮断することができる。
【0044】
また、クラッチ機構5は、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する一方、トルク差、および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される所謂トルクリミッタ機能も備えている。
【0045】
クラッチアウタ18の軸方向他方側(
図1における右側)には、縮径されたスリーブ18aが一体成形されている。この内周面に、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合するヘリカルスプライン18bが形成されている。これにより、クラッチ機構5は、出力軸4に対し、軸方向にスライド移動可能になる。なお、出力軸4のヘリカルスプライン19、およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、軸方向に対して例えば16°程度に設定されている。
【0046】
クラッチアウタ18の内周面におけるスリーブ18aの軸方向一方側には、段差部18cが形成されている。段差部18cの内周面は、スリーブ18aの内周面よりも大径に形成されており、スタータ1の通電状態(
図1における中心線より下側の状態)において、段差部18cの内周面と出力軸4の外周面との間には空間が形成される。この空間には、スタータ1の通電状態において、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチアウタ18の外周面18dには、クラッチカバー6が、例えばカシメ等により固定されている。
【0047】
クラッチインナ22は、クラッチアウタ18のスリーブ18aよりも拡径形成されており、スタータ1の静止状態(
図1における中心線より上側の状態)において、クラッチインナ22、段差部18cの内周面、および出力軸4との間に、空間が形成されている。この空間には、スタータ1の静止状態において、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の軸方向一方側端面と径方向で対応した位置に、略円盤状のクラッチワッシャ64が外嵌固定されている。
【0048】
クラッチワッシャ64の軸方向一方側(
図1における左側)には、規制段差部22bが形成されている。規制段差部22bは、クラッチインナ22の外周面が全周にわたって径方向外側に張り出して形成されている。規制段差部22bは、ピニオン74の軸方向他方側(
図1における右側)に形成された延長筒部74dと当接することにより、ピニオン74の軸方向他方側へのスライド移動量を規制する第一規制部97を構成している。
【0049】
クラッチカバー6は、本体筒部68と、本体筒部68の軸方向一方側(
図1における左側)の底壁66とを有する有底筒状の部材であり、例えば鉄等の金属板材を絞り加工することにより形成されている。
本体筒部68は、クラッチアウタ18、およびクラッチワッシャ64に外挿され、本体筒部68の軸方向他方側の縁部をクラッチアウタ18の軸方向他方側端面にカシメることにより、クラッチアウタ18、およびクラッチワッシャ64に固定される。
【0050】
クラッチカバー6の底壁66には、径方向略中央に、軸方向一方側と軸方向他方側とを貫通する開口が形成されており、ここに出力軸4が挿通されている。また、底壁66の開口には、軸方向一方側に向かって延びる補強筒部67が一体的に形成されている。補強筒部67は、出力軸4と同心円状に形成されている。補強筒部67の内径は、規制段差部22bの外径よりも大きく設定されている。これにより、補強筒部67は、規制段差部22bと干渉することなく、規制段差部22bの径方向外側に配置される。
【0051】
出力軸4のヘリカルスプライン19よりも一方側(
図1における左側)には、移動規制部20が設けられている。
移動規制部20は、出力軸4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側への移動が規制された状態で設けられている。また、移動規制部20は、この直径がクラッチアウタ18に形成された段差部18cと干渉可能なように、段差部18cの内周面よりも大径に設定されている。
【0052】
そして、クラッチ機構5が軸方向一方側にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段差部18cと移動規制部20とが干渉するように構成されている。これにより、クラッチ機構5、およびピニオン機構70の軸方向一方側へのスライド移動量が規制される。
【0053】
移動規制部20とクラッチアウタ18のスリーブ18aとの間であって、かつ段差部18cの内周面と出力軸4の外周面との間には、出力軸4を取り囲むように形成されたリターンスプリング21が、圧縮変形した状態で設けられている。これにより、クラッチアウタ18は、常時モータ部3側へ向かって押し戻されるように付勢された状態になる。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、ピニオン機構70が一体的に設けられている。
【0054】
(ピニオン機構)
ピニオン機構70は、クラッチインナ22の先端に一体成形された筒状のピニオンインナ71と、ピニオンインナ71の径方向外側にピニオンインナ71と同軸に設けられたピニオン74と、を備えている。
