特許第5957240号(P5957240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957240
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160714BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20160714BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   A61F13/15 352
   A61F13/472 200
   A61F13/511 100
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-37170(P2012-37170)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-169437(P2013-169437A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】則元 由美
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−024372(JP,A)
【文献】 特表2002−508688(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/043474(WO,A1)
【文献】 特開2013−150779(JP,A)
【文献】 特開2007−037660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側に略長手方向に沿って左右一対のフィットエンボスが施された吸収性物品の製造方法において、
前記透液性表面シートを幅方向中央部が周方向に沿って突出するロールに導入し、該透液性表面シートの幅方向中央部に長手方向に沿って上面側に突出するとともに、前記フィットエンボスの離間幅に対応した幅寸法で凸状湾曲部を形成した状態で、前記吸収体の上面側に積層した後、透液性表面シートの上面側から前記フィットエンボスを施し、エンボス付与後は、前記透液性表面シートが両側に引っ張られることによって、前記凸状湾曲部が消失するようになっていることを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記透液性表面シートは、多数の凸部及び/又は凹部を有する凹凸状に形成されている請求項1記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記ロールは、前記吸収性物品の長手方向長さ以上の周長を有する断面円形状に形成され、前記ロールの前段に反転用ロールを導入し、前記透液性表面シートが前記反転用ロールを通過した後、前記ロールで反転するようなラインが設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記透液性表面シートと吸収体との間に親水性のセカンドシートが介在され、前記凸状湾曲部は、前記透液性表面シートとセカンドシートとの積層体に対して形成される請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記ロールの軸方向断面視で前記ロールの突出部の表面に沿った長さL3は、前記ロールの軸方向断面視で前記ロールの突出部の軸方向に沿った長さをL1、前記フィットエンボスの直交断面視でエンボス溝周囲の長さの合計をMとすると、次式(1)によって算出している請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
L3=L1+(M/2)×2 ……(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッド等の吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などからなる不透液性裏面シートと、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
かかる吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、前記透液性表面シートとして、経血やおりものなど(以下、まとめて体液という。)を吸収性物品の前後方向に拡散させやすくして吸収性物品の幅方向の漏れ(横漏れ)を防止する、或いは肌への接触面積を低減させることにより湿り感を抑える、更には風合いやクッション性を高めるなどのため、多数の凸部及び/又は凹部を有する凹凸状に形成されたものが開発されている。
【0004】
このような凹凸状に形成された透液性表面シートの面側に略長手方向に沿って左右一対のフィットエンボスを施すには、透液性表面シートを吸収体に積層した後、エンボスピンを備えたエンボスロールによって前記透液性表面シートの表面側から透液性表面シート及び吸収体を圧搾することによって行われている。
【0005】
