特許第5957421号(P5957421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱マテリアル株式会社の特許一覧 ▶ 新日本非破壊検査株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5957421-ボイラ水管の厚さ測定方法 図000002
  • 特許5957421-ボイラ水管の厚さ測定方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957421
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】ボイラ水管の厚さ測定方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/02 20060101AFI20160714BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20160714BHJP
   G01B 17/02 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   F22B37/02 J
   G01N29/07
   G01B17/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-138994(P2013-138994)
(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-10813(P2015-10813A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591053856
【氏名又は名称】新日本非破壊検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】小隈 信博
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 慎平
(72)【発明者】
【氏名】庄司 和也
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】安田 泰夫
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 実公平04−005841(JP,Y2)
【文献】 特開平06−257705(JP,A)
【文献】 特開2013−117384(JP,A)
【文献】 特開2012−021631(JP,A)
【文献】 特開平10−238709(JP,A)
【文献】 特開平08−050118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/02
G01B 17/02
G01N 29/04 − 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ水管の長手方向の側面に点検孔を形成し、該点検孔にガイドパイプの基側を接続し、常時は前記ガイドパイプに閉止部材を取り付け、
前記ボイラ水管の厚さの測定を行う際は、前記閉止部材を前記ガイドパイプから外し、前記ガイドパイプの先側から超音波プローブを前記ボイラ水管内に挿入し、該超音波プローブを該ボイラ水管内で移動させ
しかも、前記ボイラ水管は立設状態であって、前記ガイドパイプの基側は、前記ボイラ水管の軸心を基準にして上向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、前記閉止部材は長尺のボルト部材であって、該ボルト部材を前記ガイドパイプにねじ込んだ際に、該ボルト部材の先側に空気溜まりが形成されないことを特徴とするボイラ水管の厚さ測定方法。
【請求項2】
ボイラ水管の長手方向の側面に点検孔を形成し、該点検孔にガイドパイプの基側を接続し、常時は前記ガイドパイプに閉止部材を取り付け、
前記ボイラ水管の厚さの測定を行う際は、前記閉止部材を前記ガイドパイプから外し、前記ガイドパイプの先側から超音波プローブを前記ボイラ水管内に挿入し、該超音波プローブを該ボイラ水管内で移動させ
しかも、前記ボイラ水管は立設状態であって、前記ガイドパイプの基側は、前記ボイラ水管の軸心を基準にして下向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、前記閉止部材は長尺のボルト部材であることを特徴とするボイラ水管の厚さ測定方法。
【請求項3】
ボイラ水管の長手方向の側面に点検孔を形成し、該点検孔にガイドパイプの基側を接続し、常時は前記ガイドパイプに閉止部材を取り付け、
前記ボイラ水管の厚さの測定を行う際は、前記閉止部材を前記ガイドパイプから外し、前記ガイドパイプの先側から超音波プローブを前記ボイラ水管内に挿入し、該超音波プローブを該ボイラ水管内で移動させ
