特許第5957538号(P5957538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許5957538-空気調和機 図000002
  • 特許5957538-空気調和機 図000003
  • 特許5957538-空気調和機 図000004
  • 特許5957538-空気調和機 図000005
  • 特許5957538-空気調和機 図000006
  • 特許5957538-空気調和機 図000007
  • 特許5957538-空気調和機 図000008
  • 特許5957538-空気調和機 図000009
  • 特許5957538-空気調和機 図000010
  • 特許5957538-空気調和機 図000011
  • 特許5957538-空気調和機 図000012
  • 特許5957538-空気調和機 図000013
  • 特許5957538-空気調和機 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957538
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/00 20060101AFI20160714BHJP
   F25B 41/00 20060101ALI20160714BHJP
   F24F 1/00 20110101ALI20160714BHJP
【FI】
   F25B39/00 E
   F25B41/00 C
   F24F1/00 391C
   F24F1/00 391B
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-549700(P2014-549700)
(86)(22)【出願日】2012年11月29日
(86)【国際出願番号】JP2012080918
(87)【国際公開番号】WO2014083651
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】薛 シュン
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−049671(JP,A)
【文献】 特開昭56−053359(JP,A)
【文献】 特開2002−303468(JP,A)
【文献】 特開2008−215785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/00
F24F 1/00
F25B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧装置と、
前記減圧装置で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を少なくとも備え、
前記蒸発器は、
少なくとも一部が鉛直方向の上下に分割された複数の冷媒流路と、
前記複数の冷媒流路の両端のうちの一方に冷媒を前記複数の冷媒流路に分流させる分配器と、
前記複数の冷媒流路の両端のうちの他方に前記複数の冷媒流路を流れる冷媒を合流させる合流器と、
前記複数の冷媒流路を連通させる連通路と、を有し、
前記冷媒流路は、水平方向に延びて熱交換を行う伝熱流路と、前記伝熱流路から出て他の前記伝熱流路に戻る曲がり流路とを有し、
前記連通路は、前記冷媒流路の途中で前記曲がり流路の外周側の面と連通していることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧装置と、
前記減圧装置で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を少なくとも備え、
前記蒸発器は、
少なくとも一部が鉛直方向の上下に分割された複数の冷媒流路と、
前記複数の冷媒流路の両端のうちの一方に冷媒を前記複数の冷媒流路に分流させる分配器と、
前記複数の冷媒流路の両端のうちの他方に前記複数の冷媒流路を流れる冷媒を合流させる合流器と、
前記複数の冷媒流路を連通させる連通路と、を有し、
前記冷媒流路は、水平方向に延びて熱交換を行う伝熱流路と、前記伝熱流路から出て他の前記伝熱流路に戻る曲がり流路とを有し、
前記連通路は、前記冷媒流路の途中で前記曲がり流路の冷媒下流側の直後の外周側の面と連通していることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
前記連通路は、前記冷媒流路の前記分配器から略同じ距離に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記連通路は、高さの異なる冷媒流路との間に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記連通路は、互いの前記冷媒流路の圧力差が大きくなる位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多パス型の熱交換器を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の冷媒流路の細径化に伴い、冷媒側の流動損失が増大するため、冷媒流路を多パス化することで損失を低減することが行われている。また、蒸発器として機能する熱交換器では、多パス化した場合であっても、気液二相状態の冷媒の分配が適切でないと、空気調和機の性能が低下する問題がある。このような問題を解決する技術として、特許文献1では、複数のパスに分割された冷媒管(冷媒流路)の途中に各冷媒管を流れる冷媒を一旦合流させた直後に再び分流させる分流管を設ける技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−313115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、パスを空気の流れる方向に対して前後(上流側と下流側)に分割しているため、前側(空気の流れ方向上流側)に位置するパスには暖かい空気が流れ、後側(空気の流れ方向下流側)に位置するパスには前側で冷やされた空気が流れ、効率的に熱交換を行うことができなかった。
