(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[紫外線照射型標識用粘着シート]
まず、本発明の紫外線照射型標識用粘着シートについて説明する。
本発明の紫外線照射型標識用粘着シートは、防汚層、発光層、紫外線反射層及び粘着剤層をこの順で有する標識用粘着シートであって、前記防汚層が、下記の性状を有すると共に、粘着剤層がアクリル系粘着剤層であることを特徴とする。
図1は、本発明の標識用粘着シートの構成の一例を示す断面模式図であって、本発明の標識用粘着シート100は、剥離シート6の剥離処理面上に、粘着剤層1、紫外線反射層2、発光層3及び防汚層4が順に積層されており、さらに防汚層4上に、製膜工程用フィルム5が、防汚層4の表面を保護する目的で貼着されてなる構造を有している。
【0013】
次に、当該紫外線照射型標識用粘着シート(以下、単に「標識用粘着シート」と称することがある。)を構成する各層について説明する。
[防汚層]
当該標識用粘着シートにおいて、最表面層を構成する防汚層は複数層となっていてもよく、その表層部にアクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂層又は光触媒層を有する、厚み3〜50μmの樹脂層である。
当該防汚層として、その表層部に樹脂層が選択される場合には、該表層部を構成する樹脂層としては、耐候性及び防汚性などの観点から、前記3種の樹脂の中では、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂の順で好ましい。
【0014】
前記アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート樹脂が好ましく、アクリルウレタン系樹脂としては、以下に示す方法で得られる樹脂を用いることができ、ポリエステル系樹脂としては、一般にポリエチレンテレフタレート樹脂が用いられる。
【0015】
(アクリルウレタン系樹脂層)
このアクリルウレタン系樹脂は、例えば水酸基やチオール基などの活性水素基を有するビニル化合物とポリオール、イソシアネート化合物とを重付加反応させてビニル基含有ウレタンポリマーを得た後、アクリル系モノマーとラジカル重合させてアクリル−ウレタン共重合体を得る。更にポリイソシアネート化合物を加え、成形することにより架橋させて、アクリルウレタン系樹脂層を形成することができる。
【0016】
防汚層における表層部以外の樹脂層(以下、「下層部」と称することがある。)としては、当該防汚層全体の厚みが3〜50μmの範囲にあるような厚みであればよく、その材質については特に制限はないが、熱可塑性樹脂であることが好ましく、また、表層部と下層部は同じ材質の樹脂からなる層であってもよいし、異なる種類の樹脂からなる層であってもよい。
【0017】
(光触媒層)
当該防汚層として、その表層部に光触媒層が選択される場合には、該光触媒として、通常光触媒活性材料と共に、所望により光触媒促進剤及び無機バインダーを含む層が設けられる。
光触媒活性材料としては特に制限はなく、従来公知のもの、例えば二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、チタン酸バリウム(BaTi
4O
9)、チタン酸ナトリウム(Na
2Ti
6O
13)、二酸化ジルコニウム、α−Fe
2O
3、酸化タングステン、K
4Nb
6O
17、Rb
4Nb
6O
17、K
2Rb
2Nb
6O
17、硫化カドミウム、硫化亜鉛などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、二酸化チタン、特にアナターゼ型二酸化チタンは実用的な光触媒活性材料として有用である。この二酸化チタンは、太陽光などの日常光に含まれる紫外線領域の特定波長の光を吸収することによって優れた光触媒活性を示す。
【0018】
一方、光触媒促進剤としては、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族金属が好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この光触媒促進剤の添加量は、光触媒活性の点から、通常、光触媒活性材料と光触媒促進剤との合計質量に基づき、1〜20質量%の範囲で選ばれる。また、無機バインダーとしては、例えばシリカ系バインダーなどが挙げられる。
このような光触媒層を形成する場合、例えば市販品の二酸化チタンを含有するTOTO株式会社製、製品名「ハイドロテクトクリアコート」や、アナターゼ型酸化チタンを含有する石原産業株式会社製、製品名「STS−11」や「ST−K211」などを用いることができる。
【0019】
このような光触媒層は、紫外線の照射により励起され、該光触媒層表面は、水との接触角が10度以下となる超親水化が発現され、優れた防汚効果を発揮する。
