特許第5957377号(P5957377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957377
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】熱媒体組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   C09K5/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-286062(P2012-286062)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125627(P2014-125627A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴広
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 務
(72)【発明者】
【氏名】木村 信啓
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−261490(JP,A)
【文献】 特開平5−9465(JP,A)
【文献】 特開2004−286069(JP,A)
【文献】 特表平3−502465(JP,A)
【文献】 特公昭48−33879(JP,B1)
【文献】 米国特許第1882809(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/10、
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフェニル(A)およびジフェニレンオキサイド(B)を少なくとも含む熱媒体組成物であって、
ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、o−トリフェニル、m−トリフェニル、p−トリフェニルの6成分から選ばれた少なくとも1以上の芳香族化合物(C)をさらに含み、
前記ビフェニル(A)を15〜50質量%、前記ジフェニレンオキサイド(B)を10〜40質量%、前記芳香族化合物(C)を20〜75質量%の割合で含むとともに、ジフェニルエーテルを含まないことを特徴とする熱媒体組成物。
【請求項2】
前記ビフェニル(A)を15〜40質量%、前記ジフェニレンオキサイド(B)を10〜40質量%および前記芳香族化合物(C)を20〜75質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の熱媒体組成物。
【請求項3】
前記ビフェニル(A)を20〜40質量%、前記ジフェニレンオキサイド(B)を10〜40質量%およびナフタレンおよび/またはフェナントレンから選択される芳香族化合物(C)を20〜70質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の熱媒体組成物。
【請求項4】
太陽熱発電に使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱媒体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱媒体は、高温発熱反応の除熱用や蓄熱体、太陽熱発電などの用途において広く使用され、常温から高温の広い温度領域で安定性があることが望まれている。このような熱媒体として、従来、芳香族炭化水素系熱媒体組成物、例えばビフェニルおよびジフェニルエーテルを含む熱媒体組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、高温での安定性に優れる熱媒体として、ジフェニルエーテルにジフェニレンオキサイドを加えた組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、ジフェニレンオキサイドの安定化作用は、ジフェニルエーテルにジフェニルやナフタレン等を加えた共融混合物にも適用できることが記載されている。
【0004】
さらに、フェニル基を2〜5個有するアリール化合物の混合物からなる熱媒体、例えば、ビフェニル、ジフェニルエーテル、o−ターフェニル、およびm−ターフェニル等の四成分混合物が、凝固点降下により低温でのポンプ搬送性に優れることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ならびに、ジベンゾフランおよびナフタレンからなる群から選択される少なくとも1成分を所定の割合で含む熱媒体組成物が、凝固点降下によりメンテナンスや作業等を軽減できる旨開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
さらにまた、ビフェニル、ジフェニルエーテルおよびジフェニレンオキサイドからなる熱媒体組成物が、耐熱性に優れるとともに、凝固点降下により取り扱い性も容易である旨開示されている(例えば、特許文献5参照)。特許文献5では、該熱媒体組成物にはフェナントレンやメチルナフタレンが少量含まれていてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第1882809号明細書
【特許文献2】米国特許第1874256号明細書
【特許文献3】米国特許第H1393号公報
【特許文献4】特開平01−261490号公報