この圧搾時に、透液性表面シートには過大な引張力が作用するため、破れや切れなどが生じる場合がある。このような透液性表面シートの破れや切れなどを防止する手段としては、例えば下記特許文献1に開示されるように圧搾溝を高圧搾部と低圧搾部とから構成したもの、下記特許文献2に開示されるように長手方向圧搾溝及び幅方向圧搾溝のそれぞれについて圧搾溝内を圧搾深さの異なる領域のパターンで形成したものなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3568146号
【特許文献2】特開2011−229907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、上記特許文献1、2記載の製造方法によればフィットエンボス溝内やその近傍の表面シートの破れ等が防止できるようになるかもしれないが、このエンボス溝より内側部分の前記左右一対のフィットエンボスで挟まれた幅方向中央部においては次のような問題があった。
【0008】
凹凸状に形成された表面シートの場合、左右一対のフィットエンボスで挟まれた幅方向中央部では、表面シートがエンボス溝の分だけ両側(幅方向)に引っ張られるため、エンボス間の表面シートが吸収体に押し付けられ、吸収体からの反力によって表面シートに形成した凹凸が失われる結果、この幅方向中央部において表面シートを凹凸状とした効果が低下する問題があった。
【0009】
また、幅方向中央部において表面シートがエンボス深さの分だけ両側に引っ張られるため、この領域の吸収体が潰れてクッション性が損なわれ、肌当たりが悪化する問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、透液性表面シートの面側に左右一対のフィットエンボスが施された吸収性物品において、左右のエンボス間で透液性表面シートの性能を維持できるようにするとともに、肌当たりを悪化させない吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側に略長手方向に沿って左右一対のフィットエンボスが施された吸収性物品の製造方法において、
前記透液性表面シートを幅方向中央部が周方向に沿って突出するロールに導入し、該透液性表面シートの幅方向中央部に長手方向に沿って上面側に突出するとともに、前記フィットエンボスの離間幅に対応した幅寸法で凸状湾曲部を形成した状態で、前記吸収体の上面側に積層した後、透液性表面シートの上面側から前記フィットエンボスを施し、エンボス付与後は、前記透液性表面シートが両側に引っ張られることによって、前記凸状湾曲部が消失するようになっていることを特徴とする吸収性物品の製造方法が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、透液性表面シートを幅方向中央部が周方向に沿って突出するロールに導入し、該透液性表面シートの幅方向中央部に長手方向に沿って上面側に突出するとともに、前記フィットエンボスの離間幅に対応した幅寸法で凸状湾曲部を形成した状態で、吸収体の上面側に積層した後、透液性表面シートの上面側から左右一対のエンボスを施しているため、前記凸状湾曲部がエンボス付与によって透液性表面シートにかかる引張力の緩衝ゾーンとなり、左右のエンボス間で透液性表面シートが吸収体側に押し付けられ吸収体からの反力を受けることによる突っ張りが防止できる。従って、透液性表面シートが引っ張られて性能が低下する問題が解消し、透液性表面シートの性能が維持できる。また、左右のエンボス間の幅方向中央部で吸収体が潰れにくくなるため、吸収体のクッション性が維持でき、肌当たりの悪化が防止できる。
【0013】
本発明で、「フィットエンボスの離間幅に対応した幅寸法で凸状湾曲部を形成し、」とは、凸状湾曲部の幅寸法が、フィットエンボスの離間幅の最小幅から最大幅の間の任意の寸法であることを意味するものである。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記透液性表面シートは、多数の凸部及び/又は凹部を有する凹凸状に形成されている請求項1記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、透液性表面シートとして、多数の凸部及び/又は凹部を有する凹凸状に形成したものを用いた場合について規定し、このような凹凸状の透液性表面シートを用いたときには、左右のエンボス間の幅方向中央部において、透液性表面シートに形成した多数の凹凸が失われることなく、くっきりと維持されるため、表面シートを凹凸状に形成したことによる効果が維持できるので特に有効である。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記ロールは、前記吸収性物品の長手方向長さ以上の周長を有する断面円形状に形成され、前記ロールの前段に反転用ロールを導入し、前記透液性表面シートが前記反転用ロールを通過した後、前記ロールで反転するようなラインが設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、ロールの突出形状に沿って透液性表面シートに凸部をきっちりと形成するため、ロールを吸収性物品の長手方向長さ以上の周長を有する断面円形状に形成した上で、このロールの前段に反転用ロールを導入し、透液性表面シートが前記反転ロールを通過した後、前記ロールで反転するようなラインを設けることによって十分な透液性表面シートとロールとの接触距離を確保している。