(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高分子電解質が、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、キトサン、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(アリルアミンヒドロクロライド)又は、これらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0035】
種々の態様において、本発明は、高分子電解質を使用して、平均サイズが1nm〜800nmの範囲のポリマー粒子及びポリマーゲル粒子を製造する方法を説明する。これらの粒子は、一般的に、形状は球状であり(例えば、楕円形、長円等)、膨張しようとしまいと、中心は中空であるか又は空洞を含んでいてよい。粒子は、活性成分を含んでいてもよい。
【0036】
本発明について更に説明する前に、本明細書における用語の使用に関する全般的な説明を提供することが有用であろう。
【0037】
本明細書で使用する通り、「活性成分」の語は、殺虫剤の処方における活性化合物若しくは活性化合物の混合物、又は、活性薬剤成分若しくは活性薬剤成分の混合物をいう。典型的には活性成分とは見なされない生理活性物質、例えば、香料、香味化合物、ホルモン、ホモ、オリゴ若しくはポリ核酸、又は、ペプチド等を含んでいてもよい。親水性、疎水性又は中性有機染料若しくは顔料、着色剤、油、UV光及び非UV光吸収有機分子、有機小分子、香料及び香味分子、無機塩及び錯体、中性又は帯電有機錯体、溶媒、気体、保存料、導電性化合物、熱可塑性化合物、接着促進剤、浸透促進剤、防錆剤、触媒、並びに、これらの組み合わせ等、生理活性又は非生理活性物質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、活性成分は、有機化合物である。いくつかの実施形態において、活性成分は中性有機化合物である。いくつかの実施形態において、活性成分は、約4〜約10、約5〜約9、又は、約6〜約8のpHで中性である。いくつかの実施形態において、活性成分は、上記値のいずれかの範囲のpHで中性である。いくつかの実施形態において、活性成分は非イオン性化合物である。いくつかの実施形態において、活性成分は塩でもなく、塩の成分でもない。
【0038】
本発明の活性成分の典型的な種類としては、ダニ駆除剤、除藻剤、殺鳥剤、殺菌剤(bactericide)、防カビ剤、除草剤、殺虫剤、ダニ殺虫剤、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、殺鼠剤、殺ウイルス剤、除藻剤、鳥忌避剤、交信攪乱剤、植物活性化剤、摂食阻害剤、昆虫誘引剤及び防虫剤が挙げられる。
【0039】
除草剤の活性成分は、アミノ酸合成阻害剤、細胞膜破壊剤、脂質合成阻害剤、色素合成阻害剤、苗木成長阻害剤、成長調整剤、光合成阻害剤として機能し得る。
【0040】
アミノ酸合成阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、例えば、イマゼタピル(2−[4,5−ジヒドロ−4−メチル−4−(1−メチルエチル)−5−オキソ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−エチル−3−ピリジンカルボン酸)、チフェンスルフロン(3−[[[[(4−メトキシ−6−メチル−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]−2−チオフェンカルボン酸)、チフェンスルフロン−メチル(メチル3−[[[[(4−メトキシ−6−メチル−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]−2−チオフェンカルボキシレート)、グリホサート(N−(ホスホノメチル)グリシン)が挙げられる。
【0041】
細胞膜破壊剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、ジクワット(6,7−ジヒドロジピリド[1,2−a:2’,1’−c]ピラジンジイウム)、パラコート(1,1’−ジメチル−4,4’−ビピリジニウム)が挙げられる。
【0042】
脂肪合成阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、クロジナホッププロパルギル(2−プロピニル(2R)−2−[4−[(5−クロロ−3−フルオロ−2−ピリジニル)オキシ]フェノキシ]プロパノエート)、トラルコキシジム(2−[1−(エトキシイミノ)プロピル]−3−ヒドロキシ−5−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン)が挙げられる。
【0043】
色素合成阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、メソトリオン、(2−[4−(メチルスルホニル)−2−ニトロベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン、クロマゾン(2−[(2−クロロフェニル)メチル]−4,4−ジメチル−3−イソキサゾリジノンが挙げられる。
【0044】
苗木成長阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、メトラクロル(2−クロロ−N−(2−エチル−6−メチルフェニル)−N−(2−メトキシ−1−メチルエチル)アセタミド)、トリフルアリン(2,6−ジニトロ−N,N−ジプロピル−4−(トリフルオロメチル)ベンゼンアミン)、ジフルフェンゾピル(2−[1−[[[(3,5−ジフルオロフェニル)アミノ]カルボニル]ヒドラゾノ]エチル]−3−ピリジンカルボン酸)が挙げられる。
【0045】
成長調整剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ)酢酸)、ジカンバ(3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸)、MCPA((4−クロロ−2−メチルフェノキシ)酢酸)、ピクロラム(4−アミノ−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジンカルボン酸)、トリクロピル([(3,5,6−トリクロロ−2−ピリジニル)オキシ]酢酸)が挙げられる。
【0046】
光合成阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、アトラジン(6−クロロ−N−エチル−N’−(1−メチルエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン)、メトリブジン(4−アミノ−6−(1,1−ジメチルエチル)−3−(メチルチオ)−1,2,4−トリアジン−5(4H)−オン)、ブロマシル(5−ブロモ−6−メチル−3−(1−メチルプロピル)−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン、テブチウロン(N−[5−(1,1−ジメチルエチル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イル]−N,N’−ジメチルウレア)、プロパニル(N−(3,4−ジクロロフェニル)プロパンアミド)、ベンタゾン(3−(1−メチルエチル)−1H−2,1,3−ベンゾチアジアジン−4(3H)−オン2,2−ジオキシド)、ブロモキシニル(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシベンゾニトリル)、ピリデート(O−(6−クロロ−3−フェニル−4−ピリダジニル)S−オクチルカルボノチオエートが挙げられる。
【0047】
殺虫剤の活性成分は、アセチルコリンステラーゼ阻害剤、GABA作動性塩素チャネルアンタゴニスト、ナトリウムチャネルモジュレータ、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、塩素チャネルアクチベータ、幼若ホルモン模倣体、非特異的(多部位)阻害剤、選択的同翅類摂食遮断剤、ダニ類成長阻害剤、ミトコンドリアATPシンターゼ阻害剤、プロトン勾配の崩壊を通じた酸化的リン酸化脱共役剤、ニコチン性アセチルコリンレセプターチャネル遮断剤、キチン生合成阻害剤(タイプ0及び1)、脱皮撹乱物質、エクジソンレセプターアゴニスト、オクトパミンレセプターアゴニスト、ミトコンドリア複合体I電子輸送阻害剤、ミトコンドリア複合体III電子輸送阻害剤、ミトコンドリア複合体IV電子輸送阻害剤、電圧依存性ナトリウムチャネル遮断剤、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、リアノジンレセプターモジュレータとして作用し得る。
【0048】
アセチルコリンステラーゼ阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、カルバメート(例えば、カルボフラン(2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニルメチルカルバメート)、カルボスルファン(2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニル[(ジブチルアミノ)チオ]メチルカルバメート))、及び、オルガノホスフェート化学物質(例えば、クロルピリホス−メチル(O,O−ジメチルO−(3,5,6−トリクロロ−2−ピリジニル)ホスホロチオエート))のファミリーが挙げられる。
【0049】
GABA作動性塩素チャネルアンタゴニストとしての活性性分の例は、限定するものではないが、クロルデン(1,2,4,5,6,7,8,8−オクタクロロ−2,3,3a,4,7,7a−ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン)、エンドスルファン(6,7,8,9,10,10−ヘキサクロロ−1,5,5a,6,9,9a−ヘキサヒドロ−6,9−メタノ−2,4,3−ベンゾジオキサチエピン3−オキシド)、エチプロル(5−アミノ−1−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−(エチルスルフィニル)−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル)、フィプロニル(5−アミノ−1−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−[(トリフルオロメチル)スルフィニル]−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル)が挙げられる。
【0050】
ナトリウムチャネルモジュレータとしての活性成分の例としては、限定するものではないが、DDT(1,1’−(2,2,2−トリクロロエチリデン)ビス[4−クロロベンゼン])、メトキシクロル(1,1’−(2,2,2−トリクロロエチリデン)ビス[4−メトキシベンゼン])、ピレトリン化合物(例えば、ビフェントリン((2−メチル[1,1’−ビフェニル]−3−イル)メチル(1R,3R)−rel−3−[(1Z)−2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート)、ラムダ−シハロトリン((R)−シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル(1S,3S)−rel−3−[(1Z)−2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート)、ピレトリン((RS)−3−アリル−2−メチル−4−オキソシクロペント−2−エニル(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレート)、テトラメトリン((1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル)メチル2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート))が挙げられる。
【0051】
ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストとしての活性成分の例としては、限定するものではないが、ニコチン及びネオニコチノイド(例えば、アセタミプリド、イミダクロプリド、チアメトキサム)が挙げられる。
【0052】
塩素チャネルアクチベータとしての活性成分の例としては、限定するものではないが、ミルベマイシン(例えば、(6R,25R)−5−O−デメチル−28−デオキシ−6,28−エポキシ−25−メチルミルベマイシンBとのミルベメクチン((6R,25R)−5−O−デメチル−28−デオキシ−6,28−エポキシ−25−エチルミルベマイシンB混合物)及びアベルメクチン(例えば、アバメクチン(80%の(2aE,4E,8E)−(5’S,6S,6’R,7S,11R,13S,15S,17aR,20R,20aR,20bS)−6’−[(S)−sec−ブチル]−5’,6,6’,7,10,11,14,15,17a,20,20a,20b−ドデカヒドロ−20,20b−ジヒドロキシ−5’,6,8,19−テトラメチルー17−オキソスピロ[11,15−メタノ−2H,13H,17H−フロ[4,3,2−pq][2,6]ベンゾジオキサシクロオクタデシン−13,2’−[2H]ピラン]−7イル2,6−ジデオキシ−4−O−(2,6−ジデオキシ−3−O−メチル−a−L−アラビノ−ヘキサピラノシル)−3−O−メチル−a−L−アラビノ−ヘキソピラノシドと20%の(2aE,4E,8E)−(5’S,6S,6’R,7S,11R,13S,15S,17aR,20R,20aR,20bS)−5’,6,6’,7,10,11,14,15,17a,20,20a,20b−ドデカヒドロ−20,20b−ジヒドロキシ−6’−イソプロピル−5’,6,8,19−テトラメチル−17−オキソスピロ[11,15−メタノ−2H,13H,17H−フロ[4,3,2−pq][2,6]ベンゾジオキサシクロオクタデシン−13,2’−[2H]ピラン]−7−イル2,6−ジデオキシ−4−O−(2,6−ジデオキシ−3−O−メチル−a−L−アラビノ−ヘキソピラノシル)−3−O−メチル−a−L−アラビノ−ヘキサピラノシドとの混合物、又は、アベルメクチンB1)、及び、エマメクチンベンゾエート((4’R)−4’−デオキシ−4’−(メチルアミノ)アベルメクチンB1ベンゾエート(塩))が挙げられる。
【0053】
ミトコンドリアATPシンターゼ阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、ジアフェンチウロン(N−[2,6−ビス(1−メチルエチル)−4−フェノキシフェニル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)チオウレア)、プロパルギット(2−[4−(1,1−ジメチルエチル)フェノキシ]シクロヘキシル2−プロピニルスルファイト)、テトラジホン(1,2,4−トリクロロ−5−[(4−クロロフェニル)スルホニル]ベンゼン)が挙げられる。
【0054】
キチン生合成阻害剤(タイプ0)としての活性成分の例としては、限定するものではないが、ベンゾイルウレア(例えば、ビストリフロン(N−[[[2−クロロ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]−2,6−ジフルオロベンズアミド)、ジフルベンズロン(N−[[(4−クロロフェニル)アミノ]カルボニル]−2,6−ジフルオロベンズアミド)、テフルベンズロン(N−[[(3,5−ジクロロ−2,4−ジフルオロフェニル)アミノ]カルボニル]−2,6−ジフルオロベンズアミド)が挙げられる。
【0055】
アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤としての活性成分の例としては、限定するものではないが、テトロン酸及びテトラミン酸誘導体(例えば、スピロジクロフェン(3−(2,4−ジクロロフェニル)−2−オキソ−1−オキサスピロ[4.5]dec−3−エン−4−イル2,2−ジメチルブタノエート))が挙げられる。
【0056】
防カビ剤の活性成分は、核酸合成、有糸及び細胞分裂、呼吸、タンパク質合成、信号伝達系、脂質及び膜合成、膜中のステロール生合成、グルカン合成、ホスト植物防衛誘導、多部位接触活性、及び、他の未知の作用機構を標的としてもよい。
【0057】
核酸合成を標的とする活性成分の例としては、限定するものではないが、アシルアラニン(例えば、メタルキシル−M(メチルN−(2,6−ジメチルフェニル)−N−(メトキシアセチル)−D−アラニネート))、イソチアゾロン(例えば、オクチリノン(2−オクチル−3(2H)−イソチアゾロン))が挙げられる。
【0058】
有糸及び細胞分裂を標的とする活性成分の例としては、限定するものではないが、ベンズイミダゾール(例えば、チアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンズイミダゾール))、チオファネート(例えば、チオファネート−メチル(ジメチル[1,2−フェニレンビス(イミノカルボノチオイル)]ビス[カルバメート]))、トルアミド(例えば、ゾキサミド(3,5−ジクロロ−N−(3−クロロ−1−エチル−1−メチル−2−オキソプロピル)−4−メチルベンズアミド)、ピリジニルメチル−ベンズアミド(例えば、フルオピコリド(2,6−ジクロロ−N−[[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル]ベンズアミド))が挙げられる。
【0059】
