(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る記録媒体判別装置の第1の実施の形態を示す図である。
【0014】
図1において、記録媒体判別装置は発光受光部10及び記録媒体判別部20よりなる。
【0015】
発光受光部10は、記録媒体Mを内部に通過させるための筐体11、筐体11の内部に設けられた発光部12、及び正反射光センサ13、散乱反射光センサ14、正透過光センサ15及び散乱透過光センサ16よりなる受光部よりなる。
【0016】
発光部12は2つの異なる波長の入射光L1、L2を記録媒体Mの表面に所定の入射角θたとえば60°で入射させる。
【0017】
発光部12は、たとえば、波長400〜450nmの紫色から青色の青紫光L1を発生する発光ダイオード(LED)素子及び波長700〜800nmの近赤外光L2を発生するLED素子を同一パッケージ内に形成した二波長LEDユニットである。たとえば、
図2に示すように、青紫色LED素子201及び近赤外LED素子202を樹脂レンズ203を介して青紫光L1、近赤外光L2を出射するもの、あるいは、
図3に示すように、絶縁基板301の裏面に青紫色LED素子302及び近赤外LED素子303を設け、凹面反射鏡304によって絶縁基板301のアパーチャ301aを介して凸レンズ305から青紫光L1及び近赤外光L2を出射するものがある。いずれも二波長の青紫光L1及び近赤外光L2を記録媒体Mの入射角に対して同一入射角で入射するように配置するものである。尚、
図2、
図3の204、306はリードフレームである。
【0018】
正反射光センサ13は記録媒体Mの表面において入射角θと反対の同一角の反射角θで反射した正反射光の光強度I
aを検出し、散乱反射光センサ14は記録媒体Mの表面において入射角θの大きさと異なる反射角たとえば垂直に反射した散乱光の光強度I
bを検出し、正透過光センサ15は記録媒体Mの裏面において入射角θの延長上の透過角θで透過した正透過光の光強度I
cを検出し、散乱透過光センサ16は記録媒体Mの裏面において透過角θと異なる角たとえば垂直に透過した散乱透過光の光強度I
dを検出する。
【0019】
正反射光センサ13、散乱反射光センサ14、正透過光センサ15及び散乱透過光センサ16はたとえば同一のシリコンフォトダイオードによって構成されている。シリコンフォトダイオードは感度領域が400nm以上で最大感度波長が900nm付近であり、温度上昇があって最大感度波長900nmが短波長側へシフトしても、波長400〜450nmの青紫光L1及び波長700〜800nmの近赤外光L2の波長領域を包含できるように構成されている。
【0020】
図1の記録媒体判別部20は、発光部12の青紫色LED素子201(302)、近赤外LED素子202(303)に供給する駆動電流I
1、I
2を発生するための定電流型駆動回路21の駆動電流I
1、I
2を青紫色LED素子201(302)、近赤外LED素子202(303)に選択して供給するセレクタ22、正反射光センサ13の光強度I
aを電圧V
aに変換する増幅器23、散乱反射光センサ14の光強度I
bを電圧V
bに変換する増幅器24、正透過光センサ15の光強度I
cを電圧V
cに変換する増幅器25、散乱透過光センサ16の光強度I
dを電圧V
dに変換する増幅器26、及びマイクロコンピュータよりなる制御回路27により構成される。
【0021】
制御回路27は、定電流型駆動回路21に駆動電圧V
0を供給するディジタル/アナログ(D/A)変換器271、電圧V
a、V
b、V
c、V
dをアナログ/ディジタル(A/D)変換するセレクタ内蔵A/D変換器272、演算処理を行う中央処理装置(CPU)273、プログラム、定数等を記憶するリードオンリメモリ(ROM)274、一時的なデータを記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)275、共有バス276、セレクタ22を制御する出力ポート277等により構成されている。
【0022】
