(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957360
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
H02K15/02 F
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-233832(P2012-233832)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-87163(P2014-87163A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】松林 敏
(72)【発明者】
【氏名】松永 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】明神 巌
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−95369(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102004008567(DE,A1)
【文献】
特開平6−22508(JP,A)
【文献】
実開平6−61413(JP,U)
【文献】
特開2005−20972(JP,A)
【文献】
特開2009−273202(JP,A)
【文献】
特開2004−136361(JP,A)
【文献】
特開2010−45921(JP,A)
【文献】
特開2012−70634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K15/02
B21D28/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチ角θ度で形成されたn個の磁極部を有し、特定位置にはかしめ部が形成され円周角360度をm分割した円弧角を有するセグメント鉄心片を、帯状鉄心材から分離して載置台上に載せる第1工程と、
前記載置台上に載せられた前記セグメント鉄心片をプッシャにて回転積層機構の積層位置まで搬送する第2工程と、
前記プッシャによって搬送された前記セグメント鉄心片を前記回転積層機構内でかしめ積層する第3工程と、
前記かしめ積層されたセグメント鉄心片を含む前記回転積層機構を360度/m回転させる第4工程と、
前記第1工程〜前記第4工程を繰り返して、前記セグメント鉄心片が環状に並べられた環状連結鉄心片を形成する第5工程と、
前記環状連結鉄心片が載った前記回転積層機構をθ・r度回転させる第6工程とを有し、
前記第5工程及び前記第6工程を繰り返して所定厚のかしめ積層された鉄心を造ることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
但し、rは1以上の整数、m、nは2以上の整数であって、θ・n・m=360度であり、rはnの整数倍でない。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記回転積層機構には内径ガイド部材が設けられ、前記セグメント鉄心片は前記プッシャで押されて前記内径ガイド部材に当接し、前記セグメント鉄心片の積層位置に搬送されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記第1工程での前記セグメント鉄心片は、該セグメント鉄心片の長手方向を前記帯状鉄心材の幅方向に合わせて、前記セグメント鉄心片を半抜きした後押し戻して、前記帯状鉄心材の外枠で保持して、前記載置台の上位置まで搬送され、前記帯状鉄心材から分離して前記載置台上に抜き落とすことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の積層鉄心の製造方法において、前記セグメント鉄心片が抜き落とされた前記外枠は、スクラップカッターによって小片化され、系外に排出されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心材は複数の前記セグメント鉄心片が連結部で連結され、前記載置台の直上まで搬送されて前記連結部で切断されて前記帯状鉄心材から分離した前記セグメント鉄心片が、前記載置台の上に独立配置されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心材の送り方向に対し、前記プッシャによる前記セグメント鉄心片の送り方向は交差していることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心材は予め製造されてリール巻きされていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の小型化が可能でかつ、プレス速度を上げることができるセグメント鉄心片積層方式による積層鉄心(回転子積層鉄心と固定子積層鉄心の場合がある)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁鋼板をプレス加工等して得られる円環状の薄板部材を、数十枚から数百枚積層した積層鉄心からなるモータコアが知られている。この薄板部材の厚みは0.15〜0.5mm程度であり、薄い程エネルギー効率が良好であるとされている。
