(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態による車載用車線認識装置100の構成を示すブロック図である。
図1に示す車載用車線認識装置100は、車両に搭載されて使用されるものであり、取り付けられたカメラ1と、制御部2と、警報出力部3と、動作状態報知部4と、を備える。
【0009】
カメラ1は、車両の後方に向けて設置されており、車両後方の路面を含む撮影領域内の画像を所定の時間間隔ごとに撮影する。このカメラ1には、たとえばCCDやCMOSなどの撮像素子が用いられる。カメラ1により取得された撮影画像は、カメラ1から制御部2へ出力される。
【0010】
図2は、カメラ1の撮影領域を示す図であり、カメラ1を横方向から見た様子を示している。カメラ1は、この撮影領域において、車両後方の路面を含む画像を撮影する。ここで、カメラ1の撮影領域(画角)は、車両後方の路面を左右方向について十分に広い範囲で撮影できるように比較的広く設定されている。
【0011】
図3は、カメラ1の取り付け位置の例を示す図である。自車両の後方部分において、車体20にはナンバープレート21が設置されている。このナンバープレート21の直上の位置に、斜め下に向けてカメラ1が取り付けられている。なお、ここで示した取り付け位置はあくまで一例であるため、他の位置にカメラ1を取り付けてもよい。車両後方の路面を適切な範囲で撮影可能な限り、カメラ1の取り付け位置をどのように定めてもよい。
【0012】
制御部2は、カメラ1からの撮影画像を用いて所定の画像処理を行い、その処理結果に応じた各種制御を行う。この制御部2が行う制御により、車載用車線認識装置100において、たとえば、LDW(Lane Departure Warning)、と呼ばれる機能が実現される。LDWは、撮影画像から路面の白線(車線区画線)を検出することにより、自車両が走行中の車線から逸脱しそうなときに警報を出力する機能である。
【0013】
警報出力部3は、警報ランプや警報ブザー等による警報を車両の運転者に対して出力するための部分である。この警報出力部3の動作は、制御部2によって制御される。たとえば、前述のLDWにおいて自車両が走行中の車線から逸脱しそうと判断された場合や、BSWにおいて自車両と衝突する可能性のある車両が検出された場合に、制御部2の制御に応じて警報出力部3から警報が出力される。
【0014】
動作状態報知部4は、車載用車線認識装置100の動作状態を車両の運転者に報知するための部分である。たとえば、所定の動作条件が満たされておらずに車載用車線認識装置100が非動作状態にある場合、制御部2の制御により、動作状態報知部4として車両の運転席付近に設置されたランプを点灯させる。これにより、車載用車線認識装置100が非動作状態であることを運転者に報知する。
【0015】
次に、車載用車線認識装置100において行われる車線区画線の種別判断について説明する。車載用車線認識装置100は、前述のLDWにおいて撮影画像から路面の白線(車線区画線)を検出する際に、その車線区画線が破線と実線のどちらであるかを判断し、その判断結果に応じた制御を行う。たとえば、車線区画線が破線であると判断した場合は、その破線間に対する車線区画線の検出を抑制したり、破線間で自車両が走行車線から逸脱しそうな状態にあるときでも確実に警報を出力できるようにしたりする。これにより、実線に比べて検出が困難な破線を用いた車線区画線が路面に描かれている場合であっても、LDWを安定して利用できるようにする。
【0016】
なお、上記の判断において用いられる白線(車線区画線)とは、車線を区分するために路面に描かれた標示線であり、道路車線境界線、車道中央線、車道外側線等が該当する。これは白色に限らず、黄色等の他の色で描かれる場合もある。また、道路上に円形や他の形状の道路鋲(ボッツドッツ)を所定間隔で設置したものが車線区画線として用いられる場合もある。以下の説明では、これらをまとめて車線区画線と総称する。
【0017】
図4は、車線区画線の種別判断に関する制御部2の制御ブロック図である。制御部2は、車線区画線の種別判断に関して、特徴点抽出部201、車線区画線検出部202、周期性解析部203、信頼度算出部204、車線逸脱検出部205および警報制御部206の各制御ブロックを有する。制御部2では、たとえば、これらの各制御ブロックに対応してメモリに記録されているプログラムをマイクロコンピュータで実行することにより、
