特許第5957566号(P5957566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5957566
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20160714BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   A61F13/532 210
   A61F13/47
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-66944(P2015-66944)
(22)【出願日】2015年3月27日
【審査請求日】2015年11月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】小縄 聡子
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−204726(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3172565(JP,U)
【文献】 特開2009−131510(JP,A)
【文献】 特開2007−130819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間に高吸水性ポリマーが配置された吸収体を含む吸収性物品であって、
前記上層シートは、肌側に膨出する前記高吸水性ポリマー充填用の空間部を形成する突出部が複数設けられるとともに、前記突出部の周縁に周方向に沿って間欠的に前記上層シートと下層シートとが接合された接合部が設けられ、隣り合う前記接合部同士の周方向に沿う離間距離は、未吸水時の前記高吸水性ポリマーの平均粒径より大きく、前記平均粒径の3倍より小さいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記突出部の平面形状は、多角形、菱形、円、楕円及び砂時計形からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記接合部の長さを相対的に長くした液拡散規制用接合部が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
隣り合う前記突出部のそれぞれの周縁に配置された前記接合部同士が所定の間隔をあけて並列的に配置された液誘導用接合部が設けられている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の周縁部に周方向に沿って連続的に前記上層シートと下層シートとが接合された周縁接合部が設けられている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記空間部の体積と、この空間部に充填される前記高吸水性ポリマーの体積との比であるポリマー充填率は、10%以上70%以下である請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体の非肌側又は肌側に、吸水性の繊維集合体を含む繊維集合体層が配置されている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは上層シートと下層シートとの間に高吸水性ポリマーが配置された吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、体液を吸収し保持する機能を備えた吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、前記吸収体として、2層のシート間に高吸水性ポリマーを配置した構造を有するものが提案されている。例えば、下記特許文献1においては、上面シート、下面シートとこれらの間に吸収ポリマーを有する吸収シートであって、前記上面シートと下面シートを接合する接合部で周辺が囲まれた非接合部による、平面視で長軸方向と短軸方向を有する形状のポケットを有し、前記吸収ポリマーがポケットの長軸方向に移動可能に配されている吸収シートが開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2においては、2枚のシート間に高吸水性ポリマー粒子を介在させ、2枚のシートの対向面の一方に、ポリマー粒子固定用ホットメルト接着剤が塗布されている第1接合域と、シール用ホットメルト接着剤が塗布されていて前記第1接合域を囲んでいる第2接合域とが形成され、前記第1接合域は、ポリマー粒子固定用ホットメルト接着剤を介して対向面の一方に接合している吸水性物品が開示されている。
【0005】
更に、下記特許文献3においては、吸収体が、当該吸収体の内部を移動可能な吸収性ポリマー粒子を有するポリマー粒子含有層を備え、前記ポリマー粒子含有層は、吸収体の幅方向の一端から他端に亘って延在して、長手方向の吸収性ポリマー粒子の移動を規制する複数の第1規制部と、隣り合う前記第1規制部により区画された領域において、当該区画された領域の長手方向の長さより短く且つ長手方向に沿って延在して、幅方向の吸収性ポリマー粒子の移動を規制する第2規制部とを備えている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−131510号公報
