特許第5957162号(P5957162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5957162
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】繊維シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/542 20120101AFI20160714BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20160714BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   D04H1/542
   D04H1/736
   A47C27/12 F
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-502130(P2016-502130)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2015003934
【審査請求日】2016年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-177048(P2014-177048)
(32)【優先日】2014年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592201793
【氏名又は名称】株式会社アライ
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100100262
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 勉
(72)【発明者】
【氏名】荒井 正一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 泰博
(72)【発明者】
【氏名】大薮 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】荒井 稔也
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2000/047806(WO,A1)
【文献】 特開平02−112471(JP,A)
【文献】 特開昭61−125377(JP,A)
【文献】 国際公開第1991/014035(WO,A1)
【文献】 実公昭58−068196(JP,Y1)
【文献】 特開平02−118148(JP,A)
【文献】 特表2003−502525(JP,A)
【文献】 特開2000−355865(JP,A)
【文献】 米国特許第6167593(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00− 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を絡めて粒状にして複数の繊維粒を形成することと、
前記複数の繊維粒をシート形状になるよう立体的に配置させることと、
立体的に配置された前記複数の繊維粒を加熱し、前記複数の繊維粒に含まれる熱溶着性の繊維によって前記複数の繊維粒を接着することと、を含み、
前記複数の繊維粒をシート形状になるように立体的に配置させることは、
前記複数の繊維粒を、一対のローラの上方で保留することと、
前記複数の繊維粒を、前記一対のローラの間の隙間から出すことと、を含む、繊維シートの製造方法。
【請求項2】
繊維を絡めて粒状にして複数の繊維粒を形成することと、
前記複数の繊維粒をシート形状になるよう立体的に配置させることと、
立体的に配置された前記複数の繊維粒を加熱し、前記複数の繊維粒に含まれる熱溶着性の繊維によって前記複数の繊維粒を接着することと、を含み、
前記複数の繊維粒をシート形状になるように立体的に配置させることは、繊維粒配置装置によって行われ、
前記繊維粒配置装置は、前記複数の繊維粒を貯留する貯留部と、貯留した前記複数の繊維粒を送り出す供給ローラと、前記供給ローラから送り出された前記複数の繊維粒を前記繊維シートの幅方向に沿って分配する分配ローラと、前記分配ローラから送り出された前記複数の繊維粒を保留する保留部と、前記保留部に保留された前記複数の繊維粒を搬出する一対の搬出ローラとを備え、
前記一対の搬出ローラの間の隙間から前記複数の繊維粒を出すことにより、前記複数の繊維粒をシート形状になるように立体的に配置させる、繊維シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
繊維シート製造方法が開示される。より詳しくは、繊維粒を備えた繊維シート製造方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維を粒状にした繊維粒が知られている。繊維粒はファイバーボールとも呼ばれる。ファイバーボールはクッション等に利用され得る。例えば、日本国特許公告平3−45134号(以下、特許文献1という)には、ファイバーボールをカバーに充填させたマットレスが開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のマットレスは、ファイバーボールがカバー内で動くため、ファイバーボールが片寄ったりするなどして、十分なクッション性が得られなくなる場合があった。また、ファイバーボールは小さな粒であるため、カバーなどに充填しないと取り扱いが難しく、その用途が限られていた。
【発明の概要】
【0004】
本開示の目的は、繊維粒を用いた新たな材料を提供することである。
【0005】
本開示の繊維シートの製造方法は、繊維を絡めて粒状にして複数の繊維粒を形成することと;前記複数の繊維粒をシート形状になるよう立体的に配置させることと;立体的に配置された前記複数の繊維粒を加熱し、前記複数の繊維粒に含まれる熱溶着性の繊維によって前記複数の繊維粒を接着することと;を含む。前記複数の繊維粒をシート形状になるように立体的に配置させることは、前記複数の繊維粒を、一対のローラの上方で保留することと、前記複数の繊維粒を、前記一対のローラの間の隙間から出すこととを含む。
【0006】
本開示の繊維シートの製造方法は、繊維を絡めて粒状にして複数の繊維粒を形成することと;前記複数の繊維粒をシート形状になるよう立体的に配置させることと;立体的に配置された前記複数の繊維粒を加熱し、前記複数の繊維粒に含まれる熱溶着性の繊維によって前記複数の繊維粒を接着することと;を含む。前記複数の繊維粒をシート形状になるように立体的に配置させることは、繊維粒配置装置によって行われる。前記繊維粒配置装置は、前記複数の繊維粒を貯留する貯留部と、貯留した前記複数の繊維粒を送り出す供給ローラと、前記供給ローラから送り出された前記複数の繊維粒を前記繊維シートの幅方向に沿って分配する分配ローラと、前記分配ローラから送り出された前記複数の繊維粒を保留する保留部と、前記保留部に保留された前記複数の繊維粒を搬出する一対の搬出ローラとを備えている。前記一対の搬出ローラの間の隙間から前記複数の繊維粒を出すことにより、前記複数の繊維粒をシート形状になるように立体的に配置させる
【0007】
