【実施例1】
【0013】
[実施例の全体構成]
まず、実施例に係る全体構成について説明する。
図1は、実施例に係る全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、例えば、工業用ミシンメーカ1が所持するラインバランス改善策提供装置100と、縫製工場20にて使用される縫製工場端末200とが、インターネット5を介して、通信可能な状態で接続される。同様に、ラインバランス改善策提供装置100と、縫製工場30にて使用される縫製工場端末300及び縫製工場40にて使用される縫製工場端末400とが、インターネット5を介して、通信可能な状態で接続される。
【0014】
工業用ミシンメーカ1は、例えば、縫製工場20〜40に導入されている工業用ミシンの製造メーカである。縫製工場20〜40は、例えば、複数の作業工程を複数のオペレータに分担実施させて縫製の製品を生産する工場である。
【0015】
ラインバランス改善策提供装置100及び縫製工場端末200〜400は、例えば、サーバやワークステーション、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置である。
【0016】
縫製工場20〜40には、複数の作業工程を複数のオペレータに分担実施させて縫製の製品を生産するための生産ラインを複数有する。生産ラインには、縫製の製品を生産するための作業工程の実施に用いる工業用ミシンが導入される。例えば、
図1に示すように、縫製工場20には、ミシン20a〜20c、20e〜20gなどの複数の工業用ミシンが導入されている。ミシン20a〜20c、20e〜20gなどは、オペレータにより実施される作業のデータなどが記録される。縫製工場端末200は、ミシン20a〜20c、20e〜20gなどの各ミシンに記録された作業のデータを管理する。同様に、縫製工場端末300は、ミシン30a〜30c、30e〜30gなどの各ミシンに記録された作業のデータを管理する。同様に、縫製工場端末400は、ミシン40a〜40c、40e〜40gなどの各ミシンに記録された作業のデータを管理する。
【0017】
ラインバランス改善策提供装置100は、各ミシンに記録された作業のデータを、作業履歴データとして縫製工場端末200〜400から収集し、生産ラインごとに管理する。
【0018】
図2を用いて、実施例1に係る処理の概要を説明する。
図2は、実施例1に係る処理の概要を説明するための図である。
【0019】
図2に示すように、縫製工場端末200〜400は、例えば、工業用ミシンメーカ1により公開されるホームページなどに接続し、ホームページからラインバランス改善策要求画面へアクセスする(ステップS11)。ラインバランス改善策提供装置100は、縫製工場端末200〜400からの要求に応じて、ラインバランス改善策要求画面を送信する(ステップS12)。
【0020】
続いて、縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面をディスプレイなどに表示する。
図3は、ラインバランス改善策要求画面の一例を示す図である。
図3に示すように、ラインバランス改善策要求画面には、ユーザID及びパスワードの入力を受け付けるための入力ボックス、ラインバランス改善策の要求を送信するためのスタートボタン、及びホームページなどに戻るためのキャンセルボタンが備えられる。縫製工場端末200〜400のユーザは、マウスやキーボードなどのユーザインタフェースを用いて、ユーザID及びパスワードの入力操作、スタートボタン及びキャンセルの操作を行うことができる。なお、縫製工場端末200〜400のユーザは、予め、工業用ミシンメーカ1のホームページにアクセスし、ユーザID及びパスワードの事前登録を済ませているものとする。
【0021】
縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面にユーザID及びパスワードの入力された後、スタートボタンの操作を受け付けると、ラインバランス改善策提供装置100に対して、ラインバランス改善策要求を送信する(ステップS13)。
【0022】
ラインバランス改善策提供装置100は、ラインバランス改善策の問合せを受信すると、ユーザID及びパスワードに基づくユーザ認証を行い、要求元の生産ラインと、製品およびオペレータ数が一致する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する(ステップS14)。なお、作業履歴データ、抽出処理の内容については、後に詳述する。
【0023】
続いて、ラインバランス改善策提供装置100は、製品およびオペレータ数が一致する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理の結果に基づいて、ラインバランス改善策を縫製工場端末200〜400に送信する(ステップS15)。
【0024】
このように、実施例1に係るラインバランス改善策提供装置100は、製品およびオペレータ数が一致する生産ラインの作業履歴データに基づいて、ラインバランスの改善策を提供できる。
【0025】
[実施例1に係る機能構成]
図4は、実施例1に係るラインバランス改善策提供装置の機能構成の一例を示す図である。
図4に示すように、ラインバランス改善策提供装置100は、インターネット5を介して、縫製工場端末200〜400と通信可能な状態で接続される。ラインバランス改善策提供装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。
図4は、実施例1に係るラインバランス改善策提供装置の機能を実現する上で必要となる構成要素のみを記載する。
【0026】
通信部110は、縫製工場端末200〜400の間で実行される各種情報のやり取りに関する通信を制御する。
【0027】
記憶部120は、生産ラインデータベース120a及び作業履歴データベース120bを有する。
【0028】
生産ラインデータベース120aは、縫製工場20〜40の各生産ラインに関する情報を記憶する。
図5は、実施例1に係る生産ラインデータベースのデータ構成の一例を示す図である。
図5に示すように、生産ラインデータベース120aは、縫製工場ごとに、生産ラインID(ライン識別子)、製品ID(製品識別子)、人員構成情報、及びライン構成情報を対応付けて記憶する。生産ラインIDは、縫製工場が有する生産ラインを一意に識別するための情報である。製品IDは、該当の生産ラインにおいて生産される製品を一意に識別するための情報である。人員構成情報は、該当の生産ラインにて作業を行うオペレータ数の情報である。ライン構成情報は、該当の生産ラインにおいて各オペレータにより分担実施される一連の作業工程の流れを示す情報である。例えば、
図5に示す例では、製品IDにより、縫製工場20が有する生産ラインのうち、生産ラインID“20L
1”の生産ラインにおいて、製品ID“001”の製品が生産されていることが分かる。さらに、
図5に示す例では、人員構成情報により、生産ラインID“20L
1”の生産ラインにおいて、6人のオペレータが作業にあたっていることが分かる。さらに、
図5に示す例では、生産ラインにおいてオペレータにより実施される作業工程を一意に識別するための工程ID(作業工程識別子)を“P
x(xは自然数)”で表す場合、ライン構成情報により、生産ラインID“20L
1”の生産ラインにおいて、“P
1〜P
11”までの作業工程を6人のオペレータで分担実施することが分かる。さらに、ライン構成情報により、生産ラインID“20L
1”の生産ラインにおいて、(P
1,P
2)、P
3、(P
4,P
5)、(P
5,P
6)、(P
7,P
8,P
9)、(P
10,P
11)の各工程に対して1人のオペレータが割り当てられ、P
1→P
11の順に作業が進められることが分かる。
【0029】
図5に示すように、縫製工場20の生産ラインID“20L
1”の生産ライン、縫製工場30の生産ラインID“30L
1”の生産ライン、及び縫製工場40の生産ラインID“40L
1”の生産ラインが、製品(ID)及び人員構成情報(オペレータ数)の組合せが同一である。また、
図5に示すように、縫製工場30の生産ラインID“30L
1”の生産ラインについては、ライン構成の変更が行われている。
【0030】
実施例1では、生産ラインデータベース120aは、変更後のライン構成情報を除いて、縫製工場20〜40の各生産ラインに関する情報を予め記憶する。変更後のライン構成情報は、ライン構成の変更があった場合、各縫製工場の縫製工場端末に変更後のライン構成情報を送信させるようにしておき、変更後のライン構成情報を受信した制御部130が、生産ラインデータベース120aに格納するようにしてもよい。あるいは、制御部130が、後述する作業履歴データベース120bに記憶されている作業履歴データに基づいて、ライン構成の変更を検出した場合に、変更後のライン構成に関するライン構成情報を生産ラインデータベース120aに格納するようにしてもよい。