呼吸を標的とする活性成分の例としては、限定するものではないが、カルボキサミド化合物(例えば、フルトラニル(N−[3−(1−メチルエトキシ)フェニル]−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド]、カルボキシン(5,6−ジヒドロ−2−メチル−N−フェニル−1,4−オキサチイン−3−カルボキサミド))、ストロビルリン化合物(例えば、アゾキシストロビン(メチル(αE)−2−[[6−(2−シアノフェノキシ)−4−ピリミジニル]オキシ]−α−(メトキシメチレン)ベンゼンアセテート)、ピラクロストロビン(メチル[2−[[[1−(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル]オキシ]メチル]フェニル]メトキシカルバメート)、トリフロキシストロビン(メチル(αE)−α−(メトキシイミノ)−2−[[[[(1E)−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]ベンゼンアセテート)、及び、フロキサストロビン((1E)−[2−[[6−(2−クロロフェノキシ)−5−フルオロ−4−ピリミジニル]オキシ]フェニル](5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジン−3−イル)メタノンO−メチルオキシム))が挙げられる。多部位接触活性を標的とする活性成分の例としては、限定するものではないが、ジチオカルバメート化合物(例えば、チラム(テトラメチルチオペルオキシジカルボニック(dicarbonic)ジアミン))、フタルイミド化合物(例えば、キャプタン(3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−[(トリクロロメチル)チオ]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン))、クロロニトリル化合物(例えば、クロロタロニル(2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル))が挙げられる。
【0060】
非生理活性な活性成分の例は、赤色染料2番及びホスタソールイエローを含む疎水性染料、ピレン及びその誘導体を含む有機小分子、並びに、メタノール、エタノール、エチルアセテート及びトルエンを含む溶媒である。
【0061】
本明細書で使用される通り、「高分子電解質」の語は、イオン化された又はイオン化可能な基を含んだポリマーをいう。イオン化された又はイオン化可能な基は、カチオン性、アニオン性又は両性イオン性であってよい。好ましいカチオン性基は、アミノ又は第4級アンモニウム基であるのに対し、好ましいアニオン性基は、カルボキシレート、スルホネート及びホスフェートである。高分子電解質は、ホモポリマー、コポリマー(ランダム、交互(alternate)、グラフト又はブロック)であってよい。それらは、合成されるか、又は、天然に存在してもよく、直鎖、分岐、超分岐又は樹状であってもよい。カチオン性ポリマーについては、限定するものではないが、例えば、ポリ(アリルアミン)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDA)、ポリ(リシン)、キトサン、又は、任意のポリカチオン性ポリマーの混合物が挙げられる。アニオン性ポリマーについては、限定するものではないが、例えば、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、ポリ(グルタミン酸)、アルギニン酸、カルボキシメチルセルロール(CMC)、フミン酸、又は、ポリアニオン性ポリマーの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリマーは水溶性である。
【0062】
本明細書で使用される通り、「媒質」の語は、ポリマー溶液を形成するために使用される溶媒(又は溶媒の混合物)をいう。溶媒は、均質又は不均質であり、限定するものではないが、とりわけ、水、有機、全フッ素置換された、イオン性液体若しくは液体二酸化炭素(CO
2)、又は、溶媒の混合物であってよい。種々の実施形態において、溶媒は水である。
【0063】
組成物
一態様において、本発明は、活性成分を含んだポリマーナノ粒子を提供する。
図1は、典型的なナノ粒子−活性成分組成物を説明する。ポリマーナノ粒子活性成分複合材料は、成分単独では見られない改善した物理的及び化学的特徴を有し得る。例えば、ポリマーナノ粒子は、活性成分の有効性を変化させることなく、活性成分の水溶性を改善することができる。いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、活性成分単独と比較して、又は、典型的な活性成分配合物中と比較して、活性成分の土壌移動度を増加させるか若しくは低下させることができる。いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、土壌の標的領域への土壌移動度を制御するために使用することができる。いくつかの活性成分は、示された使用には概して効果的であるが、低い水溶性を原因とする使用効率の悪さ、葉での広がり(又は葉表面の湿潤性)の効率の悪さ、クチクラ浸透性の効率の悪さ、又は、植物全体に亘る総じて不十分な転流に悩まされている。これは、配合における追加の化合物の使用と、より高濃度の活性成分を必要とする。活性成分配合物は典型的には、これらの問題を解決するために界面活性剤(例えば、アミンエトキシレート)及び有機溶媒を使用するが、これらの界面活性剤と有機溶媒とは、毒性、環境又は他の負の影響を有することもある。本発明における活性成分を含んだポリマーナノ粒子は、有効性を同様のレベルに保ちつつも、界面活性剤、有機溶媒の必要性を低減するか又は排除することさえ可能であり、且つ、活性成分の濃度要求を低下させることも可能である。いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、活性成分に対して一般的には親和性を持たない表面又は塗膜に対する、活性成分の親和性を制御するために使用することができる。
【0064】
ポリマーナノ粒子は、高分子電解質を含んでいてもよく、且つ、本発明の方法に従って調製されてもよい。ポリマーナノ粒子は、1以上のポリマー分子を含んでいてもよく、これは、同じ種類のポリマーであっても又は異なるポリマーであってもよい。ポリマー又はポリマーナノ粒子中のポリマーの分子量は、約100,000〜250,000ダルトン、約250,000ダルトンを超える、約300,000ダルトンを超える、約350,000ダルトンを超える、約400,000ダルトンを超える、約450,000ダルトンを超える、約500,000ダルトンを超える、及び、約5,000〜100,000ダルトン、又は、約5,000ダルトン未満であってよい。ポリマー又はナノ粒子中のポリマーの分子量は、上記分子量のいずれかの範囲内であってよい。多数のポリマーが使用される場合、それらは、分子量が異なっていてもよく、例えば、ポリマーナノ粒子は、高分子量及び低分子量のポリ(アクリル酸)ポリマーを含んでいてもよい。
【0065】
分子量の差は、低分子量ポリマー及び高分子量ポリマーが相補的な官能基;例えば、上記の「クリック(Click)」ケミストリーに関連する能力を有している場合に効果的であってもよい。この場合、低分子量ポリマーは、ナノ粒子中の高分子量ポリマーの架橋剤として作用している。
【0066】
ポリマーナノ粒子は、化学的に又は光若しくは微粒子照射(例えば、ガンマ線照射)によって架橋されてもよい。架橋密度は、ポリマーナノ粒子の内部からナノ粒子の周囲に物質を輸送することを制御すべく変更されてもよい。ポリマーナノ粒子は、その内部に不連続な空洞を含むか、又は、多孔質の網目であってもよい。種々の実施形態において、ナノ粒子は、平均径が、約1nm〜約10nm;約10nm〜約30nm;約15nm〜約50nm;約50nm〜約100nm;約100nm〜約300nmのうちの1以上の範囲である。「平均径」の語は、複合ナノ粒子のある程度の特定の対称性(例えば、球体、楕円体など)を暗示するものではない。むしろ、ナノ粒子は、非常に不規則且つ非対称である可能性がある。
【0067】
ポリマーナノ粒子は、親水性(イオン化した、イオン化可能な、又は、極性非電荷の)、及び、疎水性領域を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは両親媒性である。いくつかの実施形態において、ポリマーは両親媒性でなくてもよい。ポリマーナノ粒子が、極性又は親水性溶媒中、高分子電解質を含んでいる場合、高分子電解質は、その表面においてイオン化された又はイオン化可能な基が豊富となり、且つ、その内部において疎水基が豊富となるように、それ自体で組織化することができる。いくつかの実施形態において、高分子電解質は、両親媒性である。いくつかの実施形態において、高分子電解質は両親媒性ではない。これは、相対的に親水性の又は極性の溶媒中で生じてもよい。疎水性溶媒中では、逆のプロセスが生じてもよい;即ち、高分子電解質は、その表面において疎水基が豊富となり、且つ、その内部においてイオン化された又はイオン化可能な基が豊富となるように、それ自体で組織化することができる。この効果は、親水性及び疎水性領域を有する高分子電解質の適切な選択によって増強されてもよく;また、高分子電解質の修飾、例えば、高分子電解質への疎水性領域の付加によって増強されてもよい。このプロセスは、蛍光プローブ、例えば、ピレン及びその誘導体等を使用して調べることができ、これらは、極性感受性の発光スペクトルを有する。より高い極性は通常、より親水性のミクロ環境に関連するのに対し、より低い極性は、より疎水性のミクロ環境に関連する。ピレンを使用して調べる場合に、さらに高い水溶性又は分散性を有する低極性のポリマーナノ粒子は、ピレンを装填する疎水性領域と、該ポリマーナノ粒子を溶解させるか又は分散させる親水性領域とを有することが予想される。
【0068】
ポリマーの修飾は、接合、共重合、グラフト及び重合、又は、フリーラジカルへの曝露を含む種々の方法で行われてよい。修飾は、ポリマーナノ粒子の調製の前、その間又はその後に予定されてもよい。ポリマーナノ粒子調製中のポリマー修飾の例は、ポリ(アクリル酸)に関連する。適当な条件下、UVに曝露されるポリ(アクリル酸)は、その酸基の一部からカルボキシル基を除去し、それによって系の疎水性を増加させる。同様の処理が、他の種類のポリマーに使用されてもよい。ポリマーの修飾は、適当な条件下、滴定、分光法又は核磁気共鳴(NMR)を使用して観察することができる。ポリマーの修飾は、サイズ排除又は親和性クロマトグラフィーを使用して観察することもできる。ポリマーナノ粒子の疎水性及び親水性領域は、溶媒効果を使用して観察することができる。ナノ粒子が、水等の第1極性溶媒中に分散することが可能な場合、曝露表面疎水性を持たなければならないことは明らかである。このことは、ゼータ電位測定等の表面電位分析を使用して確認することもできる。ポリマーを、第1極性溶媒よりも疎水性の、混和性、部分的混和性又は非混和性の第2溶媒の添加によっても膨張させることができる場合、このことは、ナノ粒子の内部に疎水性が存在することを実証する。膨張は、光散乱を使用して観察される粒径の変化、又は、溶媒のナノ粒子への分配による非混和性の第2溶媒相の消滅によって観察することができる。第1疎水性溶媒及び第2親水性溶媒を用いた逆の実験を使用して、ナノ粒子表面上の疎水基及びナノ粒子内部の親水基の富化を観察することができる。
【0069】
本発明のポリマーナノ粒子は、活性成分を含んでいる。活性成分は、ポリマーに共有結合するか、又は、ポリマーと物理的に会合してもよい。ポリマーに化学的に会合した活性成分を含んだポリマーナノ粒子を生成させる例示的な方法は、本明細書の別の部分で説明した。活性成分は、非共有結合的な方法でポリマーナノ粒子のポリマーに、物理的又は化学的に会合してもよい。ポリマーナノ粒子は、多数のポリマーを含んでいてもよく、活性成分は、ポリマーナノ粒子中で、1つ又は多数のポリマーと物理的又は化学的に会合してもよい。物理的会合は、非共有的相互作用、例えば、電荷−電荷相互作用、疎水性相互作用、ポリマー鎖の絡み合い、親和性対相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又は、イオン性相互作用等によって定義される。
【0070】
また、活性成分とポリマーナノ粒子との間で相互作用はほとんどないが、活性成分は、ポリマーナノ粒子から抜け出ることを物理的に防ぐため(例えば、立体的に)、ポリマーナノ粒子の内部に捕捉されるか又はポリマーナノ粒子と会合していてもよい。活性成分は、主にポリマーナノ粒子の内部、ポリマーナノ粒子の表面、又は、ポリマーナノ粒子全体に亘って存在していてもよい。ポリマーナノ粒子が空洞を有する場合、活性成分は、主に該空洞の内部に存在していてもよい。ポリマーナノ粒子が疎水性領域を有する場合、活性成分は、該活性成分の化学的性質に応じて、該疎水性領域又は非疎水性領域と会合していてもよい。
【0071】
本発明はまた、活性成分を含んだポリマーナノ粒子の配合物を提供する。本発明の活性成分を含んだポリマーナノ粒子は、種々の方法で配合することができる。一部の例では、それらは、凍結乾燥、噴霧乾燥、トレー乾燥、真空乾燥、又は、他の乾燥方法によって乾燥して固体とすることができる。一旦乾燥すると、それらは、一定時間保存され、そして、使用する必要があるときに、適当な溶媒に再懸濁される。特定の実施形態において、乾燥固体は、ハンドリングのために、粒状化されるか、錠剤化されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、溶媒中に活性成分を含んだポリマーナノ粒子は、ゲルに処方されてもよい。これは、ゲル化が生じるまで溶媒を除去することによって行われてもよい。いくつかの実施形態において、この溶媒は、水性である。一旦ゲル化が生ずると、得られるゲルは保存され、溶媒の添加によって溶媒に直接的に供給するか又は再分散させることができる。いくつかの実施形態において、活性成分を含んだポリマーナノ粒子は、懸濁液又はエマルションへと処方されてもよい。これは、当該分野で既知の標準的な配合技術を使用して行うことができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、改善した溶解度、分散性、安定性又は他の機能性を、それと会合する活性成分に提供することができる。この一例は、活性成分を含んだ高分子電解質系ポリマーナノ粒子が水性溶媒中に分散する場合である。活性成分の溶解度が、高分子電解質よりも低い場合、高分子電解質ナノ粒子との会合は、活性成分が溶媒に溶解又は分散する能力を向上させることができる。このことは特に、処方又は使用が、増加した水溶性又は分散性を必要とする場合、水溶性が低い活性成分に有益である。特定の場合には、ポリマーナノ粒子が、活性成分に更なる溶解性、分散性、安定性又は他の機能性を提供するため、特定の製剤補助剤、例えば、製剤化剤、界面活性剤、分散剤又はアジュバント等の使用を低減するか又は排除することができる。種々の実施形態において、得られる系は、界面活性剤の添加を必要としない。活性成分が会合するポリマーナノ粒子は、アニオン性及び非イオン性界面活性剤成分の両方を有していてもよい。このことは、ナノ粒子が、葉のクチクラに対して優れた浸透性を有する可能性があることを意味しており、更に、ナノ粒子中に存在する非イオン性又はイオン性成分の量に応じて、水性又は非水性分散液中での増加した分散性を意味する可能性もある。調節可能なポリ(エチレンオキシド)部分を有する界面活性剤は、雑草防除に必要なグリホサートの量を実質的に低下させることができる。この増加した効果は、増加した水和及び植物全体に亘る増加した移動(転流)による改善したクチクラ浸透性に起因する可能性がある。
【0074】
更には、適用される活性成分の量は、特には、グリホサート等の帯電活性成分のため、硬水適用で増加する可能性がある。これは、活性成分が硬水のイオンによって不活性化される可能性があるためであり、同じ効果を有するためにより多くの活性成分を使用する必要がある。ポリマーナノ粒子が、イオン化された又はイオン化可能な基を有する場合、該基は、天然の硬水イオンスカベンジャーであろう。種々の実施形態において、700ppmの硬水で、それらは、典型的な適用率で硬水イオンの全てを実質的に除去するであろう。
【0075】
いくつかの実施形態において、活性成分を含んだポリマーナノ粒子が、活性物質の物理的及び化学的特性(例えば、土壌移動度及び水溶性を含む)を増強する。特定の実施形態において、活性成分を含んだポリマーナノ粒子は、活性物質の土壌移動度を増加させることができる。低い移動度の活性物質は、活性成分の土壌表面又は有機物質への結合によって、又は、低い水溶性に起因する活性成分の不十分な拡散によって生じさせてもよい。活性成分を含んだポリマーナノ粒子を提供することによって、土壌移動度が増強されてもよい。活性成分を含んだポリマーナノ粒子が水溶性又は分散性である場合、土柱全体に亘る増強した拡散を提供することができる。ポリマーナノ粒子が安定であり、土壌中の土壌粒子又は有機物質の表面に付着しない場合に、これが増強されてもよい。この効果は、ポリマーナノ粒子を含まない活性成分と比較して増加した水溶性又は分散性、土壌中の孔よりも小さい粒径に起因した土柱全体に亘る増加した拡散を含む、いくつかの現象によって生ずる可能性がある。
【0076】
特定の実施形態において、ポリマーナノ粒子の結合が、調節されるか又は変更されてもよい。これは、ポリマーの表面化学の修飾によって達成することができる。土壌は、種々の帯電部分を含んでおり、土壌に応じて陰性及び陽性部分を含んでいてもよい。ポリマーナノ粒子と土壌表面との相互作用は、異なる高分子電解質又はポリマーの混合物を使用することによって調整することができる。ナノ粒子のポリマー組成を変更することによって、土壌表面に対するその親和性を変更することができ、故に、ナノ粒子の移動度が変化する可能性がある。例えば、ポリマーが、土壌表面に対して高い親和性を有する基を含む場合、それらは、例えば、土壌表面に対するその親和性の減少を促進する非イオン性界面活性剤系ポリマーによって修飾されてもよい。また、ポリマーが、土壌表面に対して高い親和性を有する基を含まないが、土壌中でナノ粒子を固定することが望ましい場合には、ポリマーは、土壌表面に対して高い親和性を有する基によって修飾されてもよい。かかる基としては、限定するものではないが、アミン、アミド、第4級アンモニウム、特定の条件においては、カルボキシルが挙げられる。これは、既に化学基を有する活性成分を含んだポリマーナノ粒子に、土壌表面に対して高い親和性を提供することによっても達成されてもよい。
【0077】