【0055】
ピニオンインナ71の内周面には、軸方向両側にそれぞれ出力軸4にピニオンインナ71を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72が設けられている。
ピニオンインナ71の外周面には、クラッチ機構5とは反対側である先端側に、ピニオンインナ側ヘリカル外歯73が形成されている。このピニオンインナ側ヘリカル外歯73には、不図示のエンジンのリングギヤ23に噛合可能なピニオン74が外嵌されている。
【0056】
ピニオン74は、リングギヤ23の歯部23Aと噛合するピニオン側ヘリカル外歯74Aと、ピニオンインナ71のピニオンインナ側ヘリカル外歯73と噛合するピニオン側ヘリカル内歯74aと、を備えている。
リングギヤ23の歯部23A、およびピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aは、それぞれ所定の方向に捩れ角度を有している。ピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aの捩れ方向は、リングギヤ23の歯部23Aの捩れ方向に基づいて規定されている。具体的には、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時において、リングギヤ23に接近する方向(飛び込み方向)にピニオン74にスラスト荷重が発生するように設定されている。
ピニオンインナ71のピニオンインナ側ヘリカル外歯73およびピニオン74のピニオン側ヘリカル内歯74aは、それぞれ所定の方向に捩れ角度を有している。具体的には、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時において、リングギヤ23から離間する方向(離反方向)にピニオン74にスラスト荷重が発生するように設定されている。
【0057】
ピニオンインナ側ヘリカル外歯73の捩れ方向は、ピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aの捩れ方向と同一の方向に設定されている。したがって、ピニオン74とリングギヤ23との噛合部分およびピニオン74とピニオンインナ71との噛合部分に発生するスラスト荷重の方向が逆向きとなる。これにより、リングギヤ23の回転速度よりもピニオン74の回転速度が遅い場合、ピニオン74とリングギヤ23との端面接触時にリングギヤ23から離反する方向に確実に離反させることができる。また、ピニオン74がピニオンインナ71のヘリカルに沿って下がることで、端面接触時のピニオン74の衝撃力を緩和するとともに、ピニオンとリングギヤとの連係時における部品の摩耗を抑制することができる。リングギヤ23の回転速度よりもピニオン74の回転速度が速い場合に、ピニオン74をリングギヤ23に確実に噛合させることができる。したがって、リングギヤ23とピニオン74とのさらに良好な噛合性を確保しつつ、さらなる延命化を図ることができる。
【0058】
ピニオン74の内周面には、ピニオン側ヘリカル内歯74aの後端側に、段差部74cを介して拡径された拡径部75が形成されており、ピニオンインナ71とピニオン74との間に収納部76が形成されている。
収納部76のクラッチ機構5側に形成されている開口部は、クラッチインナ22の基端側に設けられた段差部71aによって閉塞された状態になっている。すなわち、ピニオン74は、ピニオンインナ71によって軸方向に摺動可能に支持された状態になっている。これにより、ピニオン74は、ピニオンインナ71に対して大きくガタつくことなく軸方向にスライド移動する。
【0059】
収納部76には、ピニオンインナ71の外周面を取り囲むように形成されたピニオンスプリング11が収納されている。ピニオンスプリング11は、収納部76に収納された状態で、ピニオン74の拡径部75の段差部74cと、ピニオンインナ71の段差部71aとにより圧縮変形されている。これによりピニオン74は、ピニオンインナ71に対してリングギヤ23側に向かって付勢された状態になる。
ピニオンスプリング11は、ピニオン74とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、ダンパ機構として機能している。これにより、ピニオン74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、ピニオン74およびリングギヤ23の延命化を図っている。
【0060】
ピニオン74の軸方向他方側(
図1における右側)の端面には、軸方向他方側に向かって延びる延長筒部74dが設けられている。延長筒部74dは、出力軸4と同心円状に形成されている。延長筒部74dは、ピニオンスプリング11が弾性変形してピニオン74が軸方向他方側(
図1における右側)にスライド移動したとき、クラッチインナ22の規制段差部22bと当接するように構成されている。
【0061】
すなわち、ピニオン74の延長筒部74d、およびクラッチインナ22の規制段差部22bは、互いに当接することでピニオン74の軸方向他方側への移動を規制する第一規制部97を構成している。
