特許第5957433号(P5957433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5957433空気極材料、コンタクト材料および固体酸化物形燃料電池セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957433
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】空気極材料、コンタクト材料および固体酸化物形燃料電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20160714BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20160714BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20160714BHJP
【FI】
   H01M4/86 T
   H01M4/86 U
   H01M8/12
   H01M8/02 Y
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-244429(P2013-244429)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-103452(P2015-103452A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】岩井 広幸
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−074305(JP,A)
【文献】 特開2012−074306(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/046624(WO,A1)
【文献】 特開平06−275302(JP,A)
【文献】 特開2008−004521(JP,A)
【文献】 特開平03−116659(JP,A)
【文献】 特開2013−143187(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0081596(US,A1)
【文献】 特開2012−146579(JP,A)
【文献】 特開2000−243405(JP,A)
【文献】 特開2012−221946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86 − 4/98
H01M 8/00 − 8/02
H01M 8/08 − 8/24
H01M 8/0202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池の空気極を構成する空気極材料であって、
前記空気極材料は、SmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の空気極材料。
【請求項2】
請求項1に記載の空気極材料において、
記SmSrCoOに対する前記LaSrTiFeOの複合割合が、30〜70wt%の範囲であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の空気極材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気極材料において、
前記LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の空気極材料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の空気極材料において、
前記LaSrTiFeOの粒子は、前記SmSrCoOの粒子よりも大径であり、
前記LaSrTiFeOの粒子の周囲は、前記SmSrCoOによって被覆されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の空気極材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1の空気極材料から成る空気極とインターコネクタとを電気的に接合するコンタクト材料であって、
前記コンタクト材料は、SmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池のコンタクト材料。
【請求項6】
請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池のコンタクト材料において、
記SmSrCoOに対する前記LaSrTiFeOの複合割合が、30〜70wt%の範囲であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池のコンタクト材料。
【請求項7】
請求項5または6に記載の固体酸化物形燃料電池のコンタクト材料において、
前記LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池のコンタクト材料。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1に記載の固体酸化物形燃料電池のコンタクト材料において、
前記LaSrTiFeOの粒子は、前記SmSrCoOの粒子よりも大径であり、
