(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる複数本の周方向主溝が設けられることにより、前記トレッド部に複数の陸部が区分されるとともに、前記各陸部に、複数本の横溝が設けられることにより複数のブロック要素が区分された重荷重用空気入りタイヤであって、
前記各陸部は、一つのブロック要素と、これに隣り合う一つの横溝とからなるピッチを40〜50個含み、
前記ピッチは、タイヤ周方向に沿った最大長さの85%〜95%の範囲が前記ブロック要素であり、
前記周方向主溝は、タイヤ赤道の近傍をのびる少なくとも1本のクラウン主溝と、最もトレッド端側をのびる一対のショルダー主溝と、前記クラウン主溝と前記ショルダー主溝との間をのびるミドル主溝とを含み、
前記ミドル主溝は、前記クラウン主溝及び前記ショルダー主溝のジグザグ振幅より大きいジグザグ振幅を有し、
前記横溝は、前記ミドル主溝のジグザグのタイヤ軸方向内側に突出する内側頂部からタイヤ軸方向内側にのびる複数本の内側ミドル横溝と、前記ミドル主溝のジグザグのタイヤ軸方向外側に突出する外側頂部からタイヤ軸方向外側にのびる複数本の外側ミドル横溝とを含み、
前記ミドル主溝の溝底から前記内側ミドル横溝の溝底にのびる第1溝底サイプと、前記ミドル主溝の溝底から前記外側ミドル横溝の溝底にのびる第2溝底サイプとが設けられ、
前記第1溝底サイプと前記第2溝底サイプとは、互いに連通することなく、タイヤ周方向に交互に配されていることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
隣り合う陸部において、一方の陸部の横溝は、他方の陸部の横溝に対し、タイヤ周方向に略半ピッチ位置ずれしている請求項1乃至4のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなタイヤは、タイヤ周方向に多くの横溝を含む場合、トレッド部の周方向剛性が低下する。このため、接地時のトレッド部の大きな変形により、タイヤゴム材のエネルギーロスが増加し、燃費性能が悪化するおそれがあった。
【0005】
燃費性能を改善するために、横溝の本数を減らし、トレッド部の周方向剛性を高めることが考えられる。しかしながら、このようなタイヤは、大きな接地圧が作用するブロック要素に、ゴム欠け等のチッピングが生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑みなされたもので、燃費性能及び耐チッピング性能を向上しうる重荷重用空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる複数本の周方向主溝が設けられることにより、前記トレッド部に複数の陸部が区分されるとともに、前記各陸部に、複数本の横溝が設けられることにより複数のブロック要素が区分された重荷重用空気入りタイヤであって、前記各陸部は、一つのブロック要素と、これに隣り合う一つの横溝とからなるピッチを40〜50個含み、前記ピッチは、タイヤ周方向に沿った最大長さの85%〜95%の範囲が前記ブロック要素であり、前記周方向主溝は、タイヤ赤道の近傍をのびる少なくとも1本のクラウン主溝と、最もトレッド端側をのびる一対のショルダー主溝と、前記クラウン主溝と前記ショルダー主溝との間をのびるミドル主溝とを含み、前記ミドル主溝は、前記クラウン主溝及び前記ショルダー主溝のジグザグ振幅より大きいジグザグ振幅を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤでは、前記横溝は、前記ミドル主溝のジグザグのタイヤ軸方向内側に突出する内側頂部からタイヤ軸方向内側にのびる複数本の内側ミドル横溝と、前記ミドル主溝のジグザグのタイヤ軸方向外側に突出する外側頂部からタイヤ軸方向外側にのびる複数本の外側ミドル横溝とを含み、前記ミドル主溝の溝底から前記内側ミドル横溝の溝底にのびる第1溝底サイプと、前記ミドル主溝の溝底から前記外側ミドル横溝の溝底にのびる第2溝底サイプとが設けられ、前記第1溝底サイプと前記第2溝底サイプとは、互いに連通することなく、タイヤ周方向に交互に配されているのが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤでは、前記第1溝底サイプは、前記内側ミドル横溝と前記ミドル主溝とが鋭角で交差する鋭角交差部をのびており、前記第2溝底サイプは、前記外側ミドル横溝と前記ミドル主溝とが鈍角で交差する鈍角交差部をのびているのが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤでは、前記周方向主溝は、前記タイヤ赤道の両側をのびる一対のクラウン主溝を含み、前記横溝は、前記クラウン主溝のジグザグのタイヤ軸方向内側に突出する内側頂部を継ぐ複数本のクラウン横溝を含み、前記クラウン横溝及び前記内側ミドル横溝は、タイヤ周方向に傾斜し、かつ、互いに傾斜の向きが異なるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤでは、隣り合う陸部において、一方の陸部の横溝は、他方の陸部の横溝に対し、タイヤ周方向に略半ピッチ位置ずれしているのが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤでは、前記ミドル主溝及び前記横溝は、前記クラウン主溝及び前記ショルダー主溝より溝深さが小さいのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、各陸部が、一つのブロック要素と、これに隣り合う一つの横溝とからなるピッチを40〜50個含んでいる。一般的な重荷重用タイヤのピッチは約60個程度である。従って、本実施形態のタイヤは、一般的な重荷重用タイヤに比して、少ない数のピッチを有している。このようなタイヤは、各陸部の周方向剛性が高く、燃費性能に優れる。また、ピッチは、タイヤ周方向に沿った最大長さの85%〜95%の範囲がブロック要素である。このようなタイヤでは、各ブロック要素のタイヤ周方向長さが十分に大きく、トレッド部の周方向剛性が高められる。このため、接地時のトレッド部の変形を小さく抑制し、タイヤゴム材のエネルギーロスを小さくすることにより、燃費性能をより一層向上しうる。
【0014】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤは、ミドル主溝が、クラウン主溝及びショルダー主溝のジグザグ振幅より大きいジグザグ振幅である。一般に、ミドル主溝の両側の陸部には、大きな接地圧が作用し、チッピングが生じ易い。しかし、このミドル主溝のジグザグ振幅を相対的に大きくすることにより、陸部の変形を促進し、応力を緩和することで、耐チッピング性能を向上しうる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載される場合がある。)のトレッド部2の展開図が示されている。
【0017】
図1に示されるように、トレッド部2には、複数本の周方向主溝3が設けられている。本実施形態の周方向主溝3は、それぞれ、ジグザグ状でタイヤ周方向に連続してのびている。
【0018】
周方向主溝3は、少なくとも1本のクラウン主溝3C、一対のミドル主溝3M及び一対のショルダー主溝3Sを含んでいる。本実施形態のクラウン主溝3Cは、タイヤ赤道Cの両側に各1本設けられている。ショルダー主溝3Sは、最もトレッド端Te側をのびている。ミドル主溝3Mは、クラウン主溝3Cとショルダー主溝3Sとの間をのびている。これにより、複数の陸部4が区分されている。本実施形態の陸部4は、クラウン主溝3C、3C間のクラウン陸部4C、クラウン主溝3Cとミドル主溝3Mとの間の内側ミドル陸部4Mi、ミドル主溝3Mとショルダー主溝3Sとの間の外側ミドル陸部4Mo、及び、ショルダー主溝3Sとトレッド端Teとの間のショルダー陸部4Sを含んでいる。
【0019】