この光触媒層は、紫外線により励起されると、反応性活性酸素種による強い酸化分解機能が発揮されるので、当該光触媒層の下層に位置する樹脂層(防汚層における表層部以外の樹脂層、すなわち下層部)の劣化を防止するために、該樹脂層と光触媒層との間にシリコーン樹脂やアクリル変性シリコーン樹脂などを介在させることが好ましい。
【0020】
当該防汚層全体の厚みは3〜50μmである。この厚みが3μm未満では、防汚性が不足し、また均一な膜形成が困難となりヘイズが上昇する問題がある。一方50μmを超えると標識用粘着シートの輝度が低下する問題がある。適度な輝度を維持する観点から、当該防汚層の厚みは5〜40μmの範囲が好ましく、7〜30μmの範囲がより好ましい。
また、当該防汚層のヘイズ値は、得られる紫外線照射型標識装置の視認性の観点から5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
当該防汚層には、耐候性を向上させるために、各樹脂層にヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や酸化防止剤を含有させることができる。
なお、当該防汚層の形成方法については、後述する本発明の標識用粘着シートの作製方法において説明する。
【0021】
[発光層]
本発明の標識用粘着シートにおいて、前述した防汚層に接してその下層に設けられる発光層は、該防汚層を透過して照射される紫外線によって発光する層であって、蛍光材料とマトリックス樹脂とを含む層であることが好ましい。
上記蛍光材料としては、蛍光染料や蛍光顔料が挙げられるが、耐候性及び輝度の観点から、蛍光顔料が好適である。この蛍光顔料としては、発光の色別に分けた下記の市販品を用いることができる。
白色発光:根本特殊化学株式会社製、製品名「ALN−B」,「YS−A」,「HG−A」
燈火色発光:根本特殊化学株式会社製、製品名「YS−A」,「HG−A」
青色発光:根本特殊化学株式会社製、製品名「ALN−B」
赤色発光:根本特殊化学株式会社製、製品名「YS−A」
緑色発光:根本特殊化学株式会社製、製品名「HG−A」
【0022】
一方、当該発光層を構成するマトリックス樹脂としては、耐候性、紫外線透過性、蛍光透過性及び機械強度などの観点からウレタン系樹脂が好ましい。また、このウレタン系樹脂と蛍光顔料との使用割合は、輝度の観点から、白色発光の場合は、ウレタン系樹脂100質量部に対し、蛍光顔料を50〜120質量部の割合で用いることが好ましく、60〜110質量部の割合で用いることがより好ましい。また緑色などの有色発光の場合は、ウレタン系樹脂100質量部に対し、蛍光顔料を5〜40質量部の割合で用いることが好ましく、8〜25質量部の割合で用いることがより好ましい。
当該発光層の厚みは、十分な輝度を維持する観点から、10〜150μmであることがより好ましい。
なお、当該発光層の形成方法については、後述する本発明の標識用粘着シートの作製方法において説明する。
【0023】
[紫外線反射層]
本発明の標識用粘着シートにおいて、前述した発光層に接してその下層に設けられる紫外線反射層は、該発光層を透過した紫外線を反射させる層であって、白色顔料又は有色顔料とマトリックス樹脂とを含む層であることが好ましい。
前記白色顔料としては、例えば酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトポン、バライト、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、沈降性シリカ(ホワイトカーボン)、せっこうなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記有色顔料としては、通常緑色顔料が用いられる。この緑色顔料としては、例えばビリジアン(Viridian)、酸化クロム緑、コバルト緑、コバルト・クロム緑、クロム緑などの無機顔料が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
一方、当該紫外線反射層を構成するマトリックス樹脂としては、耐候性、紫外線透過性及び機械強度などの観点から、ウレタン系樹脂が好ましい。また、このウレタン系樹脂と、前記の白色顔料又は有色顔料との使用割合は、紫外線反射能の観点から、ウレタン系樹脂100質量部に対し、白色の顔料の場合は、白色顔料を10〜100質量部の割合で用いることが好ましく、15〜70質量部の割合で用いることがより好ましい。また緑色などの有色顔料の場合は、有色顔料を2〜25質量部の割合で用いることが好ましく、5〜20質量部の割合で用いることがより好ましい。
