【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、本発明は、
第1の絶縁キャップ層;
第1の絶縁キャップ層によって頂部を覆われた第1の導電層であり、当該第1の導電層の電気コンタクト用の縁部(コンタクトリップ)のみが露出されるように、少なくとも第1の絶縁キャップ層によって実質的に挟み込まれた第1の導電層;及び
少なくとも第1の絶縁キャップ層及び第1の導電層を貫通して延在するエッチングされた空隙のアレイであり、各空隙が部分的に、内部サブミクロン電極として作用する第1の導電層の表面によって境界付けられた、空隙のアレイ;
を有する、積層構造を有する電極アセンブリを提供する。
【0011】
各内部サブミクロン電極が存在する比較的大きい2次元導電層を仮定すると、本発明は、各内部サブミクロン電極に、ほぼ無限の数の導電路を提供する。これは、各サブミクロン電極と、電気コンタクトリップに接続される外部回路との間で実質的な相互接続IRドロップ(これは、例えば、導電トラックによって供される従来電極によって経験され得る)を生じさせることなく、極めて薄い導電層を使用することを可能にする。この電極アセンブリは、(例えばテイラーの微細ワイヤ電極と異なり)容易に損傷されることがなく且つ高度に効率的で素早い物質輸送特性を有する、極めて明確に画成され且つ再現可能な幾何学形状の複数の内部サブミクロン電極をアドレス(アドレス指定)する極めて堅牢な手段を表す。
【0012】
その他の利点は以下である:
1)適切な内部サブミクロン電極の寸法及び空隙間隔により、内部サブミクロン電極のアレイは、マクロの寸法を有するようになり得るが、平面マクロ電極の物質輸送限界に悩まされることはない(すなわち、各空隙への輸送はマイクロスケール又はナノスケールである)。本発明に係る電極アセンブリは、かなりの電流を通すことができ、それにより、高感度且つ高価な試験・測定機器の要求、及び/又は低電流を監視するために必要とされる複雑な実験手順が回避される;
2)アレイは、非常に薄い層であっても、熱的且つ機械的に極めて堅牢であり、各内部サブミクロン電極への導電路に高い度合いの相互接続冗長性を有する;
3)アレイは、その他全ての内部サブミクロン電極が機能し続けることになるので、(例えば、パッシベーション又は妨害物に起因する)個々の内部サブミクロン電極の不具合に関して堅牢性を提供する。
【0013】
好ましくは、電極アセンブリは、マイクロメートル又はナノメートルのスケールの寸法を少なくとも1つ又は2つ有する。好ましくは、電極アセンブリはマイクロ電極アセンブリ又はナノ電極アセンブリである。
【0014】
本発明に係る電極アセンブリは、調合化学又は分析化学での使用に適したものとなり得る。エッチングされた空隙内に例えば電解液などの物質が通されることで、内部サブミクロン電極のみが電解液に晒されて、合成、分析又はシークエンシングが行われ得る。
【0015】
積層構造のレイヤ群は、標準的な技術に従って順次に製造(例えば、流し込み、スピン塗布、スパッタリング、成長、あるいは堆積)され得る。
【0016】
好ましくは、電極アセンブリは、第1の導電層を含む複数の導電層(同じであってもよいし、異なっていてもよい)と、第1の絶縁キャップ層を含む複数の絶縁キャップ層とを有し、前記複数の導電層及び前記複数の絶縁キャップ層は、積層構造内で交互にされ、各導電層が、電気コンタクト用の縁部のみが露出されるように挟み込まれ、エッチングされた空隙のアレイは、前記複数の絶縁キャップ層及び前記複数の導電層を貫通して延在し、各空隙が部分的に、内部サブミクロン電極として作用する前記複数の導電層の各々の表面によって境界付けられる。
【0017】
各空隙内の内部サブミクロン電極の数が、3つ、4つ若しくは5つ(又はそれより多く)になり得る。このような実施形態は、複数の導電層及び複数の絶縁キャップ層の順次の積層(例えば、堆積又は成長)によって形成され得る。内部サブミクロン電極の各々の、寸法、空隙内での絶対的な空間位置、及び相対的な空間位置は、複数の電気活性種の生成及び/又は検出の独立した最適化を可能にするように正確に定められ得る。
