特許第5957072号(P5957072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957072
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】色素増感光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20160714BHJP
   C09B 23/00 20060101ALI20160714BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   H01G9/20 113A
   H01G9/20 113C
   C09B23/00 M
   C09B57/00 N
【請求項の数】24
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2014-508088(P2014-508088)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2013059501
(87)【国際公開番号】WO2013147145
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-79355(P2012-79355)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 昌巌
(72)【発明者】
【氏名】紫垣 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 照久
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/147427(WO,A2)
【文献】 特表2006−525395(JP,A)
【文献】 Dyes and Pigments,2009年,81(3),p.224-230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
C09B 23/00
C09B 57/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた酸化物半導体微粒子の薄膜に、下記式(1)で表されるメチン系色素を担持させてなる光電変換素子
【化1】

(式(1)中、mは1乃至5の整数を、l及びnは0乃至6の整数を、j及びkは0乃至3の整数をそれぞれ表す。X及びYはそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、シアノ基、アシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基又はスルフォニルベンゼン基を表す。また、XとYは結合して、環を形成してもよい。Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR11を表す。R11は水素原子、芳香族残基又は脂肪族炭化水素残基を表す。m、j及びkの少なくとも一つが2以上で、Z1、Z2及びZ3のいずれかが複数存在する場合、それぞれのZ1、Z2及びZ3は互いに同じか又は異なっていてもよい。A1、A2、A3、A5及びA6はそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。また、l及びnの少なくとも一つが2以上でA2、A3、A5及びA6のいずれかが複数存在する場合には、それぞれのA2、A3、A5及びA6は互いに同じか又は異なってもよい。また、lが0以外の場合、A1、A2及びA3の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。A4は水素原子、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アルコキシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基又はアシル基を表す。mが2以上でA4が複数存在する場合、それぞれのA4は互いに同じか又は異なってもよい。A7、A8、A9及びA10はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基又はアシル基を表す。j又はkのいずれか少なくとも一つが2以上でA7、A8、A9及びA10のいずれかが複数存在する場合、それぞれのA7、A8、A9及びA10は互いに同じか又は異なってもよい。R1は下記式(3001)又は(3003):
【化2】

(式(3001)〜(3003)中、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に水素原子、芳香族残基又は脂肪族炭化水素残基を表す。R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、アシル基、アミド基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基又はスルフォニルベンゼン基を表す。)で表される基、又は有機金属錯体残基を表す。R2は前記式(3001)又は(3003)で表される基、水素原子、脂肪族炭化水素残基、又は有機金属錯体残基を表す。mが2以上でR1が複数存在する場合、それぞれのR1は互いに同じか又は異なってもよい。また、nが0以外の場合、A5、A6及びR2の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。)。
【請求項2】
式(1)におけるmが1乃至3である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
式(1)におけるmが1である請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
式(1)におけるZ1〜Z3が硫黄原子である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項5】
式(1)におけるl及びnが0である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項6】
式(1)におけるkが0である請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
式(1)におけるX及びYの一方がカルボキシル基で、他方がカルボキシル基、シアノ基又はアシル基である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項8】
式(1)におけるX及びYの一方がカルボキシル基で、他方がシアノ基である請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
式(1)におけるXとYが結合して環構造を形成する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項10】
式(1)におけるXとYが結合して形成する環構造が、下記式(2001)〜(2044)のいずれかである請求項9に記載の光電変換素子
【化3】

(式(2001)〜(2044)中、*印は式(1)においてXとYが結合している炭素原子を示す。)。
【請求項11】
XとYが結合して形成する環構造が、カルボキシル基を置換基として有する請求項10に記載の光電変換素子。
【請求項12】
式(1)におけるXとYが結合して形成する環構造が、式(2007)又は(2012)である請求項11に記載の光電変換素子。
【請求項13】
式(1)におけるA1〜A10が水素原子である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項14】
式(1)におけるR1が、式(3001)で表される基であって、かつR12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基又は式(3001)で表される基であり、R12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項15】
式(1)におけるR1が、下記式(3101)〜(3114)のいずれかで表される基である請求項14に記載の光電変換素子。
【化4】
【請求項16】
式(1)におけるR1が、式(3102)、(3103)、(3107)、(3108)、(3110)、(3111)、(3113)又は(3114)で表される基である請求項15に記載の光電変換素子。
【請求項17】
式(1)におけるR1が、式(3103)又は(3107)で表される基である請求項16に記載の光電変換素子。
【請求項18】
式(1)におけるR2が、式(3001)で表される基であって、かつR12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基又は式(3001)で表される基であり、R12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項19】
式(1)におけるR2が、請求項15に記載の式(3101)〜(3114)のいずれかで表される基である請求項18に記載の光電変換素子。
【請求項20】
式(1)におけるR2が、式(3107)、(3108)、(3110)、(3111)、(3113)又は(3114)で表される基である請求項19に記載の光電変換素子。
【請求項21】
式(1)におけるR2が、式(3107)又は(3111)で表される基である請求項20に記載の光電変換素子。
【請求項22】
式(1)で表されるメチン系色素が、下記式(179)〜(500)
【化5-1】

【化5-2】

のいずれかである請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
【請求項24】
請求項1に記載の式(1)で表されるメチン系化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機色素で増感された半導体微粒子の薄膜を有する光電変換素子及びそれを用いた太陽電池に関し、詳しくは酸化物半導体微粒子の薄膜に特定の構造を有するメチン系化合物(色素)を担持させた光電変換素子及びそれを利用した太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石炭等の化石燃料に代わるエネルギー資源として太陽光を利用する太陽電池が注目されている。現在、結晶又はアモルファスのシリコンを用いたシリコン太陽電池、あるいはガリウム、ヒ素等を用いた化合物半導体太陽電池等について、盛んに開発検討がなされている。しかしそれらは製造に要するエネルギー及びコストが高いため、汎用的に使用するのが困難であるという問題点がある。また、色素で増感した半導体微粒子を用いた光電変換素子、あるいはこれを用いた太陽電池も知られており、これを作成する材料、製造技術が開示されている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照)。この光電変換素子は酸化チタン等の比較的安価な酸化物半導体を用いて製造され、従来のシリコン等を用いた太陽電池に比べコストの低い光電変換素子が得られる可能性があり、またカラフルな太陽電池が得られることなどより注目を集めている。しかしながら、変換効率の高い素子を得るために増感色素として用いられているルテニウム系の錯体自体が高価であり、またその安定供給にも問題が残っている。他方では、増感色素として有機色素を用いる試みも既に行われているが、該色素を用いた光電変換素子の有する変換効率、安定性、耐久性が低い等の問題点は充分に解決されていないため、実用化には至っていないというのが現状であり、更なる変換効率の向上が望まれている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2664194号公報