図4の各制御ブロックを実現している。
【0018】
特徴点抽出部201は、カメラ1により時系列的に取得された複数の撮影画像から、路面上で自車両の走行車線の左右に描かれた車線区画線に対応する特徴点をそれぞれ抽出する。車線区画線検出部202は、特徴点抽出部201により各撮影画像から抽出された特徴点が、多く並ぶ直線を車線区画線の候補として検出し、その車線区画線が破線と実線のどちらであるかを判断する。具体的には、特徴点が線上に並ぶ直線の中から左右車線区画線の平行性や、時系列の横位置の変化、特徴点の数などから最終的な線を選択する。周期性解析部203は、その最終的に選択された線上に並ぶ特徴点の数の周期性を解析する。信頼度算出部204は、車線区画線検出部202による車線区画線の検出結果に対して、特徴点抽出部201により抽出された特徴点の数、及び周期性解析部203により解析された周期性の有無に基づく信頼度を算出する。
【0019】
周期性解析に渡す結果は、ノイズ要因を削除した後のデータであった方が望ましく、例えば、レンズに汚れが付着し、常に同一の場所で白線特徴点が存在するような場合には、このような既知のノイズ成分は除去したうえで、白線候補を選択し、その白線候補上のノイズ成分は除去した上で特徴点の数を調べ、これを周期性解析にかけることで、周期解析の安定化を図る。
【0020】
車線逸脱検出部205は、車線区画線検出部202により検出された車線区画線を基に自車両の走行車線を認識し、この走行車線から自車両が逸脱しそうであるか否かを判断することにより、自車両の逸脱走行状態を検出する。自車両の逸脱走行状態を検出したら、警報制御部206に対して警報出力の指示を行う。警報制御部206は、車線逸脱検出部205からの指示に応じて、警報出力部3へ警報出力信号を出力する。この警報出力信号の出力により、警報出力部3から運転者に対して警報が出力される。以上説明したような車線逸脱検出部205および警報制御部206の動作により、車載用車線認識装置100においてLDWが実現される。
【0021】
なお、警報制御部206は、車線逸脱検出部205から警報出力の指示が行われると、信頼度算出部204により算出された信頼度に基づいて、警報出力信号を出力すべきか否かを判断する。そして、警報出力信号を出力すべきではないと判断した場合は、警報出力部3に対して警報出力信号を出力しないようにする。その結果、車線逸脱検出部205から警報出力の指示が行われても、警報制御部206から警報出力部3に警報出力信号は出力されない。これにより、車線区画線の検出結果に対する信頼度が十分でないときには、警報出力部3による警報出力が抑制されるようにする。
【0022】
図5は、以上説明した車線区画線の種別判断で実行される処理のフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、LDWの実行中に、制御部2において行われる。
【0023】
ステップS10において、制御部2は、カメラ1を用いて、自車両の周囲の路面を含む所定の撮影領域内を撮影し、撮影画像を取得する。この撮影画像は、カメラ1から制御部2へ出力され、以降の処理において利用される。
【0024】
ステップS20において、制御部2は、ステップS10で取得した撮影画像から、車線区画線に対応する特徴点を抽出する。ここでは、特徴点抽出部201により、撮影画像内の所定部分に抽出領域を設定し、その抽出領域内で輝度変化が所定のしきい値以上であるエッジ点を特徴点として抽出する。
【0025】
図6は、撮影画像から特徴点を抽出する例を示す図である。
図6に示す撮影画像30は、路面が撮影されている路面画像領域32と、背景画像領域33とに分けられている。ステップS20では、この撮影画像30に対して、
図6に示すように、自車両の右側の車線区画線の内側に対応する抽出領域34と、自車両の左側の車線区画線の内側に対応する抽出領域35とを設定する。そして、これらの抽出領域34、35の中で隣接する各画素の輝度をそれぞれ比較することでエッジ点を検出し、特徴点36として抽出する。これにより、左右の車線区画線の内側の輪郭線に沿って、特徴点36がそれぞれ複数ずつ抽出される。
【0026】