【0018】
好ましくは、電極アセンブリは更に第2の導電層を有し、第1の導電層は、第1の電気コンタクト用の縁部のみが露出されるように挟み込まれ、第2の導電層は、第2の電気コンタクト用の縁部のみが露出されるように挟み込まれ、エッチングされた空隙のアレイは、第1の導電層、第1の絶縁キャップ層及び第2の導電層を貫通して延在し、各空隙が部分的に、内部サブミクロン電極として作用する第1の導電層の表面によって、且つ/或いは内部サブミクロン電極として作用する第2の導電層の表面によって境界付けられる。第1の導電層及び第2の導電層は、(例えば、横方向に離間されて)実質的に同一平面内にあってもよい。第1の導電層及び第2の導電層は、(例えば、軸方向に離間されて、好ましくは実質的に同軸に離間されて)同一平面内でなくてもよい。これは、多層の金属相互接続を必要とし得る。
【0019】
好ましくは、電極アセンブリは、第2の導電層及び第2の絶縁キャップ層を有し、第1の導電層は、第1の電気コンタクト用の縁部のみが露出されるように挟み込まれ、第2の導電層は、第2の電気コンタクト用の縁部のみが露出されるように挟み込まれ、エッチングされた空隙のアレイは、第1の導電層、第1の絶縁キャップ層、第2の導電層及び第2の絶縁キャップ層を貫通して延在し、各空隙が部分的に、内部サブミクロン電極として作用する第1の導電層の表面によって、且つ/或いは内部サブミクロン電極として作用する第2の導電層の表面によって境界付けられる。第1の導電層及び第2の導電層は、(例えば、横方向に離間されて)実質的に同一平面内にあってもよい。第1の導電層及び第2の導電層は、(例えば、軸方向に離間されて、好ましくは実質的に同軸に離間されて)同一平面内でなくてもよい。これは、多層の金属相互接続を必要とし得る。
【0020】
好ましくは、エッチングされた空隙のアレイは、複数の別個の、エッチングされた空隙のサブアレイである。アレイ(又は各サブアレイ)は、直線パターン又はジグザグパターン(例えば、杉綾(ヘリンボーン)模様)とし得る。アレイ(又は各サブアレイ)は立方体パターンであってもよい。アレイ(又は各サブアレイ)は多次元(例えば、2次元)アレイであってもよい。
【0021】
空隙のアレイは、所望の用途に従って機械的あるいは化学的にエッチングされ得る。各空隙は、開口(アパーチャ)、スルーホール、井戸(ウェル)、チューブ、キャピラリ、ポア、ボア又はトラフ(溝)とし得る。好ましくは、各エッチングされた空隙は井戸である。井戸は、絶縁キャップ層又は絶縁基板層内で終端し得る。井戸は、井戸の底面で内部サブミクロン電極を提供する導電層内で終端してもよい。
【0022】
本発明によれば、極めて堅牢な相互接続を有する制御された寸法及びピッチのエッチングされた空隙のアレイは、既知の個別マクロ電極と比較して高い電流が測定されることを可能にする。アレイ内のエッチングされた空隙の最も有利な数は、導電層の面積、空隙のサイズ、アレイ内での空隙の配置、及び所望の出力信号応答の大きさに依存する。
【0023】
好ましくは、導電層(又は各導電層)は、実質的に平面状の導電層である。導電層(又は各導電層)は、空隙から離れるにつれて厚さを増してもよい。これはIRドロップを低減するよう作用し得る。
【0024】
各導電層は、多様な導電材料から有利に製造されることができ、それにより、特定の電気化学的反応が実行されることが可能になる。例えば、第1の内部サブミクロン電極上で特定の電気化学的生成を最適化し、第2の内部サブミクロン電極上で特定の電気化学的生成物の検出を最適化することが可能になり得る。この場合、各内部サブミクロン電極は、典型的に、積層構造内で異なる深さにある。導電層ごとに個別の、外部回路への接続用の電気コンタクトリップの露出により、単純な多層接続及び独立した内部サブミクロン電極制御が達成可能である。斯くして、アレイ内の内部サブミクロン電極のうちの2つ以上を相互に効率的に接続し得る。
【0025】
