(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気自動車などの電子機器を搭載した車両であっても、従来のエンジンを搭載した車両と同様なレイアウトで構成することで、車両開発の現場での効率化を図ることができる。つまり、空調装置のコンデンサを電子機器冷却用ラジエターの前側に配置するのが好ましい。
【0007】
ところが、電子機器とエンジンとでは耐熱温度が異なり、電子機器の方を低温に維持する必要がある(例えばエンジン水温は80℃、電子機器は60℃。)。
【0008】
空調装置のコンデンサを電子機器冷却用ラジエターの前側に配置した状態で空調装置を作動させると、例えば夏季の停車時などの空調負荷が高いときにコンデンサの表面温度が上昇し、ひいてはコンデンサを通過した空気の温度が60℃以上の高温になる可能性がある。
【0009】
こうなると、電子機器冷却用ラジエターに60℃以上の高温の空気が当たることになるので、それよりも低い温度の電子機器用の冷却水が流れている電子機器冷却用ラジエターでは放熱できないばかりか、場合によっては電子機器冷却用ラジエターで吸熱してしまって電子機器用の冷却水温度が適正範囲よりも上昇し、車両の走行が不能になることも考えられる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空調装置の車室外熱交換器を電子機器冷却用のラジエターの前側に配置するレイアウトとして車両開発の効率化を図る場合に、空調性能を確保しながら、電子機器の冷却も行えるようにして車両が走行不能になるのを回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、空調装置の作動中に電子機器を冷却できないと判定したときに、送風量、電子機器冷却用の媒体の送給量、コンプレッサからの冷媒の吐出量の少なくとも1つを変化させることによって電子機器の冷却を行えるようにした。
【0012】
第1の発明は、発熱する電子機器を冷却する媒体を送給するポンプと、該ポンプから送給された媒体が流入する電子機器冷却用ラジエターを有する電子機器冷却装置と、
車両の車速に関する情報を出力する車速情報出力装置と、
冷媒を圧縮するコンプレッサと、該コンプレッサで圧縮した冷媒が流入する車室外熱交換器と、車室外熱交換器を通過した冷媒が減圧された状態で流入する車内熱交換器とを有する冷凍サイクル装置とを備え、
上記車室外熱交換器は上記電子機器冷却用ラジエターの車両前側に配置され、該車室外熱交換器及び電子機器冷却用ラジエターには車両前側から冷却風が当たるように車両に搭載された車両用空調装置において、
上記電子機器を冷却する媒体の温度を検出する温度検出手段と、
上記車室外熱交換器の放熱度合いを検出する放熱度合い検出手段と、
上記車室外熱交換器及び上記電子機器冷却用ラジエターに冷却風を送風するためのクーリングファンと、
上記温度検出手段で検出された媒体の温度と、上記放熱度合い検出手段で検出された上記車室外熱交換器の放熱度合いとに基づいて上記電子機器を冷却する媒体を所定温度以下に冷却できないと判定したとき
で、かつ、上記車速情報出力装置から得られた車速が所定車速以下のときに、上記コンプレッサの冷媒吐出量の減少と、上記クーリングファンの送風量の増加と
を順に行うように構成された制御装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、電子機器を冷却する媒体を所定温度以下に冷却できないと判定したときにクーリングファンの送風量を増加させると、車室外熱交換器を通過する冷却風量が増加し、車室外熱交換器を通過した空気の温度が低下する。これにより、電子機器冷却用ラジエターに当たる冷却風の温度が低下することになるので、電子機器を冷却する媒体の温度が低下し、電子機器の冷却が可能になる
。
【0014】
また、電子機器を冷却する媒体を所定温度以下に冷却できないと判定したときにコンプレッサの冷媒吐出量を減少させると、車室外熱交換器における放熱量が低下し、車室外熱交換器を通過した空気の温度が低下する。これにより、電子機器冷却用ラジエターに当たる冷却風の温度が低下することになるので、電子機器を冷却する媒体の温度が低下し、電子機器の冷却が可能になる。
【0015】
したがって、空調を行いながら、電子機器の冷却が可能になる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、
