(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957448
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】電気的機能および接続要素を備える積層窓ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20160714BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20160714BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20160714BHJP
B60S 1/58 20060101ALI20160714BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20160714BHJP
H01R 13/05 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
C03C27/12 M
C03C27/12 D
E06B5/00 Z
B60S1/02 B
B60S1/58 A
H05B3/02 A
H01R13/05 A
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-515830(P2013-515830)
(86)(22)【出願日】2011年6月20日
(65)【公表番号】特表2013-530916(P2013-530916A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】EP2011060191
(87)【国際公開番号】WO2011161039
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年2月3日
(31)【優先権主張番号】10401085.5
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シユラールブ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シユライバー,バルター
(72)【発明者】
【氏名】ロイル,ベルンハルト
【審査官】
吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−056751(JP,A)
【文献】
特開平03−208840(JP,A)
【文献】
実開昭47−004241(JP,U)
【文献】
特開平06−295755(JP,A)
【文献】
特開平07−206408(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/100945(WO,A1)
【文献】
特開2005−019083(JP,A)
【文献】
実開平03−025526(JP,U)
【文献】
特開平06−185268(JP,A)
【文献】
実開平06−085338(JP,U)
【文献】
特開2010−116699(JP,A)
【文献】
特開2001−048602(JP,A)
【文献】
特開平02−289452(JP,A)
【文献】
特開平10−040977(JP,A)
【文献】
米国特許第05534879(US,A)
【文献】
米国特許第02648754(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06 − 27/12
E06B 3/66 − 3/677
E06B 5/00
B60J 1/00
B60S 1/02
B60S 1/58
H05B 3/02
H01R 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的機能および接続要素を備える積層窓ガラスであって、
a.少なくとも1つの熱可塑性中間層(8)に面接続された、少なくとも2つの窓ガラス(1.1)(1.2)と、
b.窓ガラス(1.1)(1.2)の間に配置された少なくとも1つの電気的機能層(3)と、
c.電気的機能層(3)に導電的に接続された、少なくとも1つの箔導体(2)であって、
箔導体(2)は積層窓ガラス(1)から引き出され、
箔導体(2)は積層窓ガラス(1)の少なくとも1つの外側(15)に固定され、
箔導体(2)は、積層窓ガラス(1)の外側に、電気的接触するための接続箇所(6)を有する、箔導体(2)と、
d.少なくとも1つの筐体(11)および筐体に配設された少なくとも1つのバネ接触要素であって、
筐体(11)は、積層窓ガラスの側縁がクランプ締めによって包囲されるように、U字型のプロファイルを有しており、
少なくとも1つのバネ接触要素は、筐体が積層窓ガラスの側縁にクランプ締めされたときに少なくとも1つの箔導体と電気的に接触するように、接続箇所に押し付けられるものである、筐体(11)及びバネ接触要素と、を含み、
