(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作動部材を前記ベース部材に対してスライド可能に設けるとともに、該作動部材に、前記フロントドアに当接するピン状の当接部を設け、該当接部を前記リヤドアに形成された貫通孔から前記フロントドアに向けて外部に突出させたことを特徴とする請求項1記載のドアロック装置。
【背景技術】
【0002】
観音開き式のフロントドアとリヤドアによって乗降口を開閉する車両においては、リヤドアを独立してフロントドアよりも先に開くことができると、車両が停止する以前にリヤドアが開放される可能性があり、高い安全性を確保することができない可能性がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、フロントドアの閉鎖時にはリヤドアの開放を規制し、フロントドアの開放時にはリヤドアの開放を許容するようにした車両の開閉体構造が提案されており、その一例を
図13に示す。
【0004】
即ち、
図13は特許文献1において提案された開閉体構造の基本構成を示す図であり、図示の開閉体構造は、リヤドアに設けられたインナハンドル101と、リヤドアを車体に対してロックするロックユニット102と、インナハンドル101の作動をロックユニット102に対して伝達/非伝達状態とする空振り機構103と、該空振り機構103をフロントドアの開閉に連動して伝達/非伝達状態に切り替えるアクチュエータ(ソレノイド)104を備えている。この開閉体構造において、フロントドアが閉鎖されているときには、リヤドアは、ロックユニット102によって開閉がロックされているために開くことができず、この状態で乗員がインナハンドル101を操作しても、その操作力は空振り機構103によってロックユニット102には伝達されないため、ロックユニット102によるリヤドアのロック状態が維持され、該リヤドアを開くことができない。
【0005】
又、特許文献2には、同様の観音開き式のドアロック装置において、空振り機構の状態をアクチュエータではなく、
図14に示すように機械的構成によって切り替えるようにしたものが提案されている。
【0006】
図14は特許文献2において提案されたドアラッチ装置の基本構成を示すものであり、図示のドアラッチ装置は、フロントドアによって押圧される作動レバー201の動作を連結ロッド202を介して空振り機構のロックレバー203に伝達し、スライドピン204を作動させることによって、インナハンドル205に連結されたオープンレバー206とラチェットリリースレバー207との連結状態(ロック/アンロック状態)を切り替えてリヤドアの開閉を規制するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において提案された構成では、アクチュエータ104によって空振り機構103の状態を切り替えるようにしているため、左右のリヤドアにそれぞれアクチュエータ104が必要であり、コストアップを招くという問題がある。又、左右のフロントドアの開閉状態をそれぞれ独立に検出してアクチュエータ104をそれぞれ制御する必要があるため、システムが複雑化するという問題もある。
【0009】
特許文献2において提案された構成では、作動レバー201とドアロック装置本体とが離れた位置に配置されている(連結ロッド202によって連結されている)ため、ドア内の部品のレイアウトの自由度が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、リヤドア内にコンパクトに配置することができるドアロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、観音開き式のフロントドアとリヤドアによって乗降口を開閉する車両の前記リヤドアを車体に対してロックする装置であって、
前記リヤドアに設けられたインナハンドルと前記リヤドアを車体に対して閉鎖状態に保持可能なラッチユニットとを連結/非連結状態に切り替える空振り機構と、
該空振り機構を配置するベース部材と、
前記フロントドアに当接し、該フロントドアの開閉に連動して作動することによって前記空振り機構を連結/非連結状態に切り替える作動部材を備えたドアロック装置において、
当該ドアロック装置を前記リヤドアの前端部に配置するとともに、前記フロントドアに直接当接する前記作動部材を前記ベース部材に移動可能に配置し
、
前記空振り機構を、
一端部に一方のラッチユニットに連なる連結部材が連結される第1連結部を有し、他端部に他方のラッチユニットに連なる連結部材が連結される第2連結部を有し、操作力を受ける係合部が設けられた回転可能なラッチ側伝達レバーと、