【0031】
作業履歴データベース120b(作業履歴データ記憶部)は、各縫製工場の生産ラインにおいてオペレータにより実施された作業履歴に関する作業履歴データを記憶する。作業履歴データは、縫製工場内の生産ラインに配置されたミシンにより記録されたデータである。作業履歴データは、後述する収集部130aにより、所定のタイミングで縫製工場端末から収集される。
図6は、実施例1に係る作業履歴データベースのデータ構成の一例を示す図である。
図6に示すように、作業履歴データベース120bは、生産ラインID(ライン識別子)と、作業履歴データとを対応付けて記憶する。作業履歴データは、作業のデータが記録されたミシン単位で記憶される。例えば、生産ラインID“20L
1”には、作業履歴データとして、“D
20a,D
20b,D
20c”などが記憶される。作業履歴データ“D
20a”は、縫製工場20の生産ラインID“20L
1”の生産ラインに配置されたミシン20aにより記憶された作業のデータに該当する。作業履歴データ“D
20b”は、生産ラインID“20L
1”の生産ラインに配置されたミシン20bにより記憶された作業のデータに該当する。作業履歴データ“D
20c”は、生産ラインID“20L
1”の生産ラインに配置されたミシン20cにより記憶された作業のデータに該当する。例えば、生産ラインID“20L
2”には、作業履歴データとして、“D
20e,D
20f,D
20g”などが記憶される。作業履歴データ“D
20e”は、縫製工場20の生産ラインID“20L
2”の生産ラインに配置されたミシン20eにより記憶された作業のデータに該当する。作業履歴データ“D
20f”は、生産ラインID“20L
2”の生産ラインに配置されたミシン20fにより記憶された作業のデータに該当する。作業履歴データ“D
20g”は、生産ラインID“20L
2”の生産ラインに配置されたミシン20gにより記憶された作業のデータに該当する。
図6に示す生産ラインID“30L
1”、“30L
2”、“40L
1”、“40L
2”の生産ラインについても、同様である。
【0032】
図7は、実施例1に係る作業履歴データに含まれるデータ要素の一例を示す図である。
図7に示すように、例えば、作業履歴データD
x(Xは、20a〜20c、30a〜30c、40a〜40cなどに対応する。
図6参照)には、製品ID(製品識別子)、ミシンID(ミシン識別子)、オペレータID(オペレータ識別子)、工程ID(工程識別子)、稼動情報が含まれる。ミシンIDは、ミシンを一意に識別するための情報である。オペレータIDは、オペレータを一意に識別する情報である。工程IDは、生産ラインにおいてオペレータにより実施される作業工程を一意に識別する情報である。製品ID、オペレータID及び工程IDは、作業開始前に、ミシンにてオペレータにより手入力される。ミシンIDは、作業履歴データがミシンに記録される際に、ミシンにより自動で挿入される。稼動情報は、ミシンにより挿入される。稼動情報には、ミシンに電源が導入された時刻、ミシンが起動された時刻、ミシンが停止された時刻、ミシンにより縫製が行われた針数、糸きりが行われた時刻、ミシンの主軸の回転速度などの情報が含まれる。ミシンの主軸の回転速度は、例えば、ミシンを用いた縫いの速度を評価する情報として利用できる。一般に、針数が多く、縫いの速度が速いほど、作業の難易度が高いものと判断される。
【0033】
作業履歴データに含まれる製品ID、ミシンID、オペレータID、工程IDは、基本的には変更がないが、変更が行われ場合にのみ、新たな情報が記録される。製品、オペレータ、ミシンに変更はなく、オペレータが担当する工程のみの変更が行われた場合、オペレータにより工程IDが手入力され、例えば、
図7のd
1のように、新たな工程IDが作業履歴データとしてミシンに記録される。
【0034】
また、記憶部120は、上述した生産ラインデータベース120a及び作業履歴データベース120bのほか、制御部130により各種処理に必要なプログラムおよびデータを記憶する。記憶部120が記憶するプログラムおよびデータの全体または一部は、
図4での図示を省略した媒体読取部により読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。あるいは、記憶部120が記憶するプログラムおよびデータの全体または一部は、通信部110による通信によって他の装置から取得されてもよい。
【0035】
制御部130は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、演算装置が処理に利用するメモリなどの記憶装置とを備え、これらのハードウェア資源を用いて、記憶部120に記憶されているプログラムを実行することによって各種の機能を実現する。具体的には、制御部130は、記憶部120に記憶されているプログラムを読み出して記憶装置に展開し、記憶装置に展開されたプログラムに含まれる命令を演算装置に実行させる。そして、制御部130は、演算装置による命令の実行結果に応じて、記憶装置および記憶部120に対してデータの読み書きを行ったり、データの加工を行ったり、通信部110等の動作を制御して外部にデータを送信したりする。
【0036】
制御部130が実現する機能には、
図4に示すように、収集部130a、取得部130b、抽出部130c、算出部130d、及び改善策提供部130eが含まれる。
【0037】
収集部130aは、所定のタイミングで、各縫製工場から、生産ラインにおける作業のデータを収集し、収集したデータを作業履歴データとして作業履歴データベース120bに格納する。収集部130aは、例えば、1日1回、所定の時刻に、縫製工場端末200〜400などから、生産ラインIDと、作業履歴データ(製品ID、ミシンID、オペレータID、工程ID、及び稼動情報)との対応付けをそれぞれ収集する。そして、収集部130aは、生産ラインIDに対応付けて、作業履歴データを作業履歴データベース120bに格納する。
【0038】
取得部130bは、縫製工場端末200〜400などから、ラインバランス改善策の問合せを受信すると、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元の縫製工場端末が設置されている縫製工場内の生産ラインで生産されている製品の製品ID、及び該当生産ラインにおける人員構成情報と、同一の製品ID及び人員構成情報に対応付けられている生産ラインがあるか否かを判定する。判定の結果、問合せの送信元に対応する製品ID及び人員構成情報と同一の製品ID及び人員構成情報に対応付けられている生産ラインがある場合には、該当生産ラインを識別する生産ラインIDを取得する。続いて、取得部130bは、取得した生産ラインIDに対応付けられた作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する。
【0039】
抽出部130cは、取得部130bにより取得された作業履歴データに基づいて、問合せの送信元に対応する製品ID及び人員構成情報と、製品ID及び人員構成情報が一致する生産ラインの中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた生産ラインがあるかどうかを判定する。具体的には、抽出部130cは、作業履歴データに記録されている工程IDの推移を参照し、少なくとも、作業開始時とは異なる工程IDが新たに記録されている場合には、オペレータが担当する作業工程の変更が行われたものと判定する。判定の結果、問合せの送信元に対応する製品ID及び人員構成情報と、製品ID及び人員構成情報が一致する生産ラインの中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた生産ラインがある場合には、抽出部130cは、該当生産ラインに対応する作業履歴データを抽出する。例えば、抽出部130cは、
図7のd
1に示すように、作業の開始時とは別の工程IDが記録されている作業履歴データを抽出する。つまり、抽出部130cは、製品やオペレータなどに変更がなく、作業工程が変更されていれば、ライン構成に対する変更が試みられたものと判断して、対応する作業履歴データを、ライン構成の変更が行われたものとみなせる生産ラインに関するデータとして抽出する。
【0040】
算出部130dは、抽出部130cにより抽出された作業履歴データに対応する生産ラインについて、ライン構成変更の前後における製品の生産量を算出する。
【0041】
まず、算出部130dは、ライン構成に変更が行われたものと判断できる生産ラインに関する全ての作業履歴データを、ライン構成に変更が行われたものと判断できる時点で2つに分ける。例えば、算出部130dは、生産ラインID“20L
1”に対応付けられている作業履歴データ“D
