(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957209
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】燃料電池スタックの活性化装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20160714BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20160714BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/10
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-250791(P2011-250791)
(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公開番号】特開2013-26209(P2013-26209A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年11月13日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0071201
(32)【優先日】2011年7月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 在 ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】申 煥 秀
(72)【発明者】
【氏名】李 盛 根
(72)【発明者】
【氏名】秋 ヒョン 碩
【審査官】
久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−097555(JP,A)
【文献】
特開2005−158734(JP,A)
【文献】
特開2009−277637(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/058743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックの活性化方法であって、
燃料電池スタックを加湿させ、開放電圧(OCV)状態で燃料電池スタックを運転する高加湿開放電圧運転段階と、
水素と空気の供給を遮断し、電流を印加してスタック内部の酸素ガスを消耗させることで、高分子電解質膜を膨張させ、高分子電解質膜の気孔内に水が吸収されるようにして、高分子電解質膜の気孔内を湿潤にする湿潤段階と、を有し、
前記高加湿開放電圧運転段階と前記湿潤段階を交互に繰り返すことを特徴とする燃料電池スタックの活性化方法。
【請求項2】
前記高加湿開放電圧運転段階と前記湿潤段階は、一定周期で繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタックの活性化方法。
【請求項3】
前記高加湿開放電圧運転段階は、2〜5分間の時間間隔で繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池スタックの活性化方法。
【請求項4】
前記湿潤段階は、2〜5分間の時間間隔で繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池スタックの活性化方法。
【請求項5】
前記高加湿開放電圧運転段階は、100%以上の相対湿度で加湿することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタックの活性化方法。
【請求項6】
前記高加湿開放電圧運転段階と前記湿潤段階を繰り返した後、さらに燃料電池スタックの密封保管段階を行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタックの活性化方法。
【請求項7】
燃料電池スタックの活性化装置であって、
燃料電池スタックに水素を供給する水素供給装置と、燃料電池スタックに空気を供給す空気供給装置と、燃料電池スタックを加湿する加湿器を有する活性化本体と、前記活性化本体を制御する制御器と、を有してなり、
前記制御器は、燃料電池スタックを加湿させ、開放電圧(OCV)状態で燃料電池スタックを運転する高加湿開放電圧運転段階と、水素と空気の供給を遮断し、電流を印加してスタック内部の酸素ガスを消耗させることで、高分子電解質膜を膨張させ、高分子電解質膜の気孔内に水が吸収されるようにして、高分子電解質膜の気孔内を湿潤にする湿潤段階と、を交互に繰り返して運転制御を行うことを特徴とする燃料電池スタックの活性化装置。
【請求項8】
