特許第5957329号(P5957329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957329
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   A61F13/475 130
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-169534(P2012-169534)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-27999(P2014-27999A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 愛
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−062475(JP,A)
【文献】 特開2003−265518(JP,A)
【文献】 特表2002−531172(JP,A)
【文献】 特表2008−541943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在され、前記透液性表面シートの面側に、左右対で略長手方向に沿うエンボス溝が形成された吸収性物品において、
前記エンボス溝は、幅方向の両側にそれぞれ、長手方向に沿って高圧搾部と低圧搾部とが交互に配置され、かつ幅方向両側の前記高圧搾部同士が千鳥状に互い違いに配置されるとともに、幅方向の中間に、幅方向両側の前記高圧搾部に接続し、該高圧搾部同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた高圧搾部連続線が配置され、幅方向に対し常に前記高圧搾部及び低圧搾部が存在していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記エンボス溝は、幅方向の両側にそれぞれ、長手方向に沿って長手方向長さがほぼ同等な方形状の高圧搾部と低圧搾部とが交互に配置され、かつ幅方向両側の前記高圧搾部同士が千鳥状に互い違いに配置されるとともに、幅方向の中央部において、幅方向両側の前記高圧搾部の中央側縁部をそれぞれ長手方向に重なり代を有するように延在させることによって、幅方向両側の前記高圧搾部同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた前記高圧搾部連続線が配置されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記高圧搾部は、幅方向外側の側部が曲線状に形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高圧搾部及びこの区間に連続する高圧搾部連続線は、幅方向内側の側部が曲線状に形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記高圧搾部は、前記エンボス溝の側縁より内側に離間して配置されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記エンボス溝の少なくとも一方の側縁に沿って、前記高圧搾部の縁部と前記エンボス溝の側縁との離間幅を有する高圧搾部連続線が配置されている請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記低圧搾部は、前記高圧搾部より相対的に長手方向長さが大きく形成され、幅方向両側の前記低圧搾部同士が幅方向に重なり代を有するように配置されている請求項1記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品、詳しくは表面側に略長手方向に沿う方向に左右対の縦方向のエンボス溝が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、幅方向への体液の拡散を抑制し、体液の横漏れを防止するなどの目的で、表面側に熱エンボスによってエンボス溝を形成する技術が存在する。
【0004】
下記特許文献1においては、図9に示されるように、表面シート及び吸収体を表面から圧搾して圧搾条溝50を設けた生理用ナプキンにおいて、該圧搾条溝50は所定の幅を有してナプキンの長手方向に延びており、該圧搾条溝50内に低圧搾部51を設け、該低圧搾部51は圧搾条溝50の幅より狭く条溝底面を幅方向に横切らないように形成され、かつ圧搾条溝50の長手方向に間隔をおいて配置されている生理用ナプキンが開示されている。かかる生理用ナプキンにおいては、相対的に深溝となる圧搾条溝50(高圧搾部)に対し、相対的に浅溝となる低圧搾部51を、圧搾条溝50(高圧搾部)を横切らない非連続の形状で設けることによって、圧搾条溝50の長さ方向への経血等の拡散を抑制しながら、経血等の横漏れを防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−38555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示されるエンボス溝では、図9に示されるように、低圧搾部51が介在しない長手方向区間において、高圧搾部(圧搾条溝50)のみからなる幅方向に均質な区間となっているため、この区間を横切るように内側から外側に向かう幅方向に流れる経血等は、拡散スピードが抑制されることなく、幅方向への拡散が進みやすくなる。このため、経血等の横漏れが生じやすくなっていた。
【0007】