前記LaSrTiFeOの粒子の周囲は、前記SmSrCoOによって被覆されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池のコンタクト材料。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1に記載の空気極材料或いはコンタクト材料を用いた固体酸化物形燃料電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池の空気極を構成する空気極材料、その空気極とインターコネクタとを電気的に接合するコンタクト材料に関し、特に、従来に比べて固体酸化物形燃料電池の性能および耐久性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)では、例えばジルコニアやセリアに代表される固体電解質層に、空気極および燃料極の電極が形成されてセルとなる。特許文献1では、上記空気極を構成する空気極材料として、上記固体電解質層を構成する例えばジルコニアやセリア等から成る電解質材料や上記燃料極を構成する例えばNiO、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)等から成る燃料極材料に、比較的熱膨張係数が近く且つ比較的高性能である例えばLaSrCoFeO等のペロブスカイト酸化物が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−146579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような固体酸化物形燃料電池では、その固体酸化物形燃料電池のさらなる高性能化および高耐久化が求められている。そして、上記空気極材料としては、Coリッチなペロブスカイト組成にする方が酸素乖離性能および伝導性能が向上して、固体酸化物形燃料電池の高性能化に良いと考えられる。しかしながら、固体酸化物形燃料電池を高性能化させるために上記空気極材料として例えばLaSrCoO、SmSrCoOを使用した場合には、上記LaSrCoO、SmSrCoOは、従来使用されていたLaSrCoFeOに比べて熱膨張係数が高いため、上記LaSrCoO、SmSrCoOを空気極材料として使用すると、電解質や燃料極材料との熱膨張係数の差から長時間使用した時やヒートサイクル時に固体酸化物形燃料電池にクラックが生じ易く、固体酸化物形燃料電池の耐久性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、従来に比較して固体酸化物形燃料電池の性能および耐久性を向上させる空気極材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は種々の解析や検討を重ねた結果、以下に示す事実に到達した。すなわち、LaSrCoO或いはSmSrCoOに、LaSrCoFeOに比べて熱膨張係数の小さいLaSrTiFeOを複合化させることにより、その複合化された複合材料はLaSrCoFeOに比較して熱膨張係数が低下することが分かった。つまり、例えばLaSrCoO或いはSmSrCoOに、LaSrTiFeOを複合化させた複合材料を空気極材料として使用することによって、従来の空気極材料であるLaSrCoFeOが用いられた固体酸化物形燃料電池に比べて、電解質や燃料極材料との熱膨張係数の差が小さくなって固体酸化物形燃料電池の耐久性が向上すると共にその固体酸化物形燃料電池の性能が向上することを見いだした。本発明はこのような知見に基づいて為されたものである。
【0007】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a) 固体酸化物形燃料電池の空気極を構成する空気極材料であって、(b) 前記空気極材料は、SmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固体酸化物形燃料電池の空気極材料によれば、前記空気極材料は、SmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料である。このため、前記複合材料は、従来において空気極材料として用いられたLaSrCoFeOに比較して熱膨張係数が低くなるので、その複合材料に対する電解質や燃料極材料との熱膨張係数の差が小さくなり、固体酸化物形燃料電池の耐久性が向上する。また、前記複合材料には、固体酸化物形燃料電池の性能が向上するSmSrCoOが複合されているので、固体酸化物形燃料電池の性能がLaSrCoFeOを前記空気極材料として使用する場合に比べて向上する。これにより、前記複合材料を前記空気極材料として使用することによって、従来に比較して固体酸化物形燃料電池の性能および耐久性を向上させることができる。
【0009】
ここで、好適には、前記空気極材料に用いられる複合材料は、前記SmSrCoOに対する前記LaSrTiFeOの複合割合が、30〜70wt%の範囲である。このため、前記固体酸化物形燃料電池の性能および耐久性を好適に向上させることができる。
【0010】
また、好適には、前記空気極材料に用いられる複合材料は、前記LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5である。このため、前記固体酸化物形燃料電池の性能および耐久性を好適に向上させることができる。
【0011】
また、好適には、前記空気極材料に用いられる複合材料において、(a) 前記LaSrTiFeOの粒子は、前記SmSrCoOの粒子よりも大径であり、(b) 前記LaSrTiFeOの粒子の周囲は、前記SmSrCoOによって被覆されている。このため、前記固体酸化物形燃料電池の性能を好適に向上させることができる。
【0012】