前記インナハンドルの操作によって進退動するとともに、前記ラッチ側伝達レバーの係合部と係合する連結位置及びその係合が解除される非連結位置との間を揺動可能なハンドル側伝達レバーを含んで構成し、
前記作動部材を前記ハンドル側伝達レバーの揺動方向に沿って進退動可能に配置し、該作動部材が前記ハンドル側伝達レバーに係合して該ハンドル側伝達レバーを連結/非連結位置に切り替えるよう構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記作動部材を前記ベース部材に対してスライド可能に設けるとともに、該作動部材に、前記フロントドアに当接するピン状の当接部を設け、該当接部を前記リヤドアに形成された貫通孔から前記フロントドアに向けて外部に突出させたことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、
前記作動部材を、
前記フロントドアに当接する第1スライダと、
前記空振り機構側に設けられた該空振り機構を操作する第2スライダと、
前記第1スライダと前記第2スライダを前記フロントドア側に向けて付勢する第1スプリングと、
前記第1スライダと前記第2スライダとの間に設けられた第2スプリングを含んで構成し、
前記ベース部材に、前記第2スライダに係合して該第2スライダの前記空振り機構側への所定以上の移動を規制する規制部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は
、観音開き式のフロントドアとリヤドアによって乗降口を開閉する車両の前記リヤドアを車体に対してロックする装置であって、
前記リヤドアに設けられたインナハンドルと前記リヤドアを車体に対して閉鎖状態に保持可能なラッチユニットとを連結/非連結状態に切り替える空振り機構と、
該空振り機構を配置するベース部材と、
前記フロントドアに当接し、該フロントドアの開閉に連動して作動することによって前記空振り機構を連結/非連結状態に切り替える作動部材を備えたドアロック装置において、
当該ドアロック装置を前記リヤドアの前端部に配置するとともに、前記フロントドアに直接当接する前記作動部材を前記ベース部材に移動可能に配置し、
前記作動部材を、
前記フロントドアに当接する第1スライダと、
前記空振り機構側に設けられた該空振り機構を操作する第2スライダと、
前記第1スライダと前記第2スライダを前記フロントドア側に向けて付勢する第1スプリングと、
前記第1スライダと前記第2スライダとの間に設けられた第2スプリングを含んで構成し、
前記ベース部材に、前記第2スライダに係合して該第2スライダの前記空振り機構側への所定以上の移動を規制する規制部を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記ベース部材に、前記インナハンドルを回動可能に軸支したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ドアロック装置をリヤドアの前端部に配置し、フロントドアに当接する作動部材をベース部材に配置したため、作動部材の動作をドアロック装置に伝達するロッド等の連結手段が不要となり、作動部材を含むドアロック装置をリヤドアの前端部にコンパクトに配置することができ、リヤドアの形状やリヤドア内の部品レイアウトの自由度が高められる。
又、ハンドル側伝達レバーを連結/非連結位置に切り替えるためのスライドピンが不要となるため、部品点数を削減して構造の単純化を図ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、作動部材をスライド部材とすることによって構成を単純化することができるとともに、作動部材のピン状の当接部をリヤドアの貫通孔から外部に突出させることによって、リヤドアから突出する作動部材を小さくすることができ、見栄えを高めることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、
