【課題を解決するための手段】
【0019】
驚いたことに、我々は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Xaa
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-Xaa
7-Xaa
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Xaa
13-Xaa
14-
DPro
15-Pro
16-)の14位に塩基性アミノ酸残基Lys(iPr)を導入し、さらに8位にOrn(iPr)を導入することが、好ましい薬理学的特性を有するβ-ヘアピンペプチド模倣体をもたらすことを見出した。適当な血漿タンパク質結合および適切なクリアランス速度と合せて、これらの特性は、あらゆる種類の製剤、特に、徐放性製剤のための低用量での活性成分として、これらの化合物を用いるのを可能にする薬理学的プロフィールを形成する。
【0020】
本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有する一般式:
シクロ(-Tyr
1-His
2-Xaa
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-Xaa
7-Xaa
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Xaa
13-Xaa
14-
DPro
15-Pro
16- (I)
[式中、
Xaa
3は、Ala、TyrまたはTyr(Me)であり、後者は(2S)-2-アミノ-(4-メトキシフェニル)-3-プロピオン酸である;
Xaa
7は、
DTyr、
DTyr(Me)、すなわち、(2R)-2-アミノ-(4-メトキシフェニル)-3-プロピオン酸、または
DProである;
Xaa
8は、Dab、すなわち、(2S)-2,4-ジアミノ酪酸、またはOrn(iPr)、すなわち、(2S)-Nω-イソプロピル-2,5-ジアミノペンタン酸である;
Xaa
13は、GlnまたはGluである;
Xaa
14は、Lys(iPr)、すなわち、(2S)-Nω-イソプロピル-2,6-ジアミノヘキサン酸である]
で示される化合物およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0021】
本発明の特定の実施態様において、β-ヘアピンペプチド模倣体は、Xaa
13がGlnである一般式(I)で示される化合物およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0022】
本発明のもう1つの特定の実施態様において、β-ヘアピンペプチド模倣体は、Xaa
3がTyrまたはTyr(Me)であり、Xaa
7が
DProであり、Xaa
8がOrn(iPr)であり、Xaa
13がGlnである一般式(I)で示される化合物およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0023】
本発明の好ましい実施態様において、化合物は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Ala
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-
DTyr
7-Dab
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Gln
13-Lys(iPr)
14-
DPro
15-Pro
16-)およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0024】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、化合物は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Tyr
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-
DPro
7-Orn(iPr)
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Gln
13-Lys(iPr)
14-
DPro
15-Pro
16-)およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0025】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、化合物は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Tyr(Me)
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-
DPro
7-Orn(iPr)
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Gln
13-Lys(iPr)
14-
DPro
15-Pro
16-)およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0026】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、化合物は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Ala
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-
DTyr(Me)
7-Orn(iPr)
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Gln
13-Lys(iPr)
14-
DPro
15-Pro
16-)およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0027】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、化合物は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Tyr
