【実施例】
【0047】
(実施例1:T7RNAポリメラーゼ変異体の生成および精製方法)
1/組み換えT7RNAポリメラーゼタンパク質の発現のためのプラスミド構築物
T7RNAポリメラーゼの発現プラスミドはベクターpMR−7casの誘導体である(Arnaud et al.1997,Gene 199:149−156)。
【0048】
対象の組み換えタンパク質についてコードするDNA配列をpMR−7cas由来の発現ベクター中BamHIおよびXbaI制限部位間に導入した。
【0049】
ポリヒスチジン配列(6×His)はT7RNAポリメラーゼのN末端位に存在し、金属キレート親和性カラム上で精製することを可能する。これはその後組み換えタンパク質精製ステップを促進することを可能にするNi−NTAゲル上の結合領域である。このペプチドHHHHHHは配列CACCATCACCATCACCAC(配列番号:2)によりコードされる。
【0050】
NCBIエントリー番号NC001604により表される配列に対応するT7RNAポリメラーゼの遺伝子1の野生型配列は配列番号:1である。
【0051】
2/T7RNAポリメラーゼの単一および複合変異体の生成方法
T7RNAポリメラーゼの変異体を定方向変異誘発により直接pMR−7−cas由来ベクター上に構築した。
【0052】
単一および複合変異体を生成するのに用いられる方法は、Stratagene(Ref.200518)からのQuickchange(登録商標)キットのプロトコルにより記載され、Stratageneからのpfu Ultra HFポリメラーゼを用いて行われる。
【0053】
変異体Q744R、Q744P、C510RおよびS767Gを生成するのに用いられるオリゴヌクレオチドは以下である:
【表1】
【0054】
複合変異体は繰り返しまたはT7RNAポリメラーゼ配列のフラグメントの置換により得られる。
【0055】
3/T7RNAポリメラーゼの組み換えタンパク質の発現:
T7RNAポリメラーゼの変異体配列を含むプラスミド構築物を、当業者に知られる従来のプロトコルに従って大腸菌細菌(BL21株)を形質転換するのに用いられるpMR−7−cas由来の発現ベクター中に挿入する(Molecular Cloning−A laboratory−1.74,1989,Sambrook Joseph,EF.Fritsch,T.Maniatis 2nd Edition,ISBN 0−87969−309−6)。
【0056】
形質転換された細菌はpMR−7−cas由来のベクターが有するアンピシリンに対するそれらの耐性のために選択される。組み換えタンパク質の生成プロトコルを以下に記載する:
1. コロニーを100mg/mLのアンピシリンを含有する10mLのルリアブロス(LB)培地に30℃で16時間、220rpmで撹拌しながら接種する(前培養)
2. 3.3mLの前培養物を用い、200mLのLB培地に播種し、600nmでの最終OD0.07〜0.09を得る。培地を次に37℃で撹拌(220rpm)しながら成長させる
3. 培養の600nmでのODが0.4〜0.6の値に達したら、T7RNAポリメラーゼ組み換えタンパク質の過剰発現を最終濃度0.4mMのIPTGの添加により誘発する。培地を次に4時間37℃で撹拌(220rpm)する。
【0057】
4/T7RNAポリメラーゼ変異体の精製方法
1. 200mLの大腸菌培養物を遠心分離(20分、4℃、6000g)し、得られたバイオマスを10mLの溶解緩衝液(50mM トリス−HCl pH8.0、300mM NaCl)に懸濁させる
2. 前述の細胞懸濁液を5回の各30秒の超音波処理サイクルにより溶解する
3. ステップ[2.]からの溶解物を22000gで2分間、4℃で遠心分離する
4. 前述の浮遊物を金属キレートカラム上での親和性クロマトグラフィーにより精製する。これを行うため、予め周囲温度の同じ溶解緩衝液でバランスをとった1mLのNi−NTAカラム(His Trap(商標)、GE Healthcare、ref.17−5247)上に堆積させる。カラムを次に10mLの同じ緩衝液で洗浄する。組み換えタンパク質の溶出物を、5mLの溶出緩衝液(50mM トリス−HCl pH8.0、200mM NaCl、200mM イミダゾール)を適用し、0.5mLの画分を回収することにより得る
