特許第5957531号(P5957531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957531
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】変異型RNAポリメラーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160714BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20160714BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12N9/12
   C12Q1/68
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-533943(P2014-533943)
(86)(22)【出願日】2012年10月8日
(65)【公表番号】特表2014-528730(P2014-528730A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】EP2012069886
(87)【国際公開番号】WO2013050609
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年8月11日
(31)【優先権主張番号】1159051
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(73)【特許権者】
【識別番号】509248165
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミ−ク エ オ エネルジー アルテルナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−クロード ブーラン
(72)【発明者】
【氏名】ジャニー ダッサ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ドゥカンセル
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ アシュ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】アラン トロエシュ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン メスタ
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/113718(WO,A1)
【文献】 特開2009−213497(JP,A)
【文献】 特開2009−213499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 1/00−7/08
C12N 9/00−9/99
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
744位で、グルタミン(Q)をアルギニン(Q744R)、ロイシン(Q744L)またはプロリン(Q744P)から選択されるアミノ酸により置換し、変異させたT7RNAポリメラーゼ。
【請求項2】
変異Q744Rを含む、請求項1に記載のRNAポリメラーゼ。
【請求項3】
変異F849I、F880YおよびS430Pを含む、請求項1または2に記載のRNAポリメラーゼ。
【請求項4】
変異C510Rを含む、請求項3に記載のRNAポリメラーゼ。
【請求項5】
変異S767Gを含む、請求項3または4に記載のRNAポリメラーゼ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子。
【請求項7】
請求項6に記載の遺伝子および適切な発現配列を含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターで形質転換させた、変異型RNAポリメラーゼを発現することができる細胞。
【請求項9】
核酸の転写増幅反応における請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAポリメラーゼの使用。
【請求項10】
前記核酸の転写増幅反応が核酸の等温転写増幅反応である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
−請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAポリメラーゼ、
−逆転写酵素活性を有する酵素
を含む、等温転写増幅反応に用いられる酵素の混合物。
【請求項12】
前記逆転写酵素活性を有する酵素がRNAseH活性も有する、請求項11に記載の酵素の混合物。
【請求項13】
配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの混合物。
【請求項14】
第1オリゴヌクレオチドおよび第2オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド対であって、前記オリゴヌクレオチド対が以下のオリゴヌクレオチド対:
−配列番号:3の第1オリゴヌクレオチドおよび配列番号:4の第2オリゴヌクレオチド、
−配列番号:5の第1オリゴヌクレオチドおよび配列番号:6の第2オリゴヌクレオチド、
−配列番号:7の第1オリゴヌクレオチドおよび配列番号:8の第2オリゴヌクレオチド
から選択される、オリゴヌクレオチド対。
【請求項15】
請求項6に記載の遺伝子を得るための、請求項13に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの混合物、または請求項14に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド対の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバクテリオファージT7変異型RNAポリメラーゼ、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
RNAの分子がRNAポリメラーゼによりDNAの二本鎖配列から合成される転写現象は基本的な生物学的メカニズムである。T7RNAポリメラーゼ酵素は、バクテリオファージT7のゲノムによりコードされるDNA依存性RNAポリメラーゼである。バクテリオファージのRNAポリメラーゼはそれ自体のプロモーター配列について高度な選択性を示す。T7RNAポリメラーゼは転写のテンプレートとして作用するDNA鎖のT7プロモーターと特異的に結合する。