当該紫外線反射層の厚みは、15〜300μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。15μm以上とすることで、重ね貼りした部分において、上側の標識用粘着シートが光を透過してしまうことにより上側の標識用粘着シートの色と下側の標識用粘着シートの色が混ざって見えてしまうことを防止できる。また300μm以下とすることで日中の反射を適度に抑制し、文字の判別をしやすくすることができる。
なお、当該紫外線反射層の形成方法については、後述する本発明の標識用粘着シートの作製方法において説明する。
【0026】
[粘着剤層]
本発明の標識用粘着シートにおいて、前述した紫外線反射層に接してその下層に設けられる粘着剤層はアクリル系粘着剤層であることを要する。
(アクリル系粘着剤)
本発明における粘着剤層を構成する粘着剤として用いられるアクリル系粘着剤としては、樹脂成分として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含むと共に、架橋剤を含むものが好ましい。
この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。
【0027】
<架橋性官能基含有エチレン性単量体>
必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するエチレン性単量体であり、好ましくはヒドロキシ基含有エチレン性不飽和化合物、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が用いられる。
【0028】
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の作製>
まず、前述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体を、それぞれ所定の割合で用い、従来公知の方法に従って共重合を行い、重量平均分子量が、好ましくは50万〜150万程度、より好ましくは60万〜130万程度の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を製造する。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0029】
<架橋剤>
当該アクリル系粘着剤に含まれる架橋剤としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。これらの中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、金属キレート化合物が好ましい。
【0030】
なお、これらの架橋剤は、単独で又は2種以上併用して用いてもよい。
架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜7質量部、更に好ましくは0.2〜4質量部である。0.01質量部以上であれば、せん断方向の応力に対して形状を維持するのに十分な粘着剤の凝集力が得られ、10質量部以下であれば、十分な粘着力が得られる。
【0031】
<アクリル系粘着剤の調製>
当該アクリル系粘着剤は、前述した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、架橋剤及び必要に応じて用いられる他の添加剤、例えば粘着付与剤、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などを、適当な溶媒を加えて、塗工に適した濃度にすることにより、調製することができる。
このようにして得られたアクリル系粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、耐候性及び粘着性能に優れており、その厚みは、通常20〜40μmである。
【0032】
[剥離シート]
本発明の標識用粘着シートにおいて、前述した粘着剤層を保護するための剥離シートは、剥離シート用基材の表面に剥離剤層を設けることによって作製することができる。
剥離シート用基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙、ラミネート紙などが挙げられる。これらの中で、安価でコシもあるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。剥離シート用基材の厚みは、5〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
前記剥離シート用基材の表面に設けられる剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル基系樹脂などが挙げられるが、これらの中で安価で安定した性能が得られるシリコーン系樹脂が好ましい。剥離剤層の厚みは、0.05〜2.0μmであることが好ましく、0.1〜1.5μmであることがより好ましい。
