特許第5957522号(P5957522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5957522切削工具、切削工具本体およびそれらのための切削工具支持パッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957522
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】切削工具、切削工具本体およびそれらのための切削工具支持パッド
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   B23B51/00 K
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-515336(P2014-515336)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-519418(P2014-519418A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】IL2012000202
(87)【国際公開番号】WO2012172537
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】61/496,402
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306037920
【氏名又は名称】イスカーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギル ヘクト
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/032564(WO,A1)
【文献】 独国特許発明第102009013270(DE,B3)
【文献】 独国実用新案第202010003288(DE,U1)
【文献】 特開2003−211311(JP,A)
【文献】 国際公開第00/078487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸(R1)を有し、
前記第1の軸(R1)に沿って離間されている、対向する第1の一次面(42)および第2の一次面(42)と、
前記第1の一次面(42)と前記第2の一次面(42)との間に延在しているパッド外周面(40)と、
前記第1の一次面(42)と前記第2の一次面(42)との間に配置されており、パッド外周面(40)を通過する、前記第1の軸(R1)に対して垂直である中央平面(P1)と、
を備え、
各一次面(42)は、当接面(54)および少なくとも1つの凸接触面(50)を含み、
前記少なくとも1つの凸接触面(50)は、前記当接面(54)に比べてより遠く、前記中央平面(P1)から離れて外の方へ延在し、前記当接面(54)は複数の平らな副当接面(56)を含んでいる、
ことを特徴とする切削工具支持パッド(24)。
【請求項2】
前記一次面(42)は、それぞれ前記第1の軸(R1)を含む第2平面(P2)および第3平面(P3)に関して、鏡面対称または180°回転対称であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項3】
各当接面(54)は4つの副当接面(56)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項4】
前記複数の副当接面(56)は同一平面上にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項5】
前記一次面(42)の各々の平面図では、前記少なくとも1つの凸接触面(50)の各々の少なくとも一部が2つの副当接面(56)間に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項6】
所与の一次面(42)の平面図では、当該一次面(42)接触面(50)が、他方の一次面(42)の2つの対応する副当接面(56’)間に配設されている前記他方の一次面(42)の領域の真上に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項7】
各一次面(42)の平面図では、前記副当接面(56)は、対向する2つの直線を辺として有する形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項8】
前記パッド外周面(40)は、2つの対向する二次面(46)、およびそれらの間に延在している2つの対向する端面(48)を含み、
前記2つの対向する二次面(46)は、中を通過しかつ前記第1の軸(R1)に対して垂直である第2の軸(R2)を中心に180°回転対称を有し、
前記2つの対向する端面(48)は、それを通過しかつ前記第1の軸(R1)および前記第2の軸(R2)の両方に対して垂直である第3の軸(R3)を中心に180°回転対称を有する、
