特許第5957592号(P5957592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5957592-触媒の調製方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957592
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20160714BHJP
   C07C 59/125 20060101ALI20160714BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20160714BHJP
   B01J 23/644 20060101ALI20160714BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160714BHJP
【FI】
   B01J37/04 102
   C07C59/125 E
   C07C51/235
   B01J23/644 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-244919(P2015-244919)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-120484(P2016-120484A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-255846(P2014-255846)
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】野村 由紀子
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−279110(JP,A)
【文献】 特表2002−504427(JP,A)
【文献】 特開平07−173099(JP,A)
【文献】 特開平02−072137(JP,A)
【文献】 特開平04−305538(JP,A)
【文献】 特開平10−158227(JP,A)
【文献】 特表平09−512286(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/169585(WO,A1)
【文献】 特開2012−000595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 1/00 −409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1、工程2及び工程3を有する触媒の調製方法。
工程1:活性炭にPtを担持させた触媒の水分散液を調製する工程
工程2:Biをイオンの状態で含む水溶液を調製する工程
工程3:工程2で得られた水溶液に、工程1で得られた水分散液を添加する工程
【請求項2】
工程3を還元雰囲気下に行う、請求項1の調製方法。
【請求項3】
工程2で得られた水溶液が酸を含有する、請求項1又は2記載の触媒の調製方法。
【請求項4】
酸が酢酸及び硝酸から選ばれる1種である、請求項3に記載の触媒の調製方法。
【請求項5】
工程3における添加が連続添加又は分割添加で行われる、請求項1〜4の何れか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項6】
工程3において、添加を受けるBi水溶液の温度が10℃以上60℃以下である、請求項5記載の触媒の調製方法。
【請求項7】
工程3において、添加速度が活性炭にPtを担持させた触媒の水分散液として1mL/分以上10mL/分以下である、請求項5又は6記載の触媒の調製方法。
【請求項8】
工程3において、添加に要する時間が15分以上10時間以下である、請求項5〜7の何れか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項9】
水分散液中の活性炭にPtを担持させた触媒の濃度が、4質量%以上12質量%以下である、請求項1〜8の何れか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項10】
使用する酸の量が、Bi水溶液中、1質量%以上5質量%以下である、請求項3又は3を引用する請求項4〜9の何れか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項11】
Bi水溶液中のBiの配合量が、0.0001M以上0.1M以下である、請求項1〜10の何れか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項12】
Biイオンのイオン源が、硝酸ビスマス五水和物、酸化ビスマス、炭酸ビスマス及び水酸化ビスマスから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜11の何れか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の調製方法により得られた触媒。
【請求項14】
請求項13に記載の触媒の存在下、アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水を含有する組成物に酸素を供給して、前記アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化する、アルコールの酸化物又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの酸化物の製造方法。
【請求項15】
アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルが下記一般式(1)又は一般式(2)で表される1種又は2種以上である、請求項14に記載の酸化物の製造方法。
O−H (1)
但し、一般式(1)においてRは炭素数2以上40以下の脂肪族炭化水素基である。
O−(AO)−H (2)
但し、一般式(2)においてRは炭素数2以上40以下の炭化水素基、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を表し、nはアルキレンオキシ基の付加モル数であり、1以上30以下の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒の調製方法に関する。より詳細には、アルコールやポリオキシアルキレンアルキルエーテルのようなヒドロキシ化合物、又はアルデヒド化合物を酸化してカルボキシル化合物又はケトン化合物を製造する際に好適に用いることができる酸化反応触媒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貴金属触媒であるPtに助触媒としてBiを組み合わせて用い、ヒドロキシ化合物やアルデヒド化合物を接触酸化し、相当するカルボキシル化合物やケトン化合物に変換する方法が知られている。例えば、特許文献1には、市販のPt/C触媒の分散液に硝酸ビスマス塩の硝酸水溶液を滴下してBiを担持させた触媒を調製し、これを用いて、2−置換−1,3−プロパンジオールを酸素含有ガスと接触反応させて、2−置換−3−ヒドロキシプロピオン酸類や2−置換マロン酸類を製造する方法が開示されている。また、非特許文献1には、Pt/Alに硝酸ビスマス塩の酢酸水溶液を滴下してBiを担持させて触媒を調製し、これを用いて、1−フェニルエタノール、2−オクタノール、シンナミルアルコールを液相酸化する方法が開示されている。特許文献2には、グルコースからグルコネートを得る反応において、触媒としてPd/Cを用い、促進剤としてBiを担持させることが記載されている。担持はPd/Cの懸濁液に促進剤溶液を混合することによって行われる。なおPtは白金を意味し、Biはビスマスを意味し、Pdはパラジウムを意味し、Cは活性炭を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−279110号公報