導電層(又は各導電層)は金属を含むものとし得る。導電層は、例えば金又は銀などの貴金属からなっていてもよい。好ましくは金属窒化物(例えば、窒化チタン)である。導電層(又は各導電層)はイオン交換ポリマーとしてもよい。導電層(又は各導電層)は、機能性(例えば、化学的あるいは生物学的に官能化された)金属としてもよい。
【0026】
絶縁キャップ層(又は各絶縁キャップ層)は重合によるもの(例えば、イオン交換樹脂)としてもよい。例えば、絶縁キャップ層(又は各絶縁キャップ層)は、ポリ(エチレンテトラフタレート)からなっていてもよい。絶縁キャップ層(各絶縁キャップ層)は、特定の用途に適するように試薬を混ぜられたり官能化されたりしてもよい。
【0027】
電気コンタクトリップは、例えば導電層の正方形のコンタクトエッジなど、周囲のコンタクト端部とし得る。電気コンタクトリップは、広い領域の電気コンタクトリップとしてもよい(例えば、電気コンタクトリップは、電極の周囲の実質的に全長にわたって延在し得る)。電気コンタクトリップは、実質的にT字形状にしてもよい。電気コンタクトリップは、例えばポテンショスタットなどの外部回路といった外部機器への、各内部サブミクロン電極の単純で信頼性のある接続を可能にする。
【0028】
サブミクロン電極(又は各サブミクロン電極)は典型的に、部分的あるいは全体的に環状である。
【0029】
導電層(又は各導電層)は、実質的にT字状、蛇行、又は指状としてもよい。蛇行した、あるいは指状の導電層は、通常、同一階層の内部サブミクロン電極の様々な組み合わせを有する空隙のアレイを提供する。
【0030】
第1の好適な実施形態において、第1の導電層は、当該第1の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、第1の絶縁キャップ層のみによって実質的に挟み込まれ、エッチングされた空隙のアレイは、第1の絶縁キャップ層及び第1の導電層のみを貫通して延在する。
【0031】
第2の好適な実施形態において、電極は更に:
絶縁基板層を有し、
第1の導電層は、絶縁基板層上に形成され、且つ、当該第1の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、第1の絶縁キャップ層及び絶縁基板層によって実質的に挟み込まれる。
【0032】
第3の好適な実施形態において、電極は更に
絶縁基板層;及び
絶縁基板層上に形成された第2の絶縁キャップ層;
を有し、
第1の導電層は、第2の絶縁キャップ層上に形成され、且つ、当該第1の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、第1の絶縁キャップ層及び第2の絶縁キャップ層によって実質的に挟み込まれる。
【0033】
第4の好適な実施形態において、電極は更に:
絶縁基板層;
第2の絶縁キャップ層;及び
第2の導電層;
を有し、
第1の導電層は、第2の絶縁キャップ層上に形成され、且つ、当該第1の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、第1の絶縁キャップ層及び第2の絶縁キャップ層によって実質的に挟み込まれ、
第2の導電層は、絶縁基板層上に形成され、且つ、当該第2の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、第2の絶縁キャップ層及び絶縁基板層によって実質的に挟み込まれ、
エッチングされた空隙のアレイは、少なくとも第1の絶縁キャップ層、第1の導電層及び第2の絶縁キャップ層を貫通して延在し、各空隙が部分的に、内部サブミクロン電極として作用する第1の導電層の表面によって境界付けられる。
【0034】
特に好ましくは、エッチングされた空隙のアレイは、第1の絶縁キャップ層、第1の導電層及び第2の絶縁キャップ層のみを貫通して延在する。
【0035】
特に好ましくは、エッチングされた空隙のアレイは、第1の絶縁キャップ層、第1の導電層、第2の絶縁キャップ層及び第2の導電層を貫通して延在し、各空隙が部分的に、第1の内部サブミクロン電極として作用する第1の導電層の表面によって、且つ第2の内部サブミクロン電極として作用する第2の導電層の表面によって境界付けられる。
【0036】
