(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957445
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】不織自動巻き付き熱スリーブおよびその構成方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20160714BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
H02G3/04 081
B60R16/02 623T
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-510235(P2013-510235)
(86)(22)【出願日】2011年5月10日
(65)【公表番号】特表2013-528045(P2013-528045A)
(43)【公表日】2013年7月4日
(86)【国際出願番号】US2011035893
(87)【国際公開番号】WO2011143193
(87)【国際公開日】20111117
【審査請求日】2014年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/333,019
(32)【優先日】2010年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル パワートレイン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Powertrain, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,デイビッド・エイ
(72)【発明者】
【氏名】シュタウト,エリック・ケィ
【審査官】
甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−501750(JP,A)
【文献】
特表2009−534011(JP,A)
【文献】
特開平07−286144(JP,A)
【文献】
実開平05−011720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長い部材を敷設および保護するための自動巻き付き不織スリーブであって、
前記不織スリーブの長手軸に沿って延在する対向辺を有する長い不織壁を備え、前記対向辺は、外部から加えられる力がないと、前記長手軸の周りに自動的に巻き付いて管状の空洞をもたらし、前記対向辺は、長い部材の挿入のために前記空洞を露出するように、外部から加えられる力の下で互いから離れるように延在可能であり、前記対向辺は、外部から加えられる力が除かれるとそれらの自動巻き付き形状に戻り、
前記不織壁は、離散的な第1の材料領域および離散的な第2の材料領域を有し、前記第1および第2の材料領域は異なり、前記不織壁に不均一な物理的特性を与え、
前記第1の材料領域は前記不織壁に混合された低融繊維を含み、前記第2の材料領域は前記不織壁に混合された標準的な熱可塑性繊維を含む、自動巻き付き不織スリーブ。
【請求項2】
前記不織壁は、少なくとも1つの不織層と、前記少なくとも1つの不織層に取付けられた熱硬化可能なポリマー材料の格子とを有する、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項3】
前記格子は、前記長手軸と実質的に平行に延在する縦糸方向リブと、前記長手軸を実質的に横切って延在する横糸方向リブとを含み、前記横糸方向リブは、前記縦糸方向リブに対して増大した横断面積を有する、請求項2に記載のスリーブ。
【請求項4】
前記格子は、前記長手軸と実質的に平行に延在する縦糸方向フィラメント糸と、前記長手軸を実質的に横切って延在する横糸方向フィラメント糸とを有するニット層であり、前記縦糸方向フィラメント糸は、前記横糸方向フィラメント糸とは異なる材料である、請求項2に記載のスリーブ。
【請求項5】
前記不織壁は、前記格子の対向する側に取付けられた一対の不織層を有する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のスリーブ。
【請求項6】
前記不織層に取付けられた反射層をさらに含み、前記反射層は、前記スリーブの外面を形成する、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のスリーブ。
【請求項7】
前記格子に取付けられた反射層をさらに含む、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のスリーブ。