第1スライダと第2スライダとの間に第2スプリングを介在させ、第2スライダの所定以上の移動を規制する規制部をベース部材に設けたため、空振り機構を操作する第2スライダの必要以上の移動を規制することができるとともに、車体に対して閉鎖されているフロントドアの後端部とリヤドアに配置されたドアロック装置の作動部材との距離のバラツキを第2スプリングによって吸収することができ、空振り機構を常に確実に作動させることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、第1スライダと第2スライダとの間に第2スプリングを介在させ、第2スライダの所定以上の移動を規制する規制部をベース部材に設けたため、空振り機構を操作する第2スライダの必要以上の移動を規制することができるとともに、車体に対して閉鎖されているフロントドアの後端部とリヤドアに配置されたドアロック装置の作動部材との距離のバラツキを第2スプリングによって吸収することができ、空振り機構を常に確実に作動させることができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、空振り機構と作動部材が配置されたベース部材に更にインナハンドルを配置したため、部品の集約化を図ることができ、ドアロック装置をリヤドア内によりコンパクトに配置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明に係るドアロック装置を備える車両の側面図、
図2は
図1のA−A線断面図であり、
図1に示す車両50の両側部に開口する左右の各乗降口51は、観音開き式のフロントドア52とリヤドア53によって開閉される。ここで、フロントドア52は、その前端部が上下のヒンジ54によって車体に開閉可能に支持され、リヤドア53は、その後端部が上下のヒンジ55によって車体に開閉可能に支持されている。そして、フロントドア52には、車外から該フロントドア52の開閉操作を行うためのドアハンドル56と、車両後方を視認するためのドアミラー57が設けられている。
【0024】
又、
図1に示すように、リヤドア53の前端部の上下にはラッチユニット58,59がそれぞれ設けられており、同リヤドア53の前端部の中間高さ位置(上下方向において上下のラッチユニット58,59の間の位置)には本発明に係るドアロック装置1が配置されている。そして、上下のラッチユニット58,59は、連結部材であるコントロールケーブル60,61を介してドアロック装置1に連結されている。
【0025】
尚、図示しないが、上下の各ラッチユニット58,59は、車体に設けられたストライカに係脱可能なフォークと、該フォークに係合してフォークとストライカとを係止状態に維持するクローとを備えている。そして、車室内のインナハンドル2(
図2参照)が乗員によって操作されると、その操作力がドアロック装置1とコントロールケーブル60,61を介して上下のラッチユニット58,59に伝達され、各ラッチユニット58,59のクローが操作されてフォークとストライカとの係合が解除されてリヤドア53の開放が可能となる。
【0026】
而して、本実施の形態における観音開き式のフロントドア52とリヤドア53にあっては、フロントドア52が優先して開放され、リヤドア53は、フロントドア52の開放後にその開放が許容されるよう構成されている。
【0027】
ところで、
図2に示すように、フロントドア52は、アウタパネル52aとその内側に配されたインナパネル52bの周縁同士をヘミング加工等によって接合することによって中空構造として構成され、その内側はドアトリム62によって覆われている。又、リヤドア53においては、アウタパネル53aとその内側に設けられたドアトリム63によって画成される空間内に矩形筒状のドアフレーム64が上下方向(
図2の紙面垂直方向)に配されており、該ドアフレーム64の前端面にドアロック装置1が取り付けられている。このドアロック装置1には、前記インナハンドル2が図示矢印方向に回動操作可能に設けられており、ドアトリム63には乗員が手を差し込んでインナハンドル2を操作するための凹部63aが形成されている。
【0028】
次に、本発明に係るドアロック装置1の構成の詳細を
図3〜
図7に基づいて以下に説明する。
【0029】
図3は本発明に係るドアロック装置の正面図、
図4は同ドアロック装置の背面図、
図5は同ドアロック装置の分解斜視図、
図6は同ドアロック装置のラッチ側伝達レバーとハンドル側伝達レバーとの組付構造を示す図、
図7(a),(b)は同ドアロック装置の作動部材の構造と作用を示す部分側断面図である。
【0030】
本発明に係るドアロック装置1は、ベース部材3に前記インナハンドル2と空振り機構4及び作動部材5を設けて構成されている。ここで、ベース部材3は上下方向に長い部材であって、その上端部に形成された左右2つのネジ孔3aと下端部に形成された1つのネジ孔3a(
図5参照)に挿通する不図示のネジによってドアロック装置1が
図2に示すようにリヤドア53のドアフレーム64の前端面に取り付けられている。
【0031】