【特許文献2】特開昭62−228093号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Catalysis 225(2004)p.138−146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のPt−Bi/C触媒を酸化反応に使用すると、反応初期から中期にかけては反応が円滑に進行するが、特に反応末期になると反応速度が著しく低下するか、或いは反応が未完結のまま停止してしまうという現象が観測される。また、触媒から反応後の溶液へと、担持されている金属が溶出して耐久性が劣化してしまうという現象も観測される。これらの現象は、被酸化物の構造によって程度に差はあるものの、Biを担持させた貴金属触媒を用いる酸化反応一般において観測される。
【0006】
特許文献1では2−置換−1,3−プロパンジオールから2−置換−3−ヒドロキシプロピオン酸、2−アルキルマロン酸を得る反応において、第2金属成分としてBiを担持させたPt−Bi/C触媒だけではなく、PdやPbを担持させたPt−Pd/C触媒やPt−Pb/C触媒を用いることも記載されている。しかしながら、収率が低い。また特許文献1の反応では全て、触媒以外にアルカリを添加して選択性を向上させることを必要としている。
【0007】
また、特許文献2では、Pd/C上にBiを担持させると、Bi/C上にPdを担持させる場合よりも活性が高いことが記載されている。しかし、上記の問題点に十分に対処しうる知見をもたらすものではなく、また特許文献1の場合と同様、反応に際しては触媒とアルカリの併用が必要である。
【0008】
さらに、非特許文献1ではヒドロキシル基を有する化合物の液相酸化において上記のようにPt−Bi/Al触媒を用いている。しかし、アルカリを併用せずに反応を行うと活性及び金属溶出いずれの点でも満足できるものではない。
【0009】
本発明の課題は、アルカリを併用せずに液相酸化反応を行う場合に、活性が高く、また触媒金属の溶出が抑制された耐久性の高い触媒の調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の如き液相酸化反応におけるPt−Bi/C触媒の問題点を解決すべく、Pt−Bi/C触媒の調製法について研究を続けた結果、本発明を完成した。
本発明は、下記の工程1、工程2及び工程3を有する触媒の調製方法である。
工程1:活性炭にPtを担持させた触媒の水分散液を調製する工程
工程2:Biをイオンの状態で含む水溶液を調製する工程
工程3:工程2で得られた水溶液に、工程1で得られた水分散液を添加する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルカリを併用せずに液相酸化反応を行う場合に、活性が高く、また触媒金属の溶出が抑制された耐久性の高い触媒が得られる。またかかる触媒を用いて酸化物を高効率で製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、Bi4f軌道の光電子スペクトルであり、スペクトル1は実施例1で調製した触媒を実施例7で測定した結果を示し、スペクトル2は比較例1で調製した触媒を比較例3で測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、下記の工程1、工程2及び工程3を有する触媒の調製方法である。
工程1:活性炭にPtを担持させた触媒の水分散液を調製する工程
工程2:Biをイオンの状態で含む水溶液を調製する工程
工程3:工程2で得られた水溶液に、工程1で得られた水分散液を添加する工程
【0014】
工程1で調製した、活性炭にPtを担持させた触媒の水分散液を、工程2で調製したBiをイオンの状態で含む水溶液に添加することにより、アルカリを併用せずに液相酸化反応を行う場合に、活性が高く、また触媒金属の溶出が抑制された耐久性の高い触媒を調製することができる。その理由は定かではないが以下のように考える。活性炭にPtを担持させた触媒の水分散液を、Biイオンを含む水溶液に添加すると、PtとBiを共沈させる場合や、Biイオンを含む水溶液を、活性炭にPtを担持させた触媒の水分散液に添加したり供給したりする場合と比較して、Biイオンをより均等にPtに接触させることができる。そのため、Pt−Bi複合体を効率良く形成させることができるため、活性が向上し、また液相酸化反応中の金属溶出を抑制することができる。しかしながらかかる作用は推定であり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0015】
以下の記載において、特に断らない限り、「%」は「質量%」を示す。
【0016】
工程1は、活性炭にPtを担持させた触媒(以下、Pt/C触媒ともいう)の水分散液を調製する工程である。
【0017】
活性炭には特に制限はなく、Ptを吸着し担持しうるものであれば、どのような種類の活性炭であっても使用することができる。活性炭の例としては、ヤシ殻活性炭等の植物質の活性炭、石炭系活性炭等の鉱物質の活性炭、パルプ廃液、合成樹脂、有機性廃棄物の活性炭などを挙げることができる。また賦活方法や細孔分布、形状などにも特に制限はない。
【0018】
活性炭に担持されるPtの粒径に特に制限はないが、分散性と反応活性を高める観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下であり、また、例えば1nm以上であってよい。
【0019】
触媒固形分中のPt金属の担持量は、反応性の観点から好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは3%以上、よりさらに好ましくは5%以上であり、分散性を高める観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。またPt/C触媒は公知の含浸法や析出沈殿法によって調製可能であるが、市販品を用いることもできる。
【0020】
水分散液の調製は、Pt/C触媒をイオン交換水、蒸留水、純水などに添加し、撹拌することによって行われる。
【0021】
分散液中のPt/C触媒の濃度は後工程での効率の観点から、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、よりさらに好ましくは7%以上であり、操作性の観点から、好ましくは12%以下、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは8%以下である。
【0022】
調製温度は、経済性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、Ptの変性や凝集を抑制する観点から好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である。
【0023】
工程2は、Biをイオンの状態で含む水溶液(以下、Bi水溶液ともよぶ)を調製する工程である。
【0024】
Biイオンのイオン源は、Bi塩が水や酸性水溶液に溶解可能なBi種であることが必要であり、この観点から好ましくは硝酸ビスマス五水和物(Bi(NO・5HO)、酸化ビスマス(Bi)、炭酸ビスマス((BiO)CO)及び水酸化ビスマス(Bi(OH))から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは硝酸ビスマス五水和物である。
【0025】
Bi水溶液は、Bi塩を溶解する観点から、好ましくは酸を含有する。使用する酸としては、無機酸と有機酸のいずれでもよい。有機酸としては、液相酸化反応時に調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から好ましくはカルボキシル基を有する酸、より好ましくは酢酸、ギ酸、クエン酸及びシュウ酸から選ばれる1種以上、さらに好ましくは酢酸である。無機酸としては、液相酸化反応時に調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から好ましくは硝酸、塩酸、リン酸及び硫酸から選ばれる1種以上、より好ましくは硝酸である。
【0026】