20a”に、作業開始時とは異なる新たな工程IDが記録されている場合には、その新たな工程IDが記録されている箇所で、作業履歴データ“D
20a”を2つに分ける。さらに、算出部130dは、生産ラインID“20L
1”に対応付けられている他の作業履歴データ“D
20b,D
20c”などについても、作業履歴データ“D
20a”を2つに分けた箇所に対応する箇所で、2つに分ける。これにより、生産ラインID“20L
1”に対応付けられている各作業履歴データ“D
20a,D
20b,D
20c”などは、ライン構成の変更前と変更後にそれぞれ分けられる。そして、算出部130dは、ライン構成の変更前と変更後の2つに分けた各作業履歴データに含まれるミシンの稼動情報を参照し、稼動情報の糸きり回数などから、ライン構成の変更前と変更後のそれぞれについて、生産ラインID“20L
1”の生産ラインにおける同一の作業時間内での製品の生産量をそれぞれ算出する。
【0042】
改善策提供部130eは、算出部130dにより算出された作業工程の変更の前後における生産ラインの生産量を相互に比較し、ライン構成に変更が行われたものと判断できる生産ラインの中に、作業工程の変更の後の生産量が作業工程の変更の前の生産量よりも多い生産ラインが含まれているかどうかを判定する。判定の結果、ライン構成に変更が行われたものと判断できる生産ラインの中に、作業工程の変更の後の生産量が作業工程の変更の前の生産量よりも多い生産ラインが含まれている場合には、改善策提供部130eは、該当生産ラインのライン構成の変更に関する情報を含む応答を、ラインバランス改善策として、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信する。改善策提供部130eは、ライン構成の変更後の生産量が変更前よりも増加している生産ラインが複数ある場合には、ライン構成の変更後の生産量が多いものから順に列挙したラインバランス改善策リストを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に対する応答として作成する。
【0043】
なお、制御部130は、所定のタイミングで、作業履歴データベース120bから作業履歴データを取得し、作業履歴データに基づいて、ライン構成の変更が行われた生産ラインを検出するようにしてもよい。この場合、制御部130は、ライン構成の変更が行われた生産ラインを検出した場合には、変更後のライン構成に関するライン構成情報を生成し、生産ラインデータベース120aに格納する。あるいは、制御部130は、縫製工場端末200〜400から、変更後のライン構成情報を受信するようにしてもよい。この場合、制御部130は、変更後のライン構成情報を、生産ラインデータベース120aに格納する。
【0044】
縫製工場端末200〜400は、インターネット5を介して、ラインバランス改善策提供装置100と通信可能な状態で接続される。縫製工場端末200〜400は、同一の機能構成を有するので、以下では、縫製工場端末200を例に挙げて説明する。
【0045】
縫製工場端末200は、
図4に示すように、通信部210、記憶部220及び制御部230を有する。
【0046】
通信部210は、ラインバランス改善策提供装置100との間で実行される各種情報のやり取りに関する通信を制御する。さらに、通信部210は、LANなど、縫製工場20内に構築されたローカルネットワークを介して、ミシン20a〜20c、ミシン20e〜ミシン20gなどから各種情報を取得するための通信を制御する。
【0047】
記憶部220は、ミシン記録データ220aを有する。ミシン記録データ220aには、ミシン20a〜20c、ミシン20e〜ミシン20gなどにおいて記録された作業のデータ(製品ID、ミシンID、オペレータID、工程ID、稼動情報)が記録される。また、記憶部220は、ミシン記録データ220aのほか、制御部230により各種処理に必要なプログラムおよびデータを記憶する。
【0048】
制御部230は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、演算装置が処理に利用するメモリなどの記憶装置とを備え、これらのハードウェア資源を用いて、記憶部220に記憶されているプログラムを実行することによって各種の機能を実現する。制御部230が実現する機能には、
図4に示すように、データ格納部230a及びデータ送信部230bが含まれる。
【0049】
データ格納部230aは、ミシン20a〜20c、及びミシン20e〜ミシン20gなどに記録されているデータを収集し、対応する生産ラインIDに関連付けてミシン記録データ220aとして記憶部220に格納する。
【0050】
データ送信部230は、ラインバランス改善策提供装置100からの要求に応じて、記憶部220に記憶されているミシン記録データ220aを読み込み、読み込んだミシン記録データ220aを、生産ラインIDに関連付けて、作業履歴データとしてラインバランス改善策提供装置100に送信する。
【0051】
ミシン20a〜20c、及びミシン20e〜20gなどは、作業のデータ(製品ID、ミシンID、オペレータID、工程ID、稼動情報)を記録する。ミシン20a〜20cなどは、縫製工場20が有する生産ラインのうち、生産ラインID“20L
1”の生産ラインに配置され、ミシン20e〜20gなどは、縫製工場20が有する生産ラインのうち、生産ラインID“20L
2”の生産ラインに配置される。
【0052】
以下、
図8〜
図10を用いて、縫製工場により生産される製品、生産ラインで実施される一連の作業工程、及び生産ラインのライン構成について説明する。
図8は、実施例1に係る製品の一例を示す図である。
図9は、
図8に示す製品を生産するときの一連の作業工程の一例を示す図である。
図10は、
図8に示す製品を生産する生産ラインのライン構成の一例を示す図である。
【0053】
図8に示すように、例えば、縫製工場の生産ラインでは、縫製の製品としてズボンが生産される。例えば、
図8に示す製品(ズボン)には、製品IDとして“001”が付与される。
【0054】
図9に示すように、
図8に示す製品(ズボン)を生産するときの作業工程は、工程ID“P
1”から工程ID“P
11”までの計11の作業工程からなる。
図8に示す製品(ズボン)を生産するときの作業工程は、工程ID“P
1”から工程ID“P
11”まで順に実施される。工程ID“P
1”から工程ID“P
11”までの計11の作業工程は、オペレータID“U01〜U06”の計6人のオペレータにより分担実施される。
【0055】
工程ID“P
1”の作業工程“前中心接ぎ”、及び工程ID“P
2”の作業工程“後ろ中心接ぎ”は、オペレータID“U01”のオペレータにより担当される。工程ID“P
3”の作業工程“脇合わせ”は、オペレータID“U02”のオペレータにより担当される。
【0056】
工程ID“P
4”の作業工程“裾三巻縫”、工程ID“P
5”の作業工程“内股合わせ”、工程ID“P
6”の作業工程“身頃返し”は、オペレータID“U03”のオペレータと、オペレータID“U04”のオペレータにより担当される。例えば、工程ID“P
4”の作業工程“裾三巻縫”、及び工程ID“P
5”の作業工程“内股合わせ”をオペレータID“U03”のオペレータが担当し、工程ID“P
5”の作業工程“内股合わせ”、及び工程ID“P
6”の作業工程“身頃返し”をオペレータID“U04”のオペレータが担当する。
【0057】
工程ID“P
7”の作業工程“シック付け縫”、工程ID“P
8”の作業工程“寸法カット”、工程ID“P
9”の作業工程“ゴム輪縫”は、オペレータID“U05”のオペレータにより担当される。工程ID“P
10”の作業工程“ウエストゴム入れ”、及び工程ID“P
11”の作業工程“閂止(かんぬきどめ)”は、オペレータID“U06”のオペレータにより担当される。
【0058】
図10に示す10Aは、ミシンなどが配置される作業台を示し、
図10に示す10Bは、各工程の作業内容に応じた各種ミシンが設定されているオペレータの座席を示す。
図10に示すように、オペレータID“U01〜U06”の各オペレータは、対応する座席に着席し、担当する作業工程を実施する。
図10は、
図10の一番左の座席に位置するオペレータID“U01”のオペレータから、
図10の一番右の座席に位置するオペレータID“U06”のオペレータに向って、
図8に示す製品の生産が進められる生産ラインとなっている。
【0059】
[実施例1に係る処理]
図11は、実施例1に係るラインバランス改善策提供装置による処理手順の一例を示す図である。
図11に示す処理手順は、ラインバランス改善策提供装置100が、縫製工場端末200〜400のいずれかから、ラインバランス改善策の問合せを受信したときに開始される。
【0060】
