特許第5957265号(P5957265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957265
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】注出キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/06 20060101AFI20160714BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   B65D47/06 H
   B65D47/08 F
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-78771(P2012-78771)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-116767(P2013-116767A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-239426(P2011-239426)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】星野 真弥
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 茂雄
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−074470(JP,A)
【文献】 実開平04−029958(JP,U)
【文献】 実開平02−102369(JP,U)
【文献】 特開2010−149887(JP,A)
【文献】 特開2006−256619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器の口部に装着されるキャップ本体と、
該キャップ本体に第1ヒンジ部を介して回動自在に連結された有頂筒状の蓋体と、を備えるとともに、前記キャップ本体に、キャップ軸に交差する方向に延在し、その先端に注出口が形成された注出筒が備えられた注出キャップであって、
前記蓋体には、その内側に向けて突設された基体と、前記注出口に着脱可能に嵌合された栓体と、前記栓体を前記基体の先端に連結させる第2ヒンジ部と、を有する栓部材が設けられ、
前記蓋体には、前記キャップ本体に対する前記蓋体の閉動作時に、前記栓部材の前記栓体を前記注出口に向けて押し込む押下部が配設されることを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
請求項1記載の注出キャップにおいて、
前記蓋体には、前記キャップ本体に対する前記蓋体の開動作時に前記栓体に係合して、該栓体を前記基体に対して前記第2ヒンジ部回りに回動させつつ、前記注出口から離脱させる係合部が配設されていることを特徴とする注出キャップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の注出キャップにおいて、
前記基体には、前記第2ヒンジ部が延びる方向と平行に当該基体を折曲変形自在にする折曲部が形成され、
前記栓部材は、前記基体が前記折曲部を介して折曲変形された状態で、前記栓体が前記注出口内に嵌合されるように配設されていることを特徴とする注出キャップ。
【請求項4】
請求項3に記載の注出キャップにおいて、
前記栓部材は、前記基体が当該基体を前記折曲部を介して折曲変形する前の状態に対して前記キャップ本体から離間する側に向けて折曲するように弾性変形された状態で、前記栓体が前記注出口内に嵌合されるように配設され、
前記蓋体には、該蓋体が前記キャップ本体に対して開姿勢にあるとき、前記基体を前記キャップ本体側から支持可能な第1支持体が配設されていることを特徴とする注出キャップ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の注出キャップにおいて、
前記蓋体には、該蓋体が前記キャップ本体に対して開姿勢にあるとき、前記基体を該蓋体の天壁部側から支持可能な第2支持体が配設されていることを特徴とする注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内容物が収容される容器の口部に装着されるキャップ本体と、このキャップ本体に装着された有頂筒状の蓋体と、を備え、キャップ本体に、キャップ軸に交差する方向に沿って延在する注出筒が配設された注出キャップが知られている。
【0003】