本開示の繊維シートは、繊維粒を備えているため、弾力性に優れており、クッション性が高い。本開示の繊維シートは、空気を保持できるため、断熱性に優れている。本開示の繊維シートは、繊維粒を備えたシートであることにより、寝装具や衣料だけでなく、乗物のマットや、医療や農業分野における基材としての応用が可能である。本開示の繊維シートの製造方法は、繊維粒を備えた繊維シートを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】繊維シートの一例の模式図である。図1図1A及び図1Bからなる。図1Aは、斜視図である。図1Bは拡大断面図である。
図2】繊維粒の一例の模式的な正面図である。
図3】繊維シートの製造方法の一例を示す模式図である。
図4図4は繊維粒配置装置の一例を示す概略構成図である。図4図4A及び図4Bからなる。図4Aは側面図であり、図4Bは正面図である。
図5図5図5A及び図5Bからなる。図5Aは繊維粒の一例の写真である。図5Bは繊維シートの一例の写真である。
図6】4種類の繊維粒の粒例について、グレー値の標準偏差を示すグラフである。
図7図7は、種類の異なる繊維粒の一例の写真である。図7図7A図7Dからなる。図7Aは、粒例1の繊維粒(2p)を示し、図7Bは、粒例2の繊維粒(2q)を示し、図7Cは、粒例3の繊維粒(2r)を示し、図7Dは、粒例4の繊維粒(2s)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、繊維シート1の一例を模式的に示している。図1図1A及び図1Bから構成される。図1では、繊維シート1内に複数の繊維粒2が存在することが分かる。図2は、繊維シート1に用いられる繊維粒2の一例を模式的に示している。図1及び図2は、理解しやすいように模式的に示しており、実際のものは図面で表される態様と異なっていてもよい。
【0010】
図1Aで示すように、繊維シート1は複数の繊維粒2を備えている。図1Bで示すように、繊維粒2は、繊維3が絡まって形成されている。複数の繊維粒2は、周囲に飛び出した繊維3aによって立体的に絡まっている。複数の繊維粒2は、複数の繊維粒2に含まれる熱溶着性の繊維によって接着されている。繊維シート1は、繊維粒2を備えているため、弾力性に優れており、クッション性が高い。繊維シート1は、空気を保持できるため、断熱性に優れている。繊維シート1は、繊維粒2を備えたシートであることにより、寝装具や衣料だけでなく、乗物のマットや、医療や農業分野における基材としての応用が可能である。
【0011】
図2で示すように、繊維粒2は複数の繊維3で構成される。複数の繊維3が絡まって粒状になったものが繊維粒2である。繊維粒2からは、繊維3の一部が周囲に飛び出している。周囲に飛び出した繊維3は、繊維3aと定義される。繊維3aは端部が繊維粒2の塊の外側に配置されていてよい。繊維3aを有することで、複数の繊維粒2は、粒の状態を維持したまま接着することが可能になる。
【0012】
繊維粒2は、略球形状であることが好ましい。それにより、繊維粒2をより均等に立体的に配置させやすくすることができる。略球形状とは、肉眼で見たときに、丸いと感じる形状であってよい。繊維粒2は、角を有さない丸い形状であってよい。
【0013】
繊維粒2の平均粒径は1〜50mmの範囲内であることが好ましい。それにより、弾力性を向上することができる。繊維粒2の平均粒径は2〜30mmの範囲内であることがより好ましく、2〜20mmの範囲内であることがさらに好ましく、3〜10mmの範囲内であることがよりさらに好ましい。なお、平均粒径は、飛び出した繊維3aを除いた繊維が丸まった部分を基準に測定される。平均粒径は、所定個数(例えば100個など)の繊維粒2の寸法を実測して平均することにより求められる。実測とは、メジャーなどによる計測であってよい。その際、写真撮影したものを用いて寸法を測定してもよい。
【0014】
繊維粒2は、粒の中に空気の層を有している。複数の繊維3が立体的に絡まっているため、繊維3の隙間に空気が存在している。そのため、弾力性が高まる。また、空気を保有しているため、繊維シート1に独特の心地よい風合いを付与することができる。また、繊維粒2は、空気を保有しているため、軽い。さらに、繊維粒2は、粒になっているため、嵩高性があり、耐久性が高い。さらに、繊維粒2は保湿性を有する。また、繊維粒2は、流動性に優れている。
【0015】
繊維3は、合成繊維及び天然繊維のいずれも使用可能である。合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維などが例示される。繊維3は、ポリエステル繊維であることが好ましい。ポリエステル繊維を用いることにより、弾力性に優れた繊維シート1を容易に形成することができる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。天然繊維としては、ウールが例示される。ウールで形成された繊維粒2及び繊維シート1は、断熱性が高い。また、ウールの繊維シート1は心地よい風合いを与えることができる。また、繊維3として、混合された繊維を用いることもできる。混合された繊維は混綿として得られる。混綿の使用により、機能性が向上し得る。例えば、アクリル繊維を含む混綿により、消臭性を有する繊維シート1を容易に形成することができる。また、混綿の使用により、弾力性等を調整することが可能である。ウールと合成繊維とを混合してもよい。繊維3として、内部が中空になった繊維を用いることもできる。それにより、弾力性をさらに高めることができる。
【0016】
繊維粒2には、熱溶着性の繊維が含まれている。熱溶着性の繊維が含まれることで、繊維粒2の接着が容易になる。熱溶着性の繊維はバインダーとして機能する。繊維3全体における熱溶着性の繊維の割合は0.1〜50質量%の範囲内であることが好ましい。それにより、弾力性を維持しつつ、接着性を高めることができる。繊維3全体における熱溶着性の繊維の割合は1〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。繊維粒2を構成する繊維3は、熱溶着性の繊維と、熱溶着性のない又は熱溶着しにくい繊維とを含み得る。なお、繊維シート1の性能を確保できるのであれば、繊維粒2が全て熱溶着性の繊維で形成されていてもよい。
【0017】
繊維粒2は、融点の異なる2以上のポリエステル繊維を含むことが好ましい。複数のポリエステル繊維は、高融点のポリエステル繊維と低融点のポリエステル繊維とに区分される。高融点のポリエステル繊維の融点は、低融点のポリエステル繊維の融点よりも高い。低融点のポリエステル繊維は、熱溶着性の繊維となり得る。熱溶着性の繊維が低融点であることにより、強度の高い接着性が容易に得られる。熱溶着性のポリエステル繊維の融点は、例えば100〜160℃の範囲内であってよい。それにより、接着が容易になる。低融点のポリエステル繊維の融点は、例えば110〜150℃の範囲内であってもよい。高融点のポリエステル繊維の融点は、例えば、低融点のポリエステル繊維の融点よりも10℃以上高くてもよい。それにより、成形性が高まる。高融点のポリエステル繊維の融点は、例えば130〜300℃の範囲内であってよい。高融点のポリエステル繊維の融点は、例えば150〜250℃の範囲内であってもよい。
【0018】