【0005】
そこで、熱交換器の冷媒流路を、空気の流れる方向に対し前後ではなく上下に分割すると、上下に離れた冷媒管に分配管(分流管)を設けた場合、分配管が水平ではないため重力の影響により冷媒を均等に分配できず、蒸発器としての熱交換性能を改善できない問題がある。
【0006】
本発明は、前記した従来の問題を解決するためになされたものであり、蒸発器本来の熱交換能力を発揮させて、高性能な空気調和機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧装置と、前記減圧装置で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を少なくとも備え、前記蒸発器は、少なくとも一部が鉛直方向の上下に分割された複数の冷媒流路と、前記複数の冷媒流路の両端のうちの一方に冷媒を前記複数の冷媒流路に分流させる分配器と、前記複数の冷媒流路の両端のうちの他方に前記複数の冷媒流路を流れる冷媒を合流させる合流器と、前記複数の冷媒流路を連通させる連通路と、を有し、前記冷媒流路は、水平方向に延びて熱交換を行う伝熱流路と、前記伝熱流路から出て他の前記伝熱流路に戻る曲がり流路とを有し、前記連通路は、前記冷媒流路の途中で前記曲がり流路の外周側の面と連通していることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧装置と、前記減圧装置で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を少なくとも備え、前記蒸発器は、少なくとも一部が鉛直方向の上下に分割された複数の冷媒流路と、前記複数の冷媒流路の両端のうちの一方に冷媒を前記複数の冷媒流路に分流させる分配器と、前記複数の冷媒流路の両端のうちの他方に前記複数の冷媒流路を流れる冷媒を合流させる合流器と、前記複数の冷媒流路を連通させる連通路と、を有し、前記冷媒流路は、水平方向に延びて熱交換を行う伝熱流路と、前記伝熱流路から出て他の前記伝熱流路に戻る曲がり流路とを有し、前記連通路は、前記冷媒流路の途中で前記曲がり流路の冷媒下流側の直後の外周側の面と連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蒸発器本来の熱交換能力を発揮させて、高性能な空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】空気調和機を示す全体構成図である。
図2】空気調和機の熱交換器の概略を示す分解斜視図である。
図3】第1実施形態に係る熱交換器を示す斜視図である。
図4】蒸発器内の冷媒の温度変化を示し、(a)は均等分配時の温度変化を示すグラフ、(b)は不均等分配時の温度変化を示すグラフである。
図5】蒸発器内の冷媒の圧力変化を示し、(a)は均等分配時の圧力変化、(b)は不均等分配時の圧力変化を示すグラフである。
図6】連通路の第1設置方式を示し、(a)は平面図、(b)はA−A線断面図である。
図7】連通路の第2設置方式を示し、(a)は平面図、(b)はB−B線断面図である。
図8】連通路の第3設置方式を示し、(a)は平面図、(b)はC−C線断面図である。
図9】連通路の第4設置方式を示す断面図である。
図10】気液二相流を示し、(a)は分離流であり、(b)は環状流である。
図11】第2実施形態に係る熱交換器を示す側面図である。
図12】第3実施形態に係る熱交換器を示す側面図である。
図13】第4実施形態に係る熱交換器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。まず、空気調和機1の全体構成について図1を参照して説明する。なお、図3に示す第1実施形態では、簡略化した熱交換器、図11に示す第2実施形態では、家庭用の空気調和機の室外熱交換器、図12に示す第3実施形態および図13に示す第4実施形態では、家庭用の空気調和機の室内熱交換器を例に挙げて説明する。なお、家庭用に限定されるものではなく、業務用の空気調和機に適用することもできる。
【0013】
図1に示すように、空気調和機1は、主に圧縮機2、室内熱交換器3、減圧装置4(膨張弁など)、室外熱交換器5、四方弁6などで構成されている。これらの要素機器は、冷媒配管120,121,122,123,124,125によって順に接続されている。なお、図示していないが、例えば、室内熱交換器3には貫流式のファンが設けられ、室外熱交換器5にはプロペラ式のファンが設けられている。
【0014】
冷房運転時、室外熱交換器5は凝縮器、室内熱交換器3は蒸発器として機能する。このとき冷媒は、実線矢印で示すように、圧縮機2、冷媒配管120、四方弁6、冷媒配管121、室外熱交換器5、冷媒配管122、減圧装置4、冷媒配管123、室内熱交換器3、冷媒配管124、四方弁6、冷媒配管125、圧縮機2の順に状態変化をしながら空気調和機1内を循環する。
【0015】
具体的には、圧縮機2によって圧縮され、高圧高温の蒸気状態で吐出された冷媒は、室外熱交換器5に流入し、その中で熱を放出し高圧中温の液冷媒に変化する。その液冷媒は、減圧装置4を通過し、低圧低温の気液二相状態(気液二相流)となった後、室内熱交換器3内で周囲(室内の空気)から熱を奪い低圧低温の蒸気状態(ガス状態)となり、再び圧縮機2に吸入されるというサイクルを繰り返す。
【0016】
一方、冷媒の流れ方向を四方弁6によって切り替えると、暖房運転となる。その場合、室外熱交換器5は蒸発器、室内熱交換器3は凝縮器として機能する。このとき冷媒は、破線矢印で示すように、圧縮機2、冷媒配管120、四方弁6、冷媒配管124、室内熱交換器3、冷媒配管123、減圧装置4、冷媒配管122、室外熱交換器5、冷媒配管121、四方弁6、冷媒配管125、圧縮機2の順に空気調和機1内を循環する。