延長筒部74dの外径は、クラッチカバー6の開口部66aの直径および補強筒部67の内径よりも小さく設定されている。これにより、ピニオン74が軸方向他方側に移動しても、延長筒部74dがクラッチカバー6と干渉することなく、規制段差部22bと当接できる。
【0062】
ここで、スタータ1の通電状態におけるリングギヤ23とピニオン74との最大噛み合い代L1(
図1における下側参照)、および第一規制部97を構成するピニオン74の延長筒部74dとクラッチインナ22の規制段差部22bとの離間距離L2は、
L1>L2・・・(1)
を満たすように設定されている。このように設定することで、リングギヤ23から離間する方向にピニオン74がピニオンスプリング11の離間距離L2だけスライド移動しても、ピニオン74とリングギヤ23との噛合が外れることがない。
【0063】
また、ピニオンインナ71の軸方向一方側(
図1における左側)には、出力軸4に外嵌固定された止め輪77が設けられている。これにより、ピニオンインナ71に対して出力軸4の一方側にピニオン74が抜けるのが規制される。
【0064】
(電磁装置)
ハウジング17の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向略中央の大部分が大きく開口されている。
また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。プランジャホルダ26は、ヨーク25の底部25aに対応するように略円環状に形成されたホルダ本体部26aと、このホルダ本体部26aの内周縁から軸方向他方側に向かって屈曲延出されたホルダ円筒部26bとが一体成形された部材である。ホルダ円筒部26bにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、プランジャホルダ26による鉄心88の吸引力を上げることができる。
【0065】
ヨーク25、およびプランジャホルダ26によって径方向内側に形成される収納凹部25bには、略円筒状に形成された励磁コイル24が収納されている。励磁コイル24は、コネクタを介してイグニションスイッチ(何れも不図示)に電気的に接続されている。
【0066】
励磁コイル24の内周面と出力軸4の外周面との間の空隙には、プランジャ機構37が励磁コイル24に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27と出力軸4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これらスイッチプランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心円状に設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、プランジャホルダ26とスイッチプランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27bが配設されている。
【0067】
スイッチプランジャ27のモータ部3側端には、外フランジ部29が一体的に成形されている。この外フランジ部29の外周部側には、モータ部3のトッププレート12を貫通するスイッチシャフト30がホルダ部材30aおよびセンタープレートの貫通孔43aを介して軸方向に沿って設けられている。このスイッチシャフト30は、モータ部3のトッププレート12および後述するブラシホルダ33を貫通している。スイッチシャフト30のトッププレート12から突出した端部には、ブラシ付直流モータ51のコンミテータ61に隣接配置された、スイッチユニット7の可動接点板8が連結されている。
【0068】
可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられていると共に、スイッチスプリング32によって浮動的に支持されている。そして、可動接点板8は、ブラシホルダ33に固定されているスイッチユニット7の固定接点板34に対して当接離反可能になっている。
【0069】
すなわち、固定接点板34を構成する第一固定接点板34a、および第二固定接点板34bに、可動接点板8が跨るように当接する。可動接点板8が出力軸4に沿ってストロークし、第一固定接点板34a、および第二固定接点板34bに当接することにより、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bがON状態となって電気的に接続される。
【0070】
また、スイッチプランジャ27の内周面には、後述するギヤプランジャ80と当接および離反するリング部材28が一体的に設けられている。リング部材28は、スイッチプランジャ27がリングギヤ23側へ向かって移動する際、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧するための部材である。
【0071】
クラッチ機構5のクラッチアウタ18は、リターンスプリング21によりプランジャインナ81へ向かって付勢されている。したがって、スタータ1の静止状態(
図1における中心線より上側)において、クラッチ機構5は、ギヤプランジャ80およびリング部材28を介して、スイッチプランジャ27を他方側(
図1における右側)に押圧している。これにより、可動接点板8は他方側に押圧されて、固定接点板34と離間したOFF状態となる。
【0072】