活性成分を含んだポリマーナノ粒子は、活性成分の誘発性放出、持続放出又は制御放出を有するように処理されてもよい。ポリマーナノ粒子が、適当な溶媒に配合される場合、ポリマーナノ粒子からの活性成分の放出は、いくつかの方法で生じ得る。第1に、放出は、拡散介在性であってよい。拡散介在性放出の速度は、ポリマーナノ粒子の架橋密度を増加又は減少させることによって調節されてもよい。該速度は、ポリマーナノ粒子中の活性成分の位置、即ち、ポリマーナノ粒子の内部に主に存在するか、ポリマーナノ粒子の表面に主に存在するか、又は、ポリマーナノ粒子の全体に亘って分散しているかに応じて調節されても良い。
【0078】
特定の実施形態において、活性成分がポリマーナノ粒子表面とポリマーナノ粒子の内部とに存在する場合、放出は、2つの段階、即ち、ポリマーナノ粒子表面上の活性成分の放出に関連する「破裂」放出と、その後の該ナノ粒子内部からの活性成分の、より緩徐な拡散介在性の放出を含んでいてもよい。放出速度は、活性成分が、ポリマー又はポリマーナノ粒子を含んだポリマーに対して化学的親和性又は会合を有するかによっても左右される。活性成分とポリマーナノ粒子との間のより強力な化学的親和性又は会合は、ポリマーナノ粒子からの活性成分のより緩徐な放出を意味し、その逆もまた同様である。従って、様々な疎水性を有するポリマーナノ粒子は、化学的修飾によって調整され、「同類は同類に溶解する」の原則に基づいて、異なる疎水性を有する活性成分を装填する要件を充足させることができる。
【0079】
一部の例では、ナノ粒子の放出が誘発されてもよい。誘発のメカニズムは、限定するものではないが、pH変化、溶媒条件、塩の添加若しくは除去、温度変化、浸透圧若しくは大気圧変化、光の存在、又は、(酵素、細菌及びフリーラジカルのような)ポリマー分解剤の添加が挙げられる。例えば、ポリマーナノ粒子がポリ酸を含んでおり、ナノ粒子の周囲のpHが変化する場合、ポリ酸は、プロトン化状態から非プロトン化状態へと変化してもよく、その逆も同様である。これは、ポリマーナノ粒子と会合した活性成分のポリマーへの親和性を変更してもよい。親和性が減少する場合、これは、活性成分の誘発性応答を生じてもよい。周囲の塩又はイオン濃度の変化、並びに、周囲の温度及び気圧の変化は、ナノ粒子を含んだポリマーの再組織化を生じてもよい。ポリマーの再組織化は、会合した活性成分をナノ粒子の外部へと移動させてもよい。ナノ粒子の光(例えば、UV放射)への暴露又は(触媒及びフリーラジカルのような)他のポリマー分解剤は、ポリマーの分解によって活性成分の放出を開始してもよい。ナノ粒子からの活性成分の放出は、ナノ粒子と会合した活性成分の量を測定し、それをナノ粒子環境における「フリーの」活性成分量と比較することによって観察することができる。これは、ナノ粒子とその周囲とを別々にサンプリングすることにより、即ち、例えば、膜濾過及びその後のHPLC又はUV分光法による各々の画分中の活性成分の測定によってナノ粒子を分離することにより、行うことができる。実施例で記載するように、これを行う1つの方法は、接線流量濾過カプセルの使用を含む。一部の例において、ナノ粒子と会合した活性成分は、溶媒の添加によって抽出する必要があるだろう。
【0080】
いくつかの実施形態において、ピレン等その誘導体のいくつか等の活性成分を環境感受性蛍光プローブとして使用して、ポリマーナノ粒子ミクロ環境の相対的疎水性を特徴付けることができる。ピレンモノマーの発光スペクトルにおける第1及び第3の振電バンドの強度比(I
1/I
3)は、モノマーのミクロ環境に対して感受性が強く、本明細書に記載された方法を使用して製造した異なるポリマーナノ粒子の疎水性を測定するための測定基準として使用されてもよい。本明細書で記載される方法を使用して作製したナノ粒子の疎水性は、ポリマーナノ粒子を作製するために使用される、溶液のpH及びポリマーによって決まる。pH3〜6では、o−ジクロロベンゼン(光化学及び光生物学(Photochem. Photobiol.)1982年,35,17)に類似したポリマーナノ粒子のミクロ環境が、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)又はポリ(メタクリル酸−co−エチルアクリレート)(P(MAA−co−EA)からポリマーナノ粒子を作製することによって得られるのに対し、ジオキサンに類似した、より疎水性の低いミクロ環境が、Zn
2+−折り畳まれたポリアクリル酸ナノ粒子から得られる。グリセロールに類似したミクロ環境が、Na
+−折り畳まれたポリアクリル酸ナノ粒子を作製することによって得ることができる。同様に、6〜10のpH範囲では、ナノ粒子を作製するのに使用されるポリマーに応じて、異なるミクロ環境を得ることができる。メチレンクロリドに類似したミクロ環境が、PMMA又はP(MAA−co−EA)ナノ粒子から得られるのに対し、グリセロールに類似した、より疎水性の弱いミクロ環境が、Na
+−折り畳まれたポリアクリル酸ナノ粒子から得られる。
【0081】
いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、中性有機染料(例えば、ホスタソールイエロー及び赤色染料2番)等の疎水性分子及び他の分子の水溶液中での分散性を増加させてもよい。これらの中性有機染料又は分子は、水溶液中でポリマーナノ粒子よりも溶解度が非常に低いが、ポリマーナノ粒子の疎水性領域との会合は、溶媒中で溶解又は分散する能力を増加させてもよい。特定の場合には、ポリマーナノ粒子が、更なる溶解性、分散性、安定性又は他の機能性を活性成分に提供するため、これらの活性成分を溶解性にする更なる分散剤の必要性がない。
【0082】
ポリマーの折り畳み
溶液中でのポリマーのコンフォメーションは、溶媒との相互作用、濃度、及び、存在する可能性のある他の化学種の濃度を含む種々の溶液条件によって決定される。ポリマーは、pH、イオン強度、架橋剤、温度及び濃度に応じて、コンフォメーション変化を生じてもよい。高分子電解質は、高い電荷密度で、例えば、ポリマーの「モノマー」単位が完全に帯電する場合、類似する帯電モノマー単位間の静電反発力によって拡張したコンフォメーションを取る。塩の添加又はpH変化によるポリマーの電荷密度の減少は、拡張したポリマー鎖の、より密に充填した球形への、即ち、折り畳みコンフォメーションへの転移をもたらすことができる。折り畳み転移は、十分に小さい電荷密度で静電反発力を覆す、ポリマーセグメント間の引力相互作用によって促進される。同様の転移が、ポリマーの溶媒環境の変化によって誘発され得る。この折り畳まれたポリマーは、それ自体、ナノスケールの寸法であり、それ自体、ナノ粒子である。非帯電ポリマー、例えば、低い臨界溶液温度を有するポリマー(例えばポリ−(n−イソプロピルアクリルアミド)(「NIPAM」)等)に関しては、溶媒条件の変化を使用して同様の折り畳み転移を促進することができる。また、非帯電ポリマーの折り畳みは、適当な条件下、非溶媒の添加によって生じさせることができる。本明細書及び特許請求の範囲において、「折り畳まれたポリマー」の語は、ほぼ球状の形状、一般的には回転楕円体、及び、細長い又は多葉性コンフォメーションの、ナノメートル寸法の折り畳まれたポリマーをいう。この折り畳みコンフォメーションは、粒子内架橋によって永久的なものとされてもよい。架橋化学には、水素結合形成、新規な結合を形成する化学反応、又は、多価イオンとの配位が含まれる。架橋剤は、ポリマーが折り畳まれる前又は後に添加されてもよい。
【0083】
接合(conjugation)
高分子電解質等のポリマーの官能基の一部は、接合に使われるか、又は、他の官能基に変換されてもよい。これらの官能基は、他の用途の中でも、例えば、架橋、連結部位、重合、粒子内及び粒子間安定化のために使用することができる。例えば、二官能性分子である、アルコール基と潜在的なメタクリレート基とを含んだ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、エステル結合形成によって、ポリ(アクリル酸)(PAA)のカルボン酸基と反応し、カルボン酸基をメタクリレート基へと変換することができる。メタクリレート基は、UV放射又は高温に曝露した場合に架橋することができる。結果として、PAA鎖に沿って連結した多くのメタクリレート基が設計され、故に、架橋の程度が制御され得る。別の例では、酸クロリドと潜在的なメタクリレート基とを含んだメタクリロイルクロリドを、アミド結合の形成によってキトサンのアミン基と反応させ、アミン基をメタクリレート基に変換することができる。メタクリレート基は、UV放射又は高温に曝露した場合に、架橋剤であってもよい。結果として、キトサン骨格に沿って連結した多くのメタクリレート基を設計することができ、故に、架橋の程度も制御することができる。
【0084】
別の例として、末端アルコール基を含んだメトキシ終端ポリ(エチレングリコール)(mPEG)が、ポリ(アクリル酸)のカルボン酸基と反応してエステル結合を形成し、mPEGをPAAポリマーに付着させることができる。結果的に、ポリマー鎖に沿って連結した多くのPEG基を設計し、制御することができる。PAA等のmPEG修飾ポリマーはいくつかの特徴を有する。
【0085】
mPEG修飾ポリマーから形成したナノ粒子は、カルボン酸基からの静電相互作用若しくはPEG基からの立体反発、又は、これら双方の組み合わせによって安定化されてもよい。別の例としては、アリル、ビニル、スチリル、アクリレート及びメタクリレート基を、高分子電解質に接合し、重合可能部分として機能させることができる。アニオン性ポリマー中のカルボン酸部分と反応することができ、且つ、架橋のために重合可能な基を残す可能性のある二官能性分子の例としては、限定するものではないが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(「HEA」)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、2−アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、アリルアミン、アリルアルコール、1,1,1−トリメチロールプロパンモノアリルエーテルが挙げられる。薬剤分子、活性成分化合物又は生体分子もまた、標的送達のために高分子電解質に接合させることができる。蛍光分子を、高分子電解質に組み込み、蛍光プローブとして機能させることもできる。ポリマーのpH感受性を増加させるため、又は、他の理由により、短いアルキル鎖等の単純な疎水基を、高分子電解質に連結することができる。相補的な反応基を、同じポリマー鎖又は別のポリマー分子に組み込み、架橋を改善することもできる。これらの分子の組み合わせを、同じポリマー鎖又は別のポリマー分子に組み込み、個々の分子が異なる目的を果たしてもよい。例えば、重合可能な基、HEMA及び活性成分分子は、修飾され、同じポリマー鎖に連結することができるのに対し、HEMA基は架橋に使用され、活性成分は、活性成分の装填を強化すること又は活性を提供するために使用される。
【0086】
接合は、ポリマーナノ粒子の調製前又は調製後に行われてよい。
【0087】
架橋
特定の実施形態では、本発明のポリマー粒子を架橋することが望ましい。架橋は、光、温度、化学量論的試薬によって、又は、塩若しくは触媒の存在下、誘発することができる。架橋は、折り畳まれたナノ粒子内の表面層若しくは特定の位置、又は、粒子全体に亘って生じてもよい。光誘発性架橋は、種々の波長のUV及び可視光によって、空気中又は不活性環境で、光開始剤を使用するか又は使用せずに誘発することができる。UV波長領域において活性化する光開始剤の例としては、限定するものではないが、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(イルガキュア819、チバビジョンコーポレーション)、アセトフェノン、及び、ベンゾフェノン(例えば2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェン等)が挙げられる。可視光波長領域で活性化する光開始剤の例としては、限定するものではないが、例えば、ベンジル及びベンゾイン化合物、並びに、カンファキノンが挙げられる。架橋反応は、触媒の存在下又は非存在下、外部架橋剤の添加によって誘発されてもよい。PAAを架橋するために使用される外部架橋剤の例としては、限定するものではないが、例えば、二官能性又は多官能性アルコール(例えば、エチレングリコール、エチレンジオキシ−ビス(エチルアミン)、グリセロール、ポリエチレングリコール)、二官能性又は多官能性アミン(例えば、エチレンジアミン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、JEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミン(ハンツマン)、ポリ(エチレンイミン))が挙げられる。これらの多官能性アミンは、アルカリ性の性質のため、折り畳み剤として使用することができ、ポリマーに更なる官能基を付与することを促進することができ、蛍光プローブとしてピレンを使用して特徴付けられる修飾された疎水性又は極性を含む。この反応には往々にして触媒が必要とされる。かかる触媒としては、限定するものではないが、カルボジイミド化合物、例えば、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド)(「EDC」)が挙げられる。化学架橋剤の他の例としては、限定するものではないが、二官能性若しくは多官能性アジリジン(例えば、XAMA−7、バイエルマテリアルサイエンス有限責任会社)、二官能性若しくは多官能性エポキシ、又は、2価若しくは多価イオンが挙げられる。
【0088】
光又は熱によって開始される架橋反応を増強するべく、高分子電解質鎖に沿って、重合可能な基を共有結合的に連結させてもよい。重合可能基を高分子電解質鎖に連結させる方法は周知である。かかる反応の例としては、限定するものではないが、例えば、エステル化、アミド化、付加又は縮合反応が挙げられる。重合可能基の例としては、アリル、ビニル、スチリル、アクリレート及びメタクリレート部分が挙げられる。アニオン性ポリマー中のカルボン酸部分と反応することができ、且つ、架橋のための重合可能基を残すことのできる分子の例としては、限定するものではないが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、2−アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、アリルアミン、アリルアルコール、1,1,1−トリメチロールプロパンモノアリルエーテルが挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、相補的な反応性対と組み合わせた高分子電解質が使用される。これらの反応基は、特異的な条件で活性化し、且つ、制御されてもよい。ポリマー粒子の形成後、これらの反応基は、触媒が添加されるまで反応しない。アジドとアルキン基との典型的な反応は、「クリック反応」として既知であり、この反応のための一般的な触媒系は、Cu(SO
4)/アスコルビン酸ナトリウムである。特定の実施形態において、この種の反応は、化学的架橋に用いられてもよい。
【0090】
特定の実施形態において、カルボキシレート又はアミンを含んだ高分子電解質は、適当なジアミン又はジカルボキシ官能性架橋剤と活性化剤とを使用して、カルボジイミド化学によって架橋することができる。アミド形成のためカルボキシ基を活性化するのに使用される典型的な化学物質としては、限定するものではないが、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミドが挙げられる。ジ−アミン官能性架橋剤としては、限定するものではないが、エチレンジアミン、O,O’−ビス(2−アミノエチル)オクタデカエチレングリコール、PEG−ジアミン、1,3−ジアミノプロパン、2,2’(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)、ジェファミン(登録商標)ポリエーテルアミン(ハンツマン)、ポリ(エチレンイミン)が挙げられる。
【0091】
ポリマーの折り畳みによるポリマー粒子の形成
種々の態様において、本発明は、活性成分を含んだポリマーナノ粒子の製造方法を説明する。一態様において、ポリマーは、高分子電解質を含み、ナノ粒子は、高分子電解質ナノ粒子と称される。活性成分を含んだ高分子電解質ナノ粒子は、種々の方法で製造することができる。例えば、高分子電解質は、例えば、ミセル、液滴形成、又は、活性成分を含んだ高分子電解質ナノ粒子を生成するための類似する他の配合技術を使用して活性成分へと吸着させることができる。
【0092】
種々の実施形態において、高分子電解質ナノ粒子は、活性成分の周囲における高分子電解質の折り畳みを使用して製造することもできる。このことは
図2に示される。高分子電解質については、高い電荷密度で、例えば、ポリマーの「モノマー」単位が完全に帯電している場合、類似する帯電モノマー単位間の静電反発力のため、拡張されたコンフォメーションを取る。塩の添加によるポリマーの電荷密度の減少によって、拡張されたポリマーを、より密に充填した球状の、即ち、折り畳まれたコンフォメーションへと転移させてもよい。折り畳み転移は、十分に小さい電荷密度で静電反発力を無効にする、ポリマーセグメント間の引力相互作用により促進される。いくつかの実施形態において、必要であれば、折り畳まれたコンフォメーションは、ポリマーを架橋することによって永続的なものとしてもよい。一実施形態において、活性成分を含んだポリマーナノ粒子は、(a)高分子電解質を、それを帯電させる溶液条件下で水溶液に溶解させる工程と、(b)これらの条件下で逆帯電した活性成分を添加する工程とを含んだ方法を使用して製造することができる。必要であれば、活性成分と会合した得られるポリマーナノ粒子は、ナノ粒子と会合した活性成分を安定化すべく、粒子内架橋を形成するよう誘発することができる。架橋の程度は、活性成分のナノ粒子環境への放出を制御するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、水を一部除去して濃縮した分散液を提供するか、完全に除去して乾燥固体を生成してもよい。いくつかの実施形態において、第2溶媒は、得られた分散液に添加され、活性成分を含んだナノ粒子を沈殿させることができる。一部の例において、第2溶媒は、ナノ粒子にとって非溶剤である。
【0093】