【請求項8】
前記第1の材料領域は、互いから軸方向に離間された離散的なバンドを形成し、前記バンドは、前記長手軸を実質的に横切って延在する、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項9】
前記第1の材料領域は、互いから周方向に離間された離散的なバンドを形成し、前記バンドは、前記長手軸と実質的に平行に延在する、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項10】
長い部材を敷設し、放射熱および/またはノイズおよび振動発生から保護するための不織スリーブを構成する方法であって、
不織材料の壁を形成するステップと、
壁内に混合された低融繊維を含む材料の第1の領域を形成するステップと、
壁内に混合された標準的な熱可塑性繊維を含む第2の領域を形成するステップと、
壁を管状形状に熱硬化させるステップとを含む、方法。
【請求項11】
少なくとも1つの不織層を有する壁を形成するステップと、熱硬化可能なポリマー材料の格子を少なくとも1つの不織層に取付けるステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一対の不織層から壁を形成するステップと、格子の対向する側に不織層を取付けるステップとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
格子を少なくとも部分的に溶融させて、少なくとも1つの不織層に格子を接合するステップをさらに含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年5月10日に提出された米国仮出願番号第61/333,019号の利益を主張するものであり、当該出願の全体が引用により援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は概して、長い部材を保護するためのスリーブに関し、特に、不織自動巻き付きスリーブおよびそれらの構成方法に関する。
【0003】
2.関連技術
自動車、航空機または航空宇宙機などの乗物においてスリーブ内に保持されるワイヤおよびワイヤハーネスは、場合によっては損傷を与える放射熱に露出され得、乗物の使用中に望ましくないノイズを生じ得ることが知られている。ノイズは典型的に、ワイヤまたはハーネスの、スリーブおよび/または隣接する構成要素に対する振動が原因であり、振動は、乗物内の振動している構成要素に、自動車車両の場合は地面上の車両の移動に起因する。したがって、ワイヤおよびワイヤハーネスを耐高温性箔テープおよび/またはサウンドマスクテープで螺旋状に巻いて、ノイズ発生の可能性を減らすのが慣例である。しかし、テープの貼付けには多大な労力がかかり、したがって費用がかかる。また、テープの外観は、テープが摩耗するにつれて特に時間とともに見苦しくなり得る。さらに、稼動時、テープのために、巻かれたワイヤに容易にアクセスすることが困難になり得る。
【0004】
テープの貼付け以外に、ワイヤの周りの織られた、組まれた、または編まれた布地スリーブの形態で熱および/または音響保護を組込んで、熱による損傷および/またはノイズ発生の可能性を減らすことが公知である。それぞれのスリーブは典型的に、選択されたモノフィラメントおよびテクスチャード加工のマルチフィラメントポリエステル糸などの耐熱およびノイズ抑制材料で製造される。スリーブは、ワイヤの周りに巻かれて固定されるか、または自動巻き付きスリーブ構造として利用されるかのいずれかである。さらに、不織層および外側反射層を有する不織スリーブであって、スリーブは、自動巻き付き可能ではなく、二次的な固定装置によってワイヤの周りに巻き付けられ固定されるか、または管状の巻き付き不可能なスリーブとして設けられるスリーブを提供することが公知である。巻かれて固定される場合、留め具のために、かつ留め具をスリーブに取付ける際に追加費用が発生する。さらに、ワイヤの周りにスリーブを固定するために付加的な労力および/またはプロセスを典型的に伴う。また、前述のスリーブは典型的に、均一で均質な構造で構成され、したがって全長にわたって一定の軸方向および径方向の剛性/可撓性を有する。したがって、スリーブが極限環境のために構成され、それにより熱および/または音発生に対する高度な保護が要求される場合、スリーブの壁は増大した厚みを有して構成され、したがってスリーブの可撓性が低下し、スリーブの重さが増大する。これらは、特にスリーブが密閉屈曲部の周りに敷設されることを必要とし最小重さを有する用途では、典型的に負の特色である。したがって、これらのスリーブは放射熱に対する保護をもたらし、使用時のノイズ発生を抑制するのに便利であることが一般に分かっているが、製造するのに相対的に費用がかかり得、スリーブに留め具を取付けるため、かつワイヤの周りにスリーブを固定するために追加費用が発生し、相対的に堅く重い可能性がある。
