(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0021】
また、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0022】
図1は、本実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
図1に示すように、マイクロポンプ1は、板状の基材10を備えている。基材10は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックスなどにより構成することができる。基材10を構成する樹脂としては、例えば、有機シロキサン化合物、ポリメタクリレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。有機シロキサン化合物の具体例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチル水素シロキサンなどが挙げられる。
【0023】
基材10には、主面10aに開口しているマイクロ流路10bが形成されている。
【0024】
ここで、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体に所謂マイクロ効果が発現する形状寸法に形成されている流路をいう。具体的には、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体が、表面張力と毛細管現象との影響を強く受け、通常の寸法の流路を流れる液体とは異なる挙動を示す形状寸法に形成されている流路をいう。
【0025】
主面10aの上には、フィルム状のガス発生材11aが貼付されている。マイクロ流路10bの開口は、このガス発生材11aにより覆われている。このため、ガス発生材11aに光や熱などの外部刺激が加わることによりガス発生材11aから発生したガスは、マイクロ流路10bに導かれる。
【0026】
ガス発生材11aの厚みは、特に限定されないが、例えば、5μm〜5mm程度とすることができ、好ましくは10μm〜500μm程度とすることができる。
【0027】
ガス発生材11aは、ガスバリア層12により覆われている。このガスバリア層12により、ガス発生材11aにおいて発生したガスが主面10aとは反対側に流出することが抑制され、マイクロ流路10bに効率的に供給される。このため、ガスバリア層12は、ガス発生材11aにおいて発生したガスの透過性が低いものであることが好ましい。
【0028】
ガスバリア層12は、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスなどにより構成することができる。
【0029】
なお、ガスバリア層12の厚みは、ガスバリア層12の材質などによって異なるが、例えば、10μm〜1mm程度とすることができ、好ましくは25μm〜100μm程度とすることができる。ガスバリア層12は、光を透過させる場合に、紫外線領域の光の減衰が起きにくいものであることが好ましい。
【0030】
ガス発生材11aは、ガス発生剤を含む。ガス発生剤は、アゾ化合物またはアジド化合物からなる。ガス発生剤は、熱や光などの外部刺激が加わった際にガスを発生させるアゾ化合物またはアジド化合物であれば、特に限定されず、公知のアゾ化合物またはアジド化合物であってもよい。
【0031】
ガス発生剤となるアゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などが挙げられる。これらのアゾ化合物は、特定の波長域の光、熱などによる刺激を受けることにより窒素ガスを発生させる。
【0032】
なお、アゾ化合物は、衝撃によっては気体を発生しないことから、取り扱いが極めて容易である。また、アゾ化合物は、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生させることもなく、光の照射を中断することで気体の発生を中断させることもできる。このため、アゾ化合物をガス発生剤として用いることによりガス発生量の制御が容易となる。
【0033】
ガス発生剤となるアジド化合物としては、例えば、スルフォニルアジド基またはアジドメチル基を有する化合物が挙げられる。
【0034】
スルフォニルアジド基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
一般式(1)において、R
1〜R
5は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基、置換基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭化水素基、あるいは置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である。
【0037】
一般式(1)のR
1〜R
5において、置換基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭化水素基の炭素数は、1〜30程度の範囲であることが好ましく、3〜20程度の範囲であることがより好ましく、6〜18程度の範囲であることがさらに好ましい。また、置換基としては、炭素数が1〜3であるアルキル基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0038】
一般式(1)のR
1〜R
5において、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基の炭素数は、1〜20程度の範囲であることが好ましく、3〜16程度の範囲であることがより好ましく、6〜12程度の範囲であることがさらに好ましい。また、置換基としては、炭素数が1〜3であるアルキル基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0039】
一般式(1)において、R
3は、アミド基、置換基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭化水素基、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基などであることが好ましい。また、R
1,R
2,R
4,R
5は、それぞれ、水素原子であることが好ましい。
【0040】
アジドメチル基を有する化合物としては、例えば、グリシジルアジドポリマーが挙げられる。グリシジルアジドポリマーとしては、側鎖にアジドメチル基を有し、末端に水酸基を有する脂肪族ポリエーテルが好ましい。側鎖にアジドメチル基を有し、末端に水酸基を有する脂肪族ポリエーテルとしては、例えば、下記一般式(2−1)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
H(B)
q(A)
nOR
1O(A)
m(B)