取得部130bは、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元に対応する製品ID、及び問合せの送信元に対応する生産ラインにおける人員構成情報を取得する(ステップS101)。例えば、取得部130bは、問合せの送信元が縫製工場端末200である場合には、生産ラインデータベース120aに記憶されている縫製工場20に関するデータを参照して、製品ID(例えば、001)および人員構成情報(例えば、オペレータ数“6”)を取得する。なお、問合せの送信元に対応する縫製工場が複数の生産ラインを有する場合には、各生産ラインに対応する製品ID及び人員構成情報(オペレータ数)を取得する。
【0061】
続いて、取得部130bは、ステップS101で取得した製品ID及び人員構成情報(オペレータ数)をキーとして、生産ラインデータベース120aの検索を行い、製品及びオペレータ数の組合せが一致する生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS102)。判定の結果、製品及びオペレータ数の組合せが一致する生産ラインがない場合には(ステップS102、No)、取得部130bは、
図11に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0062】
これとは反対に、判定の結果、製品及びオペレータ数の組合せが一致する生産ラインがある場合には(ステップS102、Yes)、取得部130bは、該当する生産ラインを識別する生産ラインIDを取得し、取得した生産ラインIDに対応する作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する(ステップS103)。
【0063】
続いて、抽出部130cは、ステップS103で取得部130bにより取得された作業履歴データに基づいて、ステップS102の判定の結果得られた生産ラインの中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS104)。具体的には、抽出部130cは、作業履歴データに記録されている工程IDの推移を参照し、少なくとも、作業開始時とは異なる工程IDが新たに記録されている場合には、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡ありと判断する。
【0064】
判定の結果、ステップS102の判定の結果得られた生産ラインの中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがない場合には(ステップS104、No)、抽出部130cは、
図11に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0065】
これとは反対に、判定の結果、ステップS102の判定の結果得られた生産ラインの中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがある場合には(ステップS104、Yes)、抽出部130cは、該当する生産ラインに対応する作業履歴データを抽出する(ステップS105)。すなわち、抽出部130cは、製品やオペレータなどに変更がなく、作業工程が変更されていれば、ライン構成に対する変更が試みられたものと判断して、対応する作業履歴データを、ライン構成の変更が行われたものとみなせる生産ラインに関するデータとして抽出する。
【0066】
続いて、算出部130dは、ステップS105で抽出された作業履歴データに対応する生産ラインについて、作業工程の変更前後の生産量を算出する(ステップS106)。
【0067】
続いて、改善策提供部130eは、算出部130dによる生産量の算出結果を参照し、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS107)。判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがない場合には(ステップS107、No)、改善策提供部130eは、
図11に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0068】
これとは反対に、判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがある場合には(ステップS107、Yes)、改善策提供部130eは、ラインバランス改善策リストを作成して、ラインバランス改善策の問合せの送信元に送信する(ステップS108)。そして、改善策提供部130eは、
図11に示す処理手順を終了する。
【0069】
図12は、実施例1に係るラインバランス改善策リストの一例を示す図である。
図12に示すように、ラインバランス改善策リストは、対応する製品の製品IDと、ライン構成の変更が行われた他の生産ラインのライン構成に関する情報と、ライン構成の変更前後の生産量の情報を含んで構成される。製品IDは、問合せの送信元に対応する生産ラインで生産される製品のうち、改善策に対応する製品の製品IDである。ライン構成情報は、問合せの送信元に対応する生産ラインと同一の製品を生産し、かつ生産ラインを構成するオペレータ数が同一であり、ライン構成の変更が行われた他の生産ラインのライン構成に関する情報である。さらに、ラインバランス改善策リストは、改善策である他の生産ラインのライン構成に関する情報が複数ある場合には、生産量が多いものから順に列挙する。
【0070】
(実施例1による効果)
上述してきたように、実施例1では、ラインバランス改善策提供装置100は、縫製工場から収集する作業履歴データに基づいて、製品およびオペレータ数が同一である他の生産ラインのうち、ライン構成の変更が行われた他の生産ラインを検出する。そして、ラインバランス改善策提供装置100は、検出した他の生産ラインの中から、ライン構成の変更後に生産量が増加した生産ラインのライン構成情報を、ラインバランス改善策の問合せの送信元である縫製工場などに提供する。このように、実施例1によれば、製品およびオペレータ数が同一であるか否かという条件を用いることにより、ラインバランス改善策提供装置100が作業履歴データを収集する複数の生産ラインの中から、同様の問題が発生し得る生産ラインを絞り込むことができる。さらに、実施例1によれば、作業履歴データに記録されている工程IDの推移に基づいて、例えば、オペレータの担当する作業工程が変更などのライン構成の変更を簡単に検出できる。さらに、実施例1によれば、作業履歴データに記録されているデータに基づいて、ライン構成の変更による効果を簡単に確認できる結果、ラインバランス改善策を迅速に提供することができ、さらに、生産量の増加など実効的な効果があった改善策を積極的に提供できる。
【0071】
実施例1では、例えば、
図11に示すステップS107にて、ライン構成が変更された生産ラインについて、生産量が増加したか否かを判定して、ライン構成の変更による結果を判定する例を説明した。しかしながら、これには限定されず、例えば、不良品率などが低下したか否か基準として、ライン構成による結果を判定するようにしてもよい。
【0072】
実施例1では、オペレータの担当する作業工程が変更されているか否かを検出することにより、生産ラインにおけるライン構成の変更を検出したが、例えば、オペレータやミシンが変更されているか否かを検出することにより、ライン構成の変更を検出してもよい。この場合のラインバランス改善策は、生産ラインにおいて各オペレータにより分担実施される一連の作業工程の流れを示すライン構成情報ではなく、オペレータやミシンの変更に関する情報を提供する。
【0073】
実施例1では、ラインバランス改善策の問合せがあった場合に、問合せの送信元の縫製工場の生産ラインで生産される全ての製品について、ラインバランスの改善策の抽出を行う例を説明した。しかしながら、これには限定されず、例えば、ラインバランスの改善策の問合せ時に、改善策を希望する製品を問合せの送信元に指定させるようにしてもよい。
【実施例2】
【0074】
実施例1では、製品およびオペレータ数が同一である他の生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する例を説明した。以下の実施例2では、製品およびオペレータ数に加えて、さらに隘路工程が同一である他の生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する例を説明する。
【0075】
図13を用いて、実施例2に係る処理の概要を説明する。
図13は、実施例2に係る処理の概要を説明するための図である。
【0076】
図13に示すように、縫製工場端末200〜400は、例えば、工業用ミシンメーカ1により公開されるホームページなどに接続し、ホームページからラインバランス改善策要求画面へアクセスする(ステップS21)。ラインバランス改善策提供装置100は、縫製工場端末200〜400からの要求に応じて、ラインバランス改善策要求画面を送信する(ステップS22)。