【0005】
この発明に従って製造される不織スリーブは、上述の先行技術のいずれの限定事項も克服するかまたは極力少なくし、放射熱に抵抗しかつスリーブ内に保持される長い部材によるノイズ発生を抑制する可能性も高める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
発明の1つの局面は、長い部材を敷設し、放射熱および/またはノイズおよび振動発生から保護するための自動巻き付き不織熱スリーブを提供する。スリーブは、対向端部の間に延在する対向辺を有する長い不織基板を有し、対向辺は、中心長手方向軸の周りに自動的に巻き付いて、長い部材がその中に収容される全体的に筒状の空洞を規定する。基板の対向辺は、長い部材を径方向に空洞内に配置できるよう、外部から加えられる力の下で互いから離れるように延在可能である。空洞内に長い部材を配置すると、外力が解放され、それによって壁の対向辺をそれらの自動巻き付き管状形状に戻すことができる。基板は、第1の材料領域と第2の材料領域とをもたらす均質でない材料組成を有し、第1および第2の領域の材料組成は異なり、それによって第1および第2の領域に異なる物理的特性を与える。
【0007】
発明の別の局面によれば、第1および第2の領域は異なる剛性を有する。
発明の別の局面によれば、第1および第2の領域は異なる重さを有する。
【0008】
発明の別の局面によれば、第1および第2の領域は、中心長手軸を横切ってかつスリーブの周りに周方向に延在し、可撓性が高まった長手方向に離間された領域をもたらす。
【0009】
発明の別の局面によれば、第1および第2の領域は、対向端部同士の間で中心長手軸と平行に延在し、剛性が増大したストリップをスリーブに与える。
【0010】
発明の1つの局面によれば、スリーブの基板を形成する不織材料は、異なる組成の熱可塑性繊維をその中に含む。異なる組成の熱可塑性繊維は互いから離間されて、均質でない材料組成を基板に与え、熱処理を受けると熱硬化形状を呈し、それによって自動的にカールした記憶位置に基板を偏倚させる。
【0011】
発明の別の局面によれば、不織材料に埋め込まれたまたは別の方法で接合された熱可塑性繊維は、標準的な熱可塑性繊維と混合された低融繊維を含む。低融繊維は、熱処理を受けると熱硬化形状を呈し、それによって自動的にカールした記憶位置に基板を偏倚させる。標準的な熱可塑性繊維は、所望であれば、所望の密度および厚みを基板に与えるように部分的に作用し、それによって、付加的な熱保護および剛性をスリーブに与える。第1の領域は第1の重量%の低融繊維を有し、第2の領域は第2の重量%の低融繊維を有し、第1の重量%は第2の重量%とは異なる。従って、基板は、所望であれば、ある材料組成の第1の領域および別の材料組成の第2の領域を有して構成され、第1および第2の領域に異なる物理的特性を与える。
【0012】
発明の別の局面によれば、不織基板は、中心長手軸から離れる方に面する外面を有し、反射層が外面に取付けられる。
【0013】
発明の別の局面によれば、反射層は箔積層物として設けられる。
発明のさらに別の局面によれば、低融繊維は標準的な熱可塑性繊維に封入される。
【0014】
発明のさらに別の局面によれば、熱可塑性材料の格子が不織層に接合され、スリーブ壁の少なくとも一部分を形成する。
【0015】
発明のさらに別の局面によれば、格子はニット層である。
発明のさらに別の局面によれば、格子は単一片の熱可塑性材料である。
【0016】
発明のさらに別の局面によれば、長い部材を敷設し、放射熱および/またはノイズおよび振動発生から保護するための不織スリーブを構成する方法が提供される。当該方法は、不織材料の壁を形成するステップと、壁の第1の領域を第1の材料で形成するステップと、壁の第2の領域を第1の材料とは異なる第2の材料で形成するステップと、壁を管状形状に熱硬化させるステップとを含む。
【0017】
発明の別の局面によれば、当該方法は、中心長手軸を横切ってかつスリーブの周りに周方向に延在するように第1および第2の領域を形成し、可撓性が向上した長手方向に離間した領域を設けるステップを含む。
【0018】
発明の別の局面によれば、当該方法は、対向端部同士の間で中心長手軸と平行に延在するように第1および第2の領域を形成して、剛性が増大したストリップをスリーブに設けるステップを含む。