【0003】
バクテリオファージT7の全ヌクレオチド配列は知られ、ファージのRNAポリメラーゼ(配列番号:16)はT7ポリメラーゼの遺伝子1(配列番号:1)によりコードされる。T7RNAポリメラーゼと同様の他のRNAポリメラーゼはバクテリオファージSP6およびT3のRNAポリメラーゼである。T3RNAポリメラーゼはT7RNAポリメラーゼと約80%の相同性を示す。T7ポリメラーゼの遺伝子1(配列番号:1)はクローン化し、細菌中で発現させ、大量の酵素の生成を可能にした(Stuidier et al.、米国特許第US4,952,496号)。T7ポリメラーゼは98.6Kdaの分子量を有する883のアミノ酸を持つ単量体タンパク質(配列番号:16参照)である。T7RNAポリメラーゼは転写を開始するための追加の要素を必要としない。酵素単独でそのプロモーターを認識し、転写を開始し、RNA転写体を延長することができる。T7RNAポリメラーゼはとくに効率的であり、大腸菌のRNAポリメラーゼより5倍速くRNAを合成する。よって、バクテリオファージのポリメラーゼは転写体の生成におけるそれらの選択性および活性のため非常に有用である(Lukavsky and Puglisi,RNA,10:889−893,2004)。
【0004】
T7型バクテリオファージのRNAポリメラーゼの特異的変異体については、とくにT7RNAポリメラーゼの酵素メカニズムを理解するため、以前に説明されている(Gardner et al.,Biochemistry,36:2908−2918,1997;Nayak et al.,JMB 371:490−500,2007)。特許文献国際公開第WO91/05866号は、細菌におけるクローン化遺伝子の転写を制御するT7バクテリオファージプロモーターを用いる発現のシステムについて記載する。システムは、T7RNAポリメラーゼについてコードする遺伝子での1つ以上のヌクレオチド欠失の存在により切断されたT7RNAポリメラーゼを用いる。これらの欠失はリーディングフレームのディフェージングを引き起こし、新たな終止コドンを形成する。米国特許第US5,385,834号も、222位におけるグルタミン酸のリシンによる置換により特徴づけられる、T7RNAポリメラーゼの変異体について記載する。この変異体はT7プロモーターの認識の変更を示し、野生型T7RNAポリメラーゼにより通常認識されないT7プロモーターの配列変動を認識する可能性をもたらす。
【0005】
Ikeda et al.(Ikeda,R.A.et al.Biochemistry,31:9073−9080,1992およびIkeda,R.A.et al.,Nucl.Acid.Res.,20:2517−2524,1992)は、T7RNAポリメラーゼの変異型プロモーター配列の認識効率を評価するのに用いることができる、2つの適合性プラスミドの使用について記載した。第1プラスミドは大腸菌tacプロモーターの制御下のT7RNAポリメラーゼからの遺伝子1を有し、第2プラスミドはT7プロモーターの制御下のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子についてコードする遺伝子を有する。これら2つのプラスミドを有する大腸菌細胞は、T7ポリメラーゼがT7プロモーターを認識し、第2プラスミドからCAT遺伝子を転写する場合、CAM(クロラムフェニコール)に耐性である。T7プロモーターまたはT7RNAポリメラーゼの一方または他方が不活性である場合、CAT遺伝子は転写されず、大腸菌細胞はCAMに感性となる。Ikeda et al.は、T7プロモーターまたはT7RNAポリメラーゼ酵素のいずれかにおける特定の変異の効果を研究するためのこの2プラスミドシステムの使用について記載した。
【0006】
ファージ由来のRNAポリメラーゼ(例えばT7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼおよびSP6RNAポリメラーゼ)を用いるインビトロ転写は、分子生物学において広く用いられる手段となった(Beckert and Masquida,Methods Mol Bio,703:29−41,2011)。第1用途は大量のRNA転写体を素早く生成するための手段としてのインビトロ転写単独である。第2用途は核酸増幅メカニズムにおけるRNAポリメラーゼの使用である。これらの方法は、例えば、NASBA、3SRおよびTMAである。インビトロ転写はまた、PCRによる増幅後の追加の線形増幅ステップであるPCRと組み合わせて記載されている(Compton,Nature,350(7):91−92,1991;Deiman et al.Molecular Biotechnology,20:163−179,2002;Gill and Ghaemi,Nucleosides,Nucleotides and nucleic acids,27:224−245,2008)。よって、本発明は診断の分野において好適な用途を有する。
【0007】
上に挙げた用途のすべてについて、より高い増幅温度の使用が有利であり、転写反応のキネティクスを向上させることができる。この利点は等温増幅(NASBA、3SRおよびTMA)についてさらにより顕著であり、よって構造型RNA標的の増幅効率を向上させる。転写反応キネティクスの向上が重要である用途は、長いRNA配列(>500ヌクレオチド)および多重反応の増幅に関する。
【0008】
よって、欧州特許文献第EP−B−1.137.781号は、T7型バクテリオファージ由来であり、高温に対する安定性が増加した、633位で変異させたRNAポリメラーゼについて記載する。
【0009】
同様に、欧州特許文献第EP−B−1.261.696号は、場合によっては前述の633位での変異と組み合わせた、とくに430、849または880位で変異させた熱安定性T7RNAポリメラーゼについて記載する。
【0010】
熱安定性の向上は、多くの場合比活性の低減により特徴づけられ、とくに構造における柔軟性の損失によりもたらされる(Daniel,R.M.Enzyme and Microbial Technology,19(1):74−79,1996;Eijsink et al.Biomolecular engineering,22:21−30,2005)。この文献に記載される熱安定性変異体は、野生型酵素と比較して大きく低減したRNA転写体合成の比活性を有する。本発明はこの不利点の解決策も提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,952,496号
