特許第5957493号(P5957493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5957493Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの共沸および共沸混合物様組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957493
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの共沸および共沸混合物様組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20160714BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20160714BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20160714BHJP
   A62D 1/08 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   C09K3/00 111B
   C09K5/04 F
   C09K5/04 C
   C09K3/30 J
   C09K3/30 T
   A62D1/08
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-158872(P2014-158872)
(22)【出願日】2014年8月4日
(62)【分割の表示】特願2011-514830(P2011-514830)の分割
【原出願日】2009年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-224267(P2014-224267A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2014年9月3日
(31)【優先権主張番号】61/074,178
(32)【優先日】2008年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/074,179
(32)【優先日】2008年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/074,181
(32)【優先日】2008年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク エル.ロビン
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−502181(JP,A)
【文献】 特表2007−535611(JP,A)
【文献】 特表2009−528432(JP,A)
【文献】 特表2009−513310(JP,A)
【文献】 特表2009−513348(JP,A)
【文献】 特表2010−526171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A62D 1/08
C09K 3/30
C09K 5/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、
(b)2−クロロプロパンと、からなる組成物であって、
モル比(a)/(b)が、33.3/66.7〜98.7/1.3の範囲にあり、
前記2−クロロプロパンが前記Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと共沸組み合わせを形成し、
前記共沸組み合わせとは、前記組成物が、1.4kPa(0.2psia)〜2358kPa(342psia)の範囲内の所与の圧力下で液体形態にあるとき、−50℃〜160℃の範囲内の一定温度で沸騰し、沸騰中の全体液体組成と同一である蒸気組成を提供することをいう、組成物。
【請求項2】
(a)Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、
(b)2−クロロプロパンと、からなる組成物であって、
モル比(a)/(b)が、1/99〜99/1の範囲にあり、
前記2−クロロプロパンが前記Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと共沸混合物様組み合わせを形成し、
前記共沸混合物様組み合わせとは、前記組成物の、20℃〜160℃の範囲内の所与の温度での露点圧力と沸点圧力の差が、沸点圧力を基準として5パーセント以下であるような露点圧力と沸点圧力を示すことをいう、組成物。
【請求項3】
共沸もしくは共沸混合物様組成物を発泡剤として使用する工程を含む熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造方法であって、
前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、請求項1または2に記載の組成物である、方法。
【請求項4】
共沸もしくは共沸混合物様組成物を凝縮させる工程と、その後冷却されるべき本体の近くで前記共沸もしくは共沸混合物様組成物を蒸発させる工程とを含む冷却を行うための方法であって、
前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、請求項1または2に記載の組成物である、方法。
【請求項5】
共沸もしくは共沸混合物様組成物を溶媒として使用する工程を含む方法であって、
前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、請求項1または2に記載の組成物である、方法。
【請求項6】
共沸もしくは共沸混合物様組成物を噴射剤として使用する工程を含むエアゾール製品の製造方法であって、
前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、請求項1または2に記載の組成物である、方法。