【0077】
続いて、縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面(
図3参照)をディスプレイなどに表示する。縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面にユーザID及びパスワードの入力された後、スタートボタンの操作を受け付けると、ラインバランス改善策提供装置100に対して、ラインバランス改善策の問合せを送信する(ステップS23)。
【0078】
ラインバランス改善策提供装置100は、ラインバランス改善策の問合せを受信すると、ユーザID及びパスワードに基づくユーザ認証を行い、要求元の生産ラインと、製品、オペレータ数および隘路工程が一致する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する(ステップS24)。なお、隘路工程の特定方法については、後に詳述する。
【0079】
続いて、ラインバランス改善策提供装置100は、製品、オペレータ数および隘路工程が一致する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理の結果に基づいて、ラインバランス改善策を縫製工場端末200〜400に送信する(ステップS25)。
【0080】
[実施例2に係る機能構成]
図14は、実施例2に係るラインバランス改善策提供装置の機能構成の一例を示す図である。
図14に示すラインバランス改善策提供装置100の機能構成は、制御部130により実現される機能として、隘路工程特定部130fがさらに含まれる点が、実施例1とは異なる。
【0081】
図15は、実施例2に係る生産ラインデータベースのデータ構成の一例を示す図である。生産ラインデータベース120aは、
図15に示すように、縫製工場ごとに、生産ラインID、製品ID、人員構成情報、及びライン構成情報に加えて、さらに、隘路工程情報を対応付けて記憶する。例えば、
図15に示す例では、隘路工程情報により、縫製工場20の生産ラインのうち、生産ラインID“20L
1”の生産ラインでは、工程ID“P
3”の作業工程、工程ID“P
7”の作業工程、工程ID“P
8”の作業工程、工程ID“P
9”の作業工程が隘路工程であることが分かる。
【0082】
隘路工程特定部130fは、所定のタイミングで、各縫製工場が有する各生産ラインについて、隘路工程を特定するための処理を実行する。例えば、隘路工程特定部130fは、1日1回、所定の時刻に、作業履歴データベース120bに記録されている作業履歴データを読み込み、生産ラインごとに、一製品あたりの作業工程を完了するまでに要する各オペレータの所要時間を求め、ピッチダイヤグラムを作成する。
【0083】
図16は、実施例2に係るピッチダイヤグラムの一例を示す図である。
図16は、ある1つの生産ラインのピッチダイヤグラムを示している。
図16に示すグラフ領域の横軸は、オペレータIDの軸であり、ダイヤグラムの原点から右側に向って作業工程順のオペレータIDがそれぞれ設定される。
図16に示すグラフ領域の縦軸は、一製品あたりの作業割当時間(秒)の軸である。各オペレータの所要時間をプロットし、プロットした点を線で結ぶことにより、
図16に示すピッチダイヤグラムがグラフ領域に描画される。
【0084】
さらに、
図16に示すピッチダイヤグラムには、グラフ領域の横軸に変更な線分により、SPT(Standard Pitch Time)が点線で描画される。SPTは、一製品あたりの作業工程を完了するまでに要する、オペレータ1人当たりの標準加工時間であり、以下の式(1)及び式(2)より算出される。
【0085】
標準加工時間=正味加工時間×(1+余裕率) ・・・(1)
SPT=標準総加工時間/オペレータ数 ・・・(2)
【0086】
なお、以下の式(3)及び式(4)に示すように、オペレータ数の代わりに、目標日産量、又は制限機種台数を用いてSPTを求めることもできる。
SPT=1日の作業時間/目標日産量 ・・・(3)
SPT=制限機種の標準総加工時間/制限機種台数 ・・・(4)
【0087】
隘路工程特定部130fは、以下の式(5)により、オペレータごとに、所要時間及びピッチタイムに基づいて、編成効率を求め、目標編成効率を満足していないオペレータが担当する作業工程を隘路工程として特定する。
【0088】
編成効率=SPT/所要時間×100 ・・・(5)
【0089】
図16に示すピッチダイヤグラムにおいて、隘路工程特定部130fは、式(5)により求めた編成効率と目標編成効率との比較結果に基づいて、例えば、オペレータID“U04”のオペレータが担当する作業工程を隘路工程と特定する。
【0090】
このようにして、隘路工程特定部130fは、所定のタイミングで、生産ラインごとに隘路工程を特定し、特定の結果得られる隘路工程情報(工程ID)を、生産ラインIDに対応付けて、生産ラインデータベース120aに格納する。
【0091】
取得部130bは、縫製工場端末200〜400から、ラインバランス改善策の問合せを受信した場合に、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元の縫製工場端末が設置されている縫製工場内の生産ラインで生産されている製品の製品ID、該当生産ラインにおける人員構成情報(オペレータ数)、及び該当生産ラインにおける隘路工程情報(工程ID)と、同一の製品ID、人員構成情報及び隘路工程情報に対応付けられている生産ラインがあるかどうかを判定する。判定の結果、問合せの送信元に対応する製品ID、人員構成情報および隘路工程情報に対応付けられている生産ラインがある場合には、該当生産ラインを識別する生産ラインIDを取得する。続いて、取得部130bは、取得した生産ラインIDに対応付けられた作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する。
【0092】
[実施例2に係る処理]
図17は、実施例2に係るラインバランス改善策提供装置による処理手順の一例を示す図である。
図17に示す処理手順は、ラインバランス改善策提供装置100が、縫製工場端末200〜400のいずれかから、ラインバランス改善策の問合せを受信したときに開始される。
図17に示す処理手順は、ステップS201及びステップS202の処理が、
図11に示す処理手順とは異なる。
【0093】
取得部130bは、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元に対応する製品ID、人員構成情報及び隘路工程情報を取得する(ステップS201)。例えば、取得部130bは、問合せの送信元が縫製工場端末200である場合には、生産ラインデータベース120aに記憶されている縫製工場20に関するデータを参照して、製品ID(例えば、001)、人員構成情報(例えば、オペレータ数“6”)及び隘路工程情報(工程ID“P
3,P
7,P
8,P
9”)を取得する。なお、問合せの送信元に対応する縫製工場が複数の生産ラインを有する場合には、各生産ラインに対応する製品ID、人員構成情報(オペレータ数)及び隘路工程情報(工程ID)を取得する。
【0094】
続いて、取得部130bは、ステップS201で取得した製品ID、人員構成情報(オペレータ数)及び隘路工程情報(工程ID)をキーとして、生産ラインデータベース120aの検索を行い、製品、オペレータ数及び隘路工程の組合せが一致する生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS202)。判定の結果、製品及びオペレータ数の組合せが一致する生産ラインがない場合には(ステップS202、No)、取得部130bは、
図17に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0095】
これとは反対に、判定の結果、製品、オペレータ数および隘路工程の組合せが一致する生産ラインがある場合には(ステップS202、Yes)、取得部130bは、製品、オペレータ数および隘路工程が一致する生産ラインの生産ラインIDを取得し、取得した生産ラインIDに対応する作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する(ステップS203)。
【0096】
続いて、抽出部130cは、ステップS203で取得部130bにより取得された作業履歴データに基づいて、ステップS202の判定の結果得られた生産ライン(問合せの送信元と製品、オペレータ数および隘路工程が一致する生産ライン)の中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS204)。
【0097】
判定の結果、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがない場合には(ステップS204、No)、抽出部130cは、