このような注出キャップでは、注出筒に装着されて注出筒の注出口を閉じる栓を備え、キャップ本体に蓋体を嵌合させたときに、栓が蓋体に制せられて注出口から離脱不能とする構成が知られている(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−90342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の注出キャップにおいては、注出キャップ(注出口)を閉じる際、栓を注出筒に装着した後、さらに蓋体をキャップ本体に装着する操作が必要であり、操作が面倒であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、注出口を閉じる操作が容易に行える注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る注出キャップは、内容物が収容される容器の口部に装着されるキャップ本体と、該キャップ本体に第1ヒンジ部を介して回動自在に連結された有頂筒状の蓋体と、を備えるとともに、前記キャップ本体に、キャップ軸に交差する方向に延在し、その先端に注出口が形成された注出筒が備えられた注出キャップであって、前記蓋体には、その内側に向けて突設された基体と、前記注出口に着脱可能に嵌合された栓体と、前記栓体を前記基体の先端に連結させる第2ヒンジ部と、を有する栓部材が設けられ、前記蓋体には、前記キャップ本体に対する前記蓋体の閉動作時に、前記栓部材の前記栓体を前記注出口に向けて押し込む押下部が配設されることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、栓体と基体とが第2ヒンジ部を介して連結されるとともに、蓋体に押下部が配設されているので、キャップ本体に対する蓋体の閉動作時に、栓体が基体に対して第2ヒンジ部回りにキャップ本体側に向けて回動させられて注出口に向けて押し込まれることになる。
したがって、蓋体をキャップ本体に対して閉じる操作だけで、栓体により注出口を閉塞することが可能になり、注出口を容易に閉じることができる。
【0009】
また、前記蓋体には、前記キャップ本体に対する前記蓋体の開動作時に前記栓体に係合して、該栓体を前記基体に対して前記第2ヒンジ部回りに回動させつつ、前記注出口から離脱させる係合部が配設されていてもよい。
【0010】
この場合、蓋体に係合部が配設されているので、内容物の注出時、蓋体をキャップ本体に対して開くと、栓体も注出口から確実に外れて注出口が開口されることになり、注出口を容易に開けることができる。
【0011】
また、前記基体には、前記第2ヒンジ部が延びる方向と平行に当該基体を折曲変形自在にする折曲部が形成され、前記栓部材は、前記基体が前記折曲部を介して折曲変形された状態で、前記栓体が前記注出口内に嵌合されるように配設されていてもよい。
【0012】
この場合、基体に折曲部が形成されているので、蓋体がキャップ本体に対して閉姿勢にあるときの、栓体の注出口に対する位置を安定させることが可能になり、上述の作用効果を有する注出キャップを容易かつ精度よく形成できる。
【0013】
また、前記栓部材は、前記基体が当該基体を前記折曲部を介して折曲変形する前の状態に対して前記キャップ本体から離間する側に向けて折曲するように弾性変形された状態で、前記栓体が前記注出口内に嵌合されるように配設され、前記蓋体には、該蓋体が前記キャップ本体に対して開姿勢にあるとき、前記基体を前記キャップ本体側から支持可能な第1支持体が配設されていてもよい。
【0014】
この場合、蓋体がキャップ本体に対して開姿勢にあるときに、基体が復元変形しようとしても、この変形を支持体により阻止することが可能になり、この蓋体の開姿勢時における注出キャップの見映えが悪くなるのを防ぐことができる。
【0015】
また、前記蓋体には、該蓋体が前記キャップ本体に対して開姿勢にあるとき、前記基体を該蓋体の天壁部側から支持可能な第2支持体が配設されていてもよい。
【0016】
この場合、蓋体がキャップ本体に対して開姿勢にあるときに基体を蓋体の天壁部側から支持することが可能になり、蓋体に対する基体の位置を安定させることができる。したがって、キャップ本体に対する蓋体の閉動作時に、栓体を注出口内に再現性よく確実に嵌合することができる。
特に、基体をキャップ本体側から支持可能な第1支持体が蓋体に配設されている場合には、基体をキャップ本体側及び蓋体の天壁部側の双方向から支持することが可能になるので、蓋体に対する基体の位置がさらに安定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る注出キャップによれば、注出口を閉じる操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る注出キャップにおいて、閉姿勢を示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る注出キャップにおいて、開姿勢を示す平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る注出キャップにおいて、開姿勢を示す断面図である。