【特許文献2】国際公開第91/05866号
【特許文献3】欧州特許第1,137,781号
【特許文献4】欧州特許第1,261,696号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lukavsky and Puglisi,RNA,10:889−893,2004
【非特許文献2】Gardner et al.,Biochemistry,36:2908−2918,1997
【非特許文献3】Nayak et al.,JMB 371:490−500,2007
【非特許文献4】Ikeda,R.A.et al.Biochemistry,31:9073−9080,1992
【非特許文献5】Ikeda,R.A.et al.,Nucl.Acid.Res.,20:2517−2524,1992
【非特許文献6】Beckert and Masquida,Methods Mol Bio,703:29−41,2011
【非特許文献7】Compton,Nature,350(7):91−92,1991
【非特許文献8】Deiman et al.Molecular Biotechnology,20:163−179,2002;Gill and Ghaemi,Nucleosides,Nucleotides and nucleic acids,27:224−245,2008
【非特許文献9】Daniel,R.M.Enzyme and Microbial Technology,19(1):74−79,1996
【非特許文献10】Eijsink et al.Biomolecular engineering,22:21−30,2005
【発明の概要】
【0013】
本発明による好適な変異型RNAポリメラーゼは、744位のグルタミン(Q)がアルギニン(Q744R)、ロイシン(Q744L)またはプロリン(Q744P)から選択されるアミノ酸により置換された、744位で変異させたT7RNAポリメラーゼである。こうした変異は一般式Q744Xにより表すことができ、式中、Xはアルギニン(R)、ロイシン(L)またはプロリン(P)から選択されるアミノ酸である。好適には、Xはアルギニン(R)を表し、744位のグルタミン(Q)がアルギニンにより置換されることを示す(Q744R)。
【0014】
1つの特定の実施形態では、T7RNAポリメラーゼは、変異Q744(Q744X)に加え、以下の変異の少なくとも1つを含む:F849I(849位におけるフェニルアラニンのイソロイシンによる置換)、F880(880位におけるフェニルアラニンのチロシンによる置換)、S430P(430位におけるセリンのプロリンによる置換)。
【0015】
驚くべきことに、特定の変異は、野生型RNAポリメラーゼの比活性と比較して増加した比活性を有する。
【0016】
1つの特定の実施形態では、T7RNAポリメラーゼは、変異Q744X、好適にはQ744R、F849I、F880YおよびS430Pを含む。
【0017】
別の特定の実施形態では、T7RNAポリメラーゼは、変異Q744X、好適にはQ744R、F849I、F880Y、S430PおよびS767G(767位におけるセリンのグリシンによる置換)を含む。
【0018】
別の特定の実施形態では、T7RNAポリメラーゼは、変異Q744X、好適にはQ744R、F849I、F880Y、S430PおよびC510R(510位におけるシステインのアルギニンによる置換)を含む。
【0019】
別の特定の実施形態では、T7RNAポリメラーゼは、変異Q744X、好適にはQ744R、F849I、F880Y、S430P、C510RおよびS767Gを含む。
【0020】
これらの変異型RNAポリメラーゼは従って、増加した熱安定性および非常に良好なレベルの比活性の両方を示す。実際、744位における変異は、熱安定化変異の存在により劣化した特定のレベルの活性を向上させる、または回復させることを可能にする。熱安定性の増加に寄与する他の変異はK713E、T745K、K392Mである。
【0021】
熱安定化する、および/または比活性を増加させる変異は、ランダム変異誘発により構築されたT7RNAポリメラーゼ変異体のライブラリーから、抑制変異の選択方法の連関および2プラスミドシステムの使用により、当業者に知られる技術に従って分離された(Kotsuka,T.et al.,J.Bacteriology,178(3),p.723−727,1996.Hirano,N.et al.Biochemistry,39,p.13285−13294,2000;Ikeda,R.A.et al.Biochemistry,31,p.9073−9080,1992;Ikeda,R.A.et al.Nucleic Acid Research,20,p.2517−2524,1992)。
【0022】
本発明は、本発明により変異させたT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子にも関する。
【0023】
さらに、本発明は、本発明により変異させたT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子および適切な発現配列を含む発現ベクターにも関する。
【0024】
遺伝子を発現させるため、遺伝子は、前記遺伝子によりコードされるタンパク質を発現させることを可能にする制御およびプロモーター配列の制御下に置く。これは一般的には、これら制御およびプロモーター配列の下流に発現させる遺伝子をクローン化することにより行われる。これらの配列はその天然形態の遺伝子と結合したプロモーター配列であってもよい。変異体に応じて、これらは非相同性プロモーターであってもよい。非相同性プロモーターの使用の利点は、それらが遺伝子の天然プロモーターを認識しない宿主細胞において遺伝子を発現させる可能性を提供することである。さらに、非相同性プロモーターは、遺伝子の発現をいずれかの所望の瞬間に刺激することができるような、誘導性のプロモーターであってもよい。
【0025】