rH (2−1)
[式中、m+n=2〜20、m≧1、n≧1、q+r=10〜35、q≧5、r≧5。A単位は、−OR
2−である。B単位は、−CH
2CH(CH
2N
3)O−である。R
1は、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、−〔(CH
2CH
2O)
xCH
2CH
2〕−、または−〔(CH
2CH
2CH
2CH
2O)
yCH
2CH
2CH
2CH
2〕−である。xは、10〜25、yは、5〜20である。R
2は、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−、又は−CH
2CH(CH
3)−である。]
【0042】
また、側鎖にアジドメチル基を有し、末端に水酸基を有する脂肪族ポリエーテルとしては、例えば、下記一般式(2−2)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
一般式(2−2)において、mは、1〜20の整数であり、3〜15の整数であることが好ましい。l+nは、7〜50の整数であり、10〜30の整数であることが好ましい。
【0043】
これらのアジド化合物は、特定の波長域の光、熱、超音波、衝撃などによる刺激を受けることにより分解して、窒素ガスを発生させる。
【0044】
ガス発生材11aにおいて、ガス発生剤は30質量%〜92質量%程度の範囲で含まれていることが好ましく、40質量%〜90質量%程度の範囲で含まれていることがより好ましく、55質量%〜90質量%程度の範囲で含まれていることがさらに好ましい。ガス発生剤が30質量%以上であると十分なガス発生量を得ることが可能となる。ガス発生材11aは、光増感剤やヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を含む必要があるため、ガス発生剤の上限は、92質量%程度である。
【0045】
ガス発生材11aは、アゾ化合物またはアジド化合物からなるガス発生剤に加えて、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を含む。ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物は、ガス発生剤が光などの刺激を受けて、窒素ガスなどを発生するときに生じるラジカルを捕捉し得る化合物である。ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物は、水素供与材として機能し得る化合物である。
【0046】
ガス発生材11aでは、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物のようなラジカルを捕捉し得る化合物を含むことにより、上述の窒素ガスの発生がスムーズに行われ、ガス発生量を増加することが可能となる。
【0047】
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物のヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。
【0048】
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物は、第一級もしくは第二級のアミノ基、水酸基、カルボキシル基またはチオール基のいずれかを有する化合物であることが好ましい。ラジカルを捕捉する機能という観点から、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物は、これらの中でも、第一級もしくは第二級のアミノ基またはチオール基のいずれかを有する化合物であることが好ましい。
【0049】
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物としては、例えば、第一級もしくは第二級アミノ基、水酸基、カルボキシル基またはチオール基のいずれかを有する脂肪族炭化水素が挙げられる。脂肪族炭化水素の炭素数は、1〜30程度の範囲であることが好ましく、3〜20程度の範囲であることがより好ましく、4〜18程度の範囲であることがさらに好ましい。
【0050】
第一級もしくは第二級アミノ基を有する脂肪族炭化水素の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ドデシルアミン、プロピルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン(一級アミン)、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン(二級アミン)などが挙げられる。水酸基を有する脂肪族炭化水素の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノールなどが挙げられる。カルボキシル基を有する脂肪族炭化水素の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸などが挙げられる。チオール基を有する脂肪族炭化水素の具体例としては、エタンチオール、メタンチオール、1−プロパンチオール、1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオールなどが挙げられる。
【0051】
また、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物としては、例えば、第一級もしくは第二級アミノ基、水酸基、カルボキシル基またはチオール基のいずれかを複数有するポリマーであってもよい。第一級もしくは第二級アミノ基を複数有する化合物やポリマーとしては、アミノエチル化アクリルポリマー、アクリルアミドモノマーとN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートモノマーの共重合、アクリルアミドモノマーとN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートモノマーの共重合などが挙げられる。水酸基を複数有するポリマーとしては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの重合体、グリセリンなどが挙げられる。カルボキシル基を複数有する化合物ポリマーとしては、2エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸の共重合体、ブチルアクリレートとアクリル酸の共重合体、エチルアクリレートとアクリル酸の共重合体などが挙げられる。チオール基を複数有する化合物やポリマーとしては、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタン トリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)などが挙げられる。
