(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1から
図3を参照して、本発明の実施の形態に係る樹脂容器製造装置100について説明する。
【0010】
樹脂容器製造装置100は、加圧水を供給する水圧駆動源10と、水圧駆動源10から供給された加圧水によって駆動される射出成形機20と、水圧駆動源10から供給された加圧水によって駆動されるブロー成形機30とを備える。樹脂容器製造装置100は、射出成形機20にて有底筒状にされた樹脂のプリフォーム1を、ブロー成形機30にて膨らませることで樹脂容器を成形するものである。樹脂容器製造装置100では、樹脂容器として飲料用ペットボトルが成形される。
【0011】
まず、
図1を参照して、水圧駆動源10の構成について説明する。
【0012】
水圧駆動源10は、水が貯められる水タンク11と、水タンク11から水を吸い込んで加圧水を吐出する水圧ポンプ12と、射出成形機20とブロー成形機30とに設けられる水圧アクチュエータへの加圧水の給排を切り換える複数の切換弁13と、ブロー成形機30に設けられる加圧注水部40への加圧水の供給状態を切り換える切換弁14と、水圧ポンプ12から吐出された加圧水の圧力を一定に調整するリリーフ弁15とを備える。
【0013】
射出成形機20では、
図2に示される水圧シリンダ22〜24,水圧モータ28,及び水圧シリンダ29が水圧アクチュエータに該当する。また、ブロー成形機30では、
図3に示される水圧シリンダ32〜37が水圧アクチュエータに該当する。
【0014】
水タンク11は、射出成形機20とブロー成形機30とで加圧水として用いられる水が溜められるタンクである。水タンク11には、射出成形機20とブロー成形機30との動作によって減少した分を補うように、外部の水供給源から水が補給される。
【0015】
水圧ポンプ12は、水タンク11から水を吸い込み、加圧水として吐出するポンプである。水圧ポンプ12は、電動モータ12aによって回転駆動される。
【0016】
切換弁13は、水圧ポンプ12からの加圧水を導いて水圧アクチュエータを一方向に駆動する第一供給ポジション13aと、水圧アクチュエータを他方向に駆動する第二供給ポジション13bと、水圧アクチュエータとの間の加圧水の流れを遮断する遮断ポジション13cとを有する。切換弁13は、コントローラ(図示省略)からの電気信号に応じて加圧水の流れる方向と流量とを無段階に切り換え可能な電磁比例方向流量制御弁である。
【0017】
切換弁14は、水圧ポンプ12からの加圧水を加圧注水部40に導く供給ポジション14aと、水圧ポンプ12からの加圧水の供給を遮断する遮断ポジション14bとを有する。切換弁14は、コントローラからの電気信号に応じて加圧水の流量を無段階に切り換え可能な電磁比例流量制御弁である。
【0018】
リリーフ弁15は、水圧ポンプ12から吐出された加圧水が設定圧力を越えた場合に開状態となり、加圧水の一部又は全部を水タンク11に還流する。これにより、リリーフ弁15は、水圧ポンプ12から吐出された加圧水を常に設定圧力に保持している。
【0019】
次に、
図2を参照して、射出成形機20の構成について説明する。
【0020】
射出成形機20は、プリフォーム1の外形に対応した形状に形成されるプリフォーム用型部材21と、プリフォーム用型部材21に溶融した樹脂材料を注入する樹脂注入部25とを備える。
【0021】
プリフォーム用型部材21は、プリフォーム1の容器部1aに対応する形状に形成されたキャビティ型21aと、プリフォーム1の口部1bに対応する形状に形成された下型21bと、プリフォーム1の開口端に対応する形状に形成された上型21cとを有する。
【0022】
キャビティ型21aは、射出成形機20に固定される雌型である。キャビティ型21aは、プリフォーム1の容器部1aの外周形状を形成する。キャビティ型21aは、樹脂注入部25から樹脂が注入されるゲート21dを有する。
【0023】
下型21bは、キャビティ型21aに当接した状態でプリフォーム1の口部1bの外周形状を形成する。下型21bは、キャビティ型21aに対してプリフォーム1の軸方向に移動可能である。下型21bは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ23の伸縮によって移動する。
【0024】
下型21bは、プリフォーム1の口部1bの左右に分割される一対の割り型である。下型21bは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ22の伸縮によって開閉される。下型21bを割り型とすることで、プリフォーム1の口部1bの外周に樹脂容器のキャップ(図示省略)が螺合する螺旋形状を形成することができる。