ここで、スタータ1の静止状態(
図1における中心線より上側)における可動接点板8と固定接点板34との離間距離、すなわち可動接点板8がOFF状態からON状態になる際の可動接点板8の軸方向に沿ったストローク量をL3とし、リングギヤ23とピニオン74との最大離間距離をL4としたとき、ストローク量L3、および最大離間距離L4は、
L3>L4・・・(2)
を満たすように設定されている。したがって、電磁装置9がピニオン74と可動接点板8とを軸方向一方側(
図1における左側)にスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオン74がリングギヤ23に当接する。
【0073】
スイッチプランジャ27の径方向内側に配置されたギヤプランジャ80は、径方向内側に配置されたプランジャインナ81と、径方向外側に配置されたプランジャアウタ85と、プランジャインナ81とプランジャアウタ85との間に配置されるプランジャスプリング91と、を備えている。
プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャインナ81の内径は、出力軸4に外挿可能なように、出力軸4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
【0074】
プランジャインナ81の軸方向一方側端81a(
図1における左側端)には、径方向外側に張り出した外フランジ部82が一体成形されている。プランジャインナ81が軸方向一方側にスライド移動したとき、プランジャインナ81の軸方向一方側端81aがクラッチアウタ18の軸方向他方側端と当接し、クラッチ機構5、およびピニオン機構70を軸方向一方側にスライド移動させる。
プランジャインナ81の軸方向他方側端81b(
図1における右側端)には、軸方向他方側から軸方向一方側に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に沿って複数形成されている。また、爪部83の軸方向一方側(
図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
【0075】
プランジャアウタ85は、プランジャインナ81と同様に樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャアウタ85の内径は、プランジャインナ81の外フランジ部82の外径よりも若干大きく設定されており、プランジャインナ81に外挿されている。
プランジャアウタ85の軸方向他方側端85a(
図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。
【0076】
内フランジ部86の内径は、プランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように設定されている。そして、プランジャインナ81の溝部84内にプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することで、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とが一体化され、プランジャ機構37が構成される。
【0077】
プランジャアウタ85の内フランジ部86の肉厚は、プランジャインナ81の溝部84の幅よりも薄くなるように設定されている。これにより、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84との間にはクリアランスが設けられる。したがって、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とは、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84とのクリアランス分だけ、軸方向に相対的にスライド移動可能となっている。
【0078】
プランジャアウタ85の軸方向他方側端85a(
図1における右側端)には、径方向外側に張り出した外フランジ部87が一体的に形成されている。外フランジ部87は、スイッチプランジャ27のリング部材28と当接する当接部として機能している。
また、外フランジ部87の軸方向一方側(
図1における左側)であって、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により吸引される。
【0079】
プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86との間には、収納部90が形成されている。収納部90には、プランジャインナ81の外周面を取り囲むように形成されたプランジャスプリング91が収納されている。
プランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は軸方向一方側(
図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は軸方向他方側(
図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
【0080】
このような構成のもと、スタータ1の静止状態(