次に、本発明の実施の形態で用いられる記録媒体Mを説明するが、これらに限るものでない。
1.普通紙:化学パルプを含む洋紙。特に、化学パルプ配合率が40%未満のものを更紙、化学パルプ配合率が100%のものを上質紙と呼ぶ。
2.光沢紙:普通紙に比較して印刷した場合のインクのにじみが少なく、インクジェットプリンタで写真を印刷する用途に特に適している。多層構造であり、その表層は光沢の質感を出すコーティングを施されている。また、近年、蒸発する水分を高速に通気する機能を高めたレーザプリンタ用の光沢紙もある。いずれの光沢紙においても、散乱反射成分は正反射成分に比較して小さくなる。
3.マット紙:紙の表面につやのためにコーティングを施した光沢のない印刷用紙。正反射成分が散乱反射成分に比較して小さくなる。
4.合成紙:合成樹脂を主原料として製造されたパルプを含まない“紙”である。外観や風合いは木材パルス紙によく似ているが、紙、合成樹脂フィルムを兼ねた特性を有するものが多い。
尚、一般的に、光沢紙、マット紙のようなコーティング層を有する紙は、白色度を増加させるために、蛍光増色剤を含んでいる。この蛍光増色剤は紫外光を受けて青色領域の蛍光を発することで黄色味を帯びた原紙と補色作用とにより視感白色度を増加させるものである。
【0023】
正透過光、散乱透過光の光は、記録媒体の中で散乱してその光強度I
c、I
dが低下するので、記録媒体Mの厚さ、材質、添加剤等に依存する。
【0024】
また、正透過光、散乱透過光の受光角度については、透過光が記録媒体Mの中で散乱しても、受光角度0°(垂直)で最大であり、垂直以外の受光角度での光強度は記録媒体Mの種類に応じて変化する。たとえば、普通紙、マット紙では大きく変化し、光沢紙、合成紙では小さく変化する傾向にある。
【0025】
さらに、正透過光、散乱透過光の光強度は、入射角度θによる影響を受けにくく、また、受光角度に対するピーク値は存在しない。
【0026】
以上から、正透過光の受光角度は入射角θの延長上の角度60°とし、散乱透過光の受光角度を0°(垂直)とする。
【0027】
記録媒体Mのマハラノビス距離用参照データとして、上述の普通紙、光沢紙、マット紙、合成紙、及び普通紙より厚めで腰のある青みがかった青色波長領域の反射率が大きい特別の普通紙2の正反射光センサ13の光強度I
a1、I
a2、散乱反射光センサ14の光強度I
b1、I
b2、正透過光センサ15の光強度I
c1、I
c2、散乱透過光センサ16の光強度I
d1、I
d2を求め、比I
a1/I
b1、I
a2/I
b2、I
c1/I
d1、I
c2/I
d2の演算結果の分布を
図4に示す。尚、
図4において、I
a1、I
b1、I
c1、I
d1はλ=440nmの青紫色LED素子201(302)の発光時、I
a2、I
b2、I
c2、I
d2はλ=720nmの近赤外LED素子202(303)の発光時の正反射光センサ13、散乱反射光センサ14、正透過光センサ15及び散乱透過光センサ16によって受光された光の光強度である。
【0028】
普通紙、光沢紙、マット紙、合成紙、普通紙2のマハラノビス距離用参照データである
図4の4つのパラメータ(I
a1/I
b1、I
a2/I
b2、I
c1/I
d1、I
c2/I
d2)はその分布と共にその特徴分布中心によって特徴付けられ、制御回路27のROM274に予め記憶されている。
【0029】
次に、
図1の制御回路27の動作を
図5のフローチャートを参照して説明する。尚、
図5のフローチャートは記録媒体Mが図示しない検知手段によって筐体11内に入るのが検知される毎にスタートする。
【0030】
始めに、ステップ501にて、制御回路27は定電流型駆動回路21及びセレクタ22を動作させて所定の駆動電流I
1を青紫色LED素子201(302)に供給する。この結果、青紫色LED素子201(302)からの青紫光L1が記録媒体Mに照射される。
【0031】
次に、ステップ502にて、制御回路27は正反射光センサ13、散乱反射光センサ14、正透過光センサ15及び散乱透過光センサ16から青紫光L1を入射光とする正反射光の光強度I