更に、薄板部材の歩留りを改善するために、円環状の薄板部材を複数に分割した円弧状の薄板部材を組み合わせて製造した積層鉄心も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、円弧状の複数のセグメント鉄心片により1枚の円環状の薄板部材を構成し、これを多数積層することによって積層鉄心を製造する装置が開示されている。この発明において、円弧状のセグメント鉄心片の中心角は360度/pであり、p枚のセグメント鉄心片により1枚の円環状の薄板部材が構成される。隣接する各層の円環状の薄板部材は、それらを構成する各円弧状のセグメント鉄心片が、レンガ積みのように連結位置がずれて重なるように積層される。
【0004】
特許文献2には、各層が複数のセグメント鉄心片(円弧状部材)からなる環状の積層鉄心を製造する際に、半抜き及び平押し加工によってセグメント鉄心片を形成し、次に押し戻されたセグメント鉄心片を押し下げて鉄心材(薄板素材)から分離させ、この分離が行われる毎に、分離されたセグメント鉄心片を積層鉄心の所望位置に配置し、次のセグメント鉄心片の配置位置まで積層鉄心を所定角度だけ回転させ、これを繰り返して積層鉄心を完成させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3634801号公報
【特許文献2】特開2012−95369号公報
【特許文献3】特開昭63−080741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の積層鉄心の製造装置によれば、最終工程において、切断加工によりセグメント鉄心片を薄板素材から母型内に切り離すことと、母型の回転位置の位置決めとを同時に高い精度で制御する必要がある。従って、薄板素材及び母型の位置決め制御が複雑となり、金型が大型化し、それに伴ってプレス装置も大型化するため、装置コストが高くなり、これに伴い製品のコストも高くなる。
【0007】
特許文献2記載の製造装置によれば、最終工程において、鉄心材に押し戻すことにより形成されたセグメント鉄心片を押し下げて鉄心材から分離させ、積層ガイドに受け渡すだけでよいので、特許文献1の技術のように、鉄心材の送りピッチと、回転するダイの位置決めとを同時に高い精度で制御する必要がない。従って、最終工程を簡便に制御できるが、特許文献1と同様に、セグメント鉄心片連続体形成工程と、積層工程を同じ金型内で行っているため、金型が大型化し、それに伴うプレス装置の大型化は避けられず、装置コスト及び製品コストも高くなる。
【0008】
ところで、特許文献3において、一端に歯部と他端に基部を有する鉄心素材を形成した金型外で、鉄心素材を一巻毎に切断し、鉄心素材の切断端部同士を結合してリング状結合体を形成し、このリング状結合体を複数枚積層固定することで固定子積層鉄心を形成する方法が記載されている。
【0009】
この製造方法によれば、鉄心素材を形成する工程と、鉄心素材を一巻毎に切断し、リング状結合体を積層する工程は別の金型で行われるので、金型及びプレス装置の大型化は避けることができる。しかし、鉄心素材を一巻毎に切断するので切断箇所が一カ所しかなく、応力がその一カ所に集中し、リング状結合体がその真円度を保てないという問題がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、セグメント鉄心片を製造する金型外で、セグメント鉄心片を円環状に積層し、装置のより小型化を図り、更にプレス速度の向上が可能な積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、ピッチ角θ度で形成されたn個の磁極部を有し、特定位置にはかしめ部が形成され円周角360度をm分割した円弧角を有するセグメント鉄心片を、帯状鉄心材から分離して載置台上に載せる第1工程と、
前記載置台上に載せられた前記セグメント鉄心片をプッシャにて回転積層機構の積層位置まで搬送する第2工程と、
前記プッシャによって搬送された前記セグメント鉄心片を前記回転積層機構内でかしめ積層する第3工程と、
前記かしめ積層されたセグメント鉄心片を含む前記回転積層機構を360度/m回転させる第4工程と、
前記第1工程〜前記第4工程を繰り返して、前記セグメント鉄心片が環状に並べられた環状連結鉄心片を形成する第5工程と、
前記環状連結鉄心片が載った前記回転積層機構をθ・r度回転させる第6工程とを有し、
前記第5工程及び前記第6工程を繰り返して所定厚のかしめ積層された鉄心を造る。
但し、rは1以上の整数、m、nは2以上の整数であって、θ・n・m=360度であり、rはnの整数倍でない。
【0012】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記回転積層機構には内径ガイド部材が設けられ、前記セグメント鉄心片は前記プッシャで押され前記内径ガイド部材に当接し、前記セグメント鉄心片の積層位置に搬送される。