【0019】
発明の別の局面によれば、当該方法は、反射層を壁の外面に取付けるステップを含む。
発明の別の局面によれば、当該方法は、ニードルフェルト処理において第1の領域を第2の領域に埋め込むステップを含む。
【0020】
発明の別の局面によれば、当該方法は、領域の一方を熱可塑性材料の格子で形成するステップを含む。
【0021】
発明の別の局面によれば、当該方法は、格子を熱可塑性糸フィラメントのニット層として形成するステップを含む。
【0022】
発明の別の局面によれば、当該方法は、格子を押出成形された単一片の熱可塑性材料として形成するステップを含む。
【0023】
図面の簡単な説明
発明のこれらおよび他の局面、特徴および利点が、現在好ましい実施例およびベストモードの以下の詳細な説明、添付の請求項、および添付の図面に鑑みて当業者に容易に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】その中に長い部材を保持および保護する、本発明の1つの局面に従って構成された不織自動巻き付き熱スリーブの概略斜視図である。
【
図2】概して
図1の線2−2に沿った、拡大概略部分斜視図である。
【
図2A】スリーブに貼付けられた外側反射層を示す、
図2と同様の図である。
【
図3】その中に長い部材を保持および保護する、発明の別の局面に従って構成された不織自動巻き付き熱スリーブの概略斜視図である。
【
図4】
図3の概して線4−4に沿った、拡大概略部分斜視図である。
【
図4A】スリーブに貼付けられた外側反射層を示す、
図4と同様の図である。
【
図5】その中に長い部材を保持および保護する、発明の別の局面に従って構成された不織自動巻き付き熱スリーブの概略斜視図である。
【
図6A】発明の別の局面に従って構成された壁の分解図である。
【
図7】その中に長い部材を保持および保護する、発明のさらに別の局面に従って構成された不織自動巻き付き熱スリーブの概略斜視図である。
【
図8A】発明の別の局面に従って構成された壁の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
現在好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、
図1は、本発明の1つの局面に従って構成された、以下スリーブ10と称する不織自動巻き付き保護熱スリーブを示す。スリーブ10は、改良された不織材料で構成された、以下壁12と称する不織基板層を有する。壁12は、外部から与えられる力がなく壁12が緩んだ状態にあるとき、中心長手軸14の周りに自動巻き付き管状「たばこ型」形状を呈するように熱硬化し、囲まれた管状の内部空洞16をもたらす。空洞16は軸16に沿って容易にアクセス可能であるため、たとえば管、ワイヤまたはワイヤーハーネス18などの長い部材を、径方向に空洞16内に容易に配置することができ、逆に、稼動中などに空洞16から取出すことができる。壁12は、長さ、直径、および壁厚を含むいずれかの好適な寸法で構成することができ、壁12は、対向端部24,26の間で軸14と平行にまたは実質的に平行に延在する対向辺20,22を有する。対向辺20,22は、中心長手軸14の周りに自動的に巻き付いて、長い部材が収容される空洞16をもたらす。壁12の対向辺20,22は、外部から加えられる力の下で互いから離れる方に延在可能であり、長い部材を径方向に空洞内に配置することが可能となる。空洞内に長い部材を配置すると外力は解放され、それによって、壁12の対向辺20,22がそれらの自動巻き付き管状形状に戻ることが可能となる。壁12は、その幅および/または長さにわたって均質でない(不連続な)材料組成を有し、ある不織材料組成の第1の領域28と別の不織材料組成の第2の領域30とをもたらし、第1および第2の領域28,30は不織処理において互いに絡み合わされる。従って、第1および第2の領域28,30の材料組成は異なり、それによって、壁12の第1および第2の領域28,30に異なる物理的特性を与える。異なる物理的特性は、所期の用途にとって望ましい物理的特性に応じて、例として、長手方向の可撓性が向上し、カールする偏倚が向上し、フープ剛性が向上し、軸方向の剛性が向上し、かつ重さが減少した領域を壁12にもたらす。従って、壁12は、所望であれば不均一な物理的特性を有し、たとえば向上した自動カールと、減少した重さとを壁に与える。
【0026】
スリーブ10は、いずれかの所望の長さおよび多様な完成した壁厚(t)を有して構成することができる。
図2および