また、高圧搾部(圧搾条溝50)では、浸透した経血等の保持力が劣るため、経血等の吸収効率が低下するとともに、肌側に経血等が残りやすく装着者に不快感を与えていた。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、体液の横漏れを防止するとともに、体液の吸収効率を向上させ、かつ装着者の不快感を軽減した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在され、前記透液性表面シートの面側に、左右対で略長手方向に沿うエンボス溝が形成された吸収性物品において、
前記エンボス溝は、幅方向の両側にそれぞれ、長手方向に沿って高圧搾部と低圧搾部とが交互に配置され、かつ幅方向両側の前記高圧搾部同士が千鳥状に互い違いに配置されるとともに、幅方向の中間に、幅方向両側の前記高圧搾部に接続し、該高圧搾部同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた高圧搾部連続線が配置され、幅方向に対し常に前記高圧搾部及び低圧搾部が存在していることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、前記エンボス溝として、幅方向の両側にそれぞれ、長手方向に沿って高圧搾部と低圧搾部とを交互に配置し、かつ幅方向両側の前記高圧搾部同士を千鳥状に互い違いに配置するとともに、幅方向の中間に、幅方向両側の前記高圧搾部に接続し、該高圧搾部同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた高圧搾部連続線を配置した構造とし、幅方向に対し常に前記高圧搾部及び低圧搾部が存在するようにしている。このため、エンボス溝を幅方向に流れる経血等は、吸収スピードの速い高圧搾部で吸収体側に浸透された後、前記高圧搾部連続線を通して長手方向へ素早く拡散するようになる。従って、幅方向への拡散が抑えられ経血等の横漏れが防止できる。
【0011】
また、エンボス溝の幅方向に対し常に高圧搾部及び低圧搾部の両方が存在するようにし、高圧搾部だけの区間又は低圧搾部だけの区間を作らないようにしているため、幅方向に均質な区間をなくすことにより幅方向への拡散スピードが程よく抑えられ、経血等を長手方向へ素早く拡散させるとともに、エンボス溝に速やかに吸収保持されるようにしている。
【0012】
さらに、高圧搾部に隣接して低圧搾部が設けられているため、高圧搾部に浸透した経血等は、経血等の保持力が高い低圧搾部に徐々に移行して保持される。従って、肌側に経血等が残りにくく、装着者に不快感を与えることがなくなる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記エンボス溝は、幅方向の両側にそれぞれ、長手方向に沿って長手方向長さがほぼ同等な方形状の高圧搾部と低圧搾部とが交互に配置され、かつ幅方向両側の前記高圧搾部同士が千鳥状に互い違いに配置されるとともに、幅方向の中央部において、幅方向両側の前記高圧搾部の中央側縁部をそれぞれ長手方向に重なり代を有するように延在させることによって、幅方向両側の前記高圧搾部同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた前記高圧搾部連続線が配置されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、本発明の最も好ましい形態について規定したものであり、幅方向の両側にそれぞれ、長手方向に沿って長手方向長さがほぼ同等な方形状の高圧搾部と低圧搾部とを交互に配置し、幅方向の中央部において、幅方向両側の前記高圧搾部の中央側縁部をそれぞれ長手方向に重なり代を有するように延在させることによって、幅方向両側の前記高圧搾部同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた高圧搾部連続線を配置したものである。すなわち、幅方向一方側の高圧搾部及び低圧搾部の境界線と他方側の低圧搾部及び高圧搾部の境界線とを幅方向にほぼ一致させた直線的な配置としている。このため、幅方向に対し常に高圧搾部及び低圧搾部が存在するので、経血等の横漏れが防止できるとともに、これらの境界線上を幅方向に流れる経血等は、浸透スピードが速い高圧搾部側に引き寄せられる力を受けるため、エンボス溝を幅方向に直進せずに長手方向に屈折する流れに変化しやすくなる。従って、経血等の横漏れがより一層確実に防止できるようになる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記高圧搾部は、幅方向外側の側部が曲線状に形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記高圧搾部及びこの区間に連続する高圧搾部連続線は、幅方向内側の側部が曲線状に形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3、4記載の発明では、高圧搾部及びこの区間に連続する高圧搾部連続線の幅方向外側又は内側の側部を曲線状に形成することによって、直線状に形成したときよりも幅方向に流れる経血等を高圧搾部にスムーズに浸透できるようにし又は高圧搾部に浸透した経血等を低圧搾部にスムーズに移行できるようにしている。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記高圧搾部は、前記エンボス溝の側縁より内側に離間して配置されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