前記「トレッド端」は、正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの接地面の最もタイヤ軸方向外側の位置である。トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向距離が、トレッド幅TWである。
【0020】
前記「正規状態」とは、タイヤが、正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法は、正規状態での値である。
【0021】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば"標準リム"、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、例えば、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、例えば、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0024】
図2には、
図1のA−A断面の部分拡大図が示されている。
図2に示されるように、クラウン主溝3C及びショルダー主溝3Sの溝幅CW2及びSW2は、トレッド部2の剛性及び排水性を確保するため、例えば、トレッド幅TWの2%〜4%の範囲であるのが望ましい。同様の観点から、ミドル主溝3Mの溝幅MW2は、例えば、トレッド幅TWの1%〜3%の範囲であるのが望ましい。
【0025】
クラウン主溝3C及びショルダー主溝3Sの溝深さCD1及びSD1は、溝幅CW2及びSW2と同様の観点から、好ましくは10.0mm以上、より好ましくは12.0mm以上であり、好ましくは22.0mm以下、より好ましくは20.0mm以下である。
【0026】
各陸部4には、複数本の横溝5が設けられている。本実施形態の横溝5は、クラウン横溝5C、内側ミドル横溝5Mi、外側ミドル横溝5Mo及びショルダー横溝5Sを含んでいる。
【0027】
図3に示されるように、クラウン横溝5Cは、クラウン陸部4Cに設けられている。本実施形態のクラウン横溝5Cは、一対のクラウン主溝3C、3Cのジグザグの内側頂部3Ci、3Ciの間を継ぐようにのびている。これにより、クラウン陸部4Cは、複数個のクラウンブロック要素6Cに区分されている。
【0028】
クラウン横溝5Cは、タイヤ周方向に対し、例えば、55〜75度の角度で傾斜しているのが望ましい。このようなクラウン横溝5Cは、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に対してエッジ効果を発揮するとともに、路面との間の水膜を、その傾斜に沿ってタイヤ軸方向外側に円滑に案内でき、トラクション性能及びウエット性能の向上に役立つ。
【0029】
図5には、
図3のB−B断面図が示されている。
図5に示されるように、クラウン横溝5Cの長手方向と直角な断面において、クラウン横溝5Cの溝深さCD2は、例えば、クラウン主溝3Cの溝深さCD1の50%〜60%の範囲であるのが望ましい。このようなクラウン横溝5Cは、クラウン陸部4Cの周方向剛性を高め、タイヤゴム部材のエネルギーロスを減少させ、燃費性能をより一層向上しうる。
【0030】
本実施形態のクラウン横溝5Cには、クラウン横溝5Cの溝中心に沿ってのびるクラウン溝底サイプ7Cが設けられている。クラウン溝底サイプ7Cは、クラウン陸部4Cの周方向剛性が過度に高められることを抑制しうる。このため、クラウン溝底サイプ7Cは、クラウン陸部4Cの変形を促進させて、応力を緩和することで、耐チッピング性能をより一層向上しうる。
【0031】
クラウン溝底サイプ7Cの深さCD3は、例えば、クラウン主溝3Cの溝深さCD1の40%〜50%の範囲であるのが望ましい。深さCD3が40%未満の場合、耐チッピング性能の向上効果を発揮できないおそれがある。逆に、深さCD3が50%より大きい場合、燃費性能を低下させるおそれがある。
【0032】