図17に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0098】
これとは反対に、判定の結果、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがある場合には(ステップS204、Yes)、抽出部130cは、該当する生産ラインに対応する作業履歴データを抽出する(ステップS205)。
【0099】
続いて、算出部130dは、ステップS205で抽出された作業履歴データに対応する生産ラインについて、作業工程の変更前後の生産量を算出する(ステップS206)。
【0100】
続いて、改善策提供部130eは、算出部130dによる生産量の算出結果を参照し、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS207)。判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがない場合には(ステップS207、No)、改善策提供部130eは、
図17に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0101】
これとは反対に、判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがある場合には(ステップS207、Yes)、改善策提供部130eは、ラインバランス改善策リストを作成して、ラインバランス改善策の問合せの送信元に送信する(ステップS208)。そして、改善策提供部130eは、
図17に示す処理手順を終了する。
【0102】
(実施例2による効果)
上述してきたように、実施例2によれば、隘路工程が同一であるか否かという条件を加えることにより、ボトルネックとなっている作業工程が同じである他の生産ラインを絞り込むことができる。この結果、ラインバランス改善策の問合せの送信元に対して、より実効的な効果のある情報をラインバランス改善策として積極的に提供できる。
【実施例3】
【0103】
実施例2では、製品、オペレータ数、及び隘路工程が同一である他の生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する例を説明した。以下の実施例3では、さらにライン構成が類似する他の生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する例を説明する。
【0104】
図18を用いて、実施例3に係る処理の概要を説明する。
図18は、実施例3に係る処理の概要を説明するための図である。
【0105】
図18に示すように、縫製工場端末200〜400は、例えば、工業用ミシンメーカ1により公開されるホームページなどに接続し、ホームページからラインバランス改善策要求画面へアクセスする(ステップS31)。ラインバランス改善策提供装置100は、縫製工場端末200〜400からの要求に応じて、ラインバランス改善策要求画面を送信する(ステップS32)。
【0106】
続いて、縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面(
図3参照)をディスプレイなどに表示する。縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面にユーザID及びパスワードの入力された後、スタートボタンの操作を受け付けると、ラインバランス改善策提供装置100に対して、ラインバランス改善策の問合せを送信する(ステップS33)。
【0107】
ラインバランス改善策提供装置100は、ラインバランス改善策の問合せを受信すると、ユーザID及びパスワードに基づくユーザ認証を行い、要求元の生産ラインと、製品、オペレータ数、隘路工程が一致し、かつライン構成が類似する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する(ステップS34)。
【0108】
続いて、ラインバランス改善策提供装置100は、製品、オペレータ数、隘路工程が一致し、かつライン構成が類似する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理の結果に基づいて、ラインバランス改善策を縫製工場端末200〜400に送信する(ステップS35)。
【0109】
[実施例3に係る処理]
図19は、実施例3に係るラインバランス改善策提供装置による処理手順の一例を示す図である。
図19に示す処理手順は、ラインバランス改善策提供装置100が、縫製工場端末200〜400のいずれかから、ラインバランス改善策の問合せを受信したときに開始される。
図19に示す処理手順は、ステップS301及びステップS302の処理が、
図17に示す処理手順とは異なる。
【0110】
取得部130bは、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元に対応する製品ID、人員構成情報、隘路工程情報、及びライン構成情報を取得する(ステップS301)。例えば、取得部130bは、問合せの送信元が縫製工場端末200である場合には、生産ラインデータベース120aに記憶されている縫製工場20に関するデータを参照して、製品ID(例えば、001)、人員構成情報(例えば、オペレータ数“6”)、隘路工程情報(工程ID“P
3,P
7,P
8,P
9”)、及びライン構成情報((P1,P2)→P3→(P4,P5)→(P5,P6)→(P7,P8,P9)→(P10,P11))を取得する。なお、問合せの送信元に対応する縫製工場が複数の生産ラインを有する場合には、各生産ラインに対応する、製品ID、人員構成情報(オペレータ数)、隘路工程情報(工程ID)、及びライン構成情報を取得する。
【0111】
続いて、取得部130bは、ステップS301で取得した、製品ID、人員構成情報(オペレータ数)、隘路工程情報(工程ID)、及びライン構成情報をキーとして、生産ラインデータベース120aの検索を行い、製品、オペレータ数、隘路工程の組合せが一致し、かつライン構成が類似する生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS302)。ここで、取得部130bは、同一の作業工程を全て含んでいるが、1人のオペレータに割り当てられる作業工程の数や作業工程の順序が異なる場合には、ライン構成が類似するものと判断する。
【0112】
判定の結果、製品、オペレータ数、隘路工程が一致し、かつライン構成が類似する生産ラインがない場合には(ステップS302、No)、取得部130bは、
図19に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0113】
これとは反対に、判定の結果、製品、オペレータ数および隘路工程が一致する生産ラインがある場合には(ステップS302、Yes)、取得部130bは、製品、オペレータ数、隘路工程が一致し、かつライン構成が類似する生産ラインの生産ラインIDを取得し、取得した生産ラインIDをキーとして、生産ラインに対応する作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する(ステップS303)。
【0114】
続いて、抽出部130cは、ステップS303で取得部130bにより取得された作業履歴データに基づいて、ステップS302の判定の結果得られた生産ラインの中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS304)。
【0115】
判定の結果、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがない場合には(ステップS304、No)、抽出部130cは、
図19に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0116】
これとは反対に、判定の結果、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがある場合には(ステップS304、Yes)、抽出部130cは、該当する生産ラインに対応する作業履歴データを抽出する(ステップS305)。
【0117】
続いて、算出部130dは、ステップS305で抽出された作業履歴データに対応する生産ラインについて、作業工程の変更前後の生産量を算出する(ステップS306)。
【0118】
続いて、改善策提供部130eは、算出部130dによる生産量の算出結果を参照し、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS307)。判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがない場合には(ステップS307、No)、改善策提供部130eは、
