(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一種類の材料を充填する工程では、前記ポーラスコンクリートの骨材として、または、前記再生骨材として、重量骨材を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のコンクリート製品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、セメント硬化体の表面を炭酸ガスに曝しているため、表面からある程度の深さまでは炭酸ガスを吸収させることはできるが、例えば硬化体の厚みが大きくなると、その内部の深い箇所まで炭酸ガスを吸収させることは難しかった。また、上記特許文献2に記載の技術では、通気路を形成してはいるものの、通気路の周囲の限られた領域にしか炭酸ガスを吸収させることができず、炭酸ガスの吸収量としては不十分であった。
【0006】
本発明は、炭酸ガスの吸収量を増大させることができるコンクリート製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決したコンクリート製品の製造方法は、ポーラスコンクリート、再生骨材、コンクリート塊、および
、高炉スラグ若しくはフライアッシュを含む産業副産物を主要成分とする固形化物のうち少なくとも一種類の材料を、開口を有する型枠内に充填する工程と、開口から挿入された供給管を通じて型枠内に二酸化炭素含有ガスを供給しその少なくとも一種類の材料を炭酸化する工程と、少なくとも一種類の材料が充填された領域内の空隙に
、セメントを含む固化材を充填して固化させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
このコンクリートの製造方法によれば、型枠内にポーラスコンクリート、再生骨材、コンクリート塊、および産業副産物を主要成分とする固形化物のうち少なくとも一種類の材料が充填され、さらに、充填されたその少なくとも一種類の材料が炭酸化される。ポーラスコンクリートは多孔性であり、また再生骨材、コンクリート塊、または産業副産物を主要成分とする固形化物は空隙を形成するため、炭酸化の際に二酸化炭素含有ガスが全体に行き渡りやすい。すなわち、炭酸化される各部材の厚みが小さくなる。よって、ポーラスコンクリートや再生骨材等の材料の内部まで炭酸ガスを吸収させることができ、炭酸ガスの吸収量を増大させることができる。ここで、炭酸化は、型枠の開口から挿入された供給管を通じて、型枠内に二酸化炭素含有ガスが供給されることにより行われる。よって、型枠そのものが、炭酸化の際に外部の大気環境から遮蔽する遮蔽体となり、従来の炭酸化養生のように養生槽を設ける必要がない。そして、その少なくとも一種類の材料が充填された領域内の空隙に固化材が充填されて固化されるため、例えば、空隙が残っているために全体の比重が小さくなって水域での使用の際に浮力が発生したり、内部に水が入り込んだりすること等を防止でき、通常の密実なコンクリート製品と同等の品質が実現される。
【0009】
また、上記コンクリート製品の製造方法において、型枠は複数のパーツが組み立てられたものであり、炭酸化する工程の前に、型枠内の気密性を高めるためのシール部材を複数のパーツ間に配設する工程を有する。特にコンクリート製品が大型の場合や、複雑な形状である場合には、複数のパーツに分割可能な型枠を用いるのが一般的である。この製造方法では、型枠そのものが大気環境に対する遮蔽体となるが、複数のパーツ間にシール部材が配設されて型枠内の気密性が高められることにより、ポーラスコンクリートや再生骨材等の材料に対する炭酸ガスの吸収効率を確保することができる。また、型枠内の圧力を高めることもでき、炭酸化に要する期間を短縮することができる。
【0010】
また、上記コンクリート製品の製造方法において、固化材を充填して固化させる工程では、供給管を利用して固化材を注入する。この場合、二酸化炭素含有ガスの供給に用いる供給管を固化材の注入にも利用することにより、その少なくとも一種類の材料が充填された領域内に、固化材を確実かつ容易に充填することができる。
【0011】
また、上記コンクリート製品の製造方法において、炭酸化する工程の前に、型枠内から排気ガスを排出するための排出管と供給管とを開口から挿入する工程を有し、この工程において、供給管の型枠内における長さを排出管の型枠内における長さよりも長くする。この場合、供給管は型枠内に奥深く挿入されることとなるため、二酸化炭素含有ガスを型枠内の全体に確実に行き渡らせることができる。
【0012】