e.少なくとも1つの窓ガラス(1.1)がアンダーカットを有し、箔導体(2)は、アンダーカット窓ガラス(1.1)の側縁(16.1)の周りで張り出しを伴わずに広がっている、前記積層窓ガラス。
【請求項2】
バネ接触要素が、電源または外部電気制御システムに接続される供給線を備えている、請求項1に記載の積層窓ガラス。
【請求項3】
窓ガラス(1.1)(1.2)が4mmから10mmの厚みの部分強化ガラスを含有し、熱可塑性中間層は0.7mmから0.9mmの厚みのポリビニルブチラール(8)を含有し、電気的機能層(3)は少なくとも1つの金属層および少なくとも1つの金属酸化物層を含有する、請求項1または2に記載の積層窓ガラス。
【請求項4】
電気的機能層(3)が、窓ガラス(1.1)(1.2)の内側の少なくとも1つに配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層窓ガラス。
【請求項5】
窓ガラス(1.1)(1.2)が0.1mmから0.5cmのアンダーカットを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層窓ガラス。
【請求項6】
電気的機能層(3)が加熱層である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層窓ガラス。
【請求項7】
筐体(11)の内部が、封止手段(12)によって、気体、水、または水分から封止されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層窓ガラス。
【請求項8】
筐体が、接着によって封止および固定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層窓ガラス。
【請求項9】
電気的機能層(3)と箔導体(2)との間および/または箔導体(2)と供給線(13)との間の電線接続(9)(14)が、半田フリーであり、接着接合またはクランプ締めされている、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層窓ガラス。
【請求項10】
箔導体(2)の接続箇所(6)が、窓ガラス(1.1)(1.2)から離れる方向に向いている側に配置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層窓ガラス。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の電気的機能および接続要素を備える積層窓ガラスを製造する方法であって、
a.電気的機能層(3)に接続された少なくとも1つの箔導体(2)が、積層窓ガラス(1)内に導入されてそこから突出し、
b.箔導体(2)が、窓ガラス(1.1)の側縁(16.1)の周囲に敷設され、
c.箔導体(2)が、窓ガラス(1.1)の外側に接着接合され、
d.少なくとも1つのバネ接触要素(13)を備える筐体(11)がU字型のプロファイルを有し、積層窓ガラスの側縁がU字型のプロファイルの筐体によってクランプ締めされて包囲され、バネ接触要素(13)と箔導体(2)の接続箇所(6)との間に電気的接触がなされる、前記方法。
【請求項12】
電気的機能層(3)に、90Vから400Vの電圧が印加される、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層窓ガラス(1)の使用。
【請求項13】
機能的および/または装飾的個別部品として、および家具、装置、および建造物における組み込み部品として、ならびに陸上、空中、または水上の輸送手段におけるフロントガラス、後部ガラス、側窓、および/またはガラス屋根としての、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層窓ガラス(1)の使用。
【請求項14】
電気発熱体としての、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層窓ガラス(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的機能、具体的には加熱機能、および電気的に接触するための接続要素を備える、積層窓ガラスに関する。本発明はさらに、積層窓ガラスなどを製造する方法ならびにその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
複合窓ガラスとも称される、積層窓ガラスは、2枚以上のフロートガラスまたは単板安全ガラスからなり、熱および圧力を用いて1つ以上の中間層を備えて互いにしっかりと接合されている。中間層は通常、ポリビニルブチラール(PVB)またはエチレンビニルアセテート(EVA)などの熱可塑性プラスチックでできている。
【0003】