【請求項7】
共沸もしくは共沸混合物様組成物を伝熱媒体として使用する工程を含む方法であって、
前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、請求項1または2に記載の組成物である、方法。
【請求項8】
共沸もしくは共沸混合物様組成物を消火剤または鎮火剤として使用する工程を含む消火または鎮火方法であって、
前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、請求項1または2に記載の組成物である、方法。
【請求項9】
共沸もしくは共沸混合物様組成物を誘電体として使用する工程を含む方法であって、
前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、請求項1または2に記載の組成物である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年6月20日出願の米国仮特許出願第61/074178号明細書、米国仮特許出願第61/074179号明細書および米国仮特許出願第61/074181号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの共沸もしくは共沸混合物様組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの産業は、オゾン破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替品を見いだすために過去数十年間取り組んできた。CFCおよびHCFCは、エアゾール噴射剤、冷媒、クリーニング剤、熱可塑性および熱硬化性発泡体用の膨張剤、熱媒、ガス状誘電体、消火剤および鎮火剤、動力サイクル作動流体、重合媒体、微粒子除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、および置換乾燥剤としてのそれらの使用をはじめとする、多種多様な用途に用いられてきた。これらの用途が広い化合物の代替品の探究で、多くの産業がハイドロフルオロカーボン(HFC)の使用に乗り出してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HFCは、成層圏オゾンの破壊に関与しないが、それらが「温室効果」に関与するために、すなわち、それらが地球温暖化に関与するために懸念されている。それらが地球温暖化に関与するため、HFCは監視下に置かれ、それらの広範囲に及ぶ使用もまた将来制限される可能性がある。このように、成層圏オゾンの破壊に関与せず、かつ、低い地球温暖化係数(GWP)もまた有する組成物が必要とされている。1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(CF3CH=CHCF3、FC−1336mzz)などの、特定のハイドロフルオロオレフィンは両方の目標を達成すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願には、3つの異なるタイプの共沸もしくは共沸混合物様混合物が含まれる。
【0006】
本開示は、(a)Z−FC−1336mzzと(b)ジエチルエーテル(CH3CH2OCH2CH3)とから本質的になる組成物であって、ジエチルエーテルがZ−FC−1336mzzと共沸もしくは共沸混合物様混合物を形成するのに有効な量で存在する組成物を提供する。
【0007】
本開示はまた、(a)Z−FC−1336mzzと(b)2−クロロプロパン(CH3CHClCH3)とから本質的になる組成物であって、2−クロロプロパンがZ−FC−1336mzzと共沸もしくは共沸混合物様混合物を形成するのに有効な量で存在する組成物を提供する。
【0008】
本開示はまた、(a)Z−FC−1336mzzと(b)パーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)(CF3CF2C(O)CF(CF32)とから本質的になる組成物であって、パーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)がZ−FC−1336mzzと共沸もしくは共沸混合物様混合物を形成するのに有効な量で存在する組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】Z−FC−1336mzzとジエチルエーテルとから本質的になる共沸混合物および共沸混合物様組成物の約12.0psiaの圧力でのグラフ図である。
図2】Z−FC−1336mzzと2−クロロプロパンとから本質的になる共沸混合物および共沸混合物様組成物の約12.0psiaの圧力でのグラフ図である。
図3】Z−FC−1336mzzとパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)とから本質的になる共沸混合物および共沸混合物様組成物の約50.0℃の温度でのグラフ図である。
【0010】
多くの用途で、純粋な単一成分または共沸もしくは共沸混合物様混合物の使用が望ましい。例えば、発泡剤組成物(発泡体膨張剤または発泡体膨張組成物としても知られる)が純粋な単一成分または共沸もしくは共沸混合物様混合物でないとき、組成が発泡体形成プロセスでのその適用の間に変わる可能性がある。かかる組成の変化は、加工にひどい悪影響を及ぼすかまたはその適用で不十分な性能をもたらし得る。また、冷凍用途では、冷媒は、シャフトシール、ホース連結部、ハンダ付け接合部および破壊ラインでの漏洩によって運転中にしばしば失われる。加えて、冷媒は、冷凍設備の保全手順中に大気に放出される場合がある。冷媒が純粋な単一成分または共沸もしくは共沸混合物様組成物でない場合、冷媒組成は、冷凍設備から大気に漏洩するかまたは排出するときに変化する可能性がある。冷媒組成の変化により、冷媒が引火性になるかまたは不十分な冷凍性能を有するようになる。従って、これらのおよび他の用途において共沸もしくは共沸混合物様混合物、例えば、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−CF3CH=CHCF3、Z−FC−1336mzz)を含有する共沸もしくは共沸混合物様混合物を使用することが必要とされている。