図2Aにもっともよく示されるように、発明の1つの局面に従って構成された壁12を形成する不織材料は、概して32に表されるモノフィラメントおよび/または複合繊維を含む低融繊維を有する。低融繊維32は、所望であれば、概して34に表わされる標準的な熱可塑性繊維と混合させることができ、さもなければ低融繊維32は第1の領域28を全体的に構成することができる。低融32は、熱硬化処理で熱処理されると、標準的な熱可塑性繊維34より低い温度で少なくとも部分的に溶融し、熱硬化形状を呈し、それによって、自動的にカールした記憶筒状形状として表わされる熱硬化形状に壁12を偏倚させる。複合繊維が低融繊維32として提供される場合、それらは、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)などの標準的な熱可塑性材料のコアと、たとえばポリプロピレン、ポリエチレン、または低融ポリエステルの外装とを有して設けることができる。標準的な熱可塑性繊維34は、たとえばナイロンまたはPETなどのいずれかの熱可塑性繊維として設けることができ、所望であれば、壁12に所望の密度および厚み(t)を与えるように作用することができ、それによって、熱硬化可能繊維32と比較して相対的に安価でもある一方、付加的な熱保護および剛性をスリーブ10に与える。従って、基板12は、少なくとも最初にかつ使用前に筒状形状に自動的にカールされる一方、必要であれば互いに対して離散的な位置に構成された、機械的に絡み合ったかまたは別の方法で接合された、好適な厚みおよび密度の不織の標準的な熱可塑性繊維32および低融繊維34を有して構成され、用途に応じて所望の物理的特性を得る。
【0027】
不織基板12の低融繊維32および標準的な熱可塑性繊維34の種類、量、寸法、および比率は変動させることができ、したがって所望の剛性、熱硬化カールのスプリングバック偏倚、手(柔軟性)、熱的耐熱性、ならびに基板密度および全厚(t)をスリーブに10を与えるように選択することができる。そのため、用途に応じて、スリーブ10は相対的に小さい外径を有して構成することができる一方、所定の横断面積のワイヤを包含するために十分な容積を空洞16に与える。用途がより厳しく、スリーブが極度の熱および/または異物に露出させられる場合、所望であれば壁12の厚み(t)を増大させることができる。また、壁厚(t)を増大させるとより高い剛性をスリーブ10に典型的に与え、したがってより大きな空洞16を構成することができる一方、より多くのかつより大きい直径のワイヤを含むために適切な剛性および強度をスリーブ10に与える。
【0028】
また、低融繊維32および/または標準的な熱可塑性繊維34の種類、量、寸法、および比を変動させる以外に、互いに対する低融繊維32および標準的な熱可塑性繊維34の分配(正確な配置)は、用途によって要求される所望の性能特性をスリーブ10に与えるように制御される。例として、限定はしないが、
図1および
図2に示されるように、壁12は、スリーブ10の長さに沿って互いから軸方向に離間された周方向に延在するバンドに分配された低融繊維32で形成された第1の領域28を有する。従って、低融材料32のバンドは、熱成形されると、スリーブ10にその自動的にカールする偏倚をもたらす一方、フープ強度が増大した領域ももたらし、スリーブ10の破砕強度を高める。上述のように、低融材料32の周方向のバンドは標準的な熱可塑性繊維34も組込むことができ、それによって、所望であれば、標準的な繊維34に対する所定の比率の低融繊維32を不連続なバンドに与える。低融材料32の周方向のバンドは、組込まれている場合は標準的な繊維34とともに、標準的な熱可塑性繊維34だけで形成された第2の領域30によって互いから軸方向に離間される。したがって、標準的な熱可塑性繊維の第2の領域30は低融第1領域28ほど高価ではない材料成分をもたらし、全体的に均一に低融繊維を有するスリーブから、重さが全体的に減少したスリーブ10を与える。低融の第1の領域28と標準的な熱可塑性繊維の第2の領域30とが互い違いの周方向に延在することによって、スリーブ10は、標準的な熱可塑性繊維の第2の領域30と一致する、向上した長手方向の屈曲点が与えられる。したがって、利用要件に応じて、標準的な繊維34の第2の領域30をいずれかの所望の軸方向長さを有して設け、必要な可撓性をスリーブ10に与えることができる。
【0029】