図4】注出キャップの作用を説明するための断面図である。
図5】注出キャップの作用を説明するための断面図である。
図6】注出キャップの作用を説明するための断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る注出キャップにおいて、閉姿勢を示す断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る注出キャップにおいて、開姿勢を示す平面図である。
図9】注出キャップの作用を説明するための断面図である。
図10】注出キャップの作用を説明するための断面図である。
図11図10のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る注出キャップを説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る注出キャップ10は、内容物が収容された容器1の口部2に装着されて、内容物を注出するものである。この注出キャップ10は、容器1の口部2に装着されるとともに、注出口11が形成された有頂筒状のキャップ本体12と、キャップ本体12に第1ヒンジ部13を介して回動自在に連結された有頂筒状の蓋体14と、を備えている。
【0020】
なお、キャップ本体12及び蓋体14は、図1に示す閉姿勢において共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸をキャップ軸O1といい、キャップ軸O1方向に沿って蓋体14側を上側、キャップ本体12側を下側といい、キャップ軸O1に直交する方向を径方向といい、キャップ軸O1回りに沿った方向を周方向という。また、以下の説明では、図1に示す閉姿勢の平面視において、キャップ軸O1を挟んで注出口11側を前側、キャップ軸O1を挟んで注出口11側と反対側(第1ヒンジ部13側)を後側という。さらに、図1に示す閉姿勢の平面視において、この前後方向に直交する方向を左右方向という。
【0021】
キャップ本体12は、口部2よりも大径の筒状に形成されて口部2に嵌合される周壁部21と、周壁部21の上端開口部から径方向の内側に向けて突設された環状の頂壁部22と、を備えている。
頂壁部22は、径方向の中央部に容器1の内部に連通する連通口23を有している。この連通口23は、径方向のうち前後方向を長軸方向とする長円形状に形成され、この連通口23の開口縁を上方から覆うように導入部24が連設されている。導入部24は、連通口23の開口縁から上方に向かうに従い漸次先細るドーム状に形成され、その上端部のうち前側に位置する部分には導入部24内に連通する注出筒25が連設されている。
【0022】
注出筒25は、上方に向かうに従い前側に向けて傾斜するように突設され、その先端には導入部24及び連通口23を通じて容器1内に連通する注出口11が形成されている。
すなわち、注出口11は、斜め前上方に向けて開口して、容器1内の内容物を注出できるようになっている。なお、注出筒25は、その注出筒軸O2方向がキャップ軸O1方向に交差していれば、注出筒軸O2とキャップ軸O1とのなす角度は適宜設計変更が可能である。
【0023】
頂壁部22の外周部には、下方に向けて突設されたシール筒26が形成されている。シール筒26は、口部2よりも小径の筒状に形成されて口部2の内側に嵌合されており、径方向において口部2を間に挟んで周壁部21に対向している。すなわち、周壁部21とシール筒26とにより口部2が挟持されることで、注出キャップ10が容器1に装着されている。
【0024】
また、頂壁部22の外周縁、すなわち径方向に沿う周壁部21の内周縁とシール筒26の外周縁との間に位置する部分には、装着筒27が上方に向けて立設されている。この装着筒27は、導入部24の全周を取り囲むように形成されている。具体的に、装着筒27は、キャップ軸O1方向に沿う高さが導入部24よりも低く形成されている。また、装着筒27の上端部には、径方向の外側に向けて突出する係合凸部28が全周に亘って形成されている。
【0025】
蓋体14の周壁部31は、キャップ本体12の周壁部21と同径に形成され、各周壁部31,21の周方向で対応する位置、本実施形態では周壁部31,21の後端部同士が上述した第1ヒンジ部13を介して回動自在に連結されている。また、周壁部31の内面における下部には、径方向の外側に向けて窪む係合凹部32が全周に亘って形成されている。係合凹部32は、上述した装着筒27の係合凸部28に係合自在に構成され、これにより蓋体14とキャップ本体12とが着脱自在に構成されている。なお、周壁部31の上部のうち、前側に位置する部分には径方向の内側に向けて窪む操作凹部33が形成されている。
【0026】