上記制御装置は、上記温度検出手段で検出された媒体の温度と、上記放熱度合い検出手段で検出された上記車室外熱交換器の放熱度合いとに基づいて上記電子機器を冷却する媒体を所定温度以下に冷却できないと判定したときで、かつ、上記車速情報出力装置から得られた車速が所定車速以下のときに、上記コンプレッサの冷媒吐出量の減少の先立ち、上記ポンプの媒体送給量の増加を優先して行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、ポンプの媒体送給量の増加
は騒音が発生しにくい。このポンプの媒体送給量の増加を優先して行うようにしたことで、車室内の静粛性を保ちながら電子機器の冷却が可能になる
。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、電子機器を冷却する媒体を所定温度以下に冷却できないと判定したときに、
コンプレッサの冷媒吐出量の減少と、クーリングファンの送風量の増加とを順に行うようにしたので、空調を行いながら、電子機器を冷却して車両が走行不能になるのを回避することができる。
【0019】
第2の発明によれば、ポンプの媒体送給量の増加を優先して行うようにしたので、車室内の静粛性を保ちながら電子機器を冷却することができる
。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
本発明の実施形態にかかる車両用空調装置1の概略構造を示す模式図である。車両用空調装置1が搭載された車両は、走行用バッテリ3及び走行用モーター4(共に
図2に示す)を備えた電気自動車である。
【0023】
車両には、走行用バッテリ3の残量を検出するバッテリ残量センサ(バッテリ残量検出手段)5が設けられている。バッテリ残量センサ5は、例えば走行用バッテリ3の電圧を検出し、この検出値に基づいて残量を得るように構成することができる。
【0024】
また、
図10に示すように、車両には、走行用インバータ装置やDC/DC変換器等の発熱する電子機器10と、電子機器10を冷却するための電子機器冷却装置2とが搭載されている。さらに、冷凍サイクル装置20も搭載されている。
【0025】
車両用空調装置1は、上記電子機器冷却装置2及び冷凍サイクル装置20の他に、車室内加熱用熱交換器21と、ケーシング22と、エアミックスドア23と、クーリングファン24と、空調制御装置25とを備えている。
図2に示すように、空調制御装置25には、上記バッテリ残量センサ5が接続されている。
【0026】
まず、電子機器冷却装置2の構造について説明する。電子機器冷却装置2は、電子機器10を冷却するための冷却水(媒体)が流通する電子機器冷却用ラジエター11と、冷却水を送給する電動ポンプ12と、冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ(温度検出手段)15とを備えている。電子機器10が有する冷却水通路と電動ポンプ12と電子機器冷却用ラジエター11とは冷却水配管16によって環状となるように順に接続されている。電子機器冷却用ラジエター11は、車両の前端部近傍に配設されており、車両の走行時には走行風が当たるようになっている。
【0027】
電動ポンプ12は、走行用バッテリ3から電力供給され、空調制御装置25によって制御される。電動ポンプ12の回転数は、空調制御装置25で把握できるようになっている。電動ポンプ12の消費電力は後述する電動コンプレッサ30の消費電力よりも低いものとなっている。
【0028】
この空調制御装置25には、冷却水温度センサ15が接続され、冷却水が所定温度以上になると電動ポンプ12が作動する。冷却水の温度が例えば60℃以下となるように電動ポンプ12が制御される。この値は一例であり、電子機器10の種類等に応じて変更することができる。
【0029】
次に、冷凍サイクル装置20について説明する。冷凍サイクル装置20は、電動コンプレッサ(コンプレッサ)30と、車室外に配設されて凝縮器として機能する車室外熱交換器31と、膨張弁32と、車室内に配設されて空調用空気を冷却するエバポレータとして機能する車室内冷却用熱交換器34とを冷媒配管35によって環状に接続してなるものである。
【0030】
電動コンプレッサ30は、従来から周知の車載用のものであり、回転数を変更することによって単位時間当たりの吐出量を変化させることができるものである。電動コンプレッサ30は、空調制御装置25に接続されてON及びOFFの切り替えと、回転数が制御されるようになっている。電動コンプレッサ30には、走行用バッテリ3から電力が供給される。