図4に示されるように、ショルダー横溝5Sは、ショルダー陸部4Sに設けられている。本実施形態のショルダー横溝5Sは、ショルダー主溝3Sからトレッド端Teまでのびている。これにより、ショルダー陸部4Sは、複数個のショルダーブロック要素6Sに区分されている。
【0033】
好ましくは、ショルダー横溝5Sは、ショルダー主溝3Sのジグザグの外側頂部3Soとトレッド端Teとの間を継ぐようにのびている。ショルダー横溝5Sは、例えば、ほぼタイヤ軸方向に沿ってのびているのが望ましい。
【0034】
図6には、
図4のD−D断面図が示されている。
図4又は
図6に示されるように、本実施形態のショルダー横溝5Sは、例えば、溝深さSD2が小さいタイヤ軸方向内側の浅底部9iと、溝深さSD3が大きいタイヤ軸方向外側の溝底部9oとを含んでいる。
【0035】
浅底部9iの深さSD2は、ショルダー横溝5Sの長手方向と直角な断面において、例えば、クラウン主溝3Cの溝深さCD1の15%〜70%の範囲であるのが望ましい。溝底部9oの深さSD3は、例えば、クラウン主溝3Cの溝深さCD1と同程度であるのが望ましい。このようなショルダー横溝5Sは、浅底部9iにより、ショルダー陸部4Sの周方向剛性を高め、燃費性能の向上に役立つ。また、ウエット路面の走行時、例えば、ショルダー主溝3Sから流入する水を浅底部9iで加速させるとともに、溝底部9oを介して加速させた水をタイヤ軸方向外側へと勢いよく排水でき、ウエット性能を向上しうる。
【0036】
本実施形態のショルダー横溝5Sは、例えば、溝底に溝底サイプを有していない。このため、ショルダー陸部4Sの周方向剛性をより一層高いレベルに維持でき、燃費性能に加え、操縦安定性能をも向上しうる。
【0037】
図3に示されるように、内側ミドル横溝5Miは、内側ミドル陸部4Miに設けられている。本実施形態の内側ミドル横溝5Miは、ミドル主溝3Mの内側頂部3Miからクラウン主溝3Cの外側頂部3Coに向かってのび、クラウン主溝3Cに連通することなく、内側ミドル陸部4Mi内で終端している。これにより、内側ミドル陸部4Miは、複数個の内側ミドルブロック要素6Miに区分される。各内側ミドルブロック要素6Miのクラウン主溝3C側は、タイヤ周方向につながっている。このような実施形態では、接地圧が高い内側ミドル陸部4Miにおいて、陸部の周方向剛性が高められる点で好ましい。
【0038】
本実施形態の内側ミドル横溝5Miは、タイヤ周方向に対し、例えば、55〜75度の角度で傾斜している。内側ミドル横溝5Miは、例えば、クラウン横溝5Cと互いに傾斜方向が異なるのが望ましい。このような内側ミドル横溝5Miは、エッジ効果を発揮する方向がクラウン横溝5Cと異なる。このため、本実施形態のタイヤでは、例えば、右旋回時及び左旋回時において、クラウン横溝5C及び内側ミドル横溝5Miにより、エッジ効果を効果的に発揮しうる。
【0039】
図7には、
図3のC−C断面図が示されている。
図3又は
図7に示されるように、内側ミドル横溝5Miの長手方向と直角な断面において、内側ミドル横溝5Miの溝深さMD2は、クラウン横溝5Cの溝深さCD2と同程度であるのが望ましい。このような内側ミドル横溝5Miは、内側ミドル陸部4Miの周方向剛性を高め、タイヤゴム部材のエネルギーロスを減少させ、燃費性能をより一層向上しうる。
【0040】
外側ミドル横溝5Moは、外側ミドル陸部4Moに設けられている。本実施形態の外側ミドル横溝5Moは、外側ミドル主溝3Mからタイヤ軸方向外側にのびている。好ましくは、外側ミドル横溝5Moは、ミドル主溝3Mのジグザグの外側頂部3Moと、ショルダー
主溝3Sのジグザグの内側頂部3Siとの間を継ぐようにのびている。これにより、外側ミドル陸部4Moは、複数個の外側ミドルブロック要素6Moに区分されている。外側ミドル横溝5Moは、タイヤ周方向に対し、例えば、55〜75度の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0041】