また、好適には、前記複合材料である空気極材料から成る空気極とインターコネクタとを電気的に接合するコンタクト材料であって、そのコンタクト材料は、SmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料である。このため、前記空気極材料と前記コンタクト材料とが同じ前記複合材料からなり、前記空気極と前記コンタクト材料との熱膨張係数の差が好適に小さくなるので、それら空気極とコンタクト材料との剥離が好適に抑制される。また、前記コンタクト材料には、固体酸化物形燃料電池の性能が向上するSmSrCoOが複合されているので、固体酸化物形燃料電池の性能がLaSrCoFeOを前記コンタクト材料として使用する場合に比べて向上する。
【0013】
また、好適には、前記コンタクト材料は、前記SmSrCoOに対する前記LaSrTiFeOの複合割合が、30〜70wt%の範囲である。このため、前記固体酸化物形燃料電池の性能を好適に向上させることができる。
【0014】
また、好適には、前記コンタクト材料は、前記LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5である。このため、前記固体酸化物形燃料電池の性能を好適に向上させることができる。
【0015】
また、好適には、前記コンタクト材料において、(a) 前記LaSrTiFeOの粒子は、前記SmSrCoOの粒子よりも大径であり、(b) 前記LaSrTiFeOの粒子の周囲は、前記SmSrCoOによって被覆されている。このため、前記固体酸化物形燃料電池の性能を好適に向上させることができる。
【0016】
また、好適には、前記空気極材料或いはコンタクト材料は、固体酸化物形燃料電池セルに用いられる。このため、その固体酸化物形燃料電池セルの性能および耐久性を従来に比較して向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用された一実施例である固体酸化物形燃料電池の固体酸化物形燃料電池セルを概念的に示す断面図である。
図2図1の固体酸化物形燃料電池セルの空気極に用いられた空気極材料と、空気極およびインターコネクタを電気的に接合するために用いられたコンタクト材料との中に含まれる粒子の一例を概念的に示す図である。
図3図1の固体酸化物形燃料電池セルの製造工程を説明する工程図である。
図4図3の工程図の複合化工程で使用される衝撃固着装置の構造を説明する断面図である。
図5】組成がそれぞれ変えられた実施例品1乃至7、比較例品1乃至3の空気極材料が用いられて製造された固体酸化物形燃料電池セルにおいて、その固体酸化物形燃料電池セルの耐久性および性能の評価結果を示す図である。
図6】本発明の他の実施例の固体酸化物形燃料電池セルを示す図であり、図3に対応する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確には描かれていない。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例の空気極材料10(図2参照)を用いて作製された空気極(カソード)12を備える固体酸化物形燃料電池セル14の構成を概念的に示す断面図である。なお、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は、固体酸化物形燃料電池セル14が複数積層されたものである。
【0020】
図1に示すように、固体酸化物形燃料電池セル14は、空気極材料10を用いて構成され、厚み方向に連通し且つ両面に開口する多数の開放気孔を備えた多孔質体から成る空気極12と、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ:Yttria Stabilized Zirconia)粉末および酸化ニッケル(NiO)粉末等を用いて構成され、厚み方向に連通し且つ両面に開口する多数の開放気孔を備えた多孔質体から成る燃料極(アノード)16と、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いて構成され、固体酸化物形燃料電池セル14に供給される燃料ガスや空気を透過させない程度の緻密質から成る電解質層18と、例えばガドリニウムドープセリア(GDC:Gadolinium doped Ceria)等を用いて構成され、電解質層18と空気極12との固相反応を好適に防止する反応防止層20とを備え、それら燃料極16および空気極12が、電解質層18および反応防止層20を介して対向した構造を有している。
【0021】
図1に示すように、上記固体酸化物形燃料電池は、アノードである燃料極16の厚みが電解質層18、反応防止層20、空気極12に比べて厚いアノード支持型の固体酸化物形燃料電池であり、燃料極16、電解質層18、反応防止層20、空気極12の順で各部材を形成している。また、固体酸化物形燃料電池セル14には、燃料極16の電解質層18と接していない側と、空気極12の反応防止層20と接していない側とには、例えばランタンクロマイト系酸化物すなわちLaSrCrAlCoO、LaSrCrTiO等から成る一対のインターコネクタ22および24が設けられている。なお、固体酸化物形燃料電池セル14において、空気極12とインターコネクタ24とは、それら空気極12とインターコネクタ24との間に空気極材料10と同じ組成から成るコンタクト材料10(図2参照)のペーストが塗布され焼成されることによって電気的に接合されている。すなわち、空気極12とインターコネクタ24との間には、図1に示すように、それら空気極12とインターコネクタ24との電気的に接合する接合層25が形成されている。また、一対のインターコネクタ22および24において、燃料極16側のインターコネクタ22には、燃料極16に例えば水素等の燃料ガスを供給する第1供給路22aが形成されており、空気極12側のインターコネクタ24には、空気極12に空気を供給する第2供給路24aが形成されている。
