【実施例】
【0027】
<構成>以下、構成について説明する。
【0028】
樹脂製の管部材と樹脂製の管部材とを、樹脂製の管継手を用いて接続することにより管路を構成する。
【0029】
そして、給水や排水などを行うための管路(給水配管や排水配管)に対し、必要に応じて、上記した管路が断熱性を有するようにする。例えば、排水のための管路である、空調設備のドレン管路などに対し、結露防止のために断熱対策を施すようにする。そのために、断熱層付き管部材(図示せず)と、断熱層付き管継手21とを用いるようにする。上記した断熱層付き管部材や、断熱層付き管継手21は、肉厚内部に断熱層を有するものである。
【0030】
このうち上記した断熱層付き管継手21は、
図1、
図2に示すように、成形金型22に設けたキャビティ空間23の容積よりも少ない量の非発泡性樹脂24を注入部25(注入口)から注入し(ショートショット注入)、キャビティ空間23の内部で非発泡性樹脂24の表面がある程度固まった頃に、同じ注入部25から発泡性樹脂26を注入して、更に加圧することにより、発泡性樹脂26の発泡圧力によって非発泡性樹脂24をキャビティ空間23の内部の隅々にまで行き渡らせると共に、発泡性樹脂26の発泡によって非発泡性樹脂24の肉厚内部に断熱材層(発泡性樹脂26)を形成する(或いは、もぐり込ませる)ようにして製造される。
【0031】
このようにすることにより、
図3、
図4に示すような、短管状の継手本体27と、継手本体27の開口端部に一体に形成された短管状の受口部28とを有し、継手本体27および受口部28が、非発泡性樹脂24によって主に構成されると共に、継手本体27を構成する非発泡性樹脂24の肉厚内部に発泡性樹脂26を発泡させて成る断熱材層が封入された(或いは、非発泡性樹脂24によって発泡性樹脂26が挟み込まれた)断熱層付き管継手21が成形される。
【0032】
このような断熱層付き管継手21では、継手本体27に、上記した非発泡性樹脂24および発泡性樹脂26の注入部25が形成される。そして、継手本体27の注入部25から離れた位置(例えば、継手本体27における、注入部25とは反対側の位置など)に、非発泡性樹脂24の合流部29が形成されることになる。
【0033】
なお、上記した断熱層付き管部材についても、上記した断熱層付き管継手21と同様の方法で製造される。
【0034】
ここで、上記についての補足説明を行う。
【0035】
先ず、「管継手」には、2本の管部材を一直線状に接続するI型の継手(直線継手)や、2本の管部材を屈曲状態に接続するL型の継手(屈曲継手、いわゆるエルボ)や、3本以上の管部材を同時に接続するT型やY型の継手(分岐継手または合流継手、いわゆるチーズ)などが存在する。この実施例では、これらのいずれであっても良いが、後述するように、Y型の継手とするのが最も適している。
【0036】
上記した「継手本体27」は、管部材の内径とほぼ等しい内径を有するものとされる。
【0037】
上記した「受口部28」は、管部材を挿入接続するためのものであり、管部材の外径とほぼ等しい内径を有するものとされる。受口部28の内奥部には、管部材の端部が直接当接、または、パッキンなどのシール部材を介して間接的に当接する図示しない停止面が設けられる。受口部28は、継手本体27の開口端部と同心に形成される。受口部28の外径は、通常の場合、継手本体27の外径よりも大径とされると共に、受口部28と継手本体27との間には、径寸法の違いを吸収するための段差部が設けられる。上記した停止面は、段差部の内面側に形成される。但し、構造的には、受口部28の外径と継手本体27との外径とを同径にして外面に上記した段差部が生じないようにすることも可能である。また、受口部28の内部には、断熱材層が全く入り込まないようにするのが理想的である。
【0038】
上記した「注入部25」は、射出成形時に成形金型22の内部(キャビティ空間23内)に非発泡性樹脂24および発泡性樹脂26を射出注入するための注入口(またはその痕跡)であり、1箇所または複数箇所設けることができる。この場合には、注入部25は、1箇所とされている。
【0039】
上記した「合流部29」は、射出成形時にキャビティ空間23の内部で非発泡性樹脂24の流れが合流する部分であり、非発泡性樹脂24が合流して停止したままの状態で固化されてしまうと、一般にウェルドラインなどと呼ばれる痕跡(合流痕)が形成されてしまうものである。なお、注入部25が1箇所のみの場合には、上記した合流部29は、射出成形時にキャビティ空間23内で2つまたはそれ以上に分流した非発泡性樹脂24が再び合流されることによって形成される。また、注入部25が複数箇所設けられる場合には、上記の他に、異なる注入部25からの非発泡性樹脂24がその中間点またはその近傍などで合流することなどによって形成される。この場合には、主に、前者とされる。