ステップS30において、制御部2は、車線区画線検出部202により、ステップS20で抽出した特徴点に基づいて車線区画線を検出する。たとえば、左右の抽出領域34、35からそれぞれ抽出された各特徴点の配列状態に応じて、左右に複数の直線をそれぞれ設定し、その中で最も多くの特徴点を通る直線を左右それぞれ1つずつ特定する。こうして特定した左右一対の直線をそれぞれ車線区画線として認識することで、自車両の走行車線の左右に車線区画線を検出することができる。なお、これ以外の方法により、特徴点から車線区画線を検出してもよい。
【0027】
以上説明したステップS20およびステップS30の処理を実行することで、カメラ1により取得された撮影画像から、路面上で自車両の走行車線の左右に描かれた車線区画線をそれぞれ検出することができる。なお、走行車線の左側または右側のいずれか一方のみに車線区画線が描かれている場合、車線区画線が描かれていない側については特徴点が抽出されないため、車線区画線は検出されない。
【0028】
ステップS40において、制御部2は、ステップS20で抽出した特徴点数のデータを用いて、不図示のメモリ等に記録されている特徴点数の履歴データを更新する。ここで更新される特徴点数の履歴データには、カメラ1により時系列的に取得された各撮影画像の特徴点数のデータが、左右の車線区画線についてそれぞれ記録されている。これにより、撮影画像から特徴点が抽出される度に、その特徴点数のデータが新たに記録され、特徴点数の履歴データが更新される。
【0029】
ステップS50において、制御部2は、所定数以上の撮影画像から特徴点を抽出したか否かを判定する。所定数以上の撮影画像から特徴点を抽出した場合、すなわち、
図5の処理を開始してからの撮影画像の取得枚数が所定数以上であり、その各撮影画像からそれぞれ抽出された特徴点数の履歴データが記録されている場合は、ステップS60へ進む。一方、所定数以上の撮影画像から特徴点を抽出していない場合、すなわち、
図5の処理を開始してからの撮影画像の取得枚数が所定数未満である場合は、ステップS10へ戻る。この場合、所定数以上の撮影画像から特徴点を抽出し終えるまで、前述のステップS10〜S40の処理が繰り返される。これにより、カメラ1で時系列的に取得された複数の撮影画像から車線区画線に対応する複数の特徴点がそれぞれ抽出され、その特徴点数の履歴デーが記録される。
【0030】
ステップS60において、制御部2は、周期性解析部203により、これまでに記録された特徴点数の履歴データに対して高速フーリエ変換を行う。この高速フーリエ変換により、左右の車線区画線の各々について、特徴点数の時系列データとして時間軸上で表されている特徴点数の変化の様子を、周波数軸上で表した周波数波形にそれぞれ変換することができる。なお、高速フーリエ変換は、周知のアルゴリズム等を用いた処理により実行することができる。
【0031】
ステップS70において、制御部2は、周期性解析部203により、ステップS60で下記の高速フーリエ変換を行うことで元の時系列データから変換された特徴点数の周波数波形に基づいて、特徴点数の周期性を解析する。
【0032】
【数1】
直線上の白線特徴点数の過去データ保持フレーム最大数:N
直線上の白線特徴点数の過去データ:x(n) (n=0,1,2,...,N-1)
離散フーリエ変換:X(k) (k=0,1,2,...,N-1)
【0033】
ここでは、以下に説明するような方法を用いて特徴点数の周波数波形から周期性の有無を判断することで、撮影画像から抽出された特徴点数の変化に対して周期性の解析を行う。
【0034】
図7は、特徴点数の周波数波形から周期性の有無を判断する方法の説明図である。周期性解析部203は、
図7(a)、(b)、(c)にそれぞれ示すような3種類の判断方法を用いて、特徴点数の変化に対する周期性の有無を判断することができる。
【0035】
図7(a)は、特徴点数の周波数波形における2つのピーク周波数同士を比較することで周期性の有無を判断する方法の説明図である。たとえば
図7(a)に示すように、特徴点数の周波数波形において、ピーク周波数f1を中心とするピークP1と、ピーク周波数f2を中心とするピークP2とが存在したとする。この場合、周期性解析部203は、ピーク周波数f1を2倍した値とピーク周波数f2とを比較することで、周期性の有無を判断することができる。すなわち、ピーク周波数f1を2倍した値とピーク周波数f2とが略一致する場合、ピークP2はピークP1の高調波成分に相当するものであり、これらは同一の周期性を示すものであると判断できる。したがって、このような条件を満たす場合は、特徴点数の変化に周期性があると判断することができる。