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記透液性表面シートと吸収体との間に親水性のセカンドシートが介在され、前記凸状湾曲部は、前記透液性表面シートとセカンドシートとの積層体に対して形成される請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、透液性表面シートと吸収体との間に親水性のセカンドシートを介在した場合について規定し、この場合の凸状湾曲部は透液性表面シートとセカンドシートとの積層体に対して形成するようにしている。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記ロールの軸方向断面視で前記ロールの突出部の表面に沿った長さL3は、前記ロールの軸方向断面視で前記ロールの突出部の軸方向に沿った長さをL1、前記エンボスの直交断面視でエンボス溝周囲の長さの合計をMとすると、次式(1)によって算出している請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0021】
L3=L1+(M/2)×2 ……(1)
上記請求項5記載の発明は、前記ロールの突出部の表面に沿った長さL3(図5(A)参照)を具体的に算出する方法について規定したものであり、この長さL3としては、ロール軸方向の長さL1に対して、エンボス溝の周囲の長さMのうち内側半分(M/2)がエンボス間の幅方向中央部の引張りに寄与していると考え、これが左右に2箇所あるので2倍したものを加えた長さとしている。このようにエンボス溝の形状に合わせて凸部の表面長さを決定することによって、エンボス付与後に幅方向中央部の透液性表面シートが突っ張ったり弛んだりせず、透液性表面シートの性能が維持できるとともに肌当たりの悪化が防止できる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、左右のフィットエンボス間で透液性表面シートの性能が維持できるとともに、肌当たりが悪化しない吸収性物品の製造方法が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2】(A)はエンボス凹部20の拡大平面図、(B)、(C)はその断面図である。
図3】生理用ナプキン1の製造装置を示す側面図である。
図4】生理用ナプキン1の製造装置を示す斜視図である。
図5】ロール30を示す、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図6】フィットエンボス9の付与工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記透液性表面シート3の下層側に積層され、前記透液性表面シート3とクレープ紙5との間に介在された親水性不織布からなるセカンドシート6と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の端縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部Fが形成されている。
【0026】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0027】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。この透液性表面シート3には、後段で詳述するように、多数の凸部及び/又は凹部を有する凹凸状に形成することが好ましい。
【0028】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0029】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0030】
本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0031】
前記透液性表面シート3の下層側に積層される親水性不織布からなるセカンドシート6は、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。親水性を付与するには、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えることができる。このセカンドシート6は、前記透液性表面シート3と接合することが好ましい。
【0032】