使用する酸の量は、Bi塩を溶解する観点から、Bi水溶液中、好ましくは1%以上、より好ましくは1.5%以上であり、経済性の観点から好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下である。
【0027】
調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、Bi水溶液中のBiの配合量は好ましくは0.0001M以上、より好ましくは0.0005M以上、さらに好ましくは0.001M以上であり、同様の観点から好ましくは0.1M以下、より好ましくは0.05M以下、さらに好ましくは0.03M以下、よりさらに好ましくは0.02M以下、よりさらに好ましくは0.01M以下である。
【0028】
Bi水溶液のpHは、調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である。
【0029】
Bi水溶液を調製する温度は、特に制限されるものではないが、経済性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である。
【0030】
工程3に先立って、工程1で得られた水分散液及び工程2で得られたBi水溶液のいずれか一方又は両方、操作性の観点から好ましくは工程3において添加又は滴下を受ける液すなわち工程2で得られたBi水溶液は、調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、次の工程3でPtを還元処理するために使用することのできる還元剤や還元性ガスにより処理をすることが好ましい。還元剤による処理は、ホルマリンやソジウムボロハイドライドなどを得られた水分散液やBi水溶液に添加することによって行うことができる。また、還元性ガスによる処理は、水素や一酸化炭素などの還元性ガスを水分散液やBi水溶液に流通させることによって行うことができる。好ましくは還元性ガスを流通させ、より好ましくは水素ガスを流通させる。
【0031】
還元剤や還元性ガスによる処理温度は、経済性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、Ptの変性や凝集を抑制する観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である。
【0032】
また、還元性ガスを流通させて処理を行う場合、流通させる還元性ガスの供給量は、還元性ガスによる処理を十分に行う観点から、触媒に対して大過剰となる量であり、好ましくは60mL/分以上、より好ましくは80mL/分以上であり、経済性の観点から好ましくは500mL/分以下、より好ましくは、300mL/分以下、さらに好ましくは150mL/分以下である。
【0033】
還元剤や還元性ガスによる処理時間は、還元剤や還元性ガスによる処理を十分に行う観点から好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、さらに好ましくは20分以上であり、生産性の観点から好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分以下である。
【0034】
工程3は、工程2で得られたBi水溶液に、工程1で得られた水分散液を添加する工程である。
【0035】
Bi水溶液にPt/C触媒の水分散液を添加することによって、Pt−Bi/C触媒の複合体が効率良く形成されると考えられる。添加は連続添加、分割添加、一括添加のいずれでもよいが、連続添加又は分割添加が好ましく、滴下等の連続的な分割添加がより好ましい。
【0036】
連続添加又は滴下等の連続的な分割添加の場合、生産性の観点から、添加速度は好ましくはPt/C触媒の水分散液として1mL/分以上、より好ましくは3mL/分以上となる速度であり、調製した触媒の活性を向上させる観点及び調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくはPt/C触媒の水分散液として10mL/分以下、より好ましくは5mL/分以下となる速度である。
【0037】
また、添加に要する時間は、特に制限はないが、調製した触媒の活性を向上させ調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上、よりさらに好ましくは2時間以上であり、生産性の観点から好ましくは10時間以下、より好ましくは7時間以下、さらに好ましくは5時間以下、よりさらに好ましくは3時間以下である。
【0038】
工程3において添加又は滴下を受けるBi水溶液の温度は、調製した触媒の活性を向上させ調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、Ptの変性や凝集を抑制する観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である。
【0039】
調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、工程3に際して好ましくは還元処理を行う。工程3の還元処理は、添加又は滴下する液及び添加又は滴下を受ける液のいずれか一方又は両方に行うことができるが、操作性の観点から、好ましくは添加又は滴下を受ける液に行う。工程3の還元処理は、調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは工程3を還元雰囲気下に行う。好ましくは工程3の還元処理は水素や一酸化炭素などの還元性ガス、より好ましくは水素ガスの流通によって行われる。還元処理温度及び還元性ガスを流通させて還元処理を行う場合の還元性ガスの供給量の好ましい範囲は、それぞれ、工程3に先立って行う還元剤や還元性ガスによる処理温度及び還元性ガスの供給量の好ましい範囲と同様である。工程3の還元処理は好ましくはPt/C触媒の水分散液の添加が終了するまで行われる。
【0040】
本発明の触媒の調製方法は工程4として、工程3で得た触媒を含有する液と還元補助剤を混合し、PtとBiを活性炭に担持させた触媒(即ち上記Pt−Bi/C触媒)及び還元補助剤を含有する液を得る工程を有することができる。この工程は、調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から好ましい。
【0041】
還元補助剤はPtとBiを活性炭に担持させた触媒の還元状態を維持するものであり、還元性を有する有機溶媒、例えばイソプロピルアルコール(IPA)を用いることができる。
【0042】
調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から還元補助剤の使用量は、工程3で得た触媒を含有する液100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、経済性の観点から好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0043】
本発明の触媒の調製方法は工程5として、工程4で得た液中のPtとBiを活性炭に担持させた触媒を洗浄液で洗浄する工程を有することができる。この工程は、調製した触媒の活性の観点及び調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から好ましい。
【0044】
工程5で使用する洗浄液は、調製した触媒の活性を向上させる観点及び調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは水及び上記還元補助剤から選ばれる1種以上を含む液、より好ましくは上記還元補助剤の1種以上及び水を含有する液、さらに好ましくはIPA水溶液である。
【0045】
洗浄を効率的に行う観点から、洗浄前に工程4で得た液を濾過し、PtとBiを活性炭に担持させた触媒を濾別することが好ましい。濾過は減圧濾過、加圧濾過のいずれでも行うことができる。
【0046】
本発明の触媒の調製方法は工程6として、工程5で洗浄したPtとBiを活性炭に担持させた触媒を乾燥する工程を有することができる。この工程は、取扱の観点から好ましい。
【0047】
乾燥は例えば窒素ガス等の不活性ガスの流通下に行われる。
【0048】