本実施形態の外側ミドル横溝5Moの溝深さ(図示省略)は、例えば、内側ミドル横溝5Miの溝深さMD2と同程度である。このような外側ミドル横溝5Moは、外側ミドル陸部4Moの周方向剛性を高め、タイヤゴム部材のエネルギーロスを減少させ、燃費性能をより一層向上しうる。
【0042】
以上のように構成されたトレッド部2は、ランド比が、燃費性能とウエット性能とをバランスよく発揮させるために、70%〜80%の範囲であるのが望ましい。「ランド比」は、トレッド部2に設けられた全ての溝を埋めたと仮定した状態で測定されるトレッド部2の全表面積と、実際に路面に接地する陸部4の全表面積との比である。
【0043】
さらに好ましい態様として、本実施形態では、隣り合う陸部4において、一方の陸部4の横溝5が、他方の陸部4の横溝5に対し、タイヤ周方向に略半ピッチ位置ずれしている。例えば、内側ミドル横溝5Miが、クラウン横溝5Cに対し、タイヤ周方向に略半ピッチ位置ずれしているのが望ましい。また、外側ミドル横溝5Moが、内側ミドル横溝5Miに対し、タイヤ周方向に略半ピッチ位置ずれしている。さらに、ショルダー横溝5Sが、外側ミドル横溝5Moに対し、タイヤ周方向に略半ピッチ位置ずれしている。このようなトレッド部2は、陸部4の軸方向幅が最大となる位置と、陸部4の軸方向幅が最小となる位置とが、タイヤ軸方向に交互に配される。このため、タイヤ軸方向に隣り合う陸部4、4が、互いにバランス良く連結され、陸部4の変形が小さく抑制され、燃費性能をより一層向上しうる。
【0044】
ここで「ピッチ」とは、一つのブロック要素6と、これに隣り合う一つの横溝5とからなる模様単位である。「略半ピッチ」とは、少なくとも、1ピッチPの40〜60%程度の長さを包含する。
【0045】
さらに好ましい態様として、本実施形態の各陸部4は、例えば、40〜50個のピッチPを含んでいる。一般的な重荷重用タイヤのピッチPは約60個程度である。従って、本実施形態のタイヤは、一般的な重荷重用タイヤに比して、少ない数のピッチPを有している。このようなタイヤは、各陸部4の周方向剛性が高く、燃費性能に優れる。
【0046】
さらに好ましい態様として、各ピッチPは、タイヤ周方向に沿った最大長さの、例えば、85%〜95%の範囲がブロック要素6で占められているのが望ましい。ブロック要素6が85%未満の場合、陸部4の剛性が小さくなり、燃費性能が低下するおそれがある。逆に、ブロック要素6が95%より大きい場合、排水性が悪化し、ウエット性能が低下するおそれがある。
【0047】
図1、
図3又は
図4に示されるように、ミドル主溝3Mは、クラウン主溝3Cのジグザグ振幅CW1及びショルダー主溝3Sのジグザグ振幅SW1よりも大きいジグザグ振幅MW1を有している。一般に、ミドル主溝3Mの両側の内側ミドル陸部4Mi及び外側ミドル陸部4Moには、直進時及び旋回時の双方において、大きな接地圧が作用し、チッピングが生じ易い。本発明では、ミドル主溝3Mのジグザグ振幅MW1を相対的に大きくすることにより、内側ミドル陸部4Mi及び外側ミドル陸部4Moの変形を促進し、応力を緩和することで、高い耐チッピング性能を提供しうる。
【0048】
クラウン主溝3Cのジグザグ振幅CW1は、排水性及びトラクション性能の観点から、例えば、トレッド幅TWの1%〜3%の範囲で定められるのが望ましい。同様の観点から、ショルダー主溝3Sのジグザグ振幅SW1は、例えば、トレッド幅TWの1%〜3%の範囲であるのが望ましい。
【0049】
ミドル主溝3Mのジグザグ振幅MW1は、例えば、トレッド幅TWの3%〜5%の範囲であるのが望ましい。ミドル主溝3Mのジグザグ振幅MW1がトレッド幅TWの3%未満の場合、耐チッピング性能の向上効果が十分に発揮できないおそれがある。逆に、ミドル主溝3Mのジグザグ振幅MW1がトレッド幅TWの5%より大きい場合、ブロック要素6の軸方向剛性が過度に低下するおそれがある。
【0050】
