(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の保持部が前記第1のベース部に対し着脱自在又は前記第2の保持部が前記第2のベース部に対し着脱自在とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハンド装置。
前記第1の保持部が前記第1のベース部に対して又は前記第2の保持部が前記第2のベース部に対して、吸着方向に所定範囲で移動自由とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンド装置。
前記第1又は第2のベース部は、吸着したワークに当接してその吸着方向の位置決めをする突き当て部を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハンド装置。
前記第1の姿勢において前記第1の保持部と前記第2の保持部との対向位置を調節する位置調節部を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハンド装置。
前記第1及び第2のベース部に対し一方側に連結された本体ベース部を備えると共に、前記第1又は第2のベース部における前記一方側とは反対側の先端面に、ワークを吸着可能な第3の保持部を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハンド装置。
前記第1のベース部が、前記第2のベース部に対して、前記第1の保持部側の面と、前記第1の保持部とは反対側の面と、を選択的に対向可能なように、又は、前記第2のベース部が、前記第1のベース部に対して、前記第2の保持部側の面と、前記第2の保持部とは反対側の面と、を選択的に対向可能なように構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハンド装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態であるハンド装置51を、実施例とその変形例とにより
図1〜
図21を参照して説明する。
【0010】
<実施例>
図1は、ハンド装置51と、ハンド装置51を先端に備えたアーム装置52と、を有するロボットハンド装置RHの全体構成を示す側面図である。
アーム装置52は、床FLに設置されるベース台52aと、ベース台52aに対して鉛直の軸線CL1まわりの矢印DR1方向に旋回可能な旋回台52bと、旋回台52bに対し関節53aを介して矢印DR2方向に回動可能に連結された第1アーム52cと、第1アーム52cに対し関節53bを介して矢印DR3方向に回動可能に連結された第2アーム52dと、を有して構成されている。
また、第2アーム52dは、中心軸線CL2まわりの矢印DR4方向にも回動可能とされている。
第2アーム52dは、先端に、各種のハンド装置を取り付けるためのハンド連結部54を備えている。
ハンド連結部54は、先端に取り付けられたハンド装置を、中心軸線CL2に直交する回動軸線CL54Aまわりの矢印DR5方向、及び回動軸線CL54Aに直交する回動軸線CL54Bまわりの矢印DR6方向に回動可能とする回動構造を有している。
【0011】
矢印DR1〜DR4で示された旋回動作及び回動動作は、各動作の駆動を受け持つ複数の駆動部(複数の駆動部を纏めて駆動系KDとも称する:
図20参照)により実行される。
駆動系KDの各駆動部は、例えばベース台52aに搭載された制御部SGによって互いに連携するように制御される。制御部SGは、外部に設けられてロボットハンド装置RHと有線又は無線で接続されるものであってもよい。
このような構成により、第1アーム52c,第2アーム52d,及び先端に取り付けられたハンド装置51は、自由な姿勢を取り得る。
【0012】
図2は、
図1に示されたハンド装置51を説明するためのその拡大図であり、
図3は、
図2に示されたハンド装置51を前方斜め上から見た斜視図である。ハンド装置51の説明に用いる上下前後左右方向は、特に記載がない限り、便宜的に
図3に示された方向として規定する。
【0013】
ハンド装置51は、本体ベース1(以下、単にベース1とも称する)と、ベース1に対して独立して設けられた可動部A及び可動部Bと、を有する。可動部Aと可動部Bとは、
図2における水平面SF1に対して上下面対称となる構造を有するので、以下では主に可動部Aについて説明する。尚、符号は、末尾にA又はBを付することで、可動部Aの部材か可動部Bの部材かを区別するものとする。
【0014】
可動部Aは、ベース1に対して前方に向け延在するように固定された中間プレート2Aと、中間プレート2Aの前方端部において、シャフト6Aを介し