【特許文献2】WO2002/011213号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】B.O'Regan and M.Graetzel Nature, 第353巻, 737頁 (1991年)
【非特許文献2】M.K.Nazeeruddin, A.Kay, I.Rodicio, R.Humphry-Baker, E.Muller, P.Liska, N.Vlachopoulos, M.Graetzel, J.Am.Chem.Soc., 第115巻, 6382頁 (1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機色素で増感された酸化物半導体微粒子を用いた光電変換素子において、安価な有機色素を用いている、安定かつ変換効率が高く実用性の高い光電変換素子の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、特定の構造を有するメチン系色素を用いて半導体微粒子の薄膜を増感し、光電変換素子を作成する事により安定かつ変換効率の高い光電変換素子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
(1)基板上に設けられた酸化物半導体微粒子の薄膜に、下記式(1)で表されるメチン系色素を担持させてなる光電変換素子
【0007】
【化1】
【0008】
(式(1)中、mは1乃至5の整数を、l及びnは0乃至6の整数を、j及びkは0乃至3の整数をそれぞれ表す。X及びYはそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、シアノ基、アシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基又はスルフォニルベンゼン基を表す。また、XとYは結合して、環を形成してもよい。Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR11を表す。R11は水素原子、芳香族残基又は脂肪族炭化水素残基を表す。m、j及びkの少なくとも一つが2以上で、Z1、Z2及びZ3のいずれかが複数存在する場合、それぞれのZ1、Z2及びZ3は互いに同じか又は異なっていてもよい。A1、A2、A3、A5及びA6はそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。また、l及びnの少なくとも一つが2以上でA2、A3、A5及びA6のいずれかが複数存在する場合には、それぞれのA2、A3、A5及びA6は互いに同じか又は異なってもよい。また、lが0以外の場合、A1、A2及びA3の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。A4は水素原子、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アルコキシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基又はアシル基を表す。mが2以上でA4が複数存在する場合、それぞれのA4は互いに同じか又は異なってもよい。A7、A8、A9及びA10はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基又はアシル基を表す。j又はkのいずれか少なくとも一つが2以上でA7、A8、A9及びA10のいずれかが複数存在する場合、それぞれのA7、A8、A9及びA10は互いに同じか又は異なってもよい。R1は下記式(3001)又は(3003):
【0009】
【化2】
【0010】
(式(3001)〜(3003)中、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に水素原子、芳香族残基又は脂肪族炭化水素残基を表す。R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、アシル基、アミド基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基又はスルフォニルベンゼン基を表す。)で表される基、又は有機金属錯体残基を表す。R2は前記式(3001)又は(3003)で表される基、水素原子、脂肪族炭化水素残基または有機金属錯体残基を表す。mが2以上でR1が複数存在する場合、それぞれのR1は互いに同じか又は異なってもよい。また、nが0以外の場合、A5、A6及びR2の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。)、
(2)式(1)におけるmが1乃至3である前項(1)に記載の光電変換素子、
(3)式(1)におけるmが1である前項(2)に記載の光電変換素子、
(4)式(1)におけるZ1〜Z3が硫黄原子である前項(1)に記載の光電変換素子、
(5)式(1)におけるl及びnが0である前項(1)に記載の光電変換素子、
(6)式(1)におけるkが0である前項(5)に記載の光電変換素子、
(7)式(1)におけるX及びYの一方がカルボキシル基で他方がカルボキシル基、シアノ基又はアシル基である前項(1)に記載の光電変換素子、
(8)式(1)におけるX及びYの一方がカルボキシル基で他方がシアノ基である前項(7)に記載の光電変換素子、
(9)式(1)におけるXとYが結合して環構造を形成する前項(1)に記載の光電変換素子、
(10)式(1)におけるXとYが結合して形成する環構造が、下記式(2001)〜(2044)のいずれかである前項(9)に記載の光電変換素子、
【0011】
【化3】
【0012】
(式(2001)〜(2044)中、*印は式(1)においてXとYが結合している炭素原子を示す。)、
(11)XとYが結合して形成する環構造が、カルボキシル基を置換基として有する前項(10)に記載の光電変換素子、
(12)式(1)におけるXとYが結合して形成する環構造が、式(2007)又は(2012)である前項(11)に記載の光電変換素子、
(13)式(1)におけるA1〜A10が水素原子である前項(1)に記載の光電変換素子、
(14)式(1)におけるR1が、式(3001)で表される基であって、かつR12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基又は式(3001)で表される基であり、R12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基である前項(1)に記載の光電変換素子、
(15)式(1)におけるR1が、下記式(3101)〜(3114)のいずれかで表される基である前項(14)に記載の光電変換素子、
【0013】
【化4】
【0014】
(16)式(1)におけるR1が、式(3102)、(3103)、(3107)、(3108)、(3110)、(3111)、(3113)又は(3114)で表される基である前項(15)に記載の光電変換素子、
(17)式(1)におけるR1が、式(3103)または(3107)で表される基である前項(16)に記載の光電変換素子、
【0015】
(18)式(1)におけるR2が、式(3001)で表される基であって、かつR12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基又は式(3001)で表される基であり、R12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基である前項(1)に記載の光電変換素子、
(19)式(1)におけるR2が、前項(15)に記載の式(3101)〜(3114)のいずれかで表される基である前項(18)に記載の光電変換素子、
【0016】
(20)式(1)におけるR2が、式(3107)、(3108)、(3110)、(3111)、(3113)又は(3114)で表される基である前項(19)に記載の光電変換素子、
(21)式(1)におけるR2が、式(3107)又は(3111)で表される基である前項(20)に記載の光電変換素子、
(22)式(1)で表されるメチン系色素が、下記式(179)〜(500)
【化5-1】

【化5-2】

のいずれかである前項(1)に記載の光電変換素子、
(23)前項(1)乃至(22)のいずれか一項に記載の光電変換素子を用いた太陽電池、
(24)前項(1)に記載の式(1)で表されるメチン系化合物、
に関する。
【発明の効果】
【0017】
特定の構造を有するメチン系色素を用いることにより、変換効率が高く安定性の高い太陽電池を提供する事が出来た。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の光電変換素子は、基板上に設けられた酸化物半導体微粒子の薄膜に式(1)で表されるメチン系色素を担持させたものである。式(1)で表されるメチン系色素の特徴の一つは、特定の部位にあるRが特定の基または有機金属錯体であることであり、当該メチン系色素を坦持させた酸化物半導体微粒子の薄膜を備えた光電変換素子はRが特定の基または有機金属錯体でないメチン系色素やその他の色素に比べて、効果的に光を変換することができる。以下、式(1)について説明する。
【0019】
【化6】
【0020】
式(1)におけるmは、1乃至5の整数を表し、1乃至3であることが好ましく、1乃至2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
式(1)におけるlは、0乃至6の整数を表し、0であることが好ましい。
式(1)におけるnは、0乃至6の整数を表し、0であることが好ましい。
式(1)におけるjは、0乃至3の整数を表し、1乃至3であることが好ましく、1乃至2であることがより好ましい。
式(1)におけるkは0乃至3の整数を表し、0であることが好ましい。
【0021】
式(1)におけるX及びYは、それぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、シアノ基、アシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基又はスルフォニルベンゼン基を表す。
【0022】
式(1)のX及びYが表す芳香族残基とは、芳香環又は芳香環を含む縮合環から水素原子1個を除いた基を意味し、該芳香族残基は置換基を有していてもよい。芳香環の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ペリレン及びテリレン等の芳香族炭化水素環、インデン、アズレン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピラゾール、ピラゾリジン、チアゾリジン、オキサゾリジン、ピラン、クロメン、ピロール、ピロリジン、ベンゾイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、イミダゾール、トリアゾール、トリアジン、ジアゾール、インドリン、チオフェン、チエノチオフェン、フラン、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジン、チアゾール、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、インドレニン、ベンゾインドレニン、キノリン及びキナゾリン等の複素芳香環、フルオレン及びカルバゾール等の縮合型芳香環等が挙げられ、炭素数4乃至20の芳香環又は芳香環を含む縮合環から水素原子1個を除いた基であることが好ましい。