又、ベース部材3の上部にはインナハンドル2が垂直方向に挿通する支持軸6によって回動可能に軸支されている。ここで、
図5に示すように、インナハンドル2は、操作部2Aと支持部2Bとを上下2本のネジ7によって締結することによって構成されている。即ち、操作部2Aの上下に形成された2つの切欠き孔2aにネジ7を通し、これらのネジ7を支持部2Bの上下に形成された2つのネジ孔2bにそれぞれねじ込むことによって操作部2Aと支持部2Bが締結されてインナハンドル2が構成されている。そして、このインナハンドル2は、支持部2Bとベース部材3にそれぞれ縦方向に貫設された軸挿通孔2c,3bに前記支持軸6を上方から通し、該支持軸6の下端にCリング8を嵌め込むことによってベース部材2に回動可能に軸支されており、該インナハンドル2は、スプリング9によって初期位置方向に付勢されている。
【0032】
更に、ベース部材3の中間高さ位置には回転レバー10が支持軸11によって回動可能に軸支されている。この回転レバー10は、インナハンドル2の回動操作に連動して支持軸11を中心として回動する部材であって、
図5に示すように、その上端に横方向に形成された軸支孔10aとベース部材3に横方向に貫設された軸支孔3cに挿通する前記支持軸11によってベース部材3に回動可能に軸支されており、その上端部がインナハンドル2に係合している。そして、この回転レバー10の下端には切欠き状の支持受部10bが形成されている。
【0033】
そして、ベース部材2の下半部には前記空振り機構4と作動部材5が設けられている。ここで、空振り機構4は、インナハンドル2とラッチユニット58,59(
図1参照)とを連結/非連結状態に切り替える機構であって、中間部がベース部材3に回動可能に軸支されたラッチ側伝達レバー12と、上端が前記回転レバー10に連結されてベース部材3に揺動可能に支持されたハンドル側伝達レバー13を含んで構成されている。
【0034】
上記ラッチ側伝達レバー12の中間部には円孔状のネジ挿通孔12aが形成されており、このネジ挿通孔12aに挿通するネジ14をベース部材3に突設された軸部3Aのネジ孔3dにねじ込むことによってラッチ側伝達レバー12がベース部材3に回動可能に軸支されており、このラッチ側伝達レバー12はコイルスプリング15によってロック方向(
図4の時計方向)に付勢されている。そして、このラッチ側伝達レバー12の一端には、上側のラッチユニット58(
図1参照)に連なるコントロールケーブル60(
図1参照)が連結される第1連結部12bが形成され、同ラッチ側伝達レバー12の他端には、下側のラッチユニット59(
図1参照)に連なるコントロールケーブル61(
図1参照)が連結される第2連結部12cが形成されている。又、ラッチ側伝達レバー12にはピン状の係合部12dが一体に突設されている。尚、ベース部材3には、ラッチ側伝達レバー12の第1連結部12bに連結されるコントロールケーブル60と第2連結部12cに連結されるコントロールケーブル61を保持するケーブル保持部3e,3fがそれぞれ形成されている。
【0035】
ハンドル側伝達レバー13は、その上端に設けられた球状の支持部13aを前記回転レバー10の下端に形成された支持受部10bに嵌め込むことによって回転レバー10の下端にジョイント連結されている。そして、このハンドル側伝達レバー13には、ラッチ側伝達レバー12に突設された前記係合部12dが係合するガイド溝孔13bが形成されており、このガイド溝孔13bは、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dとの係合を回避して該係合部12dをガイドするための上下方向に長い長孔部13b1と、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dと係合する段部13b2とで構成されている。又、ハンドル側伝達レバー13には二股状の前側部13cと後側部13dが設けられるとともに、凸状部13eが形成されている。
【0036】
ここで、ラッチ側伝達レバー12とハンドル側伝達レバー13との組付構造を
図6に示すが、ハンドル側伝達レバー13には、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dを通過させるための凸状部13eが形成されているため、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dをハンドル側伝達レバー13の凸状部13eを通過させてガイド溝孔13b内に嵌め込み、ラッチ側伝達レバー12を