標準的な熱可塑性繊維34に対する低融繊維32の含有量を変動させることに加え、所望であれば、低融繊維32の種類および含有量を壁12の全体にわたって変動させ、それによってスリーブ10の物理的特性を変更することができる。たとえば、低融複合繊維は、スリーブ10の異なる領域において異なる材料組成を有して設けることができる。スリーブ10のある領域では、低融複合繊維32は、減少した相対的な割合の低融外装材料および増大した相対的な割合の標準的な熱可塑性繊維コア材料、たとえば10%の外装および90%のコアを有することができ、スリーブ10の別の領域では、複合繊維32は、増大した相対的な割合の低融外装材料および減少した相対的な割合の標準的な熱可塑性繊維コア材料、たとえば30%の外装および70%のコアを有することができる。さらに、低融繊維32の寸法、つまりステープル長および直径またはデニールを、その長さにわたって所望の物理的特性をスリーブに10に与えるように変動させることができる。たとえば、ある領域では、低融繊維32は2″ステープル長および4デニールを有することができ、別の領域では、低融繊維32は3″ステープル長および10デニールを有することができる。さらに、前述の領域の各々における標準的な熱可塑性繊維34に対する低融繊維32の比率は異なり得る。スリーブ10のある領域と別の領域とで低融繊維32の仕様を変更することによって、スリーブ10は、最適な自動カール記憶力、可撓性および剛性を得ることができ、製造において経済的でもある。
【0030】
発明のさらなる局面によれば、スリーブ10の前述の物理的特性は、スリーブ10の壁12内の繊維32の方向付けを制御することによって与えられ得る。たとえば、繊維32は、所定の効果的なパターンで繊維32を延在させるように、壁12の製造において梳くかまたは別の方法で方向付けることができる。たとえば、スリーブ10の長手方向の剛性を高めるために、軸14に沿ってスリーブ10の縦方向に延在するように繊維32を構成することができる。これに対して、フープ強度の向上が望まれる場合は、スリーブ10の幅(横糸)方向に軸14を横切って延在するように繊維32を構成することができ、結果として、スリーブ10の長さに沿って離散的な屈曲配置をもたらすことができる一方、高まった真円度、ねじれ防止能力、および向上した自動カール記憶力がスリーブ10に与えられる。当然、用途に応じて、発明に従って構成された単一のスリーブは、繊維32がある方向に延在する1つ以上の軸方向部分と繊維32が異なる方向に延在する1つ以上の軸方向部分とを含む、別個の軸方向に延在する部分を有することができる。従って、所望であれば、単一のスリーブ10は、離散的な軸方向に延在する部分にわたって異なる物理的特性を有して設けることができる。
【0031】
図3および
図4に示されるように、発明の別の局面に従って構成されたスリーブ110が示され、上記した同様の特徴を特定するために、100の桁を加えた参照符号が使用される。スリーブ110は低融繊維132の周方向に延在するバンドを備えた壁112を有するのではなく、壁112は、低融繊維132の、ストリップとも称するバンドの長手方向に延在する第1の領域128と、標準的な熱可塑性材料、たとえばPETの、ストリップとも称するバンドの長手方向に延在する第2の領域130とを有する。低融繊維132は、上述のように第1の領域128のストリップにおいて標準的な熱可塑性繊維134と組合わせて、求められる物理的特性をスリーブ110に与えるのに必要な所望の比率および組成を与えることができる。長手方向の中心軸114と概ね平行なスリーブ110の長さに沿ってストリップを延在させることによって、増大した長手方向の剛性がスリーブ110に与えられる。したがって、スリーブ110は、その長さの支持されていない部分にわたって弛むほど傾斜しない。低融繊維132を含有する軸方向に延在するストリップは、全体的に標準的な熱可塑性繊維134で形成された第2の領域130の軸方向に延在するストリップによって互いから周方向に離間され、それによって、全体的に低融および/または複合繊維で構成されたスリーブと比較して、スリーブ110の重さおよび製造コストが減少する。長手軸114と平行に延在するストリップの方向以外は、スリーブ110の構造および製造は概ね上述したのと同じである。
【0032】
図2Aおよび
図4Aに、最も外側の反射層36,136をスリーブ10,112の壁12,112にそれぞれ取付けることができる発明の別の局面が示される。反射層36,136は、壁12,112と同じ幅および長さを有して設けることができ、したがって壁12,112の外面全体を覆うかまたは実質的に覆うことができ、それによって壁外面の領域は外部環境に露出しない。反射層36,136は、たとえばl/3ミルの箔積層接着剤−l/2ミルの金属化PET膜などの膜/箔積層物として設けることができる。したがって、箔は反射性を与え、PET膜は使用の際に耐久性を与える。他の場合には、たとえば単一の金属箔層を含む他の反射材料を使用することができる。反射層36,136は、たとえばヒートシールまたは中間感圧接着剤を含むいずれかの好適な接着剤などによっていずれかの好適な方法で壁12,112に取付けることができる。反射層36,136は、高まった熱保護をワイヤ18に与え、使用の際にスリーブ10,110をワイヤ18の周りにその巻き付き筒状形状に維持することを容易にすることもできる。