ことを特徴とする請求項1から5および7のいずれか一項に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項9】
前記二次面(46)は平面であることを特徴とする請求項8に記載の切削工具支持パッド(24)。
【請求項10】
中を通って延在しておりかつ前後方向を画定する長手方向回転軸Aを有する切削工具本体(14)を含む切削工具(10)であって、前記切削工具本体(14)は、その外周部(21)に工具外周面(18)、少なくとも1つの切削部(17)、および前記少なくとも1つの切削部とは異なる少なくとも1つの案内部(20)を備え、前記少なくとも1つの案内部は、前記外周部(21)に配設されている少なくとも1つの支持パッドポケット(22)を含み、前記支持パッドポケット(22)は、
前記工具外周面(18)に比べて、前記回転軸Aにより近接して配置されている支持面(26)と、
前記支持面(26)と前記工具外周面(18)との間に延在している側壁(28)と、
前記側壁(28)に接続されており、かつ前記支持面(26)と前記工具外周面(18)との間に延在している端壁(30)と、
前記支持面(26)に形成されている支持面陥凹部(38)と、を含み、
前記切削工具(10)は、さらに、
前記切削工具本体(14)の支持パッドポケット(22)内に固定されている切削工具支持パッド(24)であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の切削工具支持パッド(24)を含み、
一方の一次面(42)の前記当接面(54)は、前記支持面(26)に当接し、
前記切削工具支持パッド(24)の前記パッド外周面(40)は、前記端壁(30)および前記側壁(28)に当接し、
前記一方の一次面(42)の前記少なくとも1つの凸接触面(50)は、前記支持面陥凹部(38)内に配置されている、
ことを特徴とする切削工具(10)。
【請求項11】
前記支持パッドポケット(22)の平面図では、前記支持面陥凹部(38)は、前記支持面(26)の2つの支持面部(39)間に配置されており、
前記支持面(26)の前記2つの支持面部(39)およびその間にある前記支持面陥凹部(38)は、前記回転軸(A)に対して垂直である径方向平面と交差する、
ことを特徴とする請求項10に記載の切削工具(10)。
【請求項12】
各々が前記支持面(26)の対応する2つの支持面部(39)間に配置されている2つの支持面陥凹部(38)
を含むことを特徴とする請求項10に記載の切削工具(10)。
【請求項13】
前記側壁(28)は、側壁陥凹部(34)により分離されている2つの離間された側壁部分(32)を含むことを特徴とする請求項10に記載の切削工具(10)。
【請求項14】
前記支持面(26)は、それが、前方に向いているヘッド面(16)の軸方向後方の領域に比べて、前記ヘッド面(16)に最も近接した領域内で前記回転軸Aから径方向により遠く配置されているように傾斜されていることを特徴とする請求項10に記載の切削工具(10)。
【請求項15】
前記支持面(26)、前記側壁(28)、および前記端壁(30)は、前記切削工具支持パッド(24)に当接している前記支持パッドポケット(22)内の限られた面である、
ことを特徴とする請求項10に記載の切削工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は切削工具のための支持パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
「磨耗パッド」または「ガイドパッド(guide pad)」と呼ばれることもある切削工具支持パッドは、安定性を向上させ、案内をもたらし、いくつかの場合には被加工物の表面品質を向上させることが知られている。
【0003】
既知の支持パッドは、交換可能かつ割出し可能であり、凸状に湾曲した接触面を備えた第1の側面であって被加工物に係合するように設計されている第1の側面と、その反対側の第2の側面上に、支持パッドがそれを介して切削工具上に据え付けられている平坦な当接面とを含んでいる。
【0004】
特許文献1はそのような支持パッドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,697,737号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規の改良された支持パッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の主題に従って、切削工具支持パッドであって、
該切削工具支持パッドの第1の軸に沿って離間されている、対向する第1の一次面および第2の一次面と、
第1の一次面と第2の一次面間に延在しているパッド外周面と、
第1の一次面と第2の一次面間に配置されており、パッド外周面を通過する、第1の軸に対して垂直である中央平面と
を含む、切削工具支持パッドが提供されている。
【0008】
各一次面は当接面と少なくとも1つの凸接触面とを含み、該少なくとも1つの凸接触面は、当接面より遠く中央平面から離れて外の方へ延在している。
【0009】