【0022】
以上のように構成された上記固体酸化物形燃料電池では、その固体酸化物形燃料電池に電流を印加すると、固体酸化物形燃料電池セル14の空気極12においてインターコネクタ24の第2供給路24aから供給された空気中の酸素から酸化物イオン(O2−:酸素イオンとも呼ばれる。)が生成され、その生成された酸化物イオンが空気極12から電解質層18へと運ばれて、さらに電解質層18を通って燃料極16に到達する。そして、燃料極16においてインターコネクタ22の第1供給路22aから供給された燃料ガスの水素(H)と反応して電子(e)を放出することによって発電が行われる。
【0023】
図2は、空気極12を構成する空気極材料10およびその空気極12とインターコネクタ24とを電気的に接合するコンタクト材料10中の粒子10aを概念的に示す図である。その図2に示すように、空気極材料10、コンタクト材料10は、LaSrTiFeOから成る第1粒子(粒子)26と、その第1粒子26より小径のLaSrCoO或いはSmSrCoOとから成る第2粒子(粒子)28との複合材料である。また、空気極材料10、コンタクト材料10中の粒子10aは、後述する衝撃固着装置30(図4参照)によって、LaSrTiFeOから成る第1粒子26の周囲に、LaSrCoO或いはSmSrCoOから成る複数の第2粒子28が被覆されているコアシェル構造を有している。なお、空気極材料10、コンタクト材料10において、LaSrTiFeOから成る第1粒子26は、LaSrCoO或いはSmSrCoOから成る第2粒子28よりも大径であり、第1粒子26は例えば平均粒径が1μmφ程度であり、第2粒子28は例えば平均粒径が0.3μmφ程度である。また、本実施例において平均粒径は、例えば光散乱法によって測定したものであり、以下において示す平均粒径も光散乱法によって測定したものである。
【0024】
図3は、固体酸化物形燃料電池すなわち固体酸化物形燃料電池セル14の製造工程を説明する工程図である。その図3に示すように、先ず、燃料極成形体作製工程P1において、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と酸化ニッケル(NiO)粉末との混合粉末、バインダー、分散剤、溶媒等を混合させ調整したペースト状の燃料極用材料を用いて、例えばドクターブレードを用いたシート成形等により板状の燃料極成形体が作製させられる。
【0025】
次に、電解質層塗布工程P2において、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末、バインダー、分散剤、溶媒等を混合させ調整したペースト状の電解質層用材料を、例えばスクリーン印刷等により燃料極成形体作製工程P1で作製された板状の燃料極成形体の表面に塗布させることによって、上記燃料極成形体に板状の電解質層成形体が積層させられる。
【0026】
次に、第1焼成工程P3において、上記燃料極成形体作製工程P1で作製された燃料極成形体と上記電解質層塗布工程P2でその燃料極成形体に積層された電解質層成形体とが乾燥させられ、その後、それら燃料極成形体および電解質層成形体が大気中において例えば1200℃〜1400℃の焼成温度で焼成させられる。これによって、上記燃料極成形体が焼結して燃料極16になると共に、上記電解質層成形体が焼結して電解質層18になる。
【0027】
次に、反応防止層形成工程P4において、上記第1焼成工程P3で焼結させられた電解質層18の表面に、例えばスパッタリング法等によってガドリニウムドープドセリア(GDC)から成る成膜材料の粒子が付着させられ、薄膜状の反応防止層成形体が電解質層18の表面に積層させられる。
【0028】
次に、第2焼成工程P5において、上記反応防止層形成工程P4で電解質層18の表面に形成された薄膜状の反応防止層成形体が例えば1000℃以下の焼成温度で焼成させられる。これによって、上記反応防止層成形体が焼結して反応防止層20になる。
【0029】
次に、複合化工程P6において、LaSrTiFeOの粉末とLaSrCoO或いはSmSrCoOの粉末とが例えば衝撃固着装置30等によって複合化させられて、それら粉末の複合材料すなわち空気極材料10が得られる。なお、上記LaSrTiFeOの粉末は、例えば、酸化ランタン粉末と、炭酸ストロンチウム粉末と、酸化チタン粉末と、酸化鉄粉末とが例えばボールミル等によって混合され、その混合された粉末が例えば1200(℃)で6時間程度加熱処理され、その加熱処理されたものが例えば湿式ボールミル等によって粉砕されることにより製造される。また、上記LaSrCoOの粉末は、例えば、酸化ランタン粉末と、炭酸ストロンチウム粉末と、酸化コバルト粉末とが例えばボールミル等によって混合され、その混合された粉末が例えば1200(℃)で6時間程度加熱処理され、その加熱処理されたものが例えば湿式ボールミル等によって粉砕されることにより製造される。また、上記SmSrCoOの粉末は、例えば、酸化サマリウム粉末と、炭酸ストロンチウム粉末と、酸化コバルト粉末とが例えばボールミル等によって混合され、その混合された粉末が例えば1200(℃)で6時間程度加熱処理され、その加熱処理されたものが例えば湿式ボールミル等によって粉砕されることにより製造される。
【0030】