繊維3は短繊維であることが好ましい。繊維3が短繊維であると、繊維粒2が容易に形成される。繊維3の繊維長は2〜100mmの範囲内であることが好ましい。この範囲の長さの繊維3を用いることにより、良好な弾力性を付与することができる。繊維3の繊維長は3〜80mmの範囲内であることがより好ましく、5〜50mmの範囲内であることがさらに好ましい。繊維3の太さ(繊度)は1〜40デニールの範囲内であることが好ましい。この範囲の太さの繊維3を用いることにより、良好な弾力性を付与することができる。デニールは、9000メートルの糸の質量をグラムで表した単位である。繊維3の実測の直径は例えば10〜200μmの範囲内であってよいが、これに限定されるものではない。マイクロサイズの繊維はマイクロファイバーと呼ばれる。マイクロファイバーの使用により、高機能性を付与することが可能である。
【0019】
繊維3はシリコン被覆されていることが好ましい。繊維3がシリコン被覆されていると、繊維3の滑り性が高まり、繊維3が粒状に絡まりやすくなる。そのため、繊維シート1の製造が容易になる。シリコン被覆のためのシリコンの量は、微量でよい。例えば、シリコンの量は、繊維の量を100質量部としたときに、0.0001〜1質量部であってよい。シリコンの量がこの範囲となることで、繊維の絡まり性が高まる。
【0020】
繊維粒2は、繊維3が密に絡まったコア部を備えていることが好ましい。コア部では、繊維3が密になって配置され、繊維3の占める割合が大きい。コア部の周囲には、コア部よりも繊維の割合が少ない、外郭部が配置される。コア部があることにより、繊維粒2は、粒が固くなってつぶれにくくなる。図2では、コア部2Pと外郭部2Qが示されている。また、繊維粒2内では繊維3が均一に存在していてもよい。
【0021】
図1に示すように、繊維シート1においては、繊維粒2が粒の状態をある程度維持したまま、周囲に飛び出した繊維3aで繊維粒2が引っ付いている。繊維シート1は、繊維粒2から形成された粒状部2Aと、粒状部2Aの周囲に配置される綿状部2Bとを備えている。図1Aでは、構造が分かりやすいように繊維粒2を丸で描画しているが、繊維粒2は繊維3の塊であってよい。繊維粒2で形成された部分が粒状部2Aとなる。また、図1Aでは、構造が分かりやすいように繊維粒2の間を空白で描画しているが、図1Bから分かるように、繊維粒2の間は、繊維粒2から飛び出した繊維3aが絡み合うとともに接着しており、それにより、繊維粒2が固定されている。繊維粒2の間の部分が綿状部2Bとなる。
【0022】
繊維シート1では、繊維粒2の一個一個が個別の粒とはなっておらず、繊維粒2が周囲に配置された他の繊維粒2と接着している。粒状部2Aでは、繊維3が丸まって絡んでいる。綿状部2Bでは、繊維3が丸まらずに不定形に絡まっている。綿状部2Bは、綿状になっている。粒状部2Aの繊維の量は、綿状部2Bの繊維の量よりも多い。例えば、繊維シート1を通してシートの裏側にある物体を見たときに、粒状部2Aよりも綿状部2Bの方が視認性が高くなり得る。綿状部2Bでは透けて物が見え得る。綿状部2Bにおいて絡まった繊維3は、熱溶着性の繊維によって接着されている。そのため、粒状部2Aと綿状部2Bとが密着し、繊維粒2が繊維シート1から外れることが抑制される。これにより、接着性が高く強度の優れた繊維シート1が得られる。一の繊維粒2から飛び出た繊維3aは、他の繊維粒2に侵入していてもよい。それにより、接着性がさらに高まる。繊維粒2内において、繊維3が熱溶着性の繊維によって接着していてもよい。それにより、強度が向上する。
【0023】
繊維シート1は、粒状部2Aと綿状部2Bとを有するために、特有の弾力性を有する。繊維シート1の弾力性は、変形させる力を加えたときに発現され得る。例えば、繊維シート1が破損しない程度の力で、繊維シート1を広げる方向に引っ張ったときに、粒状部2Aよりも綿状部2Bの方が、広がる量が大きい。また、繊維シート1を押し潰したときには、粒状部2Aよりも綿状部2Bの方が、縮まる量が大きい。このように、粒状部2Aと綿状部2Bとがあることで、伸び縮みが一様でなくなる。そのため、優れた弾力性が付与される。
【0024】
繊維シート1では、粒状部2A(すなわち繊維粒2)が略均等な量で繊維シート1内に存在することが好ましい。例えば、繊維シート1から100mm×100mmの大きさのサンプルを切り出したときに、サンプル中に含まれる粒状部2A(すなわち繊維粒2)の個数が略同数であることが好ましい。略同数とは、複数のサンプルにおいて、サンプルに含まれる粒状部2Aの個数が、平均値の±10%の範囲内に入ることであってよい。繊維シート1内の繊維粒2の個数の割合は、例えば、縦100mm、横100mm、厚み10mmとしたシート(「単位シート」と呼ぶ)に換算して、10〜100000個であることが好ましい。それにより、優れた弾性力を付与することができる。繊維シート1内の繊維粒2の個数の割合は、例えば、単位シート当たり、100〜10000個であることがより好ましく、200〜1000個であることがさらに好ましい。
【0025】
繊維シート1の厚みは5〜100mmの範囲内であることが好ましい。それにより、繊維シート1の取り扱いが容易となる。繊維シート1の厚みは10〜50mmの範囲内であることがより好ましい。繊維シート1は、縦300mm×横300mmの大きさ以上であることが好ましく、縦500mm×横500mmの大きさ以上であることがより好ましい。繊維シート1では、大型になった場合でも、優れた弾力性が得られる。なお、繊維シート1の厚みは、繊維粒2の大きさよりも大きい。
【0026】
繊維シート1の目付けは用途に応じて適宜変更することが可能である。繊維シート1では、繊維粒2の密度の調整により、目付けを調整することが可能である。繊維シート1の目付けは例えば10〜10000g/mの範囲内にすることができる。繊維シート1は、空気を含むために軽量化が可能である。そのため、繊維シート1の取り扱い性を高めることができる。繊維シート1の通気性は用途に応じて適宜変更することが可能である。繊維シート1では、繊維3の密度の調整により、通気性を調整することが可能である。繊維シート1の通気性(シートに一定の圧力を加えた際に1秒間に1cmの面積に通過する空気量)は例えば1〜500cm/cm・sの範囲内にすることができる。このうち、例えば、繊維シート1の通気性が5cm/cm・s以下であると、通気性の少ないシートを提供できる。また、例えば、繊維シート1の通気性が50cm/cm・s以上であると、通気性の高いシートを提供できる。また、繊維シート1内に空気の層を形成することができると、断熱性を高めることができる。繊維シート1の通気性は、フラジール形通気性試験機で測定することができる。繊維シート1は、厚み方向に押して厚みを50%に圧縮した後、圧縮力を解除すると、元の厚みに戻ることが可能であることが好ましい。それにより、弾力性の優れた繊維シート1を得ることができる。繊維シート1の引っ張り強度は用途に応じて適宜変更することが可能である。繊維シート1では、熱溶着性の繊維の種類や量により、引っ張り強度を調整することが可能である。繊維シート1の引っ張り強度は例えば1〜1000N/5cmの範囲内にすることができる。引っ張り強度が高いと、繊維シート1の破断や繊維粒2の脱落が抑制され、強度の高い繊維シート1を得ることができる。
【0027】
繊維シート1は、長尺に形成されてもよい。繊維シート1は巻き取られるように形成されてもよい。繊維シート1が巻き取り可能であると、製造性が向上する。長尺に形成される場合、繊維シート1の横幅(短手方向の長さ)は、例えば、500mm以上であることが好ましく、1000mm以上であることが好ましい。繊維シート1の横幅は、例えば、3000mm以下であってよい。それにより、製造が容易になる。