本願の主題に従って、中を通って延在する長手方向回転軸を有しかつ前後方向を画定している切削工具本体が提供されている。該切削工具本体は、その外周部にある工具外周面と、少なくとも1つの切削部と、少なくとも1つの切削部とは異なる少なくとも1つの案内部とを含む。該少なくとも1つの案内部は、外周部に配設されている少なくとも1つの支持パッドポケットを含む。
【0010】
支持パッドポケットは、
回転軸に対して工具外周面よりも近接して配置されている支持面と、
支持面と工具外周面との間に延在している側壁と、
側壁に接続されておりかつ支持面と工具外周面との間に延在している端壁と、
支持面に形成されている支持面陥凹部と、
を含む。
【0011】
本願の主題に従って、支持パッドポケット内に支持パッドが固定されている切削工具本体を含む切削工具が提供されている。
【0012】
一方の一次面の当接面は支持面に当接しており、パッド外周面は端壁および側壁に当接しており、前記一方の一次面の少なくとも1つの凸接触面は、支持面陥凹部内に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本願の主題のよりよい理解のために、それが実際にどのように実施され得るかを示すために、ここで添付図面を参照する。
図1】案内部を有する切削工具の部分の等角図である。
図2図1の切削工具の部分の一部の等角分解図である。
図3図1の案内部の支持パッドポケットの平面図である。
図4図1および図2の案内部の端面図である。
図5図1図2および図4の案内部の切削工具支持パッドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
当然のことながら、図を簡単にかつ明確にするために、図に示されている要素は必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、要素の何かの寸法は、明確にするために他の要素に対して誇張され得るものであり、また、いくつかの物理的構成要素は、1つの機能ブロックまたは1つの機能要素内に含まれ得る。さらに、適切と考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すのに、参照番号が諸図間で繰り返し用いられることもある。
【0015】
図1および図2に注目すると、回転軸Aが、切削工具10の中心を通って長手方向に延在している。数字12で指定されておりかつ軸Aと同軸の矢印が、いわゆる前方方向、すなわち右ねじ回転で進む方向を示す。
【0016】
切削工具10は切削工具本体14を含む。
【0017】
切削工具本体14は、前方に向いているヘッド面16と、そこから後方に延在している工具外周面18と、切削工具本体14の外周部21に沿って配置されている1または複数の案内部20とを含むことができる。
【0018】
各案内部20は、支持パッドポケット22を備えて形成されており、そこに固定されている切削工具支持パッド24を含む。
【0019】
案内部に加えて、切削工具本体14はまた、案内部とは異なる1または複数の切削部17と工具本体の隣接した縦溝部(flute)とを含み得ることが分かる。案内部は、切削工具の軸方向像において切削部の正反対にあってもよい。当業者に既知である通り、そのような切削部には、各々、1または複数の切削インサートが据え付けられ得る切削インサートポケットを設けることができる。本開示は、案内部に焦点を合わせているので、切削部の詳細は示さないかまたはさらに記載しない。
【0020】
図1および図2に注目すると、支持パッドポケット22は工具外周面18に開いており、ヘッド面16にも開いていることができる。支持パッドポケット22は、支持面26と、側壁28と、内壁31と、端壁30とを含み得る。内壁31は側壁28の反対側にあるものとすることができる。支持面26は、ヘッド面16から後方に延在し、かつ径方向外側に向いているものとすることができる。支持面26の少なくとも一部が平坦であり得る。支持面26は、回転軸Aに対して工具外周面18よりも近接して配置されている。側壁28および端壁30は、支持面26から工具外周面18まで延在するものとすることができる。側壁28は、端壁30と横方向に接続していることが可能である。側壁28と端壁30とは、支持面26に対して垂直とすることができる。側壁28は回転方向に面していることが可能であり、端壁30は前方に向いていることが可能である。切削工具支持パッド24が定位置にある場合、このパッドは側壁28に当接しており、内壁31から離間されている。
【0021】
切削工具支持パッド24が過剰に拘束されるのを防止するために、側壁28は、壁陥凹部34により分割されている2つの壁部32を含むようにすることができる。
【0022】