蓋体14の天壁部35は、周壁部31の上端開口部を覆う円板状に形成されている。この天壁部35の前端部には、左右方向に間隔をあけて対向する一対のガイド壁部41が下方に向けて突設されている。これらガイド壁部41は側面視台形状に形成され、互いに平行に配設されている。具体的に、ガイド壁部41は、その前端縁が周壁部31の内面に連設される一方、後端縁が下方に向かうに従い前方に向けて傾斜している。各ガイド壁部41の下部における後端部には、左右方向の内側、すなわち対向する他のガイド壁部41に向けて突出する係合部42が配設されている。
【0027】
また、左右方向に沿う各ガイド壁部41間の間隔は、注出筒25の外径よりも大きく設定され、閉姿勢においてガイド壁部41間に注出筒25の先端部が収容される。なお、本実施形態では、側面視においてガイド壁部41の後端部と注出筒25の先端部とが重なるように配設されている。
【0028】
天壁部35のうち、左右方向に沿う各ガイド壁部41間に位置する部分には、注出筒軸O2を間に挟んで左右方向に間隔をあけて対向する一対の押下部43が下方に向けて突設されている。これら押下部43は、ガイド壁部41よりも外形が小さい側面視台形状に形成されるとともに、互いに平行に配設されている。具体的に、押下部43は、ガイド壁部41と同様に、前端縁が周壁部31の前端部に連設される一方、後端縁が下方に向かうに従い前方に向けて傾斜している。この場合、押下部43の後端縁は、上述した注出筒軸O2方向に直交する方向に沿って延在している。また、左右方向に沿う各押下部43間の間隔は注出筒25の外径よりも小さく設定されている。したがって、押下部43は、その後端縁が注出筒軸O2方向に沿う注出口11との間に間隔をあけた状態で、注出口11に対向して配設されている。
【0029】
ここで、天壁部35のうち、前後方向に沿うキャップ軸O1よりも後側であって、上述した左右方向に沿う中間に位置する部分には、栓部材45が形成されている。
栓部材45は、前後方向を厚さ方向とする板状に形成されるとともに、左右方向に沿う幅が上述したガイド壁部41間の間隔よりも狭く、係合部42間の間隔よりも広く形成されている。具体的に、栓部材45は、天壁部35から下方に向けて突設された基体46と、注出口11に着脱可能に嵌合された栓体47と、これら基体46と栓体47とを連結する第2ヒンジ部48と、を備えている。
【0030】
基体46は、根元部51と可動片52とが折曲部53を介して前後方向に折曲変形自在に形成されている。根元部51は、キャップ軸O1方向に沿って延在しており、上端部が天壁部35に連設される一方、下端部がキャップ軸O1方向に沿う周壁部31の中間部分に位置している。この場合、根元部51の下端部と導入部24の上面との間には、キャップ軸O1方向に沿って隙間を有している。折曲部53は、根元部51に対して薄肉に形成された部分であり、左右方向に沿う基体46の全体に亘って形成されている。なお、折曲部53は、可動片52が根元部51に対して折曲変形自在に構成されていれば構わない。
可動片52は、厚さが根元部51と同等に形成されるとともに、長さが根元部51よりも長く形成され、根元部51の下端部から斜め前上方に向かって延在するように折曲部53を介して折曲変形されている。可動片52の先端部は注出口11の上方であって、上述した押下部43の後端縁に近接する位置まで延在している。
【0031】
栓体47は、可動片52の先端部に第2ヒンジ部48を介して前後方向に回動自在に形成されている。なお、第2ヒンジ部48は、栓体47に対して薄肉に形成された部分であり、左右方向に沿う栓体47の全体に亘って形成されている。すなわち、栓体47及び上述した可動片52は、互いに平行に延びる第2ヒンジ部48及び折曲部53を起点にそれぞれ折曲変形するように構成されている。
【0032】
栓体47は、厚さが可動片52と同等に形成されるとともに、長さが可動片52よりも短く形成され、可動片52の先端から斜め前下方に向かって延在するように第2ヒンジ部48を介して折曲変形されている。この場合、栓体47は、注出筒軸O2方向に沿う注出口11の開口縁と押下部43の後端縁との間に挟持され、押下部43により注出口11に向けて押し込まれた状態で保持されている。
【0033】
また、栓体47は、注出口11の外径よりも大きく形成され、栓体47のうち注出筒軸O2に沿って注出口11と対向する面には、注出口11内に向けて膨出するシール部55が形成されている。このシール部55は、中央部から外周部に向かうに従い漸次厚さが薄くなる凸曲面状に形成されている。したがって、栓体47が押下部43により注出筒25側に向けて押し込まれることで、シール部55の外周部分が注出口11の開口縁に当接するとともに、中央部が注出口11内に嵌合されている。これにより、注出口11が閉塞されている。
【0034】