前記活性化本体には、燃料電池スタックに水素と空気が流動するように連結可能な試験マニフォールドが形成され、前記試験マニフォールドには燃料電池スタックを前記活性化本体に装着させるためのスタックドッキングユニットが設けられることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池スタックの活性化装置。
【請求項9】
活性化しようとする燃料電池スタックを運ぶためのスタック運搬ユニットをさらに有することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池スタックの活性化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックの活性化装置及び方法に関するものであって、真空湿潤を用いた燃料電池スタックの活性化装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近来、世界的な環境汚染問題に対する関心とCO
2規制により、グリーンカーの開発が求められ、環境汚染の原因となる内燃機関自動車の代わりに、環境に優しく、高効率の燃料電池車両が注目を浴びている。
【0003】
燃料電池車両のコアといえる燃料電池スタックを組み立てて正常性能を発揮するためには、3相の電極反応面積の確保、高分子電解質膜または電極の不純物の除去、高分子電解質膜のイオン伝導性の向上を目的としてスタックの活性化工程が行われる。
【0004】
特に、燃料電池スタックは、製作後の初期運転時、電気化学反応でその活性度が低下することから、正常の初期性能を最大限に確保するために、スタックの活性化(Activation)工程を行う必要がある。このようなスタックの活性化工程は、プレコンディショニング(Pre−conditioning)またはブレークイン(break−in)とも呼ばれ、反応に不活性な触媒を活性化させ、電解質膜及び電極内に含まれた電解質を十分に水化させて水素イオンの通路を確保することである。
【0005】
従来のスタックの活性化方法の一例として、
図1に、高電流密度及びシャットダウン状態のパルス工程によるスタックの活性化方法を示している。この方法では、高電流密度放電及びシャットダウン(shut−down)状態のパルス放電を数回〜数十回繰り返しており、220セルのサブモジュールを基準として約1時間30分〜2時間の工程時間を必要としている。具体的には、高電流密度(1.2または1.4A/cm
2)を3分間放電する過程と、シャットダウン状態で5分間パルス放電を行う過程を約11回繰り返す。
【0006】
しかし、このようなパルス放電による活性化工程では、その工程時間が長いだけでなく、水素使用量も多いという短所がある。すなわち、シャットダウン(Shut−Down)状態でパルス放電を行う従来のスタックの活性化方法は、燃料電池内の水の流動に変化を与えて活性化速度が速くなるという利点はあるが、220セルのサブモジュールを基準として活性化に必要とする時間は約105分、水素使用量は約2.9kgである。
【0007】
スタックの活性化装置として、例えば、燃料電池スタックの陽極触媒側に質量流量コントローラーおよび加湿器を介して連結された空気供給手段と、陰極触媒側に質量流量コントローラーおよび加湿器を介して連結された水素供給手段と、燃料電池スタック内に冷却水を循環供給する恒温槽と、燃料電池スタックの両端に連結されて陽極と陰極を短絡させるケーブルとで構成されて、高分子電解質燃料電池の性能を大幅向上させ、早い時間内に安定的に高い性能を表すための燃料電池加速活性化装置〔特許文献1〕などの提案があり、またスタックの活性化方法として、燃料電池を2段階に細分化し、電子負荷および印加装置を使用せず、加湿された空気のみを供給する第1段階と、電極層の活性化のためにCV(cyclo voltammetry)活性化法を実施する第2段階を行う高分子電解質の活性化方法〔特許文献2〕、燃料電池の出力電圧を第1の値で維持する工程と、燃料電池の出力電圧を第1の値よりも大きな第2の値で維持する工程とを備えてなる燃料電池の活性化方法〔特許文献3〕などの提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−016331号公報
【特許文献2】特開2009−146876号公報
【特許文献3】特開2008−021544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題点を解決すべくなされた本発明の目的は、水素消耗量を少なくし、かつ活性化に要する時間を短くした燃料電池スタックの活性化装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の燃料電池スタックの活性化方法は、燃料電池スタックの活性化方法であって、燃料電池スタックを加湿させ、開放電圧(OCV)状態で燃料電池スタックを運転する高加湿開放電圧運転段階と、