本発明の触媒の調製方法では、工程3の後、調製した触媒の活性を向上させる観点及び調製した触媒から金属溶出を抑制する観点から中和処理を行わないことが好ましい。
【0049】
工程3で得た触媒を含有する液のpHは、調製した触媒の活性を向上させる観点及び調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である。
【0050】
また、工程4を行う場合、工程4で得た液を濾過した濾液のpHは、調製した触媒の活性を向上させる観点及び調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である。
【0051】
また、工程5の洗浄を行う場合、洗浄後の濾液のpHは、調製した触媒の活性を向上させる観点及び調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である。
【0052】
Pt−Bi/C触媒固形分中のBiの担持量は、酸化反応の生成物の生産性向上の観点から、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.5%以上であり、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3.5%以下、よりさらに好ましくは1.5%以下である。
【0053】
Pt−Bi/C触媒におけるBiのPtに対する質量比(原子比)Bi/Ptは、酸化反応の生成物の生産性向上の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.3以下、よりさらに好ましくは0.2以下である。
【0054】
本発明のPtとBiを活性炭に担持させた触媒は、調製した触媒の活性を向上させる観点及び調製した触媒からの金属溶出を抑制する観点から、XPSにより測定したBi4f軌道の光電子スペクトルにおいて結合エネルギー162〜155eVの範囲のピークトップの結合エネルギー値が、好ましくは158.5eV以下、より好ましくは158.2eV以下、更に好ましくは158.0eV以下であり、好ましくは157.0eV以上、より好ましくは157.2eV以上、さらに好ましくは157.5eV以上である。
【0055】
本発明の触媒は、ヒドロキシ化合物又はアルデヒド化合物を酸化してカルボキシル化合物又はケトン化合物を製造する反応、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを液相酸化して対応するカルボキシル化合物を製造する反応に好適に使用される。即ち本発明は、上記触媒の存在下、アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水を含有する組成物に酸素を供給して、前記アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化する、アルコールの酸化物又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの酸化物(以下、当該酸化物ともいう)の製造方法にも関する。すなわち、上記触媒を得る工程、該触媒の存在下、アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水を含有する組成物に酸素を供給して、前記アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化する工程を有する、当該酸化物の製造方法に関する。
【0056】
好ましくはアルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される1種又は2種以上である。
【0057】
O−H (1)
但し、一般式(1)においてRは炭素数2以上40以下の脂肪族炭化水素基である。
【0058】
O−(AO)−H (2)
但し、一般式(2)においてRは炭素数2以上40以下の炭化水素基、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を表し、nはアルキレンオキシ基の付加モル数であり、1以上30以下の整数である。
【0059】
は、反応性の観点から、好ましくは直鎖又は分岐鎖の、1級又は2級の脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖の、1級若しくは2級のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは直鎖の、1級若しくは2級のアルキル基である。
【0060】
の炭素数は、特に制限されるものではないが、6以上、8以上、10以上又は12以上であってもよく、反応性の観点から、好ましくは36以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは14以下である。
【0061】
は、反応性の観点から、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の、1級又は2級の脂肪族炭化水素基、さらに好ましくは直鎖若しくは分岐鎖の、1級若しくは2級のアルキル基又はアルケニル基、よりさらに好ましくは直鎖の、1級若しくは2級のアルキル基である。
【0062】
の炭素数は、特に制限されるものではないが、6以上、8以上、10以上又は12以上であってもよく、反応性の観点から、好ましくは36以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは14以下である。
【0063】
反応に使用する水に対する、原料として使用するアルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの質量比(原料として使用するアルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル/水)は、アルコールの酸化物又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの酸化物の生産性向上及び液相の粘度増加抑制の観点から、好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、さらに好ましくは75/25以上であり、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。
【0064】
前記組成物又はその反応液である液相への酸素の供給は、酸素含有ガスを液相に流通させることによって実施できる。酸素含有ガスとしては、酸素ガス、空気などの酸素を含有する混合ガスが挙げられる。
【0065】
酸素を含有する混合ガスを用いる場合、酸素と併用するガスは、活性に影響を与えない観点から、好ましくはヘリウム、アルゴン、窒素などの不活性ガスである。
【0066】
酸素含有ガス中の酸素濃度は、当該酸化物の生産性の観点から、好ましくは10体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、よりさらに好ましくは90体積%以上、よりさらに好ましくは実質的に100体積%、よりさらに好ましくは100体積%である。
【0067】
かかる製造は連続式、回分式又は半回分式で行うことができる。
【0068】
反応温度は、反応性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、設備負荷の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0069】
反応は常圧下で行っても、加圧下で行ってもよい。反応圧力は、反応性の観点から、絶対圧力で、好ましくは0.09MPa以上、より好ましくは0.10MPa以上であり、設備負荷の観点から、好ましくは0.5MPa以下、より好ましくは0.2MPa以下、さらに好ましくは0.11MPa以下である。
【0070】
