(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)分子中に、カチオン性基を有するモノマー単位を20〜100モル%、ノニオン性基を有するモノマー単位を0〜80モル%、及びアニオン性基を有するモノマー単位を0〜40モル%含有し、カチオン性基を有するモノマー単位に対するアニオン性基を有するモノマー単位のモル比が0.3以下であり、重量平均分子量1,000〜300,000であるカチオン性高分子化合物〔以下、(a)成分という〕0.05〜10質量%、並びに(b)下記(b1)成分及び(b2)成分から選択される1種以上のアニオン界面活性剤〔以下、(b)成分という〕0.5〜30質量%を含有し、
(a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが0.04以上、2以下である、
疎水性硬質表面用処理剤組成物。
(b1)成分;炭素数8〜18の鎖式炭化水素基と、カルボン酸基又はその塩を有するアニオン界面活性剤
(b2)成分;炭素数7〜18の鎖式炭化水素基と、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を有するアニオン界面活性剤
(b1)成分が炭素数8〜18の鎖式炭化水素基を有する高級脂肪酸塩であり、(b2)成分が炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩から選択される1種以上である、請求項1又2の何れか1項記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
請求項1〜4の何れか1項記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を、疎水性硬質表面に塗布する工程と、該疎水性硬質表面の組成物が塗布された面を、塗布質量の5倍以上の質量の水によりすすぐ工程とを有する、疎水性硬質表面の処理方法。
請求項1〜4の何れか1項記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を、汚れが付着した疎水性硬質表面に適用した後、水ですすぐことで、該疎水性硬質表面からの汚れの除去と該疎水性硬質表面への親水性の付与の両方を行う、疎水性硬質表面の処理方法。
請求項1〜4の何れか1項記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を用いた疎水性硬質表面の処理方法であって、前記組成物の濁度が10以下であり、該組成物を、汚れが付着した疎水性硬質表面に適用した後、水ですすぐことで、該疎水性硬質表面からの汚れの除去と該疎水性硬質表面への親水性の付与の両方を行う、疎水性硬質表面の処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<(a)成分>
(a)成分は、分子中に、カチオン性基を有するモノマー単位を20〜100モル%、ノニオン性基を有するモノマー単位を0〜80モル%、及びアニオン性基を有するモノマー単位を0〜40モル%含有し、カチオン性基を有するモノマー単位に対するアニオン性基を有するモノマー単位のモル比が0.3以下であり、重量平均分子量1,000〜300,000であるカチオン性高分子化合物であり、疎水性硬質表面に適用された後のすすぎにより(b)成分と複合体を形成し、疎水性硬質表面に吸着層を形成することで高い防汚性を付与すると推定される。
【0019】
(a)成分のカチオン性基を有するモノマー単位は、アミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を1種以上有するモノマー単位であることが防汚性付与の観点から好ましい。
【0020】
更に、(a)成分のカチオン性基を有するモノマー単位は、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物から選択される1種以上の化合物を重合して得られる構成単位であることが、高い防汚性付与の観点から好ましい。
【0022】
〔式中、R
1、R
2、R
3、R
7、R
8、R
9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR
12−、−CONHR
12−、−OCOR
12−、−R
12−OCO−R
13−から選ばれる基、好ましくは−COOR
12−である。ここでR
12、R
13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R
4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR
1R
2C=C(R
3)−X−、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。R
5は炭素数1〜3のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、R
6は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、Z
-は陰イオン、好ましくは塩素イオンを示す。R
10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR
7R
8C=C(R
9)−Y−、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。R
11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。〕
【0023】
カチオン性基を有するモノマー単位の由来となる具体的な単量体化合物としては、アルキル基の炭素数が1〜3であるジアリルジアルキルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルアミノアルキル−N,N−ジアルキルアミン、アルキル基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルアミノアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩、及びアルケニル基の炭素数が2〜10であり、アルキル基の炭素数が1〜3であるN−(ω−アルケニル)−N,N−ジアルキルアミンから選ばれる化合物が、防汚性付与の観点から好ましい例として挙げられる。より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜3であるジアリルジアルキルアンモニウム塩又はアルキル基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩であり、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜3であるジアリルジアルキルアンモニウム塩である。ここで、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」の意味である。
【0024】
(a)成分のノニオン性基を有するモノマー単位の由来となる具体的な単量体化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリルから選ばれる化合物が、防汚性付与の点から好ましい。更に好ましくは、アクリルアミド、スチレン、メタクリル酸メチルである。
【0025】
また、(a)成分は、アニオン性基を有するモノマー単位を含有することが出来る。アニオン性基を有するモノマー単位の由来となる具体的な単量体化合物としては、メタクリル酸及びその塩、アクリル酸及びその塩、無水マレイン酸、マレイン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、2(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸及びその塩が挙げられる。
【0026】
(a)成分の構成単位中、カチオン性基を有するモノマー単位、ノニオン性基を有するモノマー単位及びアニオン性基を有するモノマー単位の存在比率は、
1H−NMR、
13C−NMRの測定により得られるピークから求めることができる。また、(a)成分を構成する単量体の仕込み割合、すなわち重合割合から算出することも可能であるが、
1H−NMR、