しかも、前記ボイラ水管は水平状態又は傾斜状態であって、前記ガイドパイプの基側は、前記ボイラ水管の軸心を基準にして5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、前記閉止部材は長尺のボルト部材であって、該ボルト部材を前記ガイドパイプにねじ込んだ際に、該ボルト部材の先側に空気溜まりが形成されないことを特徴とするボイラ水管の厚さ測定方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のボイラ水管の厚さ測定方法において、前記ボイラ水管は複数あって、全て又は管理対象となる一部の前記ボイラ水管に前記ガイドパイプを設けることを特徴とするボイラ水管の厚さ測定方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のボイラ水管の厚さ測定方法において、前記ガイドパイプは直状であることを特徴とするボイラ水管の厚さ測定方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のボイラ水管の厚さ測定方法において、測定した前記ボイラ水管の厚みを、基準となるデータと比較して前記ボイラ水管の経年変化の調査を行うことを特徴とするボイラ水管の厚さ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ボイラ水管の経年変化の調査の一環として行う、内挿式超音波厚さ測定を用いたボイラ水管の厚さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小径のボイラ水管の経年変化の調査の一環として、例えば、特許文献1に記載の超音波探傷装置を使用して、ボイラ水管の内挿式超音波厚さ測定が実施されている。ここで、ボイラ水管の内挿式超音波厚さ測定とは、ボイラ水管の一部を切断して点検孔を設け、この点検孔からボイラ水管内に超音波探傷プローブを挿入し、超音波探傷プローブから超音波をボイラ水管の内周面に対して垂直にかつ周方向に沿って照射しながら、超音波探傷プローブをボイラ水管内で移動させることにより、ボイラ水管の周方向に沿った厚さ分布を、ボイラ水管の軸心方向に沿って求めることをさす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3352653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボイラ水管を切断して点検孔を形成すると、厚さ測定後にボイラ水管を復旧する必要がある。このため、ボイラ水管の厚さ測定を実施する場合、ボイラ水管の切断作業やボイラ水管の復旧作業等の付帯作業に要する期間を確保する必要がある。その結果、ボイラ水管の厚さ測定に要する工期が長くなり、ボイラの稼働率が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、ボイラ水管の厚さ測定に伴う付帯作業を削減することにより、測定に要する工期を大幅に短縮してボイラ稼働率の向上を図ることが可能な内挿式超音波厚さ測定を用いたボイラ水管の厚さ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法は、ボイラ水管の長手方向の側面に点検孔を形成し、該点検孔にガイドパイプの基側を接続し、常時は前記ガイドパイプに閉止部材を取り付け、
前記ボイラ水管の厚さの測定を行う際は、前記閉止部材を前記ガイドパイプから外し、前記ガイドパイプの先側から超音波プローブを前記ボイラ水管内に挿入し、該超音波プローブを該ボイラ水管内で移動させ
しかも、前記ボイラ水管は立設状態であって、前記ガイドパイプの基側は、前記ボイラ水管の軸心を基準にして上向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、前記閉止部材は長尺のボルト部材であって、該ボルト部材を前記ガイドパイプにねじ込んだ際に、該ボルト部材の先側に空気溜まりが形成されない(即ち、空気溜まりの発生を防止する)。これにより、超音波プローブをボイラ水管の上側から挿入することができる。
【0007】
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法ボイラ水管の長手方向の側面に点検孔を形成し、該点検孔にガイドパイプの基側を接続し、常時は前記ガイドパイプに閉止部材を取り付け、
前記ボイラ水管の厚さの測定を行う際は、前記閉止部材を前記ガイドパイプから外し、前記ガイドパイプの先側から超音波プローブを前記ボイラ水管内に挿入し、該超音波プローブを該ボイラ水管内で移動させ、
しかも、前記ボイラ水管は立設状態であって、前記ガイドパイプの基側は、前記ボイラ水管の軸心を基準にして下向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、前記閉止部材は長尺のボルト部材である。これにより、超音波プローブをボイラ水管の下側から挿入することができる。
【0009】
前記目的に沿う第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法ボイラ水管の長手方向の側面に点検孔を形成し、該点検孔にガイドパイプの基側を接続し、常時は前記ガイドパイプに閉止部材を取り付け、