また、上記コンクリート製品の製造方法において、型枠は複数の開口を有しており、炭酸化する工程では、複数の開口のそれぞれに挿入された供給管を通じて型枠内の複数箇所に二酸化炭素含有ガスを供給する。この場合、型枠内の複数箇所に二酸化炭素含有ガスが供給されるため、二酸化炭素含有ガスを型枠内の全体に確実に行き渡らせることができる。
【0013】
また、上記コンクリート製品の製造方法において、その少なくとも一種類の材料を充填する工程では、ポーラスコンクリートの骨材として、または、再生骨材として、重量骨材を用いる。この場合、コンクリート製品としての比重が増大し、外力に対する安定性を高めることができる。例えば、コンクリート製品を消波ブロックに適用した場合、高い波消し効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炭酸ガスの吸収量を増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1および
図2に示されるように、消波ブロック(コンクリート製品)12は、炭酸ガスを吸収させた環境配慮型のコンクリート製二次製品である。本実施形態では消波ブロック12およびその製造方法を例として説明するが、消波ブロックに限られず、例えば、歩車道境界ブロック、地先境界ブロック、フェンス基礎ブロック、側溝ブロック、漁礁ブロック等の各種コンクリートブロックを製造することもできる。また、本実施形態では、4脚タイプの消波ブロック12を例として説明するが、脚の数や形状はこれに限られない。消波ブロック以外のコンクリートブロックの場合でも、例えば四角錐台状、直方体状、円柱状、円錐台状、等々のあらゆる形状とすることができる。一部に開口を有し、それ以外の部分は閉じられたような型枠を用いて製造されるコンクリートブロックであれば、いかなる形状とすることもできる。
【0018】
消波ブロック12は、炭酸ガスを吸収したポーラスコンクリート3から主に成っている。このポーラスコンクリート3には、後述する製造方法により、全体にわたって炭酸ガスが吸収させられている。ポーラスコンクリート3の空隙にはセメントミルク11が充填されている。消波ブロック12は、平滑な表面状態を有すると共に、内部には空隙がない。そのため消波ブロック12の外見は、通常の密実な消波ブロックと変わらないようになっている。
【0019】
続いて、消波ブロック12の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法において、消波ブロック12の大きさは限定されないが、下記製造方法は、特に中型(数トン)から大型(数十トン)の消波ブロック12を製造するのに適している。
【0020】
まず、
図1(a)に示されるように、型枠1を用意する。この型枠1は、複数の鉄製のパーツ2を組み立てたものである。複数のパーツ2には、例えばシェルと呼ばれる、消波ブロック12の側面を形成する型枠や、エンドプレートと呼ばれる、消波ブロック12の脚部の先端面を形成する型枠などがある。型枠1には、複数のパーツ2が組まれた状態で、上端部(4脚のうち1脚の端部に相当する部分)に円形の開口1aが形成される。各パーツ2同士間には、型枠1内の気密性を高めるためのシール部材9を配設する。より具体的には、各パーツ2間の継ぎ目の略全域にわたって、例えば硬質ゴムからなるシール部材9を介在させる。このシール部材9によって、炭酸化の際に型枠1内を炭酸ガス雰囲気に保つことができ、型枠1内に充填されるポーラスコンクリート3を好適に炭酸化することができる。型枠1は、鋼製の架台4上に載置される。
【0021】
なお、
図1(b),(c)および
図2(a)では、説明を容易にするため、紙面手前側に図示されるべきパーツ2を除外している。
【0022】
次に、
図1(b)に示されるように、型枠1内に二酸化炭素含有ガスを供給するための供給管6と、型枠1内から排気ガスを排出するための排出管7とを型枠1に取り付ける。より具体的には、鋼管からなる供給管6および排出管7を開口1aから挿入し、それぞれ所定の位置で型枠1に対して固定する。ここで、型枠1内に挿入された供給管6の端部すなわち二酸化炭素の出口端部が、型枠1の中心位置(重心)よりも奥側に到達するよう供給管6を配置する。一方、型枠1内に挿入された排出管7の端部(排気ガスの入口端部)は、型枠1の中心位置(重心)よりも手前側に位置するよう排出管7を配置する。すなわち、供給管6の型枠1内における長さが、排出管7の型枠1内における長さよりも長くなるようにする。このようにして、供給管6の端部および排出管7の端部を一定距離離間させることにより、炭酸化の際、型枠1内のポーラスコンクリート3全体に二酸化炭素含有ガスを行き渡らせることができる。
