(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957139
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】ねじの荷重配分
(51)【国際特許分類】
F16B 33/02 20060101AFI20160714BHJP
F04D 29/054 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
F16B33/02 A
F04D29/054
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-504624(P2015-504624)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公表番号】特表2015-514192(P2015-514192A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013033973
(87)【国際公開番号】WO2014007882
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】13/437,112
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バラムルガン,カリヤ
(72)【発明者】
【氏名】カプスキエビッチ,ダニエル アール.
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−192904(JP,A)
【文献】
特表2004−531675(JP,A)
【文献】
特表2008−519227(JP,A)
【文献】
特開平02−163506(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0141816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
F04D 1/00−13/16、17/00−19/02、21/00−25/16、29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のねじ切部材と第2のねじ切部材とを備える締結装置であって、第1のねじ切部材は、第1の端部から第2の端部まで延びるねじ山を有し、前記ねじ山は、山頂および谷底によって互いに接続された荷重側フランク面および遊び側フランク面によって提供されるねじ山形状を有し、前記山頂は山頂径を提供し、前記谷底は谷底径を有するとともに隣接するねじ山の間に位置しており、第1の端部の近傍の少なくとも1つのねじ山が、他のねじ山に比べて剛性が減少した柔軟なねじ山形状を有し、
第2のねじ切部材のねじ山は、第1のねじ部分および第2のねじ部分を提供し、第1のねじ部分の谷底径は一定であり、第2のねじ部分の谷底径は第1のねじ部分から離れる方向で増加することを特徴とする締結装置。
【請求項2】
第1のねじ切部材はおねじを提供し、第2のねじ切部材はめねじを提供することを特徴とする請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記のねじ山は、一定の山頂径を有することを特徴とする請求項1記載の締結装置。
【請求項4】
第2のねじ部分は、谷底角に沿って増加する谷底深さを有することを特徴とする請求項1記載の締結装置。
【請求項5】
前記谷底角は、約3°であることを特徴とする請求項4記載の締結装置。
【請求項6】
第2のねじ部分の山頂は、第1の端部に向かって減少することを特徴とする請求項1記載の締結装置。
【請求項7】
前記のねじ山は、一定のピッチを有することを特徴とする請求項1記載の締結装置。
【請求項8】
第2のねじ切部材は、第1のねじ切部材に固定されているとともに、第1のねじ切り部材と同じピッチを有することを特徴とする請求項7記載の締結装置。
【請求項9】
前記のねじ山は、軸に沿って延びており、前記荷重側フランク面は、第1のねじ切部材の軸の垂線周りで傾斜しており、前記遊び側フランク面は、互いに平行であり、第2のねじ切部材は、螺合する第1のねじ切部材の対応する荷重側フランク面と接触する荷重側フランク面を有することを特徴とする請求項8記載の締結装置。
【請求項10】
第1のねじ切部材と第2のねじ切部材とを備える締結装置であって、第1のねじ切部材は、第1の端部から第2の端部まで延びるねじ山を有し、前記ねじ山は、山頂および谷底によって互いに接続された荷重側フランク面および遊び側フランク面によって提供されるねじ山形状を有し、前記山頂は山頂径を提供し、前記谷底は谷底径を有するとともに隣接するねじ山の間に位置しており、第1の端部の近傍の少なくとも1つのねじ山が、他のねじ山に比べて剛性が減少した柔軟なねじ山形状を有し、
前記のねじ山は、軸に沿って延びており、第2のねじ切部材の山頂径は、変化するとともに前記軸に対して山頂角に沿って設けられていることを特徴とする締結装置。
【請求項11】
第2のねじ切部材は、ねじ山接触面で第1のねじ切部材の荷重側フランク面と接触する荷重側フランク面を有し、前記ねじ山接触面は、第2の端部に向かって小さくなることを特徴とする請求項10記載の締結装置。
【請求項12】
第2のねじ切部材の谷底径は一定であり、第1のねじ切部材および第2のねじ切部材は、一定である同じピッチを有することを特徴とする請求項11記載の締結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、タイシャフト連結部を用いて組み立てられた圧縮機ロータおよびタービンロータを含むガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、2012年4月2日出願の米国特許出願第13/437112号の優先権を主張するものである。
【0003】
ガスタービンエンジンは、空気を圧縮して燃焼部まで下流に送る圧縮機を含む。空気は、燃焼部で燃料と混合されて燃焼される。燃焼の生成物は、タービンロータを下流に通過し、タービンロータを回転させる。
