(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒンジアーム部において前記基端部側の上面の平坦面は、当該ヒンジアーム部にあって前記軸部の軸線方向となる幅方向の中央部を最高部とし、前記幅方向の両端部に向けて下降傾斜していることを特徴する請求項2記載の洗濯機。
前記ヒンジアーム部の上面において前記基端部側と前記先端部側との境界部に、上向きの仕切リブが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の洗濯機。
【背景技術】
【0002】
洗濯機なかでも二槽式の洗濯機においては、脱水槽を収容する脱水受槽の上部に、当該脱水受槽の上面開口部を開閉するための脱水蓋が、後部の軸部を中心に上下方向へ回動可能に設けられている。この脱水蓋は、一般に、矩形状をなす蓋本体と、この蓋本体の後部に後方へ突出するように設けられたヒンジアーム部とを合成樹脂で一体成形により形成した構成となっている。ヒンジアーム部には、軸線方向が左右方向へ指向する軸部も一体に設けられている。
【0003】
この種の洗濯機においては、脱水槽の回転時に前記脱水蓋を開放した際に脱水槽の回転を直ちに停止させるためにブレーキ機構が設けられている。このブレーキ機構は、脱水槽と一体に回転するように設けられたブレーキドラムと、制動位置でブレーキドラムに摺接して脱水槽の回転を制動するブレーキ部材と、このブレーキ部材を制動位置方向へ付勢するばね部材と、一端部が前記ブレーキ部材に接続されるとともに他端部が、前記脱水蓋のヒンジアーム部に設けられたブレーキ用係合部に係脱可能に係合されるブレーキワイヤとにより構成されている。
【0004】
このブレーキ機構は、脱水蓋が閉鎖した状態ではブレーキ用係合部がブレーキワイヤに係合しばね部材の付勢力に抗してブレーキ部材を制動解除方向へ移動させることにより脱水槽の回転を許容している。このとき、ヒンジアーム部のブレーキ用係合部には、そのブレーキワイヤから脱水蓋を開放させる方向の荷重が作用している。そして、脱水槽が回転している時に脱水蓋が開放されると、ブレーキ用係合部とブレーキワイヤとの係合が外れるとともに、ばね部材の付勢力によりブレーキ部材を制動位置へ移動させてブレーキドラムに摺接させることで、脱水槽の回転を停止させる構成となっている。
【0005】
図12および
図13に、この種の脱水蓋1の従来の一例が示されている。脱水蓋1は、矩形状をなす蓋本体2と、この蓋本体2の後部に後方へ突出するように設けられたヒンジアーム部3とを合成樹脂で一体成形して形成したものである。ヒンジアーム部3において、下面は凹凸がほとんどない平坦な曲面状をなす平坦面4で形成されている。ヒンジアーム部3において、蓋本体寄りの基端部側の上面側には、前後方向に延びる上向きリブ5aが複数本平行状態に設けられ、基端部側とは反対側の先端部側の上面側には、前後および左右方向に延びる上向きリブ5bが複数本設けられた構成となっている。そして、ヒンジアーム部3の先端部側の左右両端部に、2本の軸部6が一体に設けられている。軸部6は、軸線が左右方向に向いている。脱水蓋1は、それら軸部6を介して図示しない洗濯機本体に上下方向に回動可能に取り付けられる。ヒンジアーム部3において、先端部側の上面部の上向きリブ5b部分には、ブレーキ用係合部7と、蓋スイッチ操作部8と、ねじりコイルばね用の係合部9とが設けられている。
【0006】
この種の脱水蓋1は、一般には結晶性高分子のPP(ポリプロピレン)により形成されている。理由は、PPは、成形性が良好で、材料単価が比較的安く、しかも、ソルベントクラックが発生し難いとされるためである。合成樹脂の成形品に洗剤などの溶剤が付着した状態で、機械的荷重が掛かる状況であると、その成形品に割れやクラックが発生しやすくなる。このような状況で発生する割れやクラックのことを、ソルベントクラックという。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について
図1〜
図11を参照して説明する。まず、
図1および
図2には、洗濯機、特には二槽式洗濯機の全体の概略構成が示されている。これら
図1および