【0011】
以下に記載される実施形態の詳細を取り上げる前に、幾つかの用語が定義されるかまたは明確にされる。
【0012】
FC−1336mzzは、2つの立体配置異性体、EまたはZの1つとして存在してもよい。FC−1336mzzは、本明細書で用いるところでは、異性体、Z−FC−1336mzzまたはE−FC−1336mzz、ならびにかかる異性体の任意の組み合わせまたは混合物を意味する。
【0013】
本明細書で用いるところでは、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含まれる(includes)」、「をはじめとする(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図される。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、もしくは装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確にリストされないか、またはかかるプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有である他の要素を含んでもよい。さらに、相反する記載がない限り、「または」は、包含的な「または」を意味し、そして排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、次のいずれか1つで満たされる:Aは真であり(または存在し)かつBは偽である(存在しない)、Aは偽であり(または存在せず)かつBは真である(または存在する)、およびAおよびBの両方とも真である(または存在する)。
【0014】
同様に、単数形(「a」または「an」)の使用は、本明細書に記載される要素および成分を記載するために採用される。これは、便宜上および本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われるにすぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを包含すると読まれるべきであり、そして単数はまた、それが複数ではないことを意味することが明確でない限り複数を包含する。
【0015】
特に明確にされない限り、本明細書に用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似のまたは等価の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に用いることができるが、好適な方法および材料は以下に記載される。本明細書に言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、特に節が言及されない限り、全体が参照により援用される。矛盾が生じた場合には、定義をはじめとして、本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は例示的であるにすぎず、限定的であることを意図されない。
【0016】
Z−FC−1336mzzは公知の化合物であり、その製造方法は、例えば、全体を参照により本明細書によって援用される、米国特許出願公開第2008/0269532号明細書に開示されている。
【0017】
本出願には、Z−FC−1336mzzを含む共沸もしくは共沸混合物様組成物が含まれる。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態では、本組成物は、ジエチルエーテルがZ−FC−1336mzzと共沸もしくは共沸混合物様混合物を形成するのに有効な量で存在する、(a)Z−FC−1336mzzと(b)ジエチルエーテルとから本質的になる。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態では、本組成物は、2−クロロプロパンがZ−FC−1336mzzと共沸もしくは共沸混合物様混合物を形成するのに有効な量で存在する、(a)Z−FC−1336mzzと(b)2−クロロプロパンとから本質的になる。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態では、本組成物は、パーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)がZ−FC−1336mzzと共沸もしくは共沸混合物様混合物を形成するのに有効な量で存在する、(a)Z−FC−1336mzzと(b)パーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)とから本質的になる。
【0021】
有効な量とは、Z−FC−1336mzzと組み合わせられたときに、共沸もしくは共沸混合物様混合物の形成をもたらす量を意味する。この定義には、共沸もしくは共沸混合物様組成物が異なる圧力で、しかし可能性がある異なる沸点で存在し続ける限り、その量が組成物に加えられる圧力に依存して変わってもよい、各成分の量が含まれる。それ故、有効な量には、重量またはモル百分率で表され得る、本明細書に記載されるもの以外の温度または圧力で共沸もしくは共沸混合物様組成物を形成する本発明の組成物の各成分の量が含まれる。
【0022】
当該技術分野で認められているように、共沸組成物は、2つ以上の異なる成分の混合剤であり、それは、所与の圧力下で液体形態にあるとき、実質的に一定温度で沸騰し、その温度は、個々の成分の沸騰温度より高いかまたは低くてもよく、かつ、それは沸騰中の全体液体組成と本質的に同一である蒸気組成を提供するであろう(例えば、M.F.Doherty and M.F.Malone、Conceptual Design of Distillation Systems、McGraw−Hill(New York)、2001年、185〜186、351〜359頁を参照されたい)。