【0017】
図2は、空気調和機の熱交換器の概略を示す分解斜視図である。
図2に示すように、室内熱交換器3や室外熱交換器5として使用される熱交換器は、例えば、クロスフィンチューブ型の熱交換器であり、複数枚のアルミニウム製のフィン100を、U字状に曲げられた銅製のU字型伝熱管110(伝熱流路、以下、伝熱管110と略記する)が貫く構造となっている。フィン100と伝熱管110とは、フィン100に挿入された伝熱管110を液圧あるいは機械的に拡管することにより密着させている。なお、伝熱管110は、ほぼ水平方向(鉛直方向に直交する方向)に延びてフィン100を貫く構造となっている。
【0018】
また、伝熱管110の端部には、他の伝熱管110の端部と接続するためのリターンベンド(継手部品)111が溶接などで接合され、冷媒流路を構成している。このように熱交換器は、フィン100の積層方向の両端部において、折り返しながら蛇行する流路を有している。なお、リターンベンド111は、後記するように、U字型に限定されるものではない。
【0019】
なお、フィン100と伝熱管110とが接して、フィン100とフィン100の間の空気が流れる部分が、熱交換器の熱交換領域に対応している。なお、フィン100の積層方向の一端側の伝熱管110のU字管部と、他端側のリターンベンド111の部分とは、熱交換に寄与しない領域である。
【0020】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る熱交換器を示す斜視図である。なお、図中の矢印(実線)は、熱交換器が蒸発器として機能するときの冷媒の流れる方向を示している。例えば、図3に示す熱交換器は、室外熱交換器5で、暖房運転時の場合である。
【0021】
図3に示すように、第1実施形態に係る熱交換器は、2パスに分けられた複数の冷媒流路30,40、分配器11、合流器12、連通管990(連通路)を含んで構成されている。
【0022】
冷媒流路30は、熱交換器の鉛直方向(上下方向)の中央部よりも上側の領域に配置され(一点鎖線に対して上向きの矢印参照)、冷媒流路40は、熱交換器の鉛直方向(上下方向)の中央部よりも下側の領域に配置されている(一点鎖線に対して下向きの矢印参照)。このように、冷媒流路30と冷媒流路40は、空気の流れ方向に対して前後に配置されるものではなく、空気の流れ方向に対して直交する鉛直方向において上下に配置されるものである。
【0023】
分配器11は、冷媒流路30,40の両端部のうちの一方(入口110a,110b)に接続される二又形状のものであり、減圧装置4(図1参照)によって減圧され、気液二相状態となった冷媒を冷媒流路30と冷媒流路40とに分流(分配)するものである。
【0024】
合流器12は、冷媒流路30,40の両端部のうちの他方(出口110c,110d)に接続される二又形状のものであり、蒸気状態となった冷媒を合流するものである。
【0025】
連通管990は、冷媒流路30の途中のリターンベンド111A(111)と、冷媒流路40の途中のリターンベンド111B(111)とを接続して、冷媒流路30と冷媒流路40とを連通する流路を構成している。なお、連通管990に示す矢印は、後記する不均等分配時に冷媒流路30の圧力よりも冷媒流路40の圧力が高い場合に冷媒が流れる方向を示している。また、連通管990の詳細な構成については後記する。
【0026】
図3に示す冷媒流路30では、例えば、冷媒が入口110aから空気の流れる方向(図中矢印参照)に対して前側(上流側)に位置する流路を蛇行しながら鉛直方向上方に流れ、熱交換器の最上部において空気の流れる方向に対して後側(下流側)に位置する流路を蛇行しながら鉛直方向下方に流れ、出口110cを出て合流器12に至る。
【0027】
また、図3に示す冷媒流路40では、例えば、冷媒が入口110bから空気の流れる方向に対して前側(上流側)に位置する流路を蛇行しながら鉛直方向下方に流れ、熱交換器の最下部において空気の流れる方向に対して後側(下流側)に位置する流路を蛇行しながら鉛直方向上方に流れ、出口110dを出て合流器12に至り、冷媒流路30と合流する。
【0028】
このように構成された第1実施形態に係る熱交換器では、冷媒流路30への冷媒は熱交換器(蒸発器)の上部を通り、冷媒流路40への冷媒は熱交換器(蒸発器)の下部を通って、ファン(不図示)によって送られてくる空気と熱交換して冷媒が蒸発する。そして、冷媒は、合流器12で合流し、圧縮機2へと流れる。
【0029】
図4は、蒸発器内の冷媒の温度変化を示し、(a)は均等分配時の温度変化を示すグラフ、(b)は不均等分配時の温度変化を示すグラフである。なお、図4(b)の破線は、冷媒流路30を通る冷媒の温度変化を示し、実線は、冷媒流路40を通る冷媒の温度変化を示す。図4(a)は、冷媒流路30の温度変化と冷媒流路40の温度変化とが一致している場合である。
【0030】
また、図4の横軸に示す「入口からの距離」とは、入口110a,110bを基準としたときの距離(長さ)である。また、「1パス当たりの全長」とは、それぞれの冷媒流路30,40の管の全長を意味し、入口110a,110bから出口110c,110dまでの伝熱管110(図3参照)およびリターンベンド111(図3参照)を含めた長さである。よって、横軸(入口からの距離/1パス当たりの全長)の数値(百分率)が低いと、入口110a,110bに近く、数値(百分率)が高くなるにつれて、入口110a,110bから遠くなる(出口110c,110dに近くなる)。
【0031】