【0031】
電動コンプレッサ30には、該コンプレッサ30の回転数を検出するコンプレッサ回転数検出センサ(コンプレッサ回転数検出手段)30aが設けられている。このコンプレッサ回転数検出センサ30aは空調制御装置25に接続されている。
【0032】
車室外熱交換器31は、上記電子機器冷却用ラジエター11と同様に車両の前端部近傍に配設され、走行風が当たるようになっている。車室熱交換器31の方が電子機器冷却用ラジエター11よりも車両前側、即ち、走行風の流れ方向上流側に位置している。
【0033】
車室外熱交換器31には、電動コンプレッサ30から吐出された冷媒が冷媒配管35を介して導入される。車室熱交換器31は、導入された冷媒を外部空気(車室外の空気)と熱交換させることによって凝縮するように構成された凝縮器である。
【0034】
尚、
図1には冷媒を流れを白抜きの矢印で示している。
【0035】
膨張弁32は、車室外熱交換器31から流出した冷媒を減圧させるためのものである。
【0036】
車室内冷却用熱交換器34は、膨張弁32を通過して減圧された冷媒が導入される。車室内冷却用熱交換器34は、導入された冷媒を外部空気(空調用空気)と熱交換させることによって空調用空気を冷却するように構成されている。車室内冷却用熱交換器34から流出した冷媒は電動コンプレッサ30に吸入される。
【0037】
冷凍サイクル装置20には、冷媒圧力センサ40と、冷媒温度センサ41と、高圧側圧力センサ(放熱度合い検出手段)42と、空気温度センサ(放熱度合い検出手段)43とが設けられている。
図2にも示すように、冷媒圧力センサ40、冷媒温度センサ41、高圧側圧力センサ42及び空気温度センサ43は、空調制御装置25に接続されている。
【0038】
冷媒圧力センサ40は、膨張弁32の冷媒入口部における冷媒の圧力を検出するためのものである。冷媒温度センサ41は、膨張弁32の冷媒入口部における冷媒の温度を検出するためのものである。高圧側圧力センサ42は、電動コンプレッサ30と車室外熱交換器31との間の冷媒配管35に設けられており、電動コンプレッサ30から吐出された冷媒の圧力を検出するためのものである。尚、冷媒圧力センサ40、冷媒温度センサ41は省略してもよい。
【0039】
空気温度センサ43は、例えば車室外熱交換器31の車両後側、即ち、外部空気流れ方向の下流側(外部空気出口側)に取り付けられており、車室外熱交換器31を通過した空気の温度を検出するためのものである。車室外熱交換器31に高温の冷媒が流入している場合には、車室外熱交換器31の表面温度が上昇して車室外熱交換器31を通過した空気の温度が上昇する一方、低温の冷媒が流入している場合には、車室外熱交換器31の表面温度がそれほど上昇せず、車室外熱交換器31を通過した空気の温度の上昇度合いは低い。つまり、空気温度センサ43によって車室外熱交換器31の放熱度合いを検出することが可能となっている。
【0040】
ケーシング22は、車室内においてインストルメントパネル(図示せず)の内部に配設されている。ケーシング22には、ブロア28が設けられている。ブロア28は、車室内の空気と車室外の空気との一方を選択して空調用空気としてケーシング22内に送風するためのものである。
【0041】
ケーシング22の内部には、上記車室内冷却用熱交換器34及び車室内加熱用熱交換器21が収容されている。車室内冷却用熱交換器34は、車室内加熱用熱交換器21よりも空気流れ方向上流側に配置されており、ブロア28から送風された空調用空気は全量が車室内冷却用熱交換器34を通過する。
【0042】
車室内加熱用熱交換器21には、図示しない電気ヒータ等の加熱手段により加熱された温水等の熱媒体が流通するようになっている。ブロア28から送風された空調用空気と車室内加熱用熱交換器21内部の温水とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。加熱手段には走行用バッテリ3から電力が供給される。
【0043】
ケーシング22には、車室内冷却用熱交換器34と車室内加熱用熱交換器21との間にエアミックスドア23が収容されている。エアミックスドア23は、車室内冷却用熱交換器34を通過した空気の車室内加熱用熱交換器21への通過量を変更することによって車室内に吹き出す空調風の温度を調節するためのものである。
【0044】