請求項6に係る本発明として、前記エンボス溝の少なくとも一方の側縁に沿って、前記高圧搾部の縁部と前記エンボス溝の側縁との離間幅を有する高圧搾部連続線が配置されている請求項5記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、高圧搾部をエンボス溝の側縁より内側に離間して配置することによって、エンボス溝の両側部に長手方向に沿って低圧搾部連続線を形成し、高圧搾部に吸収された経血等をより一層確実に低圧搾部で吸収保持できるようにしている。また、上記請求項6記載の発明では、エンボス溝の両側部に形成された低圧搾部連続線の少なくとも一方を高圧搾部連続線に置き換えることによって、この高圧搾部連続線によって経血等の吸収スピードを向上させている。少なくとも一方に高圧搾部連続線を配置する態様としては、エンボス溝の内側又は外側に配置する他、内側と外側の両方に配置することもできる。
【0021】
請求項7に係る本発明として、前記低圧搾部は、前記高圧搾部より相対的に長手方向長さが大きく形成され、幅方向両側の前記低圧搾部同士が幅方向に重なり代を有するように配置されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項7記載の発明では、低圧搾部が高圧搾部より相対的に長手方向長さを大きく、すなわち低圧搾部の方が高圧搾部より大きな面積で形成することによって、経血等の保持力を向上させている。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、体液の横漏れを防止するとともに、体液の吸収効率を向上させ、かつ装着者の不快感を軽減した吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2】そのII−II線矢視図である。
図3】エンボス溝10の拡大平面図である。
図4】前部側エンボス溝11を示す拡大平面図である。
図5】(A)、(B)は、他の形態(その1)に係るエンボス溝10を示す拡大平面図である。
図6】(A)〜(D)は、他の形態(その2)に係るエンボス溝10を示す拡大平面図である。
図7】他の形態(その3)に係るエンボス溝10を示す拡大平面図である。
図8】他の形態(その4)に係るエンボス溝10を示す拡大平面図である。
図9】従来のエンボス溝を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。また、前記透液性表面シート3の面側に、排血口部位Hを囲むように、左右対で略長手方向に沿う縦方向エンボス溝10、10が形成されている。前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の端縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0028】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0029】
前記不透液性裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0030】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の10〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が10%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0032】
本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0033】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0034】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0035】
前記サイド不織布7の内方側は、図2に示されるように、前記サイド不織布7をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1または複数の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材8,8が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を表面側に起立させた立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0036】
〔エンボス溝10〕
図1に示されるように、前記透液性表面シート3の面側には、排血口部位Hを含む範囲に、左右対で略長手方向に沿う縦方向エンボス溝10、10が形成され、前記縦方向エンボス溝10、10のナプキン前部側始端同士を結合するとともに、ナプキン前端側に凸形状の前部側エンボス溝11が形成され、かつ前記縦方向エンボス溝10、10のナプキン後部側始端同士を結合するとともに、ナプキン後端側に凸形状の後部側エンボス溝12が形成され、全体として略小判形状の閉合形状とされたエンボス溝が設けられている。また、前側領域には、略逆U字状のエンボスの両端を前記前部側エンボス溝11に接続させた略逆U字状エンボス溝13が形成され、後側領域には、略U字状のエンボスの両端を前記後部側エンボス溝12に接続させた略U字状エンボス溝14が形成されている。さらに、前記略逆U字状エンボス溝13の前側には、略ナプキン幅方向に沿ってナプキン前端側に凸形状の円弧状エンボス溝15が形成されている。なお、本生理用ナプキン1では、前記縦方向エンボス溝10、10が設けられていればよく、他のエンボス溝11〜15の配置は任意である。