【0033】
[製膜工程用シート]
本発明の標識用粘着シートにおいて、製膜工程用シートは防汚層、発光層、紫外線反射層を形成するための工程用シートとして用いることができるものである。また標識用粘着シートの使用時まで、防汚層表面を保護する役目も果たす。
製膜工程用シートとしては特に限定されないが、使用時に防汚層表面から容易に剥離させるために、前述の剥離シートと同じものを用いることが好ましい。
【0034】
次に、本発明の標識用粘着シートの作製方法の一例について説明する。
[標識用粘着シートの作製方法]
以下、
図1を参照しながら、当該標識用粘着シートの作製方法について説明する。
【0035】
(表層部に所定の樹脂層を有する場合の防汚層4の形成)
表層部に所定の樹脂層を有する防汚層を形成する場合は、例えば、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、メチルエチルケトンなどの溶媒を含むコーティング液を、製膜工程用フィルム5の剥離処理面上に、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布、乾燥して、防汚層4の表層部を形成することができる。さらにこの上に、該表層部の下層に位置する樹脂層(防汚層4における表層部以外の樹脂層)を形成することにより、防汚層4を形成することができる。表層部の下層に位置する樹脂層(下層部)は、樹脂フィルムを熱融着などにより前記表層部に積層することにより形成してもよく、該下層部を構成する樹脂と、溶媒等を含むコーティング溶液を調製し、これを上記表層部の上に、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布、乾燥して形成してもよい。
なお、該表層部を構成する樹脂層と、該下層部とが同一の樹脂で構成される場合には、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、メチルエチルケトンなどの溶媒を含む上記コーティング液を、製膜工程用フィルム5の剥離処理面上に、乾燥後の厚みが3〜50μmになるように塗布、乾燥して、防汚層4を形成することができる。
【0036】
(表層部に光触媒層を有する場合の防汚層4の形成)
表層部に所定の光触媒層を有する防汚層を形成する場合は、例えば、二酸化チタンを含む市販の光触媒コーティング液を、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布、乾燥し、次いでアクリル変性シリコーン樹脂を、乾燥後の厚みが数μm程度になるように塗布、乾燥して、防汚層4の表層部を形成することができる。さらにこの上に、前記と同様にして該表層部の下層に位置する樹脂層(防汚層4における表層部以外の樹脂層)を形成することにより、防汚層4を形成することができる。
【0037】
また、防汚層4として、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる樹脂フィルム、又はこれらの樹脂を少なくとも表層部に有する樹脂フィルムを用いてもよい。
【0038】
(発光層3の形成)
前記のようにして、製膜工程用フィルム5上に設けられた防汚層4の上面、あるいは防汚層4を構成する樹脂フィルムの表層部とは逆側の面に、下記のようにして発光層3を形成する。
まず、ウレタン系樹脂と所定の発光色を有する蛍光顔料を所定の配合比によって混合し、適当な溶媒を適宜量加えて混練したのち、強制脱泡することにより、塗工に適した粘度を有する発光層形成用コーティング液を調製する。
次いで、前述のようにして形成された防汚層4の上面に、上記の発光層形成用コーティング液を、アプリケーターなどを用いて、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布、乾燥して発光層3を形成する。当該発光層は、例えば道路標識において必要とされる情報の一部又は全部を、異なった蛍光色を呈する蛍光顔料を含むコーティング液によって描いた蛍光表示部とすることができる。
コーティング液を塗布する方法としては、アプリケーターを用いてもよいし、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法、グラビアコート法、フローコート法、カーテンコート法、浸漬法、スクリーン印刷法等の公知の方法が挙げられる。
【0039】
(紫外線反射層2の形成)
前記のようにして形成された発光層3の上面に、下記のようにして紫外線反射層2を形成する。
まず、ウレタン系樹脂と所定の発光色を有する蛍光顔料を所定の配合比によって混合し、適当な溶媒を適宜量加えたのち、強制脱泡することにより、塗工に適した粘度を有する紫外線反射層形成用コーティング液を調製する。