図2の紙面表裏方向に延びる回動軸線CL3Aまわりの矢印DR15方向に回動可能に連結されたパッドベース3Aと、パッドベース3Aを回動させるためのシリンダ4Aと、を有している。シリンダ4A(4B)を駆動させるためのエアの配管は、
図1〜
図10において省略されている。
シリンダ4Aは、後端側がジョイント5aAによりベース1に連結され、シリンダ4Aに対して出入りするように伸縮するロッド4aAの前端側が、ジョイント5bAによりパッドベース3Aに連結されている。シリンダ4Aの動作は、制御部SGにより制御される。
【0015】
パッドベース3Aは、ロッド4aAが伸びて中間プレート2Aと同じ平面上又は平行となる平面上に位置する姿勢(以下、延伸姿勢とも称する)と、ロッド4aAが縮んで中間プレート2Aに対して直交する姿勢(以下、直交姿勢とも称する)と、の間を含む回動範囲で回動する。また、その間の任意の角度となる姿勢(以下傾斜姿勢とも称する)を取り得るようになっている。すなわち、パッドベース3Aの回動可能な角度範囲は、少なくとも90°となっている。
図2に示された可動部Bの姿勢は延伸姿勢であり、可動部Aの姿勢は直交姿勢である。
【0016】
図2以降の図では、可動部Aの各部位に対応する可動部Bの部位についても、末尾をBとした符号を付してある。
可動部Bは、可動部Aと同様の延伸姿勢と直交姿勢との間の回動を、水平面SF1に対して対称的に行うようになっている。
従って、可動部A及び可動部Bの一方が延伸姿勢で他方が直交姿勢をとっている場合、ハンド装置51としては、
図2〜
図4に示されるようなL字状姿勢となる。
また、可動部Aと可動部Bとが(パッドベース3Aとパッドベース3Bとが)共に直交姿勢をとっている場合、ハンド装置51としては、
図5に示されるようなT字状姿勢となる。
また、可動部Aと可動部Bとが共に延伸姿勢をとっている場合、ハンド装置51としては、
図6に示されるようなI字状姿勢となる。
パッドベース3A,3Bの姿勢変換は、上述のように、中間プレート2A,2B、シリンダ4A,4B、ロッド4aA,4aB、シャフト6A,6Bを含んで構成された姿勢変換部SHにより実現する。
【0017】
パッドベース3A,3Bは、延伸姿勢で互いに対向する対向面3aA,3aBに、複数の吸着パッド7A,7Bを有している。ハンド装置51においては、特に
図3から明らかなように、パッドベース3Aとパッドベース3Bとは共通の配置パターンで複数の吸着パッド7A,7Bが設けられている。
詳しくは、幅(左右)方向5列×長手方向4列のマトリックスで20個、加えて、長手方向の5列目の両側部側の一対、の合計22個が設けられている。
以下、複数の吸着パッド7A,7Bをそれぞれ纏めて吸着パッド群7GA,7GBと称する。吸着パッド群7GA,7GBは、ワークの平坦な部位を吸着してワークを保持できるようにするための保持部である。
【0018】
各吸着パッド7A,7Bは、ゴム材などにより形成され柔軟性を有しており、外部に設けられた負圧装置P(
図20参照)との間がエア配管で繋がれて、負圧装置Pで発生させた負圧によって空気吸引を行えるようになっている。吸着パッド7A,7Bにおける空気吸引のためのエアの配管及び配管に利用されるカプラは、各図において適宜省略されている。
【0019】
吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは、それぞれ独立して空気吸引できるようになっている。その空気吸引のための負圧装置の動作や、その動作に基づく吸着パッド7A及び吸着パッド7Bの吸引力、両吸着パッド7A,7Bの吸引バランスなどは、制御部SGにより制御される。
また、吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは、パッドベース3A,3Bが共に延伸姿勢をとった状態で、対向する吸着パッド7Aと吸着パッド7Bとの軸線がそれぞれ一致する位置をとり得るように、群全体の位置と各吸着パッド7A,7B間のピッチとが設定されている。
【0020】
次に、可動部A及び可動部BがとるL字状,T字状,及びI字状の各姿勢におけるワークWの保持例を、
図4〜
図6を主に参照して説明する。
図4はL字状、
図5はT字状、
図6はI字状の姿勢をそれぞれ示している。また、各図における(a)の図は、ワークWを保持したハンド装置51の側面図であり、(b)の図は、ハンド装置51がワークWを保持した状態のロボットハンド装置RHを示す全体図である。
【0021】
ハンド装置51は、