他の方法で、高分子電解質からポリマー粒子を生成することも可能である。いくつかの実施形態において、これは、(a)ポリマーを水溶液に溶解させる工程と、(b)活性成分をポリマーと会合させる工程と、(c)ポリマーを折り畳む工程とを含んでいる。必要であれば、金属イオン又は他の化学種を、活性成分の代わりに使用してもよい。例えば、ポリマーに対して親和性を有する活性成分が折り畳みの前に添加される場合、得られる物質は、活性成分を含んだポリマーナノ粒子であろう。更なる実施形態では、水を一部除去して濃縮した分散液を提供するか、又は、完全に除去して乾燥固体を生成してもよい。更なる実施形態では、第2溶媒を得られた分散液に添加し、活性物質を含んだナノ粒子を沈殿させてもよい。いくつかの実施形態において、第2溶媒はナノ粒子にとって非溶剤である。
【0094】
ポリマーとポリマーに会合した化学種との電位親和性は、互いに親和性を有することが見出される任意の化学基を含んでいてもよい。これらは、特異的又は非特異的相互作用を含んでいてもよい。非特異的相互作用としては、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性−疎水性会合、π−πスタッキングが挙げられる。ポリマーが、親和性対の一方の半分の官能基を有し、且つ、ポリマーと会合した化学種(例えば、活性成分)が、他の半分を有する場合、特異的相互作用には、ヌクレオチド−ヌクレオチド、抗体−抗原、ビオチン−ストレプトアビジン又は糖−糖相互作用が含まれてもよい。
【0095】
ポリマーに会合した又は会合する活性成分(例えば、活性成分)の周囲でポリマーを折り畳む潜在的方法は、溶媒中でポリマーの溶解度を低下させることを含んでもよい。いくつかの実施形態において、これは、ポリマーにとっての非溶剤を添加することによってなされてもよい。例えば、ポリマーがポリアクリル酸であり、溶媒が水である場合、高塩エタノール溶液を添加して、ポリマーを濃縮させて折り畳みコンフォメーションとし、溶液から沈殿させてもよい。得られる生成物を回収し、水に再懸濁してもよい。ポリマーを折り畳む他の方法は、例えば、低い臨界溶液温度を有する系、例えば、ポリ−(n−イソプロピルアクリルアミド)(「NIPAM」)等について、溶液の温度を変化させることにより溶解度を変更することを含む。ポリマーが高分子電解質である場合、ポリマーは、活性成分とポリマーとの会合が生じた後の塩の添加又はpHの変更によって折り畳みを誘発してもよい。
【0096】
種々の実施形態において、高温では限られた程度水に溶解させることができるが、室温では比較的不溶性である疎水性活性成分について、同様のプロセスが使用されてもよい。一実施形態において、方法は、(a)ポリマー及び塩の存在下、高温で活性成分を水に飽和させる工程と、(b)混合物を冷却する工程とを含む。混合物の冷却後、活性成分は沈殿し、ポリマーは、活性成分とポリマーとの特異的又は非特異的相互作用のため、活性成分の周囲で折り畳まれるであろう。例えば、溶液中のポリ(スルホン酸ナトリウム)及び飽和したクロロタロニル(防カビ剤)をNaClの存在下、高温で混合してもよい。混合物を低温まで冷却する際、双方の化学種が沈殿するが、ポリ(スルホン酸ナトリウム)が、クロロタロニルの周囲に沈殿してもよい。必要であれば、得られたポリマーカプセル化活性成分ナノ粒子は、粒子内架橋の形成が誘発され、ナノ粒子中で活性成分を安定化してもよい。架橋の程度は、活性成分のナノ粒子環境への放出を制御するのに利用されてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、修飾高分子電解質からポリマー粒子を製造する方法は、(a)高分子電解質鎖に沿って疎水基を接合する工程と、(b)それを帯電させて疎水基を分子内で会合させる溶液条件下、疎水性修飾した高分子電解質を水溶液に溶解させる工程と、(c)ポリマーを架橋する工程とを含む。高分子電解質が疎水基によって修飾される場合、折り畳み転移は、
図3に示すように、塩の非存在下、疎水性相互作用によって促進される。
【0098】
いくつかの実施形態において、高分子電解質からポリマー粒子を製造する方法は、(a)高分子電解質を架橋剤によって折り畳む工程と、(b)塩を添加する工程と、(c)温度又は触媒の存在によって架橋反応を誘発する工程とを含む。例えば、ポリ(アクリル酸)を、酸−塩基相互作用のため、1,6−ジアミノヘキサンで処理することによって折り畳んでもよい。アミド結合を形成する架橋反応は、混合物を還流することによって誘発してもよい。
【0099】
折り畳みは、例えば、粘度計を使用してモニターされてもよい。典型的には、ポリマー溶液は、それが溶解した溶媒よりも高い粘度を示す。特に高分子電解質については、事前折り畳みポリマー溶液は、非常に高い粘度を有し、シロップ様の濃度を有していてもよい。折り畳みを利用した活性成分のポリマーカプセル化ナノ粒子の形成の後、ナノ粒子の十分に分散した試料は、非常に低い粘度を示してもよい。折り畳み後及びその間の、この減少した粘度は、振動粘度計、例えばオストワルト粘度計、又は、当該分野で既知の他の方法によって適当な条件下測定されてもよい。
【0100】
ナノ粒子の形成は、動的光散乱(DLS)、原子間力顕微鏡法(AFM)又は透過電子顕微鏡法(TEM)を使用して立証することができる。DLSにおいて、ナノ粒子の形成は、同じ濃度の活性成分溶液の粒径又は同じ濃度のポリマーカプセル剤溶液の粒径と比較して減少した平均粒径により立証される。TEM又はAFMにおいて、ナノ粒子は、直接目で見ることができる。
【0101】
必要であれば、ポリマーナノ粒子は、上述の通り、粒子内又は粒子間架橋を形成するように誘発されてもよい。特定の実施形態において、この架橋は、ポリマーナノ粒子に会合した活性成分又は逆帯電した化学種の安定化をもたらすことができる。架橋の程度は、活性成分又は逆帯電した化学種のナノ粒子環境への放出を制御するのに使用することができる。
【0102】
本発明に従って調製した再分散可能な固体は、特定条件下、活性成分の溶解度よりも高い濃度で再分散してもよい。ポリマーカプセル化ナノ粒子の再分散性は、ポリマーカプセル化剤の溶解度によって決定されてもよい。例えば、ポリマーカプセル化剤が高水溶性である場合、活性成分自体が高水溶性でなくても、そのポリマーによってカプセル化された活性成分のナノ粒子は、高濃度で水に分散することができるであろう。このことは、その溶解性限界を超えて再分散する場合に、活性成分の沈殿がないことにより観察することができる。高濃度で再分散するこの能力は、種々の処方に適用性を有する可能性がある。
【0103】
無機金属塩からのポリマー粒子の形成
いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、会合した活性成分を含まずに形成される。活性成分は、ナノ粒子が完全に形成された後にナノ粒子と会合する。会合工程は、いくつかの異なる方法で達成されてよく、各々は、いくつかの異なる工程を含む。
【0104】
一実施形態において、ポリマーナノ粒子の製造方法は、(a)それを帯電させる溶液条件下、高分子電解質を水溶液に溶解させる工程と、(b)これらの条件で逆帯電する化学種を添加して、ポリマーを折り畳む工程と、(c)架橋する工程と、(d)逆帯電した化学種を除去する工程とを含む。この方法の一実施形態の概略説明が
図4に示される。得られるポリマーナノ粒子は、中空構造、空洞を有するか、又は、多孔質の網目構造を有していてもよい。ポリマーナノ粒子には、活性成分を装填することができる。特定の実施形態においては、逆帯電した化学種は、例えば、金属塩からの金属イオンである。得られたポリマーナノ粒子は、上記方法のいずれかによって架橋することができる。
【0105】
無機金属塩の例としては、限定するものではないが、アルカリ及びアルカリ土類金属塩(NaCl、KCl、KI、NaF、LiCl、LiBr、LiI、CsCl、CsI、MgCl
2、MgBr、CaCl
2のような)が挙げられる。特定の実施形態において、金属塩は、遷移金属系の硝酸塩又は塩化物塩であってもよい。遷移金属塩の例は、限定するものではないが、Zn(NO
3)
2、ZnCl
2、FeCl
2、FeCl
3、Cu(NO
3)
2である。硝酸アルミニウム、硝酸ビスマス、硝酸セリウム、硝酸鉛のような他の金属塩も使用することができる。他の実施形態において、塩は、アンモニウムの硝酸塩、塩化物、ヨウ化物、臭化物又はフッ化物塩であってもよい。
【0106】
逆帯電した化学種の除去は、pH調節によってなされてもよい。例えば、高分子電解質がイオン化可能な基としてカルボン酸を有する場合、逆帯電した化学種は、鉱物又は有機酸の添加によって系を酸性化することにより除去することができる。これは、逆帯電した化学種を置き換え、カルボン酸をプロトン化するであろう。強若しくは弱酸又は強若しくは弱塩基であるイオン化可能な化学種に同様の方法を使用してもよい。
【0107】
透析又は類似した膜分離法を使用して、帯電化学種を、活性成分の交換又は装填の影響をより受けやすい可能性のある異なる帯電化学種と置き換えてもよい。置き換えの程度は、逆帯電化学種とイオン化可能基との親和性によって決定され、イオン化可能基のイオン化の容易さ(例えば、酸若しくは塩基の強さ又は弱さ)によっても決定されるであろう。
【0108】
置き換えの程度は、溶液が調節されるpHによっても決定される。例えば、ポリマーが高分子量ポリ(アクリル酸)である場合、逆帯電した化学種は、pHが約0.1〜約3.5、特定の実施形態では約1.5〜約2.0の場合に、水中で大部分除去されてもよく、同じpH値で水に対して透析することによって除去されてもよい。特定の実施形態において、逆帯電した化学種が除去され、ポリマーナノ粒子への活性成分の装填を妨げない、より穏やかな帯電化学種によって置き換えられてもよい。例えば、Fe(III)が折り畳み剤として使用される場合、Na
+に対する透析によってFe(III)を移動させ、Na
+によって置き換えてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子の製造方法は、(a)高分子電解質を、それを帯電させる溶液条件下で水溶液に溶解させる工程と、(b)これらの条件で逆帯電する化学種を添加してポリマーを折り畳む工程と、(c)溶液条件を変更し、逆帯電した化学種から不溶性ナノ粒子を形成する工程と、(d)架橋する工程と、(e)溶液条件を変更し、ナノ粒子を除去する工程とを含む。特定の実施形態において、ナノ粒子は、水酸化物、酸化物、炭酸塩又はオキシ水酸化物である。
【0110】
特定の実施形態において、逆帯電した化学種は、例えば、金属塩由来の金属イオンであり、工程(c)をpH調節によって達成することができる場合、水酸化物は金属水酸化物である。逆帯電した化学種が金属イオンである場合、pH調節によってそれを水酸化物に変換してもよい。分散液のpHは、金属イオンを金属水酸化物に変換する重要な役割を果たす。金属イオンは典型的には、溶液を、pHが約7〜約14(例えば、約7.5〜約8.5;約8.5〜約10;約10〜約14)の塩基性とすることによって金属水酸化物に変換することができる。金属水酸化物の金属酸化物への変換は、種々の方法によって達成することができ、例えば、加熱して、例えば水酸化物を脱水させ、酸化物を形成することを含む。脱水が部分的な場合、オキシ水酸化物と称される混合した酸化物/水酸化物が生ずる可能性がある。溶液中で加熱が行われる場合、温度は、25〜100℃;50〜100℃;又は70〜90℃の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、酸化物は、ポリマー粒子と水酸化物とを含んだ溶液から乾燥固体を回収し、加熱することによって水酸化物から形成することができる。加熱温度は、水酸化物を生じさせて酸化物に変換するのに十分高く、ポリマーに悪影響を与える(例えば、ポリマーを分解させる)ことがないものでなければならない。温度範囲は、金属及びポリマー、並びに、望まれる結果によって決定されるであろう。いくつかの実施形態において、金属水酸化物、酸化物、又は、オキシ水酸化物が、錯体の分解によって形成されてもよい。例えば、チタニウム(IV)ビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド(TALH)は、水溶液中でTiO
2を形成するための前駆体として使用することができる。酸性(pH3)又は塩基性(pH10)でのTALHの分解は、TiO
2の形成をもたらす。金属酸化物ナノ粒子からのポリマーナノ粒子の形成を説明する例は、
図6に示される。不溶性ナノ粒子が炭酸塩の場合、工程(c)で炭酸塩を添加することによって形成することができ、同様の技術を使用して除去してもよい。
【0111】
工程(e)のナノ粒子の除去は、溶液中でナノ粒子の溶解をもたらす可能性のある条件へpHを調節することによって達成することができる。分散液のpHもまた、ナノ粒子を除去する重要な役割を果たす。金属水酸化物は典型的には、酸性pHで水中に溶解し、約0.1〜約2.5;約1.5〜約2.0;約1〜約6;約2〜約5;又は約2〜約4の範囲のpHを含んでいてもよい。金属水酸化物は、同様のpH値で水に対して透析することによって溶解させてもよい。酸化物、オキシ水酸化物又は炭酸塩を同様の方法で除去してもよい。
【0112】
修飾高分子電解質を使用したポリマー粒子の形成
修飾高分子電解質は、上述の通り、2種類以上の官能基、例えば、重合可能な基(HEMA)及び活性成分分子を同じポリマー骨格に沿って、又は、反応性対(クリック反応のためのアルキンとアジド)の2つの官能基を含んでいてもよい。更に、各々が反応性対のうちの1つの反応基を含んだ2つの高分子電解質の混合物が、ポリマー粒子、例えば、アルキン修飾PAA及びアジド修飾PAAを生成してもよい。一実施形態において、修飾高分子電解質は、ポリマー粒子を生成してもよい。
図3は、これらの粒子を製造する工程を説明する。これらの工程は、(a)先に説明した手順に従ってPPAを、例えばHEMAによって修飾し、pH感受性ポリマーを生成することと、(b)HEMA修飾PPAをpH>6の水中に溶解させることと、(c)溶解のpHを低下させる(pH<6)ことと、(d)架橋することとを含む。この方法によって製造されるポリマー粒子の平均径は、50〜1000nmの範囲である。いくつかの実施形態において、粒径は、pH値によって制御されてもよい。大きな径は、pH値が約5〜約6の範囲にある場合に生じ、小さな径は、pH値が約3〜約5の範囲にある場合に生じた。
【0113】
活性成分の装填
本明細書で記載するポリマー粒子は、活性成分を運ぶために使用することができる。ポリマー粒子に活性成分を装填するのに使用される方法のいくつかは、適当な溶媒に粒子を溶解させることを含む。ポリマーナノ粒子が溶解する場合(例えば、溶媒中で別々の個々の粒子として見出される)、該ナノ粒子を装填することが可能であるのに加えて、それらが凝集するか又は分散した形態にある場合にもポリマーナノ粒子を装填することが可能である。一実施形態において、活性成分をポリマーと会合させる方法は、(a)活性成分を溶解し、適当な溶媒に高分子電解質粒子を溶解又は分散させる工程と、(b)溶媒を除去する工程とを含む。会合した活性成分を含んだ得られるポリマー粒子は、(c)適当な条件で望ましい溶媒に粒子を再懸濁する工程と、任意に(d)活性成分を含んだ乾燥粒子を溶媒から回収する工程とを含んだ方法によって更に処理することができる。いくつかの実施形態において、活性成分とナノ粒子との間の会合を促進することのできる化学物質を添加してもよい。この化学物質は、架橋剤、配位剤、又は、活性成分若しくはナノ粒子の化学官能基を変更する化学物質であってもよく、例えば、活性成分若しくはナノ粒子の電荷又はプロトン化状態を変化させるpHの変化を含む。
【0114】
特定の実施形態において、工程(b)の適当な溶媒は、高分子電解質粒子が溶解又は分散することができ、且つ、活性成分が溶解することのできる有機溶媒である。適当な溶媒の例としては、メタノール、エタノール及び他の極性親水性溶媒が挙げられる。活性成分を水中に懸濁することが望まれる特定の用途において、工程(c)における溶媒は、水性溶媒又は共溶媒である。工程(c)に適当な条件は、会合した活性成分を含んだポリマーの再懸濁をもたらすべく、温度、pH、イオン強度又は他の溶液条件を調節することを含んでいてもよい。
【0115】
活性成分を含んだカルボキシ系ポリマー粒子については、pHを約5〜約11、一部の例では約7〜約8に調節することができる。他の高分子電解質について、それらを水性溶媒に再懸濁する適当な条件は往々にして、ポリマー上の十分なイオン化可能基がイオン化され、それらを溶媒中に再懸濁することができるようにpHを調節することを含む。工程(d)は、得られた粒子が乾燥粒子として回収される必要がある場合に任意に使用され、これは、凍結若しくは噴霧乾燥、空気乾燥、真空乾燥又は他の方法を使用して達成し得る。
【0116】