ここでは、複合化工程P6において、衝撃固着装置30によって複合化された複合材料すなわち空気極材料10の作製方法の一例を詳細に説明する。先ず、複合化工程P6で使用される衝撃固着装置(例えば奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステム)30について説明する。上記衝撃固着装置30は、図4に示すように、高速回転するロータ32が円筒形のステータ34内に同軸に設けられると共に、ロータ32の回転によって外側に向かわせられた被処理物36をステータ34内周の中心部に戻す循環回路38が設けられている。また、ロータ32の外周縁部には周方向に等間隔で例えば8枚のブレード40が取り付けられており、ロータ32が回転させられることでステータ34内周に空気流が形成される。また、投入口42および弁44を備えた材料投入路46がステータ34内周に向かって設けられており、その弁44を開くと投入口42から被処理物36がステータ34内に送り込まれるようになっている。
【0031】
複合化工程P6では、上記のように構成された衝撃固着装置30を使用して、ロータ32を回転させつつ、被処理物36すなわちLaSrTiFeOの粉末とLaSrCoO或いはSmSrCoOの粉末とを、PMMA(ポリメチルメタクリレート)と共に投入口42から機内に投入する。機内に投入された被処理物36は、材料投入路46を経由してステータ34の中央部に送られ回転するロータ32のブレード40から周方向の力を受けるので、被処理物36は分散されながら衝撃力を受けると共に圧縮・摩擦・せん断力等の機械的作用を繰り返し受ける。これにより、LaSrTiFeOの粉末とLaSrCoO或いはSmSrCoOの粉末とが複合化されて、図2に示すようなLaSrTiFeOの粒子の周囲にLaSrCoO或いはSmSrCoOが被覆された粒子10aを有する空気極材料10が作製される。なお、衝撃固着装置30に投入される被処理物36は、LaSrTiFeOの粒子がLaSrCoO或いはSmSrCoOの粒子よりも大径、すなわちLaSrTiFeOの粉末の平均粒径(例えば1μmφ)がLaSrCoO或いはSmSrCoOの粉体の平均粒径(例えば0.3μmφ)より大きいものが使用される。
【0032】
なお、複合化工程P6では、上述のように衝撃固着装置30を使用して、LaSrTiFeOの粉末とLaSrCoO或いはSmSrCoOの粉末とを複合化させたが、例えばボールミル等を使用して、LaSrTiFeOの粉末とLaSrCoO或いはSmSrCoOの粉末とを混合させることによって複合化させても良い。
【0033】
次に、ペースト調整工程P7において、上記複合化工程P6で得られた複合材料すなわち空気極材料10に例えばバインダー、分散剤、溶媒等が所定量混合されて、ペースト状の空気極材料10が調整させられる。
【0034】
次に、空気極塗布工程P8において、上記ペースト調整工程P7で調整させられたペースト状の空気極材料10が、例えばスクリーン印刷等により第2焼成工程P5で焼結された反応防止層20の表面に塗布させられることによって、反応防止層20に板状の空気極成形体が積層させられる。
【0035】
次に、第3焼成工程P9において、上記空気極塗布工程P8で反応防止層20に積層させられた空気極成形体が乾燥させられ、その後、その空気極成形体が大気中において例えば1200℃〜1400℃の焼成温度で焼成させられる。これによって、上記空気極成形体が焼結して空気極12になる。
【0036】
次に、インターコネクタ接合工程P10において、空気極12まで形成された固体酸化物形燃料電池セル14の空気極12の表面に、上記ペースト調整工程P7で得られたペースト状の空気極材料10がペースト状のコンタクト材料10として塗布させられる。そして、そのコンタクト材料10が塗布させられた空気極12の表面にインターコネクタ24が接触させられ、所定温度で焼成させられる。これによって、空気極12とインターコネクタ24とが電気的に接合されて固体酸化物形燃料電池セル14が製造させられる。
【0037】
[実験I]
ここで、本発明者等が行った実験Iを説明する。なお、この実験Iは、固体酸化物形燃料電池セル14を高性能化させるために用いられたLaSrCoO或いはSmSrCoOと、従来の空気極材料であるLaSrCoFeOと、そのLaSrCoFeOに比べて熱膨張係数が低いLaSrTiFeOをLaSrCoO或いはSmSrCoOに複合化させた複合材料とをそれぞれ空気極材料10として使用した場合において、上記複合材料が、LaSrCoFeOが用いられた従来の空気極材料10に比較して、熱膨張係数が低下すると共に固体酸化物形燃料電池セル14の性能が向上することを検証するための実験である。
【0038】
この実験Iでは、先ず、前述した複合化工程P6において、図5でそれぞれ示された組成比のLaSrCoO或いはSmSrCoOの粉末とLaSrTiFeOの粉末とを複合化させた7種類の空気極材料10すなわち実施例品1乃至実施例品7の空気極材料10を作製した。そして、その空気極材料10を用いて前述した製造工程P1乃至P9を経て固体酸化物形燃料電池セル14を製造し、その固体酸化物形燃料電池セル14の発電性能(W/cm)および空気極12の熱膨張係数(×10−6/K)を測定した。なお、空気極12の熱膨張係数(×10−6/K)は、それぞれの空気極材料10で作製された空気極12について以下に示す表1の条件で熱機械分析(TMA:Thermo Mechanical Analysis)を行い測定した。また、固体酸化物形燃料電池セル14の発電性能(W/cm)すなわち電力密度(W/cm)は、以下に示す表2の条件で測定した。
【0039】
[表1]
測定装置:株式会社リガク製、型式「CN8098F1」
測定方法:示差膨張方式
測定温度範囲:室温(25℃)〜1000℃、昇温速度:5℃/分
測定雰囲気:大気中、水素4%+窒素96%の雰囲気中
【0040】
[表2]
電流密度:0.5A/cm
供給ガス:
(アノード側):水素ガス(供給圧力:常圧、供給量:100ml/min.)
(カソード側):空気(供給圧力:常圧、供給量:500ml/min.)