触媒の使用量は反応温度あるいは反応圧力に応じ、実用的な反応速度が得られる範囲内において任意に選択できるが、反応を回分式で行う場合は、反応性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル100質量部に対するPt金属の質量として、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、よりさらに好ましくは6質量部以上であり、経済性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0071】
以下では本発明の好適な実施態様について述べる。
<1>下記の工程1、工程2及び工程3を有する触媒の調製方法。
工程1:活性炭にPtを担持させた触媒(Pt/C触媒)の水分散液を調製する工程
工程2:Biをイオンの状態で含む水溶液(Bi水溶液)を調製する工程
工程3:工程2で得られた水溶液に、工程1で得られた水分散液を添加する工程
【0072】
<2>Ptの粒径が好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下であり、また、1nm以上であってよい<1>に記載の調製方法。
【0073】
<3>触媒固形分中のPt金属の担持量が好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは3%以上、よりさらに好ましくは5%以上であり、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である<1>又は<2>に記載の調製方法。
【0074】
<4>水分散液中のPt/C触媒の濃度が好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、よりさらに好ましくは7%以上であり、好ましくは12%以下、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは8%以下である<1>〜<3>の何れか1に記載の調製方法。
【0075】
<5>工程1の調製温度が好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である<1>〜<4>の何れか1に記載の調製方法。
【0076】
<6>Biイオンのイオン源が、好ましくは硝酸ビスマス五水和物(Bi(NO・5HO)、酸化ビスマス(Bi)、炭酸ビスマス((BiO)CO)及び水酸化ビスマス(Bi(OH))から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは硝酸ビスマス五水和物である、<1>〜<5>の何れか1に記載の調製方法。
【0077】
<7>工程2で得られた水溶液が酸を含有する<1>〜<6>の何れか1に記載の調製方法。
【0078】
<8>酸が無機酸又は有機酸であり、好ましくは有機酸であり、より好ましくはカルボキシル基を有する酸であり、さらに好ましくは酢酸、ギ酸、クエン酸及びシュウ酸から選ばれる1種以上、よりさらに好ましくは酢酸である<7>に記載の調製方法。
【0079】
<9>酸が無機酸であり、好ましくは硝酸、塩酸、リン酸及び硫酸から選ばれる1種以上であり、より好ましくは硝酸である<7>に記載の調製方法。
【0080】
<10>酸が酢酸及び硝酸から選ばれる1種である、<7>に記載の触媒の調製方法。
【0081】
<11>使用する酸の量が、Bi水溶液中、好ましくは1%以上、より好ましくは1.5%以上であり、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下である、<7>〜<10>の何れか1に記載の調製方法。
【0082】
<12>Bi水溶液中のBiの配合量が好ましくは0.0001M以上、より好ましくは0.0005M以上、さらに好ましくは0.001M以上であり、好ましくは0.1M以下、より好ましくは0.05M以下、さらに好ましくは0.03M以下、よりさらに好ましくは0.02M以下、よりさらに好ましくは0.01M以下である<1>〜<11>の何れか1に記載の調製方法。
【0083】
<13>Bi水溶液のpHが好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である<1>〜<12>の何れか1に記載の調製方法。
【0084】
<14>Bi水溶液を調製する温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である、<1>〜<13>の何れか1に記載の調製方法。
【0085】
<15>工程1で得られた水分散液及び工程2で得られたBi水溶液のいずれか一方又は両方、好ましくは工程3において添加又は滴下を受ける液すなわち工程2で得られたBi水溶液が、工程3に先立って還元剤や還元性ガスにより処理される<1>〜<14>の何れか1に記載の調製方法。
【0086】
<16>還元剤や還元性ガスによる処理温度が好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である<15>に記載の調製方法。
【0087】
<17>還元剤や還元性ガスによる処理時間が好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、さらに好ましくは20分以上であり、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分以下である<15>又は<16>に記載の調製方法。
【0088】
<18>還元剤や還元性ガスによる処理が還元性ガス、好ましくは水素ガスの流通によって行われる<15>〜<17>の何れか1に記載の調製方法。
【0089】
<19>還元性ガスの供給量が好ましくは60mL/分以上、より好ましくは80mL/分以上、さらに好ましくは120mL/分以上であり、好ましくは500mL/分以下、より好ましくは、300mL/分以下、さらに好ましくは150mL/分以下である<18>に記載の調製方法。
【0090】
<20>工程3の添加が連続添加、分割添加、一括添加、又は連続的な分割添加であり、好ましくは連続添加、分割添加、又は連続的な分割添加であり、より好ましくは滴下である<1>〜<19>の何れか1に記載の調製方法。
【0091】
<21>添加速度がPt/C触媒の水分散液として好ましくは1mL/分以上、より好ましくは3mL/分以上であり、好ましくは10mL/分以下、より好ましくは5mL/分以下である<1>〜<20>の何れか1に記載の調製方法。
【0092】
<22>添加に要する時間が、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上、よりさらに好ましくは2時間以上であり、好ましくは10時間以下、より好ましくは7時間以下、さらに好ましくは5時間以下、よりさらに好ましくは3時間以下である<1>〜<21>の何れか1に記載の調製方法。
【0093】
<23>工程3において添加を受けるBi水溶液の温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である、<1>〜<22>の何れか1に記載の調製方法。
【0094】
<24>工程3に際して好ましくは還元処理を行い、工程3の還元処理は、添加又は滴下する液及び添加又は滴下を受ける液のいずれか一方又は両方に行うことができるが、好ましくは添加又は滴下を受ける液に行い、工程3の還元処理は好ましくは工程3を還元雰囲気下に行う、<1>〜<23>の何れか1に記載の調製方法。
【0095】
<25>工程3の還元処理が好ましくはPt/C触媒の水分散液の添加が終了するまで行われる、<24>に記載の調製方法。
【0096】
<26>工程3の還元処理温度が好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、よりさらに好ましくは30℃以下、よりさらに好ましくは25℃以下である<24>又は<25>に記載の調製方法。
【0097】
<27>工程3の還元処理が還元性ガス、好ましくは水素ガスの流通によって行われる<24>〜<26>の何れか1に記載の調製方法。
【0098】
<28>工程3の還元性ガスの供給量が好ましくは60mL/分以上、より好ましくは80mL/分以上、さらに好ましくは120mL/分以上であり、好ましくは500mL/分以下、より好ましくは、300mL/分以下、さらに好ましくは150mL/分以下である<27>に記載の調製方法。