【特許文献2】特開2012−152471号公報
【特許文献3】特開2012−115390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収シートでは、吸水する前の吸収ポリマーが吸収シートの幅方向に亘って設けられたポケットを自由に動き得るため、着用者の姿勢によっては、吸収ポリマーがポケットの一方側に偏って、体液が吸収ポリマーに効率良く吸収されない場合があった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸水性物品では、ポリマー粒子がホットメルト接着剤によって2枚のシート間に接合しているため、2枚のシート間に浸透した体液の平面方向に対する拡散性が悪く、体液がポリマー粒子に効率良く吸収されないおそれがあった。
【0009】
更に、上記特許文献3記載の吸収性物品では、前記第1規制部及び第2規制部によってポリマー粒子の移動が規制されているが、吸収体が大量の体液を吸収した場合などには、体液の流れに乗ってポリマー粒子が規制部を越えて移動する可能性があり、その場合には吸収体の安定した吸収量が維持できないおそれがあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、体液の拡散性を良好にするとともに、安定した吸収量が維持できるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間に高吸水性ポリマーが配置された吸収体を含む吸収性物品であって、
前記上層シートは、肌側に膨出する前記高吸水性ポリマー充填用の空間部を形成する突出部が複数設けられるとともに、前記突出部の周縁に周方向に沿って間欠的に前記上層シートと下層シートとが接合された接合部が設けられ、隣り合う前記接合部同士の周方向に沿う離間距離は、未吸水時の前記高吸水性ポリマーの平均粒径より大きく、前記平均粒径の3倍より小さいことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、上層シートと下層シートとの間に高吸水性ポリマーが配置された吸収体において、前記上層シートは、肌側に膨出する高吸水性ポリマー充填用の空間部を形成する突出部が複数設けられるとともに、前記突出部の周縁に周方向に沿って間欠的に前記上層シートと下層シートとが接合された接合部が設けられているため、上層シートを透過した体液が、間欠的に配置された接合部の間欠部分(非接合部)を通って隣接する空間部に速やかに移行でき、平面方向への体液の拡散性に優れるようになる。また、前記空間部は、前記突出部の周縁に周方向に沿って間欠的に配置された前記接合部で周囲を仕切られているため、高吸水性ポリマーが収容された状態が保持でき、安定した吸収量が維持できるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記突出部の平面形状は、多角形、菱形、円、楕円及び砂時計形からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記突出部の平面形状を例示するとともに、多角形、菱形、円、楕円及び砂時計形からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成することによって、体液の拡散性を良好にし、体液が高吸水性ポリマーに効率良く吸収できるようにしている。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記接合部の長さを相対的に長くした液拡散規制用接合部が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、前記接合部の長さを他の部分より相対的に長くすることによって一定方向への体液の拡散を規制した液拡散規制用接合部を設けている。前記液拡散規制用接合部は、特に、着用者の体液排出部位に対応する領域の幅方向両側部に長手方向に沿って設けるのが好ましく、これにより、体液が幅方向に拡散して横漏れが生じるのを防止するのが好ましい。
【0017】
