特許第5957576号(P5957576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アマダの特許一覧

<>
  • 特許5957576-レーザ加工ヘッド 図000002
  • 特許5957576-レーザ加工ヘッド 図000003
  • 特許5957576-レーザ加工ヘッド 図000004
  • 特許5957576-レーザ加工ヘッド 図000005
  • 特許5957576-レーザ加工ヘッド 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957576
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20160714BHJP
【FI】
   B23K26/142
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-120858(P2015-120858)
(22)【出願日】2015年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-52679(P2016-52679A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2015年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-178816(P2014-178816)
(32)【優先日】2014年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和隆
(72)【発明者】
【氏名】小野 育康
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−216281(JP,A)
【文献】 特開2000−263276(JP,A)
【文献】 特開平11−267876(JP,A)
【文献】 特開2004−306106(JP,A)
【文献】 特開2011−005533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズを内部に備えると共に先端部にノズルを備え、かつ前記集光レンズを保護する保護ガラスを内部に備えたレーザ加工ヘッドであって、前記保護ガラスと前記ノズルとの間において、前記保護ガラスの表面と平行な方向へのクロスジェットの流れを形成するためのクロスジェット形成手段を備え、レーザ光を照射してのワークのレーザ加工位置から前記クロスジェットへのヒュームの流れを遮断するためのエアを噴出するエア噴出手段を前記ノズルに備え、前記保護ガラスと前記クロスジェット形成手段との間に、レーザ加工位置から前記保護ガラスの方向へ飛散され、前記クロスジェットを通過することによって曲げられたスパッタを絞る作用をなすアパーチャを備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、前記エア噴出手段は、レーザ加工位置から前記クロスジェットへのヒュームの流れを遮断すると共に、前記クロスジェット形成手段の吸引口方向へのヒュームの流れを遮断する機能を備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、前記エア噴出手段は前記ノズルの先端部に備えられており、かつ前記ノズルの開口部の一端側から当該開口部を横切るエアを偏平状に噴出する構成であることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、前記クロスジェット形成手段の前記吸引口は、前記レーザ加工位置から離反する方向に指向して開口してあり、かつ前記クロスジェット形成手段における下流側には、クロスジェットの流れを、前記レーザ加工位置から離反する方向に案内する案内部材を備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ加工ヘッドにおいて、前記エア噴出手段から偏平状なエアを噴出するために当該エア噴出手段に備えたスリットは、平面視したときに、エアの流れ方向とほぼ平行な対向した側面を、当該スリットのエア流出口に備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、前記スリットの幅寸法は、前記ノズルの開口部の直径より小さいことを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項7】
レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズを内部に備えると共に先端部にノズルを備え、かつ前記集光レンズを保護する保護ガラスを内部に備えたレーザ加工ヘッドであって、ワークにレーザ光を照射してレーザ溶接を行うに際し、レーザ溶接進行方向の前側にワイヤ供給ノズルを備え、前記レーザ光の光軸を間にして前記ワイヤ供給ノズルの反対側にシールドガス供給ノズルを備え、前記保護ガラスと前記ノズルとの間において、前記保護ガラスの表面と平行な方向であってレーザ溶接の進行方向の後方向へのクロスジェットの流れを形成するためのクロスジェット形成手段を備え、前記レーザ溶接位置から前記クロスジェット形成手段の吸引口方向へのヒュームの流れを遮断するためのエアーを、レーザ溶接の進行方向へ噴出するエア噴出手段を前記ノズルに備え、前記保護ガラスと前記クロスジェット形成手段との間に、レーザ加工位置から前記保護ガラスの方向へ飛散され、前記クロスジェットを通過することによって曲げられたスパッタを絞る作用をなすアパーチャを備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工ヘッドに係り、さらに詳細には、レーザ溶接時に生じたスパッタやヒュームが、集光レンズを保護する保護ガラスに付着することを抑制することのできるレーザ加工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工の1例としてのレーザ溶接を行うとき、発生したスパッタやヒュームが、レーザ加工ヘッドに備えた集光レンズなどの光学系に付着することがある。したがって、前記光学系に対するスパッタやヒュームの付着を防止するために、レーザ加工ヘッドに備えた保護ガラスの表面に平行に高速のエアを噴出することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−267874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の構成は、ワークに対してレーザ光を照射してレーザ溶接を行うレーザ溶接加工位置は、シールドガス噴出口を備えたシールドガス供給ノズルによって囲繞されているので、レーザ溶接加工位置へ外部からフイラーワイヤを供給することは難しいものである。また、特許文献1に記載の構成においては、レーザ加工ヘッドに備えたエアーナイフノズルから、保護ガラスと平行に高速のエアーナイフを噴出する構成である。上述のように、高速のエアーナイフを噴出すると、エアーナイフノズルに近接して備えた開口部から大量の外気がレーザ加工ヘッド内に吸引される構成である。
【0005】
したがって、レーザ溶接加工位置において発生し外部へ漏出したヒュームが前記開口部から吸引されることがある。まして、フイラーワイヤを供給する構成においては、前述のシールドガス供給ノズルによってレーザ溶接加工位置を囲繞することは難しく、前記開口部からヒュームが吸引され易いものである。このように、前記開口部からヒュームがレーザ加工ヘッド内へ吸い込まれると、ヒュームが保護ガラスに付着することがある。よって、保護ガラスの長寿命化を図る上においては問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズを内部に備えると共に先端部にノズルを備え、かつ前記集光レンズを保護する保護ガラスを内部に備えたレーザ加工ヘッドであって、前記保護ガラスと前記ノズルとの間において、前記保護ガラスの表面と平行な方向へのクロスジェットの流れを形成するためのクロスジェット形成手段を備え、レーザ光を照射してのワークのレーザ加工位置から前記クロスジェット方向へのヒュームの流れを遮断するためのエアを噴出するエア噴出手段を前記ノズルに備え、前記保護ガラスと前記クロスジェット形成手段との間に、レーザ加工位置から前記保護ガラスの方向へ飛散され、前記クロスジェットを通過することによって曲げられたスパッタを絞る作用をなすアパーチャを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、前記エア噴出手段は、レーザ加工位置から前記クロスジェットへのヒュームの流れを遮断すると共に、前記クロスジェット形成手段の吸引口方向へのヒュームの流れを遮断する機能を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、前記エア噴出手段は前記ノズルの先端部に備えられており、かつ前記ノズルの開口部の一端側から当該開口部を横切るエアを偏平状に噴出する構成であることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、前記クロスジェット形成手段の前記吸引口は、前記レーザ加工位置から離反する方向に指向して開口してあり、かつ前記クロスジェット形成手段における下流側には、クロスジェットの流れを、前記レーザ加工位置から離反する方向に案内する案内部材を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、前記エア噴出手段から偏平状なエアを噴出するために当該エア噴出手段に備えたスリットは、平面視したときに、エアの流れ方向とほぼ平行な対向した側面を、当該スリットのエア流出口に備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、前記スリットの幅寸法は、前記ノズルの開口部の直径より小さいことを特徴とするものである。