図1における中心線より上側の状態)においては、プランジャスプリング91により、プランジャインナ81が軸方向一方側(
図1における左側)に向かって付勢される。一方、プランジャアウタ85が他方側(
図1における右側)に向かって付勢される。
【0081】
プランジャインナ81の軸方向一方側端81aと、クラッチアウタ18の他方側端は、互いに接触しておらず、これにより、クラッチアウタ18は、リターンスプリング21のばね荷重によって、ストッパ94に押圧された状態になる。したがって、スタータ1の静止状態では、プランジャスプリング91のばね荷重によって、クラッチ機構5を押出さない、つまり、ピニオン機構70を不用意に押出さないように設定されている。
【0082】
また、スタータ1の通電状態(
図1における中心線より下側の状態)において、ギヤプランジャ80が軸方向一方側(
図1における左側)に最大変位したとき、プランジャインナ81の軸方向一方側端81aは、常にクラッチ機構5のクラッチアウタ18の軸方向他方側端と当接した状態になる。すなわち、プランジャスプリング91は、クラッチ機構5とギヤプランジャ80との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構を構成している。
【0083】
(スタータの動作)
続いて、
図1から
図4Cの各図に基づいて、スタータ1の動作について説明をする。
図1における中心線の上側の状態に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態では、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、ピニオン74と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態でモータ部3側(
図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止しており、ピニオン74とリングギヤ23とが最大離間距離L4を有した状態で結合が断たれている。
【0084】
また、スタータ1の静止状態では、プランジャインナ81の軸方向一方側端81aとクラッチアウタ18の軸方向他方側端とは僅かにクリアランスをもった状態とされている。
これにより、クラッチアウタ18は、リターンスプリング21のばね荷重によって、ストッパ94に押圧された状態になっている。したがって、スタータ1の静止状態では、プランジャスプリング91のばね荷重によって、クラッチ機構5を押圧しない、つまり、不用意にピニオン機構70をリングギヤ23側に押出さないように設定されている。
【0085】
さらに、スイッチプランジャ27は、スイッチリターンスプリング27bにより押し戻され、モータ部3側(
図1における右側)へ一杯に移動している。そして、スイッチプランジャ27の外フランジ部29がトッププレート12に当接した状態で停止している。さらに、外フランジ部29に設けられているスイッチシャフト30の可動接点板8は、固定接点板34に対して距離L3(すなわち可動接点板8のストローク量L3)だけ離間しており、電気的に切断されている。
【0086】
図2A、
図2B及び
図2Cは、スイッチプランジャ27の移動直後の説明図である。
図2Aは、スタータ1の動作を示し、
図2Bは、リングギヤ23に対するピニオン74の動作を示し、
図2Cは、ピニオンインナ71に対するピニオン74の動作を示す。また、
図2Bおよび
図2Cは、ピニオン74およびリングギヤ23を径方向から見たときの模式図となっており、ピニオン74およびリングギヤ23の回転方向は、
図2Bおよび
図2Cにおける上方となっている。また、
図2Bにおいて、移動前のピニオン74を2点鎖線で図示している。
図2Aに示すように、スイッチプランジャ27の移動直後の状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(
図2Aにおける左側)へ向かってスライド移動する。
【0087】
図1に示すように、スタータ1の静止状態において、スイッチプランジャ27とプランジャホルダ26とのギャップ(軸方向クリアランス)は、ギヤプランジャ80の鉄心88とプランジャホルダ26とのギャップ(軸方向クリアランス)よりも小さく設定されている。このため、スイッチプランジャ27に発生する吸引力は、ギヤプランジャ80に発生する吸引力よりも大きいので、ギヤプランジャ80に先行してスイッチプランジャ27がスライド移動しようとする。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材28が一体的に設けられていることから、このリング部材28がギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80が一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
【0088】
また、クラッチアウタ18は、出力軸4にヘリカルスプライン噛合されており、スリーブ18aがギヤプランジャ80のプランジャインナ81と当接している。ここで、出力軸4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、軸方向に対して例えば16°程度に設定されている。
したがって、