【0036】
図7(b)は、特徴点数の周波数波形におけるピーク周波数を過去のピーク周波数と比較することで周期性の有無を判断する方法の説明図である。たとえば
図7(b)に示すように、特徴点数の周波数波形において、ピーク周波数f1を中心とするピークP1が存在したとする。この場合、周期性解析部203は、現在のピーク周波数f1と、不図示のメモリ等に記憶された過去のピーク周波数の平均値f1aとを比較することで、周期性の有無を判断することができる。すなわち、過去に実行されたステップS70の処理において特徴点数の周期性を解析する際に得られたピーク周波数の平均値f1aと、現在のピーク周波数f1との差が所定範囲内である場合、現在のピークP1に相当するピークが過去にも存在していたと判断できる。したがって、このような条件を満たす場合は、特徴点数の変化に周期性があると判断することができる。
【0037】
図7(c)は、特徴点数の周波数波形におけるピーク周波数が許容範囲内にあるか否かにより周期性の有無を判断する方法の説明図である。たとえば
図7(c)に示すように、特徴点数の周波数波形において、ピーク周波数f1を中心とするピークP1が存在したとする。この場合、周期性解析部203は、ピーク周波数f1が自車両の走行速度に応じて決定される許容範囲Fr内にあるか否かにより、周期性の有無を判断することができる。すなわち、自車両の走行速度や、一定間隔で路面に描かれた車線区画線の破線間の距離に基づいて許容範囲Frを算出し、ピーク周波数f1がこの許容範囲Fr内である場合、ピークP1は車線区画線の破線の周期性を表すものであると判断できる。したがって、このような条件を満たす場合は、特徴点数の変化に周期性があると判断することができる。たとえば、自車両の走行速度と、道路交通法等の規則で規定されている車線区画線の破線間の距離とを用いて、許容範囲Frを算出することができる。
【0038】
ステップS70では、以上説明したような方法により、左右の車線区画線について特徴点数の周期性をそれぞれ解析し、特徴点数の変化に周期性があるか否かを判断することができる。なお、上記の3種類の判断方法は、いずれかを単独で使用してもよいし、複数のものを任意に組み合わせて使用することもできる。
【0039】
ステップS80において、制御部2は、ステップS70の解析結果を基に判定を行う。すなわち、ステップS70で特徴点数の変化に周期性があると判断した場合は、ステップS80を肯定判定してステップS100へ進み、周期性がないと判断した場合は、ステップS80を否定判定してステップS90へ進む。この判定は、左右の車線区画線について別々に行うことが好ましい。
【0040】
ステップS90において、制御部2は、周期性解析部203により、ステップS30で検出した車線区画線が所定の実線条件を満たすか否かを判定する。たとえば、ステップS20で抽出した特徴点が撮影画像内で連続して一列に並んでいる場合や、これまでに記録された特徴点数の履歴データが所定値以上で安定している場合は、車線区画線が実線であると判定してステップS110へ進む。一方、これらの実線条件を満たさない場合は、車線区画線が実線ではないと判定する。この場合はステップS10へ戻り、撮影画像の取得を継続する。
【0041】
ステップS100において、制御部2は、車線区画線検出部202により、ステップS30で検出した車線区画線を破線と判断する。
【0042】
ステップS110において、制御部2は、車線区画線検出部202により、ステップS30で検出した車線区画線を実線と判断する。
【0043】
車線区画線検出部202は、前述のステップS30の処理を実行した後に、周期性解析部203による特徴点数の解析結果に基づいてステップS100またはS110の処理を実行することで、自車両の走行車線の左右にある車線区画線を実線または破線としてそれぞれ検出することができる。なお、車線区画線がボッツドッツである場合、その設置間隔が一定であれば、ステップS80で周期性ありと判定された後にステップS100が実行されて破線と判断される。ステップS100またはS110を実行したら、制御部2はステップS120へ進む。
【0044】