【0013】
また、レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズを内部に備えると共に先端部にノズルを備え、かつ前記集光レンズを保護する保護ガラスを内部に備えたレーザ加工ヘッドであって、ワークにレーザ光を照射してレーザ溶接を行うに際し、レーザ溶接進行方向の前側にワイヤ供給ノズルを備え、前記レーザ光の光軸を間にして前記ワイヤ供給ノズルの反対側にシールドガス供給ノズルを備え、前記保護ガラスと前記ノズルとの間において、前記保護ガラスの表面と平行な方向であってレーザ溶接の進行方向の後方向へのクロスジェットの流れを形成するためのクロスジェット形成手段を備え、前記レーザ溶接位置から前記クロスジェット形成手段の吸引口方向へのヒュームの流れを遮断するためのエアーを、レーザ溶接の進行方向へ噴出するエア噴出手段を前記ノズルに備え、前記保護ガラスと前記クロスジェット形成手段との間に、レーザ加工位置から前記保護ガラスの方向へ飛散され、前記クロスジェットを通過することによって曲げられたスパッタを絞る作用をなすアパーチャを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保護ガラスと平行なクロスジェットの流れを形成するクロスジェット形成手段の吸引口方向へのヒュームの流れを遮断するエアを噴出するエア噴出手段を備えているので、クロスジェットの流れにヒュームが吸引されることがなく、前記保護ガラスがヒュームによって汚染されることを抑制でき、長寿命化を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッドの主要な構成を示す説明図で、一部断面してある。
図2図1に示したII部分の拡大図である。
図3】エアナイフ形成部におけるスリットとエアの流れを示す流跡線の関係を示す説明図である。
図4】エアナイフ形成部におけるスリットとエアの流れを示す流跡線の関係を示す説明図である。
図5】エアナイフにおける圧力分布の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッド1は、溶接ロボット(図示省略)におけるロボットアームの先端部に装着して使用されるもので、加工ヘッド本体3を備えている。この加工ヘッド本体3内には、レーザ発振器(図示省略)から発振されたレーザ光LBを集光する集光レンズが備えられている。また、前記加工ヘッド本体3には、前記集光レンズを保護する保護ガラス5を着脱交換自在に備えたガラスホルダ7が、図1において右方向へ引出し可能に備えられている。また、加工ヘッド本体3の先端部にはノズル9が着脱可能に備えられている。
【0017】
さらに、前記加工ヘッド本体3には、ワークWに対してレーザ光LBを照射してレーザ溶接を行う際に、レーザ溶接位置へフイラーワイヤ11を供給するワイヤ供給ノズル13が備えられていると共に、前記レーザ溶接位置へシールドガスを供給するシールドガス供給ノズル15が備えられている。前記ワイヤ供給ノズル13とシールドガス供給ノズル15との位置的関係は、次のとおりである。すなわち、ワークWのレーザ溶接進行方向(図1における矢印A方向)に見て、前記ワイヤ供給ノズル13は、レーザ光LBの光軸の前側に配置してある。そして、前記シールドガス供給ノズル15は、レーザ光LBの光軸を間にして、前記ワイヤ供給ノズル13の反対側、すなわちレーザ溶接の進行方向に見て、前記光軸の後側に配置してある。
【0018】
前記ワイヤ供給ノズル13からフイラーワイヤを供給すると共にレーザ光を溶接位置に照射し、かつシールドガス供給ノズル15からシールドガスを溶接位置へ噴出してレーザ溶接を行うと、レーザ溶接位置からはスパッタ及びヒュームが発生する。そして、スパッタが前記ノズル9内に勢いよく飛び込むと、スパッタは前記保護ガラス5に付着することがある。そこで、前記加工ヘッド本体3には、スパッタから保護ガラス5を保護するスパッタ付着防止手段が講じられている。
【0019】
より詳細には、前記加工ヘッド本体3には、前記保護ガラス5の表面と平行な方向へのクロスジェットの流れを形成するためのクロスジェット形成手段17が備えられている。上記クロスジェット形成手段17は、前記保護ガラス5と前記ノズル9との間において、前記加工ヘッド本体3に一体的に取付けられた開口ブロック19を備えている。この開口ブロック19の上部には、レーザ加工位置から保護ガラス5の方向へ飛散するスパッタを絞る作用をなすリング状のアパーチャ20が備えられている。上記開口ブロック19は、レーザ溶接進行方向(矢印A方向)の反対方向(以後、後方向と称す)に開口した大きな開口部21を備えた形態であって、この開口ブロック19の前側部分には高速エアを噴出する高速エア噴出口23が備えられている。