図4に示されるL字状姿勢において、吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは対向しない非対向位置にあり、例えば、屈曲部W1aで折り曲げられたワークW1を吸着保持することができる。ワークW1は、屈曲部W1aにおいて一方の面W1dを外側として直角に曲げられて形成された平板部W1bと平板部W1cとを有する。平板部W1b,W1cは、それぞれワークW1における平坦な部位である。
図4(a)に示されるように、吸着パッド群7GAにより一方の平板部W1bを一方の面W1d側から吸着し、吸着パッド群7GBにより他方の平板部W1cを吸着パッド群7GAと同じ一方の面W1d側から吸着する。
【0022】
ロボットハンド装置RHは、
図4(b)に示されるように、直角曲げが施されたワークW1を一方の面W1d側からのみ保持し、その姿勢を自由に変換できる。
従って、ロボットハンド装置RHは、ワークW1に対して更に加工を施す加工機への搬入,加工時の保持,及び加工後の搬出、という一連の動作を、保持状態を維持したまま、装置間のツカミ換えをすることなく実行できる。
また、吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは、独立してワークの吸引保持ができるので、直角曲げが施された一つのワークW1に限らず、別々の二つのワークをそれぞれ吸着保持できる。
【0023】
また、ハンド装置51は、
図5に示されるT字状姿勢において、吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは非対向であって同一方向を向く並列配置とされ、例えば、平板状の、又は所定範囲の平面を含む平面部W2aを有するワークW2を吸着保持することができる。すなわち、ワークW2の平坦部位を吸着保持する。
平面部W2aの所定範囲の平面とは、吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとが平面部W2aの一方の面W2a1に同時に接触して平面部W2aを一方の面W2a1側から吸着保持可能とする範囲の平面である。
従って、ワークW2は、所定範囲の平面部W2aを有していればワークW2全体が平板状であるものに限らず、ハンド装置51及びロボットハンド装置52に干渉しない範囲で一部に曲げ部を有して立体的に形成されたものであってもよい。
図5(b)には、ワークW2に対しそのような曲げ部W2bが形成された立体的なワークW22を保持した状態が記載されている。
【0024】
ロボットハンド装置RHは、
図5(b)に示されるように、ハンド装置51により平面部W2aを有するワークW2を一方の面W2a1側から保持し、アーム装置52の動作によりその姿勢を自由に変換できる。
従って、ロボットハンド装置RHは、ワークW22に対して更に加工を施す加工機への搬入,加工時の保持,及び加工後の搬出、という一連の作業や、ワークW22の搬送を、保持状態を維持したまま装置間のツカミ換えをすることなく実行できる。
また、吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは、独立してワークの吸引ができるので、一つのワークW2に限らず、二つのワークをそれぞれ吸着保持できる。
【0025】
また、ハンド装置51は、
図6に示されるI字状姿勢において、吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは対向する位置にあり、例えば、平板状の、又は一縁を含む所定範囲が平面となっている平面部W3aを有するワークW3を吸着保持することができる。すなわち、ワークW3の平坦部を吸着保持する。平面部W3aの所定範囲の平面とは、ワークW3の一縁W3bを含み、一方の面W3a1を吸着パッド群7GAが吸着可能であり、かつ他方の面W3a2を吸着パッド群7GBが吸着可能な範囲の平面である。
従って、ワークW3は、平面部W3aを有していれば、ハンド装置51及びロボットハンド装置52に干渉しない限り、ワークW3全体が平板状であるものに限らず一部に曲げ部を有して立体的に形成されたものであってもよい。
【0026】
図6(b)には、ワークW3に対しそのような曲げ部W3dが他の縁W3c側に形成された立体的なワークW33を保持した状態が記載されている。
ロボットハンド装置RHは、
図6(b)に示されるように、ハンド装置51により平面部W3aを有するワークW33を保持し、アーム装置52の動作によりその姿勢を自由に変換できる。
従って、ロボットハンド装置RHは、ワークW2に対して更に加工を施す加工機への搬入,加工時の保持,及び加工後の搬出、という一連の作業を、保持状態を維持したまま、装置間のツカミ換えをすることなく実行できる。
【0027】
吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとは、独立してワークWの吸引保持ができるので、L字姿勢において、延伸させた一方の可動部(例えば可動部B)の吸着パッド群7GBのみでワークWを吸着保持しておき、その後、他方の可動部Aのパッドベース3Aを回動させて、I字状姿勢に姿勢転換し、ワークWの両面から吸引保持するように保持形態を移行させることができる
このL字姿勢からI字状姿勢への姿勢転換に伴う保持形態の移行によれば、積載された複数のワークWの最上の一枚を吸引保持により取り出し、加工装置KKに供給し、加工終了後に所定の場所に積載する、という一連の動作を、この一台のロボットハンド装置RHのみで、装置間のツカミ換え動作をすることなく実行することができる。
この保持形態の移行について、比較的サイズの小さいワークW4での例を、
図7〜
図10を参照して具体的に説明する。
【0028】
図7は、加工装置KK(この例では曲げ加工装置)と、加工装置KKの前方(
図7の左方)に配設されハンド装置51を搭載したロボットハンド装置RHと、ロボットハンド装置RHに対する加工装置KKとは反対側に設けられたワーク及び製品の置き台SDと、が示されている。
置き台SDにおける
図7の左方側はワーク置き場SD1とされており、ワーク置き場SD1には、加工装置KKで加工される前の複数枚のワークW4が積載されてワーク群W4Gが形成されている。また、置き台SDにおける右方側は、加工装置KKで加工が施された後の製品PR(
図10参照)が外部への搬出のため載置される製品置き場SD2となっている。
【0029】
制御部SGは、ハンド装置51をT字状姿勢にし、アーム装置52を、パッドベース3A,3Bが水平となり、かつ、ハンド装置51の中心線CL3がワーク群W4Gと干渉せずにロボットハンド装置RH側に位置する姿勢にする。
この状態で上方からハンド装置51のパッドベース3Aをワーク群W4Gに向け下降させると共に、ワーク群W4Gの最上のワークW4を、パッドベース3Aの吸着パッド群7AGによって吸着し、ハンド装置51を上方に移動させる。
これにより、吸着パッド群7AGが一枚のワークW4を、その一端部W4a側で吸着保持した状態となる。この状態が
図7及びハンド装置51を拡大した
図8に実線で示されている。
【0030】
次に、制御部SGは、
図8に示されるように、パッドベース3Aを、ワークW4を吸引保持したまま直交姿勢から延伸姿勢に回動させる(矢印DR16A)と共に、パッドベース3Bを延伸姿勢に回動させて(矢印DR16B)I字状姿勢にする。このとき、吸着パッド群7GBはパッド群7GAと共にワークW4を挟み、両面側から吸引して保持する。
パッドベース3Aを回動させる際のハンド装置51の位置及び姿勢は、その回動に伴い保持したワークW4がロボットハンド装置RH自身や周辺部材にぶつからない位置である。
図8において、I字状姿勢とされた状態での各部材の外形線が、二点鎖線で示されている。
【0031】
ハンド装置51がI字状姿勢でワークW4を両面側から挟んで吸着保持したら、制御部SGは、旋回台52bを180°旋回させてアーム装置52を加工装置KKに向けると共に、アーム装置52に対し、ワークW4の他端部W4b側を加工装置KKの所定の加工位置に供給するように制御する。この制御により、例えば、
図9に示されるように、ワークW4の他端部W4b側が加工装置KKのダイDeとパンチPcの間のダイDe直近位置に挿入されて加工に供される。
【0032】
加工装置KKにより、ワークW4の他端部W4b側に例えばフランジW4b1が形成されて製品PRに加工されると、制御部SGは、
図10に示されるように、再び旋回台52bを180°旋回させてアーム装置52を置き台SD側に向けると共に、アーム装置52に、置き台SDの製品置き場SD2に製品PRを置く動作を実行させる。そして、製品PRを所定の位置に置いた後、吸引を停止して製品PRを開放し、ハンド装置51を上方に退避させる。
図10は、ロボットハンド装置RHの、製品置き場SD2に二つ目の製品PRを置く直前の状態が示されている。
このワークW4についての、加工装置KKへの供給及び加工後の加工装置KKから置き台SDへの搬送は、旋回台52bの旋回動作を伴わずに、矢印DR2,矢印DR3,及び矢印DR5の各回動動作(
図1参照)を適宜組み合わせた協働動作によっても行うことができる。
【0033】
上述のように、ハンド装置51を備えたロボットハンド装置RHは、板状のワークW4を、積載された状態から最上の一枚を保持して取り出し、その保持状態のまま、加工装置KKで加工を実行させることができ、更に、その保持を維持したまま加工により得られた製品PRを所定の位置に載置させることができる。