支持パッドポケット22は、支持面26にねじ孔36を備えて形成されるものとすることができる。支持面26は少なくとも1つの支持面陥凹部38を含む。支持面26は、ねじ孔36の両側に配置されている2つの支持面陥凹部38を含むものとすることができる。支持パッドポケット22の平面図では、各支持面陥凹部38は、支持面26の2つの支持面部39の間に配置されている。支持面26の2つの支持面部39とそれらの間にある支持面陥凹部38とは、全て、回転軸Aに対して垂直に配向されている径方向面と交差し得るものである。支持面26の支持面部39は平面とすることができる。少なくとも1つの支持面陥凹部38の径方向最内底部が、回転軸Aに対して支持面26よりも近接して配置されている。少なくとも1つの支持面陥凹部38は、切削工具支持パッド24が支持パッドポケット22内に固定された場合に、その少なくとも1つの凸状湾曲部を収容するように構成されている。
【0023】
切削工具支持パッド24が支持パッドポケット22内に固定された場合、支持面26、回転方向に面している側壁28、および端壁30は、切削工具支持パッド24と係合する支持パッドポケット22の限られた面である。
【0024】
図4および図5に注目すると、切削工具支持パッド24は、対向する一次面42と、それらの間に延在しているパッド外周面40とを含むものである。
【0025】
一次面42は、各々、それを貫通する第1の軸R1を中心に180°回転対称とすることができる。第1の軸R1は、一次面42に垂直に配向され得る。
【0026】
切削工具支持パッド24は、両一次面42へ開いている少なくとも1つの貫通ねじ穴44を有することができる。ねじ穴44は第1の軸R1と同軸とすることができる。
【0027】
パッド外周面40は、2つの対向する二次面46を含み得るものである。二次面46は、それを貫通する第2の軸R2を中心に180°回転対称とすることができる。二次面46は平面であり得る。
【0028】
パッド外周面40は、2つの対向する端面48を含み得る。各端面48は、二次面46の間に延在することができる。端面48は、それを貫通する第3の軸R3を中心に180°回転対称とすることができる。
【0029】
切削工具支持パッド24は、第1の軸R1、第2の軸R2、および第3の軸R3を中心に180°回転対称のものとすることができる。第2の軸R2は第1の軸R1に対して垂直である。第3の軸R3は、第1の軸R1および第2の軸R2に対して垂直である。
【0030】
第1の軸R1に対して垂直でありかつ対向する一次面42間の中間に配置されている中央平面P1が、第2の軸R2と第3の軸R3とにより画定されている。中央平面P1はパッド外周面40を通過する。第2の軸R2に対して垂直でありかつ対向する二次面46の間の中間に配置されている長手方向平面P2が、第1の軸R1と第3の軸R3とにより画定されている。最後に、第3の軸R3に対して垂直でありかつ対向する端面48の間の中間に配置されている横方向平面P3が、第1の軸R1と第2の軸R2とにより画定されている。切削工具支持パッド24は、平面P1、P2、およびP3の各々に関して鏡面対称とすることができる。
【0031】
図4に示されている通り、各一次面42は少なくとも1つの凸接触面50を含む。図5に示されている通り、各接触面50は所与の端面48に隣接して配置され得る。
【0032】
各一次面42は、各凸接触面50に隣接した面取り縁部52を含み得るものである。面取り縁部52は、接触面50とパッド外周面40との間に延在することができる。面取り縁部52は、切削工具支持パッド24を、その結果として切削工具10を、被加工物の、前もってドリルで開けられた穴内に先導するかまたは案内することができる。
【0033】
図4および図5に注目すると、各一次面42は当接面54を含む。当接面54は外に向いており、中央平面P1に対して接触面50よりも近接して配置されている。換言すれば、接触面50は、当接面54よりも遠く中央平面P1から離れて外の方へ延在している。
【0034】
各当接面54は複数の副当接面56によって構成することができる。複数の副当接面56は4つの副当接面56とすることができ、それらは互いに同一とすることができる。副当接面56は、ねじ穴44の周囲に配置することができる。副当接面56は同一平面上にあり得るものである。一次面42の平面図では、各副当接面56は直線形状を有するものとすることができる。一次面42の平面図(図5参照)では、全ての2つの副当接面56は、一次面42の中心の方へかつ第1の軸R1の方向に、内側に収束し得るものである。各副当接面56は、パッド外周面40とねじ穴44との間に延在するものとすることができる。各副当接面56は、二次面46からねじ穴44まで延在するものとすることができる。
【0035】
各一次面42には、副当接面56のためのレリーフ面58まれる。レリーフ面58は、中央平面P1に対して当接面54よりも近接して配置されている。一次面42の平面図では、各レリーフ面58は、横方向平面P3の両側に配置されている2つの副当接面56の間に配置され得る。
【0036】
一次面42の平面図では、所与の接触面50の少なくとも一部が、長手方向平面P2の両側に配置されている対向する副当接面56の間に配置されている。対向する副当接面56の間に配置されている接触面50の部分は、機械加工中に被加工物との係合のために構成され得るものである。
【0037】
この装置のあり得る利点は、切削工具支持パッド24と支持パッドポケット22との間の当接力(abutment forces)が分散されることである。