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-
DTyr
7-Orn(iPr)
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Gln
13-Lys(iPr)
14-
DPro
15-Pro
16-)およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0028】
本発明のさらにもう1つの好ましい実施態様において、化合物は、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Tyr(Me)
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-
DTyr(Me)
7-Orn(iPr)
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Gln
13-Lys(iPr)
14-
DPro
15-Pro
16-)
およびその医薬的に許容しうる塩である。
【0029】
本発明によれば、これらのβ-ヘアピンペプチド模倣体は、以下のステップを含む方法により製造することができる:
(a)適切に官能化された固相担体を、所望の最終生成物において16位にあるProの適当にN-保護された誘導体とカップリングさせるステップ;
(b)このようにして得られた生成物からN-保護基を除去するステップ;
(c)こうして得られた生成物を、所望の最終生成物において15位にある
DProの適切にN-保護された誘導体とカップリングさせるステップ;
(d)ステップ(c)で得られた生成物からN-保護基を除去するステップ;
(e)所望の最終生成物において14〜1位にあるアミノ酸の適切にN-保護された誘導体(該N-保護されたアミノ酸誘導体に存在することができるいずれかの官能基は、同様に適切に保護されている)を用いて、ステップ(c)および(d)に実質的に対応するステップを行うステップ;
(f)必要に応じて、4および11位にあるCys残基の側鎖間にジスルフィド架橋を形成するステップ;あるいは別法として、後記のステップ(i)の後に前述の架橋を形成するステップ;
(g)このようにして得られた生成物を固相担体から分離するステップ;
(h)固相担体から切断された生成物を環化するステップ;
(i)アミノ酸残基の鎖のいずれかの残基の官能基上に存在するいずれかの保護基を除去するステップ;および
(j)必要に応じて、1つまたは数個のイソプロピル基を付着させるステップ;
(k)必要に応じて、アミノ酸の鎖のいずれかの残基の官能基上に存在するいずれかの保護基を除去するステップ;および
(l)必要に応じて、このようにして得られた生成物を医薬的に許容しうる塩に変換するか、あるいは、このようにして得られた医薬的に許容しうる塩もしくは許容されない塩を対応する遊離化合物に変換するか、または他の医薬的に許容しうる塩に変換するステップ。
【0030】
イソプロピル基含有アミノ酸残基Orn(iPr)またはLys(iPr)は、市販されているアミノ酸ビルディングブロックまたは事前に合成したアミノ酸ビルディングブロックとして組み込まれることになるが、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、たとえば、樹脂上での線状ペプチドの合成を含む手順にしたがって製造することができる;または、たとえば、修飾されているとみなされないすべてのアミノ酸残基のアミノ基含有側鎖は、Fmocベース固相ペプチド合成ストラテジーに適した酸不安定性保護基によって保護されたアミノ酸残基のアミノ基含有側鎖が合成カスケードの非常に遅い段階で、溶液中でイソプロピル基をカップリングすることによって誘導体化されうるように、ivDdeなどによって保護されるものであるが、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、直交保護基ストラテジーを適用することによる樹脂上での線状ペプチドの合成を含む手順にしたがって製造することができる;または、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、前述の手順の適当な組合せを含む手順にしたがって製造することができる。
【0031】
官能基を有する固相支持体(すなわち、固相支持体+リンカー分子)および環化部位の適切な選択は、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体の合成プロセスにおいて重要な役割を演じる。
【0032】
官能基化された固相担体は、好ましくは1〜5%のジビニルベンゼンと架橋結合したポリスチレン;ポリエチレングリコールスペーサー(Tentagel(登録商標))でコーティングしたポリスチレン;および、ポリアクリルアミド樹脂から誘導されるのが好都合である(D. Obrecht、J.-M. Villalgordo、「Solid-Supported Combinatorial and Parallel Synthesis of Small-Molecular-Weight Compound Libraries」、Tetrahedron Organic Chemistry Series、Vol. 17、Pergamon、Elsevier Science、1998)。
【0033】
固相担体は、リンカー(すなわち二官能性スペーサー分子)によって官能基化される。なお、前記リンカーは、一端上に固相担体へ結合するための固着基を含有し、他の一端に、後続の化学変化および切断手順に使用される選択的に切断可能な官能基を含有する。本発明の目的において、2つのタイプのリンカーを使用する:
【0034】
タイプ1リンカーは、酸性条件下でアミド基を放出するよう設計されている(H. Rink、Tetrahedron Lett. 1987、28、3783-3790)。この種のリンカーは、アミノ酸のカルボキシル基のアミドを形成する;このようなリンカー構造によって官能基化される樹脂の例としては、4-[(((2,4-ジメトキシフェニル)Fmoc-アミノメチル)フェノキシアセトアミド) アミノメチル] PS樹脂、4-[(((2,4-ジメトキシフェニル)Fmoc-アミノメチル)フェノキシアセトアミド)アミノメチル] -4-メチルベンズヒドリルアミンPS樹脂(Rink アミドMBHA PS樹脂)、および4-[(((2,4-ジメトキシフェニル)Fmoc-アミノメチル)フェノキシアセトアミド)アミノメチル]ベンズヒドリルアミン PS樹脂(Rink アミドBHA PS樹脂)などが挙げられる。好ましくは担体は、最も好ましくは1〜5%ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンから誘導され、4-(((2,4-ジメトキシフェニル)Fmoc-アミノメチル)フェノキシアセトアミド)リンカーによって官能基化される。