この一連の動作をロボットハンド装置RH一台で実行することができるので、設備費用が嵩むことはなく、省スペース化が可能である。また、当然にワークW4(製品PR)の装置間のツカミ換えは不要となり、作業効率が向上する。
【0034】
<変形例>
実施例のハンド装置51は、種々の変形をして、例えば
図11〜
図21を参照して説明する変形例のハンド装置151とすることができる。以下の説明における複数の変形例1〜7は、それぞれ独立して、又は組み合わせてハンド装置151に適用することができる。ハンド装置151は、
図1にも示されるように、ハンド装置51と同様にロボットハンド装置RHに搭載される。
図11〜
図21において駆動系KDを駆動させるためのエア配管及び吸着パッド17A,17Bの吸引のためのエア配管は、主配管のL字のカプラのみ記載し他は省略されている。
【0035】
図11は、ハンド装置151を説明するための拡大図であり、
図2に対応した図である。
図12は、
図11に示されたハンド装置151及びハンド連結部54の一部を、前方斜め上から見た斜視図である。ハンド装置151の説明に用いる上下前後方向は、特に記載がない限り、
図12に示された方向として規定する。
【0036】
(変形例1)
ハンド装置151は、変形例1として、可動部Aのパッドベース13Aが、吸着パッド群17GAを有するパッドユニット17UAを備え、パッドユニット17UAがパッドベース13Aに対して着脱自在とされていてもよい。
パッドベース13Aは、中央部分が抉れた略箱状に形成されており、この抉れた部分にパッドユニット17UAが収められている。
パッドユニット17UAは、左右側面がホルダプレート18に係合自在とされている。そして、ホルダプレート18がパッドユニット17UAと係合した状態で、左右の枠13AL,13ARにそれぞれ一対設けられたロックピン13APが締め付けられ、パッドユニット17UAは、パッドベース13Aに固定される。この固定構造はこのホルダプレート18を用いる例に限らず、周知の種々の固定構造を採用することができる。
【0037】
図11及び
図12では、吸着パッド群17GAとして幅(左右)方向3列×長手方向4列のマトリックスで12個の吸着パッド17Aを備えたものが記載されているが、パッドユニット17UAを交換自在としたこの変形例1によれば、吸着パッド17Aの種類やその配置パターンが異なる種々のパッドユニット17UAを、選択的に装着することができる。
これにより、保持するワークの種類や前処理、特に、前工程での孔明けパターンの違いに応じて最適な保持が可能な吸着パッド群17GAを有するパッドユニット17UAを選択して使用することができるので、ワークの種類等によらず、多種のワークについて良好な保持が可能である。この変形1は、可動部B側のパッドベース13Bに適用してもよい。
【0038】
(変形例2)
ハンド装置151は、変形例2として、
図11に示されるように、パッドベース13Bにおける隣接する吸着パッド17Bの間に、上方に突出する突出部19Bが設けられていてもよい。突出部19Bは、その先端面とパッドベース13Bの表面13Baとの距離(突出量)である高さH19が所定の高さで一定になるように設けられている。この高さH19は、吸着パッド17Bの自然状態での高さH17より低く設定されている。
【0039】
図13(A)に示されるように、この突出部19Bは、ハンド装置151でワークWを保持した際の、所謂突き当てとして機能する。
図13(A)は、ハンド装置151のI字状姿勢におけるワークWを吸着保持した状態を、その先端部分について示した図である。
ワークWを吸着することで、吸着パッド17Bは吸着パッド17Aと共に柔軟性を有しているのでつぶれて高さが低くなる。このとき、突出部19Bが設けられてなければ、ワークWの吸着方向の位置〔
図13(A)における上下方向の位置〕は特に規制されないが、突出部19Bが設けられていると、突出部19Bの先端面にワークWが当接してその位置で吸着方向の位置が規制される。
これにより、保持したワークWの位置が高精度で決まり、保持した状態での次加工の際の位置決め方法の選択肢が増え、精密加工が良好に行える、などのメリットが得られる。
【0040】
このように、ワークWの突き当てとなる突出部19Bを設けた変形例2は、ワークWについて、その厚さ方向における保持位置を高い精度で決めることができる。変形例2の突出部19Bは、可動部A側のパッドベース3Aに突出部19A(図示せず)として設けてもよい。突出部19A,19Bの数や配置パターン等は、ワークWの位置決めを安定的に行えるものであれば限定されずに適宜設定することができる。
【0041】
(変形例3)