窓ガラスの間の電気的機能部品または電気的機能層の導入を通じて、積層窓ガラスには様々な機能が提供され得る。電気的機能部品は、たとえば、アンテナ素子、太陽電池、またはエレクトロクロミック被膜である。細い金属線の挿入または電気的加熱被膜の付着を通じて、具体的には加熱機能が獲得され得る。
【0004】
自動車部門では、積層窓ガラスの電気的機能層と接触するために、習慣的に箔導体が使用される。箔導体の例は、独国特許第4235063A1号明細書、独国実用新案第202004019286U1号明細書、および独国実用新案第9313394U1号明細書に記載されている。
【0005】
平板導体または平帯導体と称されることもある、可撓性の箔導体は、習慣的に、0.03mmから0.1mmの厚みおよび2mmから16mmの幅を有する、スズめっき銅ストリップでできている。銅は、良好な導電性、ならびに良好な箔加工性を有するので、このような導体トラックでは好結果を得ている。同時に、材料費も低い。箔に加工され得るその他の導電性材料もまた、使用されることが可能である。この例は、金、銀、またはスズ、あるいはこれらの合金である。
【0006】
電気的絶縁および安定化のため、スズめっき銅ストリップは、プラスチック製のキャリア材料に付着されるか、またはその両面に積層される。絶縁材料は、通例として、0.025mmから0.05mm厚のポリイミドベースの膜を含有する。その他のプラスチックまたは必要とされる絶縁特性を備える材料もまた、使用されることが可能である。互いに電気的に絶縁された複数の導電層が、1つの箔導体ストリップ中に存在させられることが可能である。
【0007】
積層窓ガラスの電気的機能層との接触に適した箔導体は、わずか0.3mmの合計厚みを有する。このように薄い箔導体は、個々の窓ガラスの間の熱可塑性接着層に、容易に埋め込まれることが可能である。
【0008】
電気的機能層と接触するための箔導体の使用は、自動車部門に限定されるものではない。独国特許第19960450C1号明細書および独国特許第10208552A1号明細書から知られるように、箔導体は建築部門でも使用される。複合または絶縁窓ガラスでは、箔導体は、電圧制御エレクトロクロミック層、太陽電池、電熱線、加熱層、またはアラームループなどの集積電気部品と電気的に接触するのに役立つ。
【0009】
通常、別の電気的制御システムとの工具不使用接続のための完全な接続要素およびプラグを備える窓板が、窓板製造業者から必要とされる。箔導体と別の電気的システムとの間の接続は、通常は軟質半田付けによってなされ、筐体によって保護される。
【0010】
金属箔および絶縁箔の厚みが小さいため、箔導体は、引き裂きに対してわずかな保護しかなく、引き裂き伝播に対する抵抗が弱い。実際には、箔導体に対する損傷は、特に積層窓ガラスからの出口点で発生する。これは、箔導体がガラスの縁を通じて引張荷重を受けるとき、または箔導体が捻れたときに起こる。
【0011】
箔導体とケーブルとの間の移行を可能な限り窓板の近くに、または窓板上に固定することは、独国特許第4235063A1号明細書に記載されるように、救済策を提供する。ここで、複合窓ガラスの中間層に埋め込まれた電熱線が箔導体と接触する。箔導体は、積層体から引き出されて積層体の窓ガラスの外縁の周りに引かれる。その後、箔導体は、ガラスの外側に接着接合され、フラットコネクタまたはスナップコネクタに半田付けされる。フラットコネクタまたはスナップコネクタなどの要素は、ガラスの平滑な表面から突起しており、損傷に弱い。
【0012】
具体的には、自動車部門において、通常は箔導体との電線移行が半田付けされる。たとえば加熱機能に必要とされるような高電流での、12Vから14Vの低い車載電圧のため、電線移行における低接触抵抗を保証するために、注意を払わなければならない。
【0013】
ガラス製の電気的加熱可能板要素のための代替接続装置は、独国特許第10241728A1号明細書より周知である。この場合、後方から受ける突起を備える窓ガラスの1つにある凹部は、プラスチック製の固定要素の逆支持部の役割を果たす。固定要素は窓ガラスの平坦な表面から突起し、必要な穴開けは複雑な処理ステップである。窓ガラスの開口部は、酸素および大気中水分の透過、敏感な加熱層の腐食を招く可能性のある状況を、可能にする。突起している固定要素は扱いにくく、輸送中および組み立て中に破損しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許発明第4235063号明細書
【特許文献2】独国実用新案第202004019286号明細書
【特許文献3】独国実用新案第9313394号明細書
【特許文献4】独国特許発明第19960450号明細書
【特許文献5】独国特許発明第10208552号明細書