13C−NMRの測定により得られるピークから求める方法を優先する。
【0027】
(a)成分は、分子中に、カチオン性基を有するモノマー単位を20〜100モル%含有するが、下限値以上において疎水性硬質表面への防汚性付与効果が高まるため、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上含有する。(a)成分は、カチオン性基を有するモノマー化合物、例えば、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物から選択される1種以上の化合物のホモポリマーであってもよいが、防汚性付与効果の観点から、一般式(1)で表される化合物のホモポリマーが好ましい。
【0028】
また、(a)成分は、分子中に、ノニオン性基を有するモノマー単位を0〜80モル%含有するが、上限値以下において疎水性硬質表面への防汚性付与効果が高まるため、60モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下が更に好ましく、10モル%以下であることがより更に好ましい。特に好ましくは、0モル%である。
【0029】
また、(a)成分は、分子中に、アニオン性基を有するモノマー単位を0〜40モル%含有する。防汚性付与効果を高めるために、アニオン性基を有するモノマー単位の含有量は分子中において30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が更に好ましく、含有しないことがより更に好ましい。
【0030】
防汚性付与効果を高めるために、(a)成分は、カチオン性基を有するモノマー単位に対するアニオン性基を有するモノマー単位のモル比、すなわち、[アニオン性基を有するモノマー単位/カチオン性基を有するモノマー単位]のモル比が0.3以下であり、0.2以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.1以下であることが更に好ましく、0.02以下であることがより更に好ましい。上記の通り、(a)成分はアニオン性基を有するモノマー単位を含有しないことが好ましいため、カチオン性基を有するモノマー単位に対するアニオン性基を有するモノマー単位のモル比は、0がより更に好ましい。
【0031】
(a)成分として、特に好ましくは、アルキル基の炭素数が1〜3であるジアリルジアルキルアンモニウム塩のホモポリマー、アルキレン基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩のホモポリマー、及びアルキル基の炭素数が1〜3であるジアリルジアルキルアンモニウム塩とアクリルアミドのコポリマーから選ばれるカチオン性高分子化合物である。
【0032】
(a)成分であるカチオン性高分子化合物の重量平均分子量は1,000〜300,000であるが、下限値以上では(a)成分や、(a)成分と(b)成分の複合体の吸着残留性が高まり、上限値以下では硬質表面の親水性が高められることから、2,000〜200,000が好ましく、3,000〜150,000がより好ましく、更には5,000〜100,000、更には5,000〜50,000が好ましく、5,000〜10,000が最も好ましい。
【0033】
ここで、(a)成分の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準サンプルとしてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。(カラム:東ソー株式会社製TSK−GEL α-M、溶離液 〔50mmol/L LiBr 1%CH
3COOH/エタノール〕:水=3:7、検出器:RI、サンプル濃度:5mg/mL)
【0034】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物における(a)成分の含有量は、下限値以上で防汚性付与効果が向上し、上限値以下で硬質表面の親水性が高められることから、0.05〜10質量%であり、0.05〜5質量%が好ましく、0.08〜2.5質量%がより好ましく、0.1〜1質量%が更に好ましい。
【0035】
<(b)成分>
(b)成分は、下記(b1)成分及び(b2)成分から選択される1種以上のアニオン界面活性剤である。(b)成分は、疎水性硬質表面に適用された後、好ましくはすすぎ等により希釈されることで(a)成分と複合体を形成し、疎水性硬質表面に吸着することで高い防汚性を付与すると推定される。また、(a)成分と共に(b)成分を用いることで、疎水性硬質表面の洗浄の際、高い洗浄効果を示すことができる。
(b1)成分;炭素数8〜18の鎖式炭化水素基と、カルボン酸基又はその塩を有するアニオン界面活性剤
(b2)成分;炭素数7〜18の鎖式炭化水素基と、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を有するアニオン界面活性剤
【0036】
(b1)成分は、炭素数8〜18の鎖式炭化水素基と、カルボン酸基又はその塩を有するアニオン界面活性剤であるが、鎖式炭化水素基の炭素数は下限値以上では吸着残留性が高まり、上限値以下で防汚性付与効果が高まることから、9〜18が好ましく、9〜15がより好ましく、9〜13が更に好ましく、10〜12がより更に好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩が好適である。(b1)成分は、炭素数8〜18の鎖式炭化水素基を1〜2個、更に1個有するものが好ましい。また、(b1)成分は、カルボン酸基又はその塩を1〜2個、更に1個有するものが好ましい。更に、カルボン酸基の塩を有するものが好ましい。
【0037】
防汚性付与の点から好ましい(b1)成分は、炭素数8〜18の鎖式炭化水素基を有する高級脂肪酸塩、アルキル基の炭素数が8〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル基の炭素数が8〜18であるポリオキシエチレンアミドアルキルエーテルカルボン酸塩である。防汚性付与の点から、より好ましい(b1)成分は、炭素数8〜18の鎖式炭化水素基を有する高級脂肪酸塩すなわち総炭素数9〜19の高級脂肪酸塩であり、更に好ましくは総炭素数9〜19の直鎖高級脂肪酸塩である。防汚性付与の点から更に好ましい化合物としては、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウムが挙げられる。
【0038】
(b2)成分は、炭素数7〜18の鎖式炭化水素基と、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を有するアニオン界面活性剤である。(b2)成分の鎖式炭化水素基の炭素数は7〜18であるが、鎖式炭化水素基の炭素数は下限値以上では吸着残留性が高まり、上限値以下で防汚性付与効果が高まることから、8〜16が好ましく、10〜15がより好ましく、12〜14が更に好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩が好適である。(b2)成分は、炭素数7〜18の鎖式炭化水素基を1〜2個、更に1個有するものが好ましい。また、(b2)成分は、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を1〜2個、更に1個有するものが好ましい。より更に、スルホン酸基の塩、硫酸基の塩、及びリン酸基の塩から選択される1種以上を有するものが好ましい。
【0039】
防汚性付与、更に洗浄力向上の点で好ましい(b2)成分の例としては、鎖式炭化水素基の炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、炭素数7〜18のα−オレフィンスルホン酸塩、炭素数7〜18のα−スルホ脂肪酸の炭素数1〜2のアルキル基を有する低級アルキルエステル塩、炭素数7〜18の一級アルカンスルホン酸塩、炭素数7〜18の二級アルカンスルホン酸塩、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルリン酸エステル塩等が挙げられる。中でも、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が7〜18でありエチレンオキサイド平均付加モル数が1〜6であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩から選ばれるアニオン界面活性剤が好ましい。これらのアニオン界面活性剤の塩もまた、アルカリ金属塩、エタノールアミン塩、あるいはアンモニウム塩が好ましい。