a1、散乱反射光の光強度I
b1、正透過光の光強度I
c1及び散乱透過光の光強度I
d1を増幅器23、24、25、26を介して取り込む。
【0032】
次に、ステップ503にて、制御回路27は定電流型駆動回路21及びセレクタ22を動作させて駆動電流I
1を所定の駆動電流I
2を切換えて近赤外LED素子202(303)に供給する。この結果、近赤外LED素子202(303)からの近赤外光L2が記録媒体Mに照射される。
【0033】
次に、ステップ504にて、制御回路27は正反射光センサ13、散乱反射光センサ14、正透過光センサ15及び散乱透過光センサ16から近赤外光L2を入射光とする正反射光の光強度I
a2、散乱反射光の光強度I
b2、正透過光の光強度I
c2及び散乱透過光の光強度I
d2を増幅器23、24、25、26を介して取り込む。そして、駆動電流I
2をオフにする。
【0034】
次に、ステップ505にて、制御回路27は青紫光L1に対する
正反射光強度I
a1/散乱反射光強度I
b1比
正透過光強度I
c1/散乱透過光強度I
d1比
を演算すると共に、近赤外光L2に対する
正反射光強度I
a2/散乱反射光強度I
b2比
正透過光強度I
c2/散乱透過光強度I
d2比
を演算する。つまり、4つのパラメータ(I
a1/I
b1、I
c1/I
d1、I
a2/I
b2、I
c2/I
d2)を演算する。
【0035】
次に、ステップ506にて、ステップ505にて得られた4つのパラメータ(I
a1/I
b1、I
c1/I
d1、I
a2/I
b2、I
c2/I
d2)と、リードオンリメモリ274に予め記憶された
図4に示す記録媒体Mの各種類のマハラノビス距離用参照データとの各マハラノビス距離を演算する。
【0036】
次に、ステップ507にて、ステップ506にて得られたマハラノビス距離が最小である記録媒体Mの種類を選択する。
【0037】
そして、ステップ508にてこのルーチンは終了する。このようにして記録媒体Mの種類を判別する。
【0038】
図6、
図7は本発明に係る記録媒体判別装置の第2の実施の形態を示す図あって、
図6はソレノイドのオフ状態、
図7はソレノイドのオン状態を示す。
【0039】
図6、
図7においては、
図1の筐体11の代りに、筐体61を設け、この筐体61内に円弧部材62を回転可能に収納し、円弧部材62の突起62aをソレノイド63の弁63aによって押し上げて円弧部材62を回転させるように構成されている。
【0040】
筐体61には、
図1の発光部12が固定され、円弧部材62には、
図1の正反射光センサ13及び散乱反射光センサ14の両作用をする反射光センサ64及び
図1の正透過光センサ15及び散乱透過光センサ16の両作用をする透過光センサ65が固定されている。つまり、反射光センサ64及び透過光センサ65は発光部12に対してソレノイド63によって回転可能となっている。
【0041】
すなわち、ソレノイド63がオフ状態であれば、
図6に示すごとく、反射光センサ64は
図1の正反射光センサ13の作用をし、透過光センサ65は
図1の散乱透過光センサ16の作用をする。他方、ソレノイド63がオン状態であれば、
図7に示すごとく、円弧部材62の突起62aがソレノイド63のソレノイド弁63aによって回転し、反射光センサ64は
図1の散乱反射光センサ14の作用をし、透過光センサ65は
図1の正透過光センサ15の作用をする。
【0042】
また、記録媒体判別部20には、ソレノイド63を駆動するための駆動回路28が付加されており、この駆動回路28は出力ポート278が付加された制御回路27によって制御される。
【0043】
また、
図6、
図7において、
図1の正反射光センサ13及び散乱反射光センサ14が1つの反射光センサ64に置換されたので、
図1の記録媒体判別部20の増幅器24が削除され、同様に、
図1の正透過光センサ15及び散乱透過光センサ16が1つの透過光センサ65に置換されたので、
図1の記録媒体判別部20の増幅器26が削除されている。
【0044】
次に、
図6、