【特許文献5】特開平05−009465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、太陽熱発電等の用途で、発電効率向上のため、従来使用される温度より高温領域で使用可能な熱媒油の開発ニーズがより高まっているが、特許文献1〜5に記載の芳香族化合物を主成分とする熱媒体組成物は、400℃未満では十分な耐熱性を示すものの、400℃を超える温度での使用を目的としたものではなく、実際、400℃付近で使用した場合、熱安定性が十分でないため、より高温領域における熱媒体組成物としての使用は困難であった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐熱性に優れる熱媒体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、熱媒体組成物を400℃付近で連続使用した場合、熱媒体組成物中の成分の劣化とともに分解フェノールの発生が金属腐食を誘発し、熱媒体組成物の安定的な長期使用を制限していることに着目し、分解フェノール発生の大きな原因が熱媒体組成物中に配合されるジフェニルエーテルであることを見出した。また、ビフェニル及びジフェニレンオキサイドに特定の芳香族化合物を所定の割合で配合した組成物が、耐熱性が向上し、分解フェノールが生成しにくいとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の熱媒体組成物は、ビフェニル(A)およびジフェニレンオキサイド(B)を少なくとも含む熱媒体組成物であって、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、o−トリフェニル、m−トリフェニル、p−トリフェニルの6成分から選ばれた少なくとも1以上の芳香族化合物(C)をさらに含み、前記ビフェニル(A)を15〜50質量%、前記ジフェニレンオキサイド(B)を10〜40質量%、前記芳香族化合物(C)を20〜75質量%の割合で含むとともに、ジフェニルエーテルを含まないことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の熱媒体組成物は、上記発明において、前記ビフェニル(A)を15〜40質量%、前記ジフェニレンオキサイド(B)を10〜40質量%および前記芳香族化合物(C)を20〜75質量%の割合で含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の熱媒体組成物は、上記発明において、前記ビフェニル(A)を20〜40質量%、前記ジフェニレンオキサイド(B)を10〜40質量%およびナフタレンおよび/またはフェナントレンから選択される芳香族化合物(C)を20〜70質量%の割合で含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の熱媒体組成物は、上記発明において、太陽熱発電に使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱媒体組成物は400℃以上の高温下で熱安定性を損なうことなく、且つ分解フェノールを生成しないため、長期間の連続使用が可能であり、かつ、機器を腐食する可能性も小さい。このように有機系熱媒体では最高の耐熱温度を示すことから高温発熱反応の除熱用や蓄熱体、太陽熱発電熱媒体などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、下記で説明する実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
本発明の熱媒体組成物は、ビフェニル(A)およびジフェニレンオキサイド(B)を少なくとも含み、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、o−トリフェニル、m−トリフェニル、p−トリフェニルの6成分から選ばれた少なくとも1以上の芳香族化合物(C)をさらに含むとともに、ジフェニルエーテルを含まない熱媒体組成物である。
【0017】
本発明の熱媒体油組成物の原料のうち、ジフェニレンオキサイド(B)、ならびに芳香族化合物(C)であるナフタレン、フェナントレン、およびアントラセンは、コールタールなどに含まれ、これらの融点はそれぞれ83℃、82℃、100℃、218℃と高く常温では固体である。また、ビフェニル(A)、および芳香族化合物(C)であるトリフェニルは、ベンゼン同士を反応させることで得られる。トリフェニルは3つの異性体、o−トリフェニル、m−トリフェニル、p−トリフェニルを含むが、ビフェニル(m.p.69℃)と同様に全て常温では固体(m.p.56℃、84℃、212℃)であり、いずれの化合物も単独では熱媒体として不適当である。
【0018】
本発明者らは、ビフェニル(A)とジフェニレンオキサイド(B)に、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、o−トリフェニル、m−トリフェニルおよびp−トリフェニルの6成分から選ばれた少なくとも1以上の芳香族化合物(C)を配合し、かつジフェニルエーテルを含まない組成物とすることで、システムで使用可能な程度に組成物の凝固点を降下でき、かつ、高温、例えば400℃程度においても腐食性の分解物の生成を抑制できることを見出した。
【0019】
本発明の熱媒体組成物は、ビフェニル(A)を15〜50質量%、好ましくは20〜45質量%、より好ましくは25〜40質量%含む。ビフェニル(A)の含有量が15質量%より少ないと、他成分の配合割合が増加して結果的に凝固しやすくなり、50質量%より多いと、ビフェニルの配合割合が増加して同様に凝固しやすくなる。
【0020】
本発明の熱媒体組成物は、ジフェニレンオキサイド(B)を10〜40質量%、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%含む。ジフェニレンオキサイド(B)の含有量が10質量%より少ないと、他成分の配合割合が増加して結果的に凝固しやすくなり、40質量%より多いと、ジフェニレンオキサイドの配合割合が増加して同様に凝固しやすくなる。