ハンド装置151は、変形例3として、以下に説明する構成として、厚さが異なる種々のワークWを良好に吸着保持できるものであってもよい。
具体的には、ハンド装置151は、
図13(B)に示されるように、パッドベース13Aの替わりに中央部が開口した枠状のパッドベース20Aが備えられており、その開口部に吸着パッド群17GAを有するパッドユニット17U2Aが収められている。パッドユニット17U2Aは、パッドベース13Aに対してその厚さ方向〔吸着方向:
図13(B)の矢印DR13参照〕に所定範囲で自由移動できるように保持されている。
【0042】
また、パッドベース20Aを含み一体で自由移動する部材の質量は、吸着パッド群17GAが吸着可能な平板の最大質量未満となるように設定されている。
これは、
図13(B)に示されている姿勢が上下反転し、ワークWfよりもパッドベース20Aが下方(地面側)となる姿勢となった場合でも、自由移動する部材にかかる重力が吸引力に勝り、パッドベース20AがワークWfから離脱して落下することがないようにするための設定である。
【0043】
図13(B)では、I字状姿勢において、
図13(A)に示されたワークW(板厚t1)よりも厚い板厚t2なるワークWfを保持した状態が示されている。
図13(B)からもわかるように、パッドユニット17U2Aが、パッドベース13Aに対して吸着方向に自由移動可能に備えられた変形例3によれば、吸着保持するワークWfの板厚に応じた吸着方向の位置にパッドユニット17U2Aが移動して吸着が行われるので、ワークWfが薄板であっても厚板であってもその板厚によらず良好に吸着保持することができる。
変形例3は、例えば変形例1と組み合わせて、パッドユニット17U2Aをパッドベース20Aに対して着脱自在なように構成してもよい。
【0044】
(変形例4)
ハンド装置151は、変形例4として、
図13(A)に示されたパッドベース13Aとパッドベース13Bとの前後方向の相対位置を任意に調節できる調節構造として位置調節部TKを有していてもよい。
具体的には、位置調節部TKは、
図14に模式的に示されるように、可動部Aの中間プレート12Aとベース1との間に設けられ、両者間距離を可変するモータ等を駆動源とする前後位置調節部21Aを含んで構成される。
前後位置調節部21Aはベース1に固定されロッド21A1を前後方向に伸縮させるものである。中間プレート12Aは、中間プレート12Bよりも後方側が短く形成され、中間プレート12Bに対しリニアガイド22を介して前後方向に移動可能とされ、後端部がロッド21A1に連結されている。
【0045】
この位置調節により、前後位置調節部21Aの動作によるロッド21A1の伸縮動作に伴い、中間プレート12Aが中間プレート12Bに対して前後動する。すなわち、パッドベース13Bに対してパッドベース13Aの位置が前後するようになっている。
これにより、例えば、
図15に示されるように、保持すべきワークWgの表面において、本来、パッドベース13A側の吸着パッド群17GAで吸着すべき範囲に凹凸処理がされた凹凸部Wg1が形成されて吸着が良好に行えない場合にも、パッドベース13Aを、前後位置調節部21Aによって凹凸部Wg1にかからない位置に(この例では後方側)に移動する(白ヌキ矢印方向)ことで、ワークWgを良好に吸着することができる。
すなわち、変形例4によれば、保持するワークの表面状態や形状に応じて、吸着範囲をある程度調節できるので、多種のワークを吸着保持することができる。
【0046】
(変形例5)
ハンド装置151は、変形例5として、
図12に示されるように、パッドベース13Bが、図示しない回転機構によりその概ね中心となる中心線CL13の周り(
図12の矢印DR13)に、180°回動可能とされていてもよい。すなわち、吸着パッド群17GBが、
図12に示される内方側を向く姿勢と外方側(
図12の下方側)を向く姿勢を選択的にとり得るようになっている。この回動は、パッドベース13Aが
図12に示されるような直交姿勢をとっている状態で実行される。
吸着パッド群17GBが外方側を向く姿勢は、ちょうど人の手の甲に吸着パッド群17GBがあるものに概ね相当するので、手の甲位置姿勢と称する。これに対し、内方側を向く姿勢については、ちょうど人の手の平に吸着パッド17GBがあるものに概ね相当するので手の平位置姿勢と称する。
【0047】
図16は、ロボットハンド装置RHにおけるハンド装置151の吸着パッド群17GBを手の甲位置姿勢としてワークWのピックアップから加工機への投入までの動作を説明する図である。
床上には、ロボットハンド装置RHは、加工装置KKとワークWの置き台SDとの間に配設されている。
置き台SDには、これから加工装置KKの加工に供される複数枚のワークWが積載されてワーク群WGが形成されている。