【0013】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記第1工程での前記セグメント鉄心片は、該セグメント鉄心片の長手方向を前記帯状鉄心材の幅方向に合わせて、前記セグメント鉄心片を半抜きした後押し戻して、前記帯状鉄心材の外枠で保持して、前記載置台の上位置まで搬送され、前記帯状鉄心材から分離して前記載置台上に抜き(突き)落とす。
【0014】
第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記セグメント鉄心片が抜き落とされた外枠は、スクラップカッターによって小片化され、系外に排出される。
【0015】
第5の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心材は複数の前記セグメント鉄心片が連結部で連結され、前記載置台の直上まで搬送されて前記連結部で切断されて前記帯状鉄心材から分離した前記セグメント鉄心片が、前記載置台の上に独立配置される。
【0016】
第6の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第5の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心材の送り方向に対し、前記プッシャによる前記セグメント鉄心片の送り方向は交差している。
【0017】
そして、第7の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第5、第6の積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心材は予め製造されてリール巻きされている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る積層鉄心の製造方法においては、以下のような効果を有する。
(1)従来技術では、セグメント鉄心片を積層する金型とセグメント鉄心片を形成する金型とを同じ金型内で行っていたので、金型が大型化し、装置コストも高くなっていたが、本発明ではセグメント鉄心片を形成する工程(即ち、成形用の金型)を積層用の金型外で行うので、金型を小型化でき、装置コストの低減を図ることができる。
(2)また、一つの積層装置(積層鉄心の製造装置)で複数品種の製品(積層鉄心)に対応することが可能であり、個別に積層装置を用意する必要がない。
【0019】
(3)従来装置では、積層工程をセグメント鉄心片を形成する工程と同じ金型で行っていたため、プレス速度を上げることができなかったが、本発明では、セグメント鉄心片を形成する工程を積層用の金型外で行うので、プレス速度を上げることができる。
(4)そして、この積層鉄心の製造方法によって製造された積層鉄心は、巻きコアに比較して隣り合うセグメント鉄心片の連結部が分離されているので、応力が分散し、コアの真円度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した積層鉄心の製造装置の主要構成を示す平面図である。
【
図2】同積層鉄心の製造装置の主要構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用する積層鉄心10は、半径方向外側に多数の磁極部11を有する。隣り合う磁極部11はピッチ角θ度で形成され、一回り(円周角)360度の角度を有する環状連結鉄心片12は複数(m)のセグメント鉄心片14に等分割されている。即ち、一つのセグメント鉄心片14にはn個の磁極部11を有し、θ・n・m=360度となる。なお、この実施の形態では半径方向外側に磁極部11を有するが、半径方向内側に磁極部が形成される積層鉄心であってもよい。また、m、nは2以上の整数である。各磁極部11は磁石挿入孔11aが形成されている。
【0022】
この積層鉄心10は、薄い磁性鋼板からなる帯状鉄心材13からセグメント鉄心片14を形成し、m枚(この実施の形態では5枚)のセグメント鉄心片14を用いて一つの環状連結鉄心片12を形成し、この環状連結鉄心片12を所定枚数かしめ積層して所定厚みの積層鉄心10を形成している。この場合、隣り合うセグメント鉄心片14の連結部が同一円周角度位置にあると、組み立て後も容易に分解するので、上下に隣り合う1又は複数枚毎の環状連結鉄心片12の連結部の位置をθ・r度ずらして積層している。ここで、rは1以上の整数であって、nの整数倍ではない。
【0023】
次に、
図1〜
図3を参照しながら、この積層鉄心の製造装置16について説明する。
図1、
図2に示すように、積層鉄心の製造装置16は、周囲を4本の円柱状の支持部材17で保持されたベースプレート18及び下部プレート19を有し、これらは図示しない支持枠に固定配置されている。4つの支持部材17にはベースプレート18と下部プレート19の間に設けられた昇降プレート20が昇降可能に設けられている。
【0024】
この昇降プレート20の両側には左右対となる昇降ロッド22、23の上部が固定され、この昇降ロッド22、23の下部には昇降手段24、25が設けられている。この昇降手段24、25は内部に駆動モータを有し、この駆動モータを同期させて動かすことによって、左右の昇降ロッド22、23を同期して昇降させ、昇降プレート20を水平状態を保ちながら昇降させている。
【0025】