【0023】
X及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基に特に制限はないが、例えば、スルホン酸基、スルファモイル基、シアノ基、イソシアノ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ニトロ基、ニトロシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、置換もしくは非置換アミノ基、メルカプト基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アシル基、アルデヒド基、並びにアルコキシカルボニル基及びアリールカルボニル基等の置換カルボニル基、そして芳香族残基、脂肪族炭化水素残基等が挙げられる。
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等の原子が挙げられ、臭素原子及び塩素原子が好ましい。
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのリン酸エステル基としては、リン酸(C1〜C4)アルキルエステル基等が挙げられ、好ましい具体例としては、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸(n−プロピル)、リン酸(n−ブチル)である。
芳香族残基が有していてもよい置換基としての置換もしくは非置換アミノ基としては、アミノ基、モノ又はジメチルアミノ基、モノ又はジエチルアミノ基、モノ又はジ(n−プロピル)アミノ基等のアルキル置換アミノ基、モノ又はジフェニルアミノ基、モノ又はジナフチルアミノ基等の芳香族置換アミノ基、モノアルキルモノフェニルアミノ基等のアルキル基と芳香族残基が一つずつ置換したアミノ基又はベンジルアミノ基、またアセチルアミノ基、フェニルアセチルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのメルカプト基としては、メルカプト基、アルキルメルカプト基が挙げられ、具体的にはメチルメルカプト基、エチルメルカプト基、n−プロピルメルカプト基、イソプロピルメルカプト基、n−ブチルメルカプト基、イソブチルメルカプト基、sec−ブチルメルカプト基、t−ブチルメルカプト基などのC1〜C4アルキルメルカプト基、又はフェニルメルカプト基等が挙げられる。
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアミド基としては、アミド基、アセトアミド基、アルキルアミド基が挙げられ、具体的に好ましいものはアミド基、アセトアミド基、N−メチルアミド基、N−エチルアミド基、N−(n−プロピル)アミド基、N−(n−ブチル)アミド基、N−イソブチルアミド基、N−(sec−ブチルアミド)基、N−(t−ブチル)アミド基、N,N−ジメチルアミド基、N,N−ジエチルアミド基、N,N−ジ(n−プロピル)アミド基、N,N−ジ(n−ブチル)アミド基、N,N−ジイソブチルアミド基、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−(n−プロピル)アセトアミド基、N−(n−ブチル)アセトアミド基、N−イソブチルアセトアミド基、N−(sec−ブチル)アセトアミド基、N−(t−ブチル)アセトアミド基、N,N−ジメチルアセトアミド基、N,N−ジエチルアセトアミド基、N,N−ジ(n−プロピル)アセトアミド基、N,N−ジ(n−ブチル)アセトアミド基、N,N−ジイソブチルアセトアミド基が挙げられ、また、アリールアミド基、具体的に好ましくはフェニルアミド基、ナフチルアミド基、フェニルアセトアミド基、ナフチルアセトアミド基等も挙げられる。
【0025】
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアシル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1乃至4のアルキルカルボニル基で、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。その具体例としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基である。
【0026】
芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアリールカルボニル基としては、例えばベンゾフェノン、ナフトフェノン等のアリール基とカルボニルが連結した基を表す。
芳香族残基が有していてもよい置換基としての芳香族残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
芳香族残基が有していてもよい置換基としての脂肪族炭化水素残基としては、飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、該脂肪族炭化水素残基は置換基を有していてもよい。脂肪族炭化水素残基としては、飽和のアルキル基であることが好ましく、飽和の直鎖アルキル基であることがより好ましい。また、脂肪族炭化水素残基の有する炭素数は1から36であることが好ましく、1から18であることがより好ましく、1〜8であることが更に好ましい。これら脂肪族炭化水素残基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル基、イソへキセニル基、シクロへキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、ペンチニル基、へキシニル基、イソへキシニル基、シクロへキシニル基等が挙げられる。また、環状のアルキル基としては、例えば炭素数3乃至8のシクロアルキル基などが挙げられる。特に好ましくは上記炭素数が1から8の直鎖のアルキル基である。
【0027】
芳香族残基が有していてもよい置換基としての芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、アミド基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基及びアルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
【0028】
式(1)のX及びYが表す芳香族残基としては、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基、およびこれらの酸性基の塩からなる群から選択される基を少なくとも一つ以上置換基として有する芳香族残基であることが好ましく、下記式(1001)〜(1033)のいずれかであることがより好ましい。
【0029】
【化7】
【0030】
式(1)のX及びYが表す脂肪族炭化水素残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べた脂肪族炭化水素残基と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素残基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)のX及びYが表すアシル基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたアシル基と同じものが挙げられる。該アシル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)のX及びYが表すアミド基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。該アミド基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたアミド基と同じものが挙げられる。
式(1)のX及びYが表すアルコキシカルボニル基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたアルコキシカルボニル基と同じものが挙げられる。該アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
【0031】
また、式(1)におけるXとYは結合して、環を形成してもよい。該環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。XとYが結合して形成する環構造の具体例としては、下記式(2001)〜(2044)が挙げられ、このうち環構造がカルボキシル基を置換基として有しているものが好ましく、環構造が(2007)又は(2012)であることが特に好ましく、(2007)であることが極めて好ましい。
【0032】
【化8】
【0033】
上記式(2001)〜(2044)中の*印は、式(1)においてXとYが結合している炭素原子を示す。
【0034】
式(1)におけるX及びYは、下記(i)〜(iii)のいずれかであることが好ましい。
(i)X及びYが、それぞれ独立にカルボキシル基、リン酸基、シアノ基及びアシル基であることが好ましく、それぞれ独立にカルボキシル基、シアノ基又はアシル基であることがより好ましく、一方がカルボキシル基でかつ他方がカルボキシル基、シアノ基又はアシル基であることが更に好ましく、一方がカルボキシル基でかつ他方がシアノ基であることが特に好ましい。
(ii)X及びYのいずれか少なくとも一つ以上が、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基、及びこれらの酸性基の塩からなる群から選択される基を少なくとも一つ以上置換基として有する芳香族残基であることが好ましく、該芳香族残基が上記式(1001)〜(1033)であることがより好ましい。
(iii)XとYが結合して環構造を形成することが好ましく、該環構造が上記式(2001)〜(2044)であることがより好ましく、該環構造がカルボキシル基を置換基として有しているものが更に好ましく、該環構造が式(2007)又は(2012)であることが特に好ましく、式(2007)であることが極めて好ましい。
【0035】
式(1)におけるZ1、Z2及びZ3は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR11を表し、R11は水素原子、芳香族残基又は脂肪族炭化水素残基を表す。
11が表す芳香族残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
11が表す脂肪族炭化水素残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べた脂肪族炭化水素残基と同じものが挙げられる。
11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基は置換基を有していてもよく、該置換基の具体例としては、スルファモイル基、シアノ基、イソシアノ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ニトロ基、ニトロシル基、ハロゲン原子、リン酸エステル基、置換もしくは非置換アミノ基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アシル基、アルデヒド基、並びにアルコキシカルボニル基及びアリールカルボニル基等の置換カルボニル基の他に芳香族残基、脂肪族炭化水素残基等が挙げられる。