次いで、前述のようにして形成された発光層3(蛍光表示部)の上面に、上記の紫外線反射層形成用コーティング液を、アプリケーターなどを用いて、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布、乾燥して紫外線反射層2を形成する。
【0040】
このようにして形成された紫外線反射層2は、前記の発光層3を透過する紫外線を反射する機能を有すると共に、紫外線の照射により発光する発光層3の輝度を高める隠蔽作用も有する。
【0041】
(粘着剤層1の形成)
前述の剥離シート6の剥離剤塗布面に、前述したアクリル系粘着剤(架橋剤含有)を、アプリケーターなどを用いて、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布、乾燥して粘着剤層1を形成したのち、剥離シート6付き粘着剤層1を前述のようにして形成された紫外線反射層2の上面に貼付することにより、
図1に示す構成を有する本発明の標識用粘着シート100が得られる。
当該標識用粘着シート100において、防汚層4及び粘着剤層1に、それぞれ貼付されている製膜工程用フィルム5及び剥離シート6は、当該標識用粘着シートを保管及び運搬中には、貼付したままにしておき、使用時に剥離する。
【0042】
[紫外線照射型標識装置]
前記の構成を有する本発明の標識用粘着シートは、紫外線の照射によって蛍光発色する、良好な視認性、判読性及び誘目性を有する、外部から紫外線を照射する投光照明方式の紫外線照射型標識装置を与えることができる。
本発明の紫外線照射型標識装置は、前述した紫外線照射型標識用粘着シートが、粘着剤層及び防汚層を介して複数枚重ね貼りされてなることを特徴とする。
前記重ね貼りにおいては、
図1で示す当該標識用粘着シート100における製膜工程用フィルム5及び剥離シート6をそれぞれ剥離し、一方の露出した防汚層4面と、他方の露出した粘着剤層1面とが接するようにして重ね貼りされる。
なお、本発明の標識用粘着シートにおいては、防汚層の表層部に表面エネルギーの低いフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂などを用いていないため、重ね貼り時に高い粘着力が得られる。
また、重ね貼りによる枚数は、通常2〜5枚の範囲で選ばれる。
【0043】
図2は、本発明の紫外線照射型標識用粘着シートを2枚重ね貼りしてなる紫外線照射型標識装置の一例を示す断面模式図(部分拡大図)であり、
図3は該紫外線照射型標識装置の標識部の一例を示す平面模式図である。
図2において、7は紫外線照射型標識本体(以下、単に「標識本体」と称することがある。)を示し、該標識本体7は、支持体(図示を省略する)により支持されている。標識本体7は、照射装置(図示を省略する)の紫外線照射により発光する標識部8を備える。当該標識部8は、標識用粘着シート200と、該標識用粘着シート200の表層部の一部に重ね貼りされた標識用粘着シート300とから構成されている。
図2に示されるように、標識用粘着シート200は、粘着剤層11、紫外線反射層12、発光層13、及び防汚層14を順に有し、標識用粘着シート300は、粘着剤層21、紫外線反射層22、発光層23、及び防汚層24を順に有する。標識用粘着シート300は、粘着剤層21及び防汚層14を介して、標識用粘着シート200の表層部の一部に貼付されている。標識用粘着シート300は、標識用粘着シート200と同様の構成のものが使用される。
【0044】
標識用粘着シート300を標識用粘着シート200に重ね貼りすることにより、
図3に示されるように、文字や図柄が形成された標識部8とすることができる。
本実施形態では、略緑色(
図3では網点で示す)に着色され、発光する標識用粘着シート200を粘着剤層11を介して標識本体7に貼付し、この標識用粘着シート200に、粘着剤層21及び防汚層14を介して、略白色(
図3では網点が施されていない領域で示す) に着色され、発光する標識用粘着シート300を貼付して、本発明の紫外線照射型標識装置が構成される。
【0045】
このような重ね貼りにより得られる本発明の紫外線照射型標識装置においては、隣接する少なくとも一組の標識用粘着シートにおいて、一方のシート(例えば、略白色に着色され、発光する標識用粘着シート300)の輝度が、他方のシート(例えば、略緑色に着色され、発光する標識用粘着シート200)の輝度の3倍以上のコントラスト比を有することが、誘目性、判読性及び視認性の観点から好ましい。
なお、誘目性とは、人の目を引きつける度合い(目立つ度合い)を指し、判読性とは、遠方からでも何の文字であるかを判断できるかの度合いを指す。一方視認性とは、視覚的な「もの・字」などを明確に認識することができるかを指す。
当該紫外線照射型標識装置における紫外線としては、例えば岩崎電気株式会社製のTaO
5スパッタフィルターを備えた水銀ランプから発するブラックライト(近紫外線)が好適である。