【0035】
タイプ2リンカーは、酸性条件下でカルボキシル基を最終的に放出するように設計される。この種のリンカーは、アミノ酸のカルボキシル基とともに、酸に不安定なエステルを形成するが、通常は、これらは酸に不安定なベンジル、ベンズヒドリルおよびトリチルエステルである;このようなリンカー構造の例としては、2-メトキシ-4-ヒドロキシメチルフェノキシ(Sasrin(登録商標)リンカー)、4-(2,4-ジメトキシフェニル-ヒドロキシメチル)-フェノキシ(Rinkリンカー)、4-(4-ヒドロキシメチル-3-メトキシフェノキシ)酪酸(HMPBリンカー)、トリチルおよび2-クロロトリチルが挙げられる。担体は、最も好ましくは1〜5%のジビニルベンゼンで架橋結合したポリスチレンから誘導し、2-クロロトリチルリンカーにより官能基化するのが好ましい。
【0036】
パラレルアレイ合成として実施する場合、以下に記載したようにして本発明の方法を実施するのが都合がよいけれども、単一の本発明化合物を合成することを所望する場合、これらの手順をどのように変更しなければならないかは、当業者は直ちに理解するであろう。
【0037】
パラレル法によって合成される化合物の総数に等しい多数の反応容器に、25〜1000mg、好ましくは60mgの適切に官能基化された固相担体、好ましくは1〜3%の架橋結合ポリスチレンまたはTentagel樹脂を充填する。
【0038】
用いられる溶媒は樹脂を膨潤させることができるものでなければならず、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジオキサン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール(EtOH)、トリフルオロエタノール(TFE)、イソプロピルアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。少なくとも1つの成分として極性溶媒(たとえば、20%TFE/DCM、35%THF/NMP)を含有する溶媒混合物は、樹脂結合ペプチド鎖の高反応性および高溶媒和を確実にするのに有益である(G.B. Fields、C.G. Fields、Am. Chem. Soc. 1991、113、4202-4207)。
【0039】
側鎖中の官能基を保護する酸反応性基には影響を及ぼさない、緩和な酸性条件下でC末端カルボン酸基を遊離する種々のリンカーの開発に伴って、保護ペプチド断片の合成において相当な進歩が得られた。2-メトキシ-4-ヒドロキシベンジルアルコール誘導リンカー(Sasrin(登録商標)リンカー、Merglerら、Tetrahedron Lett. 1988、29 4005-4008)は、希釈トリフルオロ酢酸(0.5〜1%TFAのDCM溶液)により切断され、かつ、ペプチド合成中、Fmoc脱保護条件に対して安定性であり、Boc/tBu系追加保護基は、この保護スキームと適合性がある。本発明の方法に適当な他のリンカーとしては、超酸変動性4-(2,4-ジメトキシフェニル-ヒドロキシメチル)-フェノキシリンカー(Rinkリンカー、Rink, H. Tetrahedron Lett. 1987, 28, 3787-3790)(ペプチド除去には、10%酢酸DCM溶液または0.2%トリフルオロ酢酸DCM溶液が必要である);4-(4-ヒドロキシメチル-3-メトキシフェノキシ)酪酸誘導リンカー(HMPBリンカー、Florsheimer & Riniker, Peptides 1991,1990 131)(1%TFA/DCMを用いて切断することにより、すべての酸変動性側鎖保護基を含有するペプチド断片が得られる);およびまた、2-クロロトリチルクロリドリンカー(Barlosら、Tetrahedron Lett. 1989、30、3943-3946)(氷酢酸/トリフルオロエタノール/DCM(1:2:7)の混合物を30分間用いることによりペプチド分離が可能である)が挙げられる。
【0040】
アミノ酸に対する、およびそれらの残基に対するそれぞれ適当な保護基は、たとえば、
アミノ基(たとえば、リシンまたはオルニチンの側鎖中にもまた存在しているようなアミノ基)に対しては、
Cbz ベンジルオキシカルボニル
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
Fmoc 9-フルオレニルメトキシカルボニル
Alloc アリルオキシカルボニル
Teoc トリメチルシリルエトキシカルボニル
Tcc トリクロロエトキシカルボニル
Nps o-ニトロフェニルスルホニル
Trt トリフェニメチルまたはトリチル
ivDde(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルであり、
アルコール成分を用いたエステルへの転化によるカルボキシル基(たとえば、グルタミン酸の側鎖中にも存在するようなカルボキシル基)に対しては、
tBu tert-ブチル
Bn ベンジル
Me メチル
Ph フェニル
Pac フェナシル
アリル
Tse トリメチルシリルエチル
Tce トリクロロエチル
ivDde(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルであり、
グアニジノ基(たとえば、アルギニンの側鎖中に存在するようなグアニジノ基)に対しては、
Pmc 2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル
Ts トシル(すなわち、p-トルエンスルホニル)
Cbz ベンジルオキシカルボニル
Pbf ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニルであり、
ヒドロキシ基(たとえば、セリンの側鎖中に存在するようなヒドロキシ基)に対しては、