11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基としてのハロゲン原子、リン酸エステル基、置換もしくは非置換アミノ基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及び脂肪族炭化水素残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基としての芳香族残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
【0036】
式(1)におけるm、j又はkのいずれか少なくとも一つが2以上で、Z1、Z2及びZ3のいずれかが複数存在する場合、それぞれのZ1、Z2及びZ3は互いに同じか又は異なっていてよい。
式(1)におけるZ1、Z2及びZ3としては、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子及びセレン原子であることが好ましく、硫黄原子であることがより好ましい。
【0037】
1、A2、A3、A5及びA6は、それぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。
1、A2、A3、A5及びA6が表す芳香族残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基と同じものが挙げられる。
1、A2、A3、A5及びA6が表す脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
1、A2、A3、A5及びA6が表す芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
【0038】
式(1)におけるl及びnのいずれか少なくとも一つ以上が2以上でA2、A3、A5及びA6のいずれかが複数存在する場合には、それぞれのA2、A3、A5及びA6は互いに同じか又は異なってもよい。
lが0以外の場合、A1、A2及びA3のから選ばれる少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
1、A2及びA3が形成する環としては、不飽和炭化水素環又は複素環等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、インデン、アズレン、フルオレン、シクロブテン、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン等が挙げられ、複素環の例としては、ピラン、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、インドリン、オキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、キノリン、カルバゾール、ベンゾピラン等が挙げられる。これらのうちベンゼン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンであることが好ましい。
これら不飽和炭化水素環及び複素環等は置換基を有してもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
【0039】
1、A2及びA3のから選ばれる少なくとも2つにより形成する複素環が、カルボニル基、チオカルボニル基等の置換基を有する場合には、これらの置換基は環状ケトン又は環状チオケトンなどであってもよく、これらの環は更に置換基を有してもよい。その場合の置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
中でも、式(1)におけるA1、A2、A3、A5及びA6は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族炭化水素残基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0040】
式(1)におけるA4は、水素原子、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アルコキシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基又はアシル基を表す。
4が表す脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アルコキシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基及びアシル基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
4が表す脂肪族炭化水素残基、アルコキシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基アシル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
mが2以上でA4が複数存在する場合には、それぞれのA4は互いに同じか又は異なってもよい。
式(1)におけるA4としては、水素原子又は脂肪族炭化水素残基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0041】
式(1)におけるA7、A8、A9及びA10は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基又はアシル基を表す。
7、A8、A9及びA10が表す脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基及びアシル基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
7、A8、A9及びA10が表す脂肪族炭化水素残基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基及びアシル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)におけるj又はkのいずれか少なくとも一つが2以上でA7、A8、A9及びA10のいずれかが複数存在する場合には、それぞれのA7、A8、A9及びA10は互いに同じか又は異なってもよい。
式(1)におけるA7、A8、A9及びA10としては、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族炭化水素残基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0042】
式(1)におけるR1は、それぞれ独立に下記式(3001)又は(3003)で表される基、又は有機金属錯体残基を表す。
【0043】
【化9】
【0044】
式(3001)〜(3003)中、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基又は脂肪族炭化水素残基を表す。R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、アシル基、アミド基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基又はスルフォニルベンゼン基を表す。
12、R13、R14及びR15が表す芳香族残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
12、R13、R14及びR15が表す脂肪族炭化水素残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べた脂肪族炭化水素残基と同じものが挙げられる。
12、R13、R14及びR15が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(3001)におけるR12及びR13としては、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族炭化水素残基であることが好ましく、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜8の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
式(3003)におけるR14及びR15としては、それぞれ独立に芳香族残基であることが好ましく、それぞれ独立にフェニル基又は式(3001)で表される基であることがより好ましく、両者が同一のフェニル基または同一の式(3001)で表される基であることが更に好ましい。尚、R14及びR15が表す式(3001)で表される基中のR12及びR13は前記と同様であり、また好ましいものも前記と同様である。
【0045】
16、R17、R18及びR19が表す芳香族残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
16、R17、R18及びR19が表す脂肪族炭化水素残基、アシル基、アミド基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
16、R17、R18及びR19が表す芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、アシル基、アミド基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基及びスルフォニルベンゼン基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(3003)におけるR16、R17、R18及びR19としては、それぞれ独立に水素原子又はアルコキシル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルコキシル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
1が表す有機金属錯体残基としては、有機金属錯体またはそれに結合する置換基から水素原子1つを除いた基を挙げることができ、これらの有機金属錯体化合物としてはフェロセン、ルテノセン、チタノセン、ジルコノセン、ポルフィリン、フタロシアニン、ビピリジル錯体などが挙げられる。該有機金属錯体残基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
mが2以上でR1が複数存在する場合には、それぞれのR1は互いに同じか又は異なってもよい。
【0046】
式(1)におけるR1としては、式(3001)で表される基であって、かつR12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基又は式(3001)で表される基であって、R12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であって、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基であることがより好ましく、式(3001)で表される基であって、かつR12及びR13が炭素数1〜8のアルキル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基であって、かつR16乃至R19が水素原子であることが更に好ましい。