前記透液性表面シート3、セカンドシート6及び吸収体4の積層部分には、少なくとも体液排出部Hを含む領域に、透液性表面シート3の表面側からほぼナプキン長手方向に沿うとともに、ナプキン長手方向中心線側に曲率中心を有する弧状曲線によって左右一対の中央部フィットエンボス9、9が施されている。また、中央部フィットエンボス9、9の後側には、中央部フィットエンボス9から離間して、長手方向中心線上の位置から後側に向けて両側に漸次拡大する略逆V字形状で後部エンボス10を施すことができる。更に、中央部フィットエンボス9、9の前側には、中央部フィットエンボス9から離間して、生理期間中の陰鬱な気分を紛らわせることなどを目的として、前側に向けて拡大するとともに、その前端部が内側に湾曲するハート形などの形状からなる前部エンボス11を施すことができる。
【0033】
図示例では、各エンボス9〜11は、その形成領域を二重線で示すとともに、その形成領域に沿って所定の間隔で施される高圧搾部をそれぞれ●印で示してある。また、前記エンボスの形成領域のうち前記高圧搾部以外の部分は低圧搾部を示している。なお、隣接する高圧搾部の間隔は任意である。
【0034】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0035】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、体液が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0036】
〔透液性表面シート3について〕
前記透液性表面シート3としては、体液を生理用ナプキン1の前後方向に拡散させやすくしてナプキン幅方向の漏れ(横漏れ)を防止する、肌への接触面積を低減させることにより湿り感を抑える、風合いやクッション性を高めるなどのため、多数の凸部及び/又は凹部を有する凹凸状に形成することが好ましい。図2に示される例では、所定のパターンのエンボス凹部20を設けることによって凹凸状に形成しているが、凸部を設けたり凹部及び凸部を設けることによって凹凸状としたものでもよい。前記エンボス凹部20としては、平面視で、ナプキンの略長手方向に沿って、ナプキン幅方向の一方側への突状部21と他方側への突状部22とを交互に繰り返す第1の波状パターン23と、この第1の波状パターン23をナプキン幅方向に反転させた第2の波状パターン24とをナプキン幅方向に交互に配列した波状パターンとしたものが好適である。
【0037】
図2に示されるように、前記波状パターンのエンボス凹部20を設けることによって、第1の波状パターン23と第2の波状パターン24との間に、離隔幅が異なる幅広部25と幅狭部26とがナプキン長手方向に交互に繰り返して形成されるようになる。
【0038】
前記波状パターンのエンボス凹部20の寸法は、図2に示されるように、突状部22、22の頂部間隔T(1周期)を5.0mm以下とし、エンボス幅B(エンボス凹部20の底部の幅)を0.5〜1.0mmとし、幅広部25のナプキン幅方向の幅S1を4.5〜7.5mmとし、幅狭部26のナプキン幅方向の幅S2を2.0〜5.0mmとすることが好ましい。
【0039】
前記透液性表面シート3は、下層の平面状のセカンドシート6に対し、少なくとも前記波状パターンのエンボス凹部20の底面との接触面部で熱融着又はホットメルトなどの接着剤により接着され、セカンドシート6と一体化されている。
【0040】
一方、前記幅広部25における体液の表面残りを軽減するとともに、肌との接触面積を低減するため、前記幅広部25の全部又は一部にドット状のエンボス凹部27を設けることが好ましい。
【0041】
前記ドット状のエンボス凹部27は、ナプキンの各領域毎にエンボス深さを異ならせても良い。例えば、少なくとも体液排出部Hを含む領域では、図2(B)に示されるように、前記波状パターンのエンボス凹部20とほぼ同等のエンボス深さで形成され、下層のセカンドシート6との接触面部で接合することによって、波状パターンの幅広部25の体液を下層のセカンドシート6に移行させやすくし、体液の表面残りを軽減するとともに、肌への接触面積を低減して、湿り感を抑え、肌トラブルも生じにくくする一方で、体液排出部Hを含む中央部領域以外の領域では、図2(C)に示されるように、体液排出部Hを含む中央部領域のエンボス深さより相対的に浅いエンボス深さで形成し、下層のセカンドシート6には接合しないようにしてもよい。
【0042】
かかるエンボス凹部が形成された透液性表面シート3の製造に当たっては、下段側から第1エンボスロールと、第2エンボスロールと、表面が平滑なアンビルロールとを縦方向に並べて配設したエンボスロール装置が用いられる。前記第1エンボスロールと第2エンボスロールとを組とし、透液性表面シートをこれらエンボスロールの間を通過させることにより凹凸状のエンボスを付与し、第2エンボスロールとアンビルロールとの間を透液性表面シート3を通過させるとともに、第2エンボスロールとアンビルロールとの間に下層のセカンドシート6を進入させ、透液性表面シート3とセカンドシート6とを重ね合わせるとともに、前記第2エンボスロール及びアンビルロールの内の少なくとも一方側は所定温度に加熱した状態としておき、前記透液性表面シート3の凹部底面と前記セカンドシート6とを熱融着によって接合する。前記透液性表面シート3とセカンドシート6との接合方法は、ホットメルトなどの接着剤による接合としてもよい。