【0023】
なお、ここで、供給管6における型枠1内の部分には、複数の孔を設けてもよいし、設けなくてもよい。複数の孔を設けた場合には、炭酸化の際、その孔を通って炭酸ガスが型枠1内で水平方向に拡散する。孔を設けない場合には、炭酸ガスは出口端から放出されて拡散する。
【0024】
次に、開口1aの位置に達するまで、型枠1内にポーラスコンクリート3を充填する。ポーラスコンクリート3は、CO
2吸収性能に優れたダイカルシウムシリケートγ相(γ−C
2S)を含有することが好ましいが、ダイカルシウムシリケートγ相を含有していなくてもよい。ポーラスコンクリート3の最大粒径や粒度分布は、最後に注入されるセメントミルク11(
図2(a)参照)を全体に行き渡らせることを考慮して適宜設定される。ポーラスコンクリート3の空隙率は、10〜30%以上であることが好ましい。
【0025】
より具体的には、ポーラスコンクリート3のセメントとして、普通ポルトランドセメントを用いることができ、また、高炉セメントB種を用いることもできる。ポーラスコンクリートの使用材料の一例と配合の一例を表1,2にそれぞれ示す。
【0028】
ポーラスコンクリート3が充填された型枠1内の全領域には、空隙が形成されている。なお、開口1aの位置に達するまでポーラスコンクリート3を充填する必要はなく、ポーラスコンクリート3が開口1aに達していなくてもよい。ポーラスコンクリート3の充填精度は低くてもよい。例えば、型枠1の下部に、ポーラスコンクリート3が充填されない領域が多少形成されても、後でセメントミルク11が充填されるため特に支障はない。
【0029】
次に、
図3に示されるエンドカバー(蓋)10を開口1aに嵌め込み、型枠1に対して固定する。エンドカバー10は、円板状の部材であり、供給管6および排出管7が貫通すると共に、開口1aにおける供給管6および排出管7の外側の部分を密閉する。エンドカバー10と供給管6および排出管7との間には、シール部材を設けてもよい。また、エンドカバー10に供給管6および排出管7を貫通させる場合に限られず、供給管6および排出管7の一部を構成する2本の短管をあらかじめエンドカバー10に一体的に設けておき、これらの短管の両端(型枠1内外の両端)に供給管6および排出管7を接続してもよい。
【0030】
ポーラスコンクリート3の初期養生を行った後、
図1(c)に示されるように、供給管6および排出管7を養生システム8に接続し、型枠1内に二酸化炭素含有ガスを封入し、型枠1内を炭酸ガス雰囲気下に保って炭酸化養生を行う。炭酸化養生を行うまでの初期養生期間は、例えば1日〜4日程度とする。炭酸化養生は、5〜100%の炭酸ガス濃度において、温度を20〜80℃とし、湿度を30〜70%RHとし、例えば約2週間かけて行う。これにより、炭酸ガスを内部に吸収した炭酸化体13(
図2(a)参照)が形成される。なお、炭酸化養生期間は、型枠1内を高圧の雰囲気とすることにより、3日程度に短縮できる。火力発電所などの炭酸ガス発生サイトに型枠1および養生システム8を隣接させ、炭酸ガスを含む排ガスを型枠1内に導入してもよい。このように、本実施形態では、従来必要であった養生槽(遮蔽空間を形成する遮蔽体)が不要とされている。
【0031】
次に、
図2(a)に示されるように、コンクリートポンプAの吐出側を供給管6に接続し、供給管6を利用して炭酸化体13内の空隙に固化材としてのセメントミルク11を注入し、固化させる。なお、固化材として、モルタルやペーストを用いてもよい。供給管6および排出管7は、セメントミルク11充填の後に引き抜いてもよく、またはそのまま残置して突出部分を切断してもよい。
【0032】
そして、一定期間養生後、脱型を行い、
図2(b)に示されるコンクリートブロック12が完成する。このように固化材を炭酸化体13内の空隙に充填して固化させることにより、コンクリートブロックとしての強度や重量が確保されると共に、設置後、内部に水や土が入り込むことを避けることができる。また、消波ブロック12の表面12aは平滑になり、コンクリート製品としての美観が保たれる。
【0033】