ポリマー粒子は、未修飾又は修飾高分子電解質から得られ、上述の手順から調製することができる。それらは、金属イオン、金属水酸化物又は金属酸化物を含んでいてもよい。それらの寸法は、約5〜約300nmの範囲であってもよい。それらは、内部が中空のポリマー粒子のみを含んでいるか、又は、動的な可能性のある空洞を含んでいてもよい。それらは、多孔質であるが、別々の空洞を持たなくてもよい。また、それらは、比較的密に充填しているが、膨張するか又は活性成分を取り込むことができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、異なる方法を使用してポリマーナノ粒子と活性成分とを会合させてもよく、該方法は、(a)ポリマーナノ粒子を適当な第1溶媒に溶解又は分散させる工程と、(b)活性成分を含んだ第2溶媒を添加することによってポリマーナノ粒子を膨張させる工程と、(c)第2溶媒を除去する工程とを含んでいる。別の方法は、(a)ポリマーナノ粒子を適当な第1溶媒に溶解又は分散させる工程と、(b)第2溶媒を添加することによってポリマーナノ粒子を膨張させる工程と、(c)活性成分を添加するか、代わりに、活性成分を含んだ更なる第2溶媒を添加する工程と、(d)第2溶媒を除去する工程とを含む。特定の実施形態において、第1溶媒は、親水性であってもよく、第2溶媒は、第1溶媒よりも疎水性であってよい。特定の実施形態において、第1溶媒の特性(温度、pH等)を変更して、ポリマーナノ粒子の親水性を増加若しくは低下させるか、又は、より拡張した若しくは折り畳まれたコンフォメーションとしてもよい。特定の実施形態では、第1溶媒は水性であってもよい。特定の実施形態では、水性溶媒のpHは、イオン化可能基を含んだポリマーナノ粒子がイオン化されるように調節することができる。特定の実施形態において、水性溶媒のpHは、イオン化可能基を含んだポリマーナノ粒子がイオン化されないように調節されてもよい。この例として、カルボキシ基を有するポリマーナノ粒子は、酸形態のカルボキシ基を有するpH条件下での膨張に対して、より敏感な可能性がある。特定の実施形態では、ポリマーナノ粒子は、第1溶媒に分散するか又は部分的に溶解性であってもよい。特定の実施形態において、第2溶媒は、蒸発、蒸留、抽出、選択的溶媒除去又は透析を使用して除去することができる。特定の実施形態において、第2溶媒は、第1溶媒よりも蒸気圧が高い。ポリマーの膨張量は、ポリマーナノ粒子の種類に応じて決定されてもよい。例えば、親水性ポリマーナノ粒子の膨張の傾向は、第2溶媒の特性に応じて決定されてもよい。特定の実施形態では、親水性ポリマーナノ粒子は、極性第2溶媒によって、より膨張させることが可能であろう。特定の実施形態では、疎水性ポリマーナノ粒子は、疎水性溶媒によってより膨張させることが可能であろう。互いに親和性を有する溶媒中の化学基、例えば、カルボキシとアミン、酸と塩基等とポリマーナノ粒子とを含ませることによって膨張を増強することもできる。ポリマーナノ粒子の膨張は、光散乱、クロマトグラフィー、極低温透過電子顕微鏡法、溶液系原子間力顕微鏡法によって測定される粒子径の変化によって観察することができる。また、非混和性の第2溶媒によるポリマーナノ粒子の膨張が、溶媒のポリマーナノ粒子への分配に起因する観察可能な第2溶媒相の消失によって観察することができる。膨張は、粘度の変化によっても観察することができる。膨張は、分光法によっても観察することができる。典型的な実施形態としては、活性成分を保持する溶媒が、活性成分に分光的特徴を付与する場合、その分光的特徴は、ポリマーナノ粒子による組み込みによって変更され、このことは、膨張及び活性成分の組み込みを立証することができる。これらの特性を示す分子はピレンであり、ピレンは、そのミクロ環境の疎水性及び親水性に応じてその発光特性を変更する。
【0118】
適当な第2有機溶媒の例としては、限定するものではないが、メタノール、エタノール、エチルアセテート、イソプロパノール、メトキシプロパノール、ブタノール、DMSO、ジオキサン、DMF、NMP、THF、アセトン、ジクロロメタン、トルエン、又は、該溶媒のうちの2以上の混合物が挙げられる。これらの溶媒のうちのいくつかは、蒸発によって除去することができる。いくつかの実施形態において、第1溶媒は、第2溶媒に混和性である。いくつかの実施形態において、第1溶媒と第2溶媒とは部分的に混和することができる。いくつかの実施形態において、第1溶媒と第2溶媒とは混和することができない。
【0119】
いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子と活性成分とを会合させるべく、別の方法が使用され、該方法は、(a)ポリマーナノ粒子を溶解又は分散させ、且つ、活性成分を適当な第1溶媒に溶解させる工程と、(b)第2溶媒を添加する工程と、(c)第1溶媒を除去する工程とを含む。
【0120】
適当な第1溶媒の例としては、限定するものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール、ブタノール、DMSO、ジオキサン、DMF、NMP、THF、アセトン、又は、該溶媒のうちの2以上の混合物が挙げられる。これらの溶媒は、蒸発によって除去することができる。これらの実施形態において、第2溶媒は、第1溶媒に混和するが、活性成分にとっては良好な溶媒ではない。第2溶媒は水性であってよい。
【0121】
ポリマーナノ粒子と会合した活性成分は、ポリマーナノ粒子全体に亘って分散していてもよい。それらは、ポリマーナノ粒子の領域で豊富であり、主にポリマーナノ粒子の表面に存在するか、又は、主にポリマーナノ粒子内に含まれるかのいずれかであってよい。ポリマーナノ粒子が1以上の別々の空洞を有する場合、活性成分は空洞内に含まれていてもよい。活性成分を装填するために使用される別の方法を説明する図が
図7に示される。
【0122】
活性成分の界面活性剤の形成
種々の態様において、本発明はまた、活性成分の界面活性剤(例えば、界面活性な活性成分)の製造方法を提供する。これらの界面活性な活性成分は、種々の手法により製造することができる。一実施形態において、このことは、(a)官能基を含んだ水に不溶な活性成分と、相補的な反応基を含んだ水溶性化学物質とを混合する工程と、(b)反応を進行させ、室温又は高温で、必要であれば副産物の除去によって完了させる工程と、任意に、(c)使用する場合には有機溶媒を除去する工程とを含んでいてもよい。必要であれば、反応のために触媒を使用することもできる。特定の条件下、活性成分の界面活性剤は、製造時に活性を有する。他の条件では、活性成分の界面活性剤は、活性成分の界面活性剤からの活性成分の解放を生じ得るような溶液条件、例えばpH等で活性化されるに過ぎない。
【0123】
活性成分の界面活性剤は、多くの機能を提供し得る。それらは、所定の配合物に装填することができる活性成分量を増加することを促進し得る。それらは、その界面活性剤特性のため、所定の配合物に安定性を付加することもできる。それらは、前駆体又はモノマーとして使用され、活性成分を装填したポリマーナノ粒子を製造することもできる。活性成分の1つ又は両方が、界面活性な活性成分として提供される場合、それらを使用して、配合物において多数の活性成分を装填することができる。
【0124】
種々の態様において、本発明は、活性成分の界面活性剤の製造方法を提供する。これらの界面活性な活性成分は、種々の方法で製造することができ、水溶性化学物質と水不溶性活性成分との化学反応を含む。種々の実施形態において、水不溶性活性成分の官能基と、水溶性化学物質の相補性基との化学反応が使用されてもよい。種々の実施形態において、化学反応は、限定するものではないがエステル化であってもよい。
【0125】
エステル化反応は、アルコール基とカルボン酸基とを結合し、エステル結合を形成する。エステル化反応の条件は、有機溶媒の存在又は非存在下で、触媒の存在又は非存在下で、室温又は高温であってもよい。一実施形態において、エステル化反応は、カルボン酸部分を含んだ水不溶性活性成分と、アルコール部分を含んだ水溶性化学物質との間で生じてもよい。逆に、エステル化反応は、カルボン酸部分を含んだ水溶性活性成分と、アルコール部分を含んだ水不溶性化学物質との間で生じてもよい。
【0126】
カルボン酸基を含んだ適切な活性成分は、限定するものではないが、安息香酸、アリールオキシフェノキプロピオン酸、フェノキシ酢酸、フェノキシプロピオン酸、フェノキシブチル酸、ピコリン酸及びキノロン薬剤を含んだ除草性酸性基が挙げられ、更には、限定するものではないが、シノキサシン、ナリジクス酸、ピペミド酸、オフロキサシン、レボフロキサシン、スパルフロキサシン、トスフロキサシン、クリナフロキサシン、ゲミフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシンが挙げられる。
【0127】
適当な水溶性化学物質としては、限定するものではないが、適切に終端したポリ(エチレングリコール)又はポリ(プロピレングリコール)が挙げられる。一実施形態において、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(「2,4−D」と称する)とメトキシ終端したポリ(エチレングリコール)の末端アルコール基との間でエステル化反応が生じ、エステル結合の形成によって、疎水性2,4−D分子を親水性ポリ(エチレングリコール)に結合し、2,4−Dの界面活性剤を生成する。一実施形態において、エステル化反応は、トルエン中、濃縮H
2SO
4の存在下、還流温度で行われた。一実施形態において、エステル化反応は、有機分子の非存在下、シリカゲル触媒の下、150℃で行われた。
【0128】
活性成分の界面活性剤と、活性成分を含んだポリマーナノ粒子との組み合わせ
種々の態様において、界面活性な活性成分と、活性成分を含んだポリマーナノ粒子とを一緒に使用して、活性成分の装填量を増加させたナノ粒子を製造することができ、それは分散液としてより安定性が高い。界面活性な活性成分は、ナノ粒子に吸着される可能性がある。種々の実施形態において、これは、(a)界面活性な活性成分を合成する工程と、(b)本発明に従う活性成分を含んだポリマーナノ粒子を調製する工程と、(c)界面活性成分と、活性成分を含んだポリマーナノ粒子の分散液とを混合する工程とを含んでいてもよい。工程(c)は、種々の方法で行われてよい。界面活性成分は、ナノ粒子分散液に直接的に添加してもよい。種々の実施形態において、界面活性成分がまず、pHがナノ粒子分散液と同じ水中に溶解され、次いで、ナノ粒子分散液に添加される。いくつかの実施形態において、逆の順序で添加が行われてもよい。いくつかの実施形態において、分散液及び活性成分溶液のpHは、5〜9であってもよい。添加される界面活性成分の量は、ナノ粒子に結合しない界面活性成分の別々のミセルを形成するのに十分な濃度よりも低くてもよい。種々の実施形態において、界面活性成分が、薄めずにナノ粒子分散液に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、界面活性成分が、活性成分を含んだポリマーナノ粒子の調製の間に添加されてもよい。
【0129】
活性成分から形成したポリマー
種々の態様において、本発明は、活性成分を含んだナノ構造を含むポリマー水溶液の製造方法を提供する。活性成分を含んだナノ構造を含むポリマー水溶液は、種々の方法で製造されてよい。例えば、限定するものではないが、活性成分を既存の水溶性モノマーにグラフトすること、活性成分を含んだモノマーと水溶性部分を含んだモノマーとをランダムに又は制御可能に共重合することが挙げられる。一実施形態において、活性成分を既存のポリマーにグラフトすることは、(a)活性成分を既存の水溶性ポリマーにグラフトする工程と、(b)グラフトしたポリマーを溶媒中に溶解させる工程とを含むであろう。いくつかの実施形態において、これは、(a)活性成分を官能化する工程と、(b)活性成分を既存の水溶性ポリマーにグラフトする工程と、(c)グラフトしたポリマーを溶媒に溶解させる工程とを含むであろう。特定の実施形態において、ポリマーは、折り畳むことのできる又はできない高分子電解質である。
【0130】
ナノ構造の形成の背後にある駆動力は、グラフトした活性成分によって中断される水分子間の水素結合、及び/又は、活性成分群内の会合性相互作用のうちの1以上によって生じてもよい。低いポリマー濃度では、同じポリマー鎖にグラフトした活性成分群内の分子間相互作用が、ポリマーを折り畳ませ、ナノ粒子を形成してもよい。ポリマー濃度が増加するにつれ、1つの折り畳みポリマーから隣のポリマーへの活性成分群の分子間相互作用が始まり、2つの折り畳みポリマー間を橋架けしてもよい。ポリマー濃度が更に増加すると、ポリマー鎖は、互いにより近くに移動し、従って、1つのポリマー鎖から隣のポリマー鎖への活性成分の分子間相互作用が優勢となるだろう。
【0131】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、先に記載した技術を使用してポリマーを折り畳ませることにより形成することができる。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリ−(n−イソプロピルアクリルアミド)(NIPAM)等の折り畳み可能な非帯電ポリマーを含んでいてもよい。活性成分群内での会合相互作用は、ポリマーの濃度に応じて、分子内の若しくは分子間の又は双方の組み合わせであってもよい。
【0132】
いくつかの実施形態において、活性成分を既存のポリマーにグラフトすることは、(a)活性成分を官能化する、即ち、2,4−Dをエチレングリコールでモノエステル化し、ジオール分子の一端に2,4−D分子を連結させる工程、(b)アルコール基を含んだ合成活性成分を、エステル化反応によってカルボキシ含有ポリマーにグラフトする工程と、(c)AIグラフトポリマーを水に溶解させ、活性成分を含んだナノ構造を形成する工程とを含むであろう。
【0133】
種々の実施形態において、活性成分を含んだナノ構造を含む水溶性ポリマー溶液は、活性成分を含んだモノマーと、水溶性部分を含んだモノマーとを共重合させることによって製造することができる。水溶性部分を含んだモノマーの例としては、限定するものではないが、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、アクリレート終端PEG、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレンスルホネート、ビニルピリジン、アリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
【0134】
いくつかの実施形態において、活性成分を含んだランダムコポリマーの水溶液は、(a)活性成分を含んだモノマーを合成する工程と、(b)合成したモノマーを、水溶性部分を含んだモノマー又はモノマーの混合物と共重合する工程と、(c)コポリマーを水に溶解させる工程とを含む方法を使用して製造することができる。工程(b)における共重合条件は、有機溶媒中、開始剤の存在下、高温で行われてもよい。いくつかの実施形態において、活性成分を含んだランダムコポリマーの水溶液は、(a)活性成分を含んだモノマーを合成する工程と、(b)活性成分を含んだモノマーとNIPAMとを、ポリ(NIPAM)の低臨界溶液温度を超える温度でエマルション共重合して、活性成分を含んだコポリマー粒子を形成する工程と、(c)反応温度を室温まで冷却する工程とを含む方法を使用して製造することができる。冷却後、ミクロンスケールのポリマー−活性成分粒子は分解し、コポリマーが水に溶解し、同じ又は隣接するポリマー上の活性成分が会合してナノ構造を形成する。
【0135】
いくつかの実施形態において、活性成分を含んだランダムコポリマーの水溶液は、(a)活性成分を含んだモノマーを合成する工程と、(b)活性成分を含んだモノマーとメタクリル酸又はアクリル酸とを低pHでエマルション共重合して、活性成分を含んだコポリマー粒子を形成する工程と、(c)カルボン酸基をイオン化する工程とを含んだ方法を使用して製造することができる。工程(c)は、代わりに又は更に、系を冷却することを含んでいてもよい。冷却又はイオン化工程は、ミクロスケールのポリマー−活性成分粒子を分解させ、コポリマーを水に溶解させ、同じ又は隣接するポリマー鎖上の活性成分を会合させてナノ構造を形成させる。
【0136】
いくつかの態様において、活性成分を含んだブロックコポリマーの水溶液は(a)活性成分を含んだモノマーを合成する工程と、(b)水溶性マクロ開始剤を添加する工程と、(c)水溶性マクロ開始剤を使用して、合成したモノマーを重合し、1つの親水性及び1つの疎水性ブロックを含んだブロックコポリマーを形成する工程とを含む方法を使用して製造することができる。水溶液中では、個々のポリマーの疎水性ブロックが会合し、活性成分を含んだナノ構造を形成する。
【0137】
ポリマー粒子の製造における活性成分の界面活性剤の使用
種々の態様において、活性成分の界面活性剤を使用して、活性成分のナノ構造を含んだポリマー溶液への活性成分の装填を増加させてもよい。また、活性成分の界面活性剤を使用して、ポリマー粒子の調製の間、ポリマー平均径を減少させてもよい。最終的には、活性成分の界面活性剤を使用して、ポリマー溶液の粘度を減少させてもよい。
【0138】
一実施形態において、これは、(a)活性成分を含んだモノマーを合成する工程と、(b)活性成分の界面活性剤を合成する工程と、(c)活性成分を含んだモノマーとイオン性基を含んだモノマーとを共重合する工程とを含むであろう。共重合は、エマルション重合であってもよい。特定の実施形態において、共重合は、低pHにおける水中でのエマルション重合であってもよい。得られるポリマー粒子は、その後イオン化され、水中に分散され、同じ又は隣接したポリマーに会合した活性成分を含んだナノ構造を含むポリマー粒子を使用して水性ポリマー溶液を生じさせてもよい。
【実施例】
【0139】
動的光散乱(DLS)を使用して、粒径及び径分布を測定した。粒径は、少なくとも25回の測定の平均から記録し、体積割合で示す。
【0140】
オスワルト粘度計を使用して21℃で粘度を測定した。個々の溶液又は分散液の粘度を、粘度計の2つの印の間を溶液又は分散液が移動するのにかかった時間で記録した。
【0141】
UVランプは254nmであった。
【0142】
なお、M
xN
y/PAAの命名は、ポリ(アクリル酸)に会合したM
xN
yナノ粒子をいう。M
xN
yは、イオン、例えばZn
2+/PAAであってもよく、この場合、Zn
2+を含んだポリ(アクリル酸)ナノ粒子をいう。
【0143】
A.一般的な塩(NaCl)とUV処理との組み合わせを使用したポリマーナノ粒子の形成
例1:NaClを使用したポリ(アクリル酸)(PAA)溶液の処理によるポリマーナノ粒子の製造:
磁気攪拌子を具えた250mLビーカー中、固体PAA(0.100g、Mw=450,000ダルトン)及び脱イオン化水(100g)の重量を量った。PAAが完全に溶解するまで溶液を磁気攪拌し、次いで、1N NaOH水溶液を使用して、pHを9.63に調節した。
【0144】
磁気攪拌子を具えた別のビーカーに、PAA水溶液(0.1重量%)50gを移した。攪拌の間、5mLの3M NaClを滴下した。溶液は透明なままであった。
【0145】
各々が磁気攪拌子を具えた別々の2つのビーカーに、PAA水溶液25g及びNaClを含んだPAA水溶液25gを移した。攪拌の間、溶液をUVランプに5分間曝露した。
【0146】
【表1】
【0147】
例2:NaClを使用したHEMA修飾PAA溶液の処理によるポリマーナノ粒子の製造
HEMA修飾PAAの合成(低度のHEMAグラフト):250mlの丸底フラスコに、固体PAA(3.0g、Mw=450,000ダルトン)及び液体DMSO(100g)を移動した。PAAが完全に溶解するまで、フラスコを磁気攪拌した。固体4−(ジメチルアミノピリジン)(DMAP,0.34g)及び液体2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA,10.8g)を反応フラスコに移した。DMAPが完全に溶解するまで反応混合物を攪拌し、その後、固体N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC,0.53g)を移動させた。反応混合物を室温で16時間攪拌した。16時間後、混合物を700mLの2−プロパノールを含んだ1Lビーカーに滴下し、沈殿を得た。上清を廃棄し、沈殿物を2−プロパノールで2回洗浄した(各々100ml)。真空下で一晩、残余の2−プロパノールを除去することにより、固体HEMA修飾PAAを得た。