【0021】
本発明の熱媒体組成物は、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、o−トリフェニル、m−トリフェニルおよびp−トリフェニルの6成分から選ばれた少なくとも1以上の芳香族化合物(C)を20〜75重量%、好ましくは20〜60質量%含む。ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、o−トリフェニル、m−トリフェニルおよびp−トリフェニルの6成分から選ばれた少なくとも1以上の芳香族化合物(C)の含有量が20質量%より少ないと他成分の配合割合が増加して結果的に凝固しやすくなり、75質量%より多いと芳香族化合物(C)の配合割合が増加して同様に凝固しやすくなる。
【0022】
本発明の熱媒体組成物は、好ましくは、芳香族化合物(C)としてナフタレンおよび/またはフェナントレンを20〜60質量%含み、より好ましくは20〜55質量%含む。芳香族化合物(C)であるナフタレンおよび/またはフェナントレンの含有量が20質量%より少ないと、他成分の配合割合が増加して結果的に凝固しやすくなり、60質量%より多いとナフタレンおよびまたはフェナントレンの配合割合が増加して同様に凝固しやすくなる。
【0023】
また、本発明の熱媒体組成物は、ジフェニルエーテルを含まない。本明細書において、ジフェニルエーテルを含まないとは、本発明の熱媒体組成物中のジフェニルエーテルの含有量が5質量%以下であることを意味する。熱媒体組成物中のジフェジルエーテルの含有量は略零であることが好ましい。ジフェジルエーテルの含有量が5質量%を超えると、分解フェノールの生成量が増加する傾向にあるためである。
【0024】
本発明の熱媒体組成物の成分である、ビフェニル(A)、ジフェニレンオキサイド(B)、およびナフタレン、フェナントレン、アントラセン、o−トリフェニル、m−トリフェニル、p−トリフェニルの6成分から選ばれた少なくとも1以上の芳香族化合物(C)の合計の含有量は、80.0〜99.9質量%、好ましくは90〜99.9質量%、より好ましくは95〜99.9質量%である。合計量が80.0質量%以下であると組成物の凝固点が高くなり取り扱いが困難となったり、耐熱性が低下する可能性がある。
【0025】
本発明の熱媒体組成物において、製造法には特に制限はないが、ビフェニル、およびトリフェニルは、一般にパラジウム触媒によりベンゼンを原料として製造される。ベンゼンを用いてビフェニル、およびトリフェニルを製造する場合、ビフェニル、およびトリフェニルに副生するクォーターフェニル、ポリフェニル等が微量含まれても差し支えない。ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェントレン、およびアントラセンは、コールタールなどに含まれ、蒸留により得ることができる。ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェントレン、およびアントラセンには、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、フルオレン、メチルナフタレン、メチルフェナントレン、ジベンゾチオフェン、アセナフテンやカルバゾール、フェニルジベンゾフラン等が微量含まれても差し支えない。
【0026】
本発明の熱媒体組成物は、400℃以上の高温下で熱安定性を損なうことなく、且つ分解フェノールを生成せず連続使用が可能である。熱媒体組成物の耐熱性は、例えば430℃の熱安定性試験で評価することができる。熱媒体組成物の熱安定性試験は、熱媒体組成物を密閉可能な容器内に投入し、容器内を窒素で封入して容器内圧力を2MPa(室温)に調整した後、熱媒体組成物を投入した容器を430℃で96時間保持する。熱媒体組成物の耐熱性は、熱媒体組成物の分解率、生成した分解フェノール量、試験後の容器内の圧力上昇で評価する。
【0027】
本発明の熱媒体組成物において、熱安定性試験による分解率は、5.0%以下であることが好ましい。熱媒体組成物の分解率は、ガスクロマトグラフィー質量分析で測定することができる。以下の方法により測定した分解率により、熱安定性試験後に生成した液体成分の割合を評価することができる。分析条件の一例を以下に示す。
装置:HP−6890
カラム:J&W DB−1(30m×0.25mmφ)
キャリアガス:ヘリウム
注入量:0.2μL
分解率は以下の式により求めた。
分解率(%)=(試験後に発生したピーク面積の総和)/(全ピーク面積の総和)×100
【0028】
また、生成した分解フェノール量は、0.20%以下であることが好ましい。分解フェノール量は、以下の式により求めた。
分解フェノール量(%)=(試験後に発生した分解フェノールのピーク面積)/(全ピーク面積の総和)×100
【0029】
本発明の熱媒体組成物において、熱安定性試験後の容器内の圧力上昇は、0.1MPa以下であることが好ましい。圧力上昇は、試験後の容器を室温に冷却した後の試験前の圧力との差分値である。圧力上昇により、熱安定性試験後に分解生成した気体成分の割合を評価することができる。
【0030】
本発明の熱媒体組成物の融点は、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは25℃以下である。25℃以下であることが好ましいが、25℃を超える場合であっても、例えば蓄熱槽のような補助保温システムを併用すれば問題なく使用することができる。
【0031】