【0033】
発明のさらなる局面によれば、
図5および
図6に示されるように、例として、限定はしないが、スリーブ210の前述の異なる物理的特性は、たとえばエアレイ処理などにおいて一対の不織層212′を構成することにより与えることができ、標準的な熱可塑性繊維234および/または低融繊維232の物理的特性が異なる第1および第2領域228,230を有し、上述したように複合繊維を含み得る格子ネットワーク(以下単に格子38と称する)を不織層212′の間に挟み込むことができる。格子38は、挟み込み、機械的な穿刺処理によって少なくとも部分的に層212′内に埋め込むことができる。構成中に、格子38は不織層212′の間に挟み込まれ、次いで層212′が別個の層212′の繊維と互いに絡み合うように穿刺され、それによって、取り込まれた格子38を含む一体化された不織壁212構造を形成する。格子38は、所望であれば、標準的な熱可塑性繊維234および/または低融繊維232の好適ないずれかの幾何学形状、組合せ、および種類を有して形成されて、カールした熱硬化可撓性および剛性を保持する異なる性質の第1および第2の領域128,130を有する不織壁212を形成することができる。1つの現在好ましい実施例によれば、格子38は、たとえば所望の材料、糸の種類(たとえばモノフィラメントおよび/またはマルチフィラメント)、寸法、および糸の方向付け(たとえば1インチ当たりのピック、縦糸密度)を用いて、縦編み構造として構成される。編み処理で構成される以外に、編組、織り、機械加工、ダイカット、高速プロトタイピングなどを用いて発明に係る格子を製造することができると意図される。さらに、所期の用途にとって望ましければ、格子38はいずれかの好適な厚みまたは厚み変動を有して構成することができる。従って、壁212に形成された互い違いの可撓性領域対堅い領域の方向および寸法は、利用要件に応じて制御することができる。なお、穿刺を容易にするために、穿刺処理中にフィラメント332が針に引っかけられるのを防ぐために隣接する糸フィラメント間に所望の開口部を設けて格子38のニットパターンを形成することができると認識されるべきである。
【0034】
壁212内に格子38を取り込むと、壁212はそこに取付けられた反射層40を有することができる。反射層40は、たとえば箔または金属化された膜の薄い層などのいずれかの好適な形態で設けることができる。反射層40は、いずれかの好適な接着剤によって不織層212′の外面に付着させることができ、ここではスリーブ210の外面となるものに対応する1つの不織層212′上の外面に付着させられるものとして示される。壁212に反射層40を付着させると、壁212はその所望の形状にカールし、次いで熱せられて、格子38内の熱硬化可能な糸に、熱硬化したカール形状を呈させ、壁212を自動カール形状に偏倚させることができる。これは、所望であれば、熱した心棒、超音波溶接、または他の方法で行うことができる。図示の通り、例として、格子38は縦糸方向に(スリーブ210の長さに沿って延在)延在する、例としてPETなどの、横糸方向に延在する低融モノフィラメント232と絡み合った熱可塑性マルチフィラメント234を有し、別個の横糸方向に延在する低融モノフィラメント232は、隣接するマルチフィラメント間に正弦波状に編まれ、単一体の格子38構造を形成する。
【0035】
発明の別の局面によれば、
図6に示したように中間格子の対向する側に重なる一対の不織層を備えた壁を有するのではなく、
図6Aに示されるように、壁312は、積層工程において、中間格子338の対向する側に重なる単一の不織層312′および反射層340を有するように構成することができる。たとえば、上記と同じように構成される格子338は、層312′の1つの上に配置され、他の層340は格子338上に配置され、格子340に熱が加えられて、格子338内の熱可塑性フィラメント332,334を少なくとも部分的に溶融させる。したがって、溶融したフィラメント332,334が接着剤として作用し、挟み込まれた層312′,340および中間格子338を互いに接合させて、一体化された壁312を形成する。自動的にカールするスリーブ形状を壁312で作成するために、格子338を熱する前に、壁312をまずカールした形状に形作り、次いで熱することができる。