(パージ用):窒素ガス
測定温度:700℃
【0041】
また、図5に示すように、実施例品1の空気極材料10は、LaSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させた複合材料であり、そのLaSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が50wt%であり、そのLaSrTiFeOにおいてTiとFeとのモル比が3:7である。また、実施例品2の空気極材料10は、LaSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させた複合材料であり、そのLaSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が50wt%であり、そのLaSrTiFeOにおいてTiとFeとのモル比が3:7である。また、実施例品3の空気極材料10は、SmSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させた複合材料であり、そのSmSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が60wt%であり、そのLaSrTiFeOにおいてTiとFeとのモル比が4:6である。また、実施例品4の空気極材料10は、SmSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させた複合材料であり、そのSmSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が60wt%であり、そのLaSrTiFeOにおいてTiとFeとのモル比が4:6である。また、実施例品5の空気極材料10は、LaSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させた複合材料であり、そのLaSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が70wt%であり、そのLaSrTiFeOにおいてTiとFeとのモル比が2:8である。また、実施例品6の空気極材料10は、LaSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させた複合材料であり、そのLaSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が30wt%であり、そのLaSrTiFeOにおいてTiとFeとのモル比が5:5である。また、実施例品7の空気極材料10は、LaSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させた複合材料であり、そのLaSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が60wt%であり、そのLaSrTiFeOにおいてTiとFeとのモル比が1:9である。また、図5の「複合方法」の欄に記載されている「混合」とは、上記複合化工程P6において例えばボールミルによってLaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させたことを示すものである。また、「メカノケミカル複合化」とは、上記複合化工程P6において例えば衝撃固着装置30によってLaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させたことを示すものである。なお、図5に示すように、実施例品1の空気極材料10は、実施例品2の空気極材料10と比べて上記複合方法が異なる点で相違するものでありそれ以外は同じである。また、実施例品3の空気極材料10は、実施例品4の空気極材料10と比べて上記複合方法が異なる点で相違するものでありそれ以外は同じである。また、上記実施例品1乃至7の空気極材料10の平均粒径は、それぞれ0.6μmφである。
【0042】
また、上記実験Iでは、図5に示すように、比較例として、LaSrCoOのみから成る比較例品1の空気極材料10と、SmSrCoOのみから成る比較例品2の空気極材料10と、従来空気極材料として用いられたLaSrCoFeOから成る比較例品3の空気極材料10とを作製した。そして、上記と同様に、その空気極材料10を用いて前述した製造工程P1乃至P9を経て固体酸化物形燃料電池セル14を製造し、その固体酸化物形燃料電池セル14の発電性能(W/cm)および空気極12の熱膨張係数(×10−6/K)を測定した。なお、上記LaSrCoFeOは、例えば、酸化ランタン粉末と、炭酸ストロンチウム粉末と、酸化コバルト粉末と、酸化鉄粉末とが例えばボールミル等によって混合され、その混合された粉末が例えば1200(℃)で6時間程度加熱処理され、その加熱処理されたものが例えば湿式ボールミル等によって粉砕されて製造されたものである。また、上記比較例品1乃至3の空気極材料10の平均粒径は、それぞれ0.6μmφであり、上記実施例品1乃至7の空気極材料10と同じである。
【0043】
以下、図5を用いて上記実験Iの結果を示す。図5に示すように、実施例品1乃至7の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14は、比較例品3の空気極材料10が用いられた従来の固体酸化物形燃料電池セル14に比較して、電力密度が0.35(W/cm)より高くなり且つ空気極12の熱膨張係数が16.4(×10−6/K)より低くなり例えば14、15(×10−6/K)程度になった。なお、固体酸化物形燃料電池セル14において、例えば燃料極16、電解質層18等の熱膨張係数は、例えば10〜13(×10−6/K)程度であり、上記のように空気極12の熱膨張係数が14、15(×10−6/K)程度に低くなると、空気極12と燃料極16、電解質層18との熱膨張係数の差が小さくなるので、固体酸化物形燃料電池セル14を長時間使用した時やヒートサイクル時に例えばクラック等が生じ難くなりその固体酸化物形燃料電池セル14の耐久性が向上する。また、比較例品1および比較例品2の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14は、比較例品3の空気極材料10が用いられた従来の固体酸化物形燃料電池セル14に比較して、実施例品1乃至7の空気極材料10が用いられた場合と同様に電力密度が0.35(W/cm)より高くなったが、空気極12の熱膨張係数が16.4(×10−6/K)より高く19.2、23.0(×10−6/K)になった。