【0037】
前記縦方向エンボス溝10(以下、単に「エンボス溝10」ともいう。)は、図3に示されるように、該エンボス溝10の幅方向の両側にそれぞれ、該エンボス溝10の長手方向に沿って高圧搾部20と低圧搾部21とが交互に配置され、かつ幅方向両側の前記高圧搾部20、20…同士が千鳥状に互い違いに配置されるとともに、幅方向の中間に、幅方向両側の前記高圧搾部20、20…に接続し、該高圧搾部20、20…同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた高圧搾部連続線22が配置され、該エンボス溝10の幅方向に対し常に高圧搾部20及び低圧搾部21が存在するようにしている。ここで、エンボス溝10の幅方向とは、ほぼナプキン幅方向に一致する方向であって、エンボス溝10を横断する方向のことである。エンボス溝10の長手方向とは、ほぼナプキン長手方向に一致する方向であって、エンボス溝10に沿った方向のことである。
【0038】
前記高圧搾部20とは、低圧搾部21より強い強度で圧搾されることによって、エンボス溝深さが相対的に深く形成された部分のことである。前記低圧搾部21とは、高圧搾部20より弱い強度で圧搾されることによって、エンボス溝深さが相対的に浅く形成された部分のことである。前記高圧搾部20及び高圧搾部連続線22は、ほぼ同等の圧搾強度で圧搾したものであり、ほぼ同等の深さで連続して形成されているため、1つの高圧搾部20の長手方向区間において、幅方向に高圧搾部20と高圧搾部連続線22とが連続して形成されているが、エンボス溝10の幅方向中央部に長手方向に沿って一本の線状又は帯状に連続する部分が高圧搾部連続線22で、これより外側の部分が高圧搾部20である。
【0039】
かかるエンボス溝10では、ナプキン幅方向の内側からエンボス溝10に達した経血等は、繊維間の密度が大きく、毛管現象による浸透スピードが速い高圧搾部20に先ずはじめに吸収される。高圧搾部20に浸透した経血等は、高圧搾部20内を素早く拡散するとともに、これに連続する高圧搾部連続線22を通じてエンボス溝10の長手方向に拡散するようになる。従って、エンボス溝10の幅方向への経血等の拡散が抑えられ、横漏れが防止できるようになる。
【0040】
また、エンボス溝10の幅方向に高圧搾部だけ又は低圧搾部だけの均質な部分が存在すると、幅方向への拡散速度がほぼ一定であるため、幅方向への拡散が進む傾向にある。ところが、本発明に係る生理用ナプキン1では、エンボス溝10の幅方向に対し、常に高圧搾部20及び低圧搾部21の両方が存在するようにし、高圧搾部だけ又は低圧搾部だけの均質な部分を作らないようにしているため、これらの密度差に伴う拡散速度の違いによって幅方向への拡散が程良く抑えられ、均質な部分を通じての経血等の横漏れを確実に防止することが可能となる。
【0041】
さらに、高圧搾部20に隣接して常に低圧搾部21が設けられているため、高圧搾部20に浸透した経血等は、経血等の保持力が高い低圧搾部21に徐々に移行して保持されるようになる。このため、肌側に経血等が残りにくく、装着者にべた付き感などの不快感を与えることがなくなる。
【0042】
図示例のエンボス溝10の構造についてより詳細に説明すると、幅方向の両側にそれぞれ、長手方向に沿って長手方向長さがほぼ同等な方形状の高圧搾部20と低圧搾部21とが交互に配置され、かつ幅方向両側の前記高圧搾部20、20…同士が千鳥状に互い違いに配置されるとともに、幅方向中央部において、幅方向両側の前記高圧搾部20の中央側縁部をそれぞれ長手方向に重なり代を有するように延在させることによって、幅方向両側の高圧搾部20、20…同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた高圧搾部連続線22が配置されている。すなわち、エンボス溝10の側縁から延びる高圧搾部20の中央側縁部をエンボス溝10の幅方向中央部より反対側に若干延在させることによって、エンボス溝10の幅方向中央部に長手方向に沿う一本の線上で連続する高圧搾部連続線22を形成している。すなわち、幅方向右側の高圧搾部20及び低圧搾部21の境界線23と、幅方向左側の低圧搾部21及び高圧搾部20の境界線24とが幅方向にほぼ一致する直線的に配置されている。このため、これらの境界線23、24上を幅方向に流れる経血等は、高圧搾部20の浸透スピードが速いことにより、幅方向右側では後側(下側)の高圧搾部20に引き寄せられるとともに、幅方向左側では前側(上側)の高圧搾部20に引き寄せられる力が作用する。その結果、エンボス溝10を幅方向に直進せずに長手方向に屈折する流れに変化しやすくなる。従って、経血等の横漏れがより一層確実に防止できるようになる。しかも、幅方向中央部には、幅方向両側の高圧搾部20、20…同士を連続させた高圧搾部連続線22が配置してあるため、この高圧搾部連続線22に沿って長手方向に拡散しやすく、幅方向への拡散が抑えられている。
【0043】
前記高圧搾部20及び低圧搾部21は、図3に示されるように、エンボス溝10の側縁から幅方向中央部にかけて、ほぼ正方形に形成することが好ましい。ほぼ正方形に形成することによって、高圧搾部20に浸透した経血等が隣接する低圧搾部21、21…にほぼ均等に拡散しやすくなり、周囲の低圧搾部21、21…に偏ることなく経血等が吸収保持されるようになる。
【0044】
前記高圧搾部連続線22は、図3に示されるように、エンボス溝10の幅方向中央部に配置することが好ましいが、幅方向中央部に限らず、幅方向中間部に配置してあれば、ナプキン幅方向の内側寄りや外側寄りに配置してもよい。
【0045】