図2に示されるように、ミドル主溝3Mの溝深さMD1は、クラウン主溝3Cの溝深さCD1及びショルダー主溝3Sの溝深さSD1より小さいのが望ましい。このようなミドル主溝3Mは、内側ミドル陸部4Miと外側ミドル陸部4Moとの連結を高め、両陸部4Mi、4Moを一体的に変形させ、耐チッピング性能をより一層向上させるのに役立つ。溝深さMD1は、好ましくは4.0mm以上、より好ましくは6.0mm以上であり、好ましくは13.0mm以下、より好ましくは11.0mm以下である。
【0051】
さらに耐チッピング性能を改善するために、
図1又は
図3に示されるように、ミドル主溝3M、内側ミドル横溝5Mi及び外側ミドル横溝5Moの溝底に、ミドル溝底サイプ7Mが設けられるのが望ましい。
【0052】
ミドル溝底サイプ7Mは、例えば、第1溝底サイプ7Miと、第2溝底サイプ7Moとを含んでいる。
【0053】
第1溝底サイプ7Miは、例えば、ミドル主溝3Mから内側ミドル横溝
5Miにのびている。より具体的な態様では、第1溝底サイプ7Miは、内側ミドル横溝5Miとミドル主溝3Mとが鋭角で交差する内側頂部3Miで屈曲するようにのびており、鋭角交差部8iを有している。
【0054】
第2溝底サイプ7Moは、ミドル主溝3Mから外側ミドル横溝5Moにのびている。より具体的な態様では、第2溝底サイプ7Moは、例えば、外側ミドル横溝5Moとミドル主溝3Mとが鈍角で交差する外側頂部3Moで屈曲するように、鈍角交差部8oを有している。
【0055】
第1溝底サイプ7Mi及び第2溝底サイプ7Moは、内側ミドル陸部4Mi及び外側ミドル陸部4Moの剛性が過度に高められることを抑制する。このため、ミドルブロック要素6Mi、6Moの相対的な変形を促進させ、応力を緩和することで、耐チッピング性能がさらに向上する。また、内側ミドル陸部4Miは、外側ミドル陸部4Moに比して大きい接地圧が作用する。本実施形態の第1溝底サイプ7Miは、鋭角交差部8iにより、内側ミドル陸部4Miの軸方向剛性を相対的に低下させる。このため、内側ミドルブロック要素6Miの変形をより促進でき、応力を緩和することで、耐チッピング性能をより一層向上しうる。
【0056】
第1溝底サイプ7Miと第2溝底サイプ7Moとは、例えば、タイヤ周方向に交互に配されているのが望ましい。第1溝底サイプ7Miと第2溝底サイプ7Moとは、互いに連通していないので、内側ミドル陸部4Mi及び外側ミドル陸部4Moの周方向剛性が過度に低下することが抑制される。これは、燃費性能の維持又は改善に役立つ。
【0057】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0058】
図1に示される基本パターンを有し、かつ、表1の仕様に基いたタイヤ(サイズ:275/80R22.5)が試作され、それらの性能がテストされた。なお、各試供タイヤのクラウン主溝は、溝深さが20.0mmである。
テスト方法は次の通りである。
【0059】
<燃費性能(転がり抵抗)>
各試供タイヤを、転がり抵抗試験機のドラム上で下記の条件により走行させ、転がり抵抗が測定された。結果は、転がり抵抗の逆数であり、実施例1の値を100とする指数で示されている。数値が大きいほど燃費性能に優れる。
リム:22.5×7.50
内圧:900kPa
荷重:33.83kN
速度:80km/h
【0060】
<耐チッピング性能>
上記試供タイヤが、トラックの後輪の一方に装着され、実施例1のタイヤが、トラックの後輪の他方に装着され、いずれかのタイヤのクラウン主溝の溝深さが1.6mmとなるまで走行させた後、目視よりチッピングが評価された。に
【0061】
<ウエット性能>
摩耗が80%進行した状態の上記試供タイヤが、前側にのみ荷物が積載された半積載状態のトラックの全輪に装着され、5mmの水膜を有するウエット路面において、2速−1500rpmでクラッチを繋いだ瞬間から、10mを走行するのに要した時間が測定された。結果は、走行時間の逆数であり、実施例1の値を100とする指数である。数値が大きい程良好である。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示されるように、各実施例のタイヤは、燃費性能及び耐チッピング性能が向上されることが確認できた。