【0038】
所与の一次面42の平面図では、その接触面50は、他方の一次面42の2つの対応する副当接面56’の間に配設されている他方の一次面42の領域の真上に配置され得る。各接触面50の少なくとも一部、および対応する副当接面56’は、第3の軸R3に沿って長手方向平面P3から同一軸距離の所に配置することができる。
【0039】
切削工具支持パッド24が支持パッドポケット22内で固定状態にある場合、切削工具支持パッド24は、機械加工工程に関与するように配置されている単一の作用可能部60と、機械加工工程に関与するように配置されていない複数の非作用部62とを有し得る。図示の例では、切削工具支持パッド24は、4つの異なる配向を有することができ、したがって四方向に割出し可能であると見なされる。切削工具支持パッド24は、第1の配向で支持パッドポケット22内に固定され得る。切削工具支持パッド24は、支持パッドポケット22から除去されることが可能であり、軸R1を中心に180°回転させられ、第2の配向で支持パッドポケット22に固定され得る。切削工具支持パッド24は、次いで、支持パッドポケット22から再度除去されることが可能であり、軸R2またはR3を中心に180°回転させられ、第3の配向で支持パッドポケット22に固定され得る。そのような配向の変更は、切削工具本体14から外へ向いている切削工具支持パッド24の一次面42を交替するものである。切削工具支持パッド24は、次いで、支持パッドポケット22から再度除去されることが可能であり、軸R1を中心に180°回転させられ、第4の配向で支持パッドポケット22に固定され得る。
【0040】
前述の特定の順序の配向の変更は単に理解し易くするためのものであること、および軸のいずれかを中心とする切削工具支持パッド24の回転は任意の所望の順序で実施され得ることは言うまでもない。特定の回転角度が180°であることが図示の例に関して適切であることも言うまでもない。当然のことながら、切削工具支持パッド24は、第1の軸を中心に回転させられ、2つの交互の作用上の配向を実現し、第1の軸に対して垂直な第2の軸を中心に回転させられ、少なくとも1つの付加的配向を実現し得ることは言うまでもない。
【0041】
別の言い方をすれば、本願の主題は、軸R2またはR3を中心に回転した(「反転した」)場合、かつ/または軸R1を中心に回転した場合、作用可能リバーシブル切削工具支持パッド24を実現し得るものである。
【0042】
これらの配向のいずれかでは、単一の接触面50が作用可能部60と見なされる可能性があり、他方の接触面50が非作用部62と見なされる可能性がある。
【0043】
軸R1を中心に回転した場合、単一の一次面42上の2つの接触面50が、作用可能部60として交代する。
【0044】
反転した場合、異なる一次面42上の接触面50が、作用可能部60、または作用可能接触面60として交代する。
【0045】
切削工具支持パッド24の非作用部62のための逃げ(relief)を与えるために、支持面26は、回転軸Aに対して傾斜させられ得る。支持面26は、それが、ヘッド面16の軸方向後方の領域内に比べて、前方に向いているヘッド面16に最も近接した領域内で回転軸Aから径方向により遠く配置されるように傾斜させられてもよい。その結果として、作用可能部60は、任意の非作用部62に比べて、回転軸Aから径方向により遠く配置され得る。作用可能部60は、機械加工工程において被加工物と係合する切削工具支持パッド24の唯一の部分である。
【0046】
作用部62は、作用可能接触面60に比べて回転軸Aによりも近接して配置されている、外側に向いている一次面42上の任意の接触面50として、および回転軸Aの方へ内側に向いている一次面42上の任意の接触面50として画定され得る。
【0047】
固定状態では、切削工具支持パッド24は、支持面26のねじ孔36内に螺入されるねじ64により、支持パッドポケット22内に固定されるように構成され得る。回転軸Aに向いている一次面42の当接面54は、支持面26に当接している。回転方向の反対に向いている二次面46が側壁28と当接している。後方に向いている端面48が端壁30に当接している。回転軸Aに向いている各接触面50は、支持パッドポケット22の各支持面陥凹部38内に配置されている。
【0048】
機械加工中、対応する副当接面56’、または作用可能副当接面56’は、支持面26に当接している。作用可能接触面60に対する作用可能副当接面56’の位置は、作用可能接触面60上に付与される垂直な機械加工力(図4においてFで示されている)の反作用を可能にする。
【0049】
1または複数の特定の実施形態に関して本発明が記載されているが、該記載は全体として例示的であることを目的としており、本発明を示されている実施形態に限定していると見なされるべきではない。本明細書に具体的に示されていないが、それにも関わらず本発明の範囲内に入る種々の修正が当業者に思い付く可能性があることは、言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5