水素と空気の供給を遮断し、電流を印加してスタックの内部に残る酸素ガスを消耗させることで、高分子電解質膜
を膨張させ、
高分子電解質膜の気孔内に水が吸収されるようにして、高分子電解質膜の気孔内を湿潤
にする湿潤段階と、を有し、前記高加湿開放電圧運転段階と前記
湿潤段階を交互に繰り返すことを
特徴とする。
【0011】
この
とき、高加湿開放電圧運転段階は、2〜5分間の所定の時間間隔で繰り返し、
湿潤段階は、2〜5分間の所定の時間間隔で繰り返す。高加湿開放電圧運転段階は、100%以上の相対湿度で加湿する。
【0012】
本発明の燃料電池スタックの活性化方法は、高加湿開放電圧運転段階と
湿潤段階を繰り返した後、さらに燃料電池スタックの密封保管段階を行うことができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池スタックの活性化装置は、燃料電池スタックに水素を供給する水素供給装置と、燃料電池スタックに空気を供給す空気供給装置と、燃料電池スタックを加湿する加湿器を有する活性化本体と、前記活性化本体を制御する制御器と、を有してなり、前記制御器は、
燃料電池スタックを加湿させ、開放電圧(OCV)状態で燃料電池スタックを運転する高加湿開放電圧運転段階と、
水素と空気の供給を遮断し、電流を印加してスタック内部に残る酸素ガスを消耗させることで、高分子電解質膜を膨張させ、高分子電解質膜の気孔内に水が吸収されるようにして、高分子電解質膜の気孔内を湿潤にする湿潤段階と、を交互
に繰り返して運転制御を行うことを
特徴とする。
【0014】
そして、活性化本体には、燃料電池スタックに水素と空気が流動するように連結可能な試験マニフォールドが形成され、試験マニフォールドには燃料電池スタックを活性化本体に装着させるためのスタックドッキングユニットが設けられる。
【0015】
本発明の燃料電池スタックの活性化装置は、活性化しようとする燃料電池スタックを運ぶためのスタック運搬ユニットをさらに有することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による燃料電池スタックの活性化装置及び方法は、高出力電流を印加する工程をなくし、高加湿運転段階と真空湿潤段階を導入して工程の繰り返し回数を大きく減少さてスタックの活性化に要する時間を短縮させるだけでなく、スタックの活性化のための水素量を大きく減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来の燃料電池スタックの活性化方法を説明する工程図である。
【
図2】本発明による燃料電池スタックの活性化方法を説明する工程図である。
【
図3】本発明によるスタックの活性化方法における密封保管段階により活性化度が改善されたことを示すグラフであって、密封保管期間の経過による電流密度と電圧の関係を示すグラフである。
【
図4】本発明によるスタックの活性化方法における密封保管段階により活性化度が改善されたことを示すグラフであって、密封保管期間の経過による開放電圧と抵抗の変化を示すグラフである。
【
図5】本発明による燃料電池スタックの活性化装置を概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明では従来の燃料電池スタックの活性化装置及び方法を改善してスタックの内部に液滴を導入する加湿工程及びスタック内の残余ガスを消耗して真空の雰囲気を形成する真空湿潤工程を繰り返すことにより、少ない水素を用いて短時間に燃料電池スタックの活性化を可能にする燃料電池スタックの活性化装置及び方法を提供する。
以下、添付した図面を参照して本発明の燃料電池スタックの活性化方法を詳細に説明する。
【0019】
図5は、本発明による燃料電池スタックの活性化装置を概略的に示す図面である。燃料電池スタックの活性化装置は、自動組立設備などを用いて製作された燃料電池スタックを活性化させる装置であって、燃料電池スタックの活性化装置は、活性化本体100と、製作された燃料電池スタック400を運ぶスタック運搬ユニット300と、スタック運搬ユニット300により運搬された燃料電池スタックを活性化装備に装着させるスタックドッキングユニット200を有して構成される。
【0020】
スタックドッキングユニット200は、活性化本体100に電気的に接続されて燃料電池スタック400を運転可能にし、特に、活性化本体100に形成された試験マニフォールド110に連結されて活性化本体100内の水素と空気を燃料電池スタック内に流動させる。
【0021】