ステップS120において、制御部2は、リセットを実行するか否かを判定する。この判定は、所定のリセット条件が満たされたか否かにより行われる。たとえば、自車両が急停車、急発進、急操舵等を行った場合などに、リセット条件が満たされたとしてリセットを実行すると判定することができる。こうしてリセットを実行すると判定した場合はステップS130へ進み、そうでない場合はステップS140へ進む。
【0045】
ステップS130において、制御部2は、これまでに記録された特徴点数の履歴データをクリアすることにより、リセットを実行する。ステップS130を実行したらステップS10へ戻り、撮影画像の取得を最初からやり直す。
【0046】
ステップS140において、制御部2は、信頼度算出部204により、ステップS100またはS110で行われた車線区画線の検出結果に対する信頼度を算出する。ここでは、ステップS20で抽出した特徴点の数に基づいて、車線区画線の検出結果に対する信頼度を算出する。たとえば、左右の車線区画線についてそれぞれ抽出された特徴点の数に所定の変換係数を掛けることで、左右の車線区画線に対して、その特徴点の数に応じた信頼度を0%〜100%の間でそれぞれ算出することができる。また、ステップS110で車線区画線が実線として検出された場合は、信頼度を常に100%としてもよい。
【0047】
また、S80において周期性有と判断されたにも関わらず、所定周期以上の間、特徴点の数が一定以上もしくは、周期性有と判断された時の保存されている過去の特徴点から現在の特徴点の平均以上、の特徴点が抽出されない場合、破線が途切れたことを判定し、信頼度を0リセットすることで、誤警報を抑制する。
【0048】
ある程度長い間、安定して白線を検知していた場合には、ある程度の信頼性があると考え、多少白線が見えない状況が続いても簡単に認識状況をリセットし、不警報にすることが難しい。強制的に認識状態リセットや不警報とすると、破線がかすれている場合や、ボッツドッツ、暗夜など、レーンマークが見えづらい状況では、すぐに不警報となりやすい。このため、破線がかすれている場合や、ボッツドッツ、暗夜時には、認識が途切れたとしても一瞬で不警報にすることは難しい。しかしながら、これまで安定的に見えていた周期的な白線が突然途切れるような場合は、きれいな道路で周期的に白線が見えていたにも関わらず、突然周期的な破線が途切れるということは実際に、破線がなくなった可能性が高いと考えることができる。きれいな道路が急に汚い道路に変化することは非常にまれであり、更にある一定周期に特徴点が入ってこない条件を満たす場合には信頼度を低下もしくは0リセットすることで誤警報を抑制する。これは、
図8に示すように、料金所前や工事中、分岐などで破線が途切れたすぐ後に、路面ペイントなどの白線の誤検知要因があった場合などの、誤警報抑制に効果がある。周期的破線が途切れた直後に処理領域内に、路面ペイント、矢印などが入ってくると誤検知の恐れがある。しかも、これまで周期的な破線を観測していたために、ある程度の信頼性が高い状態を維持したままで、誤検知すると誤警報につながる。 周期解析を利用することで、路面状況が良好であることを判定し、良好であるにもかかわらず、急に白線特徴点がなくなったことを利用して、破線が途切れたことを判定し、リセットすることで、上記料金所手前や、分岐、合流などにおける誤警報を抑制する。
【0049】
なお、ステップS100で車線区画線が破線として検出された場合、信頼度算出部204は、その車線区画線の破線間で算出される信頼度の低下を抑制することが好ましい。たとえば、ステップS70の周期性の解析結果を基に、撮影領域内で破線が途切れるタイミングを予測し、このタイミングで取得された撮影画像に対して算出される信頼度に所定の補正係数を掛けることにより、信頼度を向上させるようにする。あるいは、信頼度の下限値を予め定めておき、破線間で算出された信頼度がこの下限値未満である場合は、算出結果に関わらず信頼度を下限値としてもよい。これ以外にも、車線区画線の破線間に対する信頼度の低下を抑制することができれば、どのような方法を用いてもよい。
【0050】
ステップS150において、制御部2は、車線逸脱検出部205による車線逸脱判定を行う。ここでは、ステップS30で検出した左右の車線区画線の撮影画像内での位置に基づいて、自車両と走行車線との間の位置関係を認識し、その認識結果から自車両が走行車線を逸脱しそうであるか否かを判断する。たとえば、撮影画像中での車線区画線の位置を基に、カメラ1から車線区画線までの距離を求め、この距離を自車両の前輪から車線区画線までの距離に換算する。こうして求めた前輪から車線区画線までの距離が所定値未満であれば、走行車線から自車両が逸脱しそうな状態であると判断し、その状態を逸脱走行状態として検出する。