【0040】
より具体的な構成としては、この実施例にかかる断熱層付き管継手21の場合、例えば、注入部25は、継手本体27に対しほぼ半径方向へ向けて設けられる。合流部29は、継手本体27の注入部5から離れた位置、例えば、注入部25とは反対側の位置(ほぼ180度離れた位置)などに形成される。これは、注入部25から継手本体27内へ注入された非発泡性樹脂24が、継手本体27の周壁に沿って2つに分流され、互いに逆向きにほぼ半周した後、注入部25とは反対側の位置で再び合流することなどによるものと考えられる。
【0041】
また、断熱層付き管継手21を成形する場合には、非発泡性樹脂24や発泡性樹脂26の注入量および注入圧力、発泡性樹脂26の発泡度や加圧量などを最適に設定する必要がある。これらの設定は、経験値によって求められる。
【0042】
加えて、注入部25から各受口部28までの流動比が、それぞれほぼ等しくなるように設定するのが好ましい。この流動比Rは、注入部25から各受口部28までの距離をLとし、当該部分の肉厚をtとした場合、R=L/tの式によって表されるものである。例えば、
図1に示すように、断熱層付き管継手21に受口部28が3箇所ある場合(以下、受口部28a、28b、28cとして区別する)、それぞれの流動比は、R1=L1/t1(受口部28aの場合)、R2=L2/t2(受口部28bの場合)、R3=L3/t3(受口部28cの場合)となる(なお、L1、L2、L3のみ図示している)。ここで、R1、R2は主管流動比、R3は枝管流動比である。これらの流動比R(R1、R2、R3)の値は、1となるようにするのが最も好ましいが、実質的に射出できれば良いので、これに限るものではない。
【0043】
そして、多少の寸法誤差が有っても許容し得るようするために、流動比どうしの比であるR1/R2、R1/R3、R2/R3などの値が、それぞれ概ね0.9〜1.1の範囲に納まるように設定する。
【0044】
例えば、L1=L2=L3=一定とし、t1=t2=t3=一定とすることにより、上記した範囲を満たすことができる。一例を挙げると、管部材の口径が40mmの場合に、例えば、L1=L2=L3=60mm、t1=t2=t3=10mmなどとする。
【0045】
また、例えば、L1=L2<L3とする場合には、t1=t2<t3として、上記範囲を満たすようにする。一例を挙げると、L1=L2=35mm、L3=65mmとした場合に、t1=t2=10mm、t3=20mmなどとする。
【0046】
なお、L1=L2とするためには、注入部25を、受口部28aと受口部28bとの間の距離を二等分した位置に設定すれば良い。
【0047】
このようにすることにより、各受口部28(受口部28a、28b、28c)に対して均等に非発泡性樹脂24や発泡性樹脂26を供給したり、各受口部28に発泡性樹脂26が侵入しないようにすることが図られるので、上記したような、肉厚内部に断熱材層を有する短管状の継手本体27と、継手本体27の開口端部に一体に形成された短管状の受口部28とを有する断熱層付き管継手21を成形することが可能となる。
【0048】
但し、断熱層付き管継手21は、上記した寸法などに限定されるものではない。
【0049】
そして、既に述べたように、断熱層付き管継手21の射出成形時に、キャビティ空間23の内部に、非発泡性樹脂24が合流する合流部29が存在すると、合流部29で非発泡性樹脂24の流動が停止して固まってしまう(いわゆるウェルドラインが生じる)ことにより、合流部29の周辺に発泡性樹脂26が入り込めなくなって、断熱材層に欠落部分が発生するおそれがある。そこで、この実施例では、以下のような構成にすることによって、上記問題に対処し得るようにしている。
【0050】
(構成1)
上記した合流部29またはその近傍に、非発泡性樹脂24を継手本体27の外部へ逃がして成る樹脂逃げ部35を形成すると共に、形成後に樹脂逃げ部35を切除(切断除去)して成る切除痕36を有するようにする。
【0051】
ここで、上記した樹脂逃げ部35は、成形金型22の内部に、断熱層付き管継手21を成形するための空間部23aとは別に、樹脂逃げ部35を成形するための空間部23bを設けることによって、断熱層付き管継手21と一体に成形されるようにする。
切除痕36は、発泡性樹脂が露出している部分になる。
【0052】
(構成2)
上記した非発泡性樹脂24が、光透過性を有する透明樹脂または半透明樹脂によって構成されるようにする。
【0053】