図7の制御回路27の動作を
図8のフローチャートを参照して説明する。尚、
図8のフローチャートは記録媒体Mが図示しない検知手段によって筐体11内に入るのが検知される毎にスタートする。また、ソレノイド63は
図6のオフ状態に初期化されているものとする。
【0045】
始めに、ステップ801にて、制御回路27は定電流型駆動回路21及びセレクタ22を動作させて所定の駆動電流I
1を青紫色LED素子201(302)に供給する。この結果、青紫色LED素子201(302)からの青紫光L1が記録媒体Mに照射される。
【0046】
次に、ステップ802にて、制御回路27は反射光センサ64及び透過光センサ65から青紫光L1を入射光とする正反射光の光強度I
a1及び散乱透過光の光強度I
d1を増幅器23、25を介して取り込む。
【0047】
次に、ステップ803にて、制御回路27は定電流型駆動回路21及びセレクタ22を動作させて駆動電流I
1を所定の駆動電流I
2に切換えて近赤外LED素子202(303)に供給する。この結果、近赤外LED素子202(303)からの近赤外光L2が記録媒体Mに照射される。
【0048】
次に、ステップ804にて、制御回路27は反射光センサ64及び透過光センサ65から近赤外光L2を入射光とする正反射光の光強度I
a2及び散乱透過光の光強度I
d2を増幅器23、25を介して取り込む。
【0049】
次に、ステップ805にて、ソレノイド63を
図7のオン状態にする。これにより、ソレノイド63のソレノイド弁63aによって円弧部材62の突起62aを押し上げて円弧部材62を回転させる。
【0050】
次に、ステップ806にて、制御回路27は反射光センサ64及び透過光センサ65から近赤外光L2を入射光とする散乱反射光の光強度I
b2及び正透過光の光強度I
c2を増幅器23、25を介して取り込む。
【0051】
次に、ステップ807にて、制御回路27は定電流型駆動回路21及びセレクタ22を動作させて駆動電流I
2を所定の駆動電流I
1を切換えて青紫色LED素子201(302)に供給する。この結果、青紫色LED素子201(302)からの青紫光L1が記録媒体Mに照射される。
【0052】
次に、ステップ808にて、制御回路27は反射光センサ64及び透過光センサ65から青紫光L1を入射光とする散乱反射光の光強度I
b1及び正透過光の光強度I
c1を増幅器23、25を介して取り込む。そして、駆動電流I
1をオフにする。
【0053】
次に、ステップ809にて、制御回路27は青紫光L1に対する
正反射光強度I
a1/散乱反射光強度I
b1比
正透過光強度I
c1/散乱透過光強度I
d1比
を演算すると共に、近赤外光L2に対する
正反射光強度I
a2/散乱反射光強度I
b2比
正透過光強度I
c2/散乱透過光強度I
d2比
を演算する。つまり、4つのパラメータ(I
a1/I
b1、I
c1/I
d1、I
a2/I
b2、I
c2/I
d2)を演算する。
【0054】
次に、ステップ810にて、ステップ809にて得られた4つのパラメータ(I
a1/I
b1、I
c1/I
d1、I
a2/I
b2、I
c2/I
d2)と、リードオンリメモリ274に予め記憶された
図4に示す記録媒体Mの各種類のマハラノビス距離用参照データとの各マハラノビス距離を演算する。
【0055】
次に、ステップ811にて、ステップ810にて得られたマハラノビス距離が最小である記録媒体Mの種類を選択する。
【0056】
そして、ステップ812にてこのルーチンは終了する。このようにして記録媒体Mの種類を判別する。
【0057】
上述のごとく判別された記録媒体Mの種類は記録装置本体の制御部(図示せず)に送られ、インクジェットプリンタであれば、インク吐出量が制御され、レーザプリンタであれば、定着時間及び/または
温度が制御されることになる。
【0058】
尚、上述の実施の形態においては、マハラノビス距離を用いて記録媒体Mの種類を判別しているが、精度が低くなるが、ユークリッド距離を用いてもよい。この場合、
図4の参照データは特徴分布中心のみによって特徴付けられる。