【0148】
HEMA修飾PAA水溶液(0.83重量%)の調製:磁気攪拌子を具えた100mLビーカー中で、固体HEMA修飾PAA(0.332g,Mw=450,000ダルトン)及び脱イオン水(40g)の重量を量った。混合物を攪拌している間、1N NaOH溶液を添加することにより、溶液のpHを約8.0に一定に維持した。塩基性pHは、固体HEMA修飾PAAを、より素早く溶解させるであろう。固体ポリマーが完全に溶解した後、溶液は透明であり、溶液のpHは、7.9と測定された。
【0149】
PAA粉末(16.6mg,Mw=1800D)及び133mLのDI水を上記HEMA修飾PAA溶液に添加し、溶液が透明になるまで攪拌した。pHは、7.3であった。NaCl溶液(12.4mL,3M)を、磁気攪拌子で攪拌しながら、ゆっくりと添加した。次いで、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン(18mg,97%)を添加して、3時間攪拌した。溶液を1時間UV照射した。UV照射の前後において、表2に示す粘度及び粒径により、溶液の特性を明らかにした。
【0150】
次いで、上記溶液のpHを2に調節し、溶液からポリマー粒子を沈殿させた。沈殿をpH2のDI水ですすぎ、遠心分離して上清を除去した。これを3回繰り返し、最終的に沈殿を水に溶解させ、pHを6.5に調節した。
【0151】
【表2】
【0152】
B.ポリ(アクリル酸)と架橋剤との混合物からのポリマーナノ粒子の形成及び混合物の還流:
例3:外部塩の非存在下における、ポリ(アクリル酸)と架橋剤との混合物からのポリマーナノ粒子の製造:ポリ(アクリル酸)の水溶液(500mL)(Mw=450,000D)2mg/mLを、2Lビーカー中で調製した。NaOH水溶液(10N)を使用して、混合物のpHを6.8に調節した。別のビーカー(1L)に、固体1,8−ジアミノヘキサン(0.4031g)及び逆浸透(RO)水(500mL)を添加した。ジアミノヘキサンは完全には溶解しなかった。混合物のpHをpHメータでモニターし、HCl(2N)水溶液を使用して3.70まで低下させ、室温で30分間攪拌した。溶液は、まだほとんど沈殿を含まなかったが、2層のキムワイプを介して濾過することにより除去した。濾過したジアミノヘキサン混合物は透明であり、溶液を激しく攪拌しながらポリ(アクリル酸)溶液を含んだビーカーに注いだ。得られた混合物を1時間攪拌し続け、pHを5.80と測定した。次いで、混合物(300mL)を、冷却器に連結した500mLの1口反応フラスコに移動した。その後、反応混合物を24時間還流し、架橋反応を生じさせた。24時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、pHを5.96と測定した。
図8:24時間の還流前後でのPAA/1,8−ジアミノオクタン混合物のTEM画像。
【0153】
例4:外部塩の存在下における、ポリ(アクリル酸)と架橋剤との混合物からのポリマーナノ粒子の製造:ポリ(アクリル酸)(Mw=450,000D、500mL、2mg/mL,pH3.45)の水溶液を2Lビーカー中で調製した。別のビーカー(1L)中で、固体1,6−ジアミノヘキサン(0.3310g)及び逆浸透(RO)水(500mL)を添加した。ジアミノヘキサンは数分で完全に溶解し、混合物のpHを11.12と測定した。ジアミノヘキサン水溶液を、約1時間激しく攪拌しながらポリ(アクリル酸)溶液に添加した。混合物のpHを5.65と測定し、その後、2N NaOH水溶液(約1mL)を添加することにより6.47まで増加させた。この混合物の一部(300ml)を、500mLの1口反応フラスコに移動し、24時間還流した。混合物の別の一部(300mL)を、500mLの別の1口反応フラスコに移動し、激しく攪拌しながらNaCl水溶液(2.5gの3M NaCl+1.75gのRO水)を滴下した。混合物のpHを6.03と測定し、24時間の還流に供した。
図9:NaClの非存在下及び存在下における還流後のPAA/1,6−ジアミノヘキサンのTEM画像。
【0154】
無機金属塩を使用した、中空構造及び空洞を有するポリマーナノ粒子の形成及び架橋、並びに、得られた金属酸化物/水酸化物のその後のエッチング:
例5:Al(NO3)3を使用したポリ(アクリル酸)溶液の処理による、中空構造及び空洞を有するポリマーナノ粒子の製造(図1)
水酸化アルミニウムカプセル化PAAナノ粒子の調製:Al(NO
3)
3水溶液(25mM,300mL)を、磁気攪拌子を具えた1Lビーカー(A)に装填し、NaOH水溶液(100mM,145mL)を、供給ポンプによってビーカーにゆっくりと添加した。別の1Lビーカー(B)に、ポリアクリル酸水溶液(Mw=450KD,pH 7.4mg/mL,300mL)を装填し、磁気攪拌子によって攪拌した。ビーカー(A)の溶液を、供給ポンプによって3時間に亘って、ビーカー(B)にゆっくりと添加し、その間、NaOH水溶液(100mM)を継続的に添加することによってビーカー(B)の溶液のpHを7に維持した。得られた溶液を、攪拌条件下、UVランプ(252nm)の下、2時間UV照射した。VirSonic超音波装置を使用して(50%の出力で)溶液を超音波分解に供し、その後、NaOH水溶液(100mM)を添加することによってpH8.5に調節した。上記溶液を、ロータリーエバポレータ(「rotovap」)で10倍濃縮した。NaCl/エタノール溶液を添加することによって、形成されたPAAカプセル化Al(OH)
3粒子を沈殿させた。沈殿物を遠心分離し、70%エタノールで3回すすいだ。沈殿物をDI水に再懸濁し、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。DLSによってPAAカプセル化Al(OH)
3粒子の特性決定を行い、平均径を20nmと決定した。
【0155】
EDCによる架橋反応:PAA/Al(OH)
3水溶液(5mg/mL,500mL)を、磁気攪拌子を具えた2Lビーカー中に装填した。2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(50mLのDI水中、2.5mmol,0.3705g)溶液を、0.5mL/分の供給速度で、上記攪拌した溶液にゆっくりと添加した。溶液を更に2時間、室温で攪拌した。その後、この混合物に、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド溶液(500mLのDI水中0.985g)を、12時間に亘ってゆっくりと添加した。反応混合物を一晩攪拌した。NaCl/エタノール溶液を添加することによって架橋ポリマー/無機粒子を沈殿させた。沈殿を遠心分離し、70%エタノールで3回すすいだ。沈殿物をDI水中に再懸濁した。
【0156】
水酸化アルミニウム粒子の除去:架橋ポリマー/無機粒子の攪拌した水溶液(15mg/mL)に、pHが1.5に達するまでHCl溶液(2N)を添加した。得られた透明溶液を透析チューブ(Spectra/Por透析膜、MWCO 12−14,000)に移動し、1日3回水を交換し、pH1.5のDI水に対して3日間透析を行った。NaOH(0.5N)を添加することにより、透析した溶液をpH8.5に調節し、その後、3回水を交換し、DI水に対して1日間透析した。得られた溶液を凍結乾燥し、ポリマーカプセルの乾燥粉末を得た。DLSによってポリマーカプセルの特性決定を行い、平均径を20nmと決定した。
【0157】
図10は、(A)水酸化アルミニウムナノ粒子を含んだPAAポリマー粒子、及び(B)(A)水酸化アルミニウムを除去した後のポリマー粒子のAFM画像を示す。水酸化アルミニウム粒子を含んだPAAは、水酸化アルミニウム粒子を除去した後のものよりも大きく且つ硬かった。
図10Cもまた、水酸化アルミニウム粒子を除去した後の、PAA粒子のTEM画像を示す。
【0158】
D.酸性化とUV/可視光処理との組み合わせによるポリマー粒子の形成
例6:酸を使用したHEMA修飾ポリ(アクリル酸)の処理によるポリマー粒子の製造:
HEMA修飾PAAの合成(高度のHEMAグラフト):250mLの丸底フラスコに、固体PAA(2.0g,Mw=450,000ダルトン)及び液体DMSO(100g)を添加した。フラスコをPAAが完全に溶解するまで磁気攪拌した。固体4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP,0.34g)と液体2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA,21.7g)とを反応フラスコに添加した。反応混合物を、DMAPが完全に溶解するまで攪拌し、その後、固体N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC,2.67g)を添加した。反応混合物を16時間室温で攪拌した。16時間後、混合物を、900mLの脱イオン水を含んだ1Lビーカーに滴下し、沈殿を生成した。上清を廃棄し、沈殿を脱イオン水で2回(各回500mL)洗浄した。沈殿を、標準0.100N NaOH(118mL)を用いて脱イオン水(400mL)中に再溶解し、固体含有率0.73%、pH9.75の透明溶液を得た。これらの結果から、HEMAグラフトのレベルを算出し、27モル%を得た。
【0159】
HEMA修飾PAA水溶液(0.2重量%)の調製:磁気攪拌子を具えた250mLビーカー中で、27.4gのHEMA修飾PAA溶液(0.73重量%)及び脱イオン水(72.6g)の重量を量った。得られた混合物は透明で、pHは8.90であった。混合物を攪拌しながら、HCl(0.1N)水溶液を滴下した。透明溶液は、pH約6.5で半透明になり、その後、6.03で不透明となった。不透明な性質は、大きい径のポリマー粒子が形成されていることを示す。DLSによってポリマー粒子の特性決定を行い、平均径を211nmと決定した(100%体積強度)。
【0160】
UV及び可視光によるHEMA修飾PAA粒子の架橋:不透明混合物の一部(5mL)を4つのバイアルに移した。1つのバイアルには、微量のUV光開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン,HMPP,0.00088g)を添加した。可視光光開始剤、ベンジル(0.00137g)及びカンファキノン(0.0021g)を第2及び第3のバイアルに添加した。4番目のバイアルは、光開始剤を含まなかった。4つのバイアル全ての蓋をし、アルミホイルで包み、室温で16時間に亘って攪拌した。光開始剤を含んでいないバイアルとUV光開始剤を含んだバイアルの蓋を外し、UVランプに5分間曝露した。他の2つのバイアルを窒素で5分間パージし、太陽灯に10分間、曝露した。
【0161】
【表3】
【0162】
例7:酸を使用したアジド修飾PAAとアルキン修飾PAAとの混合物の処理によるポリマー粒子の製造
3−アジドプロパノールの合成:100mLの丸底フラスコ中で、液体3−クロロプロパノール(10.0g,1.0等量)、固体アジドナトリウム(17.19g,2.5等量)をDMF中、100℃で40時間反応させた。反応混合物を室温まで冷却し、分液漏斗に注ぎ、ジエチルエーテル(300mL)と塩水溶液(500mL)とで抽出した。有機層を分離して、MgSO
4上で乾燥した。回転蒸発によって室温でジエチルエーテル溶媒を除去し、粗製3−アジドプロパノール(12.5g)を生成した。
1H−NMR(δ,ppm)CDCl
3:3.76〜3.73(t,2H,HOC
H2CH
2CH
2N
3),3.46〜3.43(t,2H,HOCH
2CH
2C
H2N
3),2.09(br−s,1H,OH),1.86〜1.80(m,2H,HOCH2C
H2CH
2N
3)。IR neat(cm
−1):2100(N=N=N)。
【0163】
N3修飾PAAの合成:250mLの丸底フラスコに、固体PAA(2.0g,Mw=450,000ダルトン)及び液体DMSO(100g)を添加した。PAAが完全に溶解するまで、フラスコを磁気攪拌した。固体4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP,0.34g)及び粗製液体3−アジドプロパノール(12.5g)を、反応フラスコに添加した。反応混合物を、全てのDMAPが完全に溶解するまで攪拌し、その後、固体N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC,2.67g)を添加した。反応混合物を室温で16時間攪拌した。16時間後、混合物を、900mLの脱イオン水を含んだ1Lビーカーに滴下し、沈殿を得た。上清を廃棄し、沈殿を脱イオン水で2回(各回500mL)2回洗浄した。沈殿を0.1N NaOHを使用して脱イオン水(400mL)中に再溶解させ、固体含有率0.78重量%、pH9.70の透明溶液を得た。
【0164】
アルキン修飾PAAの合成:250mLの丸底フラスコに、固体PAA(2.0g,Mw=450,000ダルトン)及び液体DMSO(100g)を添加した。PAAが完全に溶解するまでフラスコを磁気攪拌した。固体4−(ジメチルアミノピリジン(DMAP,0.34g)及び液体プロパルギルアルコール(9.34g)を反応フラスコに添加した。全DMAPが完全に溶解するまで反応混合物を攪拌し、その後、固体N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイイミドヒドロクロリド(EDC,2.67g)を添加した。反応混合物を室温で16時間攪拌した。16時間後、900mLの脱イオン水を含んだ1Lビーカーに混合物を滴下し、沈殿を得た。上清を廃棄し、沈殿を脱イオン水で2回(各回500mL)洗浄した。沈殿を、0.1N NaOHを用いて脱イオン水(600mL)に再溶解し、固体含有率0.50重量%、pH9.75の透明溶液を得た。
【0165】
N3修飾PAA/アルキン修飾PAAの混合物からのポリマー粒子の調製、及び、触媒としてCuSO4/アスコルビン酸ナトリウムを使用した架橋反応:
攪拌子を具えた250mLビーカーに、N
3修飾PAA水溶液(0.78重量%の12.85g)、アルキン修飾PAA水溶液(0.50重量%の20.04g)、及び脱イオン水(167.11g)の重量を量った。得られた混合物は、0.1重量%のポリマーを含み、pH値は8.03、粘度は359秒であった。50mLの混合物を、攪拌子を具えた100mLビーカーに移した。攪拌及びpHメータによるpHのモニターの間、HCl水溶液(1N)をビーカーに滴下した。透明溶液は、pH約6.2で半透明となり、その後、約5.7で不透明となった。酸性化を止め、分散液の粘度と粒子径とを測定した。DLS測定により、平均粒径は128nm(100%体積強度)、粘度は22℃で68秒と決定した。
【0166】
不透明な混合物(25g)を攪拌子とともに50mLビーカーに移した。調製したばかりのCuSO
4(0.063Mの0.050g)及びアスコルビン酸ナトリウム(0.16Mの0.050g)を混合物に添加した。反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応混合物のDLS測定は、平均粒径142nmを示した(100%体積強度)。分散液のpHを10まで増加させたとき、不透明な混合物は不透明なままであり、平均径は、222nmまで増加した(100%体積強度)。CuSO
4/アスコルビン酸ナトリウムで処理されていない試料とは異なり、分散液のpHが6.5より上まで増加すると、不透明な混合物は、透明になった。結果は、CuSO
4/アスコルビン酸ナトリウム試薬の存在が、アジドとアルキン基との架橋反応を触媒し、ポリマー粒子構造を固定した。
【0167】
E.活性成分と会合したポリマーナノ粒子の形成:
例8:ポリマー粒子を使用したピクロラムの装填
2.5mLメタノール、例3に従って調製した8.9mgのポリマー粒子、及び、20.64mgのピクロラム(4−アミノ−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジンカルボン酸)を、10mLのガラスバイアル中で混合した。2N HCl溶液を添加することによって溶液のpHを2に維持した。上記溶液を、透明になるまでボルテックスに供した。メタノールを蒸発によって除去した。2mLのDI水を乾燥混合物に添加し、0.5N NaOH溶液を添加することにより、溶液のpHを8に維持した。溶液を、透明になるまでボルテックスに供した。この溶液を凍結乾燥し、ピクロラムを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されるピクロラムの量を、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0168】
例9:ポリマー粒子を使用したイマゼタピルの装填
1mLのメタノール、例3に従って調製した6.8mgのポリマー粒子、及び、10mgのイマゼタピル(2−[4,5−ジヒドロ−4−メチル−(1−メチルエチル)−5−オキソ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−エチル−3−ピリジンカルボン酸)を、5mLのガラスバイアル中で混合した。2N HCl溶液を添加することによって、溶液のpHを2に維持した。上記溶液を、透明になるまでボルテックスに供した。メタノールを蒸発によって除去した。1mLのDI水を乾燥混合物に添加し、0.5N NaOH溶液を添加することにより、溶液のpHを8に維持した。溶液を透明になるまでボルテックスに供した。この溶液を凍結乾燥して、イマゼタピルを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されるイマゼタピルの量を、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0169】
例10:ポリマー粒子を使用したチフェンスルフロン−メチルの装填