また、前後方向に沿うガイド壁部41と根元部51との間、好ましくはキャップ軸O1よりも前側の部分には、左右方向に間隔をあけて対向する一対の保持体56が天壁部35から下方に向けて突設されている。これら保持体56は、下方に向かうに従い先細る側面視台形状に形成され、互いに平行に配設されている。また、各保持体56の下端部には、左右方向の内側、すなわち対向する他の保持体56に向けて突出する第1支持体(係合突起)57が配設されている。これら第1支持体57の表面のうち、左右方向の内側を向いて他の保持体56における第1支持体57に対向する面は下方から上方に向かうに従い漸次左右方向の間隔が縮小する傾斜面となっている。
【0035】
そして、左右方向に沿う各保持体56間の間隔は、上述したガイド壁部41間の間隔と同等に設定され、各第1支持体57のうち、左右方向に沿う内側端部同士の間隔は、上述した可動片52の左右方向に沿う幅よりも狭くなっている。したがって、可動片52は、開姿勢にあるとき、保持体56間において第1支持体57に下方(キャップ本体12側)から支持され、第1支持体57より下方への復元変形が規制される。なお、閉姿勢において保持体56間には、注出筒25の基端部が収容されており、本実施形態では、側面視において保持体56の下部と注出筒25の根元部分とが重なるように配設されている。
【0036】
次に、上述した注出キャップ10の作用を説明する。以下の説明では、図2,3に示す成形直後の状態、すなわち開姿勢において栓体47が折曲変形される前の状態から閉姿勢にするまでの閉動作について主に説明する。
図2,3に示すように、まず蓋体14を第1ヒンジ部13回りに回動させ、キャップ本体12に接近させる。すると、図4に示すように、栓部材45のうち、栓体47の先端が導入部24の上面に接触する。
【0037】
この状態で、さらに蓋体14を第1ヒンジ部13回りに回動させると、栓体47の先端が導入部24の上面を前方に向かって摺接しながら、蓋体14がキャップ本体12に接近していく。このとき、栓部材45のうち、可動片52が根元部51に対して折曲部53を介して前方に折曲変形することで、可動片52及び栓体47が蓋体14の天壁部35に接近していく。
【0038】
そして、図5に示すように、可動片52が保持体56間に下方から進入する。その後、可動片52が第1支持体57に差し掛かると、例えば、保持体56のうち少なくとも一方が左右方向に沿う外側に弾性変形することで、可動片52が第1支持体57を乗り越える。これにより、可動片52の周縁部が第1支持体57に引っ掛かり、第1支持体57により下方(キャップ本体12側)から支持されることで、可動片52の下方(折曲方向と反対方向)への移動が規制される。
一方で、栓体47はガイド壁部41間に下方から進入する。その後、栓体47が係合部42に差し掛かると、例えば、ガイド壁部41のうち少なくとも一方が左右方向に沿う外側に弾性変形することで、栓体47が係合部42を乗り越える。これにより、栓体47の周縁部が係合部42に引っ掛かり、係合部42により下方から支持される。
【0039】
その後、さらに蓋体14を第1ヒンジ部13回りに回動させると、可動片52は導入部24及び注出筒25により蓋体14の天壁部35側に向けて押し込まれ、保持体56間を上方に向けて移動する。
一方で、可動片52の移動に伴い、栓体47がガイド壁部41間を上方(蓋体14の天壁部35側)に向けて移動すると、栓体47のうちシール部55と反対側の面が押下部43の端縁に当接する。そして、図6に示すように、栓体47は押下部43により下方に向けて押し込まれることで、第2ヒンジ部48を介して注出口11に向けて折曲変形することになる。これにより、栓体47は、押下部43の後端縁と注出口11の開口縁との間に挟持されることになり、シール部55の外周部分が注出口11の開口縁に密接して、注出口11が閉塞される。
そして、蓋体14の係合凹部32と装着筒27の係合凸部28とが係合することにより、注出キャップ10が閉姿勢となる。
【0040】
その後、内容物を注出する際、閉姿勢の注出キャップ10を開姿勢とするためには、操作凹部33に指等を引っ掛け、蓋体14を引き上げることで、蓋体14の係合凹部32と装着筒27の係合凸部28との係合を解除する。そして、蓋体14を第1ヒンジ部13回りに回動させ、キャップ本体12から離間させることで、上述した閉動作と逆の動作により開動作が行われる。すなわち、蓋体14がキャップ本体12から離間すると、栓部材45のうち、栓体47が第2ヒンジ部48を介して復元変形し始めるとともに、可動片52が折曲部53を介して復元変形し始める。
【0041】
この際、蓋体14を引き上げると、栓体47の外周縁のうちシール部55側から係合部42が係合される。すると、蓋体14の開動作に応じて、係合部42が栓体47のうちシール部55側の外周縁上を第2ヒンジ部48に向けて摺接する。これにより、栓体47は、係合部42に係合された状態で、第2ヒンジ部48を介して注出口11から離脱する方向に向けて変形することになる。そして、栓体47は、係合部42よりも下方(キャップ本体12側)に向けた移動が規制された状態で、蓋体14とともに第1ヒンジ部13回りに回動する。
