(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957517
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】結膜弛緩症治療用の点眼薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/047 20060101AFI20160714BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20160714BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20160714BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20160714BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20160714BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
A61K31/047
A61K9/08
A61K47/32
A61K47/36
A61K31/196
A61P27/02
【請求項の数】15
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-508913(P2014-508913)
(86)(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公表番号】特表2014-513118(P2014-513118A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】IL2012000157
(87)【国際公開番号】WO2012150583
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年3月24日
(31)【優先権主張番号】212725
(32)【優先日】2011年5月5日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】513278264
【氏名又は名称】レスデブコ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】ディクステン シャブタイ
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05106615(US,A)
【文献】
特開2004−051593(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/004738(WO,A1)
【文献】
特表2003−513949(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第1488404(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0212420(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0086512(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/044734(WO,A1)
【文献】
特表平10−503471(JP,A)
【文献】
国際公開第2000/001365(WO,A1)
【文献】
Survey of Ophthalmology,1998年,vol.43, No.3,p.225-232
【文献】
SOLOMON ABRAHAM,THE EFFECT OF A NEW TEAR SUBSTITUTE CONTAINING GLYCEROL AND HYALURONATE 以下備考,JOURNAL OF OCULAR PHARMACOLOGY AND THERAPEUTICS,1998年12月,V14 N6,P497-504,ON KERATOCONJUNCTIVITIS SICCA
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/327
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 27/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞼と平行な結膜ひだ(LIPCOF)スケールによって測定される結膜弛緩症の重症度を低減させるための治療用点眼薬であって、グリセロール水溶液を含むことを特徴とする点眼薬。
【請求項2】
前記溶液が、基本的に等張性であることを特徴とする請求項1に記載の点眼薬。
【請求項3】
前記溶液が、pH7を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の点眼薬。
【請求項4】
前記点眼薬は、2mM未満の塩濃度を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の点眼薬。
【請求項5】
少なくとも10000ダルトンの分子量のポリマーをさらに含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の点眼薬。
【請求項6】
前記ポリマーの濃度が、前記溶液を所定の粘性とするように選択されることを特徴とする請求項5に記載の点眼薬。
【請求項7】
前記ポリマーが、アニオン性であることを特徴とする請求項5に記載の点眼薬。
【請求項8】
前記ポリマーが、ヒアルロン酸及びカルボマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の点眼薬。
【請求項9】
薬学的に有効な量の薬理活性物質をさらに含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の点眼薬。
【請求項10】
前記薬理活性物質が、ジクロフェナクであることを特徴とする請求項9に記載の点眼薬。
【請求項11】
安定剤、防腐剤、酸化防止剤、及び中和剤からなる群から選択される少なくとも1つの物質をさらに含んでいることを特徴とする請求項9に記載の点眼薬。
【請求項12】
1日1回から5回の点眼薬の投与により、LIPCOFスケールによって測定される結膜弛緩症の症状の重度を低減させるために非外科的治療に使用されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の点眼薬。
【請求項13】
前記治療が、1日3回の当該点眼薬の投与を含んでいることを特徴とする請求項12に記載の点眼薬。
【請求項14】
前記投与の開始から6ヶ月以内に、結膜弛緩症の症状の重度における統計学的に有意な低減を生起するために該非外科的治療に使用されることを特徴とする請求項13に記載の点眼薬。
【請求項15】
前記投与の開始から1ヶ月以内に、結膜弛緩症の症状の重度における統計学的に有意な低減を生起するために該非外科的治療に使用されることを特徴とする請求項13に記載の点眼薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結膜弛緩症の治療のための非外科的方法に関する。特に、本発明は、結膜弛緩症の治療に有効なグリセロール溶液を含む点眼薬に関する。
【背景技術】
【0002】
特に年輩者及びコンタクトレンズ使用者において、結膜弛緩症(結膜に余分なひだが形成されている疾患)は、比較的よく見られる疾患である。この疾患は、重篤な状態となり得、極端な場合には外科的介入を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
眼の種々の疾患は眼に接触して投与される液体製剤の適用によって治療可能であるが、点眼薬を単独に使用しての結膜弛緩症の治療は認識されていない。