【0044】
また、図5に示すように、実施例品2の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14は、実施例品1の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14に比較して、電力密度が0.36(W/cm)より高くなり且つ空気極12の熱膨張係数が14.5(×10−6/K)より低くなった。また、実施例品4の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14は、実施例品3の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14比較して、電力密度が0.39(W/cm)より高くなり且つ空気極12の熱膨張係数が15.2(×10−6/K)より低くなった。
【0045】
図5の実験Iの結果によれば、実施例品1乃至7の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14は、比較例品3の空気極材料10が用いられた従来の固体酸化物形燃料電池セル14に比較して、電力密度が高くなり、空気極12の熱膨張係数が低くなった。このため、LaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料を例えば空気極材料10として使用することによって、その空気極材料10に複合されている固体酸化物形燃料電池セル14の性能を向上させるLaSrCoO或いはSmSrCoOにより、空気極材料として従来使用されたLaSrCoFeOに比べて、固体酸化物形燃料電池セル14の電力密度が高くなって固体酸化物形燃料電池セル14の性能が向上すると考えられる。また、空気極材料として従来使用されたLaSrCoFeOに比べて熱膨張係数が低いLaSrTiFeOが空気極材料10に複合されているので、空気極12の熱膨張係数が低下すると考えられる。
【0046】
また、例えば、LaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料を例えばコンタクト材料10として使用すなわち実施例品1乃至7の空気極材料10を実施例品1乃至7のコンタクト材料10として使用することによって、そのコンタクト材料10に複合されている固体酸化物形燃料電池セル14の性能を向上させるLaSrCoO或いはSmSrCoOにより、コンタクト材料としてLaSrCoFeOを使用するに比べて、固体酸化物形燃料電池セル14の電力密度が高くなって固体酸化物形燃料電池セル14の性能が向上すると考えられる。また、実施例品1乃至7のコンタクト材料10と実施例品1乃至7の空気極材料10とが同じ上記複合材料からなるので、空気極12とコンタクト材料10との熱膨張係数(×10−6/K)の差が好適に小さくすなわち無くなり、固体酸化物形燃料電池セル14において空気極12とコンタクト材料10との剥離が好適に抑制されると考えられる。
【0047】
また、実施例品1乃至7の空気極材料10において、LaSrCoO或いはSmSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合は、30wt%〜70wt%の範囲であるので、好適に、固体酸化物形燃料電池セル14の電力密度が高くなると共に空気極12の熱膨張係数が低下すると考えられる。また、上記実施例品1乃至7の空気極材料10を実施例品1乃至7のコンタクト材料10として使用した場合には、上記実施例品1乃至7の空気極材料10と同様に、LaSrCoO或いはSmSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が、30wt%〜70wt%の範囲であるので、好適に、固体酸化物形燃料電池セル14の電力密度が高くなると考えられる。
【0048】
また、実施例品1乃至7の空気極材料10において、LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5であるので、好適に、固体酸化物形燃料電池セル14の電力密度が高くなると共に空気極12の熱膨張係数が低下すると考えられる。また、上記実施例品1乃至7の空気極材料10を実施例品1乃至7のコンタクト材料10として使用した場合には、上記実施例品1乃至7の空気極材料10と同様に、LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5であるので、好適に、固体酸化物形燃料電池セル14の電力密度が高くなると考えられる。
【0049】
また、図5の実験Iの結果によれば、実施例品2の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14は、実施例品1の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14に比較して、電力密度が高くなり、空気極12の熱膨張係数が低くなった。また、実施例品4の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14は、実施例品3の空気極材料10が用いられた固体酸化物形燃料電池セル14に比較して、電力密度が高くなり、空気極12の熱膨張係数が低くなった。このため、複合化工程P6において衝撃固着装置30によってLaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させて、そのLaSrTiFeOの粒子の周囲にLaSrCoO或いはSmSrCoOを被覆させた粒子10aを有する空気極材料10を用いることによって、例えばボールミル等によってLaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとを混合させて複合化させた空気極材料10を用いる場合に比べ、好適に、固体酸化物燃料電池セル14の電力密度が高くなると共に空気極12の熱膨張係数が低下すると考えられる。また、上記実施例品1乃至7の空気極材料10を実施例品1乃至7のコンタクト材料10として使用した場合には、複合化工程P6において衝撃固着装置30によりLaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとを複合化させて、そのLaSrTiFeOの粒子の周囲にLaSrCoO或いはSmSrCoOを被覆させた粒子10aを有するコンタクト材料10を用いることによって、例えばボールミル等によってLaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとを混合させて複合化させたコンタクト材料10を用いる場合に比べ、好適に、固体酸化物燃料電池セル14の電力密度が高くなると考えられる。