【0040】
また、本発明では、(b)成分として、(b1)成分及び(b2)成分を併用した方が、洗浄時に良好な泡立ちをし、すすぎ性が良好な点から好ましい。この場合、(b1)成分/(b2)成分の質量比は、0.05〜1、更に0.1〜0.8、より更に0.3〜0.7であることが好ましい。
【0041】
また、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物における(b)成分の含有量は、下限値以上で洗浄力が高まり、上限値以下で吸着残留性及び防汚性付与効果が高められることから、0.5〜30質量%であり、0.5〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましく、0.5〜2質量%がより更に好ましい。なお、(b)成分のアニオン界面活性剤については、ナトリウム塩としての質量を組成物中の(b)成分の質量とする。
【0042】
<疎水性硬質表面用処理剤組成物>
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、(a)成分と(b)成分とを所定条件で組み合わせて用いることで、疎水性硬質表面に適用された後のすすぎ工程において(a)成分と(b)成分とが複合体を形成し疎水性硬質表面に吸着するため高い防汚性を付与するものと推定される。また、疎水性硬質表面の洗浄に用いる際には、(b)成分による高い洗浄力を発現する。
【0043】
(a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが下限値以上では洗浄力が高まり、上限値以下において防汚性付与効果が高まるため、A/Bは0.04以上、2以下であり、0.1以上、2以下が好ましく、0.3以上、2以下が更に好ましく、0.5以上、2以下がより更に好ましい。
【0044】
なお、モル数Aは、組成物中の(a)成分の総量に基づくものであり、(a)成分の重量平均分子量、(a)成分中のカチオン性基を有するモノマー単位のモル%、及び(a)成分の組成物中の含有量から算出することにより求めることが出来る。また、(a)成分を複数種用いる場合のモル数Aは、各々の組成物中での含有量、重量平均分子量、カチオン性基を有するモノマー単位のモル%から求めることが出来る。
【0045】
また、モル数Bは、組成物中の(b)成分の総量に基づくものであり、(b)成分の重量平均分子量、及び(b)成分の組成物中の含有量から算出することにより求めることが出来る。また、(b)成分を複数種用いる場合のモル数Bは、各々の組成物中での含有量、重量平均分子量から求めることが出来る。
【0046】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、(a)成分、(b)成分以外に下記の成分を含有することができる。
【0047】
<(c)成分>
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、(c)成分として、水を含有することが好ましい。水を含有する液体組成物であることがより好ましい。長期保存後に液の均一性を確保するために(c)成分の含有量は、組成物中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることがより更に好ましい。
【0048】
<(d)成分>
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、疎水性硬質表面の洗浄にも適しているため、(d)成分として(b)成分以外の界面活性剤を含有することが、洗浄力向上の点から好ましい。(d)成分としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0049】
洗浄力向上の点から好ましいノニオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数10〜18のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数10〜18の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8〜18の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられる。中でも油性汚れに対する洗浄性の観点から、炭素数10〜14のアルキル基を有しエチレンオキサイド平均付加モル数が5〜20であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、また、使用時の泡立ちの観点から炭素数8〜18のアルキル基を有し糖縮合度が1〜3であるアルキルポリグリコシドが好ましい。
【0050】
洗浄力向上の点から好ましいカチオン界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が10〜20であるアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が6〜14であるジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が6〜18であるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンゼトニウム塩等が挙げられる。
【0051】
洗浄力向上の点から好ましい両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルアミンオキサイド、アルキル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、アルキル−N,N−ジメチルエタンスルホベタイン、脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のベタイン等が挙げられる。
【0052】
中でも洗浄時の泡立ちや石鹸カス等のスカム汚れに対する洗浄性の観点から、アルキル基の炭素数が10〜16のアルキルジメチルアミンオキシド、炭素数12〜14の脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタインが好ましい。
【0053】
(d)成分としては、防汚性付与の効果を妨げにくい点から、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することが好ましい。
【0054】
(d)成分としてノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有する場合、洗浄後のすすぎ工程でのすすぎ性を高めるために、(a)成分中のカチオン性基を有するモノマー単位は20〜90モル%であることが好ましく、20〜60モル%がより好ましく、20〜40モル%が更に好ましく、20〜35モル%がより更に好ましい。
【0055】
また、(d)成分としてノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有する場合、洗浄性、防汚性付与に加えて、洗浄後のすすぎ工程でのすすぎ性を高めることが望ましい。すすぎ性を高めるために、(a)成分中のノニオン性基を有するモノマー単位は10〜80モル%であることが好ましく、30〜80モル%がより好ましく、50〜80モル%が更に好ましく、70〜80モル%がより更に好ましい。
【0056】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物における(d)成分の含有量は、洗浄力向上の点から、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜6質量%であることが更に好ましく、3〜5質量%であることがより更に好ましい。
【0057】
また、下限値以上で防汚性付与効果が向上し、上限値以下で洗浄力が高められるため、(b)成分と(d)成分の合計含有量に対する(b)成分の含有量の質量比は、(b)/〔(b)+(d)〕で、0.05以上であることが好ましく、0.05〜0.9であることがより好ましく、0.1〜0.5であることが更に好ましく、0.15〜0.3であることがより更に好ましい。