プロモーター配列は、転写の開始時、RNAポリメラーゼが結合する配列である。プロモーター配列は由来する細胞のタイプによって決まる。プロモーター配列は、原核生物、真核生物およびウィルス由来のプロモーターについて表されている。遺伝子組み換えDNA分子は、例えば、所定のDNAフラグメントを適切な制限酵素で切断し、制御およびプロモーター配列を含有するフラグメントを同じ酵素で切断し、2つのフラグメントを発現させる核酸配列、すなわち本発明によるT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子がプロモーター配列により制御されるように結合することにより得ることができる。有用な組み換え体を生成するための多数の方法はSambrook(Sambrook et al.,Molecular cloning,a laboratory manual.Cold Spring Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))に記載されている。
【0026】
一般的には、組み換え核酸配列はいわゆるベクター分子においてクローン化される。こうして形成された組み換えベクター分子は、多くの場合適切な宿主細胞において自己複製でき、クローン化核酸配列を細胞中に移動させるのに用いることができる。これはその内部で組み換えベクター分子の複製が行われる細胞であってもよい。これはまた、その内部でベクターのプロモーターおよび制御配列が本発明により変異させたRNAポリメラーゼが発現するように認識される細胞であってもよい。細菌、例えば、Pbr322、325および328に用いるためのベクター、各種pUCベクター、例えばpUC8、9、18、19、特異的発現ベクター:pGEM、pGEX、およびBluescript(登録商標)、バクテリオファージ;λ−gtWes、Charon28、M13由来ファージをベースとするベクター、SV40、パピローマウィルス、アデノウィルスまたはポリオーマウィルスをベースとするウィルス配列を含有する真核生物細胞における、発現ベクターを含む、広範囲のベクターが現在知られている(Rodriques,R.L.and Denhardt,D.T.,ed;Vectors:A survey of molecular cloning vectors and their uses,Butterworths(1988),Lenstra et al.,Arch.Virol.;110:1−24(1990))。変異型RNAポリメラーゼの発現を可能にする制御およびプロモーター配列により制御される核酸配列を含む組み換え分子のすべては本発明の一部と考えられる。
【0027】
本発明は、本発明により変異させたRNAポリメラーゼについてコードする核酸配列を含む宿主もしくは形質転換細胞、または変異型RNAポリメラーゼの発現を可能にする制御およびプロモーター配列により制御される変異型RNAポリメラーゼについてコードする組み換え核酸の分子をさらに含む。
【0028】
よく用いられる発現システムは、細菌、酵母、真菌、昆虫および哺乳類からの細胞の発現システムである。これらのシステムは当業者に周知であり、例えばClontech Laboratories,Inc.4030 Fabian Way,Palo Alto,California,94303−4607,USAから市場で容易に入手可能である。
【0029】
宿主細胞は、pBR322のような細菌をベースとするベクター、pGEXのような細菌発現ベクター、またはバクテリオファージと組み合わせた、例えば大腸菌、枯草菌および乳酸菌種の細菌細胞であってもよい。宿主細胞はまた真核生物由来、例えば、酵母の特異的ベクター分子と組み合わせた酵母細胞、またはベクターもしくは組み換えバキュロウィルスと組み合わせた昆虫細胞のような高等真核生物細胞(Luckow et al.;Biotechnology 6:47−55(1988))、例えば、Tiプラスミドもしくは植物ウィルスベクターをベースとするベクターと組み合わせた植物細胞(Barton,K.A.et al.;Cell 32:1033(1983))、同様に適切な組み換えベクターもしくはウィルスと組み合わせた、ヒーラー細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)もしくはクランデルフェリン腎細胞のような哺乳類細胞であってもよい。
【0030】
よって、本発明によるRNAポリメラーゼについてコードする遺伝子ならびに適切な発現プロモーターおよび制御配列を含む発現ベクターも、これらで形質転換させた宿主細胞も、本発明の一部である。
【0031】
本発明による変異型RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼが普通にまたは高温で用いられるすべてのプロセスにおいて用途を有する。本発明によるRNAポリメラーゼの使用は、向上した安定性および特異性が得られるという利点を提供する。
【0032】
本発明による変異型RNAポリメラーゼは、核酸転写による等温増幅のプロセスにおいてとくに有用である。
【0033】
転写による増幅の技術は、RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターを含むテンプレートからの複数のRNAコピーの転写を含む。これらの方法で、複数のRNAコピーがRNAポリメラーゼにより認識される機能性プロモーターを含むDNAテンプレートから転写される。前記コピーはさらなる量のDNAテンプレートが得られる標的、等として用いられる。これらの方法はGingeras et al.により国際特許出願第WO88/10315号、およびBurg et al.により国際特許出願第WO89/1050号に記載されている。転写による等温増幅の技術は、Davey et al.により欧州特許第EP−B−0.329.822号(NASBA法に関する)、Gringeras et al.により欧州特許第EP−B−0.373.960号、およびKacian et al.により欧州特許第EP−B−0.408.295号に記載された。転写増幅反応は熱安定性酵素を用いて行うこともできる。転写増幅は一般的には約37〜41℃の温度で行われる。これらの熱安定性酵素はより高温(>41℃)で反応を行うことを可能にする。こうした熱安定性方法は東洋紡績の名義で出願された欧州特許第EP−B−0.682.121号に記載されている。
【0034】