図2において、洗濯機本体10の基台11は矩形容器状をなしていて、この基台11上に槽体12が設けられている。槽体12はプラスチック製であり、この槽体12には、洗濯槽13と脱水受槽14とが左右に並置された状態で一体に設けられている。槽体12の上部にはトップカバー15が装着されている。このトップカバー15には、詳細には示されてはいないが、洗濯槽13の上面開口部に対応する開口部と、脱水受槽14の上面開口部に対応する開口部を有している。トップカバー15の後部には、操作部16が設けられている。この操作部16には、左から順に、洗濯用タイマーの操作つまみ17、洗濯用の水流強度切換用の操作つまみ18、脱水用タイマーの操作つまみ19、排水弁開閉用の操作つまみ20、および給水ホース接続口21が設けられている。この場合、洗濯機本体10は、基台11と、槽体12と、トップカバー15とから構成されている。
【0013】
操作部16の上面には後部カバー22が設けられている。上記した各操作つまみ17〜19、および給水ホース接続口21は、後部カバー22から上方に突出している。トップカバー15には、左側の洗濯槽13の上方に位置させて、当該洗濯槽13の上面開口部を開閉する洗濯蓋23が着脱可能に設けられ、また、右側の脱水受槽14の上方に位置させて、当該脱水受槽14の上面開口部を開閉する脱水蓋24が、後述するように後部の軸部を支点にして上下方向へ回動可能に設けられている。
【0014】
洗濯槽13内の底部には、パルセータ26が回転可能に配設されている。また、洗濯槽13の底部には、パルセータ26の下方に位置させて排水口(図示せず)が形成されていて、この排水口に、排水弁27を介して排水路28が接続されている。排水路28には、図示しない排水ホースが接続される。洗濯槽13の底部の下面側にはギヤ機構29が設けられている。このギヤ機構29の出力軸29aは、洗濯槽13の底部を水密かつ回転可能に貫通させて洗濯槽13内の下部に突出されていて、その突出部分に前記パルセータ26が取り付けられている。ギヤ機構29の入力軸29bは下に向けられていて、その入力軸29bに従動プーリ30が取り付けられている。
【0015】
洗濯槽13の下方においてギヤ機構29からややずれた位置には洗濯用モータ31が配設されていて、この洗濯用モータ31の回転軸31aに取り付けられた駆動プーリ32と従動プーリ30との間に伝動ベルト33が掛けられている。この結果、パルセータ26は、洗濯用モータ31により、駆動プーリ32、伝動ベルト33、従動プーリ30、およびギヤ機構29を順に介して回転駆動され、その回転により、洗濯槽13内に収容された洗濯物を洗濯水とともに撹拌して洗濯をするようになっている。
【0016】
脱水受槽14の内部には、周壁部に多数の脱水孔34aを有する脱水槽34が回転可能に配設されている。脱水受槽14の下方には、脱水槽34を回転駆動する脱水用モータ35が配設されているとともに、この脱水用モータ35と脱水槽34との間に位置させて脱水槽34の回転を制動するブレーキ機構36が配設されている。脱水用モータ35は、脱水槽34を回転駆動する駆動手段を構成している。脱水受槽14の底部には排水口14aが設けられていて、この排水口14aは、図示しない排水管を介して前記排水路28に接続される。
【0017】
ブレーキ機構36は、
図11に示すように、ブレーキドラム37と、ブレーキ部材38と、付勢手段を構成する引張りコイルばね39と、ブレーキワイヤを構成するインナワイヤ40を備えている。インナワイヤ40は、細いワイヤの撚り線からなり、柔軟性を有している。ブレーキドラム37は、脱水用モータ35と脱水槽34との間に位置させてこれらと一体回転するように設けられている、ブレーキ部材38は、一端部が軸41を介して脱水用モータ35側に回動可能に取り付けられている。このブレーキ部材38において、ブレーキドラム37側の内面にブレーキシュー42が取り付けられている。引張りコイルばね39は、一端部が脱水用モータ35側に引っ掛けられ、他端部がブレーキ部材38の先端部に引っ掛けられていて、ブレーキ部材38を制動位置方向である
図11の矢印A1方向へ付勢している。
【0018】
インナワイヤ40は、アウタワイヤ43内に挿通されている。アウタワイヤ43は、一端部が脱水用モータ35側に固定され、他端部は固定具43aを介して前記槽体12に固定されている。インナワイヤ40は、一端部がブレーキ部材38の先端部側に接続され、他端部には連結具40aを介して操作ワイヤ44が接続されている。操作ワイヤ44は、一本の硬い針金からなり、その反インナワイヤ側となる先端部44a(
図3参照)が前記脱水蓋24側に引っ掛けられている。この点については後述する。操作ワイヤ44は、インナワイヤ40とともにブレーキワイヤを構成する。
【0019】