【特許文献6】独国特許発明第10241728号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、電気的機能および接続要素を備える、使用場所での迅速かつ単純な組み立てに適した改良型積層窓ガラスを提供することにある。積層窓ガラスの完全性および光学的外観は、可能な限り接続要素によって影響を受けるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、請求項1に記載の電気的機能および接続要素を備える積層窓ガラスを用いて、本発明にしたがって達成される。好適な実施形態は、従属請求項より明らかとなる。
【0017】
積層窓ガラスを製造し、プラグインシステムまたは接着システムを用いて電気的に接触する方法、ならびに積層窓ガラスの使用は、さらなる請求項より明らかとなる。
【0018】
本発明による積層窓ガラスは少なくとも2つの窓ガラスを含み、これらは少なくとも1つの熱可塑性中間層を備えて互いに接合される。
【0019】
窓ガラスは好ましくは強化、部分強化、または非強化ガラス、具体的にはフロートガラス、鋳造ガラス、およびセラミックガラスでできている。これらは好ましくは4mmから10mmの厚みを有する。中間層は、好ましくは0.3mmから0.8mmの厚みを有する、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)またはエチレンビニルアセテート(EVA)またはこれらの多層などの熱可塑性プラスチックを含有する。
【0020】
個々の窓ガラスの間には、少なくとも1つの電気的機能層、好ましくは電気的加熱可能被膜、エレクトロクロミックまたは光起電力層が配置されている。電気的加熱可能被膜は、好ましくは、互いに絶縁された1つまたは複数の金属の層を含有する;これらは、特に好ましくは、銀を含有する。金属層は好ましくは、拡散障壁として金属酸化物タイプの誘電材料中に埋め込まれる。
【0021】
本発明による積層窓ガラスの有利な実施形態において、少なくとも1つの電気的機能層が、窓ガラスの内側の少なくとも1つに配置されている。ここで「窓ガラスの内側」とは、熱可塑性中間層に対向するいずれかの側を意味する。3つ以上の窓ガラスのガラス複合材の場合には、複数の窓ガラスの内側に複数の電気的機能層が配置されることも可能である。あるいは、1つの機能層が2つの熱可塑性中間層の間に埋め込まれることも、可能である。
【0022】
電気的機能層は、箔導体に導電的に接続されている。接続は、好ましくはクランプ締め、半田付け、または導電性接着剤を用いる接着によって、なされる。
【0023】
箔導体は、積層窓ガラスから引き出され、積層窓ガラスの外側に固定される。ここで「積層窓ガラスの外側」とは、積層窓ガラスの内部に位置していないいずれかの側を意味する。これは、熱可塑性中間層から離れる方向に向いている窓ガラスの側、ならびにその周縁表面を含む。箔導体は、たとえば2つの層を有しているかまたはその長さ方向に分割されている場合に、積層窓ガラスの両外側に固定されることさえ可能である。
【0024】
箔導体は、積層窓ガラスの外側に、電気的接触するための接続箇所を有する。これは好ましくは、箔導体の金属製内部導体が接触要素に自由にアクセス可能なように、箔導体の外部プラスチック絶縁内の間隙である。
【0025】
本発明の好適な実施形態において、箔導体の接続箇所は、窓ガラスの周縁表面の領域内に位置する。このようにすると、窓板を通して見たときの積層窓ガラスの領域は外部接触要素を有していないので、特に美観的な結果が得られる。
【0026】
本発明は、箔導体の接続箇所との電線接続を形成するために、電力供給線および接触要素を備える、少なくとも1つの一体型または複数部品筐体を、さらに含む。
【0027】
筐体は好ましくは、電気的絶縁材料でできている。射出成形法によって加工された熱可塑性プラスチックおよびエラストマが、筐体の工業生産に適している。プラスチック筐体を製造するためのこのような射出成形法は、独国特許第10353807A1号明細書より周知である。熱可塑性プラスチックおよびエラストマとして使用されるのは、たとえば、ポリイミド、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、またはエチレンプロピレンジエンゴムである。あるいは、アクリレートまたはエポキシ樹脂系などの熱溶融成形材料もまた、筐体を製造するために使用されることが可能である。筐体は、電気的絶縁インサートを備えて、金属またはその他の導電性材料で作られることが可能である。
【0028】
接触要素として好ましく使用されるのは、金属製の接触ピンまたはバネ接触要素である。比較的高い動作電圧を有する表面発熱体の好適な適用対象として、半田フリーのクランプ締め接続で十分なように、比較的低い電流のみが担持されなければならない。さらに、建造物で使用される場合、接触箇所は通常、振動に曝されない。必要であれば、接触要素の間の電線接続もまた、半田付け、接合、接着、または付加的に固定されることが可能である。