図19に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0119】
これとは反対に、判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがある場合には(ステップS307、Yes)、改善策提供部130eは、ラインバランス改善策リストを作成して、ラインバランス改善策の問合せの送信元に送信する(ステップS308)。そして、改善策提供部130eは、
図19に示す処理手順を終了する。
【0120】
(実施例3による効果)
上述してきたように、実施例3によれば、隘路工程が同一であるか否かに加えて、ライン構成が類似するか否かという条件を加えることにより、ボトルネックとなっている作業工程が同じであるだけでなく、ライン構成がより近い他の生産ラインを絞り込むことができる。この結果、ラインバランス改善策の問合せの送信元に対して、実施例2によりもさらに実効的な効果のある情報をラインバランス改善策として積極的に提供できる。
【実施例4】
【0121】
上記の実施例1では、製品およびオペレータ数が同一である他の生産ラインの作業履歴データに基づいて、ラインバランスの改善策の抽出処理を実行する例を説明した。以下の実施例4では、仮に、同一の製品を生産する生産ラインがなくとも、類似製品を生産する生産ラインの作業履歴データから、ラインバランスの改善策の抽出を試みる例を説明する。
【0122】
図20を用いて、実施例4に係る処理の概要を説明する。
図20は、実施例4に係る処理の概要を説明するための図である。
【0123】
図20に示すように、縫製工場端末200〜400は、例えば、工業用ミシンメーカ1により公開されるホームページなどに接続し、ホームページからラインバランス改善策要求画面へアクセスする(ステップS41)。ラインバランス改善策提供装置100は、縫製工場端末200〜400からの要求に応じて、ラインバランス改善策要求画面を送信する(ステップS42)。
【0124】
続いて、縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面(
図3参照)をディスプレイなどに表示する。縫製工場端末200〜400は、ラインバランス改善策要求画面にユーザID及びパスワードの入力された後、スタートボタンの操作を受け付けると、ラインバランス改善策提供装置100に対して、ラインバランス改善策の問合せを送信する(ステップS43)。
【0125】
ラインバランス改善策提供装置100は、ラインバランス改善策の問合せを受信すると、ユーザID及びパスワードに基づくユーザ認証を行い、要求元の生産ラインと、同一の製品を生産する生産ラインがない場合、類似製品を生産する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理を実行する(ステップS44)。
【0126】
続いて、ラインバランス改善策提供装置100は、類似製品を生産する生産ラインの作業履歴データに基づく改善策の抽出処理の結果に基づいて、ラインバランス改善策を縫製工場端末200〜400に送信する(ステップS45)。
【0127】
実施例4に係るラインバランス改善策提供装置の機能構成は、基本的には、実施例1と同様であるが、以下に説明する点が異なる。
【0128】
図21は、実施例4に係る生産ラインデータベースのデータ構成の一例を示す図である。
図21に示すように、生産ラインデータベース120aは、
図5に示す情報に加えて、類似製品IDをさらに記憶する。類似製品IDは、ラインバランス改善策提供装置100の管理者などにより予め記録される。
図8に示す製品であれば、例えば、衣類のうち、ボトムスのカテゴリに含まれる製品であって、作業工程が8割以上一致するものを類似製品とする。
図5に示す例では、例えば、生産ラインID“20L
1”の生産ラインで生産される製品ID“001”の製品、生産ラインID“30L
1”の生産ラインで生産される製品ID“005”の製品、及び生産ラインID“40L
1”の生産ラインで生産される製品ID“006”の製品が相互に類似する製品として記録されている。
【0129】
取得部130bは、縫製工場端末200〜400から、ラインバランス改善策の問合せを受信した場合に、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元である縫製工場端末が設置された縫製工場内の生産ラインで生産されている製品の製品IDを取得する。そして、取得部130bは、取得した製品IDをキーとして、生産ラインデータベース120aの検索を行い、製品が一致する生産ラインがあるかどうかを判定する。判定の結果、製品が一致する生産ラインがない場合には、生産ラインデータベース120aの検索を行い、製品が類似する生産ライン(類似製品を生産する生産ライン)があるかどうかを判定する。製品が類似する生産ラインがある場合には、類似製品を生産する生産ラインがあった問合せの送信元の製品に対応する人員構成情報を取得し、製品が類似する生産ラインの中に、オペレータ数が一致する生産ラインがあるかどうか判定する。オペレータ数が一致する生産ラインがある場合には、取得部130bは、該当の生産ラインに対応する作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する。
【0130】
抽出部130cは、取得部130bにより取得された作業履歴データに基づいて、問合せの送信元に対応する生産ラインと生産する製品が類似し、かつオペレータ数が一致する生産ライン(以下、適宜、比較検証生産ラインと記載する)の中に、問合せの送信元に対応する生産ラインと縫い工程の難易度が同程度であると判断できる生産ラインがあるかどうかを判定する。具体的には、抽出部130cは、問合せの送信元に対応する生産ラインの作業履歴データを参照し、生産ラインにて実施される作業工程から、ミシンを用いた縫いの作業を実施する工程を特定し、特定した工程におけるミシンの針数、縫いの速度およびソーイングモード(直線縫いやジグザク縫いなどのステッチパターンに応じて変更されるモード)を取得する。縫いの速度を評価するためのデータとして、例えば、ミシンの主軸の回転速度のデータを取得する。同様に、抽出部130cは、取得部130bにより取得された、比較検証生産ラインの作業履歴データを参照し、作業履歴データの中から、ミシンを用いた縫いの作業を実施する工程を特定し、特定した工程におけるミシンの針数、縫いの速度およびソーインググモードを取得する。抽出部130cは、対応するソーイングモード間でミシンの針数および縫いの速度を比較し、比較検証生産ラインの中から、問合せの送信元に対応する生産ラインで特定した工程におけるミシンの針数および縫いの速度との差が所定の範囲内にある生産ラインを、縫い工程の難易度が同程度であると判断できる生産ラインとして特定する。例えば、同一のソーイングモードで実行される縫い工程であっても、ミシンの針数および縫いの速度が多い工程ほど難易度が高いものと判断できる。なお、抽出部130cは、縫い工程の難易度を判断するためのデータとして、縫いの速度の代わりに、作業時間を用いてもよい。そして、抽出部130cは、取得部130bにより取得された作業履歴データの中から、特定した生産ラインに対応する作業履歴データを抽出する。続いて、抽出部130cは、実施例1と同様に、抽出した作業履歴データの中から、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた作業履歴データがあるかどうかを判定する。
【0131】
縫いの作業が実施されるときのミシンの針数は簡易な作業ほど少なくなる。また、縫いの作業が実施されるときのミシンの縫いの速度は、簡易な作業ほど一般に遅くなる。このように、ミシンの針数および縫いの速度は、縫いの作業の難易度が反映されるデータである。ところで、パジャマのズボンと、スーツのスラックスでは、ボトムスという点で類似する製品に該当するが、縫いの作業の難易度は同程度であるとは限らない。そこで、実施例4では、ミシンの針数および縫いの速度に基づいて縫いの作業の難易度を評価することにより、ラインバランスの改善策の問合せ元の生産ラインの類似製品を生産する生産ラインの中から、難易度が同程度の縫いの工程を含む生産ラインを特定する。つまり、実施例4では、類似製品を生産する生産ラインのうち、難易度が同程度の縫いの工程を含む生産ラインを、改善策の問合せ元の生産ラインとラインバランスの実情が最も近いとみなすことができる生産ラインと判断する趣旨である。そして、実施例4では、改善策の問合せ元の生産ラインとラインバランスの実情が最も近い生産ラインの作業履歴データに基づいて、ラインバランスの改善案を問合せ元に提供する。このように、実施例4によれば、ラインバランスの改善策の問合せ元の生産ラインと同一の製品を生産する生産ラインがない場合であっても、類似製品を生産する生産ラインの中から、ラインバランスの実情が最も近いと判断する生産ラインの作業履歴データに基づいて、できるだけ実効的な情報をラインバランスの改善策として問合せ元に提供できる。なお、針数および縫いの速度との差を検証する場合、経験則などに基づいて、針数および縫いの速度と作業の難易度との関係、縫いの作業の難易度が同程度と判断できる針数および縫いの速度の範囲を予め設定しておくものとする。