図6において時計方向に回転させることによって、ハンドル側伝達レバー13の前側部13cと後側部13dとの間にラッチ側伝達レバー12を挟み込むことによってハンドル側伝達レバー13とラッチ側伝達レバー12が組み付けられる。
【0037】
而して、ハンドル側伝達レバー13は、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dがガイド溝孔13bの段部13b2に係合する連結位置とその係合が解除される非連結位置との間を揺動可能であり、これとベース部材3との間に縮装されたスプリング16によって連結位置方向(
図4の時計方向)に付勢されている。
【0038】
前記作動部材5は、
図5に示すベース部材3の下部に横方向に形成された凹状の作動部材収納部3Bに横方向(ハンドル側伝達レバー13の揺動方向)にスライド可能に収納されており、これのスライドによってハンドル側伝達レバー13に係合して該ハンドル側伝達レバー13の位置を連結/非連結位置に切り替える部材である。尚、
図5に示すように、ベース部材3の作動部材収納部3Bの上下にはレール状溝3g(
図5には一方のみ図示)が横方向に形成されている。
【0039】
ここで、作動部材5は、
図5及び
図7に示すように、フロントドア52に当接する第1スライダ17と、空振り機構4のハンドル側伝達レバー13を操作する第2スライダ18と、第1スライダ17と第2スライダ18をフロントドア52側(
図5及び
図7の左方)に付勢する第1スプリング19と、第1スライダ17と第2スライダ18との間に介装された第2スプリング20を備えている。尚、第1スプリング19の付勢力(バネ定数)は第2スプリング20の付勢力(バネ定数)よりも小さく設定されている。
【0040】
第1スライダ17は、矩形筒状の本体部17Aと該本体部17Aから突出するピン状の当接部17Bを備えており、当接部17Bは、
図2に示すようにリヤドア53のアウタパネル53aに形成された貫通孔53a1を通過してアウタパネル53a外へと突出しており、その前端が閉鎖状態にあるフロントドア52のインナパネル52bに当接している。
【0041】
第1スライダ17の本体部17Aの上下には係合爪17aと横方向に長いレール状凸部17bが形成されており、同本体部17Aの左右及び上下の内壁にはレール状凸部17c(
図5には一方のみ図示)が形成されている。又、本体部17Aの一側部には横方向に長いガイド溝17dが形成されている。この第1スライダ17は、本体部17Aの上下に形成されたレール状凸部17bをベース部材3の作動部材収納部3Bの上下に形成されたレール状溝3gに嵌合させることによってベース部材3に対して横方向にスライド可能に収納保持されており、
図7(a)に示すように本体部17Aの上下に形成された係合爪17aがベース部材3の段部3hに係合することによって該第1スライダ17のベース部材3からの抜け出しが防がれている。
【0042】
第2スライダ18は、矩形筒状に成形されており、その上下には係合爪18aが形成されており、その上下面と左右両側面にはレール状溝18bが横方向に形成されている。又、第2スライダ18の一側面には円柱状の水平な操作部18cが一体に突設されている。この第2スライダ18は、操作部18cを第1スライダ17の本体部17Aに形成されたガイド溝17dに係合
させた状態で、その上下面と左右両側面に形成されたレール状溝18bに第1スライダ17の本体部17Aの内壁の上下及び左右に形成されたレール状凸部17cを嵌合させることによって、第1スライダ17の内部にスライド可能に収容されており、
図7(a)に示すように、その上下に形成された係合爪18aが第1スライダ17の係合爪17aに係合することによって該第2スライダ18の第1スライダ17からの抜け出しが防がれている。尚、
図7(a)に示すように、ベース部材3の操作部材収納部3Bの端面は、第2スライダ18に係合して該第2スライダ18のハンドル側伝達レバー13側(
図7(a)の右方)への所定以上の移動を規制する規制部3iを構成している。
【0043】
次に、以上のように構成された本発明に係るドアロック装置1の作用を
図8〜
図12に基づいて以下に説明する。
【0044】
図8はドアロック装置のアンロック状態を示す背面図、
図9は同ドアロック装置のアンロック状態からインナハンドルを操作した状態を示す背面図、
図10は同ドアロック装置のロック状態を示す背面図、
図11は同ドアロック装置のロック状態からインナハンドルを操作した状態を示す背面図、
図12は同ドアロック装置のロック状態でフロントドアが開放された状態を示す背面図である。
【0045】
図1及び