【0043】
〔生理用ナプキン1の製造方法〕
本生理用ナプキン1では、図3及び図4に示されるように、前述の透液性表面シート3とセカンドシート6との積層体を幅方向中央部が周方向に沿って突出するロール30に導入し、前記積層体の幅方向中央部に長手方向に沿って上面側に突出するとともに、前記フィットエンボスの離間幅に対応した幅寸法で凸状湾曲部31を形成した状態で、クレープ紙5によって囲繞された吸収体4の上面側にホットメルト等の接着剤によって貼着した後、エンボスロール32とアンビルロール33との間に通過させることによって、透液性表面シート3の表面側から中央部フィットエンボス9、9が施されている。
【0044】
このように、透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体の幅方向中央部に凸状湾曲部31を形成した状態で吸収体4に積層し、前記中央部フィットエンボス9、9を施しているめ、前記凸状湾曲部31がエンボス付与によって透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体にかかる引張力の緩衝ゾーンとなって、中央部フィットエンボス9、9間で透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体が吸収体4側に押し付けられ吸収体4からの反力を受けることによる突っ張りが防止できる。従って、透液性表面シート3が引っ張られて透液性表面シート3の凹凸形状などが損なわれることによる性能の低下が防止でき、透液性表面シート3本来の性能が維持できるとともに、中央部フィットエンボス9、9間で吸収体4が潰れにくくなるため、吸収体4のクッション性が維持でき、肌当たりの悪化が防止できるようになる。なお、ロール30は透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体を吸収体4に貼着する直前に設けられているため、凸状湾曲部31の形成状態を維持したまま前記積層体が吸収体4に貼着されるようになる。一方で、エンボス付与後は、透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体が両側に引っ張られることによって、前記凸状湾曲部31は消失するようになっている。
【0045】
中央部フィットエンボス9、9と凸状湾曲部31との位置関係は、中央部フィットエンボス9、9が凸状湾曲部31にかからないように凸状湾曲部31より外側に隣接して施すことが好ましいが、中央部フィットエンボス9、9の全部又は一部が凸状湾曲部31内に位置していてもよい。図1に示されるように、中央部フィットエンボス9、9がナプキン長手方向中心線側に曲率中心を有する弧状曲線によって形成される場合、フィットエンボス9,9の全部が凸状湾曲部31の外側にあってもよいし、前後部分又は全部が凸状湾曲部31にかかるように施しても構わない。
【0046】
前記ロール30は、詳細には図5に示されるように、断面円形状に形成され、幅方向中央部に周方向に沿って突出するロール突出部30aを有している。このロール突出部30aは、透液性表面シート3のナプキン長手方向に対して、少なくとも中央部フィットエンボス9、9の形成領域に対応する長手方向に突状湾曲部31が形成されるように周方向に間欠的に設けることが好ましい。これによって、中央部フィットエンボス9、9の前後(中央部フィットエンボス9、9が付与されない部分)において、透液性表面シート3が湾曲した状態のまま全周エンボスが圧搾されることによる皺や浮きの発生などが防止できる。また、ロール突出部30aは、中央部フィットエンボス9、9の前後に設けられる後部エンボス10及び前部エンボス11の形成領域を含む周方向長さで設けることもできる。なお、吸収体厚が厚い場合など前述の皺や浮きの発生が問題とならない場合には、確実に突状湾曲部31の形成状態を維持するため、前記ロール突出部30aは、ロール30の幅方向中央部に全周に亘って設けることが好ましい。
【0047】
前記ロール突出部30aは、幅方向中央部の所定幅を曲線状、好ましくは円弧状に膨出させた形状で形成されている。なお、曲線状以外に四角形状や三角形状など任意の形状に膨出させても良い。
【0048】
前記ロール突出部30aより両側のロール径Dは、ロール30の通過によって透液性表面シート3に凸状湾曲部31がきっちりと形成されるように、生理用ナプキン1の長手方向長さ以上の周長となる直径で形成することが好ましく、昼用ナプキン(ナプキン長手方向長さ約140mm)から夜用ナプキン(ナプキン長手方向長さ400mm)をカバーできる寸法(D=45〜130mm)とすることが好ましい。図示例では生理用ナプキン1の長手方向長さの2倍の周長となる直径で形成されている。ロール幅L2は、透液性表面シート3及びセカンドシート6の幅より若干大きめの幅、L2=50〜100mmで形成されている。ロール突出部30aのロール軸方向長さL1(=凸状湾曲部31の幅寸法)は、中央部フィットエンボス9,9の離間幅の最小幅〜最大幅の間で任意に設定することができる。例えば、中央部フィットエンボス9,9が凸状湾曲部31内に形成されるようにするには、中央部フィットエンボス9、9の離間幅が最大となる幅EWmax=35〜60mm(図1よりほぼ体液排出部Hにおける離間幅)に合わせてL1=35〜60mmで形成することができ、中央部フィットエンボス9,9が凸状湾曲部31よりも外側に形成されるようにするには、中央部フィットエンボス9、9の離間幅が最小となる幅EWmin=20〜40mmに合わせてL1=20〜40mmで形成することができる。更には、前記最大幅EWmaxと最小幅EWminとの平均値(或いは中間値)で形成するようにしてもよい。なお、中央部フィットエンボス9,9がナプキン幅方向外側に曲率中心を有する弧状曲線(体液排出部H部が最も狭い弧状曲線)によって構成される場合も同様である。