また、活性化本体100は、スタックの活性化のために一定の条件にしており、後述する高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を交互に繰り返すように制御され、このために水素供給装置、空気供給装置、加湿器と共にこれらを制御するための制御器を備えている。
【0022】
また、燃料電池スタックの活性化装置にある活性化本体100は、スタック内を真空にする手段を有しており、そのためにスタック内に流入する水素、空気、及び液滴の供給を遮断するための流路遮断手段を有している。従って、燃料電池スタックの活性化装置は、流路遮断手段によりスタック内に流入する水素と空気などの供給を遮断した状態で、一定の負荷を加えてスタックの内部の残余ガスを消耗させることにより、スタック内に真空を形成することができる。
【0023】
上述したように、活性化本体100にある制御器は、高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を交互に繰り返すように制御する。このためにこの制御器は、高加湿開放電圧運転段階では、水素供給装置、空気供給装置、及び加湿器を駆動させた状態で開放電圧(OCV)運転を行うように制御し、真空湿潤段階では、流路遮断手段により燃料電池スタック内に流入する水素と空気の供給を遮断し、負荷を加えてスタックの真空湿潤を達成することになり、これらの段階を所定回数繰返すように制御している。
【0024】
このような燃料電池スタックの活性化装置を用いた燃料電池スタックの活性化方法を具体的に説明すれば次の通りである。
本発明による燃料電池スタックの活性化方法は、従来の燃料電池スタックの活性化に必ず適用した高電流密度運転区間をなくす一方、無出力状態で真空を用いて高分子電解質膜のイオン伝導性を向上させている。その結果、本発明による燃料電池スタックの活性化方法では、水素を殆ど消耗せずに短時間内に燃料電池スタックの活性化工程を完了することができる。
【0025】
具体的には、高加湿開放電圧(Open Circuit Voltage、OCV)運転段階と真空湿潤段階の2つの段階を繰り返して燃料電池スタックの活性化を行っている。高加湿開放電圧運転段階は、活性化のために液滴をスタックの内部に導入する段階であり、高加湿開放電圧運転段階の後に行われる真空湿潤段階は、スタック内を真空雰囲気にしたときに得られた湿潤を用いて高分子電解質膜のイオン伝導性を向上させる段階である。
このような本発明による燃料電池スタックの活性化方法では、高電流出力区間がある従来の活性化方法とは異なり、基本的に無出力状態で行われ、高電流出力区間がないことを特徴としている。
【0026】
一方、本発明による燃料電池スタックの活性化方法によれば、このような高電流出力なしに真空だけを用いており、高電流出力を用いた従来技術に比して100%の活性化を得られず、約90%水準の活性化である。この活性化は低い点を補完するために、先ず、高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を繰り返す部分活性化工程を行い、その後、密封保管段階をさらに行うのが好ましい。すなわち、目標水準の燃料電池スタックの活性化を達成するために、追加活性化工程を行うことになる。
【0027】
従って、本発明による燃料電池スタックの活性化方法では、高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を繰り返す部分活性化工程、さらに密封保管段階を含む追加活性化工程を連続して行うことにより、燃料電池スタックの活性化を完了する。
【0028】
図2は、このような高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を含む本発明による燃料電池スタックの活性化方法の好ましい一実施形態を示す図面である。
この燃料電池スタックの活性化方法では、上述した高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を一定周期で繰り返して燃料電池スタックの活性化が行われる例を示している。これら各段階を繰り返す周期は、各段階に要す時間に応じて決定されるが、それぞれ2〜5分間隔であるのが好ましい。
【0029】
次に、
図2に示す実施形態の各段階が行われる過程を詳細に説明する。先ず、最初3分間にスタックの内部に液滴を導入する高加湿開放電圧運転段階が行われる。高加湿開放電圧運転段階では、従来の技術に比して相対的に高い相対湿度状態で十分な加湿が行われ、好ましくは100%以上の相対湿度で燃料電池スタックが運転される。
図2の実施形態では、加湿器の温度を75℃に設定し、冷却水の温度を30℃に設定して高加湿運転を行ったが、このような設定温度による運転条件は相対湿度800%に該当する。従って、この高加湿開放電圧運転段階では、開放電圧状態で水素と空気を供給して燃料電池スタックを運転する。