【0099】
<29>工程3の後に中和処理を行わない<1>〜<28>の何れか1に記載の調製方法。
【0100】
<30>工程3で得た触媒を含有する液のpHが好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である<1>〜<29>の何れか1に記載の調製方法。
【0101】
<31>工程3で得た触媒を含有する液と還元補助剤を混合し、PtとBiを活性炭に担持させた触媒(Pt−Bi/C触媒)及び還元補助剤を含有する液を得る工程4を有する、<1>〜<30>の何れか1に記載の調製方法。
【0102】
<32>還元補助剤が好ましくは還元性を有する有機溶媒であり、より好ましくはイソプロピルアルコール(IPA)である<31>に記載の調製方法。
【0103】
<33>還元補助剤の使用量が、工程3で得た触媒を含有する液100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である<31>又は<32>に記載の調製方法。
【0104】
<34>工程4で得た液を濾過した濾液のpHが好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である<31>〜<33>の何れか1に記載の調製方法。
【0105】
<35>工程4で得た液中のPtとBiを活性炭に担持させた触媒を洗浄液で洗浄する工程5を有する<31>〜<34>の何れか1に記載の調製方法。
【0106】
<36>洗浄液が、好ましくは水及び還元補助剤から選ばれる1種以上を含む液、より好ましくは還元補助剤の1種以上及び水を含有する液、さらに好ましくはIPA水溶液である<35>に記載の調製方法。
【0107】
<37>洗浄前に工程4で得た液を濾過し、PtとBiを活性炭に担持させた触媒を濾別する<35>又は<36>に記載の調製方法。
【0108】
<38>工程5の洗浄後の濾液のpHが好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、よりさらに好ましくは2.5以上である<35>〜<37>の何れか1に記載の調製方法。
【0109】
<39>工程5で洗浄したPtとBiを活性炭に担持させた触媒を乾燥する工程6を有する<35>〜<38>の何れか1に記載の調製方法。
【0110】
<40>乾燥が好ましくは不活性ガス、より好ましくは窒素ガスの流通下に行われる<39>に記載の調製方法。
【0111】
<41><1>〜<40>の何れか1に記載の方法により得られたPt−Bi/C触媒。
【0112】
<42>Pt−Bi/C触媒固形分中のBiの担持量が好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.5%以上であり、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3.5%以下、よりさらに好ましくは1.5%以下である<41>に記載の触媒。
【0113】
<43>Pt−Bi/C触媒におけるBiのPtに対する質量比(原子比)Bi/Ptが好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.3以下、よりさらに好ましくは0.2以下である<41>又は<42>に記載の触媒。
【0114】
<44>XPSにより測定したBi4f軌道の光電子スペクトルにおいて結合エネルギー162〜155eVの範囲のピークトップの結合エネルギー値が、好ましくは158.5eV以下、より好ましくは158.2eV以下、更に好ましくは158.0eV以下であり、好ましくは157.0eV以上、より好ましくは157.2eV以上、さらに好ましくは157.5eV以上である、PtとBiを活性炭に担持させた触媒。
【0115】
<45><41>〜<44>の何れか1に記載の触媒の存在下、アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水を含有する組成物に酸素を供給して、前記アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化する、アルコールの酸化物又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの酸化物の製造方法。
【0116】
<46>アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルが下記一般式(1)又は一般式(2)で表される1種又は2種以上である<45>に記載のアルコールの酸化物又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの酸化物の製造方法。
O−H (1)
但し、一般式(1)においてRは炭素数2以上40以下の脂肪族炭化水素基である。
O−(AO)−H (2)
但し、一般式(2)においてRは炭素数2以上40以下の炭化水素基、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を表し、nはアルキレンオキシ基の付加モル数であり、1以上30以下の整数である。
【0117】
<47>
が、好ましくは直鎖又は分岐鎖の、1級又は2級の脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖の、1級若しくは2級のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは直鎖の、1級若しくは2級のアルキル基である、<46>に記載の酸化物の製造方法。
【0118】
<48>
の炭素数が、6以上、8以上、10以上又は12以上であり、好ましくは36以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは14以下である、<46>又は<47>に記載の酸化物の製造方法。
【0119】
<49>
が、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の、1級又は2級の脂肪族炭化水素基、さらに好ましくは直鎖若しくは分岐鎖の、1級若しくは2級のアルキル基又はアルケニル基、よりさらに好ましくは直鎖の、1級若しくは2級のアルキル基である、<46>〜<48>の何れか1に記載の酸化物の製造方法。
【0120】
<50>
の炭素数が、6以上、8以上、10以上又は12以上であり、好ましくは36以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは14以下である、<46>〜<49>の何れか1に記載の酸化物の製造方法。
【0121】
<51>アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの、反応に使用する水に対する質量比が、好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、さらに好ましくは75/25以上であり、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である<45>〜<50>の何れか1に記載の酸化物の製造方法。
【0122】
<52>前記組成物又はその反応液である液相への酸素の供給が、酸素含有ガスを液相に流通させることによって実施され、酸素含有ガスが好ましくは酸素ガス又は空気などの混合ガスである<45>〜<51>の何れか1に記載の酸化物の製造方法。
【0123】
<53>酸素含有ガス中の酸素濃度が好ましくは10体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、よりさらに好ましくは90体積%以上、よりさらに好ましくは実質的に100体積%、よりさらに好ましくは100体積%である<52>に記載の酸化物の製造方法。
【0124】
<54>反応温度が好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である<45>〜<53>の何れか1に記載の酸化物の製造方法。
【0125】