具体的には、エアミックスドア23は、エアミックスドアアクチュエータ45によって動作するものである。エアミックスドアアクチュエータ45は、空調制御装置25に接続されており、空調制御装置25からの出力信号によって動作する。エアミックスドア23が車室内加熱用熱交換器21への通風量を0とする位置にあるときには、車室内冷却用熱交換器34を通過した冷風のみが車室に供給されることになり、一方、エアミックスドア23が車室内加熱用熱交換器21への通風量を確保する位置にあるときには、車室内冷却用熱交換器34を通過した冷風と、車室内加熱用熱交換器21を通過した温風とが車室内加熱用熱交換器21の下流側で混合して車室に供給されることになる。
【0045】
エアミックスドア23の開度は任意に設定することが可能となっており、開度によって車室に供給される空調風の温度調節が可能である。
【0046】
ケーシング22のエアミックスドア23よりも下流側には、デフロスタ吹出口22a、ベント吹出口22b及びヒート吹出口22cが形成されている。これら吹出口22a〜22cはそれぞれ図示しないドアによって開閉され、例えば、デフロスタモード、ベントモード等の様々な吹出モードに切り替えられるようになっている。
【0047】
クーリングファン24は、車室外熱交換器31及び電子機器冷却用ラジエター11に車室外の空気を送って冷却するためのものである。クーリングファン24は、空調制御装置25に接続され、空調制御装置25によってON及びOFFの切り替えと、回転数(送風量)が制御されるようになっている。
【0048】
クーリングファン24の消費電力は電動コンプレッサ30の消費電力よりも低いものとなっている。
【0049】
空調制御装置25は、例えば、乗員による設定温度や外気温、車室内温度、日射量等の情報に基づいてブロア28の風量やエアミックスドア23の開度を設定し、その設定した風量や開度となるようにブロア28及びエアミックスドアアクチュエータ45を制御するものであり、周知の中央演算装置やROM、RAM等によって構成されている。また、空調の負荷に応じて電動コンプレッサ30やクーリングファン24も制御する。
【0050】
空調制御装置25には、車速センサ29が接続されている。車速センサ29は、車両の車速に関する情報を出力する車速情報出力装置であり、車両用空調装置1の構成要素である。
【0051】
以下、空調制御装置25による制御手順について説明する。通常のオートエアコン制御と同様に、メインルーチンにおいて、ブロア28の風量、エアミックスドア23の開度、吹出モードの切り替え、電動コンプレッサ30、クーリングファン24の制御が行われる。クーリングファン24は、基本的には電動コンプレッサ30の作動中には作動するが、電動コンプレッサ30が停止状態であっても、電子機器冷却装置2の冷却水温度センサ15で検出された温度が所定温度以上である場合(冷却が必要な場合)には作動する。
【0052】
空調制御装置25による制御は、基本的には次のとおりである。例えば、夏季に乗員が設定温度を低めた場合には、乗員がより強い冷房を要求しているので空調の冷房負荷が増加することになり、電動コンプレッサ30の回転数を増加させるとともに、車室内加熱用熱交換器21を通過する冷風量が減少する方向にエアミックスドア23を作動させる。また、冬季であれば、空調の冷房負荷は減少することになり、電動コンプレッサ30の回転数は低くなる。
【0053】
図3は、上記メインルーチンに組み込まれるサブルーチンのフローチャートを示している。このフローチャートに示す制御は、空調装置1が作動しているときにのみ行われ、メインルーチンと同様に所定の周期で繰り返されている。
【0054】
スタート後のステップSA1では、車速センサ29、冷媒圧力センサ40、冷媒温度センサ41、高圧側圧力センサ42、空気温度センサ43、冷却水温度センサ15、車速センサ29、コンプレッサ回転数検出センサ30a、バッテリ残量センサ5から出力された信号を入力する。
【0055】
ステップSA1に続くステップSA2では、電子機器10を冷却できるか否かを判定する。このステップSA2では、冷却水温度センサ15で検出された冷却水の温度が60℃以上で、かつ、空気温度センサ43で検出された空気の温度(車室外熱交換器31を通過した外部空気の温度)と、冷却水温度センサ15で検出された冷却水の温度とを比較したときに、外部空気の温度が冷却水の温度以上の場合にNOに進む。すなわち、外部空気の温度が冷却水の温度以上の場合には、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水を外部空気で冷却することができないので、電子機器10を冷却できない状況にある。また、冷却水の温度が60℃よりも低ければ電子機器10を冷却する必要がない状況であり、YESに進む。