図2Aに示すように、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動すると、クラッチアウタ18が、出力軸4に対してヘリカルスプライン18bの傾斜角度分、若干相対回転しながら押出される。さらに、ピニオン機構70も、クラッチ機構5を介してギヤプランジャ80のスライド移動に連動し、リングギヤ23側へ押出される。
【0089】
このとき、ピニオン74は、
図2Bに示すように、リングギヤ23側に所定距離移動する。そして、ピニオン74の軸方向一方側(
図2Bにおける左側)端面74bとリングギヤ23の軸方向他方側(
図2Bにおける右側)端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態になる。
また、スイッチプランジャ27は、ギヤプランジャ80と一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動するため、スイッチプランジャ27、およびこれと連動する可動接点板8も、最大離間距離L4だけ軸方向一方側(
図2Bにおける左側)に移動する。
【0090】
なお、
図2Cに示すように、ピニオン74は、ピニオンインナ71とヘリカルスプライン嵌合しているが、ピニオンスプリング11(
図2A参照)によって、ピニオンインナ71に対してリングギヤ23側に向かって付勢されている。したがって、ピニオン74は、リングギヤ23との当接直前まで、ピニオンインナ71に対して相対移動することなく保持されている。
【0091】
ここで、前述のとおり、可動接点板8のストローク量L3(
図1参照)、およびリングギヤ23とピニオン74との最大離間距離L4は、
L3>L4・・・(2)
を満たすように設定されている。したがって、ピニオン74との最大離間距離L4だけ軸方向一方側(
図2Aにおける左側)に移動したときであっても、可動接点板8と固定接点板34との間に、ストローク量L3と最大離間距離L4との差に等しいクリアランスC(
図2A参照)を有した状態で、可動接点板8がOFF状態となっている。すなわち、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオン74の軸方向一方側端面74bとリングギヤ23の軸方向他方側端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となる。
【0092】
図3A、
図3B及び
図3Cは、可動接点板8と固定接点板34とが当接したときの説明図である。なお、
図3A以降の
図3A〜
図3Cは、それぞれ
図2A〜
図2Cに対応した図となっている。
図3Aに示すように、プランジャホルダ26によりスイッチプランジャ27が吸引され、さらにリングギヤ23側へ向かってスライド移動すると、スイッチプランジャ27の円筒部27aとプランジャホルダ26のホルダ円筒部26bとが径方向で重複した状態になる。このため、ホルダ円筒部26bとスイッチプランジャ27の円筒部27aとの間の磁束が増し、励磁コイル24のスイッチプランジャ27に対する磁力が大きくなる。よって、スイッチプランジャ27のスライド移動した状態が確実に保持される。
【0093】
また、スイッチプランジャ27が吸引され、さらにリングギヤ23側へ向かってスライド移動することにより、可動接点板8のストローク量L3(
図1参照)が最大になる。そして、固定接点板34に可動接点板8が接触する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向に変位可能なように浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8、および固定接点板34に加わる。
【0094】
このとき、ピニオン74の軸方向一方側端面74bと、リングギヤ23の軸方向他方側端面23aとが互いに当接していた場合、スイッチプランジャ27によってピニオン機構70がさらに押出されると、ピニオンスプリング11が縮む。これにより、ピニオン74の軸方向一方側端面74bは、リングギヤ23の軸方向他方側端面23aに向かって付勢される。
すなわち、ピニオンスプリング11は、ピニオン74とリングギヤ23とが当接したときのスラスト荷重を吸収するダンパ機構として機能している。したがって、ピニオン74の軸方向一方側端面74bと、リングギヤ23の軸方向他方側端面23aとが互いに当接していた状態であっても、スイッチプランジャ27を所定の位置にまで押出すことができると共に、ピニオン74の軸方向一方側端面74b、およびリングギヤ23の軸方向他方側端面23aの摩耗を抑制でき、ピニオン74およびリングギヤ23の延命化を図ることができる。
【0095】
続いて、固定接点板34に可動接点板8が接触すると、コイル59が通電されてアーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア54が回転し始める。そして、アーマチュア54が回転することにより、このアーマチュア54の回転軸52の回転力が遊星歯車機構2を介して出力軸4に伝達され、出力軸4が回転し始める。
【0096】
出力軸4が回転し始めると、ピニオン74の軸方向一方側端面74bとリングギヤ23の軸方向他方側端面23aとが当接していた場合には、その当接状態(
図2B参照)が解除される。そして、