【0058】
<(e)成分>
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、(e)成分としてキレート剤を含有することが出来る。好ましいキレート剤としては、(e1)トリポリリン酸、ピロリン酸、オルソリン酸、ヘキサメタリン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、(e2)エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、(e3)アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、(e4)アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーの単一重合体又は共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリα−ヒドロキシアクリル酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、(e5)クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸から選ばれる多価カルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種以上、(e6)アルキルグリシン−N,N−二酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、セリン−N,N−二酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、(e2)、(e3)、及び(e5)から選ばれる1種以上のキレート剤が好ましく、更に、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、クエン酸、コハク酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上のキレート剤が好ましい。より更に、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上のキレート剤が好ましい。
【0059】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物における(e)成分の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましく、0.2〜7質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。(e)成分の含有量が下限値以上であると洗浄力が向上し、上限値以下では低温での貯蔵安定性に優れ、洗浄力と低温での保存後のスプレー式容器を用いたスプレー性を両立できる。なお、(e)成分のキレート剤については、ナトリウム塩としての質量を組成物中の(e)成分の質量とする。
【0060】
<(f)成分>
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、(f)成分として、更に有機溶媒を含有することが、処理剤組成物の液性維持と洗浄性向上との面から好ましい。
【0061】
種々のモノ−、ジ−又はトリ−アルキレングリコールエーテル、及びモノ−、ジ−又はトリ−アルキレングリコールジエーテルが有機溶媒としての使用に適しており、具体的には、モノ−、ジ−又はトリ−エチレングリコールエーテル、及びモノ−、ジ−又はトリ−エチレングリコールジエーテル、並びにモノ−、ジ−又はトリ−プロピレングリコールエーテル、及びモノ−、ジ−又はトリ−プロピレングリコールジエーテルが適している。このようなグリコールエーテル及びグリコールジエーテルが有するアルキル基は、種々の炭素数のアルキル基から選択できる。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどである。これらグリコールエーテル及びグリコールジエーテルは、化合物全体の炭素数が4〜14、更に6〜12、より更に8〜10であることが好ましい。
【0062】
使用に好ましい有機溶媒としては、エチレングリコールモノ−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルが挙げられる。
【0063】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物における(f)成分の含有量は、1〜10質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましく、5〜9質量%が更に好ましい。
【0064】
更に、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物には、防汚性付与効果及び洗浄性能を阻害しない範囲において、防腐剤、ハイドロトロープ剤、染料、粘度調整剤、酸化防止剤、香料などを配合することが出来る。
【0065】
また、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、下限値以上では洗浄力が高まり、上限値以下では保存安定性に優れるため、20℃におけるpHが3〜11であることが好ましく、5〜10であることがより好ましく、6〜9であることが更に好ましく、7〜8であることがより更に好ましい。pH調整剤としては、酸剤として、塩酸や硫酸などの無機酸や、(b)成分及び(e)成分以外の有機酸を用いることが出来る。また、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを用いることが出来る。
【0066】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、疎水性硬質表面を対象とするものであり、疎水性表面を親水性表面に改質することで防汚性付与効果が発現していると推定している。
【0067】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物の対象となる疎水性硬質表面は、イオン交換水に対する静止接触角が50°以上であるものが好ましく、60°以上であるものがより好ましく、70°以上であるものが更に好ましく、80°以上であるものがより更に好ましい。従って、本発明では、この接触角を満たす硬質表面を疎水性硬質表面とすることができる。
【0068】
疎水性硬質表面を与える材質としては、ステンレス鋼等の疎水性金属、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、6−ナイロン等の疎水性プラスチックが挙げられ、繊維強化プラスチック(FRP)のような複合素材であってもよい。
【0069】
台所や浴室は前記した疎水性硬質表面を与える材質が多用されており、且つ食品や人体由来の疎水性汚れが付着しやすい環境にあることから、疎水性汚れに対する防汚性付与の意義が大きい。本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、台所や浴室の疎水性硬質表面に対して優れた防汚性を付与でき、更に洗浄性にも優れる。よって、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、台所用又は浴室用として用いられることが好ましい。具体的には、本発明の組成物は、台所まわりの疎水性硬質表面(壁、床、シンクなど)や台所で用いられる製品(コンロ、電子レンジ、オーブン、冷蔵庫など)の疎水性硬質表面に対して適用できる。また、本発明の組成物は、浴室まわりの疎水性硬質表面(壁、床、浴槽など)や浴室で用いられる製品(浴室用イス、洗面器など)の疎水性硬質表面に対して適用できる。中でも浴室用の疎水性硬質表面用洗浄剤組成物としてより好ましく用いられる。
【0070】