図11の状態では、ブレーキ部材38は、引張りコイルばね39の付勢力に抗してインナワイヤ40により矢印A1とは反対方向に引っ張られていて、制動解除位置に位置している。このとき、操作ワイヤ44の先端部44aが脱水蓋24に係合していて、操作ワイヤ44およびインナワイヤ40は、矢印A2方向へ引っ張られている。この状態では、ブレーキ部材38のブレーキシュー42がブレーキドラム37の外周面から離間していて、ブレーキ機構36としては制動解除状態となっている。この状態から、操作ワイヤ44の先端部44aと脱水蓋24との係合が外れると、引張りコイルばね39の付勢力により、操作ワイヤ44およびインナワイヤ40が矢印A2とは反対方向へ移動しながら、ブレーキ部材38が矢印A1方向へ回動して制動位置へ移動し、ブレーキシュー42がブレーキドラム37の外周面に摺接してブレーキドラム37、ひいては脱水槽34および脱水用モータ35の回転が制動されるようになる。
【0020】
次に、前記脱水蓋24に関係した部分について説明する。脱水蓋24は、
図8および
図9にも示すように、下面側が開口した浅底の矩形容器状をなす蓋本体45と、この蓋本体45の後部の中央部に後方へ突出するように設けられたヒンジアーム部46とを一体に有するように、合成樹脂の一体成形により形成したものである。この場合、脱水蓋24は、合成樹脂のなかでも非晶性高分子である透明なABS樹脂により形成している。
【0021】
ヒンジアーム部46は、横から見ると下側へ凸となる円弧状に形成されている。このヒンジアーム部46の構造について、この場合、蓋本体45寄りの基端部側46aと、その基端部側46aとは反対側の先端部側46bに分けて説明する。先端部側46bの左右両端部には、左右方向へ延びる軸部47が突設されている。それら軸部47は、前記トップカバー15側に設けられた軸支持部47a(
図3〜
図7参照)に回動可能に支持されており、脱水蓋24は、それら軸部47を介してトップカバー15ひいては洗濯機本体10に上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0022】
ヒンジアーム部46において、基端部側46aの上面は、ほとんど凹凸がない平坦面48で形成されている。この場合、その上面の平坦面48は、軸部47の軸線方向である左右方向となる幅方向の中央部を最高部48aとし、幅方向(左右方向)の両端部に向けて下降傾斜した斜面となっている(
図10参照)。基端部側46aの下面側には、下向きリブ49(
図9および
図10参照)が複数本設けられている。それら下向きリブ49は、平行状態で前後方向に延びていて、ヒンジアーム部46の断面係数を向上させ、強度を向上させている。
【0023】
ヒンジアーム部46において、前後方向の中央部から後方の先端部側46bの下面は、ほとんど凹凸がない曲面状の平坦面50(
図9参照)で形成されている。先端部側46bの上面側には、
図8に示すように複数本の上向きリブ51が設けられている。この上向きリブ51には、前後方向に向けて延びるものと左右方向に向けて延びるものなどがある。その上向きリブ51部分には、ブレーキ用係合部52と、蓋スイッチ操作部53と、ねじりコイルばね用の係合部54とが設けられている。
【0024】
このうちブレーキ用係合部52は、前方から見て左後部の左右方向に延びる上向きリブ51を利用していて、上部に上向きの凸部52aが設けられている。ここで、前記ブレーキ機構36における操作ワイヤ44の先端部側は、
図3および
図4に示すように、トップカバー15の後部に設けられた上下方向に延びる筒部55内に挿通されていて、先端部44aが筒部55から上方へ突出している。操作ワイヤ44の先端部44aは、L字状に折り曲げられている。そして、脱水蓋24が閉鎖された状態では、その操作ワイヤ44の先端部44aがブレーキ用係合部52に係合していて、操作ワイヤ44は、そのブレーキ用係合部52により上方(矢印A2方向)へ引き上げられている。これに伴い、ブレーキ機構36としては、ブレーキドラム37、ひいては脱水槽34および脱水用モータ35の回転を許容した状態となっている。
【0025】
閉鎖状態の脱水蓋24が開放されると、ブレーキ用係合部52の矢印A3方向への回動に伴い、
図6および
図7に示すように、ブレーキ用係合部52と操作ワイヤ44の先端部44aとの係合が外れ、操作ワイヤ44の先端部44aは、前記引張りコイルばね39の付勢力により矢印A2とは反対方向へ移動して筒部55の上端部に係合するようになる。これに伴い、ブレーキ機構36としては、ブレーキ部材38が制動位置へ回動してブレーキシュー42がブレーキドラム37に摺接する状態となり、ブレーキドラム37、ひいては脱水槽34および脱水用モータ35の回転が制動される状態となる。
【0026】