前記ボイラ水管の厚さの測定を行う際は、前記閉止部材を前記ガイドパイプから外し、前記ガイドパイプの先側から超音波プローブを前記ボイラ水管内に挿入し、該超音波プローブを該ボイラ水管内で移動させ、
しかも、前記ボイラ水管は水平状態又は傾斜状態であって、前記ガイドパイプの基側は、前記ボイラ水管の軸心を基準にして5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、前記閉止部材は長尺のボルト部材であって、該ボルト部材を前記ガイドパイプにねじ込んだ際に、該ボルト部材の先側に空気溜まりが形成されない(即ち、空気溜まりの発生を防止する)。これにより、超音波プローブをボイラ水管に挿入することができる。
【0010】
第1〜第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、前記ボイラ水管は複数あって、全て又は管理対象となる一部の前記ボイラ水管に前記ガイドパイプを設けることができる。
【0011】
第1〜第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、前記ガイドパイプは直状であることが好ましい。
【0012】
第1〜第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、測定した前記ボイラ水管の厚みを、基準となるデータと比較して前記ボイラ水管の経年変化の調査を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
第1〜第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法においては、ボイラ水管にガイドパイプを設け、常時はガイドパイプに閉止部材を取り付けることによりガイドパイプを塞いでボイラを稼働することができ、ボイラ水管の厚さの測定を行う際は、閉止部材をガイドパイプから外し、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管内に挿入することができるので、超音波プローブをボイラ水管に挿入するために従来必要であったボイラ水管の切断作業及び厚さ測定後のボイラ水管の復旧作業等の付帯作業を削減することができ、ボイラ水管の内挿式超音波厚さ測定に要する工期を大幅に短縮することが可能になる。そして、ボイラ水管の厚さ測定及びボイラ復旧に要する工期短縮が可能となるため、ボイラ水管の緊急点検に対しても容易に対応することが可能になる。
【0014】
第1の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、ボイラ水管は立設状態であって、ガイドパイプの基側を、ボイラ水管の軸心を基準にして上向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続するので、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管の上側からボイラ水管内に容易に挿入することができると共に、超音波プローブをボイラ水管内からガイドパイプを介して外部に容易に取り出すことができる。また、閉止部材が長尺のボルト部材であって、ボルト部材をガイドパイプにねじ込んだ際に、ボルト部材の先側に空気溜まりが形成されないので、ボイラの稼働効率を安定させることができる。
【0015】
第2の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、ボイラ水管は立設状態であって、ガイドパイプの基側を、ボイラ水管の軸心を基準にして下向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、閉止部材が長尺のボルト部材であるので、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管の下側からボイラ水管内に容易に挿入することができると共に、超音波プローブをボイラ水管内からガイドパイプを介して外部に容易に取り出すことができる。
【0016】
第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、ボイラ水管は水平状態又は傾斜状態であって、ガイドパイプの基側を、ボイラ水管の軸心を基準にして5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続するので、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管内に容易に挿入することができると共に、超音波プローブをボイラ水管内からガイドパイプを介して外部に容易に取り出すことができる。また、閉止部材が長尺のボルト部材であって、ボルト部材をガイドパイプにねじ込んだ際に、ボルト部材の先側に空気溜まりが形成されないので、ボイラの稼働効率を安定させることができる。
【0017】