5. 組み換えタンパク質の生成レベルおよび純度をSDS−PAGE10%ゲル上での分析およびクマシーブルーでの染色により制御する
6. 精製されたT7RNAポリメラーゼタンパク質の濃度の測定を、Bradfordにより記載される方法に従い、BioRadからのBradford Quick Start(商標)キットを用いて行う(Bradford,M.M.1976,“Rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein−dye binding”,Anal.Biochem.72:248−254)。組み換えタンパク質濃度を測定するのに用いられる基準はBSAである
7. 組み換えタンパク質を含有する画分を7kDaのZeba(商標)脱塩スピンカラム(Thermoscientific、ref.89882)上で脱塩し、保存緩衝液(20mM KH2PO4/K2HPO4 pH7.5、100mM NaCl、1M トレハロース、1mM EDTA、0.268% v/v トリトンX−100、0.1mg/mL BSA、1mM DTT)中に溶解させる。各精製T7RNAポリメラーゼ変異体を−80℃で保存する。
【0058】
(実施例2:T7RNAポリメラーゼ変異体の比活性の測定)
転写メカニズムの測定方法は従来、新たに形成された転写体への放射活性の組み込みを時間とともにモニタリングすることに基づく(Martin C.T.and Coleman E.Biochemistry,26:2690−2696,1987)。この方法には、完全な転写体の生成だけでなく、T7RNAポリメラーゼの触媒サイクルが不完全である場合不完全な転写体の生成ももたらすT7RNAポリメラーゼ活性を測定する不利点がある(Martin C.T.et al.Biochemistry 27:3966−3974,1988)。放射活性を用いない代替方法が開発された。これらはRNAインターカレーターもしくは分子マーカーのような蛍光分子(Liu J.et al.Analytical Biochemistry,300:40−45,2002)または比色法(Lee et al.Bull.Korean Chem Soc 30(10):2485−2488,2009)を用いる。分子マーカーの使用に基づく方法は、完全な転写体の発現を特異的に測定し、小さな不完全転写体の生成をもたらすT7RNAポリメラーゼの不完全サイクルを考慮しないという利点を有する。
【0059】
この実施例では、T7RNAポリメラーゼのいくつかの変異体の比活性は分子マーカーを用いて測定される。測定方法の詳細、および用いられた異なる試薬を以下に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
溶液W:
緩衝液A、B、CおよびDを以下の割合に従って混合する:
10% 緩衝液A
1.8% 緩衝液B
7% 緩衝液C
35.7% 緩衝液D
45.6% 分子生物学用水。
【0062】
溶液S(基質混合):
70mM トリス−HCl、pH8.5
1.3mM dNTP
2.6mM rATP、rCTPおよびrUTP
2mM rGTP
0.6mM rITP
60mM サッカロース
40mM マンニトール
7g/L デキストランT−40
16mM MgCl2
320mM KCl
20mM DTT
3.5M DMSO
0.1μM〜0.3μM 分子マーカーMB1
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−マイナス
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−プラス
【0063】
用いられた配列(配向5’→3’):
【表3】
【0064】
T7RNAポリメラーゼ容量活性を測定するためのプロトコルを以下に記載する:
1. 1mg/mLの酵素溶液を得るため、T7RNAポリメラーゼ酵素を緩衝液A中に希釈する
2. 1mg/mLの酵素溶液5μLを溶液W39μL中に希釈する
3. 前述の溶液[2.]5μLを溶液W50μL中に希釈する