前記蓋スイッチ操作部53は、ヒンジアーム部46において、前方から見て右後部の左右方向に延びる上向きリブ51を利用して設けられている。蓋スイッチ57(
図3および
図5参照)は、脱水蓋24の開閉状態を検出するものであり、トップカバー15において蓋スイッチ操作部53の上方に対応する位置に設けられている。この蓋スイッチ57は、
図5に示すように、固定接点58と、この固定接点58に対して接離する可動接点59とを対向する状態で有している。脱水蓋24を閉鎖した状態では、ヒンジアーム部46における蓋スイッチ操作部53の上端部が、押圧部60を介して可動接点59を上方の固定接点58側に下方から押圧している。可動接点59が固定接点58に接触することで蓋スイッチ57はオン状態で、脱水用モータ35への通電が許可される。脱水蓋24が閉鎖状態から開放方向へ回動されると、ヒンジアーム部46が
図5の矢印A3方向へ回動することに伴い、蓋スイッチ操作部53も同方向へ回動し、前記押圧部60に対する蓋スイッチ操作部53の押圧が解除されるため、可動接点59が固定接点58から離間することで蓋スイッチ57はオフ状態となる。これにより、脱水用モータ35への通電が遮断されるようになる。
【0027】
前記ねじりコイルばね用の係合部54は、ヒンジアーム部46において、前方から見て左後部の上向きリブ51を利用して設けられている。ねじりコイルばね61(
図3および
図4参照)は、脱水蓋24が閉鎖された状態では当該脱水蓋24を閉鎖方向に付勢し、脱水蓋24が開放された状態では当該脱水蓋24を開放方向に付勢するための付勢手段を構成するものである。ねじりコイルばね61の一端部61aは、
図3に示すように、トップカバー15に設けられたねじりコイルばね用の係合部62に係合し、他端部61bが、ヒンジアーム部46のねじりコイルばね用の係合部54に挿入係合されている。
【0028】
ここで、脱水蓋24が閉鎖された状態では、
図4に示すように、ねじりコイルばね61のばね力が、脱水蓋24のヒンジアーム部46に、これを矢印A3とは反対方向、すなわち脱水蓋24を閉鎖する方向に作用して、脱水蓋24の閉鎖状態を保持する。また、脱水蓋24が開放された状態では、
図7に示すように、ねじりコイルばね61のばね力が、脱水蓋24のヒンジアーム部46に、これを矢印A3方向、すなわち脱水蓋24を開放する方向に作用して、脱水蓋24の開放状態を保持する。
【0029】
ヒンジアーム部46の上面において、基端部側46aと先端部側46bとの境界部には、上向きの仕切リブ64が設けられている。この仕切リブ64は、左右方向に延びている。脱水蓋24を閉鎖した状態では、
図4に示すように、仕切リブ64は、操作部16における後部カバー22の前端部22aよりも後方で、かつ軸部47よりも後方に位置している。なお、ヒンジアーム部46において、先端部側46bの下面側の平坦面50には、水抜き孔65が複数個設けられている。
【0030】
また、脱水蓋24を閉鎖した状態では、
図4に示すように、脱水蓋24における蓋本体45の上部後端部45aと上記後部カバー22の上部の前端部22aとの間に、脱水蓋24を上下方向へ回動させる際の干渉を避けるために、隙間Gが形成されている。
【0031】
上記した構成においては、脱水蓋24は、非晶性高分子である透明なABS樹脂で形成しているので、外観を良くすることができる。
脱水蓋24を閉鎖した状態では、脱水蓋24のヒンジアーム部46には、ブレーキ機構36における操作ワイヤ44の先端部44aから脱水蓋24を開放する方向の荷重が作用し、蓋スイッチ57の押圧部60からも脱水蓋24を開放する方向の荷重が作用し、さらには、ねじりコイルばね61の他端部61bからは脱水蓋24を閉鎖する方向の荷重が作用している状況にある。また、脱水蓋24を開放した状態では、脱水蓋24のヒンジアーム部46には、ねじりコイルばね61の他端部61bから脱水蓋24を開放する方向の荷重が作用している状況にある。このように脱水蓋24のヒンジアーム部46には、常に外からの荷重が加わっている状況にある。
【0032】
また、上記構成においては、脱水蓋24を閉鎖した状態で、脱水蓋24における蓋本体45の上部後端部45aと上記後部カバー22の上部の前端部22aとの間に隙間Gが形成されている。このため、洗剤自体や洗剤を含む洗濯水が、その隙間Gを通ってヒンジアーム部46の基端部側46aの上面に掛かりやすいという状況がある。このため、そのヒンジアーム部46に、洗剤自体や洗剤を含む洗濯水が付着した状態が継続すると、ソルベントクラックが発生しやすいことが懸念される。特に、脱水蓋24を、非晶性高分子であるABS樹脂で形成した場合には、そのソルベントクラックが発生しやすい。