【0049】
また、図5に示されるロール軸方向の断面視で、ロール突出部30aの表面に沿った長さL3は、次式(1)によって算出された値とすることが好ましい。
【0050】
L3=L1+(M/2)×2=L1+M ……(1)
ここで、Mは図6に示されるように中央部フィットエンボス9の直交断面視でエンボス溝の周囲の長さの合計(両側壁及び底面の長さの合計)であり、エンボス付与によって透液性表面シート3及びセカンドシート6が引っ張られる長さのことである。このMは、図1のように中央部フィットエンボス9に低圧搾部と高圧搾部とを形成するため、エンボスロール32のエンボスピン34として、エンボス溝の両側壁及び底面の低圧搾部を形成する基部34Aと、その先端に設けられエンボス溝の底面の高圧搾部を形成する先端部34Bとから構成した場合、前記基部34Aによるエンボス高さをa、前記先端部34Bによるエンボス高さをb、底面の幅をcとすると、M=(a+b)×2+cとなる。このMによって引っ張られる長さのうち、エンボス9より幅方向中央側の透液性表面シート3及びセカンドシート6の引張りに寄与するのはエンボスピン34の中心線に対して内側半分であるため、M/2としてあり、これが左右にあるので2倍としている。このようにエンボス溝の形状に合わせて凸状湾曲部31の表面長さを決定することによって、エンボス付与後にエンボス9、9間が突っ張ったり弛んで皺が寄ったりすることなく、他の領域と同様に通常の透液性表面シート3の状態で配設することができるようになる。なお、中央部フィットエンボス9,9が曲線であり、前記凸状湾曲部31は一定幅で形成されるものであるため、中央部フィットエンボス9,9と前記凸状湾曲部31の両端部とが全長に亘って一致することはないが、前記L3の数値は、中央部フィットエンボス9,9と凸状湾曲部31の両端部とが一致する断面位置で満足すればよい。
【0051】
ロール30は、図3に示されるように、透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体がロール30の約半周に亘って接するように導入することが好ましい。これによって、ロール突出部30aの形状が透液性表面シート及びセカンドシート6の積層体に転写されやすくなり、透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体の幅方向中央部に凸状湾曲部31がきっちりと形成されるようになる。ロール30の約半周に接するようにするには、ロール30の前段に反転用ロール35を導入し、透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体が反転用ロール35を通過した後、ロール30でほぼ反転するようなラインとすることが好ましい。
【0052】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体を吸収体4の上面にホットメルト等の接着剤によって貼着していたが、接着剤による貼着をせずに前記積層体を単に吸収体4の上面に積層させることとしてもよい。
(2)上記形態例では、透液性表面シート3とセカンドシート6の積層体を吸収体4の上面に積層していたが、前記セカンドシート6を設けずに、吸収体4の上面に透液性表面シート3のみを配設してもよい。
(3)上記形態例では、ロール突出部30aが形成された単一のロール30を通過させることによって凸状湾曲部31を形成していたが、ロール突出部30aが形成されたロール30と、このロール突出部30aに対応するロール凹部が形成された第2のロールとの間を通過させることによって凸状湾曲部31を形成してもよい。
(4)上記形態例では、図1に示されるように、中央部フィットエンボス9、9は、前後端部が離間した2本のエンボスとしていたが、前後端部を接続して周方向に閉合するエンボスとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート、7…サイド不織布、9…中央部フィットエンボス、10…後部エンボス、11…前部エンボス、20…エンボス凹部、30…ロール、30a…ロール突出部、31…凸状湾曲部、32…エンボスロール、33…アンビルロール、34…エンボスピン、F…外周フラップ部、W…ウイング状フラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6