【0028】
繊維シート1は、粒状部2Aと綿状部2Bとの中に空気の層を有している。複数の繊維3が立体的に絡まっているため、繊維シート1の隙間に空気が存在している。そのため、弾力性が高まる。さらに、粒状部2Aと綿状部2Bとで繊維3の量が異なっているため、独特の弾力性を与えることができる。また、粒状部2Aと綿状部2Bとが空気を保有しているため、繊維シート1は、独特の心地よい風合いが得られる。例えば、羽毛のような感触を得ることが可能である。また、繊維シート1は、軽く、嵩高性があり、耐久性が高い。さらに、繊維シート1は保湿性を有する。また、繊維シート1は、繊維粒2が接着されているため、繊維粒2が片寄ったりすることがなく、保形性に優れている。
【0029】
繊維シート1は、耐圧分散性が高い。繊維粒2が圧力を受けるとともに、繊維粒2の間の繊維3が絡まった部分が圧力を吸収するため、繊維が単に立体的に絡まったシートよりも、耐圧分散性が高くなるのである。そのため、繊維シート1は、寝具やクッションの材料として優れている。繊維シート1は、膨らみがありつつも、優れた弾力性を有する。繊維シート1は、繊維粒2が強固に接着されている。また、繊維シート1は、押し潰しても元の形状に戻りやすい。さらに、繊維シート1は、乾燥性に優れている。そのため、家庭用の洗濯機で洗濯することも可能である。
【0030】
繊維シート1の製造方法について説明する。
【0031】
繊維シート1の製造方法は、次の工程を含んでいる。
・繊維3を絡めて粒状にして複数の繊維粒2を形成する;
・複数の繊維粒2をシート形状になるよう立体的に配置させる;
・立体的に配置された複数の繊維粒2を加熱し、複数の繊維粒2に含まれる熱溶着性の繊維によって複数の繊維粒2を接着する。
【0032】
繊維シート1の製造方法は、上記で説明した優れた特性を有する繊維シート1を容易に製造することができる。そして、繊維シート1を生産効率よく製造することができる。
【0033】
繊維シート1の製造方法では、複数の繊維粒2をシート形状になるように立体的に配置させるにあたって、次の工程を含むことが好ましい。
・複数の繊維粒2を保留する;
・複数の繊維粒2を隙間16から出す。
【0034】
図3は繊維シート1の製造方法の一例を示す概略図である。以下、図3に沿って、製造方法についてより詳細に説明する。図3では、工程の流れを白抜き矢印で示している。また、繊維3の流れを実線の太矢印で示している。また、繊維3及び繊維粒2が分かりやすいように、適宜、容器の中の様子を描画している。
【0035】
繊維シート1の製造では、まず、原綿10を準備する。原綿とは、原料となる綿である。化学的な合成繊維の場合、合成された繊維が綿状になったものが原綿となる。原綿10を構成する繊維は短繊維であってよい。そして、原綿10を開繊する。開繊により、絡まった繊維がほぐされる。繊維束となっている場合には、開繊によって、繊維が分けられる。ただし、繊維は完全にばらばらにされなくてもよい。ある程度の開繊が進めば、次の工程に進むことが可能である。分けられた繊維3は、綿が膨らんだ状態になり得る。
【0036】
ここで、原綿10として、主となる原綿10と、副となる原綿10とを準備してもよい。主となる原綿10は、繊維シート1内の主となる繊維3を構成するためのものである。主となる原綿10は、副となる原綿10よりも繊維の量が多くてよい。副となる原綿10は、熱溶着性の繊維で構成され得る。主となる原綿10は、熱溶着性のない又は熱溶着しにくい繊維で構成され得る。そして、主となる原綿10から開繊された繊維3と、副となる原綿10から開繊された繊維3とが混ぜられる。これらの繊維3は、略均一に混ぜられることが好ましい。これにより、熱溶着性の繊維が好適な量で繊維3内に配合される。複数種の繊維3が混合された綿は、混綿と呼ばれる。なお、原綿10として、あらかじめ熱溶着性の繊維が混入されたものを用いるようにしてもよい。その場合、繊維の混合の作業を省くことができる。また、副となる原綿を用いずに、あらかじめ開繊された熱溶着性の繊維を配合するようにしてもよい。
【0037】
シリコン被覆された繊維3を含む原綿10が使用されてもよい。シリコンは繊維3の表面に付着される。繊維3がシリコンによって被覆されると、繊維3の取り扱い性が高まる。あらかじめシリコン被覆が施された繊維によって形成された原綿10を用いると、効率が高まる。なお、開繊された繊維3に、シリコンを付着させてもよい。液体のシリコンを用いる場合には、シリコンを噴き付けることで、シリコンが付着される。その場合、繊維3をかき混ぜながらシリコンを噴き付けると、シリコンをより均等に付着させることができる。シリコンとしては、シリコンオイルを使用することができる。
【0038】
繊維3の混合は、繊維混合装置11で行うことができる。繊維混合装置11は、撹拌によって、繊維3を混合する装置である。繊維混合装置11によりミキシングが可能になる。撹拌は、羽根によって行われてもよいし、空気の流れで行われてもよい。なお、必要に応じて行うシリコンの混合は、繊維混合装置11を用いて行ってもよい。
【0039】
繊維3は、繊維粒形成装置12に送られる。開繊された繊維3は、軽いため、空気(エア)の流れで送ることが可能である。繊維混合装置11から繊維粒配置装置14までの各装置の間は、空気の流れで繊維3を送り出すパイプで連結されていてもよい。
【0040】
図3の例では、繊維粒形成装置12は、2つの繊維粒形成装置12を備えている。繊維粒形成装置12は、繊維3が流れる順に、第1繊維粒形成装置12A、及び第2繊維粒形成装置12Bと定義される。繊維粒形成装置12は、円錐台形の容器を有する。円錐台形の容器の中では、空気が回転して流れる。空気は、螺旋状に回転してもよい。空気は、竜巻状に流れ得る。繊維3は、繊維粒形成装置12の上方から入る。そして、空気の流れに沿って送られた繊維3は、繊維粒形成装置12内の空気の回転によって3次元的に回転し、丸められて、粒形状になる。繊維3は、略球形状になってもよい。容器の中では、撹拌羽根が回転してもよい。繊維粒形成装置12は空気の対流を起こすことが可能である。上方から下方に移動した繊維3が、複数回、上方に移動してもよい。繊維3は、抵抗がかかることにより丸まりやすくなる。繊維3は、容器の壁に衝突してもよい。こうして、繊維粒形成装置12から出た繊維3は、繊維粒2となる。繊維粒2は、繊維粒形成装置12の下方から出る。
【0041】
繊維粒形成装置12から出た繊維粒2は、一度、繊維粒2を貯める保留塔13に入ることが好ましい。保留塔13では、繊維粒2が上下方向に積み重なり、一時保留される。保留塔13は、粒だめとなる。このように、繊維粒2を貯めることにより、繊維粒2を安定した量で次の装置に送ることができる。そのため、繊維の粒の揃った良好な繊維シート1を形成することができる。繊維粒2は、保留塔13の上部から保留塔13に入る。繊維粒2は、保留塔13の下部において保留塔13から出る。保留塔13内では、上部から繊維粒2が入るとともに、下部から繊維粒2が出て行き、繊維粒2が常時積み重なって存在している。保留塔13はリザーバとなる。
【0042】