【0048】
ハンド装置151は、加工装置KKによる加工のための動作において、まず、手の甲位置姿勢で吸着パッド群17GBを床側にし、ワーク群WGから最上の一枚のワークWtを吸着保持し、上方に持ち上げる(
図16の白ヌキ矢印)。
次に、ロボットハンド装置RHの第2アーム52dを矢印のように回動させて保持したワークWtを上方側にして加工装置KKに供給する。
この状態で、ハンド装置151の本体となるパッドベース13A,13Bや中間プレート2A,2Bは、ワークWtにおける加工に供される先端側の部位Wt1から最も離れた反対側の端部側にある。
これに対し、ワークWtを下方側から吸着するT字姿勢とした場合は、一点鎖線で示された外形の位置と比較して明らかなように、手の甲位置姿勢の方が、ハンド装置151の本体が加工装置KKから離れた位置にある。従って、ワークWtを手の甲位置姿勢で保持した方が、T字姿勢で保持した場合よりも加工装置KKと干渉し難いことがわかる。
従って、ハンド装置151を変形例5とすることにより、ロボットハンド装置RHのとり得る姿勢の自由度が増え、加工作業が容易に行える。
【0049】
(変形例6)
ハンド装置151は、変形例6として、
図17に示されるように、パッドベース13Aの先端面13bAに、複数の吸着パッド22Aからなる吸着パッド群22GAを備えていてもよい。同様に、パッドベース13Bの先端面13bBに、複数の吸着パッド22Bからなる吸着パッド群22GBを備えていてもよい。変形例6においては、吸着パッド群22GA,22GBは、いずれか一方が備えられていればよい。
これにより、パッドベース13A又はパッドベース13Bの先端でもワークWを吸着保持することができるようになる。
【0050】
例えば、
図18に示されるように、置き台SDに配置された複数のワーク群WGに近接して小さいワークW5のワーク群W5Gが、ワーク群WGと同等かそれ以下の高さで配置されている場合でも、変形例6のハンド装置151を用いることで、ワーク群W5Gの最上の一枚を取り出すことができる。
具体的には、ハンド装置151を、先端面13bA,13bBを下方にしたI字姿勢としてワーク群W5Gの上方から接近させ、吸着パッド群22GA,22GBでワーク群W5Gの最上のワークW5を吸着保持させる。
変形例6によれば、占有面積が少ない先端面13bA,13bBに吸着パッド群22GA,22GBが設けられているので、ワーク群W5Gの上方空間が狭い場合でも、ハンド装置151を上方から接近させてワークW5を吸着保持することができる。
【0051】
(変形例7)
ハンド装置151は、変形例7として、パッドベース13Aとパッドベース13Bとの所定の姿勢を維持し、その姿勢からの予期せぬ回動を禁止するロック機構23を備えていてもよい。
ロック機構23は、例えば
図11に示されるように、シリンダ23aと、シリンダ23aの動作で伸縮するロッド23bと、ロッド23bの先端に連結された棒状のロックバー23cと、中間プレート2A,2Bに取り付けられロックバー23cを直動自在に支持するバーガイド23dと、を含んで構成されている。
【0052】
シリンダ23aの動作は制御部SGによって制御される。制御部SGは、パッドベース13A及びパッドベース13Bの姿勢に応じてシリンダ23aを動作させる。
具体的には、パッドベース13A及びパッドベース13Bが、L字状,T字状,及びI字状のいずれかの姿勢とされている場合において、各姿勢でロックする場合にロッド23bを伸ばし、姿勢転換等ためロックを解除する場合に、ロッド23bを縮めるように動作を制御する。
ロッド23bが伸びると、ロックバー23cが、パッドベース13Aとパッドベース13Bとの間の間隙SPにガタなく進入するので、パッドベース13A及びパッドベース13Bの回動が禁止されたロック状態となる。この例では、L字状,T字状,及びI字状の各姿勢で、間隙SPの間隔H1が等しくなるように設定されているので、いずれの姿勢もロックバー23cの間隙SPへの進入でロック状態にすることができる。
【0053】
また、ロック機構23を
図19に示される構成にすれば、パッドベース13Aとパッドベース13Bとの成す劣角が90°を超え180°未満の任意の姿勢でロックさせることもできる。
すなわち、
図19において、パッドベース13A及びパッドベース13Bには、回動軸線CL13A,CL13Bに近接して互いに対向する面の隅部に、C面取り部13A1,13B1が形成されている。C面取り部13A1,13B1は、パッドベース13Aとパッドベース13Bとの成す劣角θ1が所定の角度(例えば60°や120°)となる姿勢(以下、所定姿勢と称する)のときに互いに平行となるように設けられている。