【0056】
一方、外部空気の温度が冷却水の温度よりも低ければ、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水と外部空気とを熱交換させて冷却水を冷却することができるので、電子機器10を冷却できる状況にあるとしてYESに進む。ステップSA2でYESと判定された場合には、電子機器10を冷却できる状況にあるので、以下のステップには進まず、ステップSA1に戻る。
【0057】
ステップSA2でNOと判定された場合には、ステップSA3に進む。ステップSA3では、バッテリ残量センサ5の出力信号に基づいて走行用バッテリ3の残量が所定量以上であるか否かを判定する。所定量とは、例えば、満充電時の40%の電力とするのが好ましいが、これに限られるものではない。
【0058】
ステップSA3においてNOと判定された場合には、走行用バッテリ3の残量が所定量よりも少なく、残量に余裕がない状況である。この場合には、ステップSA4に進み、電動コンプレッサ30の回転数、即ち出力を低下させて冷媒吐出量を減少させる。
【0059】
電動コンプレッサ30は、例えばクーリングファン24や電動ポンプ12に比べて消費電力が大きいので、回転数を低下させることによる消費電力の低減効果が大きく、車両の走行可能距離を伸ばすことができる。
【0060】
電動コンプレッサ30の回転数を低下させると単位時間当たりの冷媒吐出量が減少するので、車室外熱交換器31に流入する冷媒の温度が低下する。これにより、車室外熱交換器31の表面温度が低下して車室外熱交換器31を通過した空気の温度が低下するので、外部空気の温度が冷却水の温度よりも低下して電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水を外部空気で冷却することが可能になる。よって、電子機器10を冷却できる。
【0061】
ステップSA3においてYESと判定された場合には、走行用バッテリ3の残量が所定量以上であり、残量に余裕がある状況である。この場合には、ステップSA5に進み、車速判定を行う。具体的には、ステップSA5では、現在の車速Svが、0km/hであるか、0km/hよりも高く、かつ、20km/h以下であるか、20km/hよりも高いか判定する。
【0062】
車速Svが0km/hである場合には、ステップSA6に進み、また、車速Svが0km/hよりも高く、かつ、20km/h以下である場合には、ステップSA7に進み、また、車速Svが20km/hよりも高い場合には、ステップSA8に進む。ステップSA6〜8では、それぞれ電動ポンプ12の回転数を増加させて冷却水の送給量を増加させる。
【0063】
尚、20km/hは一例であり、例えば、10km/h〜30km/hの範囲で設定することができる。また、車速が完全に0km/になっていない状態(徐行)でステップSA6に進むようにしてもよい。
【0064】
電動ポンプ12の回転数を増加させることで、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水の量が増加する。これにより、冷却水の温度を早く低下させることができ、電子機器10を狙い通りのタイミングで冷却できる。
【0065】
つまり、空調制御装置25は、走行用バッテリ3の残量が多い場合には、電動ポンプ12の冷却水送給量の増加を、クーリングファン24の送風量の増加及び電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少よりも優先して行うように構成されている。
【0066】
走行用バッテリ3の残量に余裕がない状況でステップSA4を経た後には、ステップSA9に進み、ステップSA5と同じ車速判定を行う。
【0067】
ステップSA6を経た後、
図4に示すフローチャートのステップSB1に進む。このステップSB1では、
図3におけるステップSA6で増加した電動ポンプ12の回転数が最大であるか否かを判定する。電動ポンプ12の回転数が最大でないNOと判定された場合には、電動ポンプ12の回転数をさらに増加させることが可能であるため、
図3のフローチャートのステップSA1に戻り、上記した制御手順を繰り返す。