4. 前述の溶液[3.]25μLを溶液S75μLに添加する
5. 前述の溶液[4.]20μLを用い、活性を37℃で30分間測定する。
【0065】
分子マーカーの連関およびT7RNAポリメラーゼ活性により生成された転写体の蓄積により生成されたFAM蛍光を、bioMerieuxからのEASY−Q(商標)蛍光計を用いてモニターする。5〜10分の蛍光の線形増加は反応速度を計算することを可能にし、既知の容量活性を有する基準T7RNAポリメラーゼの使用により酵素の容量活性と直接相関させることができる。基準と変異体との間の速度の比は、未知の容量活性値を得ることを可能にする。T7RNAポリメラーゼ容量活性は酵素のkU/mLで表され、時間の単位(分)当たりおよび酵素容量の単位(ミリリットル)当たりの分子マーカーにより認識されるRNA転写体の量に対応する。変異体の比活性(SA)はkU/mgで表され、酵素タンパク質濃度による容量活性の標準化に対応する。
【0066】
容量活性の計算:
p
r=参照T7RNAポリメラーゼについて5〜10分で得られる勾配
p
x=T7RNAポリメラーゼ変異体について5〜10分で得られる勾配
A
r=参照T7RNAポリメラーゼの容量活性
A
x=変異T7RNAポリメラーゼの容量活性
A
x=(A
r*p
x)/p
r
【0067】
勾配のグロス値は計算された容量活性の最終値を許容するには0.3〜0.8でなければならない。この範囲外である場合、許容される測定値の範囲内にするため、初期試料を緩衝液1中で希釈しなければならない。
【0068】
T7RNAポリメラーゼ変異体の37℃での比活性測定の結果を表4に記載する:
【表4】
T3は変異S430P+F880Y+F849Iを含む三重変異体に対応し(本特許出願内では「T3」または「Q3」と称され)、Q4は四重変異体T3+S633Pに対応する。
【0069】
結論
よって、744位で変異させたT7RNAポリメラーゼ(Q744R、Q744PまたはQ744L)は、野生型T7RNAポリメラーゼの比活性と比較して増加した比活性を有する。変異S430P+F880Y+F849I(T3)、S430P+F880Y+F849I+C510R(T3+C510R)、S430P+F880Y+F849I+S767G(T3+S767G)、またはS430P+F880Y+F849I+C510R+S767G(T3+C510R+S767G)を含むT7RNAポリメラーゼは、それらの向上した半減期温度T
1/2のため増加した熱安定性(表7)だけでなく、表4に示すように低い比活性も示す。変異Q744Rをさらに含むこれらの同じT7RNAポリメラーゼは、持続的な熱安定性および非常に良好な比活性の両方を有する。よって、変異Q744Rは熱安定化変異により変わった比活性の向上、またはその回復を可能にする。
【0070】
(実施例3:異なる温度での10分の変性後のT7RNAポリメラーゼ変異体の半減期温度(T
1/2)の測定)
この実施例では、T7RNAポリメラーゼのいくつかの変異体のT
1/2値を測定する。測定方法の詳細、および用いられた異なる試薬を以下に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
溶液W1:
緩衝液B、CおよびDを以下の割合に従って混合する:
1.8% 緩衝液B
7% 緩衝液C
38.6% 緩衝液D
52.6% 分子生物学用水。
【0073】
溶液W2:
bioMerieux社により製造されるNuclisens EasyQ(商標)VIH−1 1.2キットからの試薬アキュスフィアを120μLの希釈液(キット番号、285036)および60μLの分子生物学用水中に希釈する。
【0074】
溶液W3:
1容量の溶液W1を3容量の溶液W2に混合する。
【0075】
溶液S(基質混合):
70mM トリス−HCl、pH8.5
1.3mM dNTP
2.6mM rATP、rCTPおよびrUTP
2mM rGTP
0.6mM rITP
60mM サッカロース
40mM マンニトール
7g/L デキストランT−40
16mM MgCl2
320mM KCl
20mM DTT
3.5M DMSO
0.1μM〜0.3μM 分子マーカーMB1