第1〜第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、ボイラ水管が複数あって、全てのボイラ水管にガイドパイプを設ける場合、各ボイラ水管の厚さ測定を行うことで、ボイラ水管毎の経年変化の調査が可能になる。また、管理対象となる一部のボイラ水管にガイドパイプを設ける場合、低コストかつ効率的にボイラ水管の経年変化の調査が可能になる。これにより、ボイラの効果的な定期点検の時期の決定、ボイラ水管の効果的な保守管理を行うことができる。
【0018】
第1〜第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、ガイドパイプが直状である場合、ガイドパイプのボイラ水管に対する取り付けが容易にできると共に、超音波プローブのボイラ水管内への挿入及び取り出しが容易にできる。
【0019】
第1〜第3の発明に係るボイラ水管の厚さ測定方法において、測定したボイラ水管の厚みを、基準となるデータと比較してボイラ水管の経年変化の調査を行う場合、例えば、ボイラの定期点検時を利用して、付帯作業の発生を抑制してボイラ水管の厚さ測定を行うことができるので、経年変化の調査を容易かつ効率的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係るボイラ水管の厚さ測定方法が適用されるボイラ水管の説明図である。
図2】ボイラ水管の厚さ測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
先ず、本発明の一実施の形態に係るボイラ水管の厚さ測定方法が適用される立設状態のボイラ水管10a及び立設状態の他のボイラ水管10(図1参照)について説明する。
ボイラ水管10、10aは、ボイラ水管パネル11内に、予め設定された間隔を有して上下方向にそって複数配置されており、内部を水が通過している。各ボイラ水管10、10aの上端部は、建屋の梁に吊られており、これによりボイラ水管パネル11内における各ボイラ水管10、10aの配置が固定されている。更に、各ボイラ水管10、10aの長手方向の中間部は、ヘッダー14と連通している。そして、ボイラ水管10、10aの中で、管理対象に設定された一部の(例えば、ボイラ水管パネル11内の特定の位置に配置された)ボイラ水管10aの長手方向端部、例えば、上端板12より下側の側面には、直状のガイドパイプ16が取り付けられている。なお、ガイドパイプは、ボイラ水管の長手方向端部に限らず、長手方向のいずれの位置の側面にも取付け可能である。以下、詳細に説明する。
【0022】
ガイドパイプ16の基側は、ボイラ水管10aの側面に形成した長孔状の点検孔17に、ボイラ水管10aの軸心を基準にして上向きに5〜60度の範囲で傾斜させて、例えば、溶接により固着されている。ここで、図2に示すように、ボイラ水管10aの厚さを測定する際にガイドパイプ16を介してボイラ水管10aに挿入する超音波プローブ18の外周側には、超音波プローブ18をボイラ水管10a内に挿入した際、超音波プローブ18の中心位置をボイラ水管10aの中心位置に保持するため、円板状で外周面がボイラ水管10aの内周面に当接する調芯部材20が取り付けられている。このため、ガイドパイプ16の内径は、調芯部材20が通過可能となる寸法であること、ボイラ水管10aに形成した点検孔17を介して容易に接続可能であること等の制約から、例えば、ボイラ水管10aの内径と同一寸法に設定する。
【0023】
そして、ガイドパイプ16のボイラ水管10aに対する傾斜角度θは、5度以上60度以下であるので、図2に示すように、ガイドパイプ16を介して超音波プローブ18をボイラ水管10a内に容易に挿入することができる。なお、ボイラ水管10aに対するガイドパイプ16の傾斜角度θが5度未満では、ボイラ水管10aの側面に形成する点検孔17の長径Dの寸法が大きくなって好ましくない。一方、ボイラ水管10aに対するガイドパイプ16の傾斜角度θが60度を超えると、ガイドパイプ16からボイラ水管10a内に超音波プローブ18を挿入する際、超音波プローブ18の進行方向を大きく変えることが必要となり、しかも、超音波プローブ18の探触子収納部19の外周側には複数の(図2では2つ)円板状の調芯部材20(ボイラ水管10aの軸心位置に探触子収納部19の軸心位置を合わせる)が取り付けられているため、超音波プローブ18の移動操作が著しく困難になるので好ましくない。更に、場合によっては、超音波プローブ18のボイラ水管10a内への挿入が不可能になるという問題も生じる。
【0024】
ここで、符号21は音響ミラー部であり、回転中心軸を探触子収納部19の軸心位置に合わせて探触子収納部19の先端部に回転可能に取り付けられ、探触子収納部19内を通過する水流により回転し、探触子収納部19に収納された探触子からボイラ水管10aの中心軸方向に沿って発射された超音波の進行方向をボイラ水管10aの半径方向外側に変える作用を有する。符号22は可撓性を有するケーブルであり、探触子の信号ケーブルを収納すると共に、探触子収納部19内に水を供給するものである。符号23は金属フレキシブルホースであり、探触子収納部19とケーブル22を接続するものである。このような構成とすることで、音響ミラー部21を回転させながら探触子から超音波を発射すると、超音波をボイラ水管10aの内周面に対して垂直にかつ周方向に沿って照射することができる。そして、超音波の一部は、ボイラ水管10aの内周面で反射し、音響ミラー部21で再度反射して探触子に入射する。また、超音波の残部は、ボイラ水管10a内に進入しボイラ水管10aの外周面で反射し、ボイラ水管10a内を通過し音響ミラー部21で再度反射して探触子に入射する。