また、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、スプレー式容器に充填してなるスプレー式疎水性硬質表面用処理剤物品として使用することが好ましい。かかる物品は、スプレー式疎水性硬質表面用洗浄剤物品やスプレー式疎水性硬質表面用改質剤物品として用いることもできる。スプレー式容器としては、トリガー式スプレーヤーが装着されたスプレー容器(トリガー式スプレー容器という)が挙げられる。トリガー式スプレー容器としては、液体処理剤組成物を収容する容器本体と、容器本体の口部に装着されたトリガー式液体噴出器とを具備するものが挙げられ、更には、容器本体の口部に液体処理剤組成物を噴出するトリガー式スプレーヤーが装着され、該トリガー式スプレーヤーの内部に垂直管路及び水平管路が形成され、該垂直管路内に該垂直管路と上記水平管路との連通を遮断するバルブが配設されたスプレー容器(スプレー容器(I)という)が挙げられる。スプレー容器(I)は、水平管路の下方位置にシリンダーを備え、また、水平管路の先端部にスピンエレメントが装着され、さらに、このスピンエレメントの先端部にノズル孔を有するノズル部が嵌着固定されている。スプレー容器(I)は、トリガーを引いて、シリンダー内の空気を外に排出し、トリガーを戻した際に容器本体の液体処理剤組成物に浸した垂直管路を通じて液体処理剤組成物を吸い上げ、上記シリンダー内に液体を満たし、再びトリガーを引くことにより、該シリンダー内の液体を押し出して垂直管路に導き、さらに水平管路、スピンエレメントを通じて液体の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出するタイプのものである。疎水性硬質表面への本発明の処理剤組成物の適用方法は、疎水性硬質表面の広さ(面積)等に応じて選択できる。例えば本発明の組成物の原液をそのまま0.05〜5mL程度スプレーして行うことができる。
【0071】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、疎水性の硬質表面に対して良好な親水性を付与することが出来、しかもその持続効果に優れる。更に、疎水性硬質表面に付着した油汚れ、タンパク質汚れ、皮脂汚れ等に対する洗浄効果を有する。硬質表面の親水性は、該表面上での水の接触角を測定することにより評価できるが、本発明の硬質表面用処理剤組成物で硬質表面を処理(塗布、すすぎ)することにより、接触角が著しく低減することを確認出来ており、この親水化により高い防汚性付与効果を発現していることが示唆される。
【0072】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物により可溶化された疎水性汚れは、洗浄後のすすぎ工程において疎水性硬質表面から除去されるが、一方で(a)成分のカチオン性基を有する高分子化合物と(b)成分のアニオン界面活性剤は親水化改質成分を形成して硬質表面に吸着残留することが可能であり、洗浄効果、親水性改質を両立することが出来る。(a)成分と(b)成分とからなる親水化改質成分は、すすぎ工程において、水和の減少により硬質表面上に層状に堆積するコアセルベーション現象により、硬質表面上に吸着残留し、表面改質剤として機能していると考えられる。すなわち、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、洗浄後のすすぎ工程において水希釈されることにより、(a)成分と(b)成分は親水化改質成分を形成し、コアセルべーション現象により溶解性が低下し、硬質表面に吸着する。吸着効果を高める点から、水により希釈した場合に濁りを生じる組成物が好ましい。また、スプレー物品として使用する場合には、スプレー性を高めるためには透明均一であることが好ましく、水希釈により白濁する特性を有する組成物がより好ましい。
【0073】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、疎水性硬質表面の親水化改質性を高めるために、該組成物の濁度T
1に対する、該組成物を水で20倍希釈した液の濁度T
20との比であるT
20/T
1が2以上となる性質を有していることが好ましく、10以上となることがより好ましく、50以上となることがより更に好ましい。濁度の測定に際しては、不溶化物が分離する場合があるため、組成物の原液又は20倍希釈液100mlを200mlビーカーに入れ、スターラーバー(8mm×20mm)を用いて25℃、150rpmで5分間撹拌した後、3分以内に上記T
1又はT
20を測定する。濁度計として日本電色工業(株)製のHaze Meter NDH2000を使用して測定することが出来る。
【0074】
濁度の増加は不溶成分が分散することにより生ずると推察され、不溶分散物は、スプレー時にトリガー内で詰まりの原因となる。一方、水希釈後は、疎水性硬質表面上に吸着残留するために不溶成分が析出した状態が機能発現の点から望まれる。スプレー性、洗浄性を高めるために、組成物の濁度すなわちT
1は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることが更に好ましい。一方、硬質表面の親水化改質性を高めるために、T
20は20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることが更に好ましい。
【0075】
T
20/T
1が2以上となる性質は、(a)成分、(b)成分を特定比率で含有することにより、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物に付与することができる。
【0076】
また、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、実施例記載の方法で測定される処理後のPVC板(株式会社エンジニアリングテストサービス製)のイオン交換水に対する静止接触角が60°以下となることが、防汚性付与の観点から好ましく、50°以下となることがより好ましく、45°以下となることが更に好ましく、40°以下となることがより更に好ましい。更に、処理前のPVC板のイオン交換水に対する静止接触角と処理後のPVC板のイオン交換水に対する静止接触角との差が、10°以上であることが防汚性付与の点から好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上であることが更に好ましく、50°以上であることがより更に好ましい。
【0077】
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物では、疎水性硬質表面に適用後、(a)成分、(b)成分を含有する被覆膜が形成されて該硬質表面を被覆することにより、PVC板のイオン交換水に対する静止接触角を60°以下とすることができると推定している。
【0078】
本発明は、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物からなる疎水性硬質表面用洗浄剤組成物を包含する。すなわち、本発明は、(a)成分0.05〜10質量%、並びに(b)成分0.5〜30質量%を含有し、(a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが0.04以上、2以下である、疎水性硬質表面用洗浄剤組成物に関する。本発明の疎水性硬質表面用洗浄剤組成物の好ましい態様は、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物で述べたものから選定できる。疎水性硬質表面用洗浄剤組成物として用いる場合は、(c)〜(f)成分を含有することが好ましい。
【0079】
また、本発明は、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物からなる疎水性硬質表面用改質剤組成物を包含する。すなわち、本発明は、(a)成分0.05〜10質量%、並びに(b)成分0.5〜30質量%を含有し、(a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが0.04以上、2以下である、疎水性硬質表面用改質剤組成物に関する。本発明の疎水性硬質表面用改質剤組成物の好ましい態様は、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物で述べたものから選定できる。
【0080】
<使用方法>