また、その平行となった際の間隔H2が、他の姿勢(L字状,T字状,及びI字状)のときのパッドベース13Aとパッドベース13Bとの間隔H1と異なるように形成されている。例えば、
図19では、H1<H2 で形成されている。
一方、ロックバー23cは、間隔H1及び間隔H2をとり得る間隙SPにそれぞれガタなく係合するように、先端側が間隔H1とほぼ等しい外径D1の細径部22c1とされ、根本側が間隔H2とほぼ等しい外径D2の太径部22c2とされている。また、シリンダ23aは多段のものを採用する。
制御部SGは、シリンダ4A,4Bの動作と連携させて、所定姿勢の場合にはロッド23bを長く伸ばして間隔H2なる間隙SPに太径部22c2の部分まで進入させ、他の姿勢の場合には、間隔H1なる間隙SPに細径部22c1の部分のみを進入させるように制御する。
これにより、パッドベース13Aとパッドベース13Bとが、異なる劣角となる複数の姿勢それぞれでロックさせることができる。
上述の例は2段であるが、3段以上の多段にすることも同様に可能である。
また、ロックバー23cは、棒状でなくて角柱状であってもよい。
【0054】
図20は、ロボットハンド装置RHの動作を司る制御部SGに接続された複数のブロックを説明するためのブロック図である。この図には、上述した実施例及び変形例に対応するブロックが記載されている。
図20に示されるように、制御部SGは、ロボットハンド装置RHの回動及び旋回の動作において駆動系KDを制御し、吸着パッド群7GA,7GB等の吸引において負圧装置Pを制御し、パッドベース3A,3Bの回動動作においてシリンダ4A,4Bを制御し、ロック機構23の動作においてシリンダ23aを制御する。
外部からは、ワークの形状等、加工プログラム、その加工に対応したハンド装置51,151の姿勢や動作等、を含む加工情報KJが入来する。制御部SGは、入来した加工情報KJを記憶部MRに記憶させて必要なときに参照する。
外部の制御装置又は作業者からの指示は、入力部NRを介して行われる。
制御部SGは、ハンド装置51,151及びロボットハンド装置RHの姿勢や動作に関する情報を、出力部TPから音声や画像等によって外部に出力させる。
【0055】
ところで、積載されたワークWは、例えば、表面に潤滑油等が付着していると、最上の一枚を吸着保持して持ち上げた際に、下側に接触していたワークWも密着したままの状態で持ち上げられてしまう場合がある。
この場合に、ハンド装置51,151がT字状姿勢であってワークWが吸着パッド群7GAと吸着パッド群7GBとの両方により吸着保持されていれば、制御部SGによって
図21に示される動作を実行することにより、ワークWの重なり合いを解除して一枚のみを分離保持することができる。
すなわち、
図21に示されるように、ハンド装置51が下方向きのT字状姿勢とされ、吸着パッド群7GA及び吸着パッド群7GBに跨ってワークW6aを吸着保持しており、ワークW6aの下面に油の付着等により別のワークW6bが密着して共に保持されてる場合に、制御部SGは、パッドベース3A,3Bを、矢印DR17に示される方向の微小角度で往復回動させる(矢印DR17は微小角度を大きな角度に誇張して示している)。これにより、ワークW6a,W6bには僅かな撓みが生じ、ワークW6aは吸着パッド群7GA,7GBに直接吸着されているので保持されているものの、ワークW6bはワークW6aとの間に隙間が生じ落下する(白ヌキ矢印及び二点鎖線)。
このように、ハンド装置51は、確実に一枚のワークを吸着保持することができる。
【0056】
本発明の実施例は、上述した実施例及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において更に別の変形例としてもよい。
【0057】
シリンダ4A.4Bは、モータなどの他の駆動源であってもよい
ワークWをI字状姿勢で両面側から挟持的に吸着保持した際に、吸着パッド群7AG,7AB以外にワークWを挟持する高摩擦部材を設けてもよい。高摩擦部材は例えばゴムで形成される。これにより、吸着保持したワークWの表面に沿う方向の滑りを防止し、より安定した挟持保持ができる。
保持部によるワークの吸着は、負圧による空気吸引で行うものに限らない。ワークWが磁性体であれば、磁力による吸着が可能であるので、保持部として吸着パッド群7GA,7GBの替わりに電磁マグネットを備えていてもよい。電磁マグネットは、単独適用でもよく、吸着パッド群7GA,7GBと併用してもよい。
パッドベース3A,3Bの対向する面には、吸着保持するワークの縁部にフランジが形成されていても保持が可能なように、フランジが進入するフランジ逃げとしての凹部が形成されていてもよい。