【0030】
高加湿開放電圧運転段階の後、スタック内に真空雰囲気を形成して燃料電池スタックの湿潤を達成するように3分間の真空湿潤段階が行われる。本段階は、上述した高加湿開放電圧運転段階が行われた後、水素と空気の供給を遮断し、残存ガスを消耗することにより、真空の雰囲気を形成する段階である。
【0031】
本発明による燃料電池スタックの活性化方法では、真空湿潤段階において、スタック内に流入する水素と空気の供給を遮断する一方、スタック内部の残余ガスを消耗するために一定の負荷を与えている。この真空湿潤段階により、スタック内部に真空の雰囲気を形成し、これによって燃料電池スタックの湿潤を実現する。
【0032】
従って、
図2に示すように、真空湿潤段階において、例えば、5A電流を印加してスタック内に残存している反応ガスを早期に消耗するようにして燃料電池スタックの内部に真空の雰囲気を誘導する。このような真空湿潤段階により、高分子電解質膜の膨張(swelling)が容易となり、高分子電解質膜の膨張により膜の表面構造が変化して膜の気孔内に水が吸収されるようになる。
【0033】
すなわち、高分子電解質膜のナノサイズ微細気孔に液滴(Liquid water)が拡がり、それにより高分子電解質膜が膨張して膜を構成する官能基(SO
3−H
+)が表面に露出して、高分子電解質膜の水分吸収(water uptake)能力を向上させ、高分子電解質膜のイオン伝導度(S/cm)を向上させることができる。
【0034】
従来のスタックの活性化工程では、高分子電解質膜内の水の流れが制限されたが、上記のように真空湿潤工程を実施することにより、高分子電解質膜で水が様々な方向に自由に拡がり多様な経路を介して膜の気孔内を浸潤(wetting)状態にするため、水素イオン(proton)の移動がより容易になり、電極膜の活性化加速効果が得られる。
本発明による燃料電池スタックの活性化方法によれば、このような活性化に対する加速化効果により、従来に比して短時間内に活性化を達成することができる。
【0035】
図2の実施形態では、3分間の高加湿開放電圧運転段階と3分間の真空湿潤段階をそれぞれ9回繰り返してスタックの活性化を達成している。
【0036】
一方、本発明による燃料電池スタックの活性化方法では、このような高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を繰り返してスタックの活性化を行った後、さらにスタックの活性化を行うための追加段階を行うことが好ましいとしている。
具体的に、上記のように2つの段階を繰り返す活性化工程を行った後、さらに燃料電池スタックを密封して長時間保管する密封保管段階を行うことにより、さらなるスタックの活性化を達成することができる。
【0037】
図3及び
図4は、このような密封保管段階による性能変化を示している。
図3は、密封保管期間の経過による電流密度と電圧の関係を示しており、活性化直後を起点として密封保管期間が経過するにつれて、スタックの追加活性化工程により電流密度に対するスタックの電圧が増加することを確認することができる。
【0038】
また、
図4は、密封保管期間の経過による開放電圧と抵抗の変化を示しており、密封保管期間が経過するにつれて、開放電圧が増加し、抵抗は減少するため、密封保管期間の経過により活性化度が改善されることが分かる。
【0039】
このような密封保管段階の追加活性化によれば、密封保管過程におけるスタック内の水素−酸素反応により真空の雰囲気が形成され、水が電解質膜のサブマイクロ気孔構造に拡がり、高分子膜において水の移動に関与する官能基(SO
3−)が作用し易い構造となって水素イオンの移動が容易になってスタックの活性化が達成される。
【0040】
従って、本発明による燃料電池スタックの活性化方法では、高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を繰り返すことにより、スタックの活性化に必要とする時間を短くすると共に、水素量を大幅に少なくすることができる。さらに、密封保管段階を行うことにより、前述した高加湿開放電圧運転段階と真空湿潤段階を含む部分活性化工程を行った後で活性化度を向上させることができる。
【0041】
本発明は、好ましい実施形態を図面を参照して説明したが、当業者であれば本発明の範囲を逸脱しない範囲内で本発明の要素に対する修正及び変更が可能であることが明らかである。また、本発明の必須領域を逸脱しない範囲内で特別な状況や材料を変更してもよい。
【符号の説明】
【0042】
100;活性化本体
110;試験マニフォールド
200;スタックドッキングユニット
300;スタック運搬ユニット
400;燃料電池スタック