【0033】
この点、本実施形態においては、ヒンジアーム部46において、基端部側46aの上面は、凹凸がほとんどない平坦面48にて形成しているため、洗剤や洗剤を含む洗濯水が上記隙間Gを通ってその基端部側46aの上面の平坦面48に掛かったとしても、その洗剤や洗濯水は平坦面48に沿って外部へ流れ落ちやすくなるため、洗剤や洗濯水がそこに留まることが防止される。特に本実施形態においては、その平坦面48は、左右方向の中央部を最高部48aとし、左右両端部に向かって下降傾斜する斜面になっているから、洗剤や洗濯水が平坦面48から極力早く流れ落ちるようになる。これにより、脱水蓋24を非晶性高分子であるABS樹脂で形成しながらも、ソルベントクラックが発生することを極力防止することができる。
【0034】
なお、脱水蓋24を閉鎖した状態で、ヒンジアーム部46において先端部側46bは、操作部16の後部カバー22にて上から覆われているから、上記洗剤や洗剤水がその先端部側46bの上面に直接掛かるおそれはない。しかもこの場合、ヒンジアーム部46の上面において、基端部側46aと先端部側46bとの境界部に上向きの仕切リブ64が設けられているため、洗剤や洗剤水が基端部側46aの上面(平坦面48)に掛かった場合でも、その洗剤や洗濯水が先端部側46bへ流れ込むことを仕切リブ64により阻止することができる。
【0035】
ちなみに、
図12および
図13で示した従来の脱水蓋1の構造の場合、ヒンジアーム部3における基端部側の上面側には、複数本の上向きリブ5aが形成された構成となっている。このため、洗剤や洗濯水がヒンジアーム部3における基端部側の上向きリブ5a部分に掛かった場合、その洗剤や洗濯水が、隣り合った上向きリブ5a間に長い間留まりやすく、ソルベントクラックが発生しやすい構造であった。
【0036】
また、本実施形態の脱水蓋24の構造においては、ヒンジアーム部46の先端部側46bの上面側を上向きリブ51にて構成し、この上向きリブ51を利用して、ブレーキ用係合部52、蓋スイッチ操作部53、およびねじりコイルばね用の係合部54を設ける構成としている。このため、それらブレーキ用係合部52、蓋スイッチ操作部53、ねじりコイルばね用の係合部54の高さなどを設定調整する場合に、その設定を比較的容易に行うことができる。
【0037】
ちなみに、ヒンジアーム部46において、基端部側46aの上面から先端部側46bの上面まで、ほとんど凹凸がない平坦面48で形成することも考えられるが、先端部側46bの上面も平坦面48で形成すると、前記ブレーキ用係合部52、蓋スイッチ操作部53、ねじりコイルばね用の係合部54の高さなどを設定調整する場合に、設定や設計が難しくなる。その点、リブの高さだけで調整できる本実施形態によれば、そのような不具合もない。
【0038】
本実施形態の脱水蓋24の構造においては、脱水蓋24を開放させた状態では、
図7に示すように、ヒンジアーム部46における基端部側46aの下向きリブ49が、洗濯機本体10の前方から良く見えるようになるが、脱水蓋24全体を透明な樹脂で形成することで、それら下向きリブ49が目立ち難くなるため、外観を損ねることを極力防止することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
脱水蓋24を形成する樹脂としては、透明なABS樹脂に限られず、非晶性高分子であれば、ASあるいはPS樹脂を用いることもできる。
上記した実施形態では二槽式洗濯機を例示したが、槽が一つの全自動洗濯機にも適用できる。この場合、水槽が、脱水受槽に相当し、水槽内に回転可能に配設される洗濯兼脱水槽を構成する回転槽が、脱水槽に相当する。そして、水槽の開口部を開閉する蓋が、脱水蓋に相当することになる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の洗濯機によれば、脱水蓋を非晶性高分子で形成することで、脱水蓋の外観を良くすることができる。そして、脱水蓋を非晶性高分子で形成しながらも、当該脱水蓋のヒンジアーム部における基端部側の上面を平坦面で形成したことにより、その平坦面部分に洗剤や洗濯水が掛かったとしても、それらが流れ落ちやすく、ソルベントクラックを発生し難くできる。また、ヒンジアーム部における先端部側の上面は上向きリブを有する構成とし、ブレーキ用係合部をその上向きリブを利用して設ける構成としたことで、ブレーキ用係合部の高さ調整等の設定を比較的容易に行うことができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。