請求項4に係る本発明として、隣り合う前記突出部のそれぞれの周縁に配置された前記接合部同士が所定の間隔をあけて並列的に配置された液誘導用接合部が設けられている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、隣り合う突出部のそれぞれの周縁に配置された前記接合部同士が所定の間隔をあけて並列的に配置された液誘導用接合部を設けることにより、体液を一定の方向に誘導し、幅方向端部からの横漏れなどが発生するのを防止している。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記吸収体の周縁部に周方向に沿って連続的に前記上層シートと下層シートとが接合された周縁接合部が設けられている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、吸収体の周縁部を前記周縁接合部で連続的に接合することにより、吸収体の周縁から高吸水性ポリマーが脱落するのを防止している。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記空間部の体積と、この空間部に充填される前記高吸水性ポリマーの体積との比であるポリマー充填率は、10%以上70%以下である請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、前記空間部に充填されるポリマー充填率が10%より低いと体液の吸収効率が悪くなり、70%より高いと体液が拡散しにくくなるため、空間部のポリマー充填率を10%以上70%以下に規定している。
【0023】
請求項7に係る本発明として、前記吸収体の非肌側又は肌側に、吸水性の繊維集合体を含む繊維集合体層が配置されている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項7記載の発明では、前記吸収体を繊維集合体層と組み合わせることにより、体液吸収性をより一層高めている。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、体液の拡散性が良好になるとともに、安定した吸収量が維持できる吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】吸収体4の平面図である。
図4図3のIV−IV線矢視図(接合部15を通る横断面図)である。
図5図3のV−V線矢視図(非接合部16を通る横断面図)である。
図6】(A)は突出部の周縁を連続的に接合した場合、(B)は突出部14の周縁を間欠的に接合した本発明の場合を示す、体液拡散状態の平面図である。
図7】接合部15の配置パターンの変形例を示す平面図である。
図8】(A)、(B)は、突出部14の変形例を示す吸収体4の平面図である。
図9】(A)、(B)は、突出部14の配置パターンの変形例を示す平面図である。
図10】液拡散規制用接合部17を設けた吸収体4の平面図である。
図11】液拡散規制用接合部17を設けた場合の体液拡散状態を示す拡大平面図である。
図12】液誘導用接合部18を設けた場合の体液の拡散状態を示す平面図である。
図13】吸収体4の製造装置20を示す側面図である。
図14】(A)〜(D)は、吸収体4の製造手順を示す断面図である。
図15】連続する吸収体4、4の裁断位置を示す平面図である。
図16】他の形態例に係る生理用ナプキン1の断面図(その1)である。
図17】他の形態例に係る生理用ナプキン1の断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された2層のシート間に高吸水性ポリマーが配置された構造からなる吸収体4と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。また、前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2、透液性表面シート3の外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の側縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0029】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0030】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3は、後段で詳述する吸収体4の上層シート10が肌当接面層を構成する場合には、設けなくてもよい。
【0031】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、肌側に配置された上層シート10と非肌側に配置された下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が配置された構造を有している。
【0032】
前記上層シート10としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、前記透液性表面シート3と同様に、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができる。前記不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。前記多孔性プラスチックシートの開孔径は、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、高吸水性ポリマー12の外形より小さくするのが好ましい。また、後段で詳述するように、上層シート10は所定の凹凸加工が成されるため、熱可塑性を有する素材を含むのが好ましい。