【0052】
ガス発生材11aにおいて、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物は、ガス発生剤100質量部に対して、5質量部〜95質量部程度の範囲で含まれていることが好ましく、5質量部〜70質量部程度の範囲で含まれていることがより好ましく、10質量部〜50質量部程度の範囲で含まれていることがさらに好ましい。
【0053】
ガス発生材11aは、さらに光増感剤を含む。光増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、アントラキノン、ベンゾイン、アクリジン誘導体などが挙げられる。
【0054】
光増感剤は、ガス発生剤100質量部に対して、0.5質量部〜20質量部程度の範囲で含まれていることが好ましく、1質量部〜10質量部程度の範囲で含まれていることがさらに好ましい。
【0055】
また、光増感剤は、ガス発生材11a中、0.1質量%〜17質量%程度の範囲で含まれていることが好ましく、1質量%〜15質量%程度の範囲で含まれていることがより好ましく、1質量%〜10質量%程度の範囲で含まれていることがさらに好ましい。
【0056】
ガス発生材11aは、バインダー樹脂をさらに含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、グリシジルアジドポリマーなどが挙げられる。バインダー樹脂は、ガス発生材11aの形状が保持できるような範囲で含まれていることが好ましい。
【0057】
ガス発生材11aがバインダー樹脂を含む場合、バインダー樹脂は、例えば、ガス発生剤100質量部に対して、20質量部〜200質量部程度の範囲で含まれていることが好ましく、30質量部〜150質量部程度の範囲で含まれていることがさらに好ましい。
【0058】
また、ガス発生材11aがバインダー樹脂を含む場合、バインダー樹脂は、ガス発生材11a中、6質量%〜70質量%程度の範囲で含まれていることが好ましく、20質量%〜65質量%程度の範囲で含まれていることがより好ましく、40質量%〜65質量%程度の範囲で含まれていることがさらに好ましい。なお、バインダー樹脂として、アクリル系樹脂を用いた場合、ガス発生材11a中にバインダー樹脂が20質量%以上含まれると、ガス発生材11aに粘着性を付与することが可能となり好ましい。
【0059】
また、ガス発生材11aは、バインダー樹脂と共に粘着付与剤を含んでもよい。
【0060】
ガス発生材11aは、アゾ化合物またはアジド化合物からなるガス発生剤に加えて、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を含む。これにより、ガス発生材11aでは、単位時間あたりのガス発生量を多くすることができる。
【0061】
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を含むことによりガス発生材11aのガス発生量が多くなる詳細な機構は明らかではないが、例えば、次のような機構が考えられる。アゾ化合物またはアジド化合物からなるガス発生剤に光などの刺激が加わり、窒素ガスを発生するときに、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を含むことにより、窒素ガスが発生する反応が進行しやすくなると考えられる。
【0062】
ガス発生材11aは、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を含む。このため、ガス発生反応が進行しやすくなり、その結果として、ガス発生材11aの単位時間あたりのガス発生量を多くすることができるものと考えられる。
【0063】
また、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物において、ヘテロ原子に結合した水素原子は、親水性を有する。一方、例えば、アジド化合物からなるガス発生剤において、スルフォニルアジド基やアジドメチル基は、親水性を有する。よって、例えば、アジド化合物からなるガス発生剤において、スルフォニルアジド基やアジドメチル基以外の部分が疎水性を有すれば、親水性を有するスルフォニルアジド基やアジドメチル基と、親水性を有するヘテロ原子に結合した水素原子とが集まりやすくなる。そうすると、親水性を有する官能基同士の距離が近くなり、光などの刺激によってガス発生剤から発生したラジカルが効率的にヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物によって捕捉されると考えられる。従って、ガス発生材11aの単位時間あたりのガス発生量をより多くすることができると考えられる。このような観点から、例えば、ガス発生材11aが一般式(1)で表される化合物である場合、R
1〜R
5の少なくとも一つは、置換基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基の炭素数は、3〜16程度の範囲であることがより好ましく、6〜12程度の範囲であることがさらに好ましい。また、このような観点から、ガス発生材11aが一般式(2−2)で表される化合物である場合には、mは、1〜20の整数であり、l+nは、7〜50の整数であることが好ましい。さらに、例えば、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物において、第一級もしくは第二級アミノ基、水酸基、カルボキシル基またはチオール基のいずれかを有する脂肪族炭化水素の炭素数が、3〜30程度の範囲、特に6〜20の範囲であると、ヘテロ原子に結合した水素原子と、ガス発生剤のスルフォニルアジド基やアジドメチル基とがより集まりやすくなるため好ましい。この脂肪族炭化水素の炭素数は、4〜18程度の範囲内であることがより好ましい。
【0064】
(変形例)
図2は、上記の実施形態の変形例に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【0065】
本変形例に係るマイクロポンプ2は、ガス発生材の形状及び基材10の形状において、上記の実施形態に係るマイクロポンプ1と異なる。
【0066】
本変形例では、マイクロ流路10bは、基材10内に形成されたポンプ室10cに接続されている。ガス発生材11bは、ブロック状に形成されており、ポンプ室10c内に配されている。
【0067】
本実施形態に係るマイクロポンプ2においても、上記マイクロポンプ1と同様に、高出力かつ長駆動時間を実現することができる。
【0068】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0069】
(実施例1)