【0020】
そして、前記開口ブロック19の下部には、前記高速エア噴出口23から噴出された高速エア(高圧エア)の流れを、レーザ光LBの光軸と直交する方向であって後方向への流れに変更するクロスジェット形成部材25が備えられている。このクロスジェット形成部材25は、前後方向(図1において左右方向)に開口した矩形状の連通穴27を備えた箱状に構成してある。上記連通穴27は、前記アパーチャ20における絞り穴の径にほぼ等しい幅に形成してある。
【0021】
そして、前記開口ブロック19の下面と前記クロスジェット形成部材25との間には、前記高速エア噴出口23から噴出されるエアを、レーザ光LBの光軸と直交する方向で、かつ前記保護ガラス5の表面と平行であって、後方向への偏平状の高速エアの流れに変換する偏平状のスリット29が形成してある。また、前記クロスジェット形成部材25には、レーザ光LBが透過自在な上下方向の穴25Hが形成してある。そして、前記ノズル9を下部に備えたノズルホルダ31が前記開口ブロック19の下面に取付けてあり、このノズルホルダ31と前記クロスジェット形成部材25の下面との間には、前後方向に開口した連通部33が形成してある。
【0022】
前記構成により、前記高速エア噴出口23から高圧エアを噴出すると、噴出されたエアは、前記スリット29を通過することにより、前記保護ガラス5の表面と平行な偏平状の高速エアの流れとして、レーザ光LBの光軸に交差(直交)する後方向へのクロスジェットを形成することになる。上記偏平状の高速エア(クロスジェット)の幅は、前記アパーチャ20における絞り穴の径にほぼ等しいものである。上述のように、スリット29から偏平状の高速エア(クロスジェット)が後方向へ噴出されると、前記連通穴27内には、矢印Bで示すように、吸引ガイド部材35の吸引口35Aからクロスジェットの流れに引かれて後方向への大量の高速エアの流れが生じることになる。したがって、レーザ加工位置から保護ガラス5の方向へ飛散したスパッタは、前記スリット29から噴出される高速エア及び厚い層を形成して前記連通穴27内を後方向に流れる大量の高速エアによって後方向へ吹き飛ばされることになる。
【0023】
前述のように、スリット29から高速エアを噴出してクロスジェットを形成するとき、前記連通穴27及び連通部33内へ流れるエアを、レーザ溶接位置から離反した方向である上方向から吸引するために、前記開口ブロック19の前側には前側の上方向に開口した前記吸引ガイド部材35が備えられている。また、前記開口ブロック19の後側には、前記クロスジェットの流れを後斜め上方向へ誘導するための排風ガイド部材37が後上方向に傾斜して備えられている。さらに、前記開口ブロック19には、前記吸引ガイド部材35の開口部35Aの周囲を覆って当該開口部35Aよりも高い位置において前側の上方向に開口した第2吸引ガイド部材39が備えられている。
【0024】
前述したように、レーザ加工位置から保護ガラス5の方向へ飛散するスパッタは、前記クロスジェットによって後方向へ飛散される。そして、前記クロスジェットを通過した一部のスパッタは直進することなく後方向に曲げられるので、アパーチャ20の絞り穴を通過するようなことがなく、前記保護ガラス5にスパッタが付着することを、効果的に防止できるものである。すなわち、クロスジェットとアパーチャ20とによってスパッタが保護ガラス5へ飛散することを二重に防護することとなり、保護ガラス5に対するスパッタの付着を効果的に防止することができるものである。
【0025】
前述のように、高速エア噴出口23から噴出されるエアによって、大量で厚い層を構成する高速エアからなるクロスジェットを形成すると、前記吸引ガイド部材35,39の吸引口の部分に負圧を発生することになる。したがって、レーザ加工位置において発生したヒュームが舞上がると、ヒュームの一部が吸引ガイド部材35,39に吸引され、クロスジェットに混入されることがある。クロスジェットにヒュームの一部が混入されると、前記開口ブロック19における前記開口部21内におけるクロスジェットの上層部の一部の乱流に起因して、極わずかなヒュームが保護ガラス5に付着することがある。したがって、保護ガラス5の長寿命化を図るために、ヒュームの一部がクロスジェットに混入するを防止することが望ましいものである。
【0026】
したがって、本実施形態においては、レーザ加工位置から前記吸引ガイド部材35,39方向へのヒュームの流れを遮断するためのエアナイフを構成するエア噴出手段41が備えられている。より詳細には、図2に詳細に示すように、前記ノズル9の下面には、前記ノズルホルダ31、ノズル9に備えたエア供給孔43からエアの供給を受けるエア噴出口45を備えたリング部材47が着脱可能に備えられている。
【0027】