図3Bに示すように、ピニオンスプリング11の付勢力により、ピニオン74がリングギヤ23側に押出される。
【0097】
図4A、
図4B及び
図4Cは、ピニオン74とリングギヤ23とが衝突したときの説明図である。
ところで、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時において、ピニオン74とリングギヤ23との間には、一般に、相対的な回転速度差が発生する。例えば、アイドリングストップ機能を備えた自動車において、エンジンの燃料噴射を停止した直後にエンジンを再始動させる場合が想定される。この場合には、リングギヤ23が惰性回転しているため、ピニオン74とリングギヤ23との間に、相対的な回転速度差が発生している。
【0098】
図4Bに示すように、例えば、リングギヤ23の回転速度がピニオン74の回転速度よりも速い場合には、リングギヤ23の歯部23Aの先端角部とピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aの先端角部とが衝突する。これにより、ピニオン74には、リングギヤ23の歯部23Aとピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aとのヘリカル角度に沿うように、リングギヤ23から離反する方向に向かってスラスト荷重F1が発生する。
このとき、リングギヤ23は所定の回転速度で回転しているため、リングギヤ23に衝突したピニオン74はスラスト荷重F1を受けるとともに、回転中のリングギヤ23によってリングギヤ23の回転方向に回転力F2が付与される。
また、このとき、
図4Cに示すように、ピニオン74には、ピニオンインナ71のピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン74のピニオン側ヘリカル内歯74aとの間に、衝突による衝突反力荷重F3が、ピニオン74の回転方向とは反対方向に発生する。さらに、ピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン側ヘリカル内歯74aとのヘリカル角度に沿って衝突反力荷重F3のベクトルが分割され、リングギヤ23から離反する方向に向かってスラスト荷重F4が発生する。これにより、ピニオン74は、リングギヤ23から離反する方向に向かって移動する。
【0099】
ここで、
図4Aに示すように、ピニオンスプリング11は、ピニオン74の軸方向への移動量に対応して収縮する。すなわち、ピニオンスプリング11は、ピニオン74とリングギヤ23とが衝突したときのスラスト荷重を吸収するダンパ機構として機能している。したがって、ピニオン74とリングギヤ23とが衝突時においても、ピニオン74の軸方向一方側端面74b、およびリングギヤ23の軸方向他方側端面23aの摩耗を抑制でき、ピニオン74およびリングギヤ23の延命化を図ることができる。
そして、再び、
図4Bに示すような、リングギヤ23の歯部23Aの先端角部とピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aの先端角部とが衝突する状態となり、その都度ピニオン74はリングギヤ23から回転力F2が与えられ、この状態を繰り返す度にピニオン74の回転速度は加速し、ピニオン74の回転速度がリングギヤ23の回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
【0100】
図5A、
図5B及び
図5Cは、ピニオン74とリングギヤ23とが噛合し始めたときの説明図である。
図5Cに示すように、ピニオン74には、収縮させられたピニオンスプリング11の付勢力により、リングギヤ23側に接近する方向に押圧力が働く。さらに、出力軸4(
図5A参照)の回転により、ピニオン74の回転速度がリングギヤ23の回転速度に対して同じ(同期した状態)又は速くなる。そして、一旦リングギヤ23とピニオン74とが連係し始めると、ピニオン74とリングギヤ23との噛合いによって発生するスラスト荷重F5により、ピニオン74はピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン側ヘリカル内歯74aとのヘリカル角度に沿って、リングギヤ23側に接近する方向に移動する。
そして、
図5Bに示すように、リングギヤ23側に押出されたピニオン74はリングギヤ23と噛合し始める。
【0101】
図6A、
図6B及び
図6Cは、ピニオン74とリングギヤ23とが噛合した時の説明図である。
出力軸4の回転速度が上昇すると、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合されたクラッチアウタ18に慣性力が作用する。このとき、ピニオン74とリングギヤ23とがヘリカル噛合し、かつピニオンインナ71とヘリカルスプライン嵌合していることから、リングギヤ23側に接近する方向のスラスト荷重がさらに発生する。
これにより、
図6Bに示すように、ピニオン74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合する。なお、このとき、
図6Cに示すように、ピニオン74は、ピニオンスプリング11(