昇降プレート20には軸受27を介して回転プレート28が設けられ、回転プレート28にはコア載置台29が軸心を合わせて搭載され、コア載置台29には内径ガイド部材30が設けられている。この内径ガイド部材30は、積層鉄心10の内径を決めるもので、各セグメント鉄心片14の内側が単独の状態では当接、環状連結鉄心片12となった場合は、内径ガイド部材30と環状連結鉄心片12及び積層鉄心10との間に僅少の隙間が形成されている。なお、内径ガイド部材30は同一円周上に並べて配置された複数の立設されたロッド材30a及びロッド材30aの上端に連結された円板30bとを有している。
【0026】
また、回転プレート28には軸31が設けられ、カップリング32によって下部の回転用モータ33の出力軸34に連結されている。この回転用モータ33は支持プレート33a及び複数の支持ロッド33bによって昇降プレート20に固定されている。
従って、回転用モータ33を駆動すると、回転プレート28が回転し、昇降手段24、25を駆動すると、昇降プレート20が昇降し、これらのモータにはそれぞれサーボモータを使用しているので、コア載置台29の上に載った積層鉄心10(組み立て中も含む)を所定角度回転し、所定高さに昇降する。これらと前記した内径ガイド部材30を有して、セグメント鉄心片14を順次回転して積層する回転積層機構35が形成されている。
なお、下部プレート19には回転用モータ33が自由に昇降できる貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0027】
コア載置台29は軸31の軸心を中心として設けられ、コア載置台29の外側位置には帯板鉄心材13に形成されたセグメント鉄心片14を所定位置に順次搬入する図示しない搬入手段が設けられている。
帯状鉄心材13には、帯状鉄心材13の幅方向にセグメント鉄心片14の長手方向を合わせて、僅少の隙間を有してセグメント鉄心片14が多数配置されている。このセグメント鉄心片14は、帯状鉄心材13に対して、第1のプレスによって半抜きされ、第2のプレスによって帯状鉄心材13に押し戻されて、セグメント鉄心片14の周囲が容易に分離可能な状態で、帯状鉄心材13の外枠(スケルトン)に繋がっている。
【0028】
セグメント鉄心片14を分離可能に有する帯状鉄心材13は、両側に設けられているパイロット孔36を用いて前記した搬入手段によって、突き落とし治具37、スクラップカッター38に送られる。
突き落とし治具37はブロック40を有して、載置台42上にセグメント鉄心片14を突き落として(抜き落として)いる。
【0029】
セグメント鉄心片14が突き落とされた帯状鉄心材13の外枠は、剪断刃43、44を有するスクラップカッター38によって短く切断されスクラップ45となり、排出コンベア46上に落下し、これに繋がるシュータ47によって系外に排出される。なお、48は排出コンベア46を駆動するモータを示す。また、ブロック40でセグメント鉄心片14を突き落とした後、帯状鉄心材13の外側は所定距離搬送され、スクラップカッター38に載せることができるようになっている。なお、ブロック40はセグメント鉄心片14を落とすだけで十分であるので、セグメント鉄心片14より小さければよく、セグメント鉄心片14と同一形状でなくてもよい。
【0030】
載置台42上に載ったセグメント鉄心片14を、回転積層機構35の所定位置まで搬送するプッシャ49が設けられている。プッシャ49は、回転駆動する減速モータ50と、減速モータ50に設けられたアーム51と、アーム51の先部に設けられた進退部材52と、進退部材52によって進退する鉄心片押し出し部材53とを有し、載置台42上に突き落とされたセグメント鉄心片14の長手方向両側を後ろから押して、回転プレート28に載ったコア載置台29上に設けられた、組み立て中の積層鉄心10の所定角度位置に搬送している。
【0031】
ここで、積層鉄心10の所定角度位置とは、1又は複数のセグメント鉄心片14が環状連結鉄心片12を形成していない場合は、一つ前に積層されて、360度/m回転させたセグメント鉄心片14の終端部に、新しく積層しようとするセグメント鉄心片14の始端部が当接する位置となるが、m個のセグメント鉄心片14が環状連結鉄心片12を形成している場合は、環状連結鉄心片12をθ・r度回転させた位置となる。なお、ここで、θ・r度は、360/mに一致しないことを条件とする。
【0032】
以上の組み立て途中の積層鉄心10の回転角の制御は、回転用モータ33を制御することによって行う。また、組み立て途中の積層鉄心10の上面の位置は、m個のセグメント鉄心片14が環状連結鉄心片12を形成した際に、昇降手段24、25に予め設定したおいた環状鉄心片12の一枚の厚み分降下させることによって、常時一定の高さを保持するようにする。
【0033】
そして、プッシャ49によって押されて、位置決め部材としての機能を有する内径ガイド部材30に当接状態で配置されたセグメント鉄心片14は、それぞれの磁極部11の位置と予め形成されたかしめ部54との位置を合わせて、昇降するかしめ金型56(回転積層機構35とは独立している)によって、組み立て中の積層鉄心10にかしめ積層される。ここで、かしめ部54は、周知の半抜きかしめであっても、V字かしめであってもよいが、セグメント鉄心片14が形成される段階で形成されている。なお、かしめ部54は全て同一半径位置にあって、磁極部11の形成角度θに合わせて、又はθの整数倍(具体的にはθ・r)に等間隔で形成されるのがよい。