【0051】
ステップS160において、制御部2は、ステップS150の車線逸脱判定によって逸脱走行状態が検出されたか否かを判定する。逸脱走行状態が検出された場合はステップS170へ進み、検出されなかった場合はステップS10へ戻って撮影画像の取得を継続する。
【0052】
ステップS170において、制御部2は、警報制御部206により、ステップS140で算出した信頼度が所定値以上であるか否かを判定する。信頼度が所定値以上である場合は、警報出力信号を出力すべきと判断してステップS180へ進む。一方、信頼度が所定値未満である場合は、警報出力信号を出力すべきではないと判断し、ステップS10へ戻って撮影画像の取得を継続する。
【0053】
ステップS180において、制御部2は、警報制御部206により、警報出力部3に対して警報の出力を指示する。このとき警報制御部206は、警報出力部3へ所定の警報出力信号を出力することで警報の出力指示を行う。この警報出力信号に応じて警報出力部3から警報が出力されることにより、自車両が走行車線から逸脱しそうな逸脱走行状態であることが運転者に報知される。ステップS180を実行したらステップS10へ戻り、撮影画像の取得を継続する。
【0054】
なお、以上説明した
図5のフローチャートにおいて、ステップS100で車線区画線が破線と判断された後にステップS10へ戻った場合、その後に実行されるステップS20で撮影画像から特徴点を抽出する際に、車線区画線の破線間に対しては抽出を抑制して行うことが好ましい。たとえば、前回のステップS70の解析結果を基に、撮影画像中で破線間が途切れる範囲を推定し、その範囲に対しては抽出領域を設定しないようにしたり、処理領域の幅自体を狭く設定し、大きな横位置の変化は認めないような処理領域とすることで、大きく横位置がずれるような誤検知を抑制する。また、誤検知したとしても、次の周期は破線が現れた場合に、破線側に戻れるような設定とする。
【0055】
もしくは、破線が途切れる間では、エッジ点の検出に用いる輝度変化のしきい値を高くしたりする。これ以外にも、特徴点の抽出を抑制することができれば、どのような方法を用いてもよい。このようにすることで、車線区画線の破線間において、車線区画線が存在しないにも関わらず特徴点が誤って抽出されるのを未然に防止できる。
【0056】
また、車線区画線を検出する際に、破線の周期を利用し、現フレームで撮像するであろう線の長さを予測して、候補線の中から対象となる直線を抽出することで、破線がない間隔では誤検知を抑制し、破線が見える間では安定的に車線を選択し易いようにする。破線と実線の境界など線の種類が変化する際には、実線が入ってくる瞬間に、特徴点の数が圧倒的に多い線が候補線として上がるためにすぐに実線を選択する。
【0057】
以上説明した実施の形態によれば、次のような作用効果を奏する。
【0058】
(1)車載用車線認識装置100は、特徴点抽出部201により、カメラ1により時系列的に取得された複数の撮影画像から、車両の周囲の路面上で車両の走行車線の左右いずれか少なくとも一方に描かれた車線区画線に対応する複数の特徴点をそれぞれ抽出する(ステップS20)。そして、周期性解析部203により、各撮影画像から抽出された特徴点の数の周期性を解析し、特徴点の数の変化に周期性があるか否かを判断する(ステップS70)。その結果、特徴点の数の変化に周期性があると判断された場合、車線区画線検出部202により、車線区画線を破線として検出する(ステップS30、S100)。このようにしたので、路面に破線で描かれた車線区画線を正しく検出することができる。
【0059】
(2)ステップS70において、周期性解析部203は、検出された車線区画線上の特徴点の数の変化を周波数軸上で表した周波数波形に基づいて、特徴点の数の周期性を解析する。このようにしたので、特徴点の数の変化に周期性があるか否かを正確に判断することができる。
【0060】
(3)周期性解析部203は、
図7(a)に示すように、周波数波形におけるピーク周波数f1を2倍した値と、周波数波形におけるピーク周波数f2とが略一致する場合に、特徴点の数の変化に周期性があると判断してよい。これにより、周波数波形の高調波成分を利用して、特徴点の数の変化に周期性があるか否かを容易に判断することができる。