なお、「入口」については、図3に示す入口110a,110bに限定されるものではなく、分配器11の分岐点P(図3参照)であってもよい。また、「1パス当たりの全長」について、フィン100の積層方向の端部から外方に突出した伝熱管110のU字部分およびリターンベンド111の部分は、熱交換に寄与しない部分であるので、これらの部分を除いた部分を「1パス当たりの全長」としてもよい。
【0032】
ところで、図4(a)に示すように、分配器11で冷媒が均等に分流(各冷媒流路30,40への液冷媒の流量もガス冷媒の流量も同じである)する場合には、冷媒流路30における冷媒温度と、冷媒流路40における冷媒温度とがほぼ同じ変化を示し、蒸発器本来の熱交換能力を発揮することができる。
【0033】
しかし、分配器11の上流側に取り付けられる配管の形状などにより、気液二相流のガス冷媒と液冷媒とに偏りが生じる場合がある。なお、分配器11の上流側に取り付けられる配管の形状とは、分配器11の上流側のスペースは狭いのが一般的であり、入口110a,110b(図3参照)に対して真っ直ぐな配管が取り付けられることは少なく、L字状など曲がった配管が取り付けられる場合があること、つまり冷媒に対して遠心力が発生する場合があることを意味している。
【0034】
例えば、冷媒流路30よりも冷媒流路40へ流れる液冷媒の量が多くなる不均等な冷媒分配が発生した場合には、図4(b)に示すように、冷媒流路40において冷媒温度が出口110d(図3参照)に向かって低下する。これに対して、冷媒流路30では、冷媒流路30の途中で液冷媒からガス冷媒への蒸発終了に伴って、冷媒温度が空気温度(不図示)付近まで上昇し、これ以降の流路(冷媒流路30の出口110c付近の流路)では有効な熱交換は行われなくなる。その結果、空気調和機としての性能は低下することになる。
【0035】
そこで、図4(b)に示すような不均等な冷媒分配に起因する蒸発器の熱交換性能の低下を防止するために、第1実施形態では、例えば、冷媒流路30の途中のリターンベンド111A(111)と、冷媒流路40の途中のリターンベンド111B(111)とを接続する連通管990(連通路)を設けて、冷媒流路30と冷媒流路40とを連通するように構成したものである。
【0036】
図5は、蒸発器内の冷媒の圧力変化を示し、(a)は均等分配時の圧力変化、(b)は不均等分配時の圧力変化を示すグラフである。なお、図5(b)の破線は、冷媒流路30を通る冷媒の圧力変化を示し、実線は、冷媒流路40を通る冷媒の圧力変化を示す。図5(a)は、冷媒流路30の圧力変化と冷媒流路40の圧力変化とが一致している場合である。
【0037】
図5(a)に示すように、気液二相流の冷媒が均等に分配する場合には、冷媒流路30と冷媒流路40における冷媒の圧力変化は同じである。これに対して、不均等な冷媒分配が発生した場合には、より多くの液冷媒が流れ込んだ冷媒流路40と比較して、冷媒流路30に流れる液冷媒の流量が少ないため、蒸発の進行が速く、乾き度の増加も速い。したがって、冷媒流路30においては、図5(b)に示すように、冷媒圧力が初めにより速いペースで降下するが、ある位置(入口からの距離/1パス当たりの全長)を超えると冷媒圧力の降下速度が冷媒流路40の圧力の降下速度よりも遅くなり、出口110c,110dにおいて冷媒流路30,40の冷媒圧力が同じになる。つまり、冷媒流路30,40における冷媒の圧力変化が異なり、冷媒流路30,40の途中において、冷媒流路30と冷媒流路40との間で圧力差が存在している。
【0038】
本実施形態では、前記した冷媒流路30と冷媒流路40との間で存在する圧力差を利用し、液冷媒を移動させることによって、蒸発器の熱交換性能を向上させるように構成したものである。
【0039】
図5(b)で示したように、各冷媒流路30、40に流れる液冷媒、ガス冷媒の流量が異なる場合には、冷媒流路30,40の途中において、冷媒流路30と冷媒流路40との間で圧力差が存在していることになる。そこで、連通管990(図3参照)を設けることにより、前記圧力差に応じて、冷媒は、連通管990を通して、圧力の高い冷媒流路40から圧力の低い冷媒流路30へと移動する(図3の矢印参照)。
【0040】
連通管990を通る冷媒が液冷媒である場合には、蒸発の進行が速く、冷媒流路40よりも冷媒乾き度が高い(すなわち、液冷媒の割合が少ない)冷媒流路30に液冷媒が供給される。したがって、連通管990を設けない場合よりも蒸発の終了が遅くなる(図4(b)参照)ので、熱交換器の伝熱面積を有効に利用できる。また、冷媒流路40において、液冷媒が減少するので、蒸発が終了せず、液冷媒が圧縮機に戻る問題を解決できる。
【0041】
しかし、連通管990を通る冷媒がガスである場合には、冷媒流路40よりも冷媒乾き度が高い冷媒流路30にガス冷媒が供給され、乾き度がさらに高くなるにつれて、連通管990を設けないよりも蒸発が早くに終了してしまい、有効に利用できない伝熱面積が増える。一方、冷媒流路40において、ガス冷媒の減少に伴って、伝熱性能が損なわれ、蒸発の進行が連通管990を設けない場合よりも遅くなる。結果、熱交換器の性能が低下することになる。
【0042】
そこで、連通管990にガス冷媒ではなく液冷媒のみを移動させる手段が必要となる。その手段について、図6ないし図10を参照して説明する。図6は、連通路の第1設置方式を示す断面図、図7は、連通路の第2設置方式を示す断面図、図8は、連通路の第3設置方式を示す断面図、図9は、連通路の第4設置方式を示す断面図、図10は、気液二相流を示し、(a)は分離流であり、(b)は環状流である。
【0043】
図6に示す第1設置方式は、連通管990の一端をリターンベンド111A(111),111B(111)の半円状に湾曲している曲がり管111a(曲がり流路、1点鎖線で囲む範囲)の外周面111b(外周側の面、曲がりの外側の面)に接続するものである。
【0044】