第5の好適な実施形態において、電極は更に:
絶縁基板層;及び
第2の導電層;
を有し、
第1の導電層は指状にされ、第2の導電層は指状にされ、第1の導電層及び第2の導電層は、互いに噛み合わされるように絶縁基板層上に形成され、且つ当該第1の導電層の電気コンタクトリップ及び当該第2の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、第1の絶縁キャップ層及び絶縁基板層によって実質的に挟み込まれ、
エッチングされた空隙のアレイは、第1の絶縁キャップ層、第1の導電層及び第2の導電層を貫通して延在し、各空隙が、第1の内部サブミクロン電極として作用する第1の導電層の表面によって部分的に境界付けられ、且つ第2の内部サブミクロン電極として作用する第2の導電層の表面によって部分的に境界付けられる。
【0037】
第6の好適な実施形態において、電極は更に:
絶縁基板層;及び
第2の導電層;
を有し、
第2の導電層は実質的に第1の導電層と同一平面内にあり、第1の導電層及び第2の導電層の各々は、第1の絶縁キャップ層によって頂部を覆われ、且つそれぞれ当該第1の導電層の電気コンタクトリップ及び当該第2の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、少なくとも第1の絶縁キャップ層によって実質的に挟み込まれ、
1つ以上の第1のエッチングされた空隙が、第1の絶縁キャップ層及び第1の導電層を貫通して延在し、1つ以上の第2のエッチングされた空隙が、第1の絶縁キャップ層及び第2の導電層を貫通して延在し、各第1のエッチングされた空隙が、内部サブミクロン電極として作用する第1の導電層の表面によって部分的に境界付けられ、且つ各第2のエッチングされた空隙が、内部サブミクロン電極として作用する第2の導電層の表面によって部分的に境界付けられる。
【0038】
特に好ましくは、第1の導電層及び第2の導電層の各々は、それぞれ当該第1の導電層の電気コンタクトリップ及び当該第2の導電層の電気コンタクトリップのみが露出されるように、第1の絶縁キャップ層のみによって実質的に挟み込まれる。
【0039】
絶縁基板層は典型的に、シリコン、酸化シリコン又は重合材料からなる。
【0040】
各内部サブミクロン電極の近傍での試薬及び生成物の最適化された半球状の拡散は、電気化学的な生成及び検出に関して最適な信号対雑音比を生み出す。これは、本発明に従った4つの独立した寸法の正確な制御を必要とする。これらの寸法(以下にて詳細に議論する)は、空隙の底面からの距離(エッチング深さによって制御)、空隙のエッジからの距離(レイヤ群の厚さによって制御)、及び内部サブミクロン電極同士の間の距離(絶縁キャップ層の厚さによって制御)を含む。これらの寸法は、例えば内部サブミクロン電極の収集効率を最大化するよう、独立して正確に変化されることができる。このことは、内部サブミクロン電極の高い定常電流及び信号対雑音比と組み合わさって、本発明に係るアセンブリを、電気化学的な生成及び検出に理想的に適したものにする。
【0041】
寸法1
n番目の導電層の厚さ(w
n)は、原子スケールの分解能での製造によって決定され得る(原子スケールとは、少なくとも1原子又はそれより多くの厚さを意味する)。これは、従来からの如何なる堆積又は成長の製造工程によって達成されてもよい。この導電層(又は各導電層)の厚さ(w
n)(同じであってもよいし、異なっていてもよい)は、1原子厚さから0.99μmまで、好ましくは0.05−0.90μm、特に好ましくは0.05−0.75μm、より好ましくは0.05−0.49μm、最も好ましくは0.10−0.45μm(例えば、約0.23μm)、の範囲内とし得る。
【0042】
寸法2
空隙の横方向寸法(d
w)及び形状は、内部サブミクロン電極の反対側の面の間の距離を決定する。これは、例えば、内部サブミクロン電極の異なる部分の物質輸送場が重なり合う時間、及び/又は内部サブミクロン電極上への金属電着により空隙を充填する時間に影響を及ぼす。例えば、d
wがn番目の内部サブミクロン電極の深さ(d