【0132】
[実施例4に係る処理]
図22及び
図23は、実施例4に係るラインバランス改善策提供装置による処理手順の一例を示す図である。
図22及び
図23に示す処理手順は、ラインバランス改善策提供装置100が、縫製工場端末200〜400のいずれかから、ラインバランス改善策の問合せを受信したときに開始される。
図22及び
図23に示す処理手順は、ステップS401〜ステップS404、ステップS411〜ステップS416が、
図11とは異なる。
【0133】
取得部130bは、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元に対応する製品IDを取得する(ステップS401)。続いて、取得部130bは、製品が一致する生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS402)。
【0134】
判定の結果、製品が一致する生産ラインがある場合には(ステップS402、Yes)、取得部130bは、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元に対応する人員構成情報を取得する(ステップS403)。続いて、取得部130bは、オペレータ数が一致する生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS404)。
【0135】
判定の結果、オペレータ数が一致する生産ラインがない場合には(ステップS404、No)、取得部130bは、
図22に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0136】
これとは反対に、判定の結果、オペレータ数が一致する生産ラインがある場合には(ステップS404、Yes)、取得部130bは、該当の生産ラインに対応する作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する(ステップS405)。
【0137】
続いて、抽出部130cは、ステップS405で取得部130bにより取得された作業履歴データに基づいて、ステップS404の判定の結果得られた生産ラインの中に、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS406)。
【0138】
判定の結果、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがない場合には(ステップS406、No)、抽出部130cは、
図22に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0139】
これとは反対に、判定の結果、オペレータが担当する作業工程の変更が行われた形跡のある生産ラインがある場合には(ステップS406、Yes)、抽出部130cは、該当する生産ラインに対応する作業履歴データを抽出する(ステップS407)。
【0140】
続いて、算出部130dは、ステップS407で抽出された作業履歴データに対応する生産ラインについて、作業工程の変更前後の生産量を算出する(ステップS408)。
【0141】
続いて、改善策提供部130eは、算出部130dによる生産量の算出結果を参照し、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS409)。判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがない場合には(ステップS409、No)、改善策提供部130eは、
図22に示す処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0142】
これとは反対に、判定の結果、作業工程の変更後に生産量が増加した生産ラインがある場合には(ステップS409、Yes)、改善策提供部130eは、ラインバランス改善策リストを作成して、ラインバランス改善策の問合せの送信元に送信する(ステップS410)。そして、改善策提供部130eは、
図22に示す処理手順を終了する。
【0143】
ステップS402において、判定の結果、製品が一致する生産ラインがない場合には(ステップS402、No)、取得部130bは、
図23に示すように、製品が類似する生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS411)。
【0144】
判定の結果、製品が類似する生産ラインがない場合には(ステップS411、No)、取得部130bは、
図22に示す処理手順に戻り、処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0145】
これとは反対に、判定の結果、製品が類似する生産ラインがある場合には(ステップS411、Yes)、取得部130bは、生産ラインデータベース120aを参照して、問合せの送信元に対応する人員構成情報を取得する(ステップS412)。続いて、取得部130bは、オペレータ数が一致する生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS413)。
【0146】
判定の結果、オペレータ数が一致する生産ラインがない場合には(ステップS413、No)、取得部130bは、
図22に示す処理手順に戻り、処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0147】
これとは反対に、判定の結果、オペレータ数が一致する生産ラインがある場合には(ステップS413、Yes)、取得部130bは、該当の生産ラインに対応する作業履歴データを作業履歴データベース120bから取得する(ステップS414)。
【0148】
続いて、抽出部130cは、取得部130bにより取得された作業履歴データに基づいて、問合せの送信元に対応する生産ラインと製品が類似し、かつオペレータ数が一致する生産ライン(以下、適宜、比較検証生産ラインと記載する)の中に、問合せの送信元に対応する生産ラインと縫い工程の難易度が同程度であると判断できる生産ラインがあるかどうかを判定する(ステップS415)。
【0149】
具体的には、抽出部130cは、問合せの送信元に対応する生産ラインの作業履歴データを参照し、生産ラインにて実施される作業工程から、ミシンを用いた縫いの作業を実施する工程を特定し、特定した工程におけるミシンの針数、縫いの速度およびソーイングモード(直線縫いやジグザク縫いなどのステッチパターンに応じて変更されるモード)を取得する。同様に、抽出部130cは、取得部130bにより取得された、比較検証生産ラインの作業履歴データを参照し、作業履歴データの中から、ミシンを用いた縫いの作業を実施する工程を特定し、特定した工程におけるミシンの針数、縫いの速度およびソーインググモードを取得する。抽出部130cは、対応するソーイングモード間でミシンの針数および縫いの速度を比較し、比較検証生産ラインの中から、問合せの送信元に対応する生産ラインで特定した工程におけるミシンの針数および縫いの速度との差が所定の範囲内にある生産ラインを、縫い工程の難易度が近い(同程度である)と判断できる生産ラインと判定する。
【0150】
判定の結果、問合せの送信元に対応する生産ラインと縫い工程の難易度が近いと判断できる生産ラインがない場合には(ステップS415、No)、抽出部130cは、
図22に示す処理手順に戻り、処理手順を終了する。このとき、ラインバランス改善策提供装置100は、適切な改善策を検出できなかった旨のメッセージを、ラインバランス改善策の問合せの送信元に返信するようにしてもよい。
【0151】
これとは反対に、判定の結果、問合せの送信元に対応する生産ラインと縫い工程の難易度が近いと判断できる生産ラインがある場合には(ステップS415、Yes)、抽出部130cは、ステップS414で取得された作業履歴データの中から、該当する作業履歴データを抽出する(ステップS416)。そして、抽出部130cは、
図22のステップS406に処理手順に移り、処理を継続する。
【0152】
(実施例4による効果)
上述してきたように、実施例4によれば、類似製品を生産する生産ラインの作業履歴データに基づいて、ラインバランスの改善策の抽出を試みるので、同一の製品を生産する生産ラインがなくとも、ラインバランス改善策の提供の可能性を高めることができる。
【0153】
実施例4による処理は、実施例2による処理(
図17参照)や実施例3による処理(
図19参照)と組み合わせることもできる。