欧州特許第EP−B−0.329.822号、第EP−B−0.373.960号および第EP−B−0.408.295号に記載される方法は連続等温方法である。これらの方法では、増幅を行うのに4つの酵素活性を要する:RNA依存性DNAポリメラーゼ活性、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性、RNase(H)活性およびRNAポリメラーゼ活性。これらの活性のいくつかは1つの酵素中で組み合わせることができ、従って、一般的には、2つまたは3つの酵素のみが必要となる。RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素はRNAテンプレートからDNAを合成する酵素である。DNA依存性DNAポリメラーゼはDNAテンプレートからDNAを合成する。転写増幅反応では、AMV(トリ骨髄芽球腫ウィルス)またはMMLV(モロニーマウス白血病ウィルス)逆転写酵素のような逆転写酵素をこれらの活性に用いることができる。これらの酵素は、RNAおよびDNA依存性の両方であり、固有のRNaseH活性も示すDNAポリメラーゼ活性を有する。さらに、RNaseHは、RNaseHおよび大腸菌のような、転写増幅反応の反応混合物に添加することができる。
【0035】
転写増幅方法で一般的に用いられるRNAポリメラーゼはT7RNAポリメラーゼである。よって、複数のRNAコピーの転写に用いられるテンプレートに組み入れられるプロモーターはT7プロモーターであることが多い。一般的には、プロモーターを含むテンプレートは標的配列を含む核酸を出発材料として作成される。出発材料中に存在する核酸は一般的にはもっと長い配列の一部として標的配列を含有する。追加の核酸配列は標的配列の3’末端および5’末端上に存在していてもよい。増幅反応は、出発材料中に存在するこの核酸、前述の活性および少なくとも1つだが、一般的には2つのオリゴヌクレオチドを併せて提供する適切な酵素を結合することにより刺激してもよい。これらのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つはプロモーター配列を含んでいなければならない。
【0036】
転写増幅方法は出発材料が一本鎖RNAである場合とくに有用であるが、一本鎖または二本鎖DNAも投入材料として用いてもよい。転写増幅方法が標的配列の3’および5’末端上に追加配列を有する一本鎖RNA(「プラス」センス)を有する試料について行われる場合、従来技術において記載されるような方法で適切に用いられるオリゴヌクレオチド対は以下で構成される:
−標的配列の3’末端でのハイブリッド形成が可能な(一般的には「プロモーターオリゴヌクレオチド」と称される)第1オリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドはその5’末端と結合したプロモーターの(好適にはT7プロモーターの)配列を有する、第1オリゴヌクレオチド(このオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成部分は出発材料として用いられるRNAプラスのそれと反対の極性を有する)、
−標的配列の3’末端で構成される第2オリゴヌクレオチド(「プライマー」)(このオリゴヌクレオチドはRNAプラスと同じ極性を有する)。
【0037】
(適切な活性の酵素すべてとともに)オリゴヌクレオチド対ならびに必要なリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの十分な供給が反応媒体中に一緒に提供され、適切な条件下(すなわち適切な緩衝液条件下、および適切な温度)に十分な時間保たれる場合、連続および等温増幅反応が起こる。
【0038】
本発明の別の目的は、従って、好適には定方向変異誘発により、本発明により変異させたT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子を得、従って本発明により変異させたT7RNAポリメラーゼを最終的に生成するための、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、または配列番号:8の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチドの混合物)に関する。
【0039】
好適には、(プライマーとして使用可能な)上記オリゴヌクレオチドは、対(センスオリゴヌクレオチド/アンチセンスオリゴヌクレオチド)で用いられ、本発明は従って、第1オリゴヌクレオチドおよび第2オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド対に関し、前記オリゴヌクレオチド対は以下のオリゴヌクレオチド対から選択される:
−配列番号:3の第1オリゴヌクレオチドおよび配列番号:4の第2オリゴヌクレオチド(変異Q744Rを生成するのを可能にする)、
−配列番号:5の第1オリゴヌクレオチドおよび配列番号:6の第2オリゴヌクレオチド(変異Q744Lを生成するのを可能にする)、
−配列番号:7の第1オリゴヌクレオチドおよび配列番号:8の第2オリゴヌクレオチド(変異Q744Pを生成するのを可能にする)。
【0040】
好適には、T7RNAポリメラーゼの変異体は、例えば直接pMR−7cas由来ベクター上での定方向変異誘発により、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、または好適には、本発明による少なくとも1つのオリゴヌクレオチド対を用いることにより構築される。
【0041】
有利なことには、これらの変異体を生成するのに用いられる方法はStratagene(Ref.200518)からのQuickchange(登録商標)キットのプロトコルにより記載されたものであり、Stratageneからのpfu Ultra HFポリメラーゼを用いて行われる。
【0042】
本発明は、本発明により変異させたT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子を(好適には定方向変異誘発により)得、従って本発明により変異させたT7RNAポリメラーゼを最終的に生成するための、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、または好適には、本発明による少なくとも1つのオリゴヌクレオチド対の使用にも関する。
【0043】
本発明によるRNAポリメラーゼは核酸の増幅の他のプロセスとともに用いることもできる。ポリメラーゼ鎖増幅(PCR)では、バクテリオファージRNAポリメラーゼのプロモーター配列、とくにT7RNAポリメラーゼプロモーター配列が組み入れられたプライマーが用いられることがある。これはPCR反応のDNA生成物を形成するRNAの転写を可能にする。ここで再度、本発明によるRNAポリメラーゼを用いることもできる。
【0044】