n)と比較して大きい場合、これらの時間は、拡散層が空隙から溶液まで突き抜ける時間より遙かに大きくなる。
【0043】
空隙の断面形状は規則的なものとし得る。典型的に、空隙の断面形状は実質的に円形であり、横方向寸法は直径である。
【0044】
各空隙の横方向寸法d
w(例えば、幅又は直径)(各空隙で同じであってもよいし、異なっていてもよい)は、典型的に0.5−1000μm、好ましくは1.0−500μm、より好ましくは10−100μmである。
【0045】
d
wがマイクロスケール又はナノスケールの寸法であるとき、空隙内へ半球状の拡散が促進され、それにより、内部サブミクロン電極の周囲全体からほぼ定常的な応答が生成される。この構成はまた、内部サブミクロン電極への導電路における本質的な相互接続冗長性という利点を有する(すなわち、不連続で、電気的に接続されていない如何なる導電層領域も、固有の冗長性を提供する複数の代替接続経路を有する)。本発明に係る電極アセンブリにおいて、各内部サブミクロン電極は、導電層を通る複数の並列経路を介して電気化学回路に接続される。これが意味することは、導電層内での如何なる局所的な破断又は欠陥も、全体的な接続性に影響を及ぼさないということである。換言すれば、全ての内部サブミクロン電極が、2次元の導電層を介して電気コンタクトリップに接続される。
【0046】
寸法3
空隙の深さはエッチング深さ(d
d)である。空隙内の特定の深さ(d
n)にあるn番目の内部サブミクロン電極の位置(すなわち、アパーチャ開口からn番目の電極の最も近いエッジまでの距離)は、絶縁キャップ層(群)の幅によって決定される。内部サブミクロン電極の厚さ(w
n)及び空隙内でのその位置(d
n、d
d及びw
nによって定められる)は、輸送(サイズの縮小につれて増大)を促進することによって電気活性種の電気化学的検出の信号対雑音比を増大させるように(改善1)、ミクロンスケール(又はそれより小さいスケール)で独立して制御されることが可能である。位置決めの精度及び再現性は、深さ方向での、内部サブミクロン電極への再現可能且つ定量的な拡散を可能にする。この方向での内部サブミクロン電極のエッジから空隙のエッジまでの正確な最小距離(d
n)は、空隙内への種の輸送を制御するように絶縁キャップ層(群)の深さを制御することによって制御可能である。
【0047】
絶縁キャップ層(又は各絶縁キャップ層)の厚さ(同じであってもよいし、異なっていてもよい)は、典型的に0.05−10μmの範囲内、好ましくは0.05−5μm、特に好ましくは0.10−2.0μm、より好ましくは0.20−1.2μm、最も好ましくは0.25−0.99μmである。
【0048】
第1の内部サブミクロン電極(すなわち、孔(ホール)のエッジに最も近い内部サブミクロン電極)の深さ(d
1)は、典型的に0.05−1000μm、好ましくは0.05−100μm、特に好ましくは0.05−10μm、より好ましくは0.10−1μm、最も好ましくは0.15−0.5μmである。
【0049】
各空隙のエッチング深さ(d
d)(同じであってもよいし、異なっていてもよい)は、典型的に0.05−10000μm、好ましくは0.05−1000μm、特に好ましくは0.05−100μm、より好ましくは0.10−10μmである。
【0050】
思慮深く選択されたd
nの値は、空隙の周囲の内部サブミクロン電極の位置付けと組み合わさって、空隙内への物質の輸送を促進し、それにより、空隙の外部からの電気活性種の電気化学的検出の信号対雑音比を増大させる。この改善(改善2)は改善1に対して付加的なものであり、これら2つの効果の独立した最適化によって最大の改善が達成される。
【0051】
寸法4
複数の空隙は、例えば標準的なフォトリソグラフィ技術を用いてパターニング及びエッチングを行うことで、正確に定められた間隔又はピッチ(x及びy)でアレイ状に配列されることができる。これは、例えば、異なる空隙の物質輸送枯渇領域の重なりのための時間の制御を可能にする。
【0052】
ピッチ(x及びy)は、典型的に0.5−10000μm、好ましくは1.0−5000μm、より好ましくは10−1000μmである。
【0053】