【0061】
(4)また、
図7(b)に示すように、周波数波形における現在のピーク周波数f1と、過去のピーク周波数の平均値f1aとの差が所定範囲内である場合に、特徴点の数の変化に周期性があると判断してもよい。これにより、過去のピーク周波数の平均値を利用して、特徴点の数の変化に周期性があるか否かを容易に判断することができる。
【0062】
(5)さらに、
図7(c)に示すように、周波数波形におけるピーク周波数f1が車両の走行速度に応じた許容範囲Fr内である場合に、特徴点の数の変化に周期性があると判断してもよい。これにより、車両の走行速度を利用して、特徴点の数の変化に周期性があるか否かを容易に判断することができる。
【0063】
(6)ステップS20において、特徴点抽出部201は、前回の処理で車線区画線検出部202により車線区画線が破線として検出された場合に、車線区画線の破線間に対する特徴点の輝度差の閾値を上げることで、特徴点の誤抽出を抑制することができる。このようにすれば、車線区画線の破線間において、車線区画線が存在しないにも関わらず特徴点が誤って抽出されるのを未然に防止し、誤警報を防ぐことができる。
【0064】
(7)車載用車線認識装置100は、信頼度算出部204により、ステップS20で抽出された特徴点の数に基づいて、車線区画線の検出結果に対する信頼度を算出する(ステップS140)。また、車線逸脱検出部205により、車両が走行車線から逸脱しそうなときに逸脱走行状態を検出する(ステップS150)。その結果、ステップS140で算出された信頼度が所定値以上であり、かつステップS150で逸脱走行状態が検出されたときに、警報出力部3から警報を出力する(ステップS180)。さらに、ステップS140で信頼度を算出する際には、ステップS100で車線区画線が破線として検出された場合に、その車線区画線の破線間に対する信頼度の低下を抑制することができる。このようにすれば、車線区画線の破線間において、信頼度の低下により警報が出力されなくなるのを防止することができる。そのため、誤警報を抑えつつ、車両が走行車線から逸脱しそうなときには確実に警報を出力することができる。
【0065】
(8)ステップS20において、特徴点抽出部201は、前回の処理で車線区画線検出部202により車線区画線が破線として検出された場合に、車線区画線の破線間に対する特徴点の抽出の処理領域を小さくすることで、特徴点の誤抽出を抑制することができる。このようにすれば、車線区画線の破線間において、車線区画線が存在しないにも関わらず特徴点が誤って抽出されるのを未然に防止し、誤警報を防ぐことができる。
【0066】
(9)ステップS20において、特徴点抽出部201は、前回の処理で車線区画線検出部202により車線区画線が破線として検出された場合に、その周期性に基づいて車線区画線の長さを推定し、推定した長さに近い車線区画線を優先的に検出することができる。このようにすれば、車線区画線の破線間において、車線区画線が存在しないにも関わらず特徴点が誤って抽出されるのを未然に防止し、誤警報を防ぐことができる。
【0067】
(10)S80において周期性有と判断された場合に、所定周期以上の間、前記特徴点抽出部201において所定数以上の特徴点が抽出されなかった場合に破線が途切れたことを判定し、信頼度を0リセット、もしくは低減することで、料金所手前や分岐、合流などにおける破線の途切れを判定し信頼度を制御することで誤警報を抑制することができる。
【0068】
なお、以上説明した実施の形態では、カメラ1が車両の後方の路面を撮影するようにしたが、車両の前方の路面を撮影してもよい。車両の周囲の路面を撮影できる限り、カメラ1の撮影範囲をどのように設定しても構わない。
【0069】
また、上記実施の形態において、ステップS70で求められた特徴点数の周期性を基に車線区画線の検出に対する限界時間を設定してもよい。たとえば、特徴点数が変化する周期の2倍を限界時間として設定することができる。このとき、特徴点が抽出されずに車線区画線を検出できない状態が設定した限界時間を超えて続いた場合は、たとえばステップS130の処理によるリセットを実行して特徴点数の履歴データをクリアしたり、警報出力部3による警報の出力を抑制したりすることが好ましい。
【0070】
以上説明した実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。