また、前記開動作により、可動片52の外周縁が第1支持体57に係合される。これにより、可動片52は第1支持体57よりも下方(キャップ本体12側)に向けた移動が規制された状態で、蓋体14とともに第1ヒンジ部13回りに回動し、開姿勢となる。
また、上述の第2ヒンジ部48、及び前記折曲部53が復元力を発揮しない構成とした場合においても、上述の係合部42、及び第1支持体57の作用により、上述の開動作が達成される。
【0042】
このように、本実施形態では、キャップ本体12に対する蓋体14の閉動作時に、栓部材45の栓体47を注出口11に向けて押し込む押下部43が配設されている構成とした。
この構成によれば、栓体47と基体46とが第2ヒンジ部48を介して連結されるとともに、蓋体14に押下部43が配設されているので、キャップ本体12に対する蓋体14の閉動作時に、栓体47が基体46に対して第2ヒンジ部48回りにキャップ本体12側に向けて折曲変形することで、注出口11に向けて押し込まれることになる。
したがって、蓋体14をキャップ本体12に対して閉じる操作だけで、栓体47により注出口11を閉塞することが可能になり、注出口11を容易に閉じることができる。
【0043】
また、蓋体14のガイド壁部41に係合部42が配設されているので、内容物の注出時、蓋体14をキャップ本体12に対して開くと、栓体47も注出口11から確実に外れて注出口11が開口されることになり、注出口11を容易に開けることができる。
さらに、基体46に折曲部53が形成されているので、蓋体14がキャップ本体12に対して閉姿勢にあるときの、栓体47の注出口11に対する位置を安定させることが可能になり、上述の作用効果を有する注出キャップ10を容易かつ精度よく形成できる。
また、蓋体14がキャップ本体12に対して開姿勢にあるときに、基体46が復元変形しようとしても、この変形を第1支持体57により阻止することが可能になり、この蓋体14の開姿勢時における注出キャップ10の見映えが悪くなるのを防ぐことができる。
【0044】
次に、第2実施形態に係る注出キャップを説明する。なお、本実施形態に係る注出キャップ100は、上述した第1実施形態に係る注出キャップ10とその基本的構成が同様であり、上述した第1実施形態に係る注出キャップ10に別の要素を付加したものである。したがって、図7から図11においては、図1から図6と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
本実施形態における注出キャップ100の蓋体101において、図7に示すように、保持体56の上下方向の中央部には、左右方向の内側、すなわち対向する他の保持体56に向けて突出する第2支持体102が配設されている。第2支持体102は、左右方向の内側に向けて膨出するとともに上下方向に長い楕円半球状をなしている。
【0046】
また、栓部材103のシール部104は、栓体105のうち注出筒軸O2に沿って注出口11と対向する面から注出筒軸O2に沿って突出する環状のリブ状に形成されている。したがって、栓体105が押下部43により注出筒25側に向けて押し込まれることで、シール部104が注出口11の内側に嵌合される。これにより、注出口11が閉塞される。なお、シール部104の形状は、第1実施形態におけるシール部55のように注出口11内に向けて膨出する形状など、他の形状であってもよい。
【0047】
次に、上述した注出キャップ100の作用を説明する。
図8に示す状態から、まず蓋体101を第1ヒンジ部13回りに回動させ、キャップ本体12に接近させると、栓体105の先端が導入部24の上面に接触する。
この状態で、さらに蓋体101を第1ヒンジ部13回りに回動させると、図9に示すように、上述と同様に、可動片52が保持体56間に下方から進入し、可動片52が第1支持体57を乗り越える。これにより、可動片52の下方(折曲方向と反対方向)への移動が規制される。
一方で、栓体105は、ガイド壁部41間に下方から進入し、係合部42を乗り越える。これにより、栓体105は、係合部42により下方から支持される。
【0048】
さらに蓋体101を第1ヒンジ部13回りに回動させると、可動片52は、導入部24及び注出筒25により蓋体101の天壁部35側に向けて押し込まれ、保持体56間を上方に向けて移動する。そして、可動片52が第2支持体102に差し掛かると、例えば保持体56のうち少なくとも一方が左右方向に沿う外側に弾性変形することで、可動片52が第2支持体102を乗り越える。このとき、第2支持体102が楕円半球状の突出部となっているため、可動片52が第2支持体102に引っ掛からずに第2支持体102を乗り越える。