【0023】
従って、共沸組成物の本質的な特徴は、所与の圧力で、液体組成物の沸点が固定されていること、かつ、沸騰中の組成物の上方の蒸気の組成が本質的に、沸騰中の全体液体組成物の組成である(すなわち、液体組成物の成分の分留が全く起こらない)ことである。共沸組成物が異なる圧力で沸騰にかけられるときに、共沸組成物の各成分の沸点および重量百分率の両方が変わる場合があることもまた当該技術分野で認められている。従って、共沸組成物は、成分間に存在する特有の関係の観点からまたは成分の組成範囲の観点から、または指定圧力での固定沸点によって特徴付けられる組成物の各成分の正確な重量百分率
の観点から定義されてもよい。
【0024】
本発明の目的のためには、共沸混合物様組成物は、共沸組成物のように挙動する(すなわち、定沸点特性または沸騰もしくは蒸発時に分留しない傾向を有する)組成物を意味する。それ故に、沸騰もしくは蒸発中に、気液組成は、それらが仮に変化する場合でも、最小限の程度または無視できる程度しか変化しない。これは、沸騰もしくは蒸発中に、気液組成がかなりの程度変化する非共沸混合物様組成物と対比されるべきである。
【0025】
さらに、共沸混合物様組成物は、実質的に圧力差なしの露点圧力および沸点圧力を示す。すなわち、所与の温度での露点圧力と沸点圧力との差は小さな値であろう。本発明では、(沸点圧力を基準として)5パーセント以下の露点圧力と沸点圧力との差の組成物は共沸混合物様であると考えられる。
【0026】
あるシステムの相対揮発度が1.0に近づくときに、そのシステムが共沸もしくは共沸混合物様組成物を形成すると定義されることはこの分野で認められている。相対揮発度は、成分1の揮発度対成分2の揮発度の比である。蒸気中のある成分のモル分率対液体中のそれの比がその成分の揮発度である。
【0027】
任意の2つの化合物の相対揮発度を測定するために、PTx法として知られる方法を用いることができる。気液平衡(VLE)、それ故に相対揮発度は、等温的にかそれとも等圧的に測定することができる。等温法は、一定温度での既知組成の混合物の全圧の測定を必要とする。この手順では、既知容量のセルにおける全絶対圧力が2つの化合物の様々な組成について一定温度で測定される。等圧法は、一定圧力での既知組成の混合物の温度の測定を必要とする。この手順では、既知容量のセルにおける温度が2つの化合物の様々な組成について一定圧力で測定される。PTx法の使用は、参照により本明細書によって援用される、Harold R.Null著、「Phase Equilibrium in Process Design」、Wiley−Interscience Publisher、1970年、124〜126頁に詳細に記載されている。
【0028】
これらの測定値は、液相非理想を表すための、非ランダム2液体(Non−Random、Two−Liquid)(NRTL)方程式などの、活量係数方程式モデルを用いることによってPTxセルにおける平衡気液組成へ換算することができる。NRTL方程式などの、滑量係数方程式の使用は、Reid、Prausnitz and Poling著、「The Properties of Gases and Liquids」、第4版、McGraw Hill、241〜387頁に、ならびにStanley M.Walas著、「Phase Equilibria in Chemical Engineering」、Butterworth Publishers、1985年、165〜244頁に詳細に記載されている。前述の両参考文献は参照により本明細書によって援用される。いかなる理論または説明にも制約されることなく、PTxセルデータと一緒に、NRTL方程式は本発明のZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン含有組成物の相対揮発度を十分に予測することができ、かつ、蒸留塔などの多段階分離設備におけるこれらの混合物の挙動をそれ故に予測することができると考えられる。
【0029】
Z−FC−1336mzzとジエチルエーテルとは共沸もしくは共沸混合物様組成物を形成することが実験によって見いだされた。
【0030】
この2成分ペアの相対揮発度を測定するために、上記のPTx法が用いられた。様々な2成分組成について、既知容量のPTxセルにおける温度が一定圧力で測定された。これらの測定値は次に、NRTL方程式を用いてセルにおける平衡気液組成に変換された。
【0031】
Z−FC−1336mzz/ジエチルエーテル混合物についてPTxセルにおける測定温度対組成が図1に示され、図1は、12.0psia(83kPa)の圧力で組成の範囲にわたって最低温度(約27.5℃)を有する約66.8モル%のZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと33.2モル%のジエチルエーテルとの混合物で示されるように、Z−FC−1336mzzとジエチルエーテルとから本質的になる共沸および共沸混合物様組成物の形成をグラフで例示する。これらの結果に基づき、Z−FC−1336mzzとジエチルエーテルとは約46.8モルパーセント〜約97.1モルパーセントのZ−FC−1336mzzおよび約2.9モルパーセント〜約53.2モルパーセントのジエチルエーテルの範囲の共沸組成物を形成する(それらは約−50℃〜約160℃の温度でおよび約0.2psia(1.4kPa)〜約342psia(2358kPa)の圧力で沸騰する共沸組成物を形成する)と計算された。例えば、33.0℃および大気圧(14.7psia、101kPa)で、共沸組成物は68.8モル%のZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンおよび31.2モル%のジエチルエーテルである。