【0025】
上型21cは、下型21bに当接した状態でプリフォーム1の口部1bの開口端部を形成する。上型21cは、キャビティ型21a及び下型21bに対してプリフォーム1の軸方向に移動可能である。上型21cは、下型21bを挿通してキャビティ型21aの内部に挿入される突出部21eを有する。この突出部21eは、プリフォーム1の内周形状を形成する。
【0026】
上型21cは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ24によって移動する。上型21cは、キャビティ型21aに対して下型21bが離間する際に、更に下型21bから離間する。これにより、キャビティ型21aと下型21bとから突出部21eを引き抜くことが可能である。
【0027】
樹脂注入部25は、樹脂材料が投入されるホッパ26と、ホッパ26から樹脂材料が供給されるシリンダ27と、シリンダ27内部に設けられたスクリュ27aを回転駆動する水圧モータ28と、シリンダ27内の樹脂材料をプリフォーム用型部材21に向けて射出する水圧シリンダ29とを有する。樹脂注入部25は、水圧ポンプ12から吐出された加圧水によって駆動される。
【0028】
ホッパ26は、上方に開口部が設けられる円筒部材である。ホッパ26の開口部からは、ペレット状の樹脂材料が投入される。樹脂容器が飲料用ペットボトルである場合、ホッパ26から投入される樹脂材料は、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)である。
【0029】
シリンダ27には、ホッパ26から投入された樹脂材料が供給される。シリンダ27は、樹脂材料を溶融させるために外周から加熱されている。シリンダ27内部には、溶融した樹脂材料をプリフォーム用型部材21に向けて移動させるスクリュ27aが設けられる。
【0030】
スクリュ27aは、外周に螺旋形状のフィンが形成されており、中心軸まわりに回転することで、樹脂材料を混練して気泡を取り除くとともに、樹脂材料を先端に向けて案内する。スクリュ27aは、水圧モータ28によって回転駆動される。
【0031】
水圧モータ28は、水圧ポンプ12からの加圧水によって回転駆動される樹脂材料注入用水圧アクチュエータである。水圧モータ28は、スクリュ27aと同軸に設けられ、スクリュ27aと一体に回転する。
【0032】
水圧シリンダ29は、水圧ポンプ12からの加圧水によって駆動される樹脂材料射出用水圧アクチュエータである。水圧シリンダ29は、加圧水の圧力によって、スクリュ27aをシリンダ27の内部に押し込むように軸方向に加圧する。これにより、シリンダ27の内部の溶融した樹脂材料が、プリフォーム用型部材21に射出されることとなる。
【0033】
次に、
図3を参照して、ブロー成形機30の構成について説明する。
【0034】
ブロー成形機30は、樹脂容器の外形に対応した形状に形成される容器用型部材31と、プリフォーム1の開口部から挿入されて当該プリフォーム1を深さ方向に引き延ばす延伸部材38と、水圧ポンプ12から吐出された加圧水をプリフォーム1の開口部から注入して当該プリフォーム1を膨らませる加圧注水部40とを備える。
【0035】
容器用型部材31には、予め加熱されて変形しやすい状態となったプリフォーム1がセットされる。容器用型部材31は、加圧注水部40からの注水によって膨らんだプリフォーム1の外形を規定して樹脂容器を形成する。
【0036】
容器用型部材31は、樹脂容器の外周に対応した形状に形成される一対の左右型31aと、樹脂容器の底面に対応した形状に形成される底型31bと、樹脂容器の口部に対応した形状に形成される下型31cと、樹脂容器の口部の開口端部に対応した形状に形成される上型31dとからなる。つまり、容器用型部材31は、閉状態にて樹脂容器の外形に対応した形状となる複数の分割型からなるものである。
【0037】
左右型31aは、樹脂容器の容器部の左右に分割される一対の割り型である。左右型31aは、樹脂容器の底面に対応する部分に円形の開口部を形成する。左右型31aは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ32によって開閉される。
【0038】
底型31bは、左右型31aの開口部に嵌まった状態で樹脂容器の底面形状を形成する円柱状の型部材である。底型31bは、左右型31aに対して樹脂容器の軸方向に移動可能である。底型31bは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ33によって移動する。
【0039】
下型31cは、左右型31aに対して樹脂容器の軸方向に移動可能である。下型31cは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ35によって移動する。