本発明の熱媒体組成物は、有機系熱媒体としては最高の耐熱温度を示すことから高温発熱反応の除熱用や蓄熱体、太陽熱発電、例えば集光式の太陽熱発電用の熱媒体などに有用である。本発明の熱媒体組成物は、例えば、半円筒状の集光鏡を用いて、鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体により蒸気を製造し発電するパラボリック・トラフ方式の太陽熱発電の熱媒体として使用することができる。また、平面鏡を用いて、中央部に設置されたタワーにある集熱器に太陽光を集中させることで集光し、その熱で発電するタワー式太陽熱発電でも使用可能である。なお、本発明の熱媒体組成物の沸点は220〜300℃程度であるので、沸点以上の高温で使用する場合は加圧して使用すればよい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例により本発明の実施態様を例示するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
以下の実施例において、以下の化合物を使用した。
ビフェニル(BP、東京化成工業社製 純度99.5%品)
ジフェニレンオキサイド(DPNO、東京化成工業社製 純度97%品)
ナフタレン(NA、東京化成工業社製 純度98%品)
アントラセン(AN、東京化成工業社製 純度97%品)
o‐トリフェニル(o−TER、東京化成工業社製 純度99%品)
m‐トリフェニル(m−TER、東京化成工業社製 純度98%品)
p‐トリフェニル(p‐TER)東京化成工業社製 純度99%品)
フェナントレン(PH、アルドリッチ社製 純度98%品)
ジフェニルエーテル(DPO、東京化成工業社製 純度99%品)
o‐ヒドロキシビフェニル(OPP、和光純薬社製 純度99%品)
1,1−ジフェニルエタン(DPE、JX日鉱日石エネルギー社製)
ベンジルトルエン異性体混合物(BT、試作品:o−体4質量%、m−体59質量%、p−体37質量%)
ジベンジルトルエン(DBT、総研テクニクス社製 NeoSK-OIL 1400)
フェニルキシリルエタン(PXE、JX日鉱日石エネルギー社製)
3−エチルビフェニル(EBP、東京化成工業社製 純度98%品)
【0034】
(実施例1)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、アントラセン、o‐トリフェニル、m‐トリフェニル、p−トリフェニルを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物1を調製した。内径14mm、幅65mm、高さ158mmのU字配管に熱媒体組成物を20g詰め、U字配管内に窒素を封入して圧力を2MPaに調整した後、430℃で96時間熱安定性試験を行った。試験前の熱媒体組成物の25℃、30℃、35℃での外観を目視で判別し(○:液状、×:固形分あり)、試験後の熱媒体組成物についてガスクロマトグラフィー質量分析を行い、分解率(%)、分解フェノール量(%)および圧力上昇を求めた。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例2)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェナントレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物2を調製した。調製した熱媒体組成物2を用いた以外、実施例1と同様に試験を行なった。結果を同じく表1に示す。
【0036】
(実施例3)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物3を調製した。調製した熱媒体組成物3を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。
【0037】
(実施例4)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェナントレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物4を調製した。調整した熱媒体組成物4を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。
【0038】
(実施例5)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェナントレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物5を調製した。調製した熱媒体組成物5を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。
【0039】
(実施例6)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェナントレン、ジフェニルエーテルを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物6を調製した。調整した熱媒体組成物6を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。ジフェニルエーテルを5質量%含む熱媒体組成物6は、わずかに分解フェノールが生成するものの(0.02%)、十分な熱安定性を示す。
【0040】
(実施例7)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、アントラセン、o‐トリフェニル、m‐トリフェニル、フェナントレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物7を調製した。調製した熱媒体組成物7を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。
【0041】
(比較例1)
