特許第5957336号(P5957336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957336
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】太陽電池セル固定用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20160714BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20160714BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   H01L31/04 560
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-175955(P2012-175955)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-34619(P2014-34619A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106726
【氏名又は名称】シーアイ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】杉山 斉
(72)【発明者】
【氏名】日高 しのぶ
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−032451(JP,A)
【文献】 特開2011−032449(JP,A)
【文献】 特開2003−324211(JP,A)
【文献】 特開昭58−48971(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119515(WO,A1)
【文献】 実開平4−100235(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00−7/04
H01L 31/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が離型処理された基材と、該基材の離型処理されていない面に設けられた粘着剤層と有し、該粘着剤層が前記基材の離型処理面に剥離可能に貼着されて巻き回される太陽電池セル固定用粘着テープであって、
厚さ方向に貫通孔が形成されていることを特徴とする太陽電池セル固定用粘着テープ。
【請求項2】
前記貫通孔が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル固定用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール作製の際に互いに隣接する太陽電池セル同士を固定するために用いられる固定用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴い、太陽電池モジュールを用いた太陽光発電の普及が急速に拡大している。太陽電池モジュールとしては、発電素子である複数の太陽電池セルが電気的に接続された状態で一対のシート状の封止材に挟持され、さらにこれらが保護材としてのガラス板とバックシートに挟持されたものが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
上記太陽電池モジュールは、通常、ガラス板に、封止材、太陽電池セル、封止材、バックシートを順次積層して製造される。太陽電池セルは一対の封止材の間に複数並べられており、互いに隣接する太陽電池セル同士はその間隔を一定にするために、基材の一方の面に粘着剤層が設けられた粘着テープで固定されている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−174296号公報
【特許文献2】特開2003−324211号公報
【特許文献3】特開2011−32449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粘着テープにおいては、粘着剤層の露出面を、基材の粘着剤層が設けられていない面に貼着しながら巻き回してロール状とし、そのロールの状態で流通、使用するのが一般的である。
しかしながら、上記のように巻き回された粘着テープを用いて太陽電池セルを固定した場合には、太陽電池モジュール作製時のラミネート工程にて、粘着テープと封止材との間にガスが溜まって膨張することがあった(以下、その膨張のことを「インフレーション」という。)。インフレーションが起こると、太陽電池モジュールの外観が損なわれ、また、封止材による封止性が低下する傾向にある。
本発明は、基材の片面が離型処理されているにもかかわらず、太陽電池モジュール作製時のインフレーションを防止できる太陽電池セル固定用粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、粘着テープの粘着剤層を、基材の粘着剤層が設けられていない面に貼着しながら巻き回す場合には、基材の粘着剤層が設けられていない面が離型処理されているため、太陽電池モジュールで使用する封止材と接着しにくいことを見出した。また、太陽電池モジュール作製の際に封止材を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体等の材料の一部が分解してガスを発生し、そのガスが、接着性の低い粘着テープの基材と封止材との間に溜まってインフレーションを引き起こすことを見出した。そこで、太陽電池モジュール作製時に発生したガスが粘着テープと封止材との間に溜まることを防止する手法について検討し、以下の太陽電池セル固定用粘着テープを発明した。
すなわち、本発明の太陽電池セル固定用粘着テープは、一方の面が離型処理された基材と、該基材の離型処理されていない面に設けられた粘着剤層と有し、該粘着剤層が前記基材の離型処理面に剥離可能に貼着されて巻き回される太陽電池セル固定用粘着テープであって、厚さ方向に貫通孔が形成されていることを特徴とする。
本発明の太陽電池セル固定用粘着テープにおいては、前記貫通孔が複数形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の太陽電池セル固定用粘着テープによれば、基材の片面が離型処理されているにもかかわらず、太陽電池モジュール作製時のインフレーションを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の太陽電池セル固定用粘着テープの一実施形態を示す上面図である。