よって、本発明により提案されるようなRNAポリメラーゼを含む転写等温増幅反応に用いるための酵素、逆転写酵素活性を有する1つの酵素およびRNaseH活性を有する1つの酵素の混合物も、本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A】野生型T7RNAポリメラーゼを用いる41℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(5cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
図1B】野生型T7RNAポリメラーゼを用いる47℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(20cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
図1C】T7RNAポリメラーゼQ3+Q744Rを用いる41℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(20cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
図1D】T7RNAポリメラーゼQ3+Q744Rを用いる47℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(20cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
図1E】T7RNAポリメラーゼQ3+Q744R+C510Rを用いる41℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(20cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
図1F】T7RNAポリメラーゼQ3+Q744R+C510Rを用いる47℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(20cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
図1G】T7RNAポリメラーゼQ3+Q744R+S767Gを用いる41℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(20cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
図1H】T7RNAポリメラーゼQ3+Q744R+S767Gを用いる47℃でのNASBA増幅HIV1 1.2(20cp VIH1−B/試験;7つの技術的複製物)である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明について以下の実施例によりさらに例示する。
【実施例】
【0047】
(実施例1:T7RNAポリメラーゼ変異体の生成および精製方法)
1/組み換えT7RNAポリメラーゼタンパク質の発現のためのプラスミド構築物
T7RNAポリメラーゼの発現プラスミドはベクターpMR−7casの誘導体である(Arnaud et al.1997,Gene 199:149−156)。
【0048】
対象の組み換えタンパク質についてコードするDNA配列をpMR−7cas由来の発現ベクター中BamHIおよびXbaI制限部位間に導入した。
【0049】
ポリヒスチジン配列(6×His)はT7RNAポリメラーゼのN末端位に存在し、金属キレート親和性カラム上で精製することを可能する。これはその後組み換えタンパク質精製ステップを促進することを可能にするNi−NTAゲル上の結合領域である。このペプチドHHHHHHは配列CACCATCACCATCACCAC(配列番号:2)によりコードされる。
【0050】
NCBIエントリー番号NC001604により表される配列に対応するT7RNAポリメラーゼの遺伝子1の野生型配列は配列番号:1である。
【0051】
2/T7RNAポリメラーゼの単一および複合変異体の生成方法
T7RNAポリメラーゼの変異体を定方向変異誘発により直接pMR−7−cas由来ベクター上に構築した。
【0052】
単一および複合変異体を生成するのに用いられる方法は、Stratagene(Ref.200518)からのQuickchange(登録商標)キットのプロトコルにより記載され、Stratageneからのpfu Ultra HFポリメラーゼを用いて行われる。
【0053】
変異体Q744R、Q744P、C510RおよびS767Gを生成するのに用いられるオリゴヌクレオチドは以下である:
【表1】
【0054】
複合変異体は繰り返しまたはT7RNAポリメラーゼ配列のフラグメントの置換により得られる。
【0055】
3/T7RNAポリメラーゼの組み換えタンパク質の発現:
T7RNAポリメラーゼの変異体配列を含むプラスミド構築物を、当業者に知られる従来のプロトコルに従って大腸菌細菌(BL21株)を形質転換するのに用いられるpMR−7−cas由来の発現ベクター中に挿入する(Molecular Cloning−A laboratory−1.74,1989,Sambrook Joseph,EF.Fritsch,T.Maniatis 2nd Edition,ISBN 0−87969−309−6)。
【0056】
形質転換された細菌はpMR−7−cas由来のベクターが有するアンピシリンに対するそれらの耐性のために選択される。組み換えタンパク質の生成プロトコルを以下に記載する:
1. コロニーを100mg/mLのアンピシリンを含有する10mLのルリアブロス(LB)培地に30℃で16時間、220rpmで撹拌しながら接種する(前培養)
2. 3.3mLの前培養物を用い、200mLのLB培地に播種し、600nmでの最終OD0.07〜0.09を得る。培地を次に37℃で撹拌(220rpm)しながら成長させる
3. 培養の600nmでのODが0.4〜0.6の値に達したら、T7RNAポリメラーゼ組み換えタンパク質の過剰発現を最終濃度0.4mMのIPTGの添加により誘発する。培地を次に4時間37℃で撹拌(220rpm)する。
【0057】
4/T7RNAポリメラーゼ変異体の精製方法
1. 200mLの大腸菌培養物を遠心分離(20分、4℃、6000g)し、得られたバイオマスを10mLの溶解緩衝液(50mM トリス−HCl pH8.0、300mM NaCl)に懸濁させる
2. 前述の細胞懸濁液を5回の各30秒の超音波処理サイクルにより溶解する