【0033】
前記下層シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートの他に、遮水性を有するシート材を用いることが可能である。前記上層シート10と同様に、不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。前記多孔性プラスチックシートの開孔径は、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、高吸水性ポリマー12の外形より小さくするのが好ましい。前記遮水性のシート材としては、前記不透液性裏面シート2と同様の素材を用いることができる。
【0034】
前記高吸水性ポリマー12としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0035】
一方、本生理用ナプキン1の表面側の両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0036】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0037】
前記サイド不織布7の内方側は、図2に示されるように、前記サイド不織布7をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1または複数の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材8,8が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を肌側に起立させた立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0038】
〔吸収体4について〕
以下、前記吸収体4について詳細に説明する。前記吸収体4は、図3図5に示されるように、肌側(透液性表面シート3側)に配置された上層シート10と非肌側(不透液性裏面シート2側)に配置された下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が配置された構造を有している。
【0039】
前記上層シート10は、肌側に膨出する前記高吸水性ポリマー12の充填用の空間部13を形成する突出部14が複数設けられている。すなわち、前記上層シート10は、肌側に膨出する多数の前記突出部14、14…を備えた凹凸形状に形成されている。一方、前記下層シート11は、平坦な平面状に形成されている。このため、前記上層シート10の非肌側に前記下層シート11を積層した状態で、前記上層シート10と下層シート11との間に、前記突出部14の内部に前記空間部13が形成されるようになる。そして、この空間部13に所定量の高吸水性ポリマー12が収容されている。
【0040】
前記上層シート10と下層シート11とは、前記突出部14の周縁の前記上層シート10が非肌側に凸となる部分において、周方向に沿って間欠的に配置された接合部15、15…で接合されている。前記突出部14の周方向に沿って隣り合う前記接合部15、15同士の間欠部は、前記上層シート10と下層シート11とが接合されない非接合部16とされている。すなわち、前記突出部14の周縁は、上層シート10と下層シート11とが接合された接合部15と、上層シート10と下層シート11とが接合されない非接合部16とが、周方向に沿って交互に配置された間欠接合部とされている。
【0041】
前記接合部15としては、ホットメルト接着剤を塗布することにより、上層シート10と下層シート11とを接着したものでもよいし、上層シート10の外面側からの圧搾時に加熱又は超音波放射することにより、上層シート10と下層シート11とを融着したものでもよい。
【0042】
隣り合う前記空間部13、13同士は、前記接合部15によって仕切られ(図4)、前記非接合部16において連通している(図5)。このため、前記接合部15においては、体液が堰き止められて隣接する空間部13に体液が移動しにくくなるが、前記非接合部16においては、上層シート10と下層シート11との間の隙間を通って、隣接する空間部13に容易に体液が移動できるようになっている。
【0043】
体液の拡散状態について、図6に基づいて説明する。図6(A)は、本発明には含まれない突出部の周縁を連続的に接合した場合、図6(B)は突出部14の周縁を間欠的に接合した本発明の場合である。同図6(A)に示されるように、連続的な接合部で接合した場合には、この接合部で体液が堰き止められ、隣接する空間部に体液が拡散しにくくなるため、一部の空間部の高吸水性ポリマーに体液が吸収され、吸収効率が悪化するとともに、この一部の空間部のポリマー吸水量が極端に多くなって、吸水時に周辺より際立って肌側に膨出するので、装着時に違和感を生じやすいことに加え、この膨出した部分に圧力が集中ことにより逆戻りが発生しやすいという問題があった。