tBu tert-ブチル
Bn ベンジル
Trt トリチル
Alloc アリルオキシカルボニルであり、
メルカプト基(たとえば、システインの側鎖中に存在するようなメルカプト基)に対しては、
Acm アセトアミドメチル
tBu tert-ブチル
Bn ベンジル
Trt トリチル
Mtr 4-メトキシトリチルである。
【0041】
好ましくは、9-フルオレニルメトキシカルボニル-(Fmoc)-保護アミノ酸誘導体が、本発明のβ-ヘアピンループ模倣体を構築するためのビルディングブロックとして用いられる。脱保護、すなわち、Fmoc基の切断には、20%ピペリジンDMF溶液または2%DBU/2%ピペリジンDMF溶液を用いることができる。
【0042】
(Fmoc)-保護アミノ酸誘導体のイソプロピル化アミノ基含有側鎖を形成するための9-フルオレニルメトキシカルボニル-(Fmoc)-保護アミノ酸誘導体のアミノ基含有側鎖へのイソプロピル基の連結は、当技術分野で知られている。イソプロピル基を導入するための手順は、たとえば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの適当な還元剤の存在下でのアセトンによるOrnなどのアミノ酸ビルディングブロックのアミノ基含有側鎖のアミノ基の処理といったような還元的アルキル化によって達成することができる。イソプロピル化された(Fmoc)-保護アミノ酸誘導体のアミノ基含有側鎖のための適当なBocなどの保護基は、重炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下での二炭酸ジ-tert-ブチルとの後続反応によって導入することができる。
【0043】
反応物、すなわち、アミノ酸誘導体の量は、通常、反応チューブに秤量された、官能基化固相担体(一般には、ポリスチレン樹脂に対して0.1〜2.85meq/g)の1グラム当たりミリ当量(meq/g)充填に基づいた1〜20当量である。もし妥当な時間内に反応を終了まですすめることを所望するのであれば、反応物のさらなる当量を用いることができる。好ましいワークステーション(しかし、これに限定されるものではない)は、Labsource's Combi-chem station、Protein Technologies' SymphonyおよびMultiSyn Tech's-Syro synthesizerであるが、後者は、さらに、固相担体から完全保護線状ペプチドを切り離すプロセス中に、伝達ユニットおよび貯留ボックスを備える。すべての合成装置は、制御された環境を提供することができ、たとえば、必要に応じて、室温とは異なる温度ならびに不活性ガス雰囲気下で反応を行うことができる。
【0044】
アミド結合形成には、アシル化工程のα-カルボキシル基の活性化が必要である。この活性化がジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、Sheehan & Hess、J. Am. Chem. Soc. 1955、77、1067-1068)またはジイソプロピルカルボジイミド(DIC、Sarandakosら、Brioche. Biophys. Res. Common. 1976、73、336-342)などの一般に用いられているカルボジイミドによって行なわれている場合、得られるジシクロヘキシル尿素およびジイソプロピル尿素は一般に用いられる溶媒に対してそれぞれ不溶性または可溶性である。カルボジイミド方法の変法では、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt, Konig & Geiger, Chem. Ber 1970, 103, 788-798)は、カップリング混合物への添加物として含まれる。HOBtは脱水を防ぎ、活性化アミノ酸のラセミ化を抑制し、触媒として不活発なカップリング反応を改善する役割を果たす。あるホスホニウム試薬は、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)(Castroら, Tetrahedron Lett. 1975, 14, 1219-1222;Synthesis, 1976, 751-752)(BOP、Castroら、Tetrahedron Lett. 1975、14、1219-1222;Synthesis 1976、751-752)、またはベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルロホスフェート(Py-BOP、Costeら、Tetrahedron Lett. 1990、31、205-208)、または2-(1Hベンゾトリアゾール-1-イル-)1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテラフルオロボレート(TBTU)、またはヘキサフルオロホスフェート(HBTU、Knorrら、Tetrahedron Lett. 1989、30、1927-1930)などの直接カップリング剤として用いられている;また、これらのホスホニウム試薬は、保護アミノ酸誘導体のHOBtエステルのin situ形成に好適である。さらに最近では、アジ化ジフェノキシホスホリル(DPPA)またはO-(7-アザ-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TATU)、またはO-(7-アザ-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)/7-アザ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt、Carpinoら、Tetrahedron Lett. 1994、35、2279-2281)がカップリング剤として用いられている。あるいは-(6-クロロ-lH-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-1,1,3,3-テトラメチル-ウロニウムテトラフルオロホスフェート(TCTU)、またはヘキサフルオロホスフェート(HCTU、Marder、Shivo and Albericio:HCTU and TCTU:New Coupling Reagents:Development and Industrial Applications、Poster Presentation、Gordon Conference February 2002)ならびに1,1,3,3-ビス(テトラメチレン)クロロウロニウムヘキサフルオロホスフェート(PyCIU、特にN-メチル化アミノ酸のカップリングのために、、J. Coste、E. Frerot、P. Jouin、B. Castro、Tetrahedron Lett. 1991、32、1967)またはペンタフルオロフェニルジフェニル-ホスフェート(S. Chen、J. Xu、Tetrahedron Lett. 1991、32、6711)もまたカップリング剤として用いられている。