また、より具体的には、R1が下記式(3101)〜(3119)のいずれかで表される基であることが好ましく、下記式(3101)〜(3114)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記式(3102)、(3103)、(3107)、(3108)、(3110)、(3111)、(3113)又は(3114)で表される基であることが更に好ましく、下記式(3103)、(3107)又は(3111)で表される基であることが特に好ましく、下記式(3103)又は(3107)で表される基であることが最も好ましい。
【0047】
【化10】
【0048】
式(1)におけるR2は、前記式(3001)又は(3003)で表される基、水素原子、脂肪族炭化水素残基または有機金属錯体残基を表す。
2が表す脂肪族炭化水素残基としては、式(1)のX及びYが表す芳香族残基が有していてもよい置換基の項で述べた脂肪族炭化水素残基と同じものが挙げられる。
2が表す式(3001)及び式(3003)中のR12乃至R19としては、上記したR1が表す式(3001)及び式(3003)の項で説明したものと同様であり、また、好ましいものもR1が表す式(3001)及び式(3003)の項で説明したものと同様である。
2が表す有機金属錯体残基としては、R1が表す有機金属錯体残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
nが0以外の場合、A5、A6及びR2のから選ばれる少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
5、A6及びR2が形成する環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(1)のR11が表す芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)におけるR2は、式(3001)で表される基であって、かつR12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基又は式(3001)で表される基であって、R12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であって、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基であることがより好ましい。また、R2は、式(3003)で表される基であって、R14及びR15がフェニル基であって、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基であるか、若しくは式(3003)で表される基であって、R14及びR15が式(3001)で表される基であって、R12及びR13が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であって、かつR16乃至R19がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1乃至4のアルコキシル基であることが更に好ましい。
また、より具体的には、前記式(3101)〜(3119)のいずれかで表される基であることが好ましく、前記式(3101)〜(3114)のいずれかで表される基であることがより好ましく、前記式(3102)、(3103)、(3107)、(3108)、(3110)、(3111)、(3113)又は(3114)で表される基であることが更に好ましく、前記式(3103)、(3107)又は(3111)で表される基であることが特に好ましく、前記式(3107)又は(3111)で表される基であることが最も好ましい。
【0049】
式(1)で表されるメチン系色素がカルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基及びスルホン酸基等の酸性基を置換基として有する場合は、それぞれ塩を形成してもよく、塩としては例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、又はマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属などとの塩、又は有機塩基、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピペラジニウム、ピペリジニウムなどの4級アンモニウム塩のような塩を挙げることができる。
【0050】
式(1)で表されるメチン系色素は、シス体、トランス体、ラセミ体等の構造異性体をとり得るが、特に限定されず、いずれの異性体も本発明における光増感用色素として良好に使用しうるものである。
【0051】
式(1)におけるm、l、n、j、k、X、Y、Z1〜Z3、A1〜A10及びR1〜R2の好ましい組合せは、上記のm、l、n、j、k、X、Y、Z1〜Z3、A1〜A10及びR1〜R2のそれぞれにおいて好ましいとされるもの同士の組み合わせであり、より好ましい組み合わせは以下の通りである。
すなわち、l及びnが0であり、m及びjが1乃至3であり、kが0乃至2であり、Z1、Z2及びZ3がそれぞれ独立に酸素原子、イオウ原子、セレン原子、アミノ基、N−メチルアミノ基又はN−フェニルアミノ基であり、R1及びR2が上記式(3101)〜(3119)のいずれかで表される基であり、Xがカルボキシル基、リン酸基、シアノ基よりなる群から選択される基であり、Yが水素原子、シアノ基、カルボキシル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基及びスルフォニルベンゼン基のいずれか(但しこの場合、X及びYのいずれか一方はカルボキシル基である)であるか、X及びYの一方が上記式(1001)〜(1033)で示される基であり、他方が水素原子又はシアノ基であるか、もしくはX及びYで環を形成し、その環は上記式(2001)〜(2044)で示される基よりなる群から選択される基であり、A1、A4及びA7〜A10がそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1〜36のアルキル基のいずれかである。
特に好ましい組み合わせとしては、mが1乃至3、l及びnが0、jが1乃至3であり、kが0であり、Z1及びZ2がイオウ原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に上記式(3103)、(3107)又は(3111)のいずれかで表される基であり、X及びYの一方がカルボキシル基でかつ他方がシアノ基であるか、またはX及びYが結合して形成する環が上記式(2007)で表される基であり、A1、A4及びA7〜A8がそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1〜18のアルキル基のいずれかである。
最も好ましい組み合わせとしては、mが1乃至3、l及びnが0、jが1乃至3、kが0であり、Z1及びZ2がイオウ原子であり、R1が上記式(3103)又は(3107)で表される基であり、R2が上記式(3107)又は(3111)で表される基であり、X及びYの一方がカルボキシル基でかつ他方がシアノ基であるか、またはX及びYが結合して形成する環が上記式(2007)で表される基であり、A1及びA4が水素原子であり、A7及びA8が水素原子である。
【0052】
上記式(1001)〜(1017)、(1019)及び(1020)に示されるように、窒素原子の陽電荷を中和するための対イオンは分子間または分子内のいずれで形成してもよい。分子間の好ましい対イオンとしてはヨウ素、過塩素酸、ビストリフルオロメチルスルホンイミド、トリストリフルオロメチルスルホニルメタン、6フッ化アンチモン酸、テトラフルオロホウ酸などの各アニオンが挙げられる。また分子内の好ましい対イオンとしては陽電荷を有する窒素原子に結合した酢酸−2−イル、プロピオン酸−3−イル、スルホエタン−2−イルの各アニオンなどが挙げられる。
【0053】
前記式(1)で表されるメチン系色素は、例えば、以下に示す反応式によって製造できるが、本発明はこれらの合成法に限定されるものではない。化合物(3)とボロン酸類(4)の反応により化合物(5)を得る。化合物(5)をN−ヨードこはく酸イミドで処理し、化合物(6)を得る。そして、化合物(6)とボロン酸類(7)とを反応させ化合物(8)に誘導し、さらにボロン酸類(9)との反応によりカルボニル化合物(10)を得る。この化合物(10)と式(11)で表される活性メチレンを有する化合物とを必要であれば苛性ソーダ、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、ジアザビシクロウンデセンなどの塩基性触媒の存在下、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類やジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒やトルエン、無水酢酸、アセトニトリルなどの溶媒中、20℃〜180℃好ましくは50℃〜150℃で縮合することにより式(1)で表されるメチン系化合物(色素)が得られる。上記反応において、活性メチレンを有する化合物(11)がエステル基を有する場合、縮合反応後、加水分解等を行うことによりカルボン酸体を得ることも可能である。
【0054】
【化11】
【0055】
また、特に式(1)において、l=0のメチン系色素の場合には、化合物(3)とボロン酸類(4)との反応を行わず、化合物(5)の代わりに下記の化合物(5’)を使用する事で同様に合成できる。
【0056】
【化12】
【0057】
また、特に式(1)において、n=0であり、かつR2が水素原子または脂肪族炭化水素残基のメチン系色素の場合には、化合物(3)の代わりに下記の化合物(3’)を使用することで化合物(5’’)を合成することができ、さらにその化合物(5’’)を化合物(8)の代わりに使用する事で対応する化合物(1)を合成する事ができる。
【0058】
【化13】
【0059】
式(1−1)で表されるメチン系色素(式(1)におけるj及びkが0であるメチン系色素)の具体例を、表1〜表4に示す。各表において、Phはフェニル基を意味する。(1001)〜(1033)と表記したものは、上記式(1001)〜(1033)に対応する。(2001)〜(2044)と表記したものは、XとYが結合して形成する環を表したものであり、上記式(2001)〜(2044)に対応する。また、(3101)〜(3119)と表記したものは、上記式(3101)〜(3119)に対応する。
【0060】
【化14】
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
下記式(1−2)で表されるメチン系色素(式(1)におけるl及びnが0であるメチン系色素)の具体例を、表5〜表10に示す。各表において、Phはフェニル基を意味する。(1001)〜(1033)と表記した置換基は、上記式(1001)〜(1033)に対応する。(2001)〜(2044)と表記した置換基は、XとYが結合して形成する環を表し、上記式(2001)〜(2044)に対応する。また、(3101)〜(3119)と表記したものは、上記式(3101)〜(3119)に対応する。