【0044】
これに対し、同図6(B)に示されるように、本発明に係る生理用ナプキン1では、空間部13の周囲が接合部15と非接合部16とを交互に配置した間欠接合部で接合されているため、前記接合部15においては体液が拡散しにくくなっているものの、前記非接合部16を通じて隣接する空間部13に体液が拡散しやすくなっている。このため、広い範囲の高吸水性ポリマー12に体液が吸収される結果、吸収効率が向上し、速やかに体液が吸収できるようになる。また、広い範囲に分散して体液が吸収されるため、高吸水性ポリマー12の吸水時において、装着時の違和感や圧力が集中することによる逆戻りの発生などが防止できる。更に、前記空間部13は、前記突出部14の周縁に周方向に沿って間欠的に配置された接合部15、15…で周囲を仕切られているため、高吸水性ポリマー12が内部に収容された状態が保持でき、安定した吸収量が維持できるようになる。
【0045】
前記突出部14の周縁に設けられる間欠接合部のうち、隣り合う接合部15、15同士の周方向に沿う離間距離(非接合部16の周方向に沿う長さ)は、未吸水時の高吸水性ポリマー12の平均粒径の3倍より小さくするのが好ましい。これにより、前記非接合部16を通じて隣接する空間部13に流れる体液の流れに乗って、未吸水時の高吸水性ポリマー12が移動するのが防止でき、各空間部13のポリマー充填率を一定に保持することが可能となる。前記非接合部16の長さは、非接合部16からの高吸水性ポリマー12の流出を防止するという観点からは、高吸水性ポリマー12の平均粒径より小さくするのが好ましいが、高吸水性ポリマー12の平均粒径はおよそ300〜500μmであるので、以下の理由から、高吸水性ポリマー12の平均粒径より大きくしても構わない。(1)非接合部16の長さをポリマーの平均粒径より小さくすると製造時に非接合部16を形成するエンボスロールの設計上の制約が大きくなる。(2)非接合部16の両端に隣接する接合部15、15によって上層シート10と下層シート11とが接合されているため、非接合部16の上層シート10と下層シート11との隙間が小さく抑えられ、未吸水時でも高吸水性ポリマー12の流通が生じにくい。(3)また高吸水性ポリマー12は体液に触れた時点で吸収スピードは緩やかながら膨潤し始めるため、非接合部16の長さをポリマーの平均粒径より大きくしても体液の流れに乗って流出しにくい。
【0046】
なお、未吸水時の高吸水性ポリマー粒子の平均粒径は、重量基準粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。この場合における重量基準粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定される。すなわち、内径150mm、深さ45mmの710μm、500μm、300μm、150μm及び106μmの目開きのふるいを、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
【0047】
前記突出部14の周縁に設けられる間欠接合部は、前記突出部14の平面形状に沿って設けるのが好ましい。前記接合部15は、直線状、曲線状又はドット状などの適宜の形状で形成することが可能である。図3では、格子状に配置された四角形の突出部14の周縁を囲むように、直線状の接合部15が吸収体4の長手方向及び幅方向にそれぞれほぼ等間隔に形成してある。
【0048】
四角形の突出部14を格子状に配置した場合において、図3に示されるように、格子の各交点で長手方向及び幅方向に沿う接合部15が交差するように配置してもよいし、図7に示されるように、格子の各交点が非接合部16となるように配置してもよい。また、これらの両方を組み合わせて配置してもよい。
【0049】
前記間欠接合部は、突出部14の周縁のうち、少なくとも吸収体4の長手方向に対して、1箇所以上の非接合部16が設けられるようにするのが好ましい。これにより、空間部13内の体液が前記非接合部16を通して、少なくとも吸収体4の長手方向に拡散できるようになる。また、図3及び図7に示されるように、前記非接合部16は、突出部14の周縁のうち、吸収体4の長手方向及び幅方向の両方向に設けるのが好ましく、これにより体液の拡散方向の自由度を高くすることができる。ただし、後段で詳述する体液拡散規制用接合部を設ける場合は、その方向に対して前記非接合部16を設けないのが好ましい。
【0050】
前記突出部14は、前記吸収体4の平面に対して、長手方向及び幅方向にそれぞれ複数配置されたパターンで設けるのが好ましい。これにより、吸収体4が長手方向及び幅方向にそれぞれ複数の空間部13、13…で仕切られるため、各空間部13に収容された高吸水性ポリマー12が大きく偏るのが防止できるとともに、体液が隣接する空間部13を順次拡散する過程で、各空間部13に収容された高吸水性ポリマー12に吸収されるため、安定した吸水量が確保されるようになる。
【0051】
前記突出部14の平面寸法は、吸収体4の長手方向に対しては5mm〜20mm、吸収体4の幅方向に対しては3mm〜15mmとするのが好ましい。