図6A参照)によって、ピニオンインナ71に対してリングギヤ23側に向かって付勢されている。したがって、ピニオン74は、リングギヤ23と噛合後、ピニオンインナ71に対して相対移動することなく保持されている。
【0102】
エンジンが始動し、ピニオン74の回転速度が出力軸4の回転速度を上回ると、クラッチ機構5のワンウェイクラッチ機能が作用してピニオン74が空転する。また、エンジンが始動に伴って励磁コイル24への通電を停止すると、クラッチアウタ18に対するリターンスプリング21の付勢力により、ピニオン74がリングギヤ23から離脱すると共に、可動接点板8が固定接点板34から離反してブラシ付直流モータ51が停止する。
【0103】
(効果)
本実施形態によれば、リングギヤ23の回転速度よりもピニオン74の回転速度が遅い場合において、リングギヤ23とピニオン74とが噛合してリングギヤ23からピニオン74に回転力が伝達されたときに、リングギヤ23からから離反する方向にピニオン74を容易にスライド移動させることができる。つまり、ピニオン74がピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン側ヘリカル内歯74aとのヘリカル角度に沿って下がることで、端面接触時のピニオン74の衝撃力を緩和し、ピニオン74とリングギヤ23との連係時における部品の摩耗を抑制することができる。これにより、リングギヤ23の回転力による負荷がスタータ1に伝達するのを抑制できるので、クラッチ機構5等の部品の摩耗を抑制して延命化を図ることができる。また、ピニオンインナ71のインナ側外歯とピニオン74の内歯とがストレートスプライン噛合した構造に対して、円滑にピニオン74をリングギヤ23から離反させることができる。
また、リングギヤ23から離反する方向にスライド移動するピニオン74にはリングギヤ23の回転によって回転力が付与さられ、この状態を繰り返す度にピニオン74の回転速度は加速し、ピニオン74の回転速度がリングギヤ23の回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
そして、リングギヤ23の回転速度に対してピニオン74の回転速度が同じ(同期した状態)又は速くなって、一旦リングギヤ23とピニオン74とが噛合し始めると、ピニオン74にはリングギヤ23に接近する方向に向かってスラスト荷重が発生するので、ピニオン74をリングギヤ23にスムーズに噛合させることができる。
また、ピニオン74とピニオンインナ71との間にピニオンスプリング11を備えているので、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時における衝撃を吸収しつつピニオン74とリングギヤ23との回転速度を同期させながら、ピニオンスプリング11の付勢力によりピニオン74をリングギヤ23側に押圧できる。したがって、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時におけるピニオン74やリングギヤ23等の部品の摩耗を抑制するとともに、リングギヤ23からピニオン74が離反した後に、素早く噛合させることができる。
したがって、リングギヤ23とピニオン74との良好な噛合性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができる。
【0104】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0105】
上述の実施形態では、ピニオン74とリングギヤ23とが直接噛合することにより互いに連係される構造について説明をしたが、ピニオン74とリングギヤ23との間に、例えばアイドルギヤ等の他のギヤが介在しており、アイドルギヤを介してピニオン74とリングギヤ23とが連係される構造であっても本発明の実施の形態を適用できる。
【0106】
上述の実施形態では、電磁装置9を、励磁コイル24とプランジャ機構37とを備えた構成とし、励磁コイル24、プランジャ機構37および出力軸4を同軸に配置した、いわゆる一軸式のスタータ1について説明した。
しかしながら、本発明の実施の形態の適用は一軸式のスタータ1に限られることはなく、ピニオン機構70を進退動作させることができる構成を含むスタータであれば、本発明の実施の形態を適用することが可能である。例えば、電磁装置(プランジャ機構37)と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる二軸式のスタータや、電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる三軸式のスタータ等、様々な形式のスタータに本発明の実施の形態を適用してもよい。
【0107】
上述の実施形態では、自動車の始動用に用いられるスタータ1を例に挙げて説明をしているが、スタータ1の適用は自動車に限定されることはなく、例えば自動二輪車等に適用してもよい。
【0108】
また、上述の実施形態のスタータ1は、上述のように、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオン74とリングギヤ23とが安定して噛合できる。したがって、実施形態のスタータ1の適用は、アイドリングストップ機能を備えた自動車に限定されることはなく、アイドリングストップ機能を備えていない自動車にも好適である。