図2に示すフロントドア52が開放状態(アンロック状態)、リヤドア53が閉鎖状態(ロック状態)にあるとき、ドアロック装置1においては第1スライダ17の当接部17Bはフロントドア52から離間するために
図7(a)及び
図8に示すように(
図2に鎖線にて示すように)外方へと突出している。このとき、作動部材5は
図8の左限位置にあるために第2スライダ18の操作部18cはハンドル側伝達レバー13から離間している。このため、ハンドル側伝達レバー13は、スプリング16の付勢力によって連結位置に移動しており、このとき、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dはハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの段部13b2に係合してラッチ側伝達レバー12とハンドル側伝達レバー13は連結状態にある。
【0046】
図8に示す状態から乗員がインナハンドル2を
図9の紙面奥側へと引いてこれを支持軸6を中心として回動させると、このインナハンドル2の回動運動は回転レバー10の回動運動に変換され、該回転レバー10に連結されたハンドル側伝達レバー13が上方へと移動する。すると、ハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの段部13b2がラッチ側伝達レバー12の係合部12dに係合し、ラッチ側伝達レバー12がネジ14を中心としてコイルスプリング15(
図5参照)の付勢力に抗して
図9の反時計方向に回動するため、該ラッチ側伝達レバー12の第1連結部12bと第2連結部12cに連結されたコントロールケーブル60,61が共に引かれて上下のラッチユニット58,59(
図1参照)が操作されてリヤドア53のロックが解除されて該リヤドア53の開放が許容される。
【0047】
次に、リヤドア53が閉じられて閉鎖状態となり、開放されていたフロントドア52が閉じられて閉鎖状態になると、
図2に実線にて示すようにフロントドア52のインナパネル52bが第1スライダ17の当接部17Bに当接してこれを押圧する。このとき、作動部材5においては、前述のように第1スプリング19の付勢力が第2スプリング20の付勢力よりも小さく設定されているため、
図7(b)に示すように、第1スライダ17が図の右側に押圧され、第2スプリング20は縮むことなく第1スプリング19のみが圧縮されて第1スライダ17と第2スライダ18が一体的に図の右方向に移動する。そして、インナハンドル2の操作が解除されると、該インナハンドル2がスプリング9の付勢力によって初期位置側に向けて回動し、このインナハンドル2の回動に連動して回動レバー10が回転してハンドル側伝達レバー13が下方へと移動し、乗員がインナハンドル2を操作する前の状態(
図8に示す状態)に戻る。
【0048】
そして、
図7(b)に示すように第2スライダ18の右端がベース部材3の作動部材収納部3Bに形成された規制部3iに当接すると、該第2スライダ18の操作部18cが
図10に示すようにハンドル側伝達レバー13に当接して該ハンドル側伝達レバー13をスプリング16の付勢力に抗して非連結位置(ラッチ側伝達レバー12の係合部12dがハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1に係合する位置)に移動させる。
【0049】
その後、第1スライダ17は、第2スプリング20を圧縮しながら所定の距離だけ移動するよう設定されている。このため、フロントドア52と第1スライダ17との距離が部品精度によってバラついても、このバラツキが第1スライダ17の移動によって吸収される。即ち、フロントドア52と第1スライダ17との寸法精度が左右方向に
図7(b)に示すa,bの範囲でずれても、第2スライダ18は所定の位置まで確実に移動するとともに、該第2スライダ18の過度の移動による部品の破損が防がれる。
【0050】
フロントドア52が閉じられたために
図10に示すようにドアロック装置1のラッチ側伝達レバー12とハンドル側伝達レバー13とが非連結状態となってから乗員がインナハンドル2を
図11の紙面奥側へと引いてこれを支持軸6を中心として回動させると、このインナハンドル2の回動運動が回転レバー10の回動運動に変換され、該回転レバー10の下端に連結されたハンドル側伝達レバー13が上方へと移動する。
【0051】