【0045】
ほぼ定量的なカップリング反応が不可欠であるという事実から、反応の完了を立証する実験証拠を持つことが望ましい。ニンヒドリン試験(Kaiserら、Anal. Biochemistry 1970、34、595)(この場合、樹脂結合ペプチドのアリコートに対する陽性比色反応は、第一級アミンの存在を定性的に示す)は、各カップリング工程の後に容易かつ迅速に行なうことができる。Fmoc化学は、Fmoc発色団が塩基とともに放出される場合、Fmoc発色団の分光光度の検出を可能にする(Meienhoferら、Int. J. Peptide Protein Res. 1979、13、35-42)。
【0046】
各反応容器内の樹脂結合中間体を、遊離の過剰の保持試薬、溶媒および副産物を下記の2つの方法のうちの1つの方法によって精製溶媒に繰り返し接触させることによって洗浄する:
1)反応容器を溶媒(好ましくは5mL)で満たし、5〜300分間、好ましくは15分間撹拌し、溶媒を排出して放出する;
2)反応容器を溶媒(好ましくは5mL)で満たし、試験管またはバイアルなどの受け入れ容器へフィルターを通して重力により出する。
【0047】
上記の両洗浄手順は、TLC、GCなどの方法、または洗浄の検査によって、試薬、溶媒および副産物除去の効率をモニターしながら、約50回まで(好ましくは約10回)繰り返す。
【0048】
反応チューブ内における試薬と樹脂結合化合物との反応、その後の過剰試薬、副産物および溶媒の除去に関する上述の手順を、最終的な樹脂結合完全保護線状ペプチドが得られるまで各連続変換を繰り返す。
【0049】
この完全保護線状ペプチドを固相担体から切り離す前に、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を形成することができる。
【0050】
ジスルフィド架橋形成のために、好ましくは10当量のヨウ素溶液をDMFまたはCH
2Cl
2/MeOHの混合溶媒に1.5時間適用し、該ヨウ素溶液をろ過後、別の新鮮なヨウ素溶液をさらに3時間適用することを繰り返し;または5%NaHCO
3でpH5〜6に緩衝化したDMSOと酢酸溶液の混合溶媒に4時間適用し;または水酸化アンモニウム溶液でpH8に調節した後の水に24時間撹拌しながら適用し;またはNMPおよびトリ-n-ブチルホスフィン(好ましくは50当量)の溶液に適用する。
【0051】
別法として、Cys
4とCys
11との間のジスルフィド架橋の形成は、粗完全脱保護および環化ペプチドを、5% NaHC0
3でpH5-6に緩衝化するか、または酢酸アンモニウムでpH7-8に緩衝化するか、または水酸化アンモニウムでpH8に調節した15体積%以下のDMSO含有水中で24時間攪拌することによる後記の加工方法2)の後で行うことができる。蒸発乾固した後、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Xaa
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-Xaa
7-Xaa
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Xaa
13-Xaa
14-
DPro
15-Pro
16-)を最終生成物として得ることができる。
【0052】
固相担体からの完全保護線状ペプチドの切り離しは、装填された樹脂を切断試薬(好ましくは3〜5mL)溶液で洗浄することによって達成される。温度調節、撹拌および反応モニタリングは上述のように実施する。伝達ユニットを介して反応容器を貯留チューブを含む貯留ボックスに連結して、切断された生成物溶液を効率的に集める。次いで、反応容器中に残っている樹脂を3〜5mLの適当な溶媒を用いて上述のようにして2〜5回洗浄し、可能な限り多くのその切り離された生成物を抽出する(洗い流す)。このようにして得られた生成物溶液を、交差混合(cross-mixing)を避けるよう注意しながら合せる。次いで、必要に応じて、その個別の溶液/抽出物を操作して最終化合物を分離する。代表的な操作としては、蒸発、濃縮、液/液抽出、酸性化、塩基性化、中和、または溶液中の追加反応が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
固相担体から切断し、塩基で中和した完全保護線状ペプチド誘導体を含有する溶液を蒸発させる。次いで、環化をDCM、DMF、ジオキサン、THFなどの溶媒を用いて溶液中で行う。上述した種々のカップリング剤を環化に用いることができる。環化の継続時間は、好ましくは約6〜48時間、好ましくは約16時間である。反応の進捗は、たとえば、RP-HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)により追跡される。次いで、溶媒を蒸発によって除去し、完全保護環状ペプチド誘導体をDCMなどの水との混和性を有しない溶媒中に溶解し、その溶液を水または水混和性溶媒の混合物で抽出し、過剰のカップリング剤を除去する。
【0054】
最後に、完全保護ペプチド誘導体を95%TFA、2.5%H
2O、2.5%TISで処理するか、保護基の切断を行うスカベンジャーの他の組み合わせで処理する。切断反応時間は、一般に30分から12時間、好ましくは約2.5時間である。
【0055】
別法として、ガラス容器中で、手作業で、完全保護ペプチドを固相担体から分離し完全に脱保護することもできる。
【0056】
完全に脱保護した後、たとえば、以下の方法を用いてさらなる加工を行うことができる:
1)揮発物を蒸発乾固し、粗ペプチドを20% AcOH水溶液に溶解し、イソプロピルエーテルまたは適当なその他の溶媒で抽出する。水性層を採取し、蒸発乾固し、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有する完全脱保護ペプチド、シクロ(-Tyr
1-His
2-Xaa
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-Xaa
7-Xaa
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Xaa
13-Xaa
14-
DPro
15-Pro
16-)を最終生成物として得る;
2)脱保護混合物を減圧濃縮する。上述したようにCys
4とCys
11との間のジスルフィド結合が固相担体上で形成されたならば、完全脱保護ペプチドを、ジエチルエーテル中、好ましくは0℃にて沈殿させた後、固体を約10回、好ましくは3回洗浄し、乾燥し、Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有する完全脱保護ペプチド、シクロ(-Tyr
1-His
2-Xaa
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-Xaa
7-Xaa
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Xaa
13-Xaa
14-
DPro
15-Pro
16-)を最終生成物として得る。
【0057】
もし溶液中の1つ以上のイソプロピル基を導入するための上述の直交保護基ストラテジーが行われたならば、次いで、アミノ酸残基の側鎖のすべてのアミノ基は依然として非酸不安定性保護基によって保護されるが、酸不安定性保護基によって以前は保護されたアミノ酸残基のアミノ基は、合成カスケードのこの段階で開放される。したがって、必要に応じて、イソプロピル基をカップリングさせることが可能である。ivDdeまたは同種のものが、アミノ基を開放するためにイソプロピル基のカップリング中に修飾されないままであるアミノ基含有側鎖のための酸安定性保護基であるのが好ましい。このカップリングは、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの適当な還元剤の存在下でアセトンを用いて還元的アルキル化などを適用することによって達成することができる。したがって、たとえば、該ペプチドは、酢酸(0.2 M)含有メタノール(4.4 mM)に溶解される。過剰のアセトン(780当量)を加えた後、反応混合物をシアノ水素化ホウ素ナトリウムのメタノール溶液(0.6 M;導入が望まれるイソプロピル基当たり1.3当量)で完了し、室温にて激しく攪拌する。LC-MSでモニターして変換の完了を確認した後、水を加え、溶媒を蒸発させる。ペプチドを含有する残留固体をDMF(0.01 M)に溶解し、ヒドラジンの5%DMF溶液を用いて、ivDde保護基を最終的に除去する。
【0058】
前述したように、その後、必要に応じて、このようにして得られた完全脱保護環式生成物を医薬的に許容しうる塩に変換するか、あるいは、このようにして得られた医薬的に許容しうる塩もしくは許容されない塩を対応する遊離化合物に変換するか、または他の医薬的に許容しうる塩に変換することが可能である。これらの操作のいずれもが、当技術分野で周知の方法によって行うことができる。
【0059】
本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、健康な個体におけるHIV感染の予防のため、および感染した患者におけるウイルスの増殖を遅らせ、停止させるため;またはガンがCXCR4受容体活性に仲介されるか、もしくは起因する場合;または免疫疾患がCXCR4受容体活性に仲介されるか、もしくは起因する場合;あるいは本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、免疫抑制の治療のため;または末梢血幹細胞のアフェレーシス採取中;および/または組織修復を調節するための幹細胞の動員を誘発する作用剤として、使用することができる。
【0060】
本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、
β-ヘアピンペプチド模倣体は単独で投与されてもよく、あるいは、当技術分野で周知の担体、希釈剤または賦形剤とともに適当な製剤として使用してもよい。
【0061】
HIV感染症、または乳ガン、脳腫瘍、前立腺ガン、肝細胞ガン、直腸結腸ガン、肺ガン、腎臓ガン、神経芽腫、卵巣ガン、子宮内膜ガン、胚細胞腫瘍、
眼ガン、多発性骨髄腫、膵臓ガン、胃ガン、横紋筋肉腫、黒色腫、慢性リンパ球白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫および非ホジキンリンパ腫;転移、血管新生および造血組織などのガン;またはぜん息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症、関節リウマチ関連ILD、全身性エリテマトーデス、硬直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシーまたは過敏反応、薬剤アレルギー、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、アテローム性動脈硬化、重症筋無力症、若年発症型糖尿病、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、拒絶反応(同種移植拒絶または対宿主性移植片疾患が含まれる)、炎症性腸疾患、炎症性皮膚病などの炎症性疾患を治療または予防するため;または緑内障、糖尿病性網膜症および加齢黄斑変性症などの眼疾患を治療するため;焦点虚血性脳卒中、全脳虚血、心筋梗塞、後肢虚血または末梢虚血を治療するため;肝臓、腎臓または肺の外傷を治療するため;あるいは化学療法、放射線療法または移植片/移植拒絶により誘導される免疫抑制などを治療するために用いる場合、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は単独で、数種のβ-ヘアピンペプチド模倣体の混合物として、他の抗HIV作用剤または抗生物質もしくは抗ガン剤もしくは抗炎症剤と組み合わせて、あるいは他の薬学的に活性剤と組み合わせて投与することができる。β-ヘアピンペプチド模倣体は、単独で、または医薬組成物として投与することができる。