米国特許第1882809号公報に開示される処方、すなわち、ビフェニル、ジフェニルエーテルを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。分解率が6.4%となり、実施例のどれよりも熱安定性が低く、分解フェノールも0.34質量%生成した。
【0042】
(比較例2)
特開平1−261490号公報に開示される処方、すなわち、ビフェニル、o‐トリフェニル、m‐トリフェニル、ジフェニルエーテルを下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。分解率が5.3%となり、実施例のどれよりも熱安定性が低く、分解フェノールも0.27質量%生成した。
【0043】
(比較例3)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。ビフェニルの割合が50質量%より多い比較例3の熱媒体組成物は、30℃で液状ではないことが確認された。
【0044】
(比較例4)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。ジフェニレンオキサイドの割合が40質量%より多い比較例4の熱媒体組成物は、30℃で液状ではないことが確認された。
【0045】
(比較例5)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェナントレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。芳香族化合物(C)、すなわちナフタレンおよびフェナントレンの合計量が75質量%より多い比較例5の熱媒体組成物は、30℃で液状ではないことが確認された。
【0046】
(比較例6)
ビフェニル、フェナントレン、o―ヒドロキシビフェニルを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。熱分解試験後の圧力上昇が実施例のどれよりも高いことがわかった。
【0047】
(比較例7)
1,1−ジフェニルエタンを用いて、400℃の試験温度で実施した以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。熱分解試験後の圧力上昇が実施例のどれよりも高いことがわかった。
【0048】
(比較例8)
特開平1−200510号の参考製造例の追試において得られたベンジルトルエン異性体混合物を用いて、400℃の試験温度で実施した以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。熱分解試験後の圧力上昇が実施例のどれよりも高いことがわかった。
【0049】
(比較例9)
ジベンジルトルエンを用いて、400℃の試験温度で実施した以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。熱分解試験後の圧力上昇が実施例のどれよりも高いことがわかった。
【0050】
(比較例10)
フェニルキシリルエタンを用いて、380℃の試験温度で実施した以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。熱分解試験後の圧力上昇が実施例のどれよりも高いことがわかった。
【0051】
(比較例11)
3−エチルビフェニルを用いて、400℃の試験温度で実施した以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。熱分解試験後の圧力上昇が実施例のどれよりも高いことがわかった。
【0052】
(比較例12)
米国特許第1882809号公報に開示される処方、すなわち、ビフェニル、ジフェニルエーテルを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。分解率が7.0%となり、実施例のどれよりも熱安定性が低く、分解フェノールも0.37質量%生成した。
【0053】
(比較例13)
特開平05−009465号公報に開示される処方、すなわち、ビフェニル、ジフェニレンオキサイド、ジフェニルエーテルを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。分解率が6.8%となり、実施例のどれよりも熱安定性が低く、分解フェノールも0.33質量%生成した。
【0054】
(比較例14)
特開平1−261490号公報に開示される処方、すなわち、ビフェニル、o‐トリフェニル、m‐トリフェニル、ジフェニルエーテルを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。分解率が3.9%となり、実施例のどれよりも熱安定性が低く、分解フェノールも0.20質量%生成した。
【0055】
(比較例15)
ビフェニル、ジフェニレンオキサイドを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。比較例15の熱媒体組成物は、30℃で液状ではないことが確認された。
【0056】
(比較例16)
ジフェニレンオキサイド、ナフタレン、フェナントレンを、下記表1の割合(質量%)となるように配合して熱媒体組成物を調製した。調整した熱媒体組成物を用いた以外、実施例1と同様に実施した。結果を同じく表1に示す。比較例16の熱媒体組成物は、30℃で液状ではないことが確認された。
【0057】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の熱媒体組成物は、より高温下での連続使用ができるため、高温発熱反応の除熱用や蓄熱体、太陽熱発電などに適している。本発明の熱媒体組成物を前記分野に使用することにより、長寿命化や発電効率の向上が可能になり、ランニングコストを低下できる。