ところが、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dは、ハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1内を移動するだけで、ハンドル側伝達レバー13の操作力がラッチ側伝達レバー12に伝達されないため、該ラッチ側伝達レバー12は回動せず、ラッチユニット58,59が動作しないためにリヤドア53のロック状態が維持されて該リヤドア53を開放することができない。
【0052】
フロントドア52が開放されるまでは乗員がインナハンドル2を操作してもリヤドア53を開放することができないが、インナハンドル2が操作された状態で、フロントドア52が開放されると、該フロントドア52による作動部材5への押圧が解除されるために該作動部材5は
図12に示すように外方(図示矢印方向)に突出する。このとき、ハンドル側伝達レバー13は、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dがハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1内に位置しているために連結位置方向への移動が規制されて非連結位置に保持されているが、作動部材5とハンドル側伝達レバー13は分離可能に構成されているため、作動部材5のみが第1スプリング19の付勢力によって
図12の左方向に移動する。
【0053】
そして、インナハンドル2の操作が解除されると、インナハンドル2がスプリング9の付勢力によって初期位置側に回動し、このインナハンドル2の回動に連動して回転レバー10が回動してハンドル側伝達レバー13が下方へと移動し、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dとハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1との係合が解除される。すると、ハンドル側伝達レバー13は、スプリング16の付勢力によって連結位置へと移動して
図8に示すようにラッチ側伝達レバー12の係合部12dがガイド溝孔13bの段部13b2に係合するため、該ハンドル側伝達レバー13とラッチ側伝達レバー12が連結状態となる。そして、この状態から乗員がインナハンドル2を操作すると、
図9に示すようにハンドル側伝達レバー13が上方へと移動してラッチ側伝達レバー12をネジ14を中心として
図9の反時計方向に回動させるため、該ラッチ側伝達レバー12の第1連結部12bと第2連結部12cに連結されたコントロールケーブル60,61が共に引かれて上下のラッチユニット58,59(
図1参照)が操作されてリヤドア53のロックが解除されて該リヤドア53の開放が許容される。
【0054】
以上のように、本発明に係るドアロック装置1をリヤドア53の前端部に配置し、フロントドア52に当接する作動部材5をベース部材3に配置したため、作動部材5の動作をドアロック装置1に伝達するロッド等の連結手段が不要となり、作動部材5を含むドアロック装置1をリヤドア53の前端部にコンパクトに配置することができ、リヤドア53の形状やリヤドア53内の部品レイアウトの自由度が高められる。
【0055】
又、作動部材5をスライド部材とすることによって構成を単純化することができるとともに、作動部材5の一部を構成する第1スライダ17のピン状の当接部17Bをリヤドア53のアウタパネル53aに形成された貫通孔53a1(
図2参照)から外部に突出させることによって、リヤドア53から突出する作動部材5を小さくすることができ、見栄えを高めることができる。
【0056】
更に、本発明に係るドアロック装置1によれば、ハンドル側伝達レバー13を連結/非連結位置に切り替えるためのスライドピンが不要となるため、部品点数を削減して構造の単純化を図ることができる。
【0057】
そして、本発明に係るドアロック装置1においては、第1スライダ17と第2スライダ18との間に第2スプリング20を介在させ、第2スライダ
18の所定以上の移動を規制する規制部3iをベース部材3に設けたため、空振り機構4のハンドル側伝達レバー13を操作する第2スライダ18の必要以上の移動を規制することができるとともに、車体に対して閉鎖されているフロントドア52の後端部とリヤドア53に配置されたドアロック装置1の作動部材5との距離のバラツキを第2スプリング20によって吸収することができ、空振り機構4を常に確実に作動させることができる。
【0058】
又、本発明に係るドアロック装置1によれば、空振り機構4と作動部材5が配置されたベース部材3に更にインナハンドル2を配置したため、部品の集約化を図ることができ、ドアロック装置1をリヤドア53内によりコンパクトに配置することができるという効果も得られる。