前記リング部材47におけるエア噴出口45は、レーザ溶接の進行方向に見て後側に備えられている。そして、前記エア噴出口45の下側には、前記エア噴出口45から噴出されたエアを、前記レーザ溶接位置から前記ノズル9内へ入り込む傾向にあるヒューム、及びレーザ溶接位置から前記吸引ガイド部材35,39方向へ上昇して流れる傾向にあるヒュームを遮断するためのエアナイフを形成するためのエアナイフ形成部材49がボルトなどの取付具によって一体的に取付けてある。
【0028】
より詳細には、前記リング部材47の下面と前記エアナイフ形成部材49との間には、前側を開口したスリット51が形成してある。このスリット51は、前記エア噴出口45の下面から噴出されたエアを、リング部材47における開口部47Aの下側を全面的に横切り、かつ偏平状で前方向(矢印C方向)への高速なエアの流れ(エアナイフ)に形成する作用をなすものである。前記スリット51から前方向へ高速で噴出された偏平状のエアの流れは、レーザ溶接位置から前記ノズル9内方向へのヒュームの一部の流れ、及びレーザ溶接位置から前記吸引ガイド部材35,39の吸引方向へ流れる傾向にある一部のヒュームの流れを遮断する作用をなすものである。
【0029】
より詳細には、前記エアナイフ形成部材49における前記スリット51は、平面視又は底面視したときに、図3に示すように、前記リング部材47における前記開口部47A側を開口した矩形状に形成してある。そして、このスリット51に前記リング部材47の前記エア噴出口45が連通してある。上記スリット51において、エアを前記開口部47A側へ噴出するエア流出口53の幅方向の両側(図3において上下方向の両側)には、エアの流れ方向(矢印C方向)とほぼ平行な対向した内側面55が備えられている。
【0030】
なお、前記内側面55の間の幅寸法、すなわちスリット51の幅寸法は、図3に示すように、前記リング部材47の開口部47A、換言すればノズル9における開口部9A(図2参照)の直径より小さなものである。そして、前記スリット51におけるエア流出口53の端縁は、前記リング部材47における前記開口部47Aの周縁よりも外側に位置をずらして配置してある。
【0031】
上記構成において、スリット51のエア流出口53から噴出されるエアの流れをコンピュータ・シミュレーションした結果は、図3に示すとおりであった。
【0032】
図3より理解されるように、スリット51のエア噴出口53からリング部材47における開口部47Aの中心部方向へ指向してエアを噴出すると、流跡線で示されるように、エアの流れは大きく広がることなく収束した状態でもって前記開口部47Aの部分の全面を覆って通過している。しかも、流跡線の分布から明らかなように、前記開口部47Aに対応した位置における流跡線の密度は大である。そして、前記開口部47Aの位置を通過した後においても、前記流跡線の間隔は比較的小さく保持されている。ところで、前述のごとき流跡線を呈する状態においての、エアの流れ内における圧力分布を解析したところ、図5に濃く示されているように、前記開口部47Aの中心を含む範囲に高圧部が発生している。
【0033】
したがって、前述のごとき流跡線を呈するエアの流れにおいては、レーザ加工位置から前記開口部47A内へ飛散する傾向にあるスパッタ、ヒュームが前記開口部47A内へ入り込むことを効果的に防止できるものである。また、前述したごとき流跡線を呈するエアの流れにおいては、前記開口部47Aの位置を通過したエアの流れは、図3に示されているように、むらが少ない安定した流れでもって広がるものである。
【0034】
よって、レーザ加工位置から前記開口部47A内へ、及び吸引ガイド部材35,39における吸引口方向へ舞上る傾向にあるヒュームの一部を、前記吸引口から離反する方向へ効果的に吹き飛ばすことができるものである。換言すれば、レーザ加工位置から前記開口部47A内へ、及び前記吸引ガイド部材35,39の吸引口方向へ流れる傾向にある一部のヒュームの流れを遮断することができるものである。
【0035】
ところで、前記スリット51の形状を、図4に示すごとき構成として、同一条件でもってコンピュータ・シミュレーションを行った結果は、図4に示すとおりであった。すなわち、スリット51の形状は、末広がりの形状であって、前記リング部材47の開口部47A方向へエアを噴出するエア噴出口53の幅方向の両側面57は、末広がりを呈する円弧状の曲面に形成してある。
【0036】
上記構成において、図3に示した場合の条件と同一条件でもってコンピュータ・シミュレーション行ったところ、図4に示すように、エアの流れを示す流跡線は、前記両側面57の広がりに倣って、大きく広がる傾向にある。すなわち、前記開口部47Aの位置に対応した部分における流跡線は粗密である。したがって、流跡線が粗である部分においては、レーザ加工位置から開口部47A内へ飛散する傾向にあるスパッタやヒュームが、前記開口部47A内へ入り込むことを防止することが難しいものである。
【0037】