【0032】
共沸組成物の幾つかの実施形態を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
さらに、Z−FC−1336mzzとジエチルエーテルとを含有する共沸混合物様組成物もまた形成され得る。かかる共沸混合物様組成物は、共沸組成物の周りに存在する。共沸混合物様組成物の幾つかの実施形態を表2に示す。共沸混合物様組成物の幾つかの追加の実施形態を表3に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
Z−FC−1336mzzと2−クロロプロパンとは共沸もしくは共沸混合物様組成物を形成することが実験によって見いだされた。この2成分ペアの相対揮発度を測定するために、上記のPTx法が用いられた。様々な2成分組成について、既知容量のPTxセルにおける温度が一定圧力で測定された。これらの測定値は次に、NRTL方程式を用いてセルにおける平衡気液組成に変換された。
【0038】
Z−FC−1336mzz/2−クロロプロパン混合物についてPTxセルにおける測定温度対組成が図2に示され、図2は、12.0psiaの圧力で組成の範囲にわたって最低温度(約24.3℃)を有する約50.7モル%のZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと49.3モル%の2−クロロプロパンとの混合物で示される
ように、約12.0psiaでのZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと2−クロロプロパンとの共沸組成物の形成をグラフで例示する。
【0039】
これらの結果に基づき、Z−FC−1336mzzと2−クロロプロパンとは約33.3モルパーセント〜約98.7モルパーセントのZ−FC−1336mzzおよび約1.3モルパーセント〜約66.7モルパーセントの2−クロロプロパンの範囲の共沸組成物を形成する(それらは約−50℃〜約160℃の温度でおよび約0.2psia(1.4kPa)〜約342psia(2358kPa)の圧力で沸騰する共沸組成物を形成する)と計算された。例えば、29.8℃および大気圧(14.7psia、101kPa)で、共沸組成物は51.7モル%のZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンおよび48.3モル%の2−クロロプロパンである。
【0040】
共沸組成物の幾つかの実施形態を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
さらに、Z−FC−1336mzzと2−クロロプロパンとを含有する共沸混合物様組成物もまた形成され得る。かかる共沸混合物様組成物は、共沸組成物の周りに存在する。共沸混合物様組成物の幾つかの実施形態を表5に示す。共沸混合物様組成物の幾つかの追加の実施形態を表6に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
Z−FC−1336mzzとパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)とは共沸もしくは共沸混合物様組成物を形成することが実験によって見いだされた。この2成分ペアの相対揮発度を測定するために、上記のPTx法が用いられた。様々な2成分組成について、既知容量のPTxセルにおける全絶対圧力が一定温度で測定された。これらの測定値は次に、NRTL方程式を用いてセルにおける平衡気液組成に変換された。
【0046】
Z−FC−1336mzz/パーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)混合物についてPTxセルにおける測定蒸気圧対組成が図3に示され、図3は、約50.0℃で組成の範囲にわたって最高圧力(26.7psia)を有する約82.7モル%のZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと17.3モル%のパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)との混合物で示されるように、約50.0℃でのZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンとパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)との共沸混合物および共沸混合物様組成物の形成をグラフで例示する。
【0047】
これらの結果に基づき、Z−FC−1336mzzとパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)とは約68.9モルパーセント〜約87.4モルパーセントのZ−FC−1336mzzおよび約12.6モルパーセント〜約31.1モルパーセントのパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)の範囲の共沸組成物を形成する(それらは約−50℃〜約140℃の温度でおよび約0.2psia(1.4kPa)〜約250psia(1724kPa)の圧力で沸騰する共沸組成物を形成する)と計算された。例えば、32.6℃および大気圧(14.7psia、101kPa)で、共沸組成物は82.6モル%のZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンおよび17.4モル%のパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)である。
【0048】
共沸組成物の幾つかの実施形態を表7に示す。
【0049】
【表7】
【0050】
さらに、Z−FC−1336mzzとパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)とを含有する共沸混合物様組成物もまた形成され得る。かかる共沸混合物様組成物は、共沸組成物の周りに存在する。共沸混合物様組成物の幾つかの実施形態を表8に示す。共沸混合物様組成物の幾つかの追加の実施形態を表9に示す。