本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物は、当該組成物を疎水性硬質表面に塗布する工程と、該疎水性硬質表面の組成物が塗布された面を水、好ましくは、塗布質量の5倍以上の質量の水によりすすぐ工程とを有する硬質表面の処理方法に使用することが好ましい。また、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物を疎水性硬質表面に塗布する工程の後に、スポンジ等を用いて薄く塗りのばす工程を行い、その後、水によりすすぐ工程を有する硬質表面の処理方法として使用することが更に好ましい。この方法を汚れが付着した疎水性表面に対して行うことで、汚れの除去と防汚性付与の両方を達成することができる。
【0081】
これらの工程は公知の方法に準じて行うことができるが、疎水性硬質表面への塗布には、前述のような、本発明の疎水性硬質表面用処理剤組成物をスプレー式容器に充填してなるスプレー式疎水性硬質表面用処理剤物品を用いることが好ましい。また、洗浄後にすすぐ際に使用する水の温度は、(a)成分と(b)成分とからなる親水化改質成分を疎水性硬質表面に残留させるために、5〜50℃が好ましく、15〜35℃がより好ましい。
【0082】
<本発明の態様>
以下に、本発明の態様を例示する。
【0083】
[1−1] (a)分子中に、カチオン性基を有するモノマー単位を20〜100モル%、ノニオン性基を有するモノマー単位を0〜80モル%、及びアニオン性基を有するモノマー単位を0〜40モル%含有し、カチオン性基を有するモノマー単位に対するアニオン性基を有するモノマー単位のモル比が0.3以下であり、重量平均分子量1,000〜300,000であるカチオン性高分子化合物〔以下、(a)成分という〕0.05〜10質量%、並びに(b)下記(b1)成分及び(b2)成分から選択される1種以上のアニオン界面活性剤〔以下、(b)成分という〕0.5〜30質量%を含有し、
(a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが0.04以上、2以下である、
疎水性硬質表面用処理剤組成物。
(b1)成分;炭素数8〜18の鎖式炭化水素基と、カルボン酸基又はその塩を有するアニオン界面活性剤
(b2)成分;炭素数7〜18の鎖式炭化水素基と、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を有するアニオン界面活性剤
【0084】
[1−2] (a)成分のカチオン性基を有するモノマー単位が、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物から選択される1種以上の化合物を重合して得られる構成単位である、前記[1−1]記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0086】
〔式中、R
1、R
2、R
3、R
7、R
8、R
9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR
12−、−CONHR
12−、−OCOR
12−、−R
12−OCO−R
13−から選ばれる基である。ここでR
12、R
13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R
4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR
1R
2C=C(R
3)−X−である。R
5は炭素数1〜3のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、R
6は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基であり、Z
-は陰イオンを示す。R
10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR
7R
8C=C(R
9)−Y−である。R
11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【0087】
[1−3] カチオン性基を有するモノマー単位の由来となる単量体化合物が、アルキル基の炭素数が1〜3であるジアリルジアルキルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルアミノアルキル−N,N−ジアルキルアミン、アルキル基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルアミノアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が1〜5であるN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩、及びアルケニル基の炭素数が2〜10であり、アルキル基の炭素数が1〜3であるN−(ω−アルケニル)−N,N−ジアルキルアミンから選ばれる化合物である、前記[1−1]又は[1−2]記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0088】
[1−4] (a)成分が、分子中に、カチオン性基を有するモノマー単位を40モル%以上、更に60モル%以上、更に70モル%以上、更に90モル%以上含有する、具体的には、40〜100モル%、更に60〜100モル%、更に、70〜100モル%、更に90〜100モル%含有する、前記[1−1]〜[1−3]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0089】
[1−5] (a)成分の、カチオン性基を有するモノマー単位に対するアニオン性基を有するモノマー単位のモル比、すなわち[アニオン性基を有するモノマー単位/カチオン性基を有するモノマー単位]のモル比が0.2以下、更に0.15以下、更に0.1以下、更に0.02以下、更に0である、前記[1−1]〜[1−4]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0090】
[1−6] (a)成分の重量平均分子量が、2,000以上、更に3,000以上、更に5,000以上、また、200,000以下、更に150,000以下、更に100,000以下、更に50,000以下、更に10,000以下である、具体的には、2,000〜200,000、更に3,000〜150,000、更に5,000〜100,000、更に5,000〜50,000、更に5,000〜10,000である、前記[1−1]〜[1−5]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0091】
[1−7] (a)成分の含有量が、組成物中、0.05質量%以上、更に0.08質量%以上、更に0.1質量%以上、また、5質量%以下、更に2.5質量%以下、更に1質量%以下である、例えば、0.05〜5質量%、更に0.08〜2.5質量%、更に0.1〜1質量%である、前記[1−1]〜[1−6]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0092】
[1−8] (b1)成分が、カルボン酸基又はその塩を1〜2個、更に1個有するアニオン界面活性剤である、前記[1−1]〜[1−7]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0093】
[1−9] (b1)成分が、カルボン酸基の塩を有するアニオン界面活性剤である、前記[1−1]〜[1−8]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0094】
[1−10] (b2)成分が、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を1〜2個、更に1個有するアニオン界面活性剤である、前記[1−1]〜[1−9]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0095】
[1−11] (b2)成分が、スルホン酸基の塩、硫酸基の塩、及びリン酸基の塩から選択される1種以上を有するアニオン界面活性剤である、前記[1−1]〜[1−10]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0096】
[1−12] (b1)成分が炭素数8〜18の鎖式炭化水素基を有する高級脂肪酸塩であり、(b2)成分が炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩から選択される1種以上である、前記[1−1]〜[1−11]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0097】