繊維を熱する1つの現在好ましい方法では、超音波溶接処理を用いて、格子338のフィラメントのうちのいくつかを少なくとも部分的に溶融して、層312′,340を互いに接合する。当然、格子338の熱硬化可能フィラメントを熱するいずれかの好適な方法を用いることができる。また、層312′,340はその間に塗布された接着剤によって互いに接合することができるか、または層312′および格子338を穿刺して層312′を格子338に機械的に固定することができる。次いで、反射層340を接着剤によって格子338に取付けることができ、その後壁312を熱硬化させて、その自動カール形状を得ることができる。
【0036】
発明のさらなる局面によれば、
図7および
図8に示されるように、例として、限定はしないが、スリーブ410の前述の物理的特性は、たとえばエアレイ処理などで一対の不織層412′を構成することによって与えることができ、上述のように複合繊維を含むことができる標準的な熱可塑性材料434および/または低融材料432の単一体格子ネットワーク(以下単に格子438と称する)を不織層412′の間に挟み込むことができる。格子438は、単一組成の材料として形成される場合、押し出し成形することができる。格子438は、異なる物理的特性の第1および第2の領域428,430を有して形成され、例として、互いに単一片の材料として相互接続された縦糸方向に(スリーブ410の長さに沿って延在)延在する熱可塑性リブ434および横糸方向に延在する熱可塑性リブ432を有する。横糸方向に延在するリブ432は、互いから軸方向に等距離で離間され、その間に離散的な可撓性領域をもたらすものとして示される。さらに、横糸方向リブ432は、増大した厚みまたは直径などによって縦糸方向に延在するリブ434に対して増大した断面積を有して設けられ、熱硬化されると高まったカール記憶力をもたらす。相対的に減少した厚みまたは幅の縦方向のリブ434は高まった可撓性および引張り強さをスリーブ410に与え、同時にスリーブ410のコストおよび重さを最小化する。なお、単一体の格子438を形成するのに使用される材料の種類は、標準的な熱可塑性材料、たとえばPET、もしくは低融材料、たとえばポリプロピレン、ポリエチレン、もしくはたとえば低融ポリエステル、または上記のように複合材料など、所期の用途にとって望ましいように設けることができると認識されるべきである。
【0037】
壁412内に挟み込まれた関係で格子438を積層すると、壁412はそこに取り付けられた反射層440を有することができる。反射層440は、上記のように薄い箔の層、金属化された膜、または他の方法などのいずれかの好適な形態で設けることができる。反射層440は、不織層412′の外面にいずれかの好適な接着剤によって付着させることができ、ここでは、スリーブ410の外面となるものに対応する1つの不織層412′上の外面に付着させられるものとして示される。反射層440を壁412に付着させると、壁412はその所望の形状にカールし、次いで熱せられて、熱硬化可能な格子438に熱硬化したカール形状を呈させ、壁412を自動カール形状に偏倚させることができる。これは、スリーブ310について上記したように行うことができる。
【0038】
発明の別の局面によれば、
図8Aに示されるように、中間格子538の対向する側に重なる単一の不織層512′および反射層540を有する壁512を構成することができ、不織層512′および格子538は、不織層412′および格子438に関して上記したのと同じように構成される。たとえば、格子538は層512′の一方の上に配置され、他の層540は格子538上に配置され、その後格子540に熱が加えられて、格子438内の熱可塑性フィラメント532,534を少なくとも部分的に溶融させ、かつ接着剤として作用させて、挟み込まれた層512′,540を互いに接合させ、一体化された壁512を形成する。上述したように、自動的にカールするスリーブ形状を壁512で作成するために、壁512をまずカールした形状に形作り、次いで熱することができる。また、層512′,540はその間に塗布された接着剤によって互いに接合することができるか、または層512′および格子538を穿刺して層312′を格子338に機械的に固定することができ、その後反射層540を格子538に取付けることができ、壁512が熱硬化し、上述のように自動カール形状を得ることができる。
【0039】
同じ機能を実施する発明の他の実施例が、いずれかの最終的に許可される特許請求項の範囲内においてここに組込まれることが理解されるべきである。