【0068】
ステップSB1でYESと判定されて電動ポンプ12の回転数が最大である場合には、これ以上電動ポンプ12の回転数を増加させることができないので、ステップSB2に進み、電動コンプレッサ30の回転数を低下させて冷媒吐出量を減少させる。これにより、車室外熱交換器31を通過した空気の温度が低下するので、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水を外部空気で冷却することが可能になる。その後、
図3のステップSA1に戻る。この最大回転数とは、電動ポンプ12の運転範囲の中で最大回転数のことである。
【0069】
また、
図3のステップSA9で車両が停車していると判定された場合は、
図4に示すフローチャートのステップSB3に進む。このステップSB3では、
図3におけるステップSA4で低下した電動コンプレッサ30の回転数が最小であるか否かを判定する。電動コンプレッサ30の回転数が最小でないNOと判定された場合には、電動コンプレッサ30の回転数をさらに低下させることが可能であるため、
図3のフローチャートのステップSA1に戻り、上記した制御手順を繰り返す。この最小回転数とは、電動ポンプ12の運転範囲の中で最小回転数のことである。
【0070】
ステップSB3でYESと判定されて電動コンプレッサ30の回転数が最小である場合には、これ以上電動コンプレッサ30の回転数を低下させることができないので、ステップSB4に進み、電動ポンプ12の回転数を増加させて電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水の量を増加させる。これにより、電子機器10の冷却が可能になる。その後、
図3のステップSA1に戻る。
【0071】
また、
図3におけるステップSA7を経た後、
図5に示すフローチャートのステップSC1に進む。このステップSC1では、
図3におけるステップSA7で増加した電動ポンプ12の回転数が最大であるか否かを判定する。電動ポンプ12の回転数が最大でないNOと判定された場合には、
図3のフローチャートのステップSA1に戻り、上記した制御手順を繰り返す。
【0072】
ステップSC1でYESと判定されて電動ポンプ12の回転数が最大である場合には、ステップSC2に進み、電動コンプレッサ30の回転数を低下させる。これにより、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水を外部空気で冷却することが可能になる。その後、
図3のステップSA1に戻る。
【0073】
また、
図3のステップSA9で車速が0km/よりも高く、かつ、20km/h以下と判定された場合には、
図5に示すフローチャートのステップSC3に進む。このステップSC3では、
図4のステップSB3と同様に電動コンプレッサ30の回転数が最小であるか否かを判定する。電動コンプレッサ30の回転数が最小でないNOと判定された場合には、
図3のフローチャートのステップSA1に戻り、上記した制御手順を繰り返す。
【0074】
ステップSC3でYESと判定された場合には、ステップSC4に進み、電動ポンプ12の回転数を増加させる。
【0075】
ステップSC4に続くステップSC5では、電動ポンプ12の回転数が最大であるか否かを判定する。電動ポンプ12の回転数が最大でないNOと判定された場合には、
図3のフローチャートのステップSA1に戻る。
【0076】
ステップSC5でYESと判定されて電動ポンプ12の回転数が最大である場合には、ステップSC6に進み、クーリングファン24の回転数を増加させる。クーリングファン24の回転数を増加させることにより、車室外熱交換器31及び電子機器冷却用ラジエター11への送風量が増加する。これにより、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水を外部空気で冷却することが可能になる。よって、電子機器10を冷却できる。
【0077】
また、ステップSA8を経た後、
図6に示すフローチャートのステップSD1に進む。このステップSD1では、
図3におけるステップSA8で増加した電動ポンプ12の回転数が最大であるか否かを判定する。電動ポンプ12の回転数が最大でないNOと判定された場合には、
図3のフローチャートのステップSA1に戻り、上記した制御手順を繰り返す。
【0078】