[1−13] (b)成分として、(b1)成分及び(b2)成分の両方を含有する、更に(b1)成分と(b2)成分とを、(b1)成分/(b2)成分=0.05以上、更に0.1以上、より更に0.3以上、また、1以下、更に0.8以下、より更に0.7以下の質量比で含有する、例えば、0.05〜1、更に0.1〜0.8、より更に0.3〜0.7の質量比で含有する、前記[1−1]〜[1−12]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0098】
[1−14] (b)成分の含有量が、組成物中、0.5質量%以上、また、15質量%以下、更に10質量%以下、更に5質量%以下、更に2質量%以下である、例えば、0.5〜15質量%、更に0.5〜10質量%、更に0.5〜5質量%、更に0.5〜2質量%である、前記[1−1]〜[1−13]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0099】
[1−15] (a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが0.1以上、更に0.3以上、更に0.5以上、また、2以下である、例えば、該比率が、0.1以上、2以下、更に0.3以上、2以下、更に0.5以上、2以下である、前記[1−1]〜[1−14]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0100】
[1−16] (c)成分として水を含有する、更に(c)成分の含有量が、組成物中、50質量%以上、更に60質量%以上、更に70質量%以上、更に80質量%以上である、前記[1−1]〜[1−15]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0101】
[1−17] (d)成分として(b)成分以外の界面活性剤、更に、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤、更に、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有する、前記[1−1]〜[1−16]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0102】
[1−18] (d)成分としてノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有し、(a)成分中のカチオン性基を有するモノマー単位が20モル%以上、また、90モル%以下、更に60モル%以下、更に40モル%以下、更に35モル%以下である、例えば、20〜90モル%、更に20〜60モル%、更に20〜40モル%、更に20〜35モル%である、前記[1−17]記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0103】
[1−19] (d)成分としてノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有し、(a)成分中のノニオン性基を有するモノマー単位が10モル%以上、更に30モル%以上、更に50モル%以上、更に70モル%以上、また、80モル%以下である、例えば、10〜80モル%、更に30〜80モル%、更に50〜80モル%、更に70〜80モル%である、前記[1−17]又は[1−18]記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0104】
[1−20] (d)成分の含有量が、組成物中、0.1質量%以上、更に0.5質量%以上、更に1質量%以上、更に3質量%以上、また、20質量%以下、更に10質量%以下、更に6質量%以下、更に5質量%以下である、例えば、0.1〜20質量%、更に0.5〜10質量%、更に1〜6質量%、更に3〜5質量%である、前記[1−17]〜[1−19]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0105】
[1−21] (b)成分と(d)成分の合計含有量に対する(b)成分の含有量の質量比が、(b)/〔(b)+(d)〕で0.05以上、更に0.1以上、更に0.15以上、また、0.9以下、更に0.5以下、更に0.3以下である、例えば、0.05〜0.9、更に0.1〜0.5、更に0.15〜0.3である、前記[1−17]〜[1−20]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0106】
[1−22] (e)成分としてキレート剤を含有する、更に(e)成分の含有量が、組成物中、0.01質量%以上、更に0.2質量%以上、更に0.5質量%以上、また、10質量%以下、更に7質量%以下、更に5質量%以下である、例えば、0.01〜10質量%、更に0.2〜7質量%、更に0.5〜5質量%である、前記[1−1]〜[1−21]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0107】
[1−23] (f)成分として有機溶媒を含有する、更に(f)成分の含有量が、組成物中、1質量%以上、更に3質量%以上、更に5質量%以上、また、10質量%以下、更に9質量%以下である、例えば、1〜10質量%、更に3〜10質量%、更に5〜9質量%である、前記[1−1]〜[1−22]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0108】
[1−24] 20℃におけるpHが3以上、更に5以上、更に6以上、更に7以上、また、11以下、更に10以下、更に9以下、更に8以下である、例えば、3〜11、更に5〜10、更に6〜9、更に7〜8である、前記[1−1]〜[1−23]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0109】
[1−25] 台所用又は浴室用である、前記[1−1]〜[1−24]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0110】
[1−26] イオン交換水に対する静止接触角が50°以上、更に60°以上、更に70°以上、更に80°以上の疎水性硬質表面用である、前記[1−1]〜[1−25]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0111】
[1−27] 濁度T
1が10以下、更に8以下、更に5以下である、前記[1−1]〜[1−26]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0112】
[1−28] 濁度T
20との比であるT
20/T
1が2以上、更に10以上、更に50以上である、前記[1−1]〜[1−27]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物。
【0113】
[2−1] 前記[1−1]〜[1−28]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物をスプレー式容器に充填してなるスプレー式疎水性硬質表面用洗浄剤物品。
【0114】
[2−2] スプレー式容器が、トリガー式スプレーヤーが装着されたスプレー容器である、前記[2−1]記載のスプレー式疎水性硬質表面用洗浄剤物品。
【0115】
[3−1] (a)成分0.05〜10質量%、並びに(b)成分0.5〜30質量%を含有し、(a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが0.04以上、2以下である、疎水性硬質表面用洗浄剤組成物。
【0116】
[4−1] (a)成分0.05〜10質量%、並びに(b)成分0.5〜30質量%を含有し、(a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bが0.04以上、2以下である、疎水性硬質表面用改質剤組成物。
【0117】