このように、気液二相流が曲がり管111aを通過する際、遠心力の作用により密度の高い液冷媒が曲がり管111aの外周面111b側の内壁面を移動する。これに対して、曲がり管111aの内周面111c側の内壁面をガス冷媒が移動する。したがって、冷媒流路30の冷媒圧力が冷媒流路40の冷媒圧力よりも低い場合には(図5(b)参照)、リターンベンド111Bの曲がり管111aの外周面111bに接続された連通管990に液冷媒が流れ、リターンベンド111A側の冷媒流路40に流れ込む。
【0045】
このように、連通管990を、リターンベンド111A,111Bに単に接続するのではなく、リターンベンド111A,111Bの曲がり管111aの外周面111bに接続することにより、遠心力の作用で、連通管990を通して移動する冷媒が気相であることを防止し、液冷媒を流すことが可能になる。
【0046】
これにより、液冷媒が乾き度の低い冷媒流路40から乾き度の高い冷媒流路30へ流れることになる。したがって、乾き度の高い冷媒流路30では液冷媒が供給され、それと同時に、乾き度の低い冷媒流路40では液冷媒が減少する。すなわち、連通管990以降の冷媒流路では、冷媒状態の差が縮まり、冷媒流路30と冷媒流路40との間で存在する冷媒の蒸発進行の程度の違いも小さくなる。
【0047】
なお、気液二相流の冷媒が均等に分配する場合には、図5(a)に示したように、冷媒流路30と冷媒流路40との間で圧力差が存在しないため、連通管990を設けても冷媒の移動が発生しない。つまり、連通管990の設置によって熱交換器の性能が損なわれることがない。
【0048】
図6では、曲がり管111aの一端と他端の中間位置に連通管990を接続した場合を図示しているが、遠心力によって液冷媒が曲がり管111aの外周面111b側の内壁面に移動できる位置であれば、前記中間位置に限定されるものではない。なお、第1設置方式の場合には、図6の破線で示すように、リターンベンド111A,111Bの一方から冷媒が導入される場合であっても、図6の実線で示すように、リターンベンド111A,111Bの他方から冷媒が導入される場合であってもどちらでも適用できる。
【0049】
以上説明したように、第1実施形態では、複数の冷媒流路30,40が鉛直方向の上下に離れた熱交換器であっても、冷媒流路30,40の途中で連通管990を接続するとともに、その連通管990を曲がり管111aの外周面111bに接続することで、液冷媒が移動するにつれて、連通管990以降の冷媒流路では、冷媒流路間に存在する冷媒の蒸発進行の程度の差を小さくすることができ、蒸発器としての熱交換性能および空気調和機1の機器性能を向上させることができる。しかも、連通管990の構造は極めてシンプルであるため、ごく低コストで製造できる。
【0050】
また、第1実施形態では、連通管990を冷媒流路30,40の分配器11から略同じ距離(例えば冷媒流路30,40とも、冷媒が2本目の伝熱管110の出口側)にすることが好ましい。
【0051】
冷媒分配が不均等な場合(図5(b)参照)には、例えば、冷媒流路30の2本目の伝熱管110の出口と、冷媒流路40の3本目の伝熱管110の出口を連通管990で接続すると、連通管の上流の冷媒流路30と冷媒流路40の長さが異なることになる。その場合、冷媒流路30と冷媒流路40との間で圧力差がほとんどないため、冷媒の移動が発生せず、連通管990を設ける効果が全くない。或いは、冷媒流路30よりも冷媒流路40のほうが圧力が低いため、液冷媒は冷媒流路30から冷媒流路40へと移動する。その結果、連通管990以降の冷媒流路30では、液冷媒が連通管990を設けない場合よりも少なくなり、より早く過熱状態となってしまう。一方、連通管990以降の冷媒流路40では、液冷媒が連通管990を設けない場合よりも多くなるため、冷媒の蒸発を終了できなくなる。
【0052】
例えば、冷媒流路30の3本目の伝熱管110の出口と、冷媒流路40の2本目の伝熱管110の出口を連通管990で接続すると、連通管の上流における冷媒流路30と冷媒流路40との長さが異なることになる。その場合、冷媒流路30と冷媒流路40との間で存在する圧力差が大きいため、冷媒流路40から多くの液冷媒が冷媒流路30へと流れる。しかし、冷媒流路30では、連通管990の下流には2本の伝熱管しかないため、冷媒の蒸発を終了できなくなる一方、冷媒流路40では、冷媒が連通管990の下流の3本の伝熱管を経て、早くに過熱状態となる問題が発生する可能性がある。その結果、熱交換器の性能を改善することができなくなる。
【0053】
また、冷媒分配が均等な場合(図5(a)参照)には、冷媒流路間に液冷媒の移動が発生すると、液冷媒が増加する冷媒流路では冷媒の蒸発を終了できなくなる一方、液冷媒が減少する冷媒流路では、冷媒の蒸発が早くに終了してしまう。したがって、熱交換器の性能が損なわれることになる。
【0054】
このように、前記したいずれの場合であっても、熱交換器の入口からの距離が異なる場所に連通管を設けると、熱交換器の性能を改善することができない。そこで、第1実施形態のように、連通管990を冷媒流路30,40の分配器11から略同じ距離にすることで、熱交換器の伝熱面積を有効に利用できるようになり、熱交換器の性能を改善できる。
【0055】
また、第1実施形態では、連通管990を冷媒流路30と冷媒流路40との間の圧力差が大きくなる場所、例えば、図5(b)に示す範囲Qに設けることが好ましい。ちなみに、圧力差がとても小さいところに連通管を設けたとしても、各冷媒流路30,40の圧力がほとんど変化せず、連通管を設ける効果が全くなくなる可能性がある。
【0056】
なお、連通管990の設置方式は、図6に示すものに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、第2設置方式として、リターンベンド111A,111Bの曲がり管111a(曲がり流路)の冷媒下流側の直後の外周面111dに連通管991を接続するようにしてもよい。このような設置方式であっても、遠心力の作用で液冷媒が曲がり管111aの外周面111b側に移動した状態を維持しながら曲がり管111aの直後の外周面111dまで移動できるので、連通管991には液冷媒のみが流れ込む。