ステップSD1でYESと判定されて電動ポンプ12の回転数が最大である場合には、ステップSD2に進み、クーリングファン24の回転数を増加させる。ステップSD2に続くステップSD3では、クーリングファン24の回転数が最大であるか否かを判定する。クーリングファン24の回転数が最大でないNOと判定された場合には、
図3のフローチャートのステップSA1に戻る。
【0079】
ステップSD3でYESと判定されてクーリングファン24の回転数が最大である場合には、ステップSD4に進み、電動コンプレッサ30の回転数を低下させる。これにより、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水を外部空気で冷却することが可能になる。その後、
図3のステップSA1に戻る。
【0080】
また、
図3のステップSA9で車速が20km/hよりも高いと判定された場合には、
図6に示すフローチャートのステップSD5に進む。このステップSD5では、
図4のステップSB3と同様に電動コンプレッサ30の回転数が最小であるか否かを判定する。電動コンプレッサ30の回転数が最小でないNOと判定された場合には、
図3のフローチャートのステップSA1に戻り、上記した制御手順を繰り返す。
【0081】
ステップSD5でYESと判定された場合には、ステップSD6に進み、クーリングファン24の回転数を増加させる。
【0082】
ステップSD6に続くステップSD7では、クーリングファン24の回転数が最大であるか否かを判定する。クーリングファン24の回転数が最大でないNOと判定された場合には、
図3のフローチャートのステップSA1に戻る。
【0083】
ステップSD7でYESと判定されてクーリングファン24の回転数が最大である場合には、ステップSD8に進み、電動ポンプ12の回転数を増加させる。これにより、電子機器冷却用ラジエター11を流通する冷却水を外部空気で冷却することが可能になる。その後、
図3のフローチャートのステップSA1に戻る。
【0084】
このように、冷却水温度センサ15で検出された冷却水の温度と、空気温度センサ43で検出された車室外熱交換器31の放熱度合いとに基づいて電子機器10を冷却する冷却水を所定温度(例えば約60℃)以下に冷却できないと判定したときに、電動ポンプ12の冷却水送給量の増加、電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少及びクーリングファン24の送風量の増加のうち、少なくとも1つが行われることになる。
【0085】
例えば、
図3のステップSA6で電動ポンプ12の冷却水送給量を増加させた後、
図4のステップSB1に進んでNOと判定されて
図3のステップSA1に戻った場合に、続くステップSA2で電子機器10を冷却できる状況になっていれば、電動ポンプ12の冷却水送給量の増加のみが行われることになる。
【0086】
また、
図3のステップSA4で電動コンプレッサ30の冷媒吐出量を減少させた後、
図4のステップSB3に進んでNOと判定されて
図3のステップSA1に戻った場合に、続くステップSA2で電子機器10を冷却できる状況になっていれば、電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少のみが行われることになる。
【0087】
また、図示しないが、
図3のステップSA2で電子機器10を冷却できないと判定した場合に、クーリングファン24の回転数を増加させた後、ステップSA1に戻るようにしてもよい。また、クーリングファン24の回転数を最大回転数まで増加させた後、電動コンプレッサ30の冷媒吐出量を減少させること、及び電動ポンプ12の冷却水送給量を増加させることのいずれか一方、または両方を行うようにしてもよい。
【0088】
また、
図5のステップSC2の後に、ステップSC6のクーリングファン24の回転数増加を行うようにしてもよい。これにより、車速が所定車速(20km/h)以下で、かつ、電子機器10の冷却水を所定温度以下に冷却できないと判定したときに、電動ポンプ12の冷却水送給量の増加、電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少、クーリングファン24の送風量の増加の順に行うことができる。
【0089】
また、
図3のステップSA5で停車していると判定した場合には、