【0046】
本発明の紫外線照射型標識装置は、紫外線の照射によって蛍光発色する、良好な視認性、判読性及び誘目性を有する標識装置であって、下記の効果を奏する。
(1)外部照明としてブラックライトを使用しているため、照明器具からの強い可視光線や、霧の発生などによる可視光線の乱反射が、対向車線のドライバーの視界を妨げる危険を低減する。
(2)反射シートを使用した従来の投光照射方式と異なり、標識面に貼付したフィルム自体がブラックライトに反応して発光するため、内照方式の標識と同様、見る角度によって明るさが異なることがない。
(3)板面と照明器具との距離が近く、設置やメンテナンスが容易である。
(4)標識設備の軽量化が可能で、イニシャルコスト、メンテナンスコストの低減化を図ることができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた標識用粘着シートにおける諸特性を、下記に示す方法によって求めた。
【0048】
<重ね貼り時の粘着力測定方法>
各実施例及び比較例で得られた紫外線照射型標識用粘着シートの剥離シートを剥離し、表出した粘着剤層に両面テープ(リンテック株式会社製、製品名「TL−85S−12」)の粘着剤層を貼付した。また両面テープのもう一方の粘着剤層面にはステンレス板(SUS304鋼板、360番研磨、150mm×70mm×0.7mm)を貼り合わせた後、製膜工程用フィルムを剥離し、防汚層を最表面に設けた粘着力測定用被着体を作製した。
各実施例及び比較例で得られた紫外線照射型標識用粘着シートを25mm×300mmの大きさに裁断し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、剥離シートを剥がし、前記被着体に貼付した。貼付に際しては、重さ2kg(19.6N)のローラーを用い、1往復させて、被着体に圧着した。その後、23℃、50%RHの環境下で、貼付後24時間放置した後、同環境下で、引張試験機(株式会社オリエンテック製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定した値(N/25mm)を粘着力とした。
【0049】
<防汚性測定方法>
各実施例及び比較例で得られた紫外線照射型標識用粘着シートの防汚層表面に、油性マジックで直径10mm程度の円を描き、これをティッシュペーパーで拭き取り、拭き取り性の比較を行った。5回以内の拭き取りで円が消えたものA、20回以内の拭き取りで円が消えたものをB、20回で拭き取りの円が消えなかったものをCとした。
【0050】
<輝度測定方法>
実施例及び比較例で得られた白色の紫外線照射型標識用粘着シートと緑色の紫外線照射型標識用粘着シートの製膜工程用フィルムを剥離し、白色の紫外線照射型標識用粘着シートが上になるように部分的に2枚重ね貼りして得られた紫外線照射型標識装置における標識面に、400Wの紫外線照射具により紫外線を照射し、この状態で、白色領域及び緑色領域に対応する標識面上において、任意の複数個所の輝度を、輝度計(コニカミノルタ株式会社製、製品名「輝度計LS−100」)を用いて測定し、平均輝度をそれぞれ求めた。
【0051】
<防汚層のヘイズ値測定方法>
防汚層を、後述する防汚層形成用コーティング液を塗布することによって形成した場合には、防汚層のヘイズ値は次のように測定した。透明ガラス板(ユーコウ商会株式会社製、製品名「フロート板ガラス」)の表面に、各実施例及び比較例で用いた防汚層と同じものを、同じ乾燥後の厚みとなるように塗布、乾燥して表層部が防汚層からなるガラス板を作成した。得られた防汚層付きガラス板のヘイズをJIS K 7136に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名「NDH−2000」)を用いて測定した。
また、防汚層として樹脂フィルムを用いた場合には、該樹脂フィルムのヘイズをJIS K 7136に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名「NDH−2000」)を用いて測定した。
【0052】
実施例1
アクリル系樹脂(株式会社カネカ製、製品名「サンデュレンSD014」)をペレット化し、溶媒(メチルエチルケトン)に溶解し、防汚層形成用コーティング液(濃度30質量%)を調製した。
また、ポリウレタン樹脂(三洋化成株式会社製、製品名「サンプレンIB−582」)100質量部
蛍光顔料(根本特殊化学株式会社製、製品名「YS−A」)100質量部
溶剤(イソプロピルアルコール:トルエン質量比=1:4)40質量部
を混練機で混練したのち、強制脱泡することにより、発光層形成用コーティング液を調製した。
さらに、ポリウレタン樹脂(三洋化成株式会社製、製品名「サンプレンIB−582」)100質量部