【0052】
前記突出部14は、図3に示される例では、吸収体4の幅方向及び長手方向の各方向に亘ってほぼ均等の大きさで配置されているが、図8に示されるように、吸収体4の部位によって突出部14の大きさを変化させてもよい。例えば、図8に示されるように、着用者の排血口部に対応する領域においては、空間部13内での高吸水性ポリマー12の偏りを極力防止し、体液と高吸水性ポリマー12とが効率良く接触して体液が高吸水性ポリマー12に速やかに吸収されるようにするため、突出部14を相対的に小さな平面形状で形成することができる。図8(A)では、着用者の排血口部を中心として、吸収体4の長手方向及び幅方向に亘ってそれぞれ相対的に小さな平面形状の突出部14を設けてあり、これらが交差する排血口部対応領域で前記突出部14の平面形状を更に小さく形成している。図8(B)では、着用者の排血口部に対応する領域のみを相対的に小さな平面形状の突出部14としている。
【0053】
前記突出部14の平面形状は、四角形、六角形、八角形などの多角形、菱形、円、楕円及び砂時計形からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで構成することが可能である。すなわち、突出部14の平面形状は、1つの形状で構成する必要はなく、2種以上の形状のものを組み合わせて構成してもよい。例えば、図9(A)では、円形又は楕円形の第1突出部14a、14a…を吸収体4の幅方向及び長手方向にそれぞれ整列するように格子状に配置するとともに、四隅が前記第1突出部14a、14a…で囲まれた領域に菱形の第2突出部14bを配置している。また、同図9(B)では、円形又は楕円形の第1突出部14c、14c…を吸収体4の長手方向に連続して配置するとともに、幅方向に間隔をあけて配置し、かつ両側が前記第1突出部14c、14cで挟まれた部分に略砂時計形の第2突出部14d、14d…を長手方向に連続して形成している。このように、平面形状の異なる突出部14を設けることにより、平面形状が異なる隣接する突出部14に体液が拡散して、内部の高吸水性ポリマー12に吸収されやすくなる。
【0054】
前記突出部14の断面形状は、図4及び図5に示されるように、表面がほぼ平坦な矩形状断面でもよいし、肌側にドーム状に膨出する曲線状断面や肌側に向けて直線状の斜面が形成される錐体状断面でもよい。また、前記突出部14を2種類以上の平面形状で形成した場合、各突出部の断面形状は同じにしてもよいし、違えてもよい。
【0055】
前記接合部15は、突出部14の全周に亘ってほぼ均等な長さで形成することもできるし、異なる長さの接合部15を組み合わせて構成することもできる。異なる長さの接合部15を組み合わせることにより、上層シート10と下層シート11との接合強度を調整しつつ体液の拡散方向の制御や拡散速度の調整を行うことができるようになる。
【0056】
図10に示されるように、前記接合部15として、体液の拡散方向を制御するため、他の接合部より長さを相対的に長くした液拡散規制用接合部17を設けることができる。前記液拡散規制用接合部17は、図10に示されるように、少なくとも着用者の排血口部に対応する領域の幅方向両側部にそれぞれ、長手方向に沿って設けられた液拡散規制用接合部17aを含むのが好ましい。これにより、排血口部から排出された体液は、両側部に設けられた前記液拡散規制用接合部17a、17aによって幅方向への拡散が規制され、長手方向に拡散しやすくなるため、幅方向両側部からの体液の漏れが防止できるようになる。また、前記液拡散規制用接合部17は、図10に示されるように、排血口部の両側に設けられた液拡散規制用接合部17a、17aの幅方向の離間部分を幅方向に跨るとともに、この液拡散規制用接合部17a、17aより前後方向外方側に離間してそれぞれ幅方向に沿って設けられた液拡散規制用接合部17bを含むとともに、排血口部の両側に設けられた液拡散規制用接合部17aとその前後に離間して設けられた液拡散規制用接合部17bとの前後方向の離間部分を前後方向に跨るとともに、前記液拡散規制用接合部17a、17bより幅方向外側に離間してそれぞれ前後方向に沿って設けられた液拡散規制用接合部17c、17c…を含むのが好ましい。前記液拡散規制用接合部17b、17cを設けることにより、前記液拡散規制用接合部17aによって前後方向への拡散が促進された体液が前記液拡散規制用接合部17bによって幅方向への拡散に変化するとともに、前記液拡散規制用接合部17cによって再度前後方向への拡散に変化するというように、体液をジグザグ状に拡散させることができるようになり、体液をより広い範囲に拡散させ、効率良く速やかに高吸水性ポリマー12に吸収させることができるようになる。
【0057】