その後、さらに蓋体101を第1ヒンジ部13回りに回動させると、可動片52は、保持体56間を上方に向けて移動し、栓体47は、可動片52の移動に伴って上方に向けて移動する。これにより、シール部104が注出口11の内側に嵌合し、図7に示すように、注出口11が閉塞される。
【0049】
内容物を注出する際、閉姿勢の注出キャップ100を開姿勢とするためには、蓋体101を引き上げて第1ヒンジ部13回りに回動させ、キャップ本体12から離間させる。蓋体101がキャップ本体12から離間すると、栓体105が第2ヒンジ部48を介して復元変形し始めるとともに、可動片52が折曲部53を介して復元変形し始める。
この際、蓋体101の開動作に応じて、栓体105は、係合部42に係合された状態で、第2ヒンジ部48を介して注出口11から離脱する方向に向けて変形し、係合部42よりも下方(キャップ本体12側)に向けた移動が規制された状態で、蓋体101とともに第1ヒンジ部13回りに回動する。
【0050】
また、この開動作により、可動片52は、保持体56間を下方に向けて移動し、第2支持体102に差し掛かると、可動片52が第2支持体102を乗り越える。そして、可動片52の外周縁は、図10,11に示すように、第1支持体57及び第2支持体102に係合される。これにより、可動片52は、第1支持体57よりも下方(キャップ本体12側)及び第2支持体102よりも上方(天壁部35側)に向けた移動が規制された状態で、蓋体101とともに第1ヒンジ部13回りに回動し、開姿勢となる。
このとき、可動片52は、天壁部35と略平行となるように第2支持体102によって天壁部35側から支持される。これにより、上述した蓋体101の閉動作時において、導入部24及び注出筒25により可動片52を天壁部35側に向けて押し込んで保持体56間を上方に向けて移動させたり、可動片52の移動に伴ってシール部104を注出口11の開口縁に密接させたりすることが安定して行われる。なお、可動片52は、自重によっては第2支持体102を乗り越えず、第2支持体102によって支持される。
【0051】
このように、本実施形態では、蓋体101がキャップ本体12に対して開姿勢にあるときに第2支持体102が可動片52を天壁部35側から支持する構成とした。
この構成によれば、蓋体101が開姿勢にあるときに、第1支持体57及び第2支持体102によって、可動片52がキャップ本体12側及び天壁部35側の双方向から支持されることが可能になる。そのため、例えば蓋体101の開閉動作によって基体46が折曲部53における折曲げ動作を繰り返すことに起因して可動片52が折曲部53を介して復元変形しにくくなっても、蓋体101に対する可動片52の位置が安定する。したがって、蓋体101の閉動作時に栓体105を注出口11内に再現性よく確実に嵌合することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、栓部材を天壁部に設ける構成としたが、これに限らず、蓋体の任意の位置に設けることが可能である。
また、上述した実施形態では、左右方向に沿う栓部材の幅を全長に亘って同等に形成したが、これに限らず、栓部材のうち係合部や第1支持体との係合部分のみ係合部間及び第1支持体間の間隔よりも広く形成し、その他の部分は狭く形成する等しても構わない。
また、上述した実施形態では、折曲部を介して基体を折曲変形させる構成について説明したが、折曲部を設けず、成形によって屈曲した形状に構成したり、基体自体を弾性変形させたりするような構成でも構わない。
さらに、上述した実施形態では、栓体のシール部を注出口内に嵌合させる構成について説明したが、栓体を注出口に外嵌する構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、第2支持体が上下方向に長い楕円半球状をなしているが、蓋体の開閉動作において可動片が第2支持体を乗り越えることができるとともに蓋体の開姿勢において可動片を天壁部側から支持することができる形状であれば、他の形状であっても構わない。
さらに、上述した第2実施形態では、保持体に第1及び第2支持体が配設されているが、第2支持体のみを配設する構成でも構わない。
【0054】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10,100…注出キャップ
11…注出口
12…キャップ本体
13…第1ヒンジ部
14,101…蓋体
25…注出筒
35…天壁部
42…係合部
43…押下部
45,103…栓部材
46…基体
47,105…栓体
48…第2ヒンジ部
53…折曲部
57…第1支持体
102…第2支持体
O1…キャップ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11