【0040】
また、下型31cは、樹脂容器の口部の左右に分割される一対の割り型である。口部は、プリフォーム1が成形された時点で完成されているため、下型31cは、プリフォーム1の口部1bを保持するだけである。下型31cは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ34によって開閉される。
【0041】
上型31dは、下型31cに当接した状態で樹脂容器の口部の開口端部を形成する。口部は、プリフォーム1が成形された時点で完成されているため、上型31dは、下型31cと同様に、プリフォーム1の口部1bの開口端部を保持するだけである。上型31dは、左右型31a及び下型31cに対して樹脂容器の軸方向に移動可能である。上型31dは、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ36によって移動する。
【0042】
上型31dは、左右型31aに対して下型31cが離間する際に、更に下型31cから離間する。これにより、左右型31aと下型31cとから後述する加圧注水部40の噴出ノズル42を引き抜くことが可能である。
【0043】
ブロー成形機30では、左右型31aを開閉駆動する水圧シリンダ32と、底型31bを進退駆動する水圧シリンダ33と、下型31cを開閉駆動する水圧シリンダ34と、下型31cを進退駆動する水圧シリンダ35と、上型31dを進退駆動する水圧シリンダ36とが、分割型を開閉する型締めアクチュエータに該当する。
【0044】
延伸部材38は、上型31dの中心を軸方向に貫通する。延伸部材38は、樹脂容器の内周に進退可能に設けられる。延伸部材38は、水圧ポンプ12から吐出された加圧水で駆動される水圧シリンダ37によって進退する。延伸部材38の先端には、プリフォーム1を引き延ばして底型31bとの間に樹脂容器の底面を形成する底面形成部38bが設けられる。
【0045】
加圧注水部40は、延伸部材38の軸方向に形成される加圧水流路41と、延伸部材38がプリフォーム1を引き延ばす際に、加圧水流路41からプリフォーム1の内周に加圧水を噴き出す噴出ノズル42とを有する。
【0046】
加圧水流路41は、延伸部材38の一端部38aから軸方向に貫通して形成される。加圧水流路41は、延伸部材38の一端部38aから供給される加圧水を噴出ノズル42に導く流路である。
【0047】
噴出ノズル42は、プリフォーム1の容器部1aの内周に位置し、加圧水を噴き出すことでプリフォーム1を膨らませるものである。噴出ノズル42は、延伸部材38の軸方向への移動に伴い、底型31bに向かって軸方向に移動しながら加圧水を噴き出すものである。これに代えて、延伸部材38がプリフォーム1を引き延ばした状態で、加圧水流路41からプリフォーム1の内周に加圧水を噴き出すようにしてもよい。
【0048】
次に、
図2及び
図3を参照して、樹脂容器製造装置100を用いて樹脂容器を成形する樹脂容器製造方法について説明する。
【0049】
最初に、
図2に示す射出成形機20にて、プリフォーム1を成形する。
【0050】
まず、水圧シリンダ22〜24を駆動して、プリフォーム用型部材21を閉じる。これが、プリフォーム用型部材21の型締め工程である。
【0051】
同時に、樹脂注入部25では、水圧モータ28を駆動して、スクリュ27aを回転させる。これにより、ホッパ26から供給された樹脂材料が、シリンダ27内で溶融して混練される。
【0052】
樹脂材料の溶融混練ができたら、水圧シリンダ29を駆動して、シリンダ27内の樹脂材料をプリフォーム用型部材21に射出する。これにより、プリフォーム用型部材21の内部に樹脂材料が充填される。これが、樹脂材料充填工程である。
【0053】
プリフォーム用型部材21に充填された樹脂材料が冷却されたら、プリフォーム用型部材21からプリフォーム1を取り出す。これが、プリフォーム用型部材21の型開き工程である。具体的には、以下のとおりである。
【0054】
水圧シリンダ23と水圧シリンダ24とを駆動して、下型21bと上型21cとをキャビティ型21aから離間する方向に移動させる。このとき、上型21cの移動量が、下型21bの移動量と比較してプリフォーム1の軸方向長さ分だけ大きくなるように水圧シリンダ23と水圧シリンダ24とを駆動する。これにより、プリフォーム1がキャビティ型21aから引き抜かれるとともに、上型21cの突出部21eがプリフォーム1から引き抜かれることとなる。
【0055】
そして、水圧シリンダ22を駆動して、下型21bを左右に開く。これにより、プリフォーム1がプリフォーム用型部材21から取り出され、プリフォーム1の成形が完了する。