3. ステップ[2.]からの溶解物を22000gで2分間、4℃で遠心分離する
4. 前述の浮遊物を金属キレートカラム上での親和性クロマトグラフィーにより精製する。これを行うため、予め周囲温度の同じ溶解緩衝液でバランスをとった1mLのNi−NTAカラム(His Trap(商標)、GE Healthcare、ref.17−5247)上に堆積させる。カラムを次に10mLの同じ緩衝液で洗浄する。組み換えタンパク質の溶出物を、5mLの溶出緩衝液(50mM トリス−HCl pH8.0、200mM NaCl、200mM イミダゾール)を適用し、0.5mLの画分を回収することにより得る
5. 組み換えタンパク質の生成レベルおよび純度をSDS−PAGE10%ゲル上での分析およびクマシーブルーでの染色により制御する
6. 精製されたT7RNAポリメラーゼタンパク質の濃度の測定を、Bradfordにより記載される方法に従い、BioRadからのBradford Quick Start(商標)キットを用いて行う(Bradford,M.M.1976,“Rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein−dye binding”,Anal.Biochem.72:248−254)。組み換えタンパク質濃度を測定するのに用いられる基準はBSAである
7. 組み換えタンパク質を含有する画分を7kDaのZeba(商標)脱塩スピンカラム(Thermoscientific、ref.89882)上で脱塩し、保存緩衝液(20mM KH2PO4/K2HPO4 pH7.5、100mM NaCl、1M トレハロース、1mM EDTA、0.268% v/v トリトンX−100、0.1mg/mL BSA、1mM DTT)中に溶解させる。各精製T7RNAポリメラーゼ変異体を−80℃で保存する。
【0058】
(実施例2:T7RNAポリメラーゼ変異体の比活性の測定)
転写メカニズムの測定方法は従来、新たに形成された転写体への放射活性の組み込みを時間とともにモニタリングすることに基づく(Martin C.T.and Coleman E.Biochemistry,26:2690−2696,1987)。この方法には、完全な転写体の生成だけでなく、T7RNAポリメラーゼの触媒サイクルが不完全である場合不完全な転写体の生成ももたらすT7RNAポリメラーゼ活性を測定する不利点がある(Martin C.T.et al.Biochemistry 27:3966−3974,1988)。放射活性を用いない代替方法が開発された。これらはRNAインターカレーターもしくは分子マーカーのような蛍光分子(Liu J.et al.Analytical Biochemistry,300:40−45,2002)または比色法(Lee et al.Bull.Korean Chem Soc 30(10):2485−2488,2009)を用いる。分子マーカーの使用に基づく方法は、完全な転写体の発現を特異的に測定し、小さな不完全転写体の生成をもたらすT7RNAポリメラーゼの不完全サイクルを考慮しないという利点を有する。
【0059】
この実施例では、T7RNAポリメラーゼのいくつかの変異体の比活性は分子マーカーを用いて測定される。測定方法の詳細、および用いられた異なる試薬を以下に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
溶液W:
緩衝液A、B、CおよびDを以下の割合に従って混合する:
10% 緩衝液A
1.8% 緩衝液B
7% 緩衝液C
35.7% 緩衝液D
45.6% 分子生物学用水。
【0062】
溶液S(基質混合):
70mM トリス−HCl、pH8.5
1.3mM dNTP
2.6mM rATP、rCTPおよびrUTP
2mM rGTP
0.6mM rITP
60mM サッカロース
40mM マンニトール
7g/L デキストランT−40
16mM MgCl2
320mM KCl
20mM DTT
3.5M DMSO
0.1μM〜0.3μM 分子マーカーMB1
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−マイナス
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−プラス
【0063】
用いられた配列(配向5’→3’):
【表3】
【0064】
T7RNAポリメラーゼ容量活性を測定するためのプロトコルを以下に記載する:
1. 1mg/mLの酵素溶液を得るため、T7RNAポリメラーゼ酵素を緩衝液A中に希釈する
2. 1mg/mLの酵素溶液5μLを溶液W39μL中に希釈する
3. 前述の溶液[2.]5μLを溶液W50μL中に希釈する
4. 前述の溶液[3.]25μLを溶液S75μLに添加する
5. 前述の溶液[4.]20μLを用い、活性を37℃で30分間測定する。
【0065】
分子マーカーの連関およびT7RNAポリメラーゼ活性により生成された転写体の蓄積により生成されたFAM蛍光を、bioMerieuxからのEASY−Q(商標)蛍光計を用いてモニターする。5〜10分の蛍光の線形増加は反応速度を計算することを可能にし、既知の容量活性を有する基準T7RNAポリメラーゼの使用により酵素の容量活性と直接相関させることができる。基準と変異体との間の速度の比は、未知の容量活性値を得ることを可能にする。T7RNAポリメラーゼ容量活性は酵素のkU/mLで表され、時間の単位(分)当たりおよび酵素容量の単位(ミリリットル)当たりの分子マーカーにより認識されるRNA転写体の量に対応する。変異体の比活性(SA)はkU/mgで表され、酵素タンパク質濃度による容量活性の標準化に対応する。
【0066】
容量活性の計算:
=参照T7RNAポリメラーゼについて5〜10分で得られる勾配
=T7RNAポリメラーゼ変異体について5〜10分で得られる勾配
=参照T7RNAポリメラーゼの容量活性
=変異T7RNAポリメラーゼの容量活性
=(A)/p
【0067】
勾配のグロス値は計算された容量活性の最終値を許容するには0.3〜0.8でなければならない。この範囲外である場合、許容される測定値の範囲内にするため、初期試料を緩衝液1中で希釈しなければならない。
【0068】
T7RNAポリメラーゼ変異体の37℃での比活性測定の結果を表4に記載する:
【表4】
T3は変異S430P+F880Y+F849Iを含む三重変異体に対応し(本特許出願内では「T3」または「Q3」と称され)、Q4は四重変異体T3+S633Pに対応する。