溶剤(イソプロピルアルコール:トルエン質量比=1:4)40質量部
白色顔料(大日精化工業株式会社製、製品名「CAB034B」)20質量部
を混練機で混練したのち、強制脱泡することにより紫外線反射層形成用コーティング液を調製した。
次に、製膜工程用フィルム〔剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、厚み38μmのポリエステルフィルムの片面にシリコーン系剥離剤が塗布されたもの)を製膜工程用フィルムとして使用〕の剥離剤塗布面上に、前記の防汚層形成用コーティング液を、乾燥後の厚みが10μmになるように、アプリケーターで塗布、乾燥して、表層部がアクリル系樹脂からなる防汚層を形成した。次いで、この防汚層の上面に、前記の発光層形成用コーティング液を、乾燥後の厚みが75μmになるようにアプリケーターで塗布し、100℃で10分間乾燥して発光層を形成した。さらに、この発光層の上面に、前記の紫外線反射層形成用コーティング液を、乾燥後の厚みが30μmになるようにアプリケーターで塗布し、100℃で10分間乾燥して紫外線反射層を形成した。
次に、別途剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、厚み38μmのポリエステルフィルムの片面にシリコーン系剥離剤が塗布されたもの。製膜工程用フィルムとして使用したものと同じ)の剥離剤塗布面にアクリル系粘着剤組成物(リンテック株式会社製、製品名「SK」)をアプリケーターで乾燥後の厚みが27μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させた。このようにして得られた剥離シート付き粘着剤層を、前述で得られた紫外線反射層上面にラミネートして、
図1に示す構成の本発明の白色の紫外線照射型標識用粘着シートを得た。
また、発光層形成用コーティング液の調製において、蛍光顔料(根本特殊化学株式会社製、製品名「YS−A」)の配合量を15質量部に変更し、新たに緑色顔料(大日精化工業株式会社製、製品名「CAB084C」)を1質量部加え、さらに紫外線反射層形成用コーティング液の調製において、白色顔料(大日精化工業株式会社製、製品名「CAB034B」)の配合量を4質量部とし、新たに緑色顔料(大日精化工業株式会社製、製品名「CAB084C」)を16質量部加えた以外は、前述と同様にして
図1に示す構成の本発明の緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを得た。
当該実施例1及び下記の実施例2〜5、比較例1〜5における防汚層及び評価結果について第1表に示す。
【0053】
実施例2
アクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製、製品名「アクリプレン50HBS006」)をペレット化し、溶媒(メチルエチルケトン)に溶解し、防汚層形成用コーティング液(濃度30質量%)を調製し、実施例1で用いた製膜工程用フィルム上に、乾燥後の厚みが10μmになるようにアプリケーターで塗布、乾燥して、表層部がアクリル系樹脂からなる防汚層を形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0054】
実施例3
厚み50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」)を、防汚層かつ発光層製膜時の工程フィルムとして使用した。該フィルムの易接着コート面上に、実施例1と同様にして、前記発光層形成用コーティング液を用いて発光層を形成したのち、その上面に前記紫外線反射層形成用コーティング液を用いて紫外線反射層を形成し、その上面に剥離シート付き粘着剤層をラミネートして、本発明の白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した以外は、実施例1と同様にして、本発明の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0055】
実施例4
アクリルウレタン系樹脂ペレット(日本ゼオン株式会社製、製品名「UAZ3000」)を、溶媒(メチルイソブチルケトン)に溶解し、防汚層形成用コーティング液(濃度30質量%)を調製し、実施例1で用いた製膜工程用フィルム上に、乾燥後の厚みが10μmになるようにアプリケーターで塗布、乾燥して、表層部がアクリルウレタン系樹脂からなる厚み10μmの防汚層を形成した。次に、実施例1と同様にして該防汚層の上面に発光層を形成し、さらにその上面の紫外線反射層を形成し、次いでその上面に剥離シート付き粘着剤層をラミネートすることにより、本発明の白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0056】
実施例5