【0004】
例示的な一実施例では、圧縮機部は、スタックとして設けられた複数のロータ段またはロータ部を含む。従来は、これらの段は溶接によって分離不能なアセンブリとして、あるいはボルトフランジや取付けボルトを受ける他の構造体を用いたボルト締めによって分離可能なアッセンブリとして、1つずつ順に連結される。他の連結方法は、協働してロータ部を互いに締結するタイシャフトとねじ切部材を使用する。
【0005】
ねじ切部材は、タイシャフトから持ち上がる、すなわち外向きに広がる傾向がある。これは、スタックに軸方向荷重がかかる箇所の近傍のねじ切部材の基部で典型的に起こる。持ち上がりは、ねじの不均一な軸方向荷重による。解決法の1つは、より均一なねじ荷重を得るためにタイシャフトとねじ切部材とで異なるねじピッチを使用することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示内容の例示的な形態による締結装置は、特に、第1の端部から第2の端部まで延びる第1のねじ切部材を含む。ねじ山は、山頂および谷底によって接続された荷重側フランク面および遊び側フランク面によって提供されるねじ山形状を有する。山頂は山頂径を提供し、谷底は谷底径を提供するとともに隣接するねじ山の間に位置する。第1の端部の近傍の少なくとも1つのねじ山が、他のねじ山に比べて剛性が減少した柔軟なねじ山形状を有する。
【0007】
上述の締結装置の他の限定的でない実施例では、第1のねじ切部材は、おねじを提供し、第2のねじ切部材は、めねじを提供する。
【0008】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、第1のねじ切部材は、おねじを提供するシャフトであり、第2のねじ切部材は、めねじを提供するハブまたはナットの一方である。
【0009】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、第2のねじ切部材のねじ山は、第1のねじ部分と第2のねじ部分を提供し、第1のねじ部分の谷底径は一定であり、第2のねじ部分の谷底径は第1のねじ部分から離れる方向で増加する。
【0010】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、第2のねじ切部材のねじ山は、一定の山頂径を有する。
【0011】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、第2のねじ切部材の第2のねじ部分は、谷底角に沿って先細となる谷底深さを有する。
【0012】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、谷底角は約3°である。
【0013】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、第2のねじ部分の山頂は第2の端部に向かって減少する。
【0014】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、ねじ山は一定のピッチを有する。
【0015】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、締結装置は、第1のねじ切部材に固定された第2のねじ切部材を含むことができ、第2のねじ切部材は第1のねじ切部材と同じピッチを有する。
【0016】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、ねじ山は軸に沿って延び、荷重側フランク面は第1のねじ切部材の軸の垂線周りに傾斜しており、遊び側フランク面は互いにほぼ平行である。第2のねじ切部材は、螺合する第1のねじ切部材の対応する荷重側フランク面と接触する荷重側フランク面を有する。
【0017】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、ねじ山は軸に沿って延び、第2のねじ切部材の山頂径は、変化するとともに上記軸に対して山頂角に沿って延びる。山頂は、山頂角に沿って設けられる。
【0018】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、締結装置は、第1のねじ切部材の荷重側フランク面とねじ山接触面で接触する荷重側フランク面を有する第2のねじ切部材を含みうる。第2の端部におけるねじ山接触面は、他のねじ山接触面よりも小さい。
【0019】
上述のいずれかの締結装置の他の限定的でない実施例では、第2のねじ切部材の谷底径は一定であり、第1のねじ切部材と第2のねじ切部材は、一定である同じピッチを有する。
【0020】
本開示内容は、添付図面とともに以下の実施形態を検討することによってさらに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】タイシャフトを有する例示的なガスタービンエンジンの部分断面図である。
【
図2】相対的に均一なねじ荷重を促進する第1および第2のねじ切部材の一形態の概略図である。
【
図3】相対的に均一なねじ荷重を促進する第1および第2のねじ切部材の他の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、概略的に示した燃焼部12を含むガスタービンエンジン10の例示的な部分、特に高圧スプールを概略的に示している。圧縮機部14は、圧縮機スタックを提供するように設けられた複数の圧縮機ロータ16を含む。タービン部18が、タービンスタックを提供する複数のタービンロータ20を有する。圧縮機ロータ16およびタービンロータ20は、一体を成すようにまたは別々に取り付けられたエアフォイルをそれぞれ支持する。図示のように、上流ハブ22が、圧縮機ロータ16の上流でタイシャフト24と螺合する。図示の配置では、上流ハブ22の左側(すなわち上流に)低圧圧縮機およびファン部を設けることができる。
【0023】