8mLのメタノール、例3に従って調製した2.1mgのポリマー粒子、及び、18.2mgのチフェンスルフロン−メチル(メチル3−[[[[(4−メトキシ−6−メチル−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]−2−チオフェンカルボキシレート)を、10mLのガラスバイアル中で混合した。2N HCl溶液を添加することによって溶液のpHを2に維持した。上記溶液を透明になるまでボルテックスに供した。メタノールを蒸発によって除去した。1mLのDI水を乾燥混合物に添加し、0.5N NaOH溶液を添加することによって溶液のpHを8に維持した。溶液を透明になるまでボルテックスに供した。この溶液を凍結乾燥し、チフェンスルフロン−メチルを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されるチフェンスルフロン−メチルの量を、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0170】
例11:ポリマー粒子を使用したチアメトキサムの装填
4mLのメタノール、例3に従って調製した3.1mgのポリマー粒子、及び、28.5mgのチアメトキサムを、10mLのガラスバイアル中で混合した。2N HCl溶液を添加することによって溶液のpHを2に維持した。上記溶液を透明になるまでボルテックスに供した。メタノールは蒸発によって除去した。1mLのDI水を乾燥混合物に添加し、0.5N NaOH溶液を添加することによって溶液のpHを8に維持した。溶液を透明になるまでボルテックスに供した。この溶液を凍結乾燥し、チアメトキサムを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されるチアメトキサムの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0171】
例12:ポリマー粒子を使用したチアメトキサムの装填
4mLのメタノール、例1に従って調製した3.1mgのポリマー粒子、及び、28.5mgのチアメトキサム(3−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]テトラヒドロ−5−メチル−N−ニトロ−4H−1,3,5−オキサジアジン−4−イミン)を、10mLのガラスバイアル中で混合した。2N HCl溶液を添加することによって溶液のpHを2に維持した。上記溶液を透明になるまでボルテックスに供した。メタノールは蒸発によって除去した。1mLのDI水を乾燥混合物に添加し、0.5N NaOH溶液を添加することによって溶液のpHを8に維持した。溶液を透明になるまでボルテックスに供した。この溶液を凍結乾燥し、チアメトキサムを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されるチアメトキサムの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0172】
例13:HEMA修飾PAA(NaCl及びUV処理)を使用したチアメトキサムの装填
4mLのメタノール、例4に従って調製した3.2mgのHEMA修飾PAA、及び、28.4mgのチアメトキサム(3−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]テトラヒドロ−5−メチル−N−ニトロ−4H−1,3,5−オキサジアジン−4−イミン)を、10mLのガラスバイアル中で混合した。HEMA修飾PAAをNaClの存在下、UV放射によって処理した。2N HCl溶液を添加することによって溶液のpHを2に維持した。上記溶液を透明になるまでボルテックスに供した。メタノールは蒸発によって除去した。2mLのDI水を乾燥混合物に添加し、0.5N NaOH溶液を添加することによって溶液のpHを8に維持した。溶液を透明になるまでボルテックスに供した。この溶液を凍結乾燥し、チアメトキサムを装填したHEMA修飾PAAの乾燥粉末を得た。各工程で保持されるチアメトキサムの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0173】
例14:ポリマーナノ粒子からのチアメトキサム(「TMX」)の持続放出
例9に従って調製した10mgの固体ナノカプセル配合物及び20mLのDI水を、(封止用ケープを有する)50mlガラスバイアルに添加した。DI水の添加による持続放出試験の時間を計った。そして、ミニメイト接線流動濾過カプセル(Minimate Tangential Flow Filtration capsule)(TFF,3K,オメガ膜,PALL)によって上記溶液を継続的に汲み出した。試験装置を以下の
図10Aに示す。放出媒質からの試料を、浸透液から必要な時間間隔で0.2ml回収し、残りの浸透液を迅速にガラスバイアルに戻した。
【0174】
得られた試料の全てをDI水によって、適当なTMX濃度まで希釈し、UV−Visによって分析し、水中のTMXの較正曲線からTMXの濃度を定量した。特異的な試験時間における持続放出速度を、試験の間に得た試料中のTMXの定量化に基づき算出し、各々の時点に応じた放出割合をプロットすることにより示した。典型的な持続放出特性を
図10Bに示した。
【0175】
例15:HMEA修飾PAA粒子を使用したアトラジンの装填
50μlのエチルアセテート、例2に従って調製した1.2mgのポリマー粒子、及び、1mLのDI水を5mLのガラスバイアル中で混合した。溶液のpHは3と測定された。上記溶液を、油相が消失するまで攪拌した。次いで、アトラジン(6−クロロ−N−エチル−N’−(1−メチルエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミンの120μLエチルアセテート溶液(溶液中のアトラジン濃度:22mg/mL)を添加し、油相が消失するまで攪拌した。蒸発によってエチルアセテートを除去し、懸濁液を形成した。この溶液を凍結乾燥して、アトラジンを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されたアトラジンの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0176】
例16:HEMA修飾PAA粒子を使用したチアメトキサムの装填
100μlのエチルアセテート、例2に従って調製した1.2mgのポリマー粒子、及び、1mLのDI水を5mLのガラスバイアル中で混合した。溶液のpHは3と測定された。上記溶液を、油相が消失するまで攪拌した。次いで、TMXが消失するまで、6.5mgのチアメトキサム(TMX,95%)を添加して攪拌した。蒸発によってエチルアセテートを除去し、懸濁液を形成した。この溶液を凍結乾燥して、TMXを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されたTMXの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0177】
例17:HEMA修飾PAA粒子を使用したアゾキシストロビンの装填
例2に従って調製した11.32mgのポリマー粒子、5.9mgのアゾキシストロビン(メチル(αE)−2−[[6−(2−シアノフェノキシ)−4−ピリミジニル]オキシ]−α−(メトキシメチレン)ベンゼンアセテート)、及び、4mLのメタノールを10mLのガラスバイアル中で混合した。溶液のpHは3と測定された。攪拌条件下、8.15gの水をゆっくりと(0.119mL/分)添加した。蒸発によってメタノールを除去し、懸濁液を形成した。この溶液を凍結乾燥して、アゾキシストロビンを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されたアゾキシストロビンの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0178】
例18:PAA粒子を使用したアゾキシストロビンの装填
3mLのメタノール、例3に従って調製した11.0mgのポリマー粒子、及び5.3mgのアゾキシストロビンを10mLのガラスバイアル中で混合した。上記溶液を、透明になるまでボルテックスに供した。メタノールは蒸発によって除去した。5mLのDI水を乾燥混合物に添加し、0.5N NaOH溶液を添加することによって溶液のpHを7に調節した。溶液を攪拌して懸濁液を形成した。この溶液を凍結乾燥して、アゾキシストロビンを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されたアゾキシストロビンの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0179】
例19:PAA粒子を使用したアゾキシストロビンの装填
例3に従って調製した12.8mgのポリマー粒子、6.0mgのアゾキシストロビン及び4mLのメタノールを、10mLのガラスバイアル中で混合した。溶液のpHを3と測定した。攪拌条件下、6.0gの水をゆっくりと(0.119mL/分)添加した。メタノールを蒸発によって除去し、懸濁液を形成した。この溶液を凍結乾燥して、アゾキシストロビンを装填したポリマー粒子の乾燥粉末を得た。各工程で保持されたアゾキシストロビンの量は、UV−Vis分光法を使用して測定した。
【0180】
F.活性成分を使用して折り畳んだ高分子電解質
例20:カチオン性ポリ(アリルアミン)により被覆した2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)のナノ粒子の製造
固体2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)(0.158g,0.72mmol)及び作製したばかりの脱イオン化水(50mL)を、攪拌子と共に100mLのガラスビーカーに添加した。媒質をpHメータに連結し、測定値は2.76であった。攪拌した分散液に、NaOH(10N)水溶液を滴下した。pHが増加すると、より多くの固体2,4−Dを溶解した分散液は、より透明になった。最終的には、固体2,4−Dの全てが完全に溶解し、溶液は透明であった。溶液のpH及び粘度は、10.76及び25.4℃で0.93cPと測定された。参照のため、同じ機器を使用して純水の粘度を測定し、26.4℃で0.92cPの値を示した。
【0181】
磁気攪拌子を具えた別のビーカー(250mL)中、固体ポリ(アリルアミン)(PAH,Mw=70,000)(0.5g,5.5mmol)及び50mLの脱イオン水を添加し、1重量%のPAH水溶液を得た。溶液は、pH値3.47、26.0℃における粘度300cPで透明であった。その後、供給ポンプにより、攪拌しているPAHに2,4−D水溶液を供給し、PAHで被覆された活性成分のナノ粒子を製造した。添加を完了するのに約15分かかった。ナノ粒子分散液は、透明な薄黄色であった。分散液のpH及び粘度を測定し、4.79及び25.1℃で1.69cPの値を示した。なお、ナノ粒子分散液中のPAHの最終濃度は、原液の半分であった。比較のため、この濃度で調製したPAHの粘度を測定し、24.6℃で2.25cPの値を得て、該値は、折り畳まれたナノ粒子のもの(25.1℃で1.69cP)よりも高い。粘度測定の結果から、帯電した2,4−Dが添加されたとき、拡張立体配置から折り畳み生ずることが示された。更には、体積強度分布によって分析された動的光散乱(DLS)は、折り畳まれた粒子の平均径が約7nmであることを示した。
【0182】
例21:カチオン性ポリ(ジアリルメチルアンモニウムクロリド)(PDDA)で被覆した2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)のナノ粒子の製造
固体2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)(16.0g,72.4mmol)を、2Lのガラスビーカーに移す前に微粉末に粉砕した。作製したばかりの脱イオン水(1L)を、1Lメスシリンダーで計量し、攪拌子と共にビーカーに移した。媒質をpHメータに接続し、測定値は2.60を示した。攪拌した分散液に、10NのNaOH水溶液を滴下した。pHが増加すると、より多くの2,4−Dが溶解し、分散液はより透明になった。最終的には、固体2,4−Dの全てが完全に溶解し(約7mLの10N NaOHを添加した)、溶液は透明であった。溶液のpHは、7.44であった。
【0183】
機械的攪拌子を具えた別のビーカー(4L)に、カチオン性ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDA)(146.3gの20重量%PDDA(29.26g固体PDDA,181.0mmol)及び854mLの脱イオン水を移した。溶液は透明であった。pHは、4.74と測定された。供給ポンプによって、攪拌しているPDDA溶液に2,4−D水溶液を供給した。添加を完了するまでに約3.5時間かかった。混合物は透明であり、8.0g/Lの活性成分(2,4−D)を含んでいた。pHは6.35と測定され、粘度は26.0℃で6.75cPであった。ナノ粒子分散液中のPDDAの最終濃度は、原液の半分であった。比較のため、この濃度で調製したPDDAの粘度を測定し、25.3℃で9.32cPの値が得られ、この値は、折り畳まれたナノ粒子のもの(26.0℃で6.75cP)よりも高い。粘度測定の結果は、帯電した2,4−Dが添加されたとき、PDDAポリマーが、拡張立体配置から折り畳まれたことを示唆した。更には、体積強度分布によって分析した動的光散乱(DLS)は、折り畳まれた粒子の平均径が約7nmであることを示した。
【0184】
例22:カチオン性低分子量キトサンポリマーで被覆した2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)ナノ粒子の製造
固体2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)(18.0g,81.4mmol)を、2Lのガラスビーカーに移す前に微粉末に粉砕した。作製したばかりの脱イオン水(1062mL)を、1Lメスシリンダーで計量し、攪拌子と共にビーカーに移した。媒質をpHメータに接続し、pHは2.56であった。攪拌した分散液に、10NのNaOH水溶液を滴下した。pHが増加すると、より多くの2,4−Dが溶解し、分散液はより透明になった。最終的には、固体2,4−Dの全てが完全に溶解し(約8mLの10N NaOHが添加された)、溶液は透明であった。溶液のpHは、7.60であった。
【0185】
機械的攪拌子を備えた別のビーカー(4L)に、固体キトサン(低分子量,32.9g,204mmol)及び脱イオン水1062mLを移した。溶液は、完全には溶解しないキトサンのため、低粘度であり、薄黄色であった。液体酢酸(11.0g,183mmol)をキトサン分散液に滴下した。分散液の粘度は、酢酸が添加されると大幅に増加した。分散液は、固体キトサンの全てが完全に溶解するまで約1時間、攪拌を維持した。その後、2,4−D水溶液を、供給ポンプによって攪拌しているキトサン溶液に供給した。添加の間に、溶液は発泡し始めた。2,4−D溶液の添加は、約3.5時間で完了した。混合物は、透明な薄黄色であった。溶液を一晩室温に置き、泡を表面に移動させた。次の日、泡を除去した。pH及び粘度は、それぞれ、5.16及び23.4℃で17.4cPであった。比較のため、この濃度における低分子量キトサン単独の粘度は、24.0℃で23.3cPであり、値は、折り畳まれたナノ粒子の値よりも高い(23.4℃で17.4cP)。粘度測定の結果により、2,4−Dが添加されたとき、キトサンポリマーが、それらの拡張された立体配置から折り畳まれることを示す。体積強度分布によって分析された動的光散乱(DLS)は、折り畳まれた粒子の平均径が約4nmであることを示した。
【0186】
例23:ポリマーナノ粒子に会合した活性成分を使用した植物の処理
例20で調製した2,4−Dを含んだ水性ポリマーナノ粒子を、植物の処理に直接に使用した。この配合物の2,4−D濃度は、8g/Lである。2つの活性濃度(8g/L及び4g/L)を、植物の試験に使用した。植物は、処理までにトレーの中で2週間育てられ、処理の間にランダム化ブロック構造に組織化された。1つのトレーには6つの植物(オオムギ、イヌエビ、シロザ、アオビユ、ヒメチチコグサ(low cudweed)及びハッカ)が存在し、これらは、種々の作物種及び雑草種を代表する。噴霧ボトルを使用して植物に噴霧することによって処理を適用し、1ヘクタール当たり200リットルと同等の割合で噴霧液を適用することによって較正した。目視による植物毒性(%植物損傷)の評価は、処理の4、8、12及び15日後に行われた。評価は、統計的ソフトウェアプログラムに入力され、分散分析をデータに基づいて行った。分散分析が、処理間で著しい差を示唆した場合には、平均分離(mean separation)が行われた。
【0187】
キトサンポリマーを使用せずに調製した2,4−Dを同量(8g/L及び4g/L)含んだ2つの水溶液を比較のためにコントロールとして使用した。
【0188】
結果は、2,4−Dによって折り畳まれたキトサンナノ粒子を含んだ配合物が、コントロールと比較して、わずかに増加したレベルの植物損傷をもたらしたことを示す。
【0189】
例24:カチオン性高分子量キトサンポリマーで被覆した2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)のナノ粒子の製造
固体2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)(8.0g,36.2mmol)を、2Lのガラスビーカーに移す前に微粉末に粉砕した。作製したばかりの脱イオン水(1L)を1Lのメスシリンダーによって計量し、攪拌子とともにビーカーに移した。媒質をpHメータに接続し、測定値は2.76であった。攪拌している分散液に、10NのNaOH水溶液を滴下した。pHが増加すると、より多くの固体2,4−Dが溶解し、分散液はより透明になった。最終的には、固体2,4−Dの全てが完全に溶解し、溶液は透明であった。溶液のpHは、8.50であった。
【0190】