<55>反応圧力が好ましくは0.09MPa以上、より好ましくは0.10MPa以上であり、好ましくは0.5MPa以下、より好ましくは0.2MPa以下、さらに好ましくは0.11MPa以下である<45>〜<54>の何れか1に記載の酸化物の製造方法。
【0126】
<56>触媒の使用量が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル100質量部に対するPt金属の質量として好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、よりさらに好ましくは6質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である<45>〜<55>の何れか1に記載の酸化物の製造方法。
【0127】
<57><41>〜<44>の何れか1に記載の触媒のアルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルの脱水素酸化触媒としての使用。
【実施例】
【0128】
以下の実施例及び比較例において、特に断らない限り、温度条件は20℃、撹拌条件は200rpm、圧力条件は常圧である。また、pHの測定にはADVANTEC社製pH試験紙「ロールタイプ UNIV」を用いた。
【0129】
実施例1
<10%Pt−1%Bi/C触媒の調製>
工程1:Pt/Cスラリー(以下、液Aという)の調製:
1Lのビーカーに、10% Pt/C(Evonik Japan社製、Pt粒径14nm、水分含量59.2%)40gとイオン交換水500gを仕込み、固体がビーカーの底に沈殿しないように「FineスターラーF−202」(東京硝子器械株式会社製)を用いて約100rpmの条件にて撹拌した。
【0130】
工程2:ビスマスを含む酸性水溶液(以下、液Bという)の調製:
メカニカルスターラー「テフロン(登録商標)製撹拌羽根三日月形」(ASONE社製、撹拌翼の幅75mm×高さ20mm×厚さ4mm)を備えた2Lのセパラブルフラスコに、硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社製)0.38gと2%酢酸水溶液808mLを仕込んだ。2%酢酸水溶液中のBi濃度は0.001Mである。ビスマス塩を完全に溶解させるため、超音波洗浄機「Fine超音波洗浄器FU−9H」(東京硝子器械株式会社製)で周波数38kHzの条件下にて5分間超音波をあてた。
【0131】
工程3に先立って、工程3で滴下を受けるセパラブルフラスコ内の液Bを、200rpmの条件下にてメカニカルスターラーで攪拌しながら20分間水素を86−129mL/分の条件にて流通させて水素置換を行った。
その後、撹拌及び水素流通下で酢酸を2mL添加した。酢酸添加後の溶液のpHは3であった。
【0132】
工程3:
セパラブルフラスコ内の液Bへの水素流通及び撹拌を継続しながら、ぜん動ポンプを用いてビーカー内の液Aを、セパラブルフラスコ内の液Bへ滴下した。滴下する液Aの滴下速度、滴下時間及び滴下を受ける液Bの温度は表1記載の通りであった。また、滴下後の溶液のpHは3であった。
【0133】
滴下終了後、5分間熟成し、金属の還元状態を維持するためにイソプロピルアルコール(以下IPA)18mLを添加した。熟成及びIPA添加は液Bへの水素流通及び撹拌を継続しながら行った。IPA添加後、水素を止めて窒素を流通させながら減圧濾過を行った。この濾過は、減圧濾過用フィルターホルダー「ガラスタイプ KGS−90」(ADVANTEC社製)にメンブレンフィルター「PTFEメンブレンフィルターT020A142C」(ADVANTEC社製、孔サイズ0.2μm)をのせ、IPA添加後の溶液を流して吸引環境下に行い、固体を分離した。濾液のpHは3であった。
【0134】
濾過後の固体はセパラブルフラスコに戻して、さらに1%IPA水溶液(300mL)を添加し、30分間撹拌洗浄した。その後、上記と同様にして濾過を行い、濾過で得られた固体を1時間程度で乾燥させ、10%Pt−1%Bi/C触媒を得た。尚、撹拌洗浄、濾過、乾燥の操作は窒素流通下で行った。また、洗浄後、乾燥前に行った濾過で得られた濾液のpHは3〜4であった。
【0135】
比較例1
<10%Pt−1%Bi/C触媒の調製2>
工程1:Pt/Cスラリー(以下、液Aという)の調製:
メカニカルスターラー「テフロン(登録商標)製撹拌羽根三日月形」(ASONE社製、撹拌翼の幅75mm×高さ20mm×厚さ4mm)を備えた2Lのセパラブルフラスコに、10% Pt/C(Evonik Japan社製、水分含量59.2%)40gとイオン交換水500gを仕込んだ。
【0136】
工程2:ビスマスを含む酸性水溶液(以下、液Bという)の調製:
1Lのビーカーに、硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社製)0.38gと2%酢酸水溶液808mLを仕込んだ。2%酢酸水溶液中のBi濃度は0.001Mである。ビスマス塩を完全に溶解させるため、超音波洗浄機「Fine超音波洗浄器FU−9H」(東京硝子器械株式会社製)で周波数38kHzの条件下にて5分間超音波をあてた。
【0137】
工程3に先立って、工程3で滴下を受けるセパラブルフラスコ内の液Aを、200rpmの条件下にてメカニカルスターラーで攪拌しながら20分間水素を86−129mL/分の条件にて流通させて水素置換を行った。その後、撹拌及び水素流通下で酢酸を2mL添加した。酢酸添加後の溶液のpHは3であった。
【0138】
工程3:
セパラブルフラスコ内の液Aへの水素流通及び撹拌を継続しながら、ぜん動ポンプを用いてビーカー内の液Bを、セパラブルフラスコ内の液Aへ滴下した。滴下する液Bの滴下速度、滴下時間及び滴下を受ける液Aの温度は表1記載の通りであった。また、滴下後の溶液のpHは4であった。
【0139】
滴下終了後、水素流通及び撹拌を継続しながら5分間熟成し、金属の還元状態を維持するためにイソプロピルアルコール(以下IPA)18mLを添加した。IPA添加後、水素を止めて窒素を流通させながら減圧濾過を行った。この濾過は、減圧濾過用フィルターホルダー「ガラスタイプ KGS−90」(ADVANTEC社製)にメンブレンフィルター「PTFEメンブレンフィルターT020A142C」(ADVANTEC社製、孔サイズ0.2μm)をのせ、IPA添加後の溶液を流して吸引環境下に行い、固体を分離した。濾液のpHは3〜4であった。
【0140】
濾過後の固体はセパラブルフラスコに戻して、さらに1%IPA水溶液(300mL)を添加し、30分間撹拌洗浄した。その後、上記と同様にして濾過を行い、濾過で得られた固体を1時間程度で乾燥させ、10%Pt−1%Bi/C触媒を得た。尚、撹拌洗浄、濾過、乾燥の操作は窒素流通下で行った。また、洗浄後、乾燥前に行った濾過で得られた濾液のpHは3〜4であった。
【0141】
実施例2
Pt担持量が5%のPt/C触媒を用い、また、IPA添加、濾過後に、中和、洗浄及び濾過をした以外は、実施例1と同様の工程を行って触媒を得た。なお、濾過は実施例1に記載の方法で行った。また、中和及び洗浄は次のように行った。
【0142】
IPA添加、濾過後、濾別された固体をセパラブルフラスコに戻して0.05M NaHCO水溶液300mLを添加し、30分間撹拌して、中和した。その後、濾過を行い、固体をセパラブルフラスコに戻して、さらにイオン交換水300mLを添加し、30分間撹拌し洗浄した。中和及び洗浄の操作は窒素流通下で行った。また、中和直後及び洗浄後の濾液のpHは7であった。
【0143】
比較例2
Pt担持量が5%のPt/C触媒を用い、また、IPA添加、濾過後に、中和、洗浄及び濾過をした以外は、比較例1と同様の工程を行って触媒を得た。なお、濾過は比較例1に記載の方法で行った。また、中和及び洗浄は実施例2と同様の工程を行った。
【0144】
触媒の性能評価を行う際に、イオン交換水の仕込み量を決める。そのために触媒中の含水率の測定が必要である。実施例1、比較例1、実施例2及び比較例2で得た触媒中の含水率を下記の方法で測定した。得られた結果を表1及び表2に記載する。
【0145】
<触媒中の含水率の測定方法>
触媒中の含水率は、次のように触媒を乾燥して乾燥前後の触媒の重量を測定して求める。