以上説明した消波ブロック12の製造方法によれば、型枠1内に充填されたポーラスコンクリート3は多孔性であるため、炭酸化の際に二酸化炭素含有ガスが全体に行き渡りやすい。よって、ポーラスコンクリート3の内部まで炭酸ガスが吸収され、炭酸ガスの吸収量を増大させることができる。ここで、炭酸化は、型枠1の開口1aから挿入された供給管6を通じて型枠1内に二酸化炭素含有ガスが供給されることにより行われるため、型枠1そのものが遮蔽体となり、従来の炭酸化養生のように養生槽を設ける必要がない。大型の消波ブロック12の場合には、それを収容する大型の養生槽を用意する必要がないため、特に有効である。そして、ポーラスコンクリート3からなる炭酸化体13内の空隙にはセメントミルク11が充填されて固化されるため、例えば、空隙が残っているために全体の比重が小さくなって水域での使用の際に浮力が発生したり、内部に水が入り込んだりすること等を防止でき、通常の密実なコンクリート製品と同等の品質が実現される。さらには、このように炭酸化された消波ブロック12によれば、通常のコンクリートブロックよりも消波効果が高いという効果も奏される。
【0034】
コンクリート製品が大型の場合や、複雑な形状である場合には、複数のパーツに分割可能な型枠を用いるのが一般的である。本実施形態では、型枠1そのものが大気環境に対する遮蔽体となるが、複数のパーツ2間にシール部材9が配設されて型枠1内の気密性が高められることにより、ポーラスコンクリート3に対する炭酸ガスの吸収効率が確保される。また、型枠1内の圧力を高めることもでき、炭酸化に要する期間を短縮することができる。
【0035】
また、二酸化炭素含有ガスの供給に用いる供給管6をセメントミルク11の注入にも利用することにより、ポーラスコンクリート3からなる炭酸化体13内に、セメントミルク11を確実かつ容易に充填することができる。
【0036】
また、供給管6の型枠1内における長さを排出管7の型枠1内における長さよりも長くすることにより、供給管6を型枠1内に奥深く挿入し、二酸化炭素含有ガスを型枠1内の全体に確実に行き渡らせることができる。これは、大型の消波ブロック12の場合には特に有効である。
【0037】
図4および
図5は、第2実施形態に係る消波ブロック12の製造手順を示す斜視図である。本実施形態の製造方法が第1実施形態の製造方法と違う点は、型枠1に代えて、開口1aの他に各脚部の端部に相当する部分において円形の開口1b,1cを有する型枠1Aを用いる点と、供給管6に代えて、各開口1a,1b,1cに対応する複数の供給管6a,6b,6cを有する供給管6Aを用いる点と、この開口1a,1b,1cのそれぞれに挿入された供給管6a,6b,6cを通じて二酸化炭素含有ガスを供給する点である。この場合、各供給管6a,6b,6cの先端は型枠1の中心位置(重心)近傍にまで進入しており、二酸化炭素含有ガスを型枠1内の4箇所に供給する。開口1b,1cは、第1実施形態と同様、エンドカバー10によって密閉する。また、セメントミルク11の注入時には、下部の供給管6b,6cを撤去し、開口1b,1cをエンドプレートにより閉止する。なお、
図4および
図5では、紙面奥側の開口および供給管は図示されていない。
【0038】
このような製造方法によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、型枠1A内の複数箇所に二酸化炭素含有ガスが供給されるため、二酸化炭素含有ガスを型枠1A内の全体に確実に行き渡らせることができる。これは、大型の消波ブロック12の場合には特に有効である。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、ポーラスコンクリート3に代えて、再生骨材を型枠1内に充填してもよい。このような製造方法によれば、再生骨材を用いるため、リサイクルに有効であり、より環境に配慮したコンクリート製品を実現できる。さらには、再生骨材に限られず、コンクリート構造物の解体時に得られるコンクリート塊や、産業副産物を主要成分とする固形化物を型枠1内に充填してもよい。この場合、解体したコンクリート塊を40mm以上の比較的大きな径のままで投入することができる。産業副産物を主要成分とする固形化物としては、高炉スラグやフライアッシュを比較的大きな径に固めたものが挙げられる。これらの場合においても、型枠1内における再生骨材、コンクリート塊、または産業副産物を主要成分とする固形化物の充填精度は低くてもよい。また、ポーラスコンクリート3、再生骨材、コンクリート塊、および産業副産物を主要成分とする固形化物のうちいずれか2種類以上の材料を型枠1内に一緒に充填してもよい。例えば、ポーラスコンクリート3の骨材として再生骨材を用いてもよい。
【0040】
また、ポーラスコンクリート3の骨材として、または、再生骨材として、重量骨材を用いてもよい。この場合、コンクリート製品としての比重が増大し、外力に対する安定性を高めることができる。例えば、消波ブロックに適用した場合、高い波消し効果を得ることができる。