【0050】
本実施例の実施例品1乃至7の空気極材料10によれば、空気極材料10は、LaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料である。このため、その複合材料は、従来において空気極材料10として用いられたLaSrCoFeOに比較して熱膨張係数が低くなるので、その複合材料に対する電解質や燃料極材料との熱膨張係数の差が小さくなり、固体酸化物形燃料電池セル14の耐久性が向上する。また、前記複合材料には、固体酸化物形燃料電池セル14の性能が向上するLaSrCoO或いはSmSrCoOが複合されているので、その固体酸化物形燃料電池セル14の性能が従来のLaSrCoFeOを空気極材料10として使用する場合に比べて向上する。これにより、前記複合材料を空気極材料10として使用することによって、従来に比較して固体酸化物形燃料電池セル14の性能および耐久性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施例の実施例品1乃至7の空気極材料10によれば、LaSrCoO或いはSmSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が、30〜70wt%の範囲である。このため、固体酸化物形燃料電池セル14の性能および耐久性を好適に向上させることができる。
【0052】
また、本実施例の実施例品1乃至7の空気極材料10によれば、LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5である。このため、固体酸化物形燃料電池セル14の性能および耐久性を好適に向上させることができる。
【0053】
また、本実施例の実施例品2、4乃至7の空気極材料10によれば、LaSrTiFeOの粒子26は、LaSrCoO或いはSmSrCoOの粒子28よりも大径であり、そのLaSrTiFeOの粒子26の周囲は、前記LaSrCoO或いは前記SmSrCoOによって被覆されている。このため、固体酸化物形燃料電池セル14の性能および耐久性を好適に向上させることができる。
【0054】
また、本実施例の実施例品1乃至7のコンタクト材料10によれば、そのコンタクト材料10は、LaSrCoO或いはSmSrCoOとLaSrTiFeOとの複合材料である。このため、空気極材料10とコンタクト材料10とが同じ前記複合材料からなり、空気極12とコンタクト材料10との熱膨張係数の差が好適に小さくなるので、それら空気極12とコンタクト材料10との剥離が好適に抑制される。また、コンタクト材料10には、固体酸化物形燃料電池セル14の性能が向上するLaSrCoO或いはSmSrCoOが複合されているので、固体酸化物形燃料電池セル14の性能がLaSrCoFeOをコンタクト材料10として使用する場合に比べて向上する。
【0055】
また、本実施例の実施例品1乃至7のコンタクト材料10によれば、そのコンタクト材料10は、LaSrCoO或いはSmSrCoOに対するLaSrTiFeOの複合割合が、30〜70wt%の範囲である。このため、固体酸化物形燃料電池セル14の性能を好適に向上させることができる。
【0056】
また、本実施例の実施例品1乃至7のコンタクト材料10によれば、そのコンタクト材料10は、LaSrTiFeOにおいて、TiとFeとのモル比が1:9〜5:5である。このため、固体酸化物形燃料電池セル14の性能を好適に向上させることができる。
【0057】
また、本実施例の実施例品2、4乃至7のコンタクト材料10によれば、そのコンタクト材料10において、LaSrTiFeOの粒子26は、LaSrCoO或いはSmSrCoOの粒子28よりも大径であり、そのLaSrTiFeOの粒子26の周囲は、前記LaSrCoO或いは前記SmSrCoOによって被覆されている。このため、固体酸化物形燃料電池セル14の性能を好適に向上させることができる。
【0058】
また、本実施例の実施例品1乃至7の空気極材料10、実施例品1乃至7のコンタクト材料10によれば、空気極材料10、コンタクト材料10は、固体酸化物形燃料電池セル14に用いられる。このため、その固体酸化物形燃料電池セル14の性能および耐久性を従来に比較して向上させることができる。
【0059】
続いて、本発明の他の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0060】
本実施例の固体酸化物形燃料電池セルは、空気極12とインターコネクタ24とがコンタクト材料10を使用しないで接合されている点で相違しており、その他の点では、前述の実施例1の固体酸化物形燃料電池セル14と略同様である。以下に、その固体酸化物形燃料電池セルの製造方法を図6の工程図を用いて詳細に説明する。なお、その図6の工程図において、製造工程P1乃至P8は、前述の図3の製造工程P1乃至P8と同じ内容であるので省略する。
【0061】
図6に示すように、インターコネクタ接合工程P11において、空気極塗布工程P8で反応防止層20に積層させられた空気極成形体にインターコネクタ24が接触させられ、例えば1200℃〜1400℃の焼成温度で焼成させられる。これによって、上記空気極成形体が焼結して空気極12になると共にその空気極12とインターコネクタ24とが電気的に接合する。
【0062】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0063】
たとえば、前述の実施例の図3および図6に示す製造工程P1乃至P8において、複合化工程P6およびペースト調整工程P7は、第2焼成工程P5の後に行われたが、空気極塗布工程P8前ならどこで行われても良い。
【0064】
また、本実施例の固体酸化物形燃料電池セル14において、一対のインターコネクタ22および24は、ランタンクロマイト系酸化物から構成されていたが、それ以外の材料例えば金属材料等から構成されても良い。
【0065】
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて用いられるものである。
【符号の説明】
【0066】
10:空気極材料、コンタクト材料
12:空気極
14:固体酸化物形燃料電池セル
22、24:インターコネクタ
26:第1粒子(粒子)
28:第2粒子(粒子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6