機械的攪拌子を具えた異なるビーカー(4L)に、固体キトサン(高分子量,14.6g,90.5mmol)及び脱イオン水1Lを添加した。溶液は、キトサンが完全には溶解しないため、低粘度であり、薄黄色であった。液体酢酸(4.89g,81.4mmol)をキトサン分散液に滴下した。分散液の粘度は、酢酸が添加されると大幅に増加した。全ての固体キトサンが完全に溶解するまで、分散液を約2時間攪拌し続けた。その後、2,4−D水溶液を、供給ポンプによって、攪拌しているキトサン溶液に供給した。添加の間、溶液は発泡し始めた。2,4−D溶液の添加は約3.5時間で完了した。混合物は透明な薄黄色であった。溶液を一晩室温に置き、泡を表面に移動させた。次の日、泡を除去した。pH及び粘度は、それぞれ、23.3℃で5.16及び46.3cPであった。比較のため、この濃度における高分子量キトサン単独の粘度は、23.4℃で64.3cPであり、値は、折り畳まれたナノ粒子の値(23.3℃で46.3cP)よりも高かった。粘度測定は、帯電した2.4−Dが添加されたときに、キトサンポリマーがその拡張した立体配置から折り畳まれたことを示唆した。更には、体積強度分布によって分析された動的光散乱は、折り畳まれた粒子の平均径が約4nmであることを示した。
【0191】
例25:カチオン性PDDAで被覆したグリホサートのナノ粒子の製造
固体グリホサート(N−(ホスホノメチル)グリシン)(8.0g,94.6mmol)及び作製したばかりの脱イオン水(1L)を、攪拌子と共に2Lビーカーに添加した。媒質をpHメータに連結し、測定値は2.20であった。攪拌している分散液に、NaOH(50重量%)水溶液を滴下した。pHが3まで増加すると、固体グリホサートの全てが完全に溶解し、分散液はより透明になった。NaOH水溶液(50重量%)を、媒質のpHが7.2に達するまで添加した。
【0192】
機械的攪拌子を具えた別のビーカー(4L)に、カチオン性ポリ(ジアリルメチルアンモニウムクロリド)(PDDA)(水中に20重量%のPDDAを191g,237mmol)及び脱イオン水819mLを移動した。溶液は透明であった。pHは、4.74であった。グリホサート水溶液を、攪拌しているPDDA溶液に、供給ポンプによって供給した。2,4−D溶液の添加は、約3.5時間で完了した。混合物は透明であり、4.0g/Lの活性成分(グリホサート)を含み、pHは6.75、粘度は24℃で7.42cPであった。更には、体積強度によって分析された動的光散乱(DLS)は、2つの分布を示した。折り畳まれた粒子の平均径は2nm(67%)及び8nm(33%)であった。
【0193】
G.活性成分の界面活性剤の合成、その配合物、及び、活性成分によって折り畳まれたナノ粒子中への活性成分の増加した装填におけるそれらの使用:
例26:溶媒としてトルエンを、触媒として濃縮H2SO4を使用した、カルボワックスMPEG350(ダウから供給、メトキシ終端ポリ(エチレングリコール)、Mn=350)を使用した2,4−Dのエステル化
固体2,4−D(3.0g,13.6mmol)、液体カルボワックスMPEG350(5.0g,14.3mmol)、トルエン(150mL)を、250mLの丸底フラスコに攪拌子と共に添加した。反応フラスコをディーン−スタークトラップ及び冷却器に連結した。反応混合物を24時間還流し、その後、室温まで冷却した。エチルアセテートとトルエンとの混合物(50/50,v/v)を移動溶媒として用いた薄層クロマトグラフィーを使用して、反応の完了を確認した。トルエンをロータリーエバポレータで除去し、2,4−D活性成分の界面活性剤の薄黄色液体を得た。残余のトルエンをさらに、真空ポンプで除去した。
1H−NMR(300MHz,D
2O):δ3.38(s,3H,C
H3(OCH
2CH
2)
n−OCH
2CH
2−O(O)C−),3.36〜3.73(m,PEG,−(CH
3−(OC
H2C
H2)
n−OC
H2CH
2−O(O)C−),4.36(t,2H,CH
3−(OCH
2CH
2)
n−OCH
2C
H2−O(O)C−),6.81(d,1H,芳香性のH),7.18(dd,1H,芳香族のH),7.38(d,1H,芳香族のH)。
【0194】
例27:150℃で有機溶媒の非存在下シリカゲルを触媒として使用した、カルボワックスMPEG750(ダウから提供、メトキシ終端ポリ(エチレングリコール)、実際のMn=756)による2,4−Dのエステル化
固体2,4−D(20.0g,90.5mmol)、液体カルボワックスMPEG750(68.4g,90.5mmol)、シリカゲル60A(200〜400メッシュ)(1.0g)を250mLの丸底フラスコに攪拌子とともに添加した。反応フラスコをディーンスタークトラップと冷却器とに連結した。反応混合物を、窒素ガスの緩流の下、150℃に加熱した。反応の間、エステル化反応の副産物と水とをディーンスタークトラップ中で濃縮し、回収した。薄層クロマトグラフィーを使用して、反応の完了をモニターした。反応は3時間で完了した。粗製生成物を濾過してシリカゲルを除去し、2,4−D活性成分からなる界面活性剤の薄黄色液体を得た。
1H−NMR(300MHz,D20): δ3.38(s,3H,C
H3−(OCH
2CH
2)
n−OCH
2CH
2−O(O)C−),3.36〜3.73(m,PEG,−(CH
3−(OC
H2C
H2)
n−OC
H2CH
2−O(O)C−),4.36(t,2H,CH
3−(OCH
2CH
2)
n−OCH
2C
H2−O(O)C−),6.81(d,1H,芳香族のH),7.18(dd,1H,芳香族のH),7.38(d,1H,芳香族のH)。
【0195】
例28:2,4−Dの界面活性剤の配合
例24に従って製造した液体2,4−D界面活性剤(2,4−D自体の4.0gに相当する34.72g)及び2L脱イオン化水を、攪拌子と共に3Lのプラスチックビーカーに移した。2,4−D界面活性剤を完全に溶解させ、溶液は、薄黄色であったが、pH値2.76で透明であった。NaOH(10N)水溶液2、3滴を溶液に添加し、pHを6.65まで増加させた。このpHで、溶液の粘度は、24.0℃で1.08cPaであり、体積分布分析により得られた動的光散乱の結果は、平均径252nmの単一分布を示した。
【0196】
H.活性成分の界面活性剤と、活性成分のポリマーカプセル化ナノ粒子との組み合わせ
例29:2,4−Dの増加した装填を含んだナノ粒子の製造
固体2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)(4.0g,18.1mmol)を、2Lのガラスビーカーに移す前に微粉末に粉砕した。作製したばかりの脱イオン水(1l)を1Lのメスシリンダーで計量し、攪拌子と共にビーカーに移した。媒質をpHメータに接続した。攪拌している分散液に、NaOH(10N)水溶液を滴下した。pHが増加すると、より多くの固体2,4−Dが溶解し、分散液はより透明になった。最終的には、全ての2,4−Dが完全に溶解し、溶液は透明であった。溶液のpHは、9.20と測定された。
【0197】
機械的攪拌子を具えた別のビーカー(4L)中に、カチオン性ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDA)(20重量%PDDA水36.57g,45.2mmol)及び脱イオン水900mLを移した。溶液は透明であった。2,4−D水溶液を、攪拌しているPDDA溶液に供給ポンプによって供給した。2,4−D溶液の添加は、約3.5時間で完了した。混合物は透明であり、2.0g/Lの活性成分(2,4−D)を含んでいた。ナノ粒子分散液のpH及び粘度は、それぞれ、7.06及び24.1℃で3.18cPであった。体積強度分布によって分析された動的光散乱(DLS)は、折り畳まれた粒子の平均径が約3nmであることを示した。攪拌子を具えた250mLビーカーに、(例24に従って作製した)活性成分の界面活性剤の液体(17.35g)及び脱イオン水(64mL)を移した。活性成分の界面活性剤が完全に溶解するまで混合物を攪拌した。活性成分の界面活性剤のpHを測定し、値は2.64を示した。NaOH(10N)水溶液を使用して、活性成分の界面活性剤のpHを5.98まで増加させた。その後、活性成分の界面活性剤の溶液を、PDDAによってカプセル化した活性成分のナノ粒子の分散液に滴下した。得られた混合物は、薄黄色の透明であり、pH値が6.23、粘度が23.1℃で2.51cPであった。このポリマー溶液のDLS結果は、平均径4nmの単一分布を示した。
【0198】
I.土壌移動度
この例は、PAAカプセルが、活性成分を装填し、オタワ砂を介して移動することができることを示した。疎水性蛍光染料(修飾したホスタソールイエロー)が、モデル活性成分として使用された。
【0199】
例30:
標準的なオタワ砂(VWR,CAS#14808−60−7)を脱イオン水で2回洗浄し、使用前に空気中で乾燥させた。乾燥した砂を、カラム中で固相として使用し、PAAカプセルを含んだ及び含まない染料をカラムに装填した。
【0200】
PAAカプセルを含んだ及び含まない調製試料:20mLバイアル中で、修飾ホスタールイエロー染料(0.0035g)、乾燥オタワ砂(2.0g)及びメタノール(10g)を計量した。混合物を、染料の全てが完全に溶解するまで攪拌した。メタノールをロータリーエバポレータによって完全に除去した。このプロセスによって、染料を砂の粒子に吸着させた。
【0201】
別の20mLバイアル中で、修飾ホスタソールイエロー染料(0.0035g)、例1に従って調製したPAAカプセル(0.010g)及びメタノール(10g)を計量した。混合物を、染料の全てが完全に溶解するまで攪拌した。メタノールを部分的にロータリーエバポレータによって除去した。乾燥砂(2.0g)を溶液に添加し、その後、メタノールを完全に除去した。
【0202】
カラムの準備:2つのピペットをカラムとして使用した。乾燥砂(1.8g)を高さ2インチまで各々のカラムに装填した。各々のカラムを10mLの脱イオン水で洗浄した。溶出した水をUV分析のために回収した。2つの乾燥試料(各々0.5g)をカラムに装填し、脱イオン水(10g)で溶出した。PAAカプセルを含んだ試料からの溶出液は黄色であったのに対し、カプセルを含まない試料からの溶出液は透明であった。更には、PAAカプセルを含まない試料を含んだカラムが、PAAカプセル分散水溶液によって溶出された(10gの脱イオン水、0.010gのPAAカプセル)。この実験からの溶出液は透明であった。
この結果は、修飾ホスタソールイエローが、カラムからカプセルへ移動しなかったことを示す。
【0203】
図11:A)PAAカプセルを装填した試料を含んだカラムから回収した溶出液のUVスペクトル。修飾ホスタソールイエローは、480nmで最大の吸収ピークを示し,9B)PAAカプセルに装填しない試料を含んだカラムから回収した溶出液。なお、このカラムでは、空のPAAカプセルを含んだ水性分散液を使用した溶出試験の後に洗い流した。
【0204】
J.非生理活性な活性成分の配合
例31:ミクロ環境感受性蛍光プローブとしてのピレンの使用
異なるポリマーナノ粒子に由来するピレンミクロ環境を、以下のナノ粒子:Na
+−折り畳まれたポリアクリル酸(Na−PAA)、ZnO/ポリアクリル酸ナノ粒子(ZnO−PAA)、Zn
2+−折り畳まれたナノ粒子(Zn−PAA)、Na
+−折り畳まれたPMAAナノ粒子(Na−PMAA)、Na
+−折り畳まれたP(MAA−co−EA)ナノ粒子(Na−P(MAA−EA)、ポリ(ビニルピロリドン)−折り畳まれたポリアクリル酸ナノ粒子(PVP/PAA)について検査した。ピレンナノ粒子水溶液を以下のようにして調製した。1.0mgのピレンを10mLのジクロロメタンに溶解し、ストックピレン溶液(0.1mg/mL)として使用した。ピレンナノ粒子水溶液を調製するために、10マイクロリットルのストックピレン溶液を20mLのシンチレーションバイアルに添加し、ドラフト中で1時間空気乾燥した。その後、80mgの固体ナノ粒子又はポリマー、10gの脱イオン水及び磁気攪拌子をバイアルに加えた。次いで、バイアルの蓋を固く閉め、アルミニウムホイルで覆い、溶液を室温で2日攪拌した。異なるナノ粒子及びポリマーの全てについて同じ手順を使用した。HCl(0.1N及び1N)並びにNaOH(0.1N及び1N)水溶液を使用して、溶液のpHを調節した。励起及び発光の双方のスリット幅が2.5nmであり、励起波長340nmを使用した発光スペクトルを、パーキンエルマーLS55発光スペクトロメータで測定した。
図10は、水中のピレン及び低pHのNa−P(MAA−co−EA)ナノ粒子中でのピレンの発光スペクトルを示す。第1(I
1,〜373nm)及び第3(I
3,〜384nm)の振電バンドの発光強度を記録し、種々のポリマーナノ粒子系について比(I
1/I
3)を算出した。種々のポリマーナノ粒子のこれらの比を表4に示す。
【0205】
【表4】
【0206】
例32:赤色染料2番の可溶化
赤色染料2番の溶解度について、いくつかのナノ粒子配合物中での溶解度と、水単独中での溶解度とを比較した。100mgのナノ粒子(Na
+−折り畳まれたポリアクリル酸ナノ粒子(Na−PAA)、ZnO/ポリアクリル酸ナノ粒子(ZnO−PAA)、Zn
2+−折り畳まれたナノ粒子(Zn−PAA)、Na
+−折り畳まれたPMAAナノ粒子(Na−PMAA)、Na
+−折り畳まれたP(MAA−co−EA)ナノ粒子(Na−P(MAA−EA)、Zn
2+−折り畳まれたナノ粒子(Zn−PAA))を、0.5mgの赤色染料2番及び脱イオン水30mLと混合した。1時間激しく混合した後、赤色染料2番及びナノ粒子の種々の溶液を3500rpmで10分間遠心分離し、分散していない染料を分離した。ポリマーナノ粒子を含んだ溶液からの上清液体は、明るい赤色であったが、水のみを含んだ溶液からの上清液体は、無色であった。ポリマーナノ粒子を含んだ溶液からの上清液体の赤色は、ポリマーナノ粒子とそれらを配合することによって染料の溶解度が増加したことを示す。
【0207】
例33:PAAナノ粒子による香料/香味料、バニリンのカプセル化
100mgのバニリン及び100mgのPAA粒子を2ドラムガラスバイアルに入れた。メタノール5mLをガラスバイアルに添加した。溶液を、磁気攪拌プレートにおいて攪拌子を使用して30分間攪拌した。50mLのRO水を、別の250mlガラスビーカーに取り、磁気攪拌子を使用して攪拌した。メタノール混合物を、攪拌した水中に滴下した(1ml/分)。上記溶液を2時間攪拌した。得られた溶液は、半透明であった。ロータリーエバポレータを使用して、溶液からメタノールを除去した。得られた溶液を凍結乾燥し、乾燥粉末を得た。凍結乾燥した固体は、RO水中の200ppmのバニリン溶液として、再分散させた。
【0208】
均等
上記は、本発明の特定の非限定的な説明である。当業者は、本明細書で説明した発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は、日常の実験を使用して確認することができるであろう。当業者は、以下の特許請求の範囲で定義される発明の精神又は範囲を逸脱することなく、本明細書の種々の変更及び修正が行われ得ることを理解するであろう。
【0209】
特許請求の範囲において、「a」、「an」及び「the」等の冠詞は、文脈と反対のことを示すか又は文脈から明白でない限り、1以上を意味することがある。反対の意味を示すか又は文脈から明白でない限り、群の1以上要素の間の「又は」を含む請求項及び記載は、群の要素の1、2以上又は全てが、所定の製造物若しくは方法に存在するか、使用されるか、又は、関連するかを充足するかが考慮される。本発明は、群の要素のうちの厳密に1つが、所定の製造物又は方法中に存在するか、使用されるか、又は、関連する実施形態を含む。更に、本発明は、群の要素のうちの2以上又は全てが、所定の製造物若しくは方法中に存在するか、使用されるか、又は、関連する実施形態を含む。更には、本発明は、1以上の請求項又は明細書の関連部分からの1以上の限定、要素、節、記述用語等が別の請求項に導入される変化、組合せ及び置換の全てを包含することが理解されるべきである。例えば、別の請求項から独立した任意の請求項は、同じ基礎クレームに従属する他の任意の請求項に見出される1以上の限定を含むよう変更されてもよい。更には、請求項に組成物が記載される場合、他に示さない限り、又は、矛盾若しくは不整合が生じないことが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示される目的のうちのいずれかの目的で該組成物を使用した方法が含まれ、本明細書で開示される任意の製造方法に従う組成物の調製方法、又は、当該分野で既知の他の方法が含まれることが理解されるべきである。更には、本発明は、本明細書に開示された組成物を調製する方法のうちのいずれかに従って作製された組成物を包含する。
【0210】
要素が、リストとして、例えば、マーカッシュグループの形式で提示される場合、要素の各々のサブグループも開示され、且つ、任意の要素が該グループから除去されてもよいことが理解されるべきである。「含む(comprising)」の語は、開放性であり、且つ、更なる要素又は工程の含有を許容することが意図されることにも留意すべきである。一般的には、発明、発明の態様は、特定の要素、特徴、工程等を含み、発明の特定の実施形態又は発明の態様は、かかる要素、特徴、工程等からなるか若しくは実質的にこれらからなることが理解されるべきである。簡潔さのため、実施形態は、本明細書のこれらの言葉では詳細には説明されない。従って、1以上の要素、特徴、工程等を含む発明の各々の実施形態において、発明は、これらの要素、特徴、工程等からなるか又は実質的になる実施形態も提供する。
【0211】
範囲が示される場合、終点が含まれる。更には、他に示さない限り、若しくは、文脈及び/又は当業者の理解から明白でない限り、範囲で示された値は、明確に別の内容が示されない限り、該範囲の下限の10分の1の単位にまで、本発明の別の実施形態中で示した範囲内の任意の特定の値と見なすことができることが理解されるべきである。他に示さない限り、若しくは、文脈及び/又は当業者の理解から明白でない限り、範囲で示された値は、所定の範囲内の任意の副範囲と見なされてよく、この中では、副範囲の終点は、該範囲の下限値の10分の1の単位と同レベルの精度まで表現されることも理解されるべきである。
【0212】
更には、本発明の任意の特定の実施形態が、任意の1以上の請求項から明確に除外されてもよいことが理解されるべきである。本発明の任意の実施形態、要素、特徴、適用、若しくは、組成物及び/又は方法の態様が、任意の1以上の請求項から除外されてもよい。簡潔さのため、1以上の要素、特徴、目的又は態様が除外される態様の全てが本明細書において明確に示されるわけではない。
【0213】
引用による組み込み
本明細書で言及する刊行物及び特許文献の全ては、個々の刊行物又は特許文献の各々の内容が本明細書に組み込まれるのと同程度、引用によってその全体が組み込まれる。