【0029】
筐体は、接続プラグまたは接続線の基部の役割を果たすことができる。さらに、これは電気的制御システムまたは温度センサなどのさらなる機能要素を収容することができる。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、積層窓ガラスは、90Vから400V、特に好ましくは100Vから250Vの、動作電圧を有する。
【0031】
筐体は、接着によって積層窓ガラスの外側に固定されるか、または封止される。接着は好ましくは、アクリルまたはポリウレタン基部を備える接着ストランドまたは接着ストリップによって、行われる。接着接合により、筐体の内部は、気体、水、または水分に対して密封されることが可能である。これは、接触箇所を腐食から保護する。
【0032】
あるいは、筐体は窓ガラス上にプラグイン実装されることが可能である。この目的のため、筐体は好ましくは、積層窓ガラスの側縁がクランプ締めによって包囲されるように、U字型のプロファイルを有する。クランプ締めされた筐体は、接着によって付加的に封止および固定されることが可能である。
【0033】
本発明において、積層窓ガラス複合材の個々の窓ガラスの少なくとも1つは、アンダーカットを有するか、または別の窓ガラスに対して奥まっている。アンダーカット、すなわち個々の窓ガラスの側縁の間の距離は、好ましくは0.1mmから0.5cm、特に好ましくは0.1mmから0.5mmである。アンダーカットは、窓ガラス全体の幅いっぱいに、または箔導体の出口点の周りの領域にのみ、延在することができる。箔導体は、窓ガラスの側縁の周りのアンダーカットの領域内に広がっている。これは突起しておらず、輸送および組み立て中の損傷から大いに保護される。
【0034】
本発明は、電気的機能を備える積層窓ガラスを製造し、押し込み実装および/または接着システムによって電気的に接触する方法を、さらに含む。第一ステップにおいて、電気的機能層に接続された箔導体は、積層窓ガラスから引き出されて窓ガラスの側縁の周りに敷かれる。第二ステップにおいて、箔導体は窓ガラスの外側に接着接合される。箔導体の接続箇所は、窓ガラスから離れる方向に向いている側に配置される。第三ステップにおいて、少なくとも1つのバネ接触要素を備える筐体は、窓ガラス上に接着接合される。あるいは、筐体は積層窓ガラス上にクランプ締めされることも可能である。このプロセスにおいて、筐体内のバネ接触要素は、箔導体の接続箇所と電気的に接触するようになる。
【0035】
2つの個別窓板からなる積層窓ガラスの場合、箔導体は、いずれかの個別窓板の側縁の周りに敷かれることが可能である。箔導体は、たとえば2つの層を有するかまたはその長さ方向に分割されている場合、同時に個別窓板の両方の側縁の周りに敷かれて、その外側に接着接合されることが可能である。
【0036】
筐体内のバネ接触要素の位置は、単純で、完璧に適合する、接続箇所との組み立てが行われるように、調節される。筐体はまた、たとえば窓ガラスの端面全体にわたって延在するレールとしてなど、積層窓ガラス用の取り付けブラケットとして構成されることも、可能である。
【0037】
本発明は、機能的および/または装飾的個別部品として、および家具、装置、および建造物における組み込み部品として、ならびに陸上、空中、または水上の輸送手段における、具体的には自動車における、たとえばフロントガラス、後部ガラス、側窓、および/またはガラス屋根としての、積層窓ガラスの使用を、さらに含む。積層窓ガラスは、好ましくは電気発熱体として使用される。
【0038】
本発明は、90Vから400Vの電圧が電気的機能層に印加される、積層窓ガラスの使用をさらに含む。この範囲の電圧は、通常の家庭用供給電圧として利用可能であり、光透過性の電気発熱体の動作に特に適している。
【0039】
本発明は、図面を参照して以下により詳細に記載される。図面は概略図であり、縮尺通りではない。具体的には、箔導体の層厚は、その可視化のため著しく拡大されている。図面はいかようにも本発明を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】接着接合された筐体(11)を備え、バネ接触要素(13)によって電気的に接触している、積層窓ガラス(1)の図である。
【
図2】筐体(11)がそこに押し込み実装され、バネ接触要素(13)によって電気的に接触している、積層窓ガラス(1)の図である。
【
図3】引き出された箔導体(2)および上部窓ガラス(1.1)のアンダーカットを備える、積層窓ガラス(1)の平面図である。
【
図3A】引き出された箔導体(2)および上部窓ガラス(1.1)の部分的アンダーカットを備える、積層窓ガラス(1)の平面図である。
【
図4】電気的機能層(3)および外部に引き出された箔導体(2)を備える、積層窓ガラス(1)を通る、
図3の線I−Iに沿った断面図である。
【