上流ハブ22は、圧縮機スタックの上流端部に配置され、下流ハブ26が圧縮機スタックの下流側に配置されて最も下流の圧縮機ロータ17と係合する。よって、圧縮機ロータのスタックは、上流ハブ22と下流ハブ26との間に挟まれ、タイシャフト24によって締結されるとともに中間ナットすなわち中間接触部材28によって固定される。図示の例では、下流ハブ26は、タービンスタックに接する。タービンスタックは、下流ハブ26とタービンナット25との間に挟まれる。上流ハブ22およびナットは、タイシャフト24に設けられたおねじと協働するめねじを有する。
【0024】
ねじにかかる応力を減少させて持ち上がりを防ぐために、ねじにかかる軸方向荷重を均一に分散させることが望ましい。このために、締結装置にねじ山が設けられており、いくつかのねじ山は少なくとも1つのねじ山の剛性を他のねじ山に比べて減少させる柔軟な(weakened)ねじ山形状を有し、これにより、ねじ山の間で軸方向荷重がより均一に分散される。
【0025】
図2は、ねじ切タイシャフトの接続面のための例示的な締結装置の一例を示している。荷重側フランクおよび遊び側フランクの向きは、荷重の方向によって決まり、図示したものの対称の配置とすることもできる。締結装置は、第1のねじ切部材30および第2のねじ切部材32を含む。一例では、第1のねじ切部材30はおねじであり、第2のねじ切部材32はめねじである。一例では、第2のねじ切部材32は、第1のねじ切部材と同じピッチを有する。第2のねじ切部材32は、第1の端部34と第2の端部36との間で軸方向Xに延びるねじ山を含む。
【0026】
第2のねじ切部材32は、山頂46および谷底44で互いに接続された荷重側フランク面48と遊び側フランク面51によって提供されるねじ山形状を有する。第1のねじ切部材30は、第2のねじ切部材32の荷重側フランク面48と接触する荷重側フランク面50を備えるねじ山を有する。例では、荷重側フランク面48,50は、軸Xの垂線に対して傾斜しており、遊び側フランク面51,53は、互いにほぼ平行である。第1の端部36におけるねじ山は、噛み合う荷重側フランク48,50の接触箇所に沿って総軸方向荷重の最も大きい部分を受け、第1の端部34と第2の端部36との間の続くねじ山は、徐々に総軸方向荷重のより少ない部分を受ける。
【0027】
第2のねじ切部材の山頂46は、一般に“山頂径”と呼ばれる内径40を提供する。谷底44は、一般に“谷底径”と呼ばれ、隣接するねじ山の間に設けられる谷の径42を提供する。第1の端部34の近傍に位置する少なくとも1つのねじ山は、ねじ山の剛性を第1のねじ山に比べて減少させる柔軟なねじ山形状を有し、これにより、続くねじ山に軸方向荷重が伝達され、ねじ山の間で軸方向荷重がさらに均一に分散される。
【0028】
第2のねじ切部材32のねじ山は、互いに異なる第1の部分38と第2の部分39とを有する。これらの部分は、一定の内径40を有する。第1の部分38の谷の径42は一定である。第2の部分39の谷の径は、第1の部分38から離れる方向で第1の端部34に向かって増加する。さらに、第1のねじ切部材30および第2のねじ切部材32の遊び側フランク面51の間の間隙が第1の端部34に向かって増加する。第2のねじ部分39は、例えば約3°である谷底角52で増加して先細となる谷底深さを有する。製造時には、谷底深さを増加させるために、ねじ山を形成する切削工具が第2のねじ部分39に沿って一定の速度で径方向に前進される。谷底深さが増加し、かつピッチが一定なので、第2のねじ部分39の山頂54,56は、第2の端部34に向かって減少する。すなわち、山頂56は、山頂54よりも小さい。変化する谷の径は、徐々に薄くなる比較的弱くかつ柔軟な歯を提供し、これにより、第2の端部34に比較的近いねじ山に比較的高い応力が分け与えられるとともに、典型的に応力が最も高い第1の端部36におけるねじ山の応力が減少する。
【0029】
図3を参照すると、第2のねじ切部材132のねじ山は、軸Xに沿って延びるとともに谷底144および遊び側フランク面151を含む。荷重側フランクおよび遊び側フランクの向きは、荷重の方向によって決まり、図示のものの対称の配置とすることができる。第2のねじ切部材の内径140、すなわち第2のねじ切部材の山頂径は、第1の部分138にわたって一定であり、第2の部分139にわたって軸Xに対して山頂角60に沿って延びる。第1のねじ切部材130の山頂径および谷底径は、接合部の全長において軸Xに平行である。第2のねじ切部材のねじの山頂154,156は、山頂角60に沿って設けられる。第1のねじ切部材130および第2のねじ切部材132は、ねじ山接触面58で互いに接触する荷重側フランク面148,150を有する。ねじ山接触面59は、他のねじ山接触面58に比べて第2の端部34において徐々に小さくなる。従って、山頂154,156は、第2の端部34に向かって増加する。山頂156は、山頂154よりも大きい。徐々に径方向に短くなるねじ山が提供され、このようなねじ山は、第2の端部34に比較的近いねじ山により高い応力を分け与えるとともに、第1の端部36におけるねじ山にかかる応力を減少させ、ねじ山の間で軸方向荷重をより均一に分散させる。
【0030】
第2のねじ切部材の谷の径142、すなわち谷底径は、一定であり、第1のねじ切部材130および第2のねじ切部材132は、一定である同じピッチを有する。製造時には、第2のねじ切部材132の谷底径の切削工具は、山頂角60を形成するために、例えば、一定の速度で径方向に前進されるが、他の機械加工法も使用可能である。
【0031】
例示的な実施例を開示したが、当業者であればわかるように、請求の範囲には特定の変更が含まれる。例えば、第1のねじ切部材および第2のねじ切部材は、タイシャフトやガスタービンエンジン以外の用途で使用可能である。第2の部材に関連して説明された谷底および山頂の変更は、第1の部材にも使用できる。ねじ山形状は、
図2,
図3に示したのこ歯ねじ形状と異なっていてもよい。上述およびその他の理由から、真の範囲および内容を定めるために以下の請求項の検討が必要である。