【0051】
【表8】
【0052】
【表9】
【0053】
本発明の共沸もしくは共沸混合物様組成物は、所望の量の混合または組み合わせをはじめとする任意の従来の方法によって調製することができる。本発明の一実施形態では、共沸もしくは共沸混合物様組成物は、所望の成分量を秤量し、その後適切な容器でそれらを組み合わせることによって調製することができる。
【0054】
本発明の共沸もしくは共沸混合物様組成物は、エアゾール噴射剤、冷媒、溶媒、クリーニング剤、熱可塑性および熱硬化性発泡体用の発泡剤(発泡体膨張剤)、熱媒、ガス状誘電体、消火剤および鎮火剤、動力サイクル作動流体、重合媒体、微粒子除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、および置換乾燥剤としてのそれらの使用をはじめとする、広範囲の用途に使用することができる。
【0055】
本発明の一実施形態は、熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造方法を提供する。本方法は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を発泡剤として使用する工程を含み、ここで、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物は、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、ジエチルエーテル、2−クロロプロパン、およびパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)からなる群から選択される成分とから本質的になる。
【0056】
本発明の別の実施形態は、冷却を行うための方法を提供する。本方法は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を凝縮させる工程と、その後冷却されるべき本体の近くで前記共沸もしくは共沸混合物様組成物を蒸発させる工程とを含み、ここで、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物は、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、ジエチルエーテル、2−クロロプロパン、およびパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)からなる群から選択される成分とから本質的になる。
【0057】
本発明の別の実施形態は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を溶媒として使用する方法であって、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、ジエチルエーテル、2−クロロプロパン、およびパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)からなる群から選択される成分とから本質的になる方法を提供する。
【0058】
本発明の別の実施形態は、エアゾール製品の製造方法を提供する。本方法は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を噴射剤として使用する工程を含み、ここで、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物は、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、ジエチルエーテル、2−クロロプロパン、およびパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)からなる群から選択される成分とから本質的になる。
【0059】
本発明の別の実施形態は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を熱媒として使用する方法であって、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、ジエチルエーテル、2−クロロプロパン、およびパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)からなる群から選択される成分とから本質的になる方法を提供する。
【0060】
本発明の別の実施形態は、消火または鎮火方法を提供する。本方法は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を消火剤または鎮火剤として使用する工程を含み、ここで、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物は、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、ジエチルエーテル、2−クロロプロパン、およびパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)からなる群から選択される成分とから本質的になる。
【0061】
本発明の別の実施形態は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を誘電体として使用する方法であって、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物が、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、ジエチルエーテル、2−クロロプロパン、およびパーフルオロ(2−メチル−3−ペンタノン)からなる群から選択される成分とから本質的になる方法を提供する。
図1
図2
図3