また、図11に示されるように、前述の楕円形の第1突出部14aを格子状に配置するとともに、前記第1突出部14a、14a…で四隅が囲まれた領域に菱形の第2突出部14bを配置したパターンにおいて、相対的に長さを長くした液拡散規制用接合部17を、前記第1突出部14aに対し、吸収体4の幅方向両側部及び長手方向両端部にそれぞれ設けるとともに、それ以外の斜め方向部分にドット状の接合部15、15…を設けることができる。これにより、前記液拡散規制用接合部17が設けられた吸収体4の幅方向及び長手方向に直進する体液の拡散を制限して、前記ドット状の接合部15との間の非接合部16を通じて体液が斜め方向、すなわち第2突出部14bが配置された方向に拡散しやすくなる。このように体液が拡散する過程で、第1突出部14a及び第2突出部14bの各空間部13に収容された高吸水性ポリマー12に体液が吸収されるため、効率良く速やかに体液が吸収できるようになる。
【0058】
前記液拡散規制用接合部17の長さは、他の接合部15の長さに対し、2倍〜10倍程度とするのが好ましい。また、前記液拡散規制用接合部17の幅は、他の接合部15の幅と同等としてもよいし、液拡散を制限する効果を高めるため広くしてもよい。
【0059】
一方、図12に示されるように、隣り合う突出部14、14の接合部15、15同士を所定の間隔をあけて並列的に配置することにより、液誘導用接合部18を設けることも可能である。前記液誘導用接合部18は、並列的に配置された接合部15、15の間に沿って体液を拡散させることにより、体液の拡散方向を制御するものであり、体液の拡散性を高めるためのものである。前記液誘導用接合部18において接合部15、15を並列的に配置するとは、直線的に形成された接合部15、15を平行して配列する場合の他、図12に示されるように、曲線的に形成された接合部15、15の沿う方向が平行するように配置したものも含む概念である。また、図12では、円弧状に形成された接合部15、15の凸部側を対向させた背合わせに配置しているが、凹部側を対向させた腹合わせに配置してもよいし、同一の方向に凸となるように平行して配置してもよい。具体的に、図12では、幅方向及び長手方向の両端部にそれぞれ周方向に沿う円弧状の接合部15が配置された楕円形状の第1突出部14eを、幅方向及び長手方向に所定の間隔をあけて整列させることにより格子状に配列するとともに、四隅が前記第1突出部14e、14e…で囲まれた領域に菱形の第2突出部14fを配置したパターンを有し、隣り合う前記第1突出部14e、14e同士の前記円弧状の接合部15、15によって前記液誘導用接合部18を形成している。これによって、図12に示されるように、第2突出部14fに流れ込んだ体液が、斜め方向の非接合部16を通じて隣接する第1突出部14eに拡散するとともに、前記液誘導用接合部18を構成する接合部15、15間に沿って隣接する第2突出部14fにも拡散するようになり、幅方向及び長手方向にも体液の拡散性を高めることができるようになる。
【0060】
前記突出部14は、内部に収容された高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、上層シート10及び下層シート11の長手方向及び幅方向の端部まで達しない中間領域に形成するのが好ましい。
【0061】
図3に示されるように、前記吸収体4の周縁部においては、空間部13に収容された高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、前記上層シート10及び下層シート11が吸収体4の周方向に沿って連続的に接合された周縁接合部19を設けるのが好ましい。この周縁接合部19は、図3に示されるように、吸収体4の周縁部に配置された突出部14の周縁に設けられた間欠接合部の一部を構成してもよいし、図示しないが、突出部14の周縁に設けられた間欠接合部の外側に離間して設けるようにしてもよい。
【0062】
ところで、前記空間部13の体積Vと、この空間部13に充填される高吸水性ポリマー12の体積Pとの比であるポリマー充填率R(R=P/V×100%)は、10%以上70%以下とするのが好ましい。ポリマー充填率Rが10%より小さいと、体液の吸収効率が悪く、ポリマー充填率Rが70%より大きいと、体液がポリマー間を移動しにくく、空間部13で体液の拡散性が悪化するおそれがある。所定のポリマー充填率Rで空間部13に高吸水性ポリマー12を充填することにより、湿潤時に高吸水性ポリマー12が膨潤したときの空間が確保できるとともに、未吸水時に空間部13内の空間によりクッション性が付与できるようになる。
【0063】
前記空間部13に充填される高吸水性ポリマー12の重量は、20〜300g/m、好ましくは80〜200g/mとするのがよい。
【0064】
前記吸収体4を製造するには、図13及び図14に示されるように、前記突出部14に対応する多数の凸状部21a、21a…が配列された第1エンボスロール21と、前記凸状部21aに対応する多数の凹状部22a、22a…が配列された第2エンボスロール22との間に、上層シート10を通過させることにより、前記凸状部21aと凹状部22aとの噛み合わせによって前記突出部14を形成する製造装置20を用いるのが好ましい。
【0065】