[5−1] 前記[1−1]〜[1−28]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を、疎水性硬質表面に塗布する工程と、該疎水性硬質表面の組成物が塗布された面を、塗布質量の5倍以上、更に20倍以上、より更に50倍以上の質量の水によりすすぐ工程とを有する、疎水性硬質表面の処理方法。
【0118】
[6−1] 前記[1−1]〜[1−28]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を疎水性硬質表面に塗布して該疎水性硬質表面の親水性を向上させる方法。
【0119】
[7−1] 前記[1−1]〜[1−28]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を、汚れが付着した疎水性硬質表面に適用した後、水、好ましくは前記組成物の適量質量の5倍以上、更に20倍以上、より更に50倍以上の質量の水ですすぐことで、該疎水性硬質表面からの汚れの除去と該疎水性硬質表面への親水性の付与の両方を行う、疎水性硬質表面の処理方法。
【0120】
[8−1] 前記[1−1]〜[1−28]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を用いた疎水性硬質表面の処理方法であって、前記組成物の濁度が10以下であり、該組成物を、汚れが付着した疎水性硬質表面に適用した後、水、好ましくは前記組成物の適量質量の5倍以上、更に20倍以上、より更に50倍以上の質量の水ですすぐことで、該疎水性硬質表面からの汚れの除去と該疎水性硬質表面への親水性の付与の両方を行う、疎水性硬質表面の処理方法。この濁度は前記したT
1である。
【0121】
[9−1] 前記[1−1]〜[1−28]の何れか記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物からなる疎水性硬質表面用洗浄剤組成物。
【実施例】
【0122】
<実施例及び比較例>
表1〜3に記載の疎水性硬質表面用処理剤組成物を調製した。表3は洗浄力をより強化した組成を示しており、表3の組成物は疎水性硬質表面用洗浄剤組成物としてより好適である。各組成物のpH(20℃)は水酸化ナトリウム及び塩酸により8に調整した。これら組成物について、下記項目について評価した。詳細を以下に示す。表中、Mwは重量平均分子量であり、EOpはエチレンオキサイド平均付加モル数である。
【0123】
<接触角>
PVC板(株式会社エンジニアリングテストサービス製、形状は25mm×75mm×1mm)に、硬質表面用処理剤組成物を1mL塗布して5分間静置した後、25℃の水道水(流速50mL/秒)で20秒間すすいだ。25℃40%RHに調温調湿された測定室にて、上記処理を行ったPVC板のイオン交換水に対する静止接触角を測定した。測定には協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−500を使用し、20μlのイオン交換水の水滴を処理表面に着滴させ、着滴3秒後から1秒間隔で10回接触角を測定し、その平均値をデータとして記載した。なお、処理前のPVC板の静止接触角は、85°であった。
【0124】
<汚れ残留率>
40℃の湯10Lに12gのモデル皮脂溶液(モデル皮脂/クロロホルム=1、質量比)を添加し分散させ、各組成物で処理したPVC板
※を12時間浸漬させた。浸漬後のPVC板を、25℃の水道水(50mL/秒)で、表裏各10秒間すすぎ、乾燥後に質量を測定して残留皮脂量を測定した。各組成物の組成において(a)成分を配合していない組成物〔(a)成分の分をイオン交換水に置き換える〕で処理したPVC板表面に残留した皮脂量を100%とし、対応する組成物で処理したPVC板表面に残留した皮脂量の割合を算出した。
※各組成物で処理したPVC板
PVC板(株式会社エンジニアリングテストサービス製、形状は80mm×250mm×1mm)の両面に、硬質表面用処理剤組成物をそれぞれ1mL塗布してスポンジで塗りのばして5分間静置した後、25℃の水道水(50mL/秒)で20秒間すすいだもの。
【0125】
<外観>
硬質表面用処理剤組成物の原液、2倍希釈液、5倍希釈液、20倍希釈液を目視観察し、相溶性を評価した。組成物の希釈には25℃のイオン交換水を使用した。
透明:沈殿物や濁りが生じず、透明に溶解した。
白濁:沈殿物や濁りが生じた。
【0126】
<洗浄性>
一般家庭で一ヶ月間使用した浴室用イスに、硬質表面用処理剤組成物を0.05mL塗布し、一定時間(5分もしくは10分間)室温にて静置した。その後水で洗い流して、以下の基準で汚れ落ちを視覚判定した。
◎:5分間静置で汚れが綺麗に落ちる。
○:5分間静置では汚れが綺麗に落ちず、10分間静置で汚れが綺麗に落ちる。
×:10分間静置では汚れが綺麗に落ちない。
【0127】
【表1】
【0128】
*1 (a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bであり、(b’)成分のアニオン基数を用いた値を参考値として( )内に記載した(表2も同様)。
【0129】
実施例1−1〜1−5と比較例1−1〜1−6の結果から、(a)成分と(b)成分とを含有することにより、防汚性付与効果に優れることが分かる。
また、実施例1−1〜1−5と比較例1−7〜1−12の結果から、(a)成分を(b)成分を含有し、且つA/B比率が本発明の範囲内にあると、防汚性付与効果に優れることが分かる。
【0130】
【表2】
【0131】
実施例2−1〜2−8と比較例2−1〜2−4、2−11の結果から、(a)成分と(b)成分とを含有することにより、防汚性付与効果に優れることが分かる。
また、実施例2−1〜2−8と比較例2−5〜2−10の結果から、(a)成分を(b)成分を含有し、且つA/B比率が本発明の範囲内にあると、防汚性付与効果に優れることが分かる。
【0132】
【表3】
【0133】
*2 (a)成分中のカチオン性基のモル数Aと(b)成分中のアニオン性基のモル数Bとの比率A/Bであり、(a’)成分のカチオン基数を用いた値を参考値として( )内に記載した。
【0134】
表3中の成分は以下のものである。
・高分子1:ポリメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド〔Mw=8,000、カチオン性基を有するモノマー単位に対するアニオン性基を有するモノマー単位のモル比(以下、アニオン性モノマー単位のモル比という)0〕
・高分子2:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド=60/40(モル比)の共重合体(Mw=7,000、アニオン性モノマー単位のモル比0)
・高分子3:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド/スチレン=70/30(モル比)の共重合体(Mw=10,000、アニオン性モノマー単位のモル比0)
・高分子4:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド/メタクリル酸メチル=80/20(モル比)の共重合体(Mw=6,000、アニオン性モノマー単位のモル比0)
・高分子5:ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド=24/76(モル比)の共重合体(Mw=120,000、アニオン性モノマー単位のモル比0)
【0135】
・高分子6:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩/メタクリル酸ブチル=45/45/10(モル比)の共重合体(Mw=7,000、アニオン性モノマー単位のモル比1.22)
【0136】
また、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12)エーテル硫酸ナトリウム(EOp4.0)の平均分子量は466.2であり、アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの平均分子量は342.8である。
【0137】
実施例3−1〜3−6と比較例3−1〜3−4の結果から、本発明の(a)成分と(b)成分とを組み合わせることにより、防汚性付与効果に優れ、且つ洗浄性能にも優れた硬質表面用改質剤組成物が得られることが分かる。また、実施例の組成物は、水による希釈、とりわけ5倍希釈、20倍希釈により白濁する現象が観察され、すすぎ工程での親水化改質成分の疎水性硬質表面への吸着が示唆される。