図3の例では、第1保留塔13Aと第2保留塔13Bが設けられている。第1保留塔13Aは、第1繊維粒形成装置12Aと第2繊維粒形成装置12Bとの間に配置されている。第2保留塔13Bは、第2繊維粒形成装置12Bと繊維粒配置装置14との間に配置されている。第1保留塔13Aが存在することにより、第2繊維粒形成装置12Bに送り出す繊維粒2の量が安定化する。第2保留塔13Bが存在することにより、繊維粒配置装置14に送り出す繊維粒2の量が安定化する。
【0043】
ここで、複数の繊維粒形成装置12を経ると、繊維3がまとまりやすくなる。そのため、図3の例では、形状の整った繊維粒2を得るために、2つの繊維粒形成装置12を用いている。第1繊維粒形成装置12Aでは繊維粒2の核が作られやすくなる。第1繊維粒形成装置12Aは、ばらばらの繊維3を丸めて繊維粒2を形成することができる。繊維3を絡ませることで、繊維粒2を形成できる。ただし、第1繊維粒形成装置12Aを出た繊維粒2は、やわらかく周囲がぼやけているものであり得る。そこで、さらに第2繊維粒形成装置12Bによって、繊維粒2に抵抗を加え、繊維粒2を締めるようにする。第2繊維粒形成装置12Bは、繊維粒2内の繊維3の絡まりを強くすることができる。第2繊維粒形成装置12Bによって、繊維3が凝縮されてもよい。繊維粒2内の繊維が強く締まることで、繊維粒2が強固となる。第2繊維粒形成装置12Bを出た繊維粒2は、第2繊維粒形成装置12Bに入る前の繊維粒2よりも、しっかりとしている。繊維粒2は硬くなってもよい。繊維粒2の密度が大きくなってもよい。繊維粒2内の繊維の絡まり具合が増えてもよい。繊維粒2の粒径が小さくなってもよい。第2繊維粒形成装置12Bを出た繊維粒2の密度は、第2繊維粒形成装置12Bに入る前の繊維粒2の密度よりも、例えば1.5〜5倍になり得る。複数の繊維粒形成装置12の使用により、繊維粒2は弾力性が高まる。なお、繊維粒形成装置12の数は、3個以上でもよい。繊維3を絡めて粒状にすることで、複数の繊維粒2が形成される。繊維粒2は、一部の繊維が周囲に飛び出していてもよい。第2繊維粒形成装置12Bから出た繊維粒2は、第2保留塔13Bに入った後、次の工程に送られる。
【0044】
ところで、繊維粒2としては、上記の方法で得られたものに限定されない。繊維粒2は、繊維3が粒状になった適宜のものを使用可能である。例えば、特許文献1で開示されたファイバーボールを繊維粒2として使用してもよい。繊維粒2は、ファイバーボールであってよい。
【0045】
繊維粒2は、繊維粒配置装置14に送られる。繊維粒配置装置14は、繊維粒2をシート形状になるように、立体的に配置する装置である。繊維粒2は、軽いため、空気(エア)の流れで送ることが可能である。空気の流れで繊維粒2を流すと、繊維粒2に空気が当たることにより、繊維粒2が粒の状態を維持しつつも、粒の周囲に繊維が飛び出しやすくなる。そのため、繊維粒2の接着が容易になる。
【0046】
繊維粒配置装置14は、配置容器15を備えている。配置容器15の中には、隙間16が下部に設けられている。隙間16は溝状の隙間となっていてよい。隙間16は、細長く形成されている。図3の例では、隙間16は、複数のローラ17の間で形成されている。図3では、一対となった2個のローラ17a及びローラ17bが描画されている。ローラ17の個数は3個以上であってもよい。複数のローラ17は、平行に配置されている。ローラ17が延伸する方向は、形成される繊維粒2のシートの幅方向と同じであってよい。隙間16は、形成される繊維粒2のシートの幅方向と同じであってよい。もちろん、隙間16がシートの長手方向に沿っていてもよい。その場合、隙間16は複数設けられ得る。隙間16は、繊維粒2が通ることが可能なように形成されている。ローラ17aとローラ17bは、逆方向への回転が可能である。図3の例では、2つのローラ17の間の隙間16においてローラ17が下方に流れるように、ローラ17を回転させることができる(破線矢印参照)。複数のローラ17は、繊維粒2を押し出すフィーダの機能を有してよい。フィーダにより繊維粒2を押し出してもよい。隙間16が設けられていると、繊維粒2が配置容器15を素通りして落下することが抑制されるため、繊維粒2を立体的に均一に配置しやすくすることができる。なお、ローラ17は、隙間16の間に繊維粒2を通すフィーダの一例であり、フィーダとしては他の構造のものを用いてもよい。
【0047】
繊維粒配置装置14では、繊維粒2は上方から配置容器15内に入る。このとき、空気で繊維粒2を押し流してもよい。配置容器15内に入った繊維粒2は、重力の作用により下方に落ちる。下方に落ちた繊維粒2は、ローラ17の付近まで到達する。そして、繊維粒2は、隙間16を通って下方に落ちる。隙間16を通ると、繊維粒2は均等に下方に落ちることができる。そのため、立体状に均一に繊維粒2を配置させることがより可能となる。ローラ17が繊維粒2を下方に落とす方向に回転していると、繊維粒2はより落ちやすくなる。隙間16を通った繊維粒2は、配置容器15の下方から出る。
【0048】
隙間16は、平均粒径程度の繊維粒2が隙間16に引っ掛かる程度の寸法であること好ましい。隙間16の幅が広すぎて、繊維粒2が隙間16内を素通りしてしまうと、繊維粒2の配置の均等性が悪くなるおそれがある。一方、隙間16の幅が狭すぎると、繊維粒2が隙間16に入りにくくなるおそれがある。繊維粒2は、周囲に飛び出した繊維で引っ掛かってもよいし、静電力などの物理的な力により引っ掛かってもよい。隙間16の幅、すなわちローラ17の間の寸法は、繊維粒2の平均粒径の50〜200%であることが好ましい。隙間16の幅がこの程度になることにより、繊維粒2の配置の均等性が向上する。隙間16の幅は、繊維粒2の平均粒径の70〜150%であることがより好ましい。
【0049】
ここで、複数の繊維粒2を保留した後に、複数の繊維粒2を隙間16から出すことが好ましい。繊維粒2が保留されないと、繊維粒2は配管から送られてきたまま空気の流れで下方に送られてしまうため、均一に繊維粒2を配置できなくなるおそれがある。しかしながら、繊維粒2を一度保留した後に隙間16から繊維粒2を出すようにすると、安定した量で隙間16から繊維粒2を容易に配置容器15の外に出すことができる。繊維粒2の保留は、隙間16付近で行うことができる。例えば、図3に示すように、ローラ17を設けていると、ローラ17の上で一度、繊維粒2は保留される。繊維粒2は、配置容器15内において保留され得る。繊維粒2は、隙間16の上方において保留されてもよい。繊維粒2は、上下方向に積み重なってもよい。そして、保留された繊維粒2のうちローラ17の近傍に存在する繊維粒2がローラ17の回転により、隙間16を通って下方に流される。配置容器15内の繊維粒2が保留される部分は保留部18と定義される。保留部18は、隙間16及びローラ17の上方となる。なお、保留部18に保留された繊維粒2を下方に押し込むようにしてもよい。それにより、押し込み力が加わって、繊維粒2が隙間16を通りやすくなる。押し込みは、空気圧や、押し込み用ローラなどで行うことができる。繊維粒2は隙間16から押し出され得る。
【0050】
配置容器15から出た複数の繊維粒2は、シート形状になって立体的に配置される。配置容器15の下方に出た複数の繊維粒2は、横幅方向と厚み方向に略均等に配置され得る。そして、複数の繊維粒2が流れることで、流れ方向に繊維粒2が略均等に配置され得る。立体的に配置された複数の繊維粒2は、繊維シート1の前駆体となる。シート状に立体的に配置された複数の繊維粒2は、シート状繊維粒2Sと定義される。