なお、発泡性樹脂26については、非発泡性樹脂24と同じ樹脂とするのが好ましいが、それ以外の透明樹脂、半透明樹脂、不透明樹脂のいずれとしても良い。但し、発泡性樹脂26に透明樹脂または半透明樹脂を用いた場合であっても、発泡性樹脂26は気泡が光を屈折することによってある程度の遮光性を有するものとなる。
【0054】
これにより、断熱層付き管継手21は、継手本体27が断熱材層により全体としてある程度の遮光性を有するものとなると共に、受口部28が光透過性を有するものとなる。
【0055】
より具体的には、例えば、非発泡性樹脂24には、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル−EPDM(エチレン−プロピレンゴム)−スチレン)樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂などの樹脂を用いることができる。また、発泡性樹脂26には、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂などに発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学社製AZ−HM)を混合させた樹脂などを用いることができる。
【0056】
(構成3)
継手本体27に対する樹脂逃げ部35の切除痕36の幅寸法を、1mm以上4mm以下にする。
【0057】
ここで、上記した切除痕36は、射出成形時は、継手本体27から樹脂逃げ部35への非発泡性樹脂24などの通り道(出口部)となると共に、射出成形後の切断前は、継手本体27と樹脂逃げ部35との接続部または連結部となるものである。そして、切除痕36は、幅寸法が均一となるようにする。切除痕36(非発泡性樹脂24などの出口部)は、最小幅である1mmと、最大幅である4mmとの間で最適に設定する。
【0058】
(構成4)
樹脂逃げ部35が、合流部29に関して、一側へ片寄った状態で形成されるようにする。
【0059】
即ち、継手本体27を合流部29と注入部25とを結ぶ線に沿って軸線方向へほぼ二分した場合に、樹脂逃げ部35のほとんどの部分が、一方の分割片の側に形成されるようにする。
【0060】
(構成5)
好ましくは、上記した継手本体27が、主管部41、および、主管部41から斜めに分岐された枝管部42を有するYチーズ形状を呈するものとする。そして、主管部41の軸線41aと枝管部42の軸線42aとを通る平面上で、注入部25が、主管部41における、枝管部42とは反対側の位置に設けられるようにする。また、上記した平面上で、樹脂逃げ部35が、枝管部42における、枝管部42と主管部41とが鈍角43に交差する部分に設けられるようにする。
この際、切除痕36に発泡性樹脂26が露出されるようにすることによって、非発泡性樹脂24の合流部29に欠落部分のない状態で発泡性樹脂26による断熱材層を形成させる。
【0061】
ここで、主管部41と枝管部42とは、例えば、鋭角の側が45度となり、鈍角43の側が135度となるように分岐されるもの(いわゆる45度分岐チーズ)などとする。但し、主管部41と枝管部42との分岐角度は、45度に限られるものではない。
【0062】
(構成6)
上記した断熱層付き管継手21の製造方法として、上記した製造工程に加え、
主管部41および主管部41から斜めに分岐された枝管部42を有するYチーズ形状の継手本体27を形成するためのキャビティ空間23に、
枝管部42における、枝管部42と主管部41とが鈍角に交差する部分から継手本体27の外部へ非発泡性樹脂24を逃がして成る樹脂逃げ部35を成形するための空間部23bを設けておき、射出成形時に、注入部25から注入された非発泡性樹脂24が合流される合流部29またはその近傍
に位置する外部の樹脂逃げ部35へ
非発泡性樹脂24と発泡性樹脂26とを逃がすことによって、
非発泡性樹脂24の合流部29に欠落部分のない状態で発泡性樹脂26による断熱材層を形成すると共に、継手本体27と一体に樹脂逃げ部35を成形
し、射出成形後に樹脂逃げ部35を切除
して、発泡性樹脂26が露出された切除痕36を形成するようにする。
【0063】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0064】
先ず、断熱層付き管継手21の製造について説明する。
【0065】