【0057】
また、図8に示すように、第3設置方式として、断面視L字形状を有する冷媒配管142,143において、第2設置方式と同様に、冷媒配管142,143の曲がり管142a,143a(曲がり流路、一点鎖線で囲む範囲)の冷媒下流側の直後の外周面142b,143bに連通管991を接続するようにしてもよい(後記する図11の連通管991を参照)。このような設置方式であっても、遠心力の作用によって液冷媒が連通管990に流れ込む。
【0058】
また、図9に示すように、熱交換器のフィン100を貫通して熱交換領域から突出する伝熱管110の底面110eに連通管991を接続するようにしてもよい。このような熱交換器では伝熱管110がほぼ水平に配置されているので、重力の影響で伝熱管110内の流動状態が、図10(a)に示すように、液冷媒が伝熱管110の底部を、ガス冷媒が伝熱管110の上側を流れるいわゆる分離流、または図10(b)に示すように、液冷媒が伝熱管110の内壁面を、ガス冷媒が伝熱管110の輪切り断面の中心部を流れるいわゆる環状流のいずれの場合であっても、伝熱管110の底面110e(管壁面)に接続された連通管991に液冷媒のみが流れ込む。
【0059】
なお、第1実施形態では、連通管990をリターンベンド111A,111Bに接続する場合を例に挙げて説明したが、熱交換器の熱交換領域を挟んでリターンベンド111A,111Bとは反対側の伝熱管110のU字管部110s(図2参照)に連通管990を接続するようにしてもよい。
【0060】
また、連通管990は、溶接によってリターンベンド111A,111B,冷媒配管142,143、伝熱管110と接合されるものに限定されず、一体成形のものを使用してもよい。
【0061】
また、第1実施形態では、連通管990を1ヶ所のみに設けた場合を例に挙げて説明したが、1ヶ所に限定されるものではなく、後記するように2ヶ所以上に設けてもよい。これにより、冷媒流路30,40間の冷媒状態の差をさらに縮めることが可能になる。
【0062】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る熱交換器を示す側面図である。なお、図11は、家庭用の室外熱交換器の一例を示し、図11の破線は、伝熱管(図2の伝熱管110に対応するもの)のU字管部を示し、太矢印は、熱交換器が蒸発器として機能するときの冷媒の流れる方向(暖房運転時、すなわち室外熱交換器5が蒸発器として機能し、室内熱交換器3が凝縮器として機能する時の冷媒の流れ方向)を示す。また、太実線で示す配管は、特許請求の範囲の連通路に対応する連通管991,992,993を示している。
【0063】
図11に示すように、第2実施形態に係る熱交換器(蒸発器)は、冷媒配管122を介して減圧装置4(図1参照)と分配器933とが接続され、分配器933において、2つの冷媒流路31と冷媒流路41とに分かれる。
【0064】
一方の冷媒流路31は、分配器933と伝熱管351の伝熱管開口端301(一端)とを接続する冷媒配管140を経て、熱交換器の下部の伝熱管351,352を通って、伝熱管352の伝熱管開口端304と接続する冷媒配管142を介して分配器953に至り、分配器953で2つの冷媒流路51と冷媒流路61とに分かれる。なお、冷媒流路51と冷媒流路61は、鉛直方向の上下に分割されている。
【0065】
冷媒流路51は、分配器953と伝熱管551の伝熱管開口端501とを接続する冷媒配管144を経て、熱交換器の最上部の伝熱管551,552,553,554,555,556を通って、合流器954(他端)に至る。
【0066】
冷媒流路61は、分配器953と伝熱管651の伝熱管開口端601とを接続する冷媒配管145を経て、熱交換器の上部の伝熱管651,652,653,654,655,656を通って、合流器954で冷媒流路51と合流する。
【0067】
他方の冷媒流路41は、分配器933と伝熱管451の伝熱管開口端401(一端)とを接続する冷媒配管141を経て、熱交換器の最下部の伝熱管451,452を通って、伝熱管452の伝熱管開口端404と接続する冷媒配管143を介して分配器973に至り、分配器973で2つの冷媒流路71と冷媒流路81とに分かれる。冷媒流路71と冷媒流路81は、鉛直方向の上下に分割されている。また、冷媒流路71と冷媒流路81は、冷媒流路51と冷媒流路61よりも鉛直方向下方に位置している。
【0068】
冷媒流路71は、分配器973と伝熱管751の伝熱管開口端701とを接続する冷媒配管146を経て、熱交換器の中間部の伝熱管751,752,753,754,755,756を通って、合流器974(他端)に至る。
【0069】
冷媒流路81は、分配器973と伝熱管851の伝熱管開口端801とを接続する冷媒配管147を経て、熱交換器の下部の伝熱管851,852,853,854,855,856を通って、合流器974で冷媒流路71と合流する。
【0070】
合流器954では、冷媒流路51と冷媒流路61とが合流し、合流器974では、冷媒流路71と冷媒流路81とが合流し、さらに冷媒配管148、冷媒配管149を介して合流器934で単一の冷媒流路となった後、冷媒配管121を介して、圧縮機2(図1参照)と接続する。
【0071】
このように、第2実施形態では、冷媒流路31と冷媒流路41の途中において、冷媒配管142と冷媒配管143とを連通管991によって接続して、冷媒流路31と冷媒流路41とを連通している。また、冷媒流路51と冷媒流路61の途中において、伝熱管552と伝熱管553とを接続するリターンベンド111C(111)と、伝熱管652と伝熱管653とを接続するリターンベンド111D(111)とを連通管992によって接続して、冷媒流路51と冷媒流路61とを連通している。また、冷媒流路71と冷媒流路81の途中において、伝熱管752と伝熱管753とを接続するリターンベンド111E(111)と、伝熱管852と伝熱管853とを接続するリターンベンド111F(111)とを連通管993によって接続して、冷媒流路71と冷媒流路81とを連通している。