【0056】
続けて、
図3に示すブロー成形機30にて、プリフォーム1から樹脂容器を成形する。
【0057】
まず、水圧シリンダ32〜36を駆動して、容器用型部材31を閉じる。これが、容器用型部材31の型締め工程である。このとき、容器用型部材31内には、予め加熱されて変形しやすい状態となったプリフォーム1を予め挿入しておく。
【0058】
次に、水圧シリンダ37を駆動し、延伸部材38がプリフォーム1を引き延ばすように移動させる。これにより、プリフォーム1は深さ方向に引き延ばされ、延伸部材38の底面形成部38bと底型31bとの間に、樹脂容器の底面が形成される。これが、容器延伸工程である。
【0059】
次に、加圧注水部40に加圧水を供給する。加圧水は、延伸部材38内を貫通する加圧水流路41を通過し、噴出ノズル42からプリフォーム1の容器部1aの内周に噴き出される。これにより、水圧ポンプ12から吐出された加圧水がプリフォーム1の開口部から注入され、プリフォーム1が容器用型部材31内にて膨らむ。これが、加圧注水工程である。膨らんだプリフォーム1は、樹脂容器の外形に対応した形状に形成された容器用型部材31にて外形が規定されて樹脂容器となる。
【0060】
このように、ブロー成形機30では、水圧ポンプ12から吐出された加圧水を注入してプリフォーム1を膨らませることで樹脂容器を成形する。よって、樹脂容器の成形と同時に、加圧水によって樹脂容器の内部を洗浄することが可能である。また、樹脂容器の内部に加圧水を注入することで、樹脂容器の成形と同時に、樹脂容器の耐圧試験を行うことが可能である。したがって、洗浄工程及び耐圧試験工程を別途設ける必要がないため、樹脂容器の製造工程を簡素化することができる。
【0061】
樹脂容器が成形され、内部の洗浄及び耐圧試験が完了したら、容器用型部材31から樹脂容器を取り出す。これが、容器用型部材31の型開き工程である。具体的には、以下のとおりである。
【0062】
まず、水圧シリンダ32を駆動して、左右型31aを左右に開くとともに、水圧シリンダ33を駆動して、底型31bを樹脂容器から離間させる。
【0063】
次に、水圧シリンダ35と水圧シリンダ36とを駆動して、下型31cと上型31dとを左右型31aから離間する方向に移動させる。同時に、水圧シリンダ37を駆動して、延伸部材38を上型31dとともに移動させて樹脂容器の内部から引き抜く。
【0064】
このとき、上型31d及び延伸部材38の移動量が、下型31cの移動量と比較して大きくなるように水圧シリンダ35〜37を駆動する。これにより、樹脂容器が左右型31aから引き抜かれるとともに、上型31dが樹脂容器から離間して延伸部材38が樹脂容器から引き抜かれることとなる。
【0065】
そして、水圧シリンダ34を駆動して、下型31cを左右に開く。これにより、樹脂容器が容器用型部材31から取り出され、樹脂容器の成形が完了する。
【0066】
ここで、従来の射出成形機及びブロー成形機では、これらを構成するアクチュエータを駆動するために、エア駆動,電動駆動,及び油圧駆動の複数の駆動源が用いられていた。このような複数の駆動源を用いて構成されるシステムでは、各々の駆動源におけるメンテナンス,保守,及び管理が必要となり、構造が複雑化するという問題点があった。
【0067】
これに対して、射出成形機20とブロー成形機30とは、上述のように、共通の水圧ポンプ12から吐出された加圧水のみによって駆動される。よって、作動流体が共通化されるため、樹脂容器を一貫して製造できる。また、駆動源が一種類に統一され、樹脂容器製造装置100の構造が簡素化されるため、メンテナンス,保守,及び管理が容易となる。
【0068】
また、射出成形機20とブロー成形機30とを駆動する作動流体は水であるため、樹脂容器を汚すことがなく、また、環境汚染を防止することもできる。
【0069】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0070】
水圧ポンプ12から吐出された加圧水を注入してプリフォーム1を膨らませて樹脂容器を成形することで、樹脂容器の成形と同時に、加圧水で樹脂容器の内部を洗浄することが可能である。また、樹脂容器の内部に加圧水を注入することで、樹脂容器の成形と同時に、樹脂容器の耐圧試験を行うことが可能である。したがって、洗浄工程及び耐圧試験工程を別途設ける必要がないため、樹脂容器の製造工程を簡素化することができる。
【0071】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0072】
例えば、樹脂容器製造装置100は、飲料用ペットボトルを成形するものであるが、これに代えて、食品用樹脂容器や工業用樹脂容器など他の樹脂容器を成形するようにしてもよい。