実施例1において防汚層を塗布する前に、製膜工程フィルム上に光触媒として二酸化チタンを含む光触媒コーティング剤(TOTO株式会社製、製品名「ハイドロテクトクリアコート」)を乾燥後の厚みが50nmとなるように塗布、乾燥した。
その後、実施例1と同様に防汚層、発光層、紫外線反射層を形成し、剥離シート付き粘着剤層を、紫外線反射層上面にラミネートして、本発明の白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを得た。
【0057】
比較例1
ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム(電気化学工業株式会社製、製品名「DX13S」)を防汚層とし、該フィルム上に、実施例1と同様にして発光層を形成すると共に、前記フィルムを熱溶融により該発光層に接着させ、表層部がポリフッ化ビニリデン樹脂からなる、厚み30μmの防汚層を形成した。以下、実施例1と同様にして、該発光層の上面に紫外線反射層を形成し、その上面に剥離シート付き粘着剤層をラミネートすることにより、白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0058】
比較例2
比較例1において、前述の「DX13S」の代わりに、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム(呉羽化学工業株式会社製、製品名「KFC−FT50Y」)を用いた以外は、比較例1と同様にして、表層部がポリフッ化ビニリデン樹脂からなる、厚み50μmの防汚層を有する白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0059】
比較例3
シリコーン系樹脂で表面処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」)を、防汚層かつ発光層製膜時の製膜工程用フィルムとして使用し、実施例1と同様にして、該製膜工程用フィルム上に発光層を形成したのち、その上面に紫外線反射層を形成し、さらにその上面に剥離シート付き粘着剤層をラミネートすることにより、表層部がシリコーン系樹脂からなる、厚み38μmの防汚層を有する白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0060】
比較例4
フルオロシリコーン系樹脂で表面処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET38YS」)を、防汚層かつ発光層製膜時の製膜工程用フィルムとして使用し、実施例1と同様にして、該製膜工程用フィルム上に発光層を形成したのち、その上面に紫外線反射層を形成し、さらにその上面に剥離シート付き粘着剤層をラミネートすることにより、表層部がフルオロシリコーン系樹脂からなる、厚み38μmの防汚層を有する白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0061】
比較例5
防汚層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして白色ならびに緑色の紫外線照射型標識用粘着シートを作製した。
【0062】
【表1】
【0063】
[注]
1)アクリル系樹脂:株式会社カネカ製アクリル系樹脂、製品名「サンデュレンSD014」
2)アクリル系樹脂:三菱レイヨン株式会社製アクリルフィルム、製品名「アクリプレン50HBS006」
3)ポリエステル系樹脂:東洋紡績株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム、製品名「コスモシャインA4100」の非易接着処理面
4)アクリルウレタン系樹脂:日本ゼオン株式会社製アクリルウレタン系樹脂ペレット、製品名「UAZ3000」
5)光触媒層:TOTO株式会社製、製品名「ハイドロテクトクリアコート」
6)ポリフッ化ビニリデン樹脂:電気化学工業株式会社製ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム、製品名「DX13S」
7)ポリフッ化ビニリデン樹脂:呉羽化学工業株式会社製ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム、製品名「KFC−FT50Y」
8)シリコーン系樹脂:リンテック株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム、製品名「SP−PET381031」のシリコーン系樹脂による表面処理面
9)フルオロシリコーン系樹脂:リンテック株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム、製品名「SP−PET38YS」のフルオロシリコーン系樹脂による表面処理面