【0072】
また、連通管991は、冷媒配管142,143の曲がり管142a,143a(図8(b)参照)の冷媒下流側の直後の外周面(外周側の面、曲がりの外側の面)142b,143b(図8(b)参照)同士を接続している(図8参照)。連通管992は、リターンベンド111Cの曲がり管111aの外周面(外周側の面、曲がりの外側の面)111b(図6参照)、リターンベンド111Dの曲がり管111aの外周面(外周側の面、曲がりの外側の面)111b(図6参照)に接続されている。連通管993は、リターンベンド111Eの曲がり管111aの外周面(外周側の面、曲がりの外側の面)111b(図6参照)、リターンベンド111Fの曲がり管111aの外周面(外周側の面、曲がりの外側の面)111b(図6参照)に接続されている。
【0073】
第2実施形態に係る熱交換器(蒸発器)によれば、第1実施形態と同様に、複数の冷媒流路31,41(51,61/71,81)が鉛直方向の上下に離れた熱交換器であっても、冷媒流路31,41(51,61/71,81)の途中で連通管991(992/993)を接続するとともに、その連通管991を冷媒配管142,143の曲がり管142a,143aの冷媒の流れ方向下流側の直後の外周面142b,143b(連通管992,993をリターンベンド111E,111Fの曲がり管111aの外周面111b)に接続することで、熱交換性能を改善することができる。
【0074】
また、連通管991によって分配器953前(上流)の冷媒の状態と、分配器973前(上流)の冷媒の状態とがほぼ同じになる。そして、連通管992および連通管993によって、冷媒流路51と冷媒流路61と冷媒流路71と冷媒流路81とを流れる冷媒は、ほぼ同じ状態変化を示し、蒸発器本来の熱交換能力を発揮でき、空気調和機1の性能が向上する。
【0075】
このようにして冷媒流路間の冷媒の蒸発進行程度の違いを小さくすることができ、蒸発器としての熱交換性能および空気調和機1の機器性能を向上させることができる。しかも、連通管991,992,993の構造は極めてシンプルであるため、ごく低コストで製造できる。
【0076】
また、第2実施形態では、連通管990を冷媒流路30,40の分配器11から略同じ距離(冷媒流路31,41,51,61,71,81とも、冷媒が2本の伝熱管110を通った後)で接続することで、熱交換器の伝熱面積を有効に利用できる。
【0077】
また、第2実施形態では、連通管991(992/993)を冷媒流路31(51/71)と冷媒流路41(61/81)との間の圧力差が大きくなる場所に設けることで、冷媒流路の間で液冷媒の移動が発生し、冷媒流路間の冷媒状態の差を小さくすることができる。
【0078】
なお、第2実施形態では、連通管992(993)が、リターンベンド111C(111E)とリターンベンド111D(111F)の外周側の面(曲がりの外側の面)に接続された場合(図6参照)を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、連通管992,993を図10に対応する位置に接続するようにしてもよい。
【0079】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係る熱交換器を示す側面図である。なお、図12は、家庭用の室内熱交換器の一例を示し、図12の破線は、伝熱管(図2の伝熱管110に対応するもの)のU字管部を示し、太矢印は、熱交換器が蒸発器として機能するときの冷媒の流れる方向(冷房運転時、すなわち室内熱交換器3が蒸発器として機能し、室外熱交換器5が凝縮器として機能する時の冷媒の流れ方向)を示す。また、太実線で示す配管は、特許請求の範囲の連通路に対応する連通管996を示している。
【0080】
図12に示すように、第3実施形態に係る熱交換器(蒸発器)は、主熱交換器M、サブクーラA、サブクーラB、二方弁7、分配器931,951、合流器932,952,962,972を図示しない筐体内に備えている。なお、熱交換器は、筐体に設けられた空気吸込口(不図示)から貫流式のファン(不図示)までの風路の途中に配設されている。
【0081】
第3実施形態に係る熱交換器では、減圧装置4(図1参照)と接続された冷媒配管123が、サブクーラAの伝熱管開口端201に接続されている。この伝熱管開口端201からの単一流路23は、サブクーラA、サブクーラAとサブクーラBとを接続した冷媒配管130、サブクーラBを通って、単一流路23の出口の伝熱管開口端206に至る。そして、伝熱管開口端206は、冷媒配管131を介して分配器931と接続される。
【0082】
そして、分配器931では、冷媒流路が2つに分けられる。一方の冷媒流路33は、分配器931と伝熱管開口端301(一端)とを接続する冷媒配管132を経て、主熱交換器Mの背面側を通って、合流器932に至る。もう一方の冷媒流路43は、分配器931と伝熱管開口端401(一端)とを接続する冷媒配管133を経て、主熱交換器Mの前面側上部および背面側を通り、合流器932に至り、冷媒流路33と合流する。
【0083】
その後、冷媒流路33と冷媒流路43とが合流した冷媒流路は、合流器932と二方弁7とを接続する冷媒配管134、二方弁7、二方弁7と分配器951とを接続する冷媒配管135を経てから、分配器951で4つの冷媒流路53,63,73,83に分けられる。
【0084】