図4のフローチャートの制御が行われるので、クーリングファン24の送風量の増加が禁止される。また、ステップSA9で停車していると判定した場合にも同様にクーリングファン24の送風量の増加が禁止される。すなわち、空調制御装置25は、停車していると判定した場合で、かつ、電子機器10の冷却水を所定温度以下に冷却できないと判定したときに、クーリングファン24の送風量の増加を禁止するように構成されている。
【0090】
また、
図3のステップSA3において走行用バッテリ3の残量に余裕がないと判定した場合には、ステップSA4において、クーリングファン24や電動ポンプ12の制御より優先して電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少が行われる。すなわち、空調制御装置25は、バッテリ残量センサ5で検出された走行用バッテリ3の残量が所定残量以下であると判定した場合で、かつ、電子機器10の冷却水を所定温度以下に冷却できないと判定したときに、電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少を優先して行うように構成されている。
【0091】
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用空調装置1によれば、電子機器10の冷却水を所定温度以下に冷却できないと判定したときに、クーリングファン24の送風量の増加、電動ポンプ12の冷却水送給量の増加及び電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少のうち、少なくとも1つを行うようにしたので、空調を行いながら、電子機器10を冷却して車両が走行不能になるのを回避することができる。
【0092】
また、電動ポンプ12の冷却水送給量の増加を優先して行うようにしたので、クーリングファン24の送風量の増加、電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少に比べて騒音が発生しにくくなる。これにより、車室内の静粛性を保ちながら電子機器10を冷却することができる。
【0093】
また、車室外熱交換器31の外部空気出口側の空気温度を検出する空気温度センサ43の出力信号を用いて電子機器10が冷却可能か否か判定するようにしたので、その判定を正確に行うことができる。
【0094】
また、車速が所定車速以下のときに、クーリングファン24の送風量の増加の優先順位を下げたので、車室の静粛性を高めながら、電子機器10の冷却を行うことができるようになる。
【0095】
また、停車時にクーリングファン24の送風量の増加を禁止したので、クーリングファン24の風切り音が騒音となって聞こえるのを抑制することができる。
【0096】
また、走行用バッテリ3の残量が少ないときに電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少を優先して行うことで走行用バッテリ3の消費を抑制することができる。これにより、電気自動車の走行距離を伸ばすことができる。
【0097】
尚、上記実施形態では、車室外熱交換器31の外部空気出口側の空気温度を検出する空気温度センサ43を放熱度合い検出手段としているが、これに限らず、冷凍サイクル装置20の高圧側の冷媒圧力を検出する高圧側検出センサ42を放熱度合い検出手段としてもよい。この場合、電子機器冷却用ラジエター11に当たる冷却風の温度を推定することができる。そして、その結果に基づいて、電子機器10の冷却水を所定温度以下に冷却できるか否かの判定を行うことができる。
【0098】
また、上記実施形態では、クーリングファン24が1つの場合に回転数を変化させることによって送風量を変化させているが、これに限らず、例えば、クーリングファン24を複数設けてそれらを独立してON/OFFすることによって送風量を変化させてもよい。
【0099】
また、車速が例えば50km/hのように車室外熱交換器31及び電子機器冷却用ラジエター11に走行風が十分に当たっている状況で、電子機器10の冷却不足が生じる場合には、クーリングファン24の送風量の増加を行うことなく、電動ポンプ12の冷却水送給量の増加、及び/または、電動コンプレッサ30の冷媒吐出量の減少を行うようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、車両用空調装置1を電気自動車に搭載する場合について説明したが、これに限らず、例えばエンジンと走行用モーターとを備えたハイブリッド自動車に車両用空調装置1を搭載することも可能である。