【0025】
従って、探触子から発射された超音波が、ボイラ水管10aの内周面で反射して探触子に入射するまでの測定内周面時間及びボイラ水管10aの外周面で反射して探触子に入射するまでの測定外周面時間をそれぞれ測定し、測定時間差を求めることで、ボイラ水管10aの厚さを求めることができる。ここで、予め、健全状態のボイラ水管10aにおいて、探触子から超音波が発射されてからボイラ水管10aの内周面で反射して探触子に入射するまでの健全部内周面時間と探触子から超音波が発射されてからボイラ水管10aの外周面で反射して探触子に入射するまでの健全部外周面時間をそれぞれ測定して健全部時間差を求めておくと、健全部時間差と測定時間差との差からボイラ水管10aの厚さの減少量が求められる。更に、測定内周面時間が健全部内周面時間より長いとボイラ水管10aの内周面側で、測定外周面時間が健全部外周面時間より短いとボイラ水管10aの外周面側でそれぞれ減肉(腐食)が生じていると判定できる。
【0026】
図1に示すように、常時は、ガイドパイプ16に先側から長尺のボルト部材24(閉止部材の一例)がねじ込まれており、ガイドパイプ16は塞がれている。ここで、ボルト部材24は、ガイドパイプ16の先側の内面に形成された雌ねじ部25に螺合する雄ねじが形成されたボルト本体部26と、ボルト本体部26の基側に連接して設けられたボルト頭部27と、ボルト本体部26の先側に連接して設けられ、ガイドパイプ16内の雌ねじ部25より基側の領域に嵌入される、円柱状の閉塞部28とを有している。このため、ボイラ稼動時にボイラ水管10a内の水中に存在する気泡の量は、ボイラの管理に問題のない程度にしかならない。
【0027】
そして、ガイドパイプ16の先部の内周には、外部に開口した段付き部29が形成されており、ボルト部材24をガイドパイプ16内に挿入し、ボルト本体部26をガイドパイプ16の雌ねじ部25に螺合させることにより、ボルト部材24をガイドパイプ16内で徐々にボイラ水管10a側に移動させることができ、ボルト頭部27の下面が段付き部29の底面に環状のシール部材30及び座金30aを介して当接した時点で、ボルト部材24の移動を停止させることができる。従って、ボルト頭部27の下面が、環状のシール部材30及び座金30aを介して段付き部29の底面に当接した際、閉塞部28の先端の一部が点検孔17の内側縁(ボイラ水管10aの内周面側の縁)と当接するように閉塞部28の長さを予め設定しておくと、ガイドパイプ16内に閉塞部28を嵌入した際に、ガイドパイプ16の基側に形成される空間部の最高位置を点検孔17の内周面の最高位置と略一致させることができる。これにより、ボイラ稼動時にボイラ水管10a内の水中に存在する気泡が、ガイドパイプ16の基側に形成される空間部に捕集されることを防止でき、ボイラ稼動時の空気溜まりの形成を防止できる。
【0028】
続いて、本発明の一実施の形態に係るボイラ水管の厚さ測定方法について説明する。
長尺で立設状態のボイラ水管10、10aの中で、図1に示すように、ボイラ水管の厚さの経年変化の調査の対象となる、即ち、管理対象のボイラ水管10aを予め選定する。次いで、ボイラ水管10aの長手方向端部の側面、図1ではボイラ水管10aの上端板12より下側の側面に点検孔17を形成し、点検孔17にガイドパイプ16の基側をボイラ水管10aの軸心を基準にして上向きに5〜60度の範囲で傾斜させて接続する。そして、常時は、即ち、ボイラの稼働時は、ガイドパイプ16の先側からボルト部材24をねじ込んでガイドパイプ16を塞いでおく。なお、ガイドパイプ16をボルト部材24で塞ぐ場合、段付き部29の底面に環状のシール部材30を配置し、ねじ込む。
【0029】
ボイラの定期点検時を利用してボイラ水管10aの厚さの測定を行う際は、ボイラ水管10aに取り付けられたガイドパイプ16を塞いでいるボルト部材24をガイドパイプ16から外す。次いで、ボイラ水管10a内に注水し、ガイドパイプ16の先側からガイドパイプ16内に超音波プローブ18を挿入する。そして、ケーブル22を徐々にガイドパイプ16内に送り込むことにより、超音波プローブ18を前進させ、ガイドパイプ16内を通過させてボイラ水管10a内に進入させる。
【0030】
超音波プローブ18がボイラ水管10a内に進入すると、超音波プローブ18の調芯部材20の外周面がボイラ水管10aの内周面に当接し、ボイラ水管10aの軸心位置に探触子収納部19の軸心が位置する。このため、ケーブル22を更にガイドパイプ16内に送り込むことにより、超音波プローブ18をボイラ水管10aの中心軸に沿って移動させることが可能な状態となる。次いで、ケーブル22を介して超音波プローブ18に水を供給して音響ミラー部21を回転させながら、探触子から超音波を発射すると共に、ケーブル22をガイドパイプ16内に一定速度で送り込む。ここで、ボイラ水管10a内は水で満たされているので、厚さ測定時はガイドパイプ16の先部から水が排出される。