【0051】
配置容器15の下方には、傾斜部19が設けられていることが好ましい。傾斜部19は、繊維粒2が流れる通路が斜めになることで形成され得る。傾斜部19は、板を傾斜させることで形成されてもよい。傾斜部19があることにより、シート状繊維粒2Sは、立体的形状を保持しながら流れることができる。シート状繊維粒2Sは、傾斜部19を滑りながら流れることで連続的に形成される。傾斜部19の傾斜角度は、シート状繊維粒2S内の繊維粒2がばらばらにならないとともに、シート状繊維粒2Sが下方に流れやすくなる角度に適宜調整され得る。傾斜部19は例えば金属で構成することができる。
【0052】
シート状繊維粒2Sでは、周囲に飛び出た繊維が絡まっていてもよい。それにより、密着性の高い繊維シート1を容易に形成することができる。なお、配置容器15から出た複数の繊維粒2、すなわちシート状繊維粒2Sは、繊維の絡み合いにより立体的な形状にはなっているものの、粒同士の繋がりは弱い。そのため、引っ張ると、繊維粒2は容易にばらばらになる。
【0053】
シート状繊維粒2Sは、計量されることが好ましい。シート状繊維粒2Sが計量されることで、繊維量が安定する。計量により、シート状繊維粒2Sの単位面積当たりの重量が測定される。シート状繊維粒2Sの計量では、所定の規格が設定され得る。例えば、基準値の重量の所定の範囲内(例えば±10%など)に重量が入ると良品と判定され、その範囲を外れると不良品と判定される。計量により、繊維粒2がより均等に配置された繊維シート1を容易に得ることができる。計量は、繊維粒配置装置14と加熱装置20との間で行われる。計量は、シート状繊維粒2Sを送りながら行うことが好ましい。例えば、シート状繊維粒2Sが流れる通路の下に計量器22を配置することで、連続的に計量を行うことができる。計量器22は、例えば、傾斜部19の下方に配置することができる。計量器22は、傾斜部19の途中に配置されてもよい。図3では、シート状繊維粒2Sが計量器22で計量されている様子が示されている。ここで、シート状繊維粒2S内の繊維粒2は、接着されておらず、容易にばらばらにすることが可能である。そのため、不良品と判定された場合には、その部分のシート状繊維粒2Sを取り出し、繊維粒2をばらばらにして、再度、繊維粒2をシート状に配置させる工程に戻すことができる。そのため、材料の無駄を省くことができる。また、計量によってシート状繊維粒2Sが所定の重量の範囲内に収まるように、繊維粒配置装置14での繊維粒2の供給量を調整するフィードバック制御が行われることが好ましい。たとえば、シート状繊維粒2Sの重量が所定の重量よりも小さい場合は、繊維粒配置装置14から出る繊維粒2の量を増やし、シート状繊維粒2Sの重量が所定の重量よりも大きい場合は、繊維粒配置装置14から出る繊維粒2の量を減らす。このように、フィードバック制御が行われると、搬送方向での均一化が向上し、より均一性の高い繊維シート1を得ることができる。
【0054】
シート状繊維粒2Sは、加熱装置20に送られる。シート状繊維粒2Sは通路上で押されることで送られてもよいし、コンベアによって送られてもよい。加熱装置20は、熱溶着性の繊維が溶着性を発現する温度に、シート状繊維粒2Sを加熱する。これにより、熱溶着性の繊維によって繊維が接着し、複数の繊維粒2が接着してシート状に成形される。加熱装置20は、シート状繊維粒2Sを加熱しながらロール21で形成された間隙に通すものであってもよい。ロール21で形成される間隙の寸法により、繊維シート1の厚みが調整される。ロール21で形成する間隙は、対向するロール21の間で形成したり、ロール21とコンベアとの間で形成したりすることができる。図3では、対向するロール21の例が示されている。ただし、繊維粒2は柔らかいものであるので、ロール21による押し付け力は弱いものでよい。なお、シート状繊維粒2Sはプレスされてもよく、その場合、プレスによって形成されるスペースにより、繊維シート1の厚みが調整され得る。なお、シート状繊維粒2Sは、ロール21がなかったりプレスがなかったりして、物理的な力が加えられないで、そのまま加熱されてもよい。このようにして、立体的に配置された複数の繊維粒2は加熱され、熱溶着性の繊維によって複数の繊維粒2が接着される。接着は周囲に飛び出した繊維3aが他の繊維と接触する部分で行われ得る。繊維粒2内の繊維3同士が接着されてもよい。接触する繊維3に熱溶着性の繊維が含まれると、接着が可能になる。以上により、立体的な成形が行われ、繊維シート1が形成される。
【0055】
繊維シート1が連続的に形成される場合、繊維シート1は適宜の形状に整えられ得る。繊維シート1は巻き上げられてもよいし、裁断されてもよい。例えば、比較的薄いシートの場合、繊維シート1を送り出して巻き上げることが可能である。図3では、巻き上げた繊維シート1として、ロール状繊維シート1Rが描画されている。ロール状繊維シート1Rは、変形性や柔軟性が求められる用途、例えば衣服などに利用可能である。繊維シート1では繊維粒2が強固に接着しているため、巻き上げを行っても繊維粒2が脱落しにくい。繊維シート1が巻き上げ可能になると、生産性が向上する。また、比較的厚みのあるシートの場合、繊維シート1を適宜のサイズで裁断することが可能である。裁断された繊維シート1は板状になり得る。図3では、裁断された繊維シート1として、板状繊維シート1Bが描画されている。板状繊維シート1Bは、例えば、マットレスの芯材などに利用可能である。繊維シート1では繊維粒2が強固に接着しているため、裁断を行っても繊維粒2が脱落しにくい。繊維シート1が板状になると、取り扱い性が向上する。
【0056】
上記の繊維シート1の製造方法では、原綿10から連続的に繊維シート1を製造することが可能である。連続的な製造により、生産効率が向上する。原綿10から連続的に開繊された繊維3が形成され得る。繊維3から連続的に繊維粒2が形成され得る。繊維粒2から連続的にシート状繊維粒2Sが形成され得る。シート状繊維粒2Sから連続的に繊維シート1が形成され得る。このように、各工程を連続させて行うことができるため、上流から下流までの連続製造が可能となる。もちろん、各工程を別途行うようにしてもよい。その場合でも、各工程においては、連続的な処理がされるため、生産効率が向上する。
【0057】
図4により、繊維粒配置装置のさらに好ましい態様を説明する。図4は繊維粒配置装置50を示す概略構成図である。図4図4A及び図4Bからなる。図4Aは側面図であり、図4Bは正面図である。以下に説明する繊維粒配置装置50は、上記で説明した繊維粒配置装置14に置き換えることができる。そのため、図4では上記で説明した構成に対応する構成について同じ符号を括弧書きで記入している。たとえば「繊維粒配置装置50(14)」と記載されている。なお、図4では、空気の流れを白抜き矢印で示し、繊維粒の流れを斜線模様付きブロック矢印で示し、機械部品(ローラなど)の動きを矢印で示している。
【0058】
繊維粒配置装置50は、複数の繊維粒2をシート形状になるように立体的に配置させる装置である。繊維粒配置装置50は、供給ダクト51と、排気ダクト52と、貯留部53と、供給ローラ55と、分配ローラ56と、保留部57と、搬出ローラ60と、搬出プレート61と、ファン62と、制御部63と、入出力部64と、を備えている。
【0059】