【0062】
本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体を含む医薬組成物は、慣用の混合、溶解、造粒、コーティング錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入化(entrapping)または凍結乾燥加工によって製造することができる。医薬組成物は、医薬的に使用しうる調製品への活性β-ヘアピンペプチド模倣体の加工を容易にする、1種以上の生理学的に許容しうる担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を用いて慣用の方法により製剤化してもよい。適切な製剤は、選択する投与方法に応じて決まる。
【0063】
局所投与には、当技術分野で周知のようにして、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体を溶液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤などとして製剤化することができる。
【0064】
全身製剤として、皮下注射、静脈注射、筋肉注射、髄腔内注射、腹膜腔内注射などの注射による投与用として設計されたもの、ならびに、経皮投与、経粘膜投与、経口投与または経肺投与用として設計されたものが挙げられる。
【0065】
注射剤には、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体を適当な溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液に溶解して製剤化することができる。その溶液には、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤が含まれていてもよい。あるいは、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、使用する前に、適当なビヒクル(たとえば、発熱性物質除去滅菌水)と組み合わせるための粉末形態であってもよい。
【0066】
経粘膜投与には、浸透させるバリアに好適な浸透剤は、当技術分野で公知の製剤において用いられるものである。
【0067】
経口投与には、本化合物は、当技術分野で周知の医薬的に許容しうる担体と本発明の活性β-ヘアピンペプチド模倣体を組み合わせることにより容易に製剤化することができる。このような担体により、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体を、治療される患者の経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁液剤、散剤などとして製剤化することができる。経口剤(たとえば、散剤、カプセル剤および錠剤など)にとって、好適な賦形剤として、糖類(たとえば、ラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール)、セルロース調製物(たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、じゃがいもデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP))などの増量剤;造粒剤;ならびに結合剤などが挙げられる。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を添加してもよい。必要に応じて、固体投与剤形は、標準技術を用いて、糖衣してもよく、あるいは腸溶性コーティングをしてもよい。
【0068】
経口液状製剤(たとえば、懸濁液剤、エリキシル剤および溶液剤など)には、適当な担体、賦形剤または希釈剤として水、グリコール、油、アルコールなどが挙げられる。さらに、香味剤、保存剤、着色剤などを添加してもよい。
【0069】
口腔内投与については、組成物は、通常通り製剤化された錠剤、トローチ剤などの形態をとることができる。
【0070】
また、本化合物は、ココアバターまたは他のグリセリドなどの適当な坐剤基剤を用いて、坐薬などの直腸用組成物または膣用組成物に製剤化することができる。
【0071】
上記製剤に加えて、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、持続性製剤として製剤化してもよい。このような長時間作用製剤は、インプラント(たとえば、皮下にまたは筋肉内への埋め込み)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。このような持続性製剤の製造には、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体を、適当なポリマー材料もしくは疎水性材料(たとえば、許容しうる油中のエマルジョンのような材料)、またはイオン交換樹脂、あるいはやや溶けにくい可溶塩などを用いて製剤化してもよい。
【0072】
さらに、他の医薬デリバリーシステムでは、当技術分野で周知のリポソームおよびエマルジョンなどを使用してもよい。また、ジメチルスルホキシドなどのある種の有機溶媒を使用してもよい。さらに、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、治療薬(たとえば、コーティングステント)を含有する固体ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性システムを用いてデリバリーすることもできる。種々の徐放性材料はすでに確立されており、当業者には周知である。徐放性カプセルは、それらの化学的性質に基づいて、数週間から100日以上の間、化合物を放出する。治療薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質を安定化させるためのさらなる方法を用いてもよい。
【0073】