【0066】
【化15】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】
本発明の光電変換素子は、例えば、酸化物半導体微粒子を用いて基板上に酸化物半導体微粒子の薄膜を設け、次いでこの薄膜に式(1)で表される色素を担持させたものである。
酸化物半導体微粒子の薄膜を設ける基板としては、その表面が導電性であるものが好ましいが、そのような基板は市場にて容易に入手可能である。例えば、ガラス又はポリエチレンテレフタレート若しくはポリエーテルスルフォン等の透明性のある高分子材料等の表面にインジウム、フッ素、アンチモンをドープした酸化スズなどの導電性金属酸化物や銅、銀、金等の金属の薄膜を設けたものを基板として用いることが出来る。その導電性としては通常1000Ω以下であればよく、特に100Ω以下のものが好ましい。
また、酸化物半導体の微粒子としては金属酸化物が好ましく、その具体例としてはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、バナジウムなどの酸化物が挙げられる。これらのうちチタン、スズ、亜鉛、ニオブ、インジウム等の酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズが最も好ましい。これらの酸化物半導体は単一で使用することも出来るが、混合したり、半導体の表面にコーティングさせて使用することも出来る。また酸化物半導体の微粒子の粒径は、平均粒径として通常1〜500nm、好ましくは1〜100nmである。またこの酸化物半導体の微粒子は大きな粒径のものと小さな粒径のものを混合したり、多層にして用いることも出来る。
【0074】
酸化物半導体微粒子の薄膜は酸化物半導体微粒子をスプレイ噴霧などで直接前記基板上に半導体微粒子の薄膜として形成する方法、基板を電極として電気的に半導体微粒子を薄膜状に析出させる方法、半導体微粒子のスラリー又は半導体アルコキサイド等の半導体微粒子の前駆体を加水分解することにより得られた微粒子を含有するペーストを基板上に塗布した後、乾燥、硬化もしくは焼成する等によって製造することが出来る。酸化物半導体を用いる電極の性能上、スラリーを用いる方法が好ましい。この方法の場合、スラリーは2次凝集している酸化物半導体微粒子を常法により分散媒中に平均1次粒子径が1〜200nmになるように分散させることにより得られる。
【0075】
スラリーを分散させる分散媒としては、半導体微粒子を分散させ得るものであれば何でも良く、水、エタノール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン等の炭化水素等が用いられ、これらは混合して用いてもよく、また水を用いることはスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。また酸化物半導体微粒子の分散状態を安定化させる目的で分散安定剤を用いることが出来る。用いうる分散安定剤の例としては例えば酢酸、塩酸、硝酸等の酸、又はアセチルアセトン、アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の有機溶媒等が挙げられる。
【0076】
スラリーを塗布した基板は焼成してもよく、その焼成温度は通常100℃以上、好ましくは200℃以上で、かつ上限はおおむね基板材料の融点(軟化点)以下であり、通常上限は900℃であり、好ましくは600℃以下である。また焼成時間には特に限定はないが、概ね4時間以内が好ましい。基板上の薄膜の厚みは通常1〜200μmで、好ましくは1〜50μmである。
【0077】
酸化物半導体微粒子の薄膜に2次処理を施してもよい。すなわち、例えば半導体と同一の金属のアルコキサイド、塩化物、硝化物、硫化物等の溶液に直接、基板ごと薄膜を浸積させて乾燥もしくは再焼成することにより半導体微粒子の薄膜の性能を向上させることもできる。金属アルコキサイドとしてはチタンエトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt−ブトキサイド、n−ジブチル−ジアセチルスズ等が挙げられ、それらのアルコール溶液が用いられる。塩化物としては例えば四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、その水溶液が用いられる。このようにして得られた酸化物半導体薄膜は酸化物半導体の微粒子から成っている。
【0078】
次に、酸化物半導体微粒子の薄膜に、本発明の前記式(1)で表されるメチン系色素を担持させる方法について説明する。
前記式(1)で表されるメチン系色素を担持させる方法としては、該色素を溶解しうる溶媒にて色素を溶解して得た溶液、又は溶解性の低い色素にあっては色素を分散せしめて得た分散液に上記酸化物半導体微粒子の薄膜の設けられた基板を浸漬する方法が挙げられる。溶液又は分散液中の濃度は色素によって適宜決める。その溶液又は分散液中に基板上に作成した半導体微粒子の薄膜を浸す。浸漬温度はおおむね常温から溶媒の沸点迄であり、また浸漬時間は1分間から48時間程度である。色素を溶解させるのに使用しうる溶媒の具体例として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、n−ブタノール、t−ブタノール、水、n−ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン等が挙げられ、色素の溶解度等に合わせて、単独または複数を混合して用いることができる。溶液の色素濃度は通常1×10-6M〜1Mであり、好ましくは1×10-5M〜1×10-1Mである。
浸漬が終わったあと、風乾又は必要により加熱して溶媒を除去する。この様にして式(1)で表されるメチン系色素で増感された酸化物半導体微粒子の薄膜を有した本発明の光電変換素子が得られる。
【0079】
担持する前記式(1)で表されるメチン系色素は1種類でもよいし、数種類混合してもよい。また、混合する場合は本発明の式(1)で表されるメチン系色素同士でもよいし、他の色素や金属錯体色素を混合してもよい。特に吸収波長の異なる色素同士を混合することにより、幅広い吸収波長を利用することが出来、変換効率の高い太陽電池が得られる。混合しうる金属錯体色素の例としては特に制限は無いが、非特許文献2に示されているルテニウム錯体やその4級アンモニウム塩化合物、フタロシアニン、ポルフィリンなどが好ましく、混合利用する有機色素としては無金属のフタロシアニン、ポルフィリンやシアニン、メロシアニン、オキソノール、トリフェニルメタン系、特許文献2に示されるアクリル酸系色素などのメチン系色素や、キサンテン系、アゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系等の色素が挙げられる。好ましくはルテニウム錯体やメロシアニン、アクリル酸系等のメチン系色素が挙げられる。色素を2種以上用いる場合は色素を半導体微粒子の薄膜に順次吸着させても、混合溶解して吸着させてもよい。
【0080】
混合する色素の比率に特に限定は無く、それぞれの色素について最適化条件が適宜選択されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの色素につき、10%モル程度以上使用するのが好ましい。2種以上の色素を溶解又は分散した溶液を用いて、酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を吸着する場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様でよい。色素を混合して使用する場合の溶媒としては前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。
【0081】
酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持する際、色素同士の会合を防ぐために包摂化合物の共存下、色素を担持することが有利である。ここで包摂化合物としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられるが、好ましいものの具体例としてはデオキシコール酸、デヒドロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。また、色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体微粒子の薄膜を処理してもよい。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に色素を担持した半導体微粒子の薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。
【0082】
本発明の太陽電池は上記酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持させた光電変換素子を一方の電極とし、対極、レドックス電解質又は正孔輸送材料又はp型半導体等から構成される。レドックス電解質、正孔輸送材料、p型半導体等の形態としては、液体、凝固体(ゲル及びゲル状)、固体などそれ自体公知のものが使用出来る。液状のものとしてはレドックス電解質、溶融塩、正孔輸送材料、p型半導体等をそれぞれ溶媒に溶解させたものや常温溶融塩などが、凝固体(ゲル及びゲル状)の場合は、これらをポリマーマトリックスや低分子ゲル化剤等に含ませたもの等がそれぞれ挙げられる。固体のものとしてはレドックス電解質、溶融塩、正孔輸送材料、p型半導体等を用いることができる。正孔輸送材料としてはアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子、トリフェニレン系化合物などが挙げられる。また、p型半導体としてはCuI、CuSCN等が挙げられる。対極としては導電性を持っており、レドックス電解質の還元反応を触媒的に作用するものが好ましい。例えばガラス又は高分子フィルムに白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したものや、導電性微粒子を塗り付けたものを用いることができる。
【0083】
本発明の太陽電池に用いるレドックス電解質としてはハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物及びハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン、コバルト錯体などの金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等の有機酸化還元系電解質等をあげることができるが、ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン化合物−ハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、例えばヨウ素分子や臭素分子等があげられ、ヨウ素分子が好ましい。上記の、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物としては、例えばLiBr、NaBr、KBr、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、MgI2、CuI等のハロゲン化金属塩あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイドなどのハロゲンの有機4級アンモニウム塩等があげられるが、ヨウ素イオンを対イオンとする塩類が好ましい。また、上記ヨウ素イオンの他にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ジシアノイミドイオン等のイミドイオンを対イオンとする電解質を用いることも好ましい。