図5】積層窓ガラス(1)の内側に広がる箔導体(2)を備える、積層窓ガラス(1)の斜視図である。
【
図6】箔導体(2)が外部に引き出され、アンダーカットのない、積層窓ガラス(1)を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の図面は、表面発熱要素の例を用いて、接続要素を備える本発明(1)による積層窓ガラスの実施形態を描写する。
【0042】
図1は、接着接合された筐体(11)を備え、バネ接触要素(13)によって電気的に接触している、積層窓ガラス(1)を描写する。
【0043】
積層窓ガラス(1)の個々の窓ガラス(1.1)および/または(1.2)は、DIN EN 1863規格にしたがって少なくとも70MPaのプレストレスを用いた部分強化ガラスでできている。個々の窓ガラス(1.1)および/または(1.2)は、4mmから10mmの厚みを有し、熱可塑性中間層を備えて互いに接合されている。熱可塑性中間層は、0.76mmの厚みを有するポリビニルブチラール膜(8)でできている。図示される例において、電気的加熱可能被膜は、電気的機能層(3)として、熱可塑性中間層(8)に対向する上部窓ガラス(1.1)の側に付着されている。電気的加熱可能被膜は、両方のガラスの内側の、熱可塑性中間層から離れる方向に向いている第二窓ガラス(1.2)の側に、等しく場合により付着されることが可能である。電気的加熱可能被膜(3)は、独国特許第10208552A1号明細書より周知であり、2つの金属酸化物層の間に埋め込まれた銀層からなる。
【0044】
積層窓ガラス(1)は、たとえば、0.4m×0.6mから1m×1.8mの面積を有する。加熱機能を果たすために、50Hzから60Hzで220Vから240Vの供給電圧が、電気的加熱可能被膜(3)に印加される。熱出力は800W/m
2から1000W/m
2である。動作温度は最高60℃から70℃である。
【0045】
電気的加熱可能被膜(3)は、箔導体(2)の導電層(2.1)に導電的に接続(9)される。接続(9)は、たとえば半田付けまたは導電性接着剤を用いる接着によって、行われる。箔導体(2)は、0.03mmから0.1mmの厚みおよび、たとえば8mmから16mmの幅を有する、スズめっき銅ストリップ(2.1)からなる。銅ストリップ(2.1)の両面は、ポリイミド接着層(5.1)(5.2)で作られたプラスチック膜(4.1)(4.2)に接着される。加えて箔導体(2)は、接着層(5.3)を用いて窓ガラス(1.1)の表面(15)に接着される。
【0046】
箔導体(2)は、電気的に接触するための接続箇所(6)を有する。外部位置決めされたプラスチック膜(4.1)内の、たとえば0.5cm×0.5cmのサイズの間隙(10)は、接続箇所(6)に配置される。間隙(10)の領域では、箔導体(2)のスズめっき銅ストリップ(2.1)は自由にアクセス可能である。
【0047】
図1に示される接続箇所(6)は、窓ガラス(1.1)の側縁からおよそ2cmの距離で、窓ガラス(1.1)の外側に配置されている。しかしながら、接続箇所(6)は、窓ガラス(1.1)の外側(15)のいずれかの点に、ならびにその側縁(16.1)自体の上に、配置されることも可能である。
【0048】
図1において、窓ガラス(1.1)は、たとえば3mmの距離Rだけ、第二窓ガラス(1.2)よりもアンダーカットされるかまたは奥まっている。箔導体(2)は、このように形成された空間内に広がっている。ガラス複合材からのその出口点において、箔導体(2)は、第二窓ガラス(1.2)を超えて突起せず、外部機械的応力から保護されている。
【0049】
図示される例において、箔導体(2)の接続箇所(6)への電線接続(14)は、バネ接触要素(13)を通じてなされている。バネ接触要素(13)は、電源に、またはたとえばサーモスタットなどの外部電気制御システムに、接続される。バネ接触要素(13)は、半田付けまたは接着などの追加ステップを伴わない、単純かつ迅速な接触を可能にする。
【0050】
筐体(11)は、単純かつ迅速に組み立てられることが可能なように、バネ接触要素(13)を備えて設計されている。
図1は、一例として、窓ガラス複合材との接着接合のための筐体(11)を描写する。突起している窓ガラス(1.2)の側縁(16.2)および窓ガラス(1.1)の表面(15)は、アセンブリストップの役割を果たす。バネ接触要素(13)の位置は、箔導体(2)の接続箇所(6)との電気的接触(14)がなされるように、調節される。
【0051】
図2は、窓ガラス複合材に押し込み実装された筐体(11)を描写する。この場合も、バネ接触要素(13)の位置は、箔導体(2)の接続箇所(6)との電気的接触(14)がなされるように調節される。
【0052】
積層窓ガラス(1)は好ましくは、引き出されてガラス表面(15)に固定的に接着された箔導体(2)を備えて、製造される。筐体(11)は、組み立て場所に到達するまで、積層窓ガラス上に接着接合または押し込み実装されない。