【0041】
また、型枠1は複数のパーツ2に分割されていなくてもよい。また、シール部材9が配設されるのは型枠1の組み立て時に限られず、例えば、ポーラスコンクリート3の充填後、炭酸化の前に配設されてもよい。供給管6や排出管7の挿入はポーラスコンクリート3の充填中や充填後であってもよい。供給管6や排出管7は鋼管に限られず、塩ビ管であってもよい。また、固化材を注入する際、供給管6に加えて排出管7を利用してもよい。排出管7のみを固化材の注入に利用してもよい。
【0042】
次に、炭酸化させた再生骨材を用いたコンクリートブロックにおけるCO
2の吸収効果を確認した。具体的には、コンクリートで1m×1m×1mのブロック型試験体を作製し、同ブロック製造時のCO
2排出量を試算した。試算ケースは、表3に示す3ケースである。ケース1は、普通コンクリートを標準水中養生したケースである。ケース2は、普通コンクリートを温度50℃,湿度50%,CO
2濃度20%の環境下で7日間炭酸化養生したケースである。ケース3は、ケース1に用いたコンクリート配合のうち、セメントに高炉セメントB種を用い、骨材を普通骨材から炭酸化させた再生骨材に変更し、コンクリートとして成型後にケース2と同様の環境で7日間炭酸化養生を行ったケースである。
【0044】
使用材料および普通コンクリートの配合は、表4,5にそれぞれ示すとおりである。
【0047】
ケース1〜3における各コンクリートのCO
2排出量を試算した。CO
2排出量の試算には、表6に示す各使用材料のCO
2排出量原単位(出典:土木学会 コンクリートライブラリー125)を用いた。
【0049】
また、炭酸化養生によってCO
2を吸収したコンクリートおよび骨材については、それらによるCO
2吸収量を差し引き、以下の式によってCO
2排出量を算出した。
コンクリートのCO
2排出量(kg/m
3)
=(使用材料のCO
2排出量の総和kg/m
3)−(コンクリートまたは骨材が吸収したCO
2量kg/m
3)
【0050】
以上を踏まえると、ケース1におけるCO
2排出量は、表5,6から、
291×0.7666+788×0.0037+1065×0.0029
=229.1kg/m
3と試算される。
【0051】
次に、ケース2におけるCO
2排出量の算出には、炭酸化養生によってコンクリートが吸収したCO
2の量を算出する必要がある。ここで、7日間の炭酸化養生でコンクリートが炭酸化によってCO
2を吸収した領域は、表面から10cmであり、CO
2を吸収した部分の体積は、全体の炭酸化部分における27.1%であり(炭酸化した領域の体積:(1m×1m×1m)−(0.9m×0.9m×0.9m)=0.271m
3)、CO
2吸収量は134.8kg/m
3であった。このことから、同ブロックにおけるCO
2吸収量は、135kg/m3×27.1%=36.5kg/m
3となる。
【0052】
以上を踏まえると,ケース2におけるCO
2排出量は、
229.1−36.5=192.6kg/m
3と試算される。
【0053】
ケース3におけるCO
2排出量の算出には、高炉セメントB種を用いたコンクリート配合におけるCO
2排出量、再生骨材が炭酸化養生によって吸収したCO
2量を考慮し、さらに、成型後の炭酸化養生によってコンクリートが吸収したCO
2の量を算出する必要がある。
【0054】
ケース3のコンクリート配合における使用材料のCO
2排出量の総和は、表5,6から、
291×0.4587+707×0.0037+965×0.0029
=138.9kg/m
3となる。
【0055】
ここで、再生骨材が炭酸化養生によって吸収したCO
2の量は、表7に示すとおりRSの場合で骨材重量×7.8%、RGの場合で骨材重量×8.5%であった。このことから、ケース3において骨材が吸収したCO
2の量は、表5,7から、
707×7.8%+965×8.5%=137.2kg/m
3となる。
【0057】
さらに、ケース3でコンクリート成型後に行った7日間の炭酸化養生で、コンクリートが炭酸化によってCO
2を吸収した領域は、ケース2と同様、表面から10cmであった。このことから、同ブロックにおけるCO
2吸収量は、
135kg/m
3×27.1%=36.5kg/m
3となる。
【0058】
以上を踏まえると、ケース3におけるCO
2排出量は、
138.9−36.5−137.2=−34.8kg/m
3と試算される。
【0059】
ケース1〜3におけるCO
2排出量の試算結果を表8に示す。本発明によれば、CO
2排出量をマイナスにすることが可能となる。