2−エチルへキシルアクリレートを96.5質量部と、アクリル酸を3質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレートを0.5質量部とを混合し、アクリル系共重合体(重量平均分子量70万)を作製した。バインダー樹脂としてこのアクリル系共重合体を190質量部と、ガス発生剤として4−ドデシルベンゼンスルフォニルアジド(東洋紡社製のDBSN)を100質量部と、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物として1−ブタンチオールを10質量部と、光増感剤としてジエチルチオキサントン(チバスペシャルティケミカルズ社製のDETX−S)を3.5質量部と、溶剤として酢酸エチルを380質量部とを混合し、離型PETフィルム上に塗工し、110℃で5分間乾燥した。これを離型PETで保護し、一日養生させて、厚み50μmのフィルム状のガス発生材を得た。
【0070】
このガス発生材を用いて、上記第1の実施形態のマイクロポンプ1と実質的に同様の構成を有するマイクロポンプを作製した。
【0071】
マイクロ流路10bの断面形状は、0.5mm角の矩形状とした。マイクロ流路10bの長さは、800mmとした。マイクロ流路10bの両端は大気に開放した状態となるよう、主面10a上に開口部を2つ形成した。ガス発生材は、直径0.6cmサイズで、厚み50μmのフィルム状とした。ガス発生材11bは、直径0.6cmサイズで、厚み50μmの円盤状とし、前記開口部の片方を覆うように設置した。ガスバリア層12は、厚さ200μmの透明PETフィルムを用いて、ガス発生材に積層した。マイクロ流路10bの他方の開口部は大気に開放した状態とした。
【0072】
次に、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
なお、ガス発生量の測定では、380nmの紫外線LED(ナイトレイドセミコンダクター社製のNS375L−5RFS)で2分間照射したときのガスの発生量を測定した。ガス発生量の測定方法は、マイクロ流路10bの前記、大気に開放された開口部とメスピペットとをシリコンチューブでつなぎ、この中を水で充填させ、その後、ガス発生材に紫外線を照射し、発生したガスによるメスピペット内の水の体積変化を読み取る方法とした。
【0074】
(実施例2)
アクリル系共重合体を150質量部とし、1−ブタンチオールを50質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例3)
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物として1−ブタンチオールの代わりに1−ドデカンチオールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例4)
アクリル系共重合体を150質量部とし、1−ドデカンチオールを50質量部使用したこと以外は、実施例3と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例5)
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物として1−ブタンチオールの代わりにブチルアミンを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例6)
アクリル系共重合体を150質量部とし、ブチルアミンを50質量部使用したこと以外は、実施例5と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例7)
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物として1−ブタンチオールの代わりにドデシルアミンを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例8)
アクリル系共重合体を150質量部とし、ドデシルアミンを50質量部使用したこと以外は、実施例7と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例1)
アクリル系共重合体を200質量部とし、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例9)
2−エチルへキシルアクリレートを96.5質量部と、アクリル酸を3質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレートを0.5質量部とを混合し、アクリル系共重合体(重量平均分子量70万)を得た。このアクリル系共重合体とビニル系重合体(日本触媒社製:品番AX4−HC−MO8)を質量比で8:2に混合したものをバインダー樹脂として用いた。このバインダー樹脂100質量部、ガス発生剤としてグリシジルアジドポリマー(日油社製:GAP4006)を200質量部、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物としてドデシルアミン(東京化成社製)100質量部、光増感剤としてジエチルチオキサントン(チバスペシャルティケミカルズ社製のDETX−S)を3.5質量部、溶剤として酢酸エチルを380質量部とを混合し、フィルム状に加工し、110℃で5分間乾燥した。これを離型PETで保護し、一日養生させて、フィルム状のガス発生材を得た。得られたガス発生材を用い、実施例1と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
(実施例10)
2−エチルへキシルアクリレートを96.5質量部と、アクリル酸を3質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレートを0.5質量部とを混合し、アクリル系共重合体(重量平均分子量70万)を得た。バインダー樹脂としてこのアクリル系共重合体を100質量部と、ガス発生剤としてグリシジルアジドポリマー(日油社製:GAP4006)を200質量部と、ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物としてアミノエチル化アクリルポリマー(日本触媒社製:ポリメントNK−380)を100質量部と、光増感剤としてジエチルチオキサントン(チバスペシャルティケミカルズ社製のDETX−S)を3.5質量部、溶剤として酢酸エチルを380質量部を混合し、フィルム状に加工し、110℃で5分間乾燥した。これを離型PETで保護し、一日養生させて、フィルム状のガス発生材を得た。得られたガス発生材を用い、実施例1と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0085】
(比較例2)
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物を使用しなかったこと以外は、実施例10と同様にして、マイクロポンプを作製した。次に、実施例1と同様にして、得られたマイクロポンプのガス発生量を測定した。結果を表2に示す。