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−マイナス
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−プラス
【0076】
用いられた配列(配向5’→3’):
【表6】
【0077】
1. 評価する酵素を84kU/mLの容量活性を有するように希釈する
2. 評価する酵素の3μLを193μLの溶液3中に希釈する
3. [2.]の20μLを0.2mLチューブに分け入れ、サーモサイクラーにおいて10分間適温でインキュベートする
4. 酵素の残留活性と関連した5〜10分の蛍光増加速度を測定するため、プレインキュベートした混合物5μLを溶液S20μLに添加する
5. 各変異体の残留活性を、プレインキュベートされておらず、以下の計算:
p
N=プレインキュベートされていないT7RNAポリメラーゼについて5〜10分で得られる勾配
p
T=異なる温度でプレインキュベートされた変異体T7RNAポリメラーゼについて5〜10分で得られる勾配
%相対活性=%(p
T/p
N)
による100%活性に対応する、酵素の画分の割合として表す
6. T
1/2値は酵素がプレインキュベーションなしのその初期容量活性の50%のみを有する温度に対応する
【0078】
T7RNAポリメラーゼ変異体のT
1/2測定結果を表7に記載する:
【表7】
【0079】
結論
表7はよって記載された各種T7RNAポリメラーゼ変異体の熱安定性に対するQ744R変異の準中性を示すことを可能にする。この変異が熱安定性変異体に添加される場合、後者のT
1/2値は顕著に変わらない。また、C510RおよびS767Gの変異の熱安定化効果は、同じT3変異体において組み合わされる場合付加的であることに留意されたい。
【0080】
(実施例4:T7RNAポリメラーゼの向上した変異体でのNASBA等温増幅)
この実施例では、T7RNAポリメラーゼの向上したクローンを、41℃の参照温度より高い温度でのそれらの機能性を確認するため、bioMerieuxからのNASBA増幅VIH1 1.2のフレームワーク内で評価した。測定方法の詳細、および用いられた異なる試薬を以下に示す。
【0081】
【表8】
【0082】
溶液W1:
緩衝液B、CおよびDを以下の割合に従って混合する:
1.8% 緩衝液B
7% 緩衝液C
38.6% 緩衝液D
52.6% 分子生物学用水。
【0083】
溶液E:
溶液W116.4μLを25U/μLのAMV−RT3.14μL、1.2U/μLのRNAseH0.79μLおよび分子生物学用水4.49μLと混合する。この溶液を液体窒素中で直接冷凍し、凍結乾燥し、T7RNAポリメラーゼ活性を有さない酵素混合物を含有する球体(酵素球体)を生成する。
【0084】
NASBA HIV1 1.2増幅試験をB型VIH1転写体について、前述の溶液Eにより置換された酵素球体原料酵素を除いて、製造業者bioMerieuxの推奨に従って行う。
【0085】
用いられたプロトコルは以下のとおりであり、NASBA増幅反応に対応する:
1. HIV1 1.2キット(キット番号、285036)からの試薬球体を90μLの試薬希釈液中に溶解する
2. 溶液Eに対応する酵素球体を40.5μLの酵素希釈液中に溶解する。この溶液に、容量活性が70〜120kU/mLである、評価するT7RNAポリメラーゼ変異体4.5μLを添加する。
3. 5cp/反応または20cp/反応に対応するB型HIV転写体5μLを0.2μLチューブに入れる。試薬[1.]15μL、および酵素溶液[2.]5μLを次に添加する。
4. 反応をbioMerieuxからのEASYQ(商標)蛍光計において41℃以上で30分間行う。
【0086】
図1A〜1Hは、野生型T7RNAポリメラーゼ(WT)(
図1Aおよび1B)および各種変異体、試験当たり7つの複製物(
図1C〜1H)を用いて行われる41℃(1A、1C、1E、1G)および47℃(1B、1D、1F、1H)での等温増幅を示す。これらの蛍光曲線は、野生型T7RNAポリメラーゼと比較して高温でのNASBA等温増幅中に熱安定性T7RNAポリメラーゼ変異体を用いる利点を示す。
【0087】
【表9】