触媒3g程度をシャーレ「フラットシャーレFS−90B」(VIDREX社製)に入れて重量を測る。その後、「VACUUM DRYING OVEN DRR420DA」(ADVANTEC社製)を使用して−80kPa〜−100kPaまで減圧し、70℃で4時間減圧乾燥を行い、再び重量を測定する。重量減少分は触媒に含まれている水分であると仮定し、次式により含水率を求める。
(触媒中の含水率%)=100×(重量減少分g)/(乾燥前の触媒重量g)
【0146】
実施例1、比較例1、実施例2及び比較例2で得た触媒を用いて、以下の方法でエーテルカルボキシレートを製造し、触媒からの金属溶出量及びエーテルカルボキシレートの収率を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0147】
<エーテルカルボキシレートの製造>
還流管、pHメーター「デジタルpHコントローラーFD−02」(東京硝子器械株式会社製)、溶存酸素濃度計「InPro6850i/12/220」(METTLER TOLEDO社製)及びメカニカルスターラー「テフロン(登録商標)製撹拌羽根三日月形」(ASONE社製、撹拌翼の幅75mm×高さ20mm×厚さ4mm)を備えた500mLの7つ口フラスコに、原料であるポリオキシエチレンアルキルエーテル(ラウリルアルコールにエチレンオキシドを平均3.6mol付加したもの)265g、触媒を原料100質量部に対して触媒中のPt及びBiの金属量の合計が、実施例1と比較例1では6.4質量部、実施例2と比較例2では3.2質量部となる量、及びイオン交換水を下記の計算方法で得られる水仕込み量g、仕込んだ。
【0148】
<水仕込み量の計算方法>
原料に対する水の量が80.9:19.1となるようにして、次のように計算する。
(水仕込み量g)=191×(原料仕込み量g)/809−(触媒中の含水率%)×(触媒仕込み量g)
【0149】
上記7つ口フラスコ中に仕込んだ原料、触媒及び水を450rpmの条件下にてメカニカルスターラーで攪拌しながら窒素流通下70℃に昇温し、70℃に達して15分間は引き続き窒素を流通させた。その後酸素に切り替えて90mL/分の条件下にて8時間流通し、反応させ、対応するエーテルカルボキシレートを得た。
【0150】
反応終了後、溶液を速やかに70℃で加圧濾過して触媒と分離した。加圧濾過は、濾過器をあらかじめ70℃に加温しておき、そこへ反応終了後の溶液(70℃)を流し込んで窒素を4kgf/cmで圧入しながら行った。
【0151】
この濾液を用いて触媒からの金属溶出量及びエーテルカルボキシレートの収率を下記の方法で求めた。
【0152】
<金属溶出量>
下記の測定条件にてICP分析によりを行い、触媒からのPt及びBiの溶出量を測定した。
試薬
塩酸:原子吸光分析用、関東化学株式会社製
硝酸:原子吸光分析用、関東化学株式会社製
硫酸:精密分析用、和光純薬工業株式会社製
プラチナ標準液:原子吸光分析用標準液1000mg/L、関東化学株式会社製
ビスマス標準液:原子吸光分析用標準液1000mg/L、関東化学株式会社製
超純水 :ミリQ水、ミリポア社製
【0153】
試料溶液調製:
(1)試料0.1gを磁器るつぼに採取しヒーターで焼成後、王水(塩酸:硝酸=3:1)8mLを添加し、加熱溶解する。冷却後、濾過し、超純水で100mLにメスアップする。
(2)濾過残渣を濾紙ごと灰化し(途中で硫酸を適宜添加し550℃で完全に灰化)、(1)と同様に王水で溶解し、冷却後、濾過し、メスアップする。
(3)(1)で調製した液と(2)で調製した液のBi量及びPt量を測定して、それぞれ、合算する。
(4)(2)の濾過残渣は蛍光X線で定性分析を行い、Pt、Biが残っていないことを確認する。
【0154】
検量線溶液調製:
原子吸光分析用標準液(Pt及びBi:1000mg/L)を用いて、0.1〜2.0mg/Lの検量線溶液を調製した。それぞれの溶液には試料と同程度(約8%)となるように王水を添加した。
【0155】
ICP測定条件
分析装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP 6500Duo
波長:Pt 214.423nm、Bi 223.061nm
RFパワー:1150W
クーラントガス流量:12L/min
ネブライザー流量:0.70L/min
補助ガス:0.5L/min
ポンプ流量:50rpm
【0156】
<エーテルカルボキシレート収率>
下記の測定条件にて、ガスクロマトグラフィー(GC)分析により、原料、中間体であるアルデヒド及びエーテルカルボキシレートのピーク面積を求めた。これら3成分のピーク面積の合計に対するエーテルカルボキシレートのピーク面積の割合をエーテルカルボキシレートの収率として求め、百分率で示した。
【0157】
GC分析に使用する溶液の調製:
(1)濾液0.22gをスクリュー管に測り取り、イオン交換水と飽和食塩水をそれぞれ3mLずつ添加し、さらにジエチルエーテル10mLを添加し分層する。
(2)そのエーテル層2.5mLをスクリュー管に測り取ってジアゾメタンでメチルエステル化する。
(3)窒素を流通させてジアゾメタンを留去する。
(4)溶液を1.5 mLに濃縮してGC分析に使用する溶液とする。
【0158】
GC測定条件
装置:Agilent Technologies 19091A−102E(Agilent Technologies社製)
カラム:Ultra1 Methyl Siloxane(25.0m×200μm×0.33μm)
Injection temp.325℃
Detector temp.300℃
【0159】
温度プログラム
Initial temp.100℃
Initial time.5min.
Increasing rate 5℃/min.
Final temp.300℃
Final time.45min.
Injection volume 1.0μL
Split ratio 25:1
Total flow rate 28.1mL/min.(He)
【0160】
以上の結果を表1及び表2に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
実施例3〜5
それぞれ表3に記載した条件に変えた以外は、実施例1と同様に工程を行って触媒を得た。また、実施例1と同様の方法でエーテルカルボキシレートを製造し、触媒からの金属溶出量及びエーテルカルボキシレートの収率を測定した。測定結果を表3に示す。
【0164】
実施例6
実施例1と同様に工程を行って触媒を調製した。また、反応時間を14時間とした以外は実施例1と同様の方法でエーテルカルボキシレートを製造し、触媒からの金属溶出量及びエーテルカルボキシレートの収率を測定した。測定結果を表3に示す。なお、金属溶出量の測定は、下記の(1)および(2)以外は実施例1と同様に行った。
(1)実施例1の試料溶液調製(1)において、磁性るつぼを用いて試料を酸で加熱溶解する代わりに、専用の密閉容器を用いてマイクロウェーブ法にて試料を酸で処理した。
(2)ICP測定において、PerkinElmer, Inc.製のICP質量分析装置ELAN DRC IIを用いた。
【0165】
【表3】
【0166】
実施例7
実施例1で製造した触媒を用い、下記の方法でXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)測定を行った。その結果を図1に示す。
結合エネルギー162〜155eVの範囲のピークトップの結合エネルギー値は157.8eVであった。
【0167】
比較例3
比較例1で製造した触媒を用いた以外は実施例7と同様にXPS測定を行った。そのBi4f軌道の光電子スペクトルを図1に示す。
結合エネルギー162〜155eVの範囲のピークトップの結合エネルギー値は158.7 eVであった。
【0168】
Pt上にBiが担持されている場合、Biは近傍に存在するPtから電子を受け取ることにより結合エネルギーが低下すると考えられる。すなわち、Biが凝集することなく、Pt上に均一に担持されるほど、前記ピークトップの結合エネルギー値は低下すると考えられる。
【0169】
上記の通り、実施例1で調製した触媒は、比較例1で調製した触媒よりも、前記ピークトップの結合エネルギー値が小さいので、