【0004】
従って本発明の目的は、外科的に介入することなしに結膜弛緩症の治療又は症状の緩和に有効な点眼薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、点眼薬は、グリセロールの使用に基づいており、好ましくは、等張性の又はほぼ等張性の溶液である。これらの等張性溶液は、さらに付加的な眼科薬剤を含んでいる。グリセロールは、それ自体が保湿剤であり、水を保持することができる。
【0006】
本発明の好ましい態様によれば、点眼薬は、グリセロールの等張性濃度を備えている。本発明のさらなる好ましい態様においては、粘性を増大させるために10000ダルトンより大きい分子量のポリマーが付加される。ポリマーがアニオン性であり添加塩がない場合は、溶液は、非ニュートン粘性特性を有するという付加的な効果を備える。
【0007】
本発明のいくつかの態様において、点眼薬は、眼科的に有効な量の少なくとも1つの付加的な眼科薬剤をさらに含んでいる。ある具体例においては、点眼薬は、さらに、ジクロフェナクを含んでいる。
【0008】
従って、本発明の一態様によれば、グリセロール水溶液を含み、結膜弛緩症の非外科的治療に有効である上述した点眼薬が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、溶液が基本的に等張性である点眼薬が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、溶液が約pH7を有する上述した点眼薬が提供される。
【0011】
本発明のさらに他の態様によれば、塩濃度が約2mM未満である上述した点眼薬が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の態様によれば、少なくとも10000ダルトンの分子量のポリマーをさらに含んでいる上述した点眼薬が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の態様によれば、ポリマーの濃度が溶液を所定の粘性とするように選択される上述した点眼薬が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の態様によれば、ポリマーが、アニオン性である上述した点眼薬が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の態様によれば、ポリマーがヒアルロン酸及びカルボマーからなる群から選択される上述した点眼薬が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の態様によれば、薬学的に有効な量の薬理活性物質をさらに含んでいる上述した点眼薬が提供される。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、薬理活性物質がジクロフェナクである上述した点眼薬が提供される。
【0018】
本発明のさらに他の態様によれば、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、及び中和剤からなる群から選択される少なくとも1つの物質をさらに含んでいる上述した点眼薬が提供される。
【0019】
本発明のさらに他の態様によれば、1日1回から5回の点眼薬の投与が、LIPCOFスケールによって測定される結膜弛緩症の症状の重度を低減させる上述した点眼薬が提供される。
【0020】
本発明のさらに他の態様によれば、1日3回の点眼薬の投与が、LIPCOFスケールによって測定される結膜弛緩症の症状の重度を低減させる上述した点眼薬が提供される。
【0021】
本発明のさらに他の態様によれば、結膜弛緩症の症状の重度における統計学的に有意な低減が、1日3回の点眼薬の投与の開始から6ヶ月以内に生じる上述した点眼薬が提供される。
【0022】
本発明のさらに他の態様によれば、結膜弛緩症の症状の重度における統計学的に有意な低減が、1日3回の点眼薬の投与の開始から1ヶ月以内に生じる上述した点眼薬が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の種々の態様について説明する。説明として、本発明を完全に理解するために具体的な詳細が記載される。発明の本質に影響を及ぼすことなく詳細が異なる、本発明の他の実施形態が存在することは当業者にとって明らかである。従って、本発明は、明細書に記載されている内容に制限されるものではなく、添付の特許請求の範囲に示すようにこの特許請求の範囲の最も広い解釈のみによって定まる適切な範囲に規定されるものである。
【0024】
本発明は、グリセロール水溶液を含んでいる。本発明の好ましい実施形態においては、用意された各100mlの溶液に2.5gのグリセロールが存在する。本発明のいくつかの実施形態において、溶液中における塩濃度は2mM未満である。本発明の好ましい実施形態において、グリセロール溶液は等張である。本発明の好ましい実施形態において、溶液の粘性は、所望の粘性の溶液とするのに充分な量(MW>104ダルトン)のヒアルロン酸又はカルボマー等の高分子量ポリマーを追加することによって制御される。全ての成分は、点眼薬用途に充分な純度である。
【0025】
次いで、溶液は点眼薬として投薬するに適切な容器へ移される。本発明の他の実施形態において、溶液は、薬学的に有効な濃度を有する少なくとも1つの薬理活性物質をさらに含んでいる。必要であれば、薬理活性物質と共に使用するのに適している任意の安定剤、防腐剤、酸化防止剤、中和剤、又はこれらの組み合わせが、点眼薬の使用に適した任意の濃度で溶液に添加され得る。
【0026】
結膜弛緩症を治療するか又はその症状を軽減するためにこの点眼薬の使用する一般的な手順は、症状の重症度が許容レベルに減少するまで、患眼に毎日3回滴下することである。特に重症の場合は、より頻繁な適用が必要かもしれず、さほど重症でない場合は、1日1回の適用で充分かもしれない。
【実施例1】
【0027】
溶液は、以下の成分を含有するように準備された、
グリセロール 2.5g、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1g、
水 100mlとするに充分な量、
溶液は、pH7.2に中和された。
【実施例2】
【0028】
溶液は、以下の成分を含有するように準備された、
グリセロール 2.5g、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.015g、
カルボマー481 0.015g、
水 100mlとするに充分な量、
溶液は、pH7に調整された。
【実施例3】
【0029】
溶液は、以下の成分を含有するように準備された、
グリセロール 2.5g、
ジクロフェナクナトリウム 0.1g、
水 100mlとするに充分な量、
溶液は、pH7に中和された。
【実施例4】
【0030】
溶液は、2mM未満の塩を含有し、実施例2に記載したように準備された。次いで、溶液は、1日平均して3回、患者群に投与された。結膜弛緩症の重症度は、0が最小の重症度レベルを表し、3が非常に重症であるLIPCOF(瞼と平行な結膜ひだ)スケールによって測定された。結膜弛緩症の重症度の判定は、治療の前、治療の開始から1ヵ月後、及び治療の開始から6ヵ月後になされた。結果は、下記の表1に要約されている。ただし、表1において、Nは患者数、%は患者の割合である。第1のLIPCOF判定(LIPCOFスケール1)から第2のLIPCOF判定(LIPCOFスケール2)への変化、及び第1のLIPCOF判定(LIPCOFスケール1)から第3のLIPCOF判定(LIPCOFスケール3)への変化は、p<0.01のレベルで統計的に有意である。
【0031】
【表1】
【0032】
以上述べた実施形態及び実施例は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。