好ましくは、x及びyはd
wより遙かに大きい。例えば、x=2d
wである。例えば、y=3d
wである。こうすることは、長時間であっても空隙同士の間での物質輸送を介した相互作用を最小化するとともに、全ての空隙からのほぼ定常的な応答を生成し、それにより、全ての空隙の近傍において電気活性種の電気化学的検出の信号対雑音比を増大させる。こうすることはまた、各空隙内の内部サブミクロン電極による、空隙の外側の電気活性種の電気化学的検出を促進させることになる(改善3)。全体信号は空隙の数によって左右される。故に、如何なる所与のアレイサイズに対しても、最大の信号及び信号対雑音比の双方を与える最適な空隙間隔が存在する。この改善(改善3)は、改善1及び2に対して付加的なものである。高い定常電流ひいては優れた信号対雑音比を可能にするこれら3つの改善の独立した最適化によって、最大の改善が達成される。
【0054】
電極アセンブリは更に、内部サブミクロン電極の面から、電気コンタクトリップへの接続を完成させる‘バックプレーン’内部サブミクロン電極までの効率的な導電路、を提供するビアを有していてもよい。
【0055】
本発明は、実験的測定の適用可能性を増大させ得る更なる使用に適している(例えば、電気化学的及び光学的なシミュレーション及び/又は実験を組み合わせることによる)。これは、例えばDNAマイクロアレイ実験に使用される蛍光励起・検出方法など、光学的にシミュレートされ且つ/或いは取り調べられることが可能な被試験溶液の場合に適用可能である。一例において、複数の絶縁キャップ層のうちの1つ以上が、井戸に光を導き入れる、あるいはそこから導き出す光導波路にされ得る。隣接し合う層の屈折率が、(光ファイバのように)効率的な光の内部反射が起こるようなものにされ、これらの層が変形されたときに効率的な光の生成及び収集が可能にされ得る。これは、積層構造のマスクレイアウトへのインテグレーションが可能な光インタコネクト系の設計を必要とする。また、とりわけ例えば酸化シリコン及び窒化シリコンなどの標準的な製造材料といった、数多くの好適な誘電体層が導波路材料として用いられ得る。光の導入及び収集は、アレイの周囲で外部的に行われることができ、光監視の使用により、実験結果の組に感度及び/又は特異性が付加され得る。広範囲での照射及び収集は、複数の孔の同時刺激及び調査を可能にし、それにより応答の振幅を増大させる。検出は、入射光に対して平行(例えば、吸収測定の場合)、あるいは入射光に対して垂直(例えば、(入射放射線と異なる波長での)高感度発光、又は(入射放射線と同一の波長での)散乱検出の場合)に行われ得る。この取り組みにおいて、光学的手法は、電気活性種を生成し、光プローブを刺激し、あるいは(吸収又は屈折率変換の何れかに関して)光学的変化を測定するため、あるいはこれらの技術全ての組み合わせのために使用され得る。これらの技術は、電極系に関する電気化学的方法と組み合わせて行われてもよいし、別個に行われてもよい。光学的調査は、透過光又は反射光を適宜監視することによって実現され得る。光学的調査はまた、複数の電極構成に対して、縦方向で異なる絶縁キャップ層を介して異なる波長の光を使用することにより、多重化されてもよい。
【0056】
更なる一態様において、本発明は、電極の優れた限界を妥協することなく、マイクロスケール及びナノスケールの電極を製造する既知の技術の実質的な限界に対処する。
【0057】
更なる一態様によれば、本発明は、
所定の厚さの導電層上に所定の厚さの絶縁キャップ層を形成し、それにより前記導電層の電気コンタクト用の縁部のみを露出させる工程、及び
前記導電層及び前記絶縁キャップ層内に、各空隙が所定の横方向寸法、所定の深さ及び所定の形状を有する空隙のアレイをエッチングする工程、
を有する、積層構造を有する電極アセンブリの製造方法を提供する。
【0058】
本発明に係る方法の上述の所定のパラメータ群を予め決定することにより、微小電極を準備する既知の方法の特定の限界を解決することが可能である。
【0059】
好ましくは、この方法は更に、工程(a)又は(b)に先立って、前記導電層を絶縁基板層上に形成する工程を有する。