既に上記したように、成形金型22に設けたキャビティ空間23の容積よりも少ない量の非発泡性樹脂24を注入部25(注入口)からキャビティ空間23の内部に注入(ショートショット注入)する。そして、キャビティ空間23の内部で非発泡性樹脂24の表面がある程度固まった頃に、同じ注入部25から発泡性樹脂26を注入して、更に加圧する。これにより、発泡性樹脂26の発泡圧力によって非発泡性樹脂24をキャビティ空間23の内部の隅々にまで行き渡らせると共に、発泡性樹脂26の発泡によって非発泡性樹脂24の肉厚内部に断熱材層(発泡性樹脂26)を形成する(もぐり込ませる)ようにする。
【0066】
このようにすることにより、短管状の継手本体27と、継手本体27の開口端部に一体に形成された短管状の受口部28とを有し、継手本体27および受口部28が、非発泡性樹脂24によって主に構成されると共に、継手本体27を構成する非発泡性樹脂24の肉厚内部に発泡性樹脂26を発泡させて成る断熱材層が封入された(非発泡性樹脂24によって発泡性樹脂26が挟み込まれた)断熱層付き管継手21が成形される。
【0067】
この際、キャビティ空間23に、継手本体27の外部へ非発泡性樹脂24を逃がして成る樹脂逃げ部35を成形するための空間部23a,23bを設けておくようにする。そして、射出成形時に、注入部25から注入された非発泡性樹脂24が合流される合流部29またはその近傍から外部の樹脂逃げ部35へ少なくとも非発泡性樹脂24を逃がすことによって、継手本体27と一体に樹脂逃げ部35を成形する。更に、射出成形後に上記した樹脂逃げ部35を切除するようにする。
【0068】
このようにすることにより、上記した合流部29またはその近傍に、非発泡性樹脂24を継手本体27の外部へ逃がして成る樹脂逃げ部35を形成すると共に形成後に切除して成る切除痕36を有する断熱層付き管継手21が成形される。
【0069】
次に、給水や排水のための管路のような、断熱が必要な管路の構築について説明する。
【0070】
例えば、空調設備のドレン管路などのように断熱が必要な管路を構築するために、樹脂製の断熱層付き管部材と、樹脂製の断熱層付き管継手21とを用いるようにする。そして、断熱層付き管継手21の受口部28の内周面と、断熱層付き管部材の端部の外周面とに対して、それぞれ接着剤(有色接着剤など)を全周塗布した後、両者を嵌合することによって、断熱層付き管部材と断熱層付き管継手21とを接着接合する。これを管路全体に亘って行うことにより、断熱性を有する管路が構築される。
【0071】
このような断熱性を有する管路は、外部にグラスウールなどの断熱材を施工することなく、それ自身で内部に設けられた断熱層による断熱性を有しているので、構築時に外部に断熱材を施工する手間や、メンテナンス時に断熱材を取り外す手間などを削減することができる。
【0072】
なお、断熱層付き管継手21の受口部28については、挿入固定された断熱層付き管部材の断熱層と、受口部28の肉厚との相乗効果によって断熱性が確保される。
【0073】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
(作用効果1)
上記構成1によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、非発泡性樹脂24を、合流部29またはその近傍から継手本体27の外部へ逃がして継手本体27と一体に樹脂逃げ部35を成形することにより、合流部29で非発泡性樹脂24の流動が停止して固まるのを防止することができる。これにより、合流部29の周辺に発泡性樹脂26が入り込めなくなって断熱材層に欠落部分が生じるのを防止することができる。即ち、合流部29で非発泡性樹脂24の流動が停止してそのまま固まってしまわずに、樹脂逃げ部35へ向けて流動されるようになるので、合流部29に流動痕が発生されることがなくなると共に、合流部29の周辺にまで発泡性樹脂26が入り込めるようになり、以って、継手本体27における非発泡性樹脂24の合流部29に欠落部分の無い断熱材層を成形することが可能となる。これにより、例えば、低温の流体を流した場合に、断熱材層の欠落部分に結露が生じるのを防止することができる。
【0075】
そして、射出成形後に樹脂逃げ部35を継手本体27から切除することにより、樹脂逃げ部35が外部に付設されず、しかも、欠落部分の無い断熱材層を継手本体27の肉厚内部に有する断熱層付き管継手21を得ることができる。
【0076】
この際、樹脂逃げ部35の切除痕36の表面に発泡性樹脂26の気泡が現れることがあるが、上記気泡は独立気泡となるので、気泡部分からの漏れや断熱性の低下などを生じることはない。
【0077】
(作用効果2)