なお、二方弁7は、空気調和機1(図1参照)を除湿運転させる場合に作動させるものであり、絞り機能(減圧機能)を有している。除湿運転時には、減圧装置4(図1参照)で冷媒を絞らずに、室内熱交換器3(図1参照)の途中に設けた二方弁7で冷媒を絞って(減圧して)、二方弁7の下流の熱交換器で冷媒を冷却することにより、空気中の水分を取り除くようになっている。このとき室内熱交換器3(図1参照)では、二方弁7の上流側の熱交換器を通る熱い冷媒で暖められた空気と、二方弁7の下流側の熱交換器を通る冷たい冷媒で冷やされた空気とが混合され、室内熱交換器3(図1参照)の外部に排出される。
【0085】
冷媒流路53は、分配器951と伝熱管開口端504とを接続する冷媒配管136を経て、主熱交換器Mの前面側中間部の伝熱管581,582,583を通って、合流器962(他端)に至る。
【0086】
冷媒流路63は、分配器951と伝熱管開口端604とを接続する冷媒配管137を経て、主熱交換器Mの前面側中間部の伝熱管681,682,683を通って、合流器962に至り、冷媒流路53と合流する。
【0087】
冷媒流路73は、分配器951と伝熱管開口端703とを接続する冷媒配管138を経て、主熱交換器Mの前面側下部の伝熱管781,782,783を通って、合流器972(他端)に至る。
【0088】
冷媒流路83は、分配器951と伝熱管開口端804とを接続する冷媒配管139を経て、主熱交換器Mの前面側最下部の伝熱管881,882,883を通って、合流器972に至り、冷媒流路73と合流する。
【0089】
合流器962において冷媒流路53と冷媒流路63とが合流し、合流器972において冷媒流路73と冷媒流路83とが合流した後、さらに冷媒配管151、冷媒配管152を介して合流器952において単一の冷媒流路となった後、冷媒配管124を介して、圧縮機2(図1参照)に至る。なお、冷媒流路53と冷媒流路63は、鉛直方向において上下に分割され、冷媒流路73と冷媒流路83は、鉛直方向において上下に分割されている。
【0090】
第3実施形態では、冷媒流路53と冷媒流路63と冷媒流路73と冷媒流路83の途中において、伝熱管581と伝熱管582とを接続するリターンベンド111Mと、伝熱管681と伝熱管682とを接続するリターンベンド111Nと、伝熱管781と伝熱管782とを接続するリターンベンド111Oと、伝熱管881と伝熱管882とを接続するリターンベンド111Pとが連通管996によって接続されている。なお、連通管996は、リターンベンド111M,111N,111O,111Pの曲がり管111aの外周面111bと接続されている(図6参照)。
【0091】
これにより、連通管996以降の冷媒流路では、冷媒流路53と冷媒流路63と冷媒流路73と冷媒流路83との間に存在する冷媒の蒸発進行の程度の差を小さくして、蒸発器本来の熱交換能力を発揮でき、空気調和機1の性能を向上できる。
【0092】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態に係る熱交換器を示す側面図である。第4実施形態は、第3実施形態の連通管996に替えて、連通管997,998,999としたものであり、第3実施形態と同様の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、連通管997,998,999は、特許請求の範囲の連通路に対応する。
【0093】
図13に示すように、第4実施形態に係る熱交換器(蒸発器)は、冷媒流路53と冷媒流路63の途中において、伝熱管581と伝熱管582とを接続するリターンベンド111Mと、伝熱管681と伝熱管682とを接続するリターンベンド111Nとを接続する連通管997、また冷媒流路73と冷媒流路83の途中において、伝熱管781と伝熱管782とを接続するリターンベンド111Oと、伝熱管881と伝熱管882とを接続するリターンベンド111Pとを接続する連通管998、また冷媒流路63と冷媒流路73の途中において、伝熱管682と伝熱管683とを接続するリターンベンド111Qと、伝熱管782と伝熱管783とを接続するリターンベンド111Rとを接続する連通管999を備えている。
【0094】
なお、連通管997,998,999は、いずれも、リターンベンド111M,111N,111O,111P,111Q,111Rの曲がり管111aの外周面(外周側の面、曲がりの外側の面)111b(図6参照)と連通している。
【0095】
これにより、連通管997と、連通管998と、連通管999によって、冷媒流路53と冷媒流路63と冷媒流路73と冷媒流路83で冷媒状態の変化がほぼ同じになることによって、蒸発器としての熱交換性能を向上させることができ、空気調和機1としての性能向上を図ることができる。
【0096】
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。例えば、各実施形態において、連通管を接続する方法として第1設置方式ないし第4設置方式のうちの複数を選択して適用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 空気調和機
2 圧縮機
3 室内熱交換器
4 減圧装置
5 室外熱交換器
6 四方弁
30,31,40,41,51,53,61,63,71,73,81,83 冷媒流路
100 フィン
110 U字型伝熱管(伝熱流路)
111a,142a,143a 曲がり管(曲がり流路)
111b,111d,142b,143b 外周面(外周側の面)
110e 底面
111,111A,111B,111C,111D,111E,111F,111M,111N,111O,111P,111Q,111R,142,143 リターンベンド
11,933,951,953,973 分配器
12,934,952,954,974 合流器
990,991,992,993,996,997,998,999 連通管(連通路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13