したがって、エア噴出手段41から偏平状なエアを噴出するためのスリット51の形状は、図3に示すように、スリット51の幅方向の両側であって上記スリット51のエア流出口53の位置に、エアの流れ方向とほぼ平行な内側面55を対向して備えた構成とすることが望ましいものである。また、前記スリット51の幅寸法は、前記開口部47Aの直径より小さいことが望ましいものである。
【0038】
前記構成により、レーザ光LBをワークWのレーザ溶接位置へ照射すると共にワイヤ供給ノズル13からフイラーワイヤ11を供給し、かつシールドガス供給ノズル15からシールドガスの供給を行うことにより、ワークWのレーザ溶接を行うことができる。上述のように、ワークWのレーザ溶接(レーザ加工)を行うとき、レーザ溶接位置からはスパッタが飛散されると共にヒュームが発生する。
【0039】
レーザ溶接位置から飛散するヒューム及びスパッタの一部は、前記エア噴出手段41から噴出されるエアによって、除去される。そして、前記エア噴出手段41の部分を通過した極一部のスパッタは、ノズル9、ノズルホルダ31内を勢いよく通過して保護ガラス5の方向へ飛散する。前述のごとくレーザ溶接を行う際は、クロスジェット形成手段17における前記スリット29から高速エアが後方向へ噴射され、吸引ガイド部材39,35を経て吸引された大量の層の厚いエアがクロスジェットとして、レーザ光LBの光軸と交差するように、後方向へ噴出されている。したがって、前記ノズルホルダ31を通過した極く一部のスパッタは、クロスジェットによって後方向へ吹き飛ばされることとなり、前記保護ガラス5に付着することが防止されるものである。
【0040】
前記クロスジェットは、排風ガイド部材37によって斜め後方向へ指向されて排出されるので、レーザ溶接位置へ噴出されているシールドガスのガス流を乱すようなことがなく、レーザ溶接が良好に行われ得るものである。
【0041】
前述のごとく、クロスジェットを発生させると、吸引ガイド部材35,39の吸引口の部分が負圧になるので、レーザ溶接位置において発生したヒュームの一部が吸引される傾向にある。しかし、エア噴出手段41におけるスリット51から前方向へ高速で噴出されるエアナイフの流れによって吹き飛ばされて、前記ヒュームの一部がノズル9内へ流入することが遮断される。また、レーザ溶接位置から前記吸引ガイド部材35,39の吸引口の方向へ流れる傾向にあるヒュームの1部は、前記エアナイフの流れによって遮断されることになる。したがって、ヒュームの一部が前記クロスジェットに吸引されることが防止され、前記ヒュームから保護ガラス5を保護することができる。よって保護ガラス5の長寿命化を図ることができるものである。
【0042】
以上のごとき説明より理解されるように、レーザ溶接位置から保護ガラス5方向へ直線的に飛散するスパッタは、エア噴出手段41から噴出するエアナイフ及びクロスジェット形成手段17におけるスリット29から噴出される高速のエアーの流れ、及びこの流れに吸引されて連通穴27内を流れる大量の層の厚い高速エアからなるクロスジェット並びにアパーチャ20によって3段階的に保護ガラス5への飛散が防止される。したがって、保護ガラス5へのスパッタの付着を効果的に防止することができるものである。
【0043】
また、レーザ溶接位置で発生したヒュームがノズル9内を経て保護ガラス5へ直線的に移動する場合は、前述のエアナイフ及びクロスジェットによって保護ガラス5への流れが阻害されることになる。そして、クロスジェットの発生によって、レーザ溶接位置から吸引ガイド部材35,39の吸引口方向へ流れる傾向にあるヒュームの一部は、前記エアナイフによって流れが遮断されるので、クロスジェットにヒュームが混入することを抑制することができるものである。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、保護ガラス5に対するスパッタ、ヒュームの付着を防止して、保護ガラス5の長寿命化を図ることができるものである。
【0045】
ところで、前記クロスジェット形成手段17へのエアの供給系と、前記エア噴出手段41へのエアの供給系とを同一系とすることも可能である。しかし、前記エア噴出手段41に対するエアの供給系は、単独に切断可能に構成することが望ましい。すなわち、エア噴出手段41から噴出されたエアナイフが周辺の障害物に当接して、前記シールドガス供給ノズル15から噴出されたシールドガスを乱すような場合には、エア噴出手段41からのエアナイフの噴出を一時停止することが望ましいものである。
【符号の説明】
【0046】
1 レーザ加工ヘッド
5 保護ガラス
9 ノズル
13 ワイヤ供給ノズル
15 シールドガス供給ノズル
17 クロスジェット形成手段
19 開口ブロック
20 アパーチャ
23 高速エア噴出口
25 クロスジェット形成部材
27 連通穴
29,51 スリット
31 ノズルホルダ
35 吸引ガイド部材
37 排風ガイド部材
39 第2吸引ガイド部材
41 エア噴出手段
45 エア噴出口
47 リング部材
49 エアナイフ形成部材
図1
図2
図3
図4
図5