図2図1のI−I’断面図である。
図3図1,2の太陽電池セル固定用粘着テープを使用した太陽電池モジュール作製の一工程を示す断面図である。
図4図1,2の太陽電池セル固定用粘着テープを使用した太陽電池モジュール作製の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の太陽電池セル固定用粘着テープ(以下、「粘着テープ」と略す。)の一実施形態について説明する。
図1,2に、本実施形態の粘着テープを示す。本実施形態の粘着テープ10は、基材11と、基材11の一方の面に設けられた粘着剤層12とを備え、粘着剤層12の粘着面12aが、基材11の粘着剤層12が設けられていない面11aに貼着されて巻き回されるものである。
【0009】
基材11としては、樹脂フィルムが使用される。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレンなどが挙げられるが、耐熱性および汎用性に優れることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
基材11においては、粘着剤層12が設けられていない面11aが離型処理されている。これにより、粘着剤層12の粘着面12aが、基材11の粘着剤層12が設けられていない面に貼着されても剥離可能になる。
基材11の、粘着剤層12が設けられている面11bは、粘着剤層12が基材11から剥離すると実用性に欠けるため、離型処理が施されていない。
ここで、離型処理とは、離型剤を塗布して離型層を設ける処理のことである。離型剤としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤が挙げられる。
【0010】
基材11の厚さは50〜150μmであることが好ましく、75〜100μmであることがより好ましい。基材11の厚さが前記下限値以上であれば、粘着テープ10の引張強度を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、充分な柔軟性を確保できる。
【0011】
粘着剤層12を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤が使用される。粘着剤層12には、粘着剤に加えて粘着付与剤が含まれてもよい。粘着付与剤としては、ロジン系、テルペン系、フェノール系、クマロン系等の粘着付与剤が挙げられる。
【0012】
粘着剤層12の厚さは3〜10μmであることが好ましく、5〜8μmであることがより好ましい。粘着剤層12の厚さが前記下限値以上であれば、充分な接着性を確保でき、前記上限値以下であれば、粘着剤層12を容易に形成できる。
【0013】
本実施形態における粘着テープ10は、開口部が円形状の貫通孔10aが厚さ方向に形成されている。また、貫通孔10aは、千鳥配置で複数形成されている。
各貫通孔10aの開口面積は0.5〜8.0mmであることが好ましく、0.7〜7.0mmであることが好ましい。各貫通孔10aの開口面積が前記下限値以上であれば、インフレーションを充分に防止でき、前記上限値以下であれば、粘着面12aの面積を充分に確保できるから、互いに隣接する太陽電池セル同士を確実に固定できる。
粘着テープ10における開口率([全開口面積/粘着テープ全体面積]×100%)は30〜70%であることが好ましく、40〜60%であることがより好ましい。開口率が前記下限値以上であれば、インフレーションを充分に防止でき、前記上限値以下であれば、互いに隣接する太陽電池セル同士を確実に固定できる。
また、互いに隣接する貫通孔10a,10a同士の最短距離は0.5〜3.0mmであることが好ましく、1.0〜2.0mmであることがより好ましい。互いに隣接する貫通孔10a,10a同士の最短距離が前記下限値以上であれば、互いに隣接する太陽電池セル同士を確実に固定でき、前記上限値以下であれば、インフレーションを充分に防止できる。
【0014】
上記粘着テープ10は、例えば、片面が離型処理された基材11の、離型処理されていない面11bに、粘着剤を塗布して粘着剤層12を設けた後、穿孔して貫通孔10aを形成することによって製造することができる。
あるいは、片面が離型処理された基材11の、離型処理されていない面11bに、あらかじめ離型シート上に形成された粘着剤層12を貼り合せた後、穿孔して貫通孔10aを形成し、前記離型シートを剥離することによって製造することができる。
【0015】
太陽電池モジュール作製の際には、図3に示すように、上記粘着テープ10を、第1の封止材20上に配置された、互いに隣接する太陽電池セル30,30同士を掛け渡すように貼着する。これにより、互いに隣接する太陽電池セル30,30同士を固定して、配置がずれることを防止する。
粘着テープ10で太陽電池セル30を固定した後には、図4に示すように、第1の封止材20と第2の封止材40とで、粘着テープ10および太陽電池セル30を挟み込んで封止する。
基材11の粘着剤層12が設けられていない面が離型処理されている場合には、基材11と第2の封止材40との接着性が低く、太陽電池モジュール作製の際に封止材20,40の一部が分解して発生したガスが、基材11と第2の封止材40との間に溜まって、インフレーションを引き起こしやすくなっていた。これに対し、本実施形態の粘着テープ10では貫通孔が形成されているため、第1の封止材20と第2の封止材40とで太陽電池セル30および粘着テープ10を挟んだ際には、貫通孔にて第1の封止材20と第2の封止材40とが接触し、強固に接着する。そのため、基材11と第2の封止材40との間に隙間が形成しにくく、封止材20,40の分解によりガスが発生しても、基材11と第2の封止材40との間に入り込んで溜まることを防止できる。
したがって、本実施形態の粘着テープ10によれば、基材11の片面が離型処理されているにもかかわらず、太陽電池モジュール作製時のインフレーションを防止できる。これにより、太陽電池モジュールの外観を損なうことを防止でき、また、封止性が低下することを防ぐことができる。
【0016】
なお、本発明の粘着テープは、上記実施形態に限定されない。
例えば、貫通孔の開口部は円形である必要はなく、例えば、楕円形でもよいし、多角形(三角形、四角形等)などであってもよい。
また、貫通孔の配置は千鳥配置でなくてもよく、例えば、格子配置であってもよい。
さらに、貫通孔は複数である必要もなく、1つであってもよい。
【符号の説明】
【0017】
10 粘着テープ(太陽電池セル固定用テープ)
10a 貫通孔
11 基材
12 粘着剤層
12a 粘着面
20 第1の封止材
30 太陽電池セル
40 第2の封止材
図1
図2
図3
図4