前記エンボス溝10は、種々のパターンで形成することができる。例えば、図5に示されるように、高圧搾部20の幅方向外側又は内側の側部を曲線状に形成してもよい。図5(A)は幅方向外側の側部を曲線状に形成したパターンであり、1つの高圧搾部20が配置される長手方向区間において、高圧搾部20及び高圧搾部連続線22が連続した圧搾部の形状は、幅方向中央寄りの側縁が長手方向に直線的に形成され、その両端部を幅方向に凸の曲線で結んだ全体として略山形状をなしている。このようなパターンで配置することにより、エンボス溝10を幅方向に流れる経血等を凸形状の曲線でキャッチして高圧搾部20に流れ込みやすく長手方向に拡散させやすくなるとともに、長手方向に隣接する低圧搾部21と曲線で接しているため低圧搾部21側への体液移行もスムーズとなる。一方、図5(B)は幅方向内側の側部を曲線状に形成したパターンであり、1つの高圧搾部20が配置される長手方向区間において、高圧搾部20及び高圧搾部連続線22が連続した圧搾部の形状は、幅方向外側の側部及び長手方向両側部が直線的に形成され、幅方向中央寄りの側縁が外側に凸の曲線で形成された全体として略イギリスパン形状をなしている。このようなパターンで配置することにより、高圧搾部20に浸透した経血等を前記凸形状の曲線で幅方向に隣接する低圧搾部21に拡散させやすくしている。
【0046】
前記高圧搾部20は、図3に示される例ではエンボス溝10の側縁に接続して配置しているが、図6(A)に示されるように、エンボス溝10の側縁より内側に離間して配置するようにしてもよい。すなわち、エンボス溝10の両側縁部にそれぞれ、幅方向の各側に配置される低圧搾部21、21…に接続し、この低圧搾部、21…同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた低圧搾部連続線25、25が形成されている。これによって、高圧搾部20の四方にはそれぞれ低圧搾部が配置されるようになり、高圧搾部20に吸収された経血等を低圧搾部21に移行しやすくなり、経血等の保持能力が向上できる。また、図6(B)〜(D)に示されるように、前記エンボス溝10の少なくとも一方側の側縁に沿って、高圧搾部20の縁部とエンボス溝10の側縁との離間幅を有する高圧搾部連続線26を配置することができる。(B)は両側に高圧搾部連続線26、26を配置したものであり、(C)は左側のみ、(D)は右側のみに高圧搾部連続線26を配置したものである。図6(A)に示される低圧搾部連続線25に換えて、高圧搾部連続線26を配置することによって、経血等の吸収スピードが向上できるようになる。
【0047】
幅方向中央部に配置される高圧搾部連続線22は、図7に示されるように、幅方向中央部に長手方向に沿って明瞭に高圧搾部連続線22が認識できるような所定の幅を有する帯状に形成することも可能である。また、同図7に示されるように、高圧搾部20及び低圧搾部21は、正方形ではなく、幅方向に長い長方形とすることもできるし、長手方向に長い長方形とすることもできる。
【0048】
さらに、図8に示されるように、低圧搾部21の長手方向長さを高圧搾部20の長手方向長さより相対的に長く(低圧搾部21の面積を高圧搾部20の面積より相対的に大きく)形成し、幅方向両側に配置される低圧搾部21同士が長手方向端部で幅方向に重なり代を有するように配置することも可能である。このように低圧搾部21を高圧搾部20より大きな面積で形成することによって、経血等の保持力が高められる。
【0049】
前記エンボス溝10の各部の寸法としては、図3に示されるように、エンボス溝10の幅方向長さ(溝幅)Aは0.8〜5mm程度が好ましく、高圧搾部連続線22の溝幅BはAの50%以下が好ましく、高圧搾部20の幅方向長さCはAの50〜80%程度が好ましく、高圧搾部20の長手方向長さCはAの20%以上、望ましくはAの50%程度が好ましく、低圧搾部21の幅方向長さDはAの50〜20%程度が好ましく、低圧搾部21の長手方向長さDは前記C以上、望ましくは前記C程度が好ましい。
【0050】
ところで、エンボス溝が曲線的に形成される前部側エンボス溝11及び後部側エンボス溝12も縦方向のエンボス溝10と同様に形成することができる。具体的には、図4に示されるように、この曲線に沿ったエンボス溝11、12の幅方向の両側にそれぞれ、曲線の曲率中心から半径方向に区画した各部に対し、エンボス溝11、12の長手方向に沿って高圧搾部20と低圧搾部21とを交互に配置し、かつ幅方向両側の高圧搾部20、20…同士を千鳥状に互い違いに配置するとともに、幅方向の中間に、幅方向両側の前記高圧搾部20、20…に接続し、該高圧搾部20、20…同士を長手方向に沿う一本の線上で連続させた高圧搾部連続線22を配置し、エンボス溝11、12の幅方向(横断方向)に対し常に高圧搾部20及び低圧搾部21が存在するようにしたエンボス溝とすることができる。これによって、経血等の前側及び後側の漏れも防止できるようになる。
【0051】
さらに、図1に示される略逆U字状エンボス溝13、略U字状エンボス溝14又は円弧状エンボス15に対しても任意に上述と同様の構造のエンボス溝を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、7…サイド不織布、10…エンボス溝、11…前部側エンボス溝、12…後部側エンボス溝、13…略逆U字状エンボス溝、14…略U字状エンボス溝、15…円弧状エンボス溝、20…高圧搾部、21…低圧搾部、22…高圧搾部連続線、23・24…境界線、25…低圧搾部連続線、26…高圧搾部連続線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9