その後、前記上層シート10が配置された前記第2エンボスロール22の表面に高吸水性ポリマー12を散布し、凹部に高吸水性ポリマー12を収容するとともに、第2エンボスロール22とフラットロール23との間に、別経路から搬送された下層シート11を積層した状態で通過させることにより、前記接合部15及び周縁接合部19で前記上層シート10と下層シート11とを接合し一体化させる。これらの接合には、前記第2エンボスロール22の凸部に対応する上層シート10の外面にホットメルト接着剤等を塗布しておき下層シート11と接着するか、前記フラットロール23との噛み合わせ時に前記第2エンボスロール22の凸部を加熱又は超音波放射により、前記上層シート10と下層シート11とを融着させてもよい。
【0066】
前記第2エンボスロール22の凹状部22aの底部に吸引口を設けることによって、エンボス時に上層シート10を吸引しエンボスしやすくするとともに、高吸水性ポリマー12の散布時に吸引してポリマーの落下を防止することができる。また、高吸水性ポリマー12の散布後、スクレーパーなどで表面を均すことによって、空間部13に収容される高吸水性ポリマー12の量を調整してもよい。
【0067】
しかる後、図15に示されるように、長手方向に連続する吸収体4、4…を、前記突出部14が設けられない上層シート10と下層シート11との接合部にて裁断する。
【0068】
前記吸収体4は、図2に示されるように、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に、単体で介在さてもよいし、図16及び図17に示されるように、前記吸収体4の非肌側又は肌側に配置したパルプなどの吸水性の繊維集合体を含む繊維集合体層30との積層体として介在させてもよい。前記繊維集合体層30は、少なくとも吸水性の繊維集合体で構成され、高吸水性ポリマーを混入してもよい。
【0069】
図16では、吸収体4の非肌側に繊維集合体層30を配置し、これら吸収体4と繊維集合体層30との積層体を透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に介在させている。これにより、上層の吸収体4を透過した体液が下層の繊維集合体層30に吸収され保持されるようになる。この場合、吸収体4を構成する下層シート11としては、透水性のシート材を用いるのが好ましい。
【0070】
図17では、吸収体4の肌側に繊維集合体層30を配置し、これら吸収体4と繊維集合体層30との積層体を透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に介在させている。これにより、繊維集合体層30で拡散した体液を吸収体4で速やかに吸収できるようになる。この場合、図17に示されるように、前記繊維集合体層30の幅方向中央部に長手方向に沿って貫通するスリット31を設けてもよい。これにより、このスリット31が体液の一時貯留空間として作用し、このスリット31に沿って体液を長手方向に拡散させつつ、吸収体4において体液を拡散できるので、拡散性に優れ効率良く速やかに吸収体4に吸収させることが可能となる。
【0071】
前記吸収体4と繊維集合体層30との積層体とした場合、吸収体4は、繊維集合体層30の全面に配置する必要はなく、例えば、排血口部を含むナプキン中央領域のみに配置したり、排血口部を囲む環状領域のみに配置したりすることが可能である。この場合、繊維集合体層30は、前記外周フラップ部を残した生理用ナプキン1の外周部まで配置されている。
【0072】
また、図示しないが、前記透液性表面シート3は必ずしも必須の要素ではなく、吸収体4の上層シート10を肌当接面層として機能させた場合には、透液性表面シート3を配置しなくてもよい。これにより、生理用ナプキン1が更に薄型化できるとともに、資材数の減少によりコスト削減が可能となる。
【0073】
〔他の形態例〕
上記形態例では、第1突出部と第2突出部とからなる2種類の突出部が設けられた例を図示していたが(図9)、3種類以上の突出部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、7…サイド不織布、10…上層シート、11…下層シート、12…高吸水性ポリマー、13…空間部、14…突出部、15…接合部、16…非接合部、17…液拡散規制用接合部、18…液誘導用接合部、19…周縁接合部
【要約】
【課題】体液の拡散性を良好にするとともに、安定した吸収量が維持できるようにする。
【解決手段】肌側に配置された上層シート10と非肌側に配置された下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が配置された吸収体4を含む生理用ナプキン1である。前記上層シート10は、肌側に膨出する前記高吸水性ポリマー12充填用の空間部13を形成する突出部14を複数設けるとともに、前記突出部14の周縁に周方向に沿って間欠的に前記上層シート10と下層シート11とが接合された接合部15を設ける。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17