供給ダクト51は、上流の保留塔13(図3参照)から送られてくる繊維粒2を流す空気の流路である。排気ダクト52は、供給ダクト51から流れる空気を排気する空気の流路である。繊維粒配置装置50全体として、空気は、供給ダクト51から流れ込み、排気ダクト52に流れ出る。ただし、空気の一部は、分配ローラ56の方に流れる。供給ダクト51から入った繊維粒2は、下方に流されて、貯留部53に貯留される。貯留部53は、繊維粒2を一度貯留(保留)することで、繊維粒2の供給量を安定化させることができる。また、貯留部53は、供給ダクト51の空気圧を遮断して、繊維粒2の立体的な配置に悪影響を及ぼさないようにすることができる。貯留部53には、上部エア排出口54が設けられている。上部エア排出口54は、たとえば、穴あきプレートで構成される。上部エア排出口54があることにより、供給された空気がスムーズに排気され、装置の内部に過剰な圧力がかかることを抑制することができる。
【0060】
貯留部53に入った繊維粒2は、供給ローラ55によって下流に送り出される。供給ローラ55の回転により、繊維粒2は分配ローラ56に向かって流れる。供給ローラ55は、制御部63と電気的に繋がっている。制御部63の制御により、供給ローラ55の回転速度は調節が可能である。制御部63は電気回路で構成することができる。供給ローラ55の回転速度が変化することにより、供給ローラ55から送り出される繊維粒2の量が調整される。回転速度が速くなると、送り出される繊維粒2の量が多くなり、逆に、回転速度が遅くなると、送り出される繊維粒2の量が少なくなる。供給ローラ55には掻き出し部55aが設けられてもよい。掻き出し部55aは、繊維粒2を引っ掻いて送り出すことができる。掻き出し部55aは、供給ローラ55の外周に設けられたギザギザの突出部で構成され得る。また、掻き出し部55aは、たとえば、供給ローラ55にワイヤが設けられることで形成されてもよい。
【0061】
分配ローラ56は、供給ローラ55から送り出された複数の繊維粒2を繊維シート1の幅方向に沿って分配する機能を有する。繊維シート1の幅方向は、分配ローラ56の軸方向(長手方向)と同じである。分配ローラ56は、一定の速度で回転するものであってよい。分配ローラ56の直径は、供給ローラ55の直径よりも大きくてよい。分配ローラ56を通ることにより、繊維粒2は、分配ローラ56の軸方向に分配され、繊維粒2を均一に配置させることが可能になる。分配ローラ56は、複数の突起棒56aを備えている。複数の突起棒56aは、分配ローラ56の外周に周方向に等間隔に配置され(図4A)、さらに分配ローラ56の軸方向に等間隔で配置される(図4B)。突起棒56aが設けられることにより、繊維粒2は、分配ローラ56の軸方向に沿った方向での量がより均一化する。分配ローラ56で分配された繊維粒2は、流動抵抗の低い部分に流れやすいため、保留部57内の繊維粒2の量が少ない部分に自動的に向かう。
【0062】
分配ローラ56を通った繊維粒2は、保留部57に入る。保留部57は、分配ローラ56から送り出された繊維粒2を保留する。保留部57は、図3の保留部18に対応する。保留部57において繊維粒2が一度保留されることで、安定して繊維粒2を配置させることができる。保留部57には、下部エア排出口58が設けられている。下部エア排出口58は、たとえば、穴あきプレートで構成される。下部エア排出口58があることにより、保留部57に流れ込む空気がスムーズに排気され、保留部57に過剰な圧力がかかることを抑制することができる。下部エア排出口58は、内部空気路59と繋がっており、空気は内部空気路59に流れる。
【0063】
繊維粒配置装置50は、図4Bに示すように、シート幅調整体66をさらに備えている。シート幅調整体66は、保留部57に設けられている。シート幅調整体66があることにより、繊維シート1の幅を調整することが容易になる。シート幅調整体66は、一対のシート幅調整部66aにより構成されている。一対のシート幅調整部66aは、近づいたり遠ざかったりすることが可能である。一対のシート幅調整部66aが近づくと、繊維シート1の幅を小さくすることができ、一対のシート幅調整部66aが遠ざかると、繊維シート1の幅を大きくすることができる。シート幅調整体66は、保留部57のスペースを上流から下流に向けて徐々に狭くするように構成することができる。
【0064】
保留部57に保留された繊維粒2は、一対の搬出ローラ60の間を通って、保留部57から搬出される。搬出ローラ60は、図3のローラ17に対応する。一対の搬出ローラ60の間には、上記で説明したのと同様の隙間16が設けられている。そのため、繊維粒2を効率よく良好に立体的に配置させることができる。繊維粒配置装置50では、隙間16が繊維シート1のおよその厚みを規定する。隙間16は、たとえば、5〜100mmの範囲にすることができる。
【0065】
ここで、繊維粒配置装置50は、空気を巡回させる内部空気路59を備えている。内部空気路59は、保留部57の上流側と下流側の両方に繋がっている。内部空気路59には、ファン62が設けられている。ファン62により、内部空気路59内で空気の流れを作り出すことができる。ファン62は、制御部63と電気的に繋がっている。制御部63は、ファン62の回転を制御する。ファン62の回転により、内部空気路59での空気の流れる速度が変わる。それにより、保留部57での圧力も変化する。内部空気路59では、通常、下部エア排出口58を通って保留部57から出た空気が上昇し、この空気が保留部57の上方(分配ローラ56の下方)に入るようにすることができる。
【0066】
制御部63は、保留部57の繊維粒2の量を制御することができる。制御部63は、保留部57の圧力を所定の圧力に調整できるように構成されている。制御部63は、供給ローラ55と電気的に繋がっており、供給ローラ55の回転速度を制御することができる。また、制御部63は、保留部57に設けられた圧力センサ65と、ファン62とに電気的に繋がっている。それにより、制御部63は、圧力センサ65によって検知される圧力に基づき、保留部57の圧力が所定の値(設定値)になるように、ファン62を制御することができる。また、制御部63は、搬出ローラ60と電気的に繋がっており、搬出ローラ60の回転速度を制御することができる。それにより、繊維粒2の搬出量を調整することができ、良好に繊維粒2の配置を行うことができる。あるいは、搬出ローラ60は自由回転するように構成されていてもよい。その場合、保留部57の空気圧によって、繊維粒2は、下方に押され、搬出ローラ60の間を通ることができる。搬出ローラ60の回転速度は、制御部63によって監視されるようにすることができる。このように、圧力情報と回転速度情報とに基づいて、制御部63は、供給ローラ55の回転速度及び保留部57の圧力を調整して、繊維粒2の出入りする量を調整することができる。たとえば、保留部57の圧力が高くなりすぎると、制御部63は、供給ローラ55の回転速度が遅くなるように制御して、過剰の繊維粒2が保留部57に入らないようにすることができる。これにより、保留部57は圧力が低下し、適正な値に戻される。また、搬出ローラ60の回転速度が速くなる、すなわち、繊維粒2の搬出量が多くなると、制御部63は、供給ローラ55の回転速度が速くなるように制御して、繊維粒2を保留部57に供給するようにすることができる。これにより、保留部57で繊維粒2が欠乏することを抑制することができる。このように、制御部63によって、適切な量の繊維粒2を保留部57に入れて、保留部57から排出することができるため、良好に繊維粒2の配置を行うことができる。