上記構成2によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、非発泡性樹脂24を光透過性を有する透明樹脂または半透明樹脂によって構成したことにより、継手本体27の肉厚内部に形成された断熱材層の状態を外部から目視によって簡単に確認することができる。例えば、断熱材層が継手本体27の全体に充分に行き渡っていなかったり(例えば、合流部29の位置に断熱材層の欠落部分が生じていたり)、断熱材層が受口部28の側にはみ出していたりするなどの不具合を容易に察知することができる。
【0078】
また、光透過性を有する受口部28に対する管部材の挿入状態や接着、接合状態などを外部から目視によって簡単に確認することができる。特に、管部材と受口部28との接着に有色接着剤を用いることにより、管部材の挿入不足や、接着剤の塗布忘れ(不接着)および塗布不足(接着不良)などの不具合を容易に察知することができる。
【0079】
以って、断熱層付き管継手21の製品品質と施工品質との両方を、外部から容易に管理することが可能となる。
【0080】
(作用効果3)
上記構成3によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、継手本体27に対する樹脂逃げ部35の切除痕36の幅寸法を、概ね1mm以上4mm以下にすることにより、継手本体27から外部の樹脂逃げ部35へ有効に非発泡性樹脂24を逃がすことができると共に、継手本体27から樹脂逃げ部35へ必要以上の非発泡性樹脂24や発泡性樹脂26が逃げてしまうのを防止しつつ切除痕36をより目立ち難いものとすることができる。
【0081】
ここで、切除痕36の幅寸法を1mm未満にした場合には、継手本体27から樹脂逃げ部35へ非発泡性樹脂24を逃がすのが難しくなって合流部29で非発泡性樹脂24が固まってしまう(即ち、断熱材層の欠落部分が発生する)という不具合を生じる。反対に、切除痕36の幅寸法を4mmよりも大きくした場合には、継手本体27から樹脂逃げ部35へ必要以上の非発泡性樹脂24や発泡性樹脂26が逃げてしまうことになる(即ち、非発泡性樹脂24や発泡性樹脂26の注入量が多くなり、破棄する非発泡性樹脂24や発泡性樹脂26の量が多くなって無駄が生じる)と共に、切除痕36が目立ち易くなる(即ち、製品の外観品質が低下する)という不具合を生じる。更に、気泡の粒径が大きくなって、強度不足や製品の外観品質が低下するなどの不具合も生じる。なお、上記した1mm以上4mm以下の数値は、トライ&エラーを繰り返して得られた実験値である。
【0082】
なお、要するに、非発泡性樹脂24の合流部29の位置の周辺に、発泡性樹脂26による断熱層が有効に形成されれば良いので、樹脂逃げ部35への発泡性樹脂26の逃げ量については、特に問題にはならない。
【0083】
(作用効果4)
上記構成4によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、樹脂逃げ部35が、合流部29に関して、一側へ片寄った状態で形成されたことにより、成形金型22を簡素化することができる。即ち、成形金型22を、合流部29に沿って分割すると共に、分割した片側の成形金型22(
図3中の金型片22a)のみに樹脂逃げ部35を成形するための空間部23bを設ける構造を採用することができるようになる。これにより、金型コストを削減しつつ容易に樹脂逃げ部35を有する断熱層付き管継手21を成形することが可能となる。
【0084】
(作用効果5)
上記構成5によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、
Yチーズ形状にした継手本体27に対して、樹脂逃げ部35を、注入部25とは反対側の位置における、枝管部42と主管部41とが鈍角43に交差する枝管部42側の部分に設けることにより、成形金型22の内部に、上記した樹脂逃げ部35を成形するための空間部23bを、容易に確保することが可能となる。
そして、切除痕36に発泡性樹脂26が露出されるように発泡性樹脂26を樹脂逃げ部35へ逃すことによって、非発泡性樹脂24の合流部29に欠落部分のない状態で発泡性樹脂26による断熱材層が形成される。なお、樹脂逃げ部35は、容量が小さ過ぎると、断熱層の欠落部分の発生を解消するのに必要な量の非発泡性樹脂24を外部へ逃がすことができなくなり、反対に、容量が大き過ぎると、非発泡性樹脂24や発泡性樹脂26が無駄に使われることになるので、最適な容量にするのが好ましい。樹脂逃げ部35の最適な容量は、例えば、トライ&エラーなどによって求めることができる。
【0085】
(作用効果6)
上記構成6によって、上記作用効果1ないし作用効果5と同様の作用効果を得ることができる。
【0086】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。