【0084】
レドックス電解質はそれを含む溶液の形で構成されている場合、その溶媒には電気化学的に不活性なものが用いられる。例えばアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、1,3−ジオキソラン、メチルフォルメート、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−オキサゾリジン−2−オン、スルフォラン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられ、これらの中でも、特に、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、3−メチル−オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。これらは単独もしくは2種以上組み合わせて用いてもよい。ゲル状電解質の場合は、オリゴマ−及びポリマー等のマトリックスに電解質あるいは電解質溶液を含有させたものや、低分子ゲル化剤等に同じく電解質あるいは電解質溶液を含有させたもの等が挙げられる。レドックス電解質の濃度は通常0.01〜99質量%で、好ましくは0.1〜90質量%程度である。
【0085】
本発明の太陽電池は、基板上の酸化物半導体微粒子の薄膜に、本発明の式(1)で表されるメチン系色素を担持した光電変換素子の電極に、それを挟むように対極を配置する。その間にレドックス電解質を含んだ溶液を充填することにより得られる。
【実施例】
【0086】
以下に実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、部は特に指定しない限り質量部を表す。溶液の濃度を表すMは、mol/Lを表す。また、化合物番号は前記の具体例における化合物番号である。極大吸収波長は紫外可視分光光度計(UV−3100PC、島津製作所製)により測定した。核磁気共鳴は、化合物(179)、(180)、(186)、(190)についてはジェミニ300(バリアン社製)により、化合物(199)についてはJNM−ECS400(日本電子社製)によりそれぞれ測定した。
【0087】
合成例1
9,9−ジブチル−2−ヨードフルオレン26部、3−チオフェンボロン酸10部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)2.3部及び20%炭酸ナトリウム水溶液180部を1,2−ジメトキシエタン340部に加え、還流下5時間反応させた。反応混合物を、トルエン−水で抽出、トルエン相を濃縮後、カラムクロマト(トルエン−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(700)15部を無色オイルとして得た。
【0088】
【化16】
【0089】
合成例2
化合物(700)15部を酢酸40部とクロロホルム60部の混合液に溶解し、N−ブロモこはく酸イミド5部を加え、還流下で攪拌した。1時間後、N−ブロモこはく酸イミド2.5部を追加し、還流下でさらに1時間攪拌した。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(701)17部を無色オイルとして得た。
【0090】
【化17】
【0091】
合成例3
化合物(701)17部を酢酸210部に溶解した溶液に、N−ヨードこはく酸イミド8.6部を加え、遮光下100℃で5時間攪拌した。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(702)17部を無色オイルとして得た。
【0092】
【化18】
【0093】
合成例4
化合物(702)17部、4−(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸10部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)1部及び20%炭酸ナトリウム水溶液84部を1,2−ジメトキシエタン160部に加え、還流下5時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(703)6.9部を白色固体として得た。
【0094】
【化19】
【0095】
合成例5
化合物(703)1部、5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸0.23部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.052部及び20%炭酸ナトリウム水溶液4部を1,2−ジメトキシエタン15部に加え、還流下1時間反応させた。5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸0.23部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.052部を追加し、還流下さらに1時間反応させた。再度5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸0.33部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.066部を追加し、還流下5時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(704)0.2部を黄色固体として得た。
【0096】
【化20】
【0097】
実施例1
化合物(704)0.2部とシアノ酢酸0.037部をトルエン4部に溶解させ、無水ピペラジン0.001部を加え、還流下6時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−エタノール)で分離、精製した。濃縮後得られた黒赤色固体を、クロロホルム−ヘキサンから再結晶し、下記化合物(179)0.034部を黒赤色固体として得た。
この化合物(179)についての極大吸収波長及び核磁気共鳴装置における測定値は次のとおりである。
極大吸収波長;λmax=439nm(1.6x10-5M、ジメチルスルホキシド/エタノール=1/9溶液)
核磁気共鳴の測定値;1H-NMR(PPM:DMSO-d6):0.50(m.4H),0.59(m.6H),0.97(m.4H), 1.89(m.4H),6.98(d.2H),7.12(m.7H),7.40(m.9H),7.62(s.1H),7.70(d.2H),7.83(m.2H),7.91(d.1H),9.31(s,1H)
【0098】
【化21】
【0099】
合成例6
化合物(701)4.1部、5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸2.2部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.32部及び20%炭酸ナトリウム水溶液25部を1,2−ジメトキシエタン93部に加え、還流下4時間反応させた。5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸2.2部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.32部を追加し、還流下さらに3時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(705)0.76部を得た。
【0100】
【化22】
【0101】
合成例7
化合物(705)1部を酢酸10部とクロロホルム15部の混合液に溶解し、N−ブロモこはく酸イミド0.25部を加え、還流下で攪拌した。1時間後、N−ブロモこはく酸イミド0.13部を追加し、還流下でさらに1時間攪拌した。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(706)0.98部を褐色オイルとして得た。
【0102】
【化23】
【0103】
合成例8
[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物1.6部、酢酸カリウム2部及びビス(ピナコラート)ジボロン2部をジメチルスルホキシド22部に加え、窒素雰囲気下攪拌した。9,9−ジブチル−N−(9,9−ジブチルフルオレン−2−イル)−N−(4−ヨードフェニル)フルオレン−2−アミン5部をジメチルスルホキシド66部に溶解させた溶液を加え、80℃で5時間攪拌した。反応混合物を、トルエン−水で抽出、トルエン相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(707)3.5部を白色固体として得た。
【0104】
【化24】
【0105】
合成例9
化合物(707)2.3部、化合物(706)0.99部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.062部及び20%炭酸ナトリウム水溶液5部を1,2−ジメトキシエタン20部に加え、還流下5時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(708)1.7部を橙色固体として得た。
【0106】
【化25】
【0107】
実施例2
化合物(708)1.7部とシアノ酢酸0.38部をエタノール−トルエン(2:1)混合液300部に溶解させ、無水ピペラジン0.01部を加え、還流下6時間反応させた。シアノ酢酸0.38部を追加し、さらに4時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−エタノール)で分離、精製した。濃縮後得られた黒赤色固体を、クロロホルム−メタノールから再結晶し、下記化合物(180)0.28部を黒赤色固体として得た。
この化合物(180)についての極大吸収波長及び核磁気共鳴装置における測定値は次のとおりである。
極大吸収波長;λmax=441nm(1.6x10-5M、ジメチルスルホキシド溶液)
核磁気共鳴の測定値;1H-NMR(PPM:DMSO-d6):0.57(m.12H),0.64(m.18H),1.00(m.12H), 1.87(m.12H),7.03(m.5H),7.19(d.2H),7.30(m.6H),7.39(m.4H),7.46(m.1H),7.50(m.1H),7.57(s.1H),7.65(d,2H),7.74(m,4H),7.81(m,1H),7.88(m,2H)
【0108】
【化26】
【0109】
合成例10
化合物(701)2.8部、5−ホルミル−5’−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェン3部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.22部及び20%炭酸ナトリウム水溶液17部を1,2−ジメトキシエタン63部に加え、還流下5時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(709)0.66部を褐色固体として得た。
【0110】
【化27】
【0111】
合成例11