本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体は、荷電残基を含有するので、それ自体または医薬的に許容しうる塩として、上記製剤のうちのいずれにも含まれ得る。医薬的に許容しうる塩は、対応する遊離形態よりも、水性溶媒および他のプロトン性溶媒中でより溶けやすいという傾向がある。特に適した医薬的に許容しうる塩として、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸およびスルファミン酸、たとえば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸またはアスパラギン酸などのアミノ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、桂皮酸、メタン-もしくはエタン-スルホン酸、2 -ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1,2 -ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2 -ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、2-、3-または4 -メチル-ベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N-シクロヘキシルスルファミン酸、N-メチル-N-エチル-もしくはN-プロピル-スルファミン酸、およびアスコルビン酸などの他の有機プロトン酸などとの塩が挙げられる。適当な無機酸は、たとえば、塩酸などのハロゲン化水素酸、硫酸およびリン酸などである。
【0074】
本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体またはその組成物は、一般に、意図した目的を達成するのに有効な量で用いる。使用される量は、特定の用途に応じて決まることは理解されよう。
【0075】
HIV感染を治療または予防するための局所投与のための治療有効用量は、たとえば、実施例において提供するインビトロアッセイを用いて決定することができる。HIV感染が可視的である場合にも、さらには感染が可視的でない場合にも治療を施すことができる。当業者ならば、過度の実験を行うことなく、局所的HIV感染を治療するための治療有効量を決定することができる。
【0076】
全身投与には、治療有効用量は、最初にインビトロアッセイから推定することができる。たとえば、投与量は、細胞培養において決定したIC
50を含む、循環β-ヘアピンペプチド模倣体の濃度範囲に達するように、動物モデルにおいて策定することができる。このような情報を用いて、より正確にヒトでの有用な投与量を決定することができる。
【0077】
初期投与量も当技術分野で周知の技術を用いて、インビボデータ(たとえば、動物モデル)から決定することができる。当業者は、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0078】
抗HIV剤としての用途のための投与量は、治療効果を維持するのに十分な本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体の血漿中濃度をもたらすことができるように個別に調節することができる。治療有効血清中濃度は、毎日複数回投与することによって達成されうる。
【0079】
局所投与または選択的取り込みの場合、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体の有効な局所濃度は、血漿中濃度と関連していなくてもよい。当業者は、過度の実験を行うことなく、治療上有効な局所投与量を最適化することができるであろう。
【0080】
投与されるβ-ヘアピンペプチド模倣体の量は、もちろん、治療されている被験者に応じて、すなわち被験者の体重、病気の重篤度、投与方法および処方する医師の判断に応じて決まる。
【0081】
感染が検出可能である場合、または感染が検出できない場合でさえ、抗HIV療法は断続的に繰り返すことが可能である。その療法は、単独で、または他の薬物(たとえば、他の抗HIV剤または抗ガン剤あるいは他の抗菌剤など)と併用で提供され得る。
【0082】
通常、本明細書に記載したβ-ヘアピンペプチド模倣体の治療有効量により、実質的な毒性を誘発することなく、治療上の効果が得られる。
【0083】
細胞培養または実験動物における標準的薬学的手法によって、たとえば、LD
50(集団の50%まで致死させる投与量)またはLD
100(集団の100%まで致死させる投与量)を決定することによって、本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体の毒性を決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数である。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用に当たって毒性でない投与範囲を明確化するのに用いることができる。本発明のβ-ヘアピンペプチド模倣体の投与量は、ほとんど毒性がないか、または毒性がない有効量を含む、循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。投与量は、使用される投与剤形および利用される投与経路に応じて、その範囲内で変動し得る。各医師は、正確な処方、投与経路および投与量を患者の状態を考慮して選ぶことができる(たとえば、Finglら、1975, The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1を参照されたい)。
【0084】
本発明はまた、通常天然に見出される質量数または質量とは異なる質量数または質量を有する原子によって1つ以上が置き換えられる以外は、一般式:Cys
4とCys
11との間にジスルフィド結合を有するシクロ(-Tyr
1-His
2-Xaa
3-Cys
4-Ser
5-Ala
6-Xaa
7-Xaa
8-Arg
9-Tyr
10-Cys
11-Tyr
12-Xaa
13-Xaa
14-
DPro
15-Pro
16-)で示される化合物と同一である化合物、たとえば、
2H(D)、
3H、
11C、
14C、
129Iなどに富む化合物も包含する。これらの同位体アナログおよびその医薬的塩ならびに製剤は、たとえば、インビボ半減期の微調整が最適な投与処方を導くことができた場合(これに限定されるものではない)の治療および/または診断において有用な作用剤であるとみなされる。