【0031】
超音波プローブ18は、ボイラ水管10aの内周面に対して垂直にかつ周方向に沿って超音波を発射しながら、ボイラ水管10a内を、下端板13側に設けた目標位置に向けて移動するので、超音波プローブ18の探触子から発射した超音波のボイラ水管10aの内周面上における照射点の軌跡は、ボイラ水管10aの中心軸に沿った螺旋となる。このため、螺旋上に位置する各照射点に対して、測定内周面時間及び測定外周面時間がそれぞれ求められる。そして、測定外周面時間と測定内周面時間との測定時間差と健全部時間差とを比較することで、各照射点において、ボイラ水管10aの厚さの減少量が生じているか否かを判定する。また、減肉が発生している場合、測定内周面時間と健全部内周面時間の大小関係及び測定外周面時間と健全部外周面時間の大小関係から、減肉の発生が内周面側であるか、外周面側であるか、又は内、外周面側同時であるかを判定する。これにより、各照射点における減肉の有無が判明するので、ボイラ水管10aの減肉の発生状況がわかる。そして、基準となるデータ(即ち、健全部内周面時間、健全部外周面時間、及び健全部時間差)と、測定内周面時間、測定外周面時間、及び測定時間差とを比較することにより、ボイラ水管10aの経年変化の調査ができる。
【0032】
超音波プローブ18がボイラ水管10a内の目標位置まで移動してボイラ水管10aに対する内挿式超音波厚さ測定が終了すると、超音波の発射と音響ミラー部21の回転を停止する。次いで、ケーブル22をガイドパイプ16内から徐々に引き出し、超音波プローブ18を点検孔17まで引き戻す。そして、超音波プローブ18をガイドパイプ16内に誘導し、ガイドパイプ16の先側から外部に取り出す。そして、ガイドパイプ16をボルト部材24で塞ぐ。
なお、超音波プローブ18をボイラ水管10a内の目標位置まで移動させながらボイラ水管10aの厚さを測定したが、超音波プローブ18を始めに目標位置まで移動させておき、超音波プローブ18を点検孔17に引き戻しながらボイラ水管10aの厚さを測定することもできる。
【0033】
以上のように、ボイラ水管10aにガイドパイプ16を取り付けて、常時はガイドパイプ16にボルト部材24を取り付けてガイドパイプ16を塞ぎ、ボイラ水管10aの厚さの測定を行う際に、ボルト部材24をガイドパイプ16から外し、ガイドパイプ16を介して超音波プローブ18をボイラ水管10a内に挿入するので、超音波プローブ18をボイラ水管10aに挿入するために従来必要であったボイラ水管の切断作業、厚さ測定後のボイラ水管の復旧作業等の付帯作業を削減することができ、定期点検に要する工期を大幅に短縮することが可能になる。
【0034】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、ガイドパイプを管理対象のボイラ水管に取り付けたが、全てのボイラ水管に取り付けることも可能である。
また、ガイドパイプの形状を実施の形態では直状としたが、点検孔に接続される基部のみをボイラ水管に対して5〜60度の範囲で湾曲させ、残りの部分を直状とすることもできる。
また、ガイドパイプの基側を、立設状態のボイラ水管の軸心を基準にして上向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて点検孔に接続し、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管の上側からボイラ水管内に挿入したが、ガイドパイプの基側を、立設状態のボイラ水管の軸心を基準にして下向きに5〜60度の角度範囲で傾斜させて点検孔に接続し、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管の下側からボイラ水管内に挿入することもできる。
更に、ガイドパイプの基側を、立設状態のボイラ水管の軸心を基準にして5〜60度の角度範囲で傾斜させて接続し、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管内に挿入したが、ガイドパイプの基側を、水平状態又は傾斜状態のボイラ水管の軸心を基準にして5〜60度の角度範囲で傾斜させて点検孔に接続し、ガイドパイプを介して超音波プローブをボイラ水管内に挿入することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
10、10a:ボイラ水管、11:ボイラ水管パネル、12:上端板、13:下端板、14:ヘッダー、16:ガイドパイプ、17:点検孔、18:超音波プローブ、19:探触子収納部、20:調芯部材、21:音響ミラー部、22:ケーブル、23:金属フレキシブルホース、24:ボルト部材、25:雌ねじ部、26:ボルト本体部、27:ボルト頭部、28:閉塞部、29:段付き部、30:シール部材、30a:座金
図1
図2