化合物(709)2.6部を酢酸20部とクロロホルム30部の混合液に溶解し、N−ブロモこはく酸イミド0.56部を加え、還流下で攪拌した。1時間後、N−ブロモこはく酸イミド0.28部を追加し、還流下でさらに1時間攪拌した。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(710)2.8部を黄褐色固体として得た。
【0112】
【化28】
【0113】
合成例12
化合物(710)0.55部、4−(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸0.32部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.03部及び20%炭酸ナトリウム水溶液4部を1,2−ジメトキシエタン10部に加え、還流下3時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(711)0.65部を黄褐色固体として得た。
【0114】
【化29】
【0115】
実施例3
化合物(711)0.65部とシアノ酢酸0.2部をエタノール−トルエン(2:1)混合液150部に溶解させ、無水ピペラジン0.001部を加え、還流下1.5時間反応させた。シアノ酢酸0.2部、無水ピペラジン0.001部を追加し、さらに4時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−エタノール)で分離、精製した。濃縮後得られた黒褐色固体を、クロロホルム−ヘキサンから再結晶し、下記化合物(186)0.44部を黒褐色固体として得た。
この化合物(186)についての極大吸収波長及び核磁気共鳴装置における測定値は次のとおりである。
極大吸収波長;λmax=449nm(1.6x10-5M、ジメチルスルホキシド/エタノール=1/9溶液)
核磁気共鳴の測定値;1H-NMR(PPM:DMSO-d6):0.50(m.10H),0.90(m.4H),1.89(m.4H), 6.99(d.2H),7.10(m.6H),7.39(m.11H),7.45(d.1H),7.58(s.1H),7.67(d.2H),7.85(m.2H),7.92(d,1H),8.37(s,1H)
【0116】
【化30】
【0117】
合成例13
化合物(710)1.5部、化合物(707)2.7部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.083部及び20%炭酸ナトリウム水溶液6.3部を1,2−ジメトキシエタン25部に加え、還流下5時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(712)2.1部を赤橙色固体として得た。
【0118】
【化31】
【0119】
実施例4
化合物(712)2.1部とシアノ酢酸0.66部をエタノール−トルエン(2:1)混合液520部に溶解させ、無水ピペラジン0.01部を加え、還流下1時間反応させた。シアノ酢酸0.66部を追加し、さらに4時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−エタノール)で分離、精製した。濃縮後得られた黒赤色固体を、クロロホルム−エタノールから再結晶し、下記化合物(190)0.60部を黒赤色固体として得た。
この化合物(190)についての極大吸収波長及び核磁気共鳴装置における測定値は次のとおりである。
極大吸収波長;λmax=465nm(1.6x10-5M、ジメチルスルホキシド溶液)
核磁気共鳴の測定値;1H-NMR(PPM:DMSO-d6):0.57(m.30H),0.94(m.12H),1.87(m.12H), 7.05(m.5H),7.19(d.2H),7.35(m.13H),7.52(s.1H),7.62(d.2H),7.72(m.4H),7.86(m.3H),8.38(s.1H)
【0120】
【化32】
【0121】
合成例14
2,3−ジブロモチオフェン5部、5’−ホルミル−2,2’−ビチオフェン−5−ボロン酸5.5部、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)0.22部、フッ化セシウム6.4部、水28部を1,4−ジオキサン126部に加え、80℃で3時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(713)2.8部を黄色固体として得た。
【0122】
【化33】
【0123】
合成例15
化合物(713)2.5部を酢酸250部とクロロホルム375部の混合液に溶解した溶液に、N−ヨードこはく酸イミド1.6部を加え、遮光下常温で5時間攪拌した。N−ヨードこはく酸イミド0.8部を加え、さらに遮光下常温で19時間攪拌した。反応後、析出物を濾過及びヘキサン洗浄し、下記化合物(714)2.9部を薄橙色固体として得た。
【0124】
【化34】
【0125】
合成例16
化合物(714)2.1部、化合物(707)4.1部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.15部及び20%炭酸ナトリウム水溶液16部を1,2−ジメトキシエタン300部に加え、還流下4時間反応させた。化合物(707)2.0部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.08部を追加し、さらに還流下3時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン、およびトルエン−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(715)1.2部を濃橙色固体として得た。
【0126】
【化35】
【0127】
合成例16
化合物(715)1.2部、4−(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸0.52部、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)0.012部、フッ化セシウム0.37部、水1.6部を1,4−ジオキサン21部に加え、80℃で5時間反応させた後、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)0.022部を加えて、さらに80℃で3時間反応させた。反応混合物を、クロロホルム−水で抽出、クロロホルム相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−ヘキサン)で分離、精製し、下記化合物(716)1.3部を橙色固体として得た。
【0128】
【化36】
【0129】
実施例5
化合物(716)1.3部とシアノ酢酸0.29部をエタノール−トルエン(2:1)混合液220部に溶解させ、無水ピペラジン0.01部を加え、還流下1時間反応させた。シアノ酢酸0.29部を加え、還流下さらに8時間反応させた。反応混合物を、トルエン−水で抽出、トルエン相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−メタノール)で分離、精製した。濃縮後得られた黒赤色固体を、クロロホルム−ヘキサンから再結晶し、下記化合物(199)1.0部を小豆色固体として得た。
この化合物(199)についての極大吸収波長及び核磁気共鳴装置における測定値は次のとおりである。
極大吸収波長;λmax=505nm(1.6×10-5M、クロロホルム溶液)
核磁気共鳴の測定値;1H-NMR(PPM:DMSO-d6):0.55(m.8H),0.64(t.12H),1.02(m.8H), 1.89(m.8H),7.50(m.12H),7.15(d.1H),7.19(d.2H),7.30(m.10H),7.40(dd.2H),7.43(d.1H),7.46(d.1H),7.49(s.1H),7.61(d.2H),7.73(m.4H),7.83(d,1H),8.28(s,1H)
【0130】
【化37】
【0131】
実施例6
合成例16で得られた化合物(716)0.46部と1−フェニル−5−ピラゾロン−3−カルボン酸0.1部をエタノール−トルエン(2:1)混合液45部に溶解させ、還流下4時間反応させた。反応混合物を、トルエン−水で抽出、トルエン相を濃縮後、カラムクロマト(クロロホルム−メタノール)で分離、精製した。濃縮後得られた黒紫色固体を、クロロホルム−ヘキサンから再結晶し、下記化合物(500)0.13部を黒紫色固体として得た。
この化合物(500)についての極大吸収波長及び核磁気共鳴装置における測定値は次のとおりである。
極大吸収波長;λmax=554nm(1.6×10-5M、THF溶液)
核磁気共鳴の測定値;1H-NMR(PPM:DMSO-d6):0.58(m.8H),0.65(t.12H),1.01(m.8H), 1.90(m.8H),7.04(m.8H),7.11(m.4H),7.21(m.3H),7.35(m.15H),7.51(s.1H),7.55(d.1H),7.59(d.1H),7.63(d.2H),7.75(m.4H),7.90(d.2H),8.03(d,1H),9.05(s,1H)
【0132】
【化38】

【0133】
実施例7〜12及び比較例1〜5
表11に示される化合物番号のメチン系色素及び比較例色素を3.2×10-4M(実施例12及び比較例5においては1.6×10-4M)、下記コール酸類(式(a)、(b)又は(c))を3×10-2M(実施例12及び比較例5においては5×10-3M)となるようにエタノール(実施例12及び比較例5においてはテトラヒドロフラン)に溶解した。この溶液中に多孔質基板(透明導電性ガラス電極上に多孔質酸化チタンを450℃にて30分間焼結した半導体薄膜電極)を室温で3時間から一晩浸漬し色素を担持せしめ、溶剤で洗浄、乾燥させ、コール酸類処理色素増感半導体薄膜を得た。これと挟むように表面を白金でスパッタされた導電性ガラスを固定してその空隙に電解質を含む溶液を注入した。電解液は、3−メトキシプロピオニトリルにヨウ素/ヨウ化リチウム/1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド/t−ブチルピリジンをそれぞれ0.1M/0.1M/0.6M/1M(実施例12及び比較例5においては0M)になるように溶解したものを使用した。
測定する電池の大きさは実効部分を0.25cm2とした。光源は500Wキセノンランプを用いて、AM(大気圏通過空気量)1.5フィルターを通して100mW/cm2とした。短絡電流、解放電圧、変換効率はポテンシオ・ガルバノスタットを用いて測定した。
【0134】
【化39】
【0135】
国際公開特許WO2004/08261記載の化合物(246)及び化合物(248)、国際公開特許WO2007/100033記載の化合物(160)及び化合物(161)をそれぞれ化合物番号A、B、C、Dとし、比較用色素として評価した。また、国際公開特許WO2007/100033記載の化合物(281)を化合物番号Eとし、比較用色素として評価した。
【0136】
【化40】
【0137】
【表11】
【0138】
表11より、一般式(1)で表されるメチン系の色素によって増感された光電変換素子を用いることにより、可視光を効果的に電気に変換できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の色素増感光電変換素子において、特定の部分構造を有する色素を用いることにより、変換効率が高く安定性の高い太陽電池を提供する事が出来た。