【0034】
以上の積層鉄心の製造装置16を用いた積層鉄心の製造方法について説明する。まず、ピッチ角θ度で形成されたn個の磁極部11を有し、特定位置にはかしめ部54が形成され円周角360度をm分割した円弧角を有するセグメント鉄心片14を帯状鉄心材13に、金型による半抜き加工及び押し戻し加工を行って連続的に形成する。この場合、セグメント鉄心片14の長さ方向と帯状鉄心材13の幅方向を合わせておく。
【0035】
この帯状鉄心材13をパイロット孔36を利用して正確に位置決めしながら搬送する搬送手段によって、突き落とし治具37の下位置まで搬送し、突き落とし治具37(ブロック40)によってセグメント鉄心片14を分離して載置台42の所定位置に載せる。そして、載置台42上に載せられたセグメント鉄心片14をプッシャ49にて回転積層機構35の積層位置、即ちかしめ金型56の位置まで搬送する。この場合、セグメント鉄心片14は内径ガイド部材30に密接又は当接することになる。
【0036】
次に、かしめ金型56を降下させ、セグメント鉄心片14を、下位置にあって位相がθ・r度ずれたセグメント鉄心片14にかしめ積層する。そして、かしめ積層されたセグメント鉄心片14を含む回転積層機構35を360度/m回転させ、この動作(セグメント鉄心片14の搬入、かしめ積層、及び積層途中の積層鉄心10の回転)を繰り返して、セグメント鉄心片14が環状に並べられた環状連結鉄心片12を形成する。
【0037】
次に、環状連結鉄心片12が載った回転積層機構35をθ・r度回転させて、上下にセグメント鉄心片14の円周方向にある連結部(当接部)が上下に重ならない積層鉄心10を形成する。なお、セグメント鉄心片14が除去された帯状鉄心材13(外枠)は、そのままスクラップカッター38まで搬送されて、小片化し、搬出コンベア46及びシュータ47によって外部に搬出される。
以上の工程を、環状連結鉄心片12が所定枚数となるまで、即ち、積層鉄心10が所定厚みとなるまで繰り返して行う。
【0038】
続いて、
図4を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。
第1の実施の形態においては、幅広の帯状鉄心材13を用い、帯状鉄心材13の幅方向にセグメント鉄心片14の長手方向を合わせて、複数のセグメント鉄心片14を形成したが、本発明の第2の実施の形態における積層鉄心の製造方法においては、円弧状のセグメント鉄心片60の半径方向の幅より少し幅の広い磁性材料からなる帯状の薄板条材61を用い、プレス装置62によって、各セグメント鉄心片60が連結部63で連結された帯状鉄心材65を形成する。
【0039】
この帯状鉄心材65は、プレス装置62によって予め造られ、リール巻きされて保管されている。この帯状鉄心材65を使用する場合は、リール巻き状態から解き、必要であるなら矯正ローラ等で各セグメント鉄心片60を平面状にした後、搬送台67に載せてプッシャ搬送位置(載置台の真上)まで間欠送りされ、連結部63は切断金型64で切断されて単独のセグメント鉄心片60とする。この場合、帯状鉄心材65の送り方向と、各セグメント鉄心片60をプッシャ68でかしめ金型69へ送る方向とは直交している。
なお、
図4において、70は積層鉄心を、71は回転テーブルを示す。また、リール巻きせずにプレス装置62から直接搬送台67に載せて、プッシャ68まで送ってもよい。
【0040】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、前記実施の形態においては、駆動源としてモータを使用しているが、油圧源又は空圧源で動くアクチュエータであってもよい。
また、内径ガイド部材は複数のロッド材を主体として構成したものであるが、環状又は複数の円弧状材料を並べたものであってもよい。
前記実施の形態においては、回転子積層鉄心についてその製造方法を説明したが、磁極が半径方向外側又は内側にある固定子積層鉄心であっても本発明は適用される。
【符号の説明】
【0041】
10:積層鉄心、11:磁極部、11a:磁石挿入孔、12:環状連結鉄心片、13:帯状鉄心材、14:セグメント鉄心片、16:積層鉄心の製造装置、17:支持部材、18:ベースプレート、19:下部プレート、20:昇降プレート、22、23:昇降ロッド、24、25:昇降手段、27:軸受、28:回転プレート、29:コア載置台、30:内径ガイド部材、30a:ロッド材、30b:円板、31:軸、32:カップリング、33:回転用モータ、33a:支持プレート、33b:支持ロッド、34:出力軸、35:回転積層機構、36:パイロット孔、37:突き落とし治具、38:スクラップカッター、40:ブロック、42:載置台、43、44:剪断刃、45:スクラップ、46:排出コンベア、47:シュータ、48:モータ、49:プッシャ、50:減速モータ、51:アーム、52:進退部材、53:鉄心片押し出し部材、54:かしめ部、56:かしめ金型、60:セグメント鉄心片、61:薄板条材、62:プレス装置、63:連結部、64:切断金型、65:帯状鉄心材、67:搬送台、68:プッシャ、69:かしめ金型、70:積層鉄心、71:回転テーブル