【0053】
両方の筐体変形には、最初に積層窓ガラス(1)を設置し、次に筐体(11)を取り付けるという可能性がある。あるいは、筐体(11)が、たとえば幅木または壁レールとして、最初に設置されることも可能である。その後、積層窓ガラス(1)が筐体(11)に挿入される。
【0054】
適切なレールシステムとともに
図2の押し込み実装可能な筐体変形例を用いると、移動可能または柔軟に取り外し可能なように、加熱可能ガラス要素が組み込まれることさえ可能である。
【0055】
窓ガラス(1.1)および(1.2)に筐体(11)を接着することは、たとえば、アクリレート系接着剤またはポリウレタン接着剤(12)を用いてなされることが可能である。筐体(11)と窓ガラス(1.1)および(1.2)との間の単純で丈夫な接続に加えて、これらの接着剤は封止機能を果たし、箔コネクタ(2)と接触要素(13)との間の電線接続(14)を水分および腐食から保護する。電圧がかかっている導電体の封止によって、必要とされる電気保護等級の電気的接続が、さらに獲得され得る。これはたとえば、多湿領域または浴室での使用に不可欠である。
【0056】
箔導体(2)の導電層(2.1)は、接続箇所(6)において地金である必要はない;代わりに、これは塗料またはプラスチック膜の保護層で被覆されることが可能である。この保護層は、製造および使用場所への輸送中に、金属接触面を酸化および腐食から保護する。保護層は、接触すべき対象によって、たとえば接触ピンまたは接触針によって、穿通される可能性がある。あるいは保護層は、接着接合された、剥離可能なプラスチック膜で作られることも可能である。プラスチック膜は、製造中にすでに付着され得る。これはその後、実際の電気的接触がなされる前の組み立て時に、除去されることが可能である。
【0057】
図3は、引き出された箔導体(2)を備えて筐体を備えない、積層窓ガラス(1)の平面図である。上部窓ガラス(1.1)は、窓ガラスの縁(16.1)全体にわたって延在するアンダーカットを有する。
図3Aは、アンダーカット(17)が窓ガラス積層体からの箔導体(2)の出口点の周りの台形型領域上に延在する、代替実施形態を描写する。
【0058】
図4は、
図3の線I−Iに沿った、層構造および箔導体の詳細図である。導電被膜(3)は酸化および腐食に弱いので、これは通常、窓ガラス(1.1)の外側縁(16.1)までずっと引き出されることはない。無被膜領域(18)は好ましくは、窓ガラス(1.1)の外側縁(16.1)に対して0.5cmから2cmの幅を有する。
【0059】
製造プロセスにおいて、導電被膜(3)は通常、窓ガラス(1.1)全体に蒸着される。領域(18)の除去は、たとえばレーザ切断、プラズマエッチング、または機械的方法によって、第二処理ステップで行われる。あるいは、マスキング法が使用されることも可能である。
【0060】
作り出された自由空間は通常、蒸気拡散障壁(7)として、たとえばアクリレート系接着剤などのプラスチック材料で充填される。縁間隙の密封は、腐食に対して敏感な導電被膜(3)を、大気中の酸素および水分から保護する。
【0061】
図5は、ガラス複合材の中の箔導体(2)の経路の斜視図である。この例示的実施形態において、箔導体(2)は、2つの窓ガラス(1.1)および(1.2)の間で角をなして広がり、たとえば半田付けによって電気的加熱可能被膜(3)に接続されている。箔導体(2)のこのような形状は、被膜(3)と箔導体(2)との間の大きい接触面、ならびに被膜(3)内の最適化された電位および熱分布を、保証する。
【0062】
図6は、電気的機能層(3)および引き出された箔導体(2)を備える積層窓ガラス(1)を通る断面図である。窓ガラス(1.1)および(1.2)はこの場合、アンダーカットまたはオフセットを備えずに実現されている。箔導体(2)は、窓ガラス(1.1)および(1.2)の縁(16.1)および(16.2)を長さUだけ超えて突起している。突起領域Uにおいて、箔導体(2)は、特に輸送および組み立て中の機械的損傷に弱い。
【符号の説明】
【0063】
(1) 積層窓ガラス
(1.1)、(1.2) 窓ガラス
(2) 箔導体
(2.1) (2)の導電層
(3) 電気的機能層、加熱被膜
(4.1)、(4.2) 電気的絶縁箔
(5.1)、(5.2)、(5.3) 接着層
(6) 接続箇所
(7) 蒸気拡散障壁
(8) 熱可塑性中間層
(9) (2.1)と(3)との間の電線接続
(10) (4.1)内の間隙
(11) 筐体
(12) 接着剤、封止
(13) バネ接触要素、供給線
(14) (2.1)と(13)との間の電線接続
(15) (1.1)の外側
(16.1) (1.1)の側縁
(16.2) (1.2)の側縁
(17) アンダーカット、オフセット
(18) 無被膜領域
I−I 切断線
R アンダーカット
U 張り出し