【0067】
入出力部64は、外部と内部とで情報をやりとりする部分である。入出力部64は、入力部と出力部とを備える。入力部は、スイッチ、ボタン、つまみ、チャンネルなどで構成される。出力部は、メータ、デジタル表示器、ディスプレイなどで構成される。たとえば、所定の回転速度を入力することにより、供給ローラ55はその回転速度で回転し、繊維粒2を下流に送り出す。
【0068】
搬出ローラ60から送り出された繊維粒2は、シート状繊維粒2Sとなり、搬出プレート61の上に載る。搬出プレート61は傾斜部19を有している。シート状繊維粒2Sは、加熱装置20に送られる(図3参照)。
【0069】
上述したように、シート状繊維粒2Sは、好ましくは、計量器22で計量される(図3参照)。そして、計量によってシート状繊維粒2Sが所定の重量の範囲内に収まるように、繊維粒配置装置50での繊維粒2の供給量を調整するフィードバック制御が行われることが好ましい。たとえば、シート状繊維粒2Sの重量が所定の重量よりも小さい場合は、供給ローラ55及び/又は搬出ローラ60の回転速度を上げて、繊維粒配置装置50から出る繊維粒2の量を増やすことができる。また、シート状繊維粒2Sの重量が所定の重量よりも大きい場合は、供給ローラ55及び/又は搬出ローラ60の回転速度を下げて、繊維粒配置装置50から出る繊維粒2の量を減らすことができる。フィードバック制御を行うことにより、より均一性の高い繊維シート1を得ることができる。
【0070】
このように、繊維粒配置装置50は、複数の繊維粒2を保留する貯留部53と、貯留した複数の繊維粒2を送り出す供給ローラ55と、供給ローラ55から送り出された複数の繊維粒2を繊維シートの幅方向に沿って分配する分配ローラ56と、分配ローラ56から送り出された複数の繊維粒2を保留する保留部57と、保留部57に保留された複数の繊維粒2を搬出する一対の搬出ローラ60とを、少なくとも備えている。そして、隙間16は、一対の搬出ローラ60の間に設けられている。そのため、繊維粒2を均一化して配置させることができ、良好な繊維シートを形成することができる。
【0071】
繊維シート1は、織布でないという意味では不織布の範疇に入るとも考えられ得るが、従来の不織布とは全く異なる性状を有する。繊維シート1は、多くの空隙を有する。繊維シート1は、粒状になった部分(粒状部2A)と、綿状になった部分(綿状部2B)が存在し、これらが接着により密着している。そのため、上述したように、従来の繊維では考えられない特有の作用効果が得られる。
【0072】
繊維シート1は、寝装具、クッションなどに使用可能である。例えば、繊維シート1を芯材として使用し、カバーを取り付けることで、寝装具を提供することができる。繊維シート1は耐圧分散性がよい。また、繊維シート1は、衣料に使用可能である。さらに、繊維シート1は、繊維粒2を内部に有する構造を有しているため、種々の展開が可能である。例えば、自動車、電車、列車、船、飛行機などの乗物のシートのマットに使用することができる。乗物では、できるだけ軽い素材が求められるが、上記の繊維シート1は軽くて丈夫なため、好適である。また、例えば、繊維シート1を水中に入れて植物の種を入れるなどして、水耕栽培などの農業用途に用いることが可能である。また、例えば、繊維シート1を医療用に用いることが可能である。また、繊維シート1は、断熱性があり、吸音性にも優れるため、例えば、建築資材に用いることができる。
【0073】
(実施例)
上記で説明した方法に準じて、ポリエステル短繊維から繊維粒を作製した。繊維粒をシート形状に配置し、加熱することにより繊維シートを作製した。
【0074】
図5Aは、繊維粒の写真である。図5Bは、繊維シートの写真である。図5Bに示すように、繊維シートは複数の繊維粒を備えている。この繊維シートは、繊維が立体的に絡まっただけのシートとは異なる特有の弾性力が発揮されることが確認された。
【0075】
ここで、上記の繊維粒の作製において、繊維粒として、高反発の繊維粒の例(粒例1)、低反発の繊維粒の例(粒例2)、従来の方法で作製した繊維粒の例(粒例3)、市場で入手可能な繊維粒の例(粒例4)の4種類を準備し、その構造(繊維粒の繊維の状態)を次の手法で比較した。
【0076】
まず、繊維粒を任意に20個選び出す。繊維粒1個を試料台の白い樹脂板の上に置き、その上にスライドガラスを載せる。なお、白い樹脂板は透過光を拡散させるために使用される。繊維粒に光を照射し、マイクロスコープ(キーエンス社製VHX−900)を用い、透過光、倍率20倍の設定で、繊維粒の写真を撮り、画像を保存する。この画像保存を繊維粒20個において行う。次に、繊維粒の画像を画像処理によってグレースケール化する。グレースケール化された画像を2次元のセルのマトリックスに嵌め込み、各セルに、黒0から白255までの256階調の灰色濃淡によって判定される値(グレー値)を割り当てる。割り当てられたグレー値について、行及び列の平均値から、行及び列の平均値の標準偏差を求め、さらに標準偏差の平均値を求める。
【0077】
表1は、上記の手法によって求めた粒例1〜4の繊維粒の結果である。図6は、4種類の繊維粒の粒例について、グレー値の標準偏差を示すグラフである。標準偏差が小さいほど、繊維粒中の繊維は均一に配置されているといえる。粒例1、2は、標準偏差が9以下であり、均一な繊維粒である。一方、粒例3は標準偏差が9を越えており、粒例1、2よりも均一性が劣る。さらに粒例4は標準偏差が11を越えているため、均一性がさらに劣る。繊維粒が均一なほど、繊維シートの弾力性が好ましいものとなる。4種類の繊維粒で、繊維シートを作製したところ、粒例1、2の繊維シートは、粒例3、4の繊維シートよりも弾力性が優れていた。
【0078】
このように、繊維粒は、所定個数(たとえば20個)を任意に選び出し、光を照射して画像を撮り、その画像をグレー色調で画像解析したときに、グレー値の標準偏差が9以下であることが好ましいことが分かる。なお、標準偏差は小さいほどよく、グレー値の下限は、理想的には0であるが、現実を考慮して、1であってもよい。
【0079】
【表1】
【0080】
図7は、上記4種類の繊維粒の写真の一例である。図7図7A図7Dから構成される。図7Aは、粒例1の繊維粒(2p)を示している。図7Bは、粒例2の繊維粒(2q)を示している。図7Cは、粒例3の繊維粒(2r)を示している。図7Dは、粒例4の繊維粒(2s)を示している。粒例1、2の繊維粒は、粒例3、4の繊維粒よりも、中心部分の繊維が密になっている。そのため、粒例1、2では、繊維が密に絡まったコア部を繊維粒が備えているといえる。コアを有する繊維粒は、いわば、中身が空洞のピンポン球ではなく、中に芯があるゴルフボールのような構造を有している。
【要約】
繊維シート1は、繊維3が絡まって形成された複数の繊維粒2を備えている。複数の繊維粒2は、周囲に飛び出した繊維3aによって立体的に絡まっている。複数の繊維粒2は、複数の繊維粒2に含まれる熱溶着性の繊維によって接着されている。繊維3を絡めて複数の繊維粒2を形成することと、複数の繊維粒2を立体的に配置させることと、複数の繊維粒2を加熱し、熱溶着性の繊維によって複数の繊維粒2を接着することと、を含んで、繊維シート1を製造する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7