【0069】
結論
よって、744位で変異させたT7RNAポリメラーゼ(Q744R、Q744PまたはQ744L)は、野生型T7RNAポリメラーゼの比活性と比較して増加した比活性を有する。変異S430P+F880Y+F849I(T3)、S430P+F880Y+F849I+C510R(T3+C510R)、S430P+F880Y+F849I+S767G(T3+S767G)、またはS430P+F880Y+F849I+C510R+S767G(T3+C510R+S767G)を含むT7RNAポリメラーゼは、それらの向上した半減期温度T1/2のため増加した熱安定性(表7)だけでなく、表4に示すように低い比活性も示す。変異Q744Rをさらに含むこれらの同じT7RNAポリメラーゼは、持続的な熱安定性および非常に良好な比活性の両方を有する。よって、変異Q744Rは熱安定化変異により変わった比活性の向上、またはその回復を可能にする。
【0070】
(実施例3:異なる温度での10分の変性後のT7RNAポリメラーゼ変異体の半減期温度(T1/2)の測定)
この実施例では、T7RNAポリメラーゼのいくつかの変異体のT1/2値を測定する。測定方法の詳細、および用いられた異なる試薬を以下に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
溶液W1:
緩衝液B、CおよびDを以下の割合に従って混合する:
1.8% 緩衝液B
7% 緩衝液C
38.6% 緩衝液D
52.6% 分子生物学用水。
【0073】
溶液W2:
bioMerieux社により製造されるNuclisens EasyQ(商標)VIH−1 1.2キットからの試薬アキュスフィアを120μLの希釈液(キット番号、285036)および60μLの分子生物学用水中に希釈する。
【0074】
溶液W3:
1容量の溶液W1を3容量の溶液W2に混合する。
【0075】
溶液S(基質混合):
70mM トリス−HCl、pH8.5
1.3mM dNTP
2.6mM rATP、rCTPおよびrUTP
2mM rGTP
0.6mM rITP
60mM サッカロース
40mM マンニトール
7g/L デキストランT−40
16mM MgCl2
320mM KCl
20mM DTT
3.5M DMSO
0.1μM〜0.3μM 分子マーカーMB1
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−マイナス
10nM〜20nM オリゴヌクレオチドT7−プラス
【0076】
用いられた配列(配向5’→3’):
【表6】
【0077】
1. 評価する酵素を84kU/mLの容量活性を有するように希釈する
2. 評価する酵素の3μLを193μLの溶液3中に希釈する
3. [2.]の20μLを0.2mLチューブに分け入れ、サーモサイクラーにおいて10分間適温でインキュベートする
4. 酵素の残留活性と関連した5〜10分の蛍光増加速度を測定するため、プレインキュベートした混合物5μLを溶液S20μLに添加する
5. 各変異体の残留活性を、プレインキュベートされておらず、以下の計算:
=プレインキュベートされていないT7RNAポリメラーゼについて5〜10分で得られる勾配
=異なる温度でプレインキュベートされた変異体T7RNAポリメラーゼについて5〜10分で得られる勾配
%相対活性=%(p/p
による100%活性に対応する、酵素の画分の割合として表す
6. T1/2値は酵素がプレインキュベーションなしのその初期容量活性の50%のみを有する温度に対応する
【0078】
T7RNAポリメラーゼ変異体のT1/2測定結果を表7に記載する:
【表7】
【0079】
結論
表7はよって記載された各種T7RNAポリメラーゼ変異体の熱安定性に対するQ744R変異の準中性を示すことを可能にする。この変異が熱安定性変異体に添加される場合、後者のT1/2値は顕著に変わらない。また、C510RおよびS767Gの変異の熱安定化効果は、同じT3変異体において組み合わされる場合付加的であることに留意されたい。
【0080】
(実施例4:T7RNAポリメラーゼの向上した変異体でのNASBA等温増幅)
この実施例では、T7RNAポリメラーゼの向上したクローンを、41℃の参照温度より高い温度でのそれらの機能性を確認するため、bioMerieuxからのNASBA増幅VIH1 1.2のフレームワーク内で評価した。測定方法の詳細、および用いられた異なる試薬を以下に示す。
【0081】
【表8】
【0082】
溶液W1:
緩衝液B、CおよびDを以下の割合に従って混合する:
1.8% 緩衝液B
7% 緩衝液C
38.6% 緩衝液D
52.6% 分子生物学用水。
【0083】
溶液E:
溶液W116.4μLを25U/μLのAMV−RT3.14μL、1.2U/μLのRNAseH0.79μLおよび分子生物学用水4.49μLと混合する。この溶液を液体窒素中で直接冷凍し、凍結乾燥し、T7RNAポリメラーゼ活性を有さない酵素混合物を含有する球体(酵素球体)を生成する。
【0084】
NASBA HIV1 1.2増幅試験をB型VIH1転写体について、前述の溶液Eにより置換された酵素球体原料酵素を除いて、製造業者bioMerieuxの推奨に従って行う。
【0085】
用いられたプロトコルは以下のとおりであり、NASBA増幅反応に対応する:
1. HIV1 1.2キット(キット番号、285036)からの試薬球体を90μLの試薬希釈液中に溶解する
2. 溶液Eに対応する酵素球体を40.5μLの酵素希釈液中に溶解する。この溶液に、容量活性が70〜120kU/mLである、評価するT7RNAポリメラーゼ変異体4.5μLを添加する。
3. 5cp/反応または20cp/反応に対応するB型HIV転写体5μLを0.2μLチューブに入れる。試薬[1.]15μL、および酵素溶液[2.]5μLを次に添加する。
4. 反応をbioMerieuxからのEASYQ(商標)蛍光計において41℃以上で30分間行う。
【0086】
図1A〜1Hは、野生型T7RNAポリメラーゼ(WT)(図1Aおよび1B)および各種変異体、試験当たり7つの複製物(図1C〜1H)を用いて行われる41℃(1A、1C、1E、1G)および47℃(1B、1D、1F、1H)での等温増幅を示す。これらの蛍光曲線は、野生型T7RNAポリメラーゼと比較して高温でのNASBA等温増幅中に熱安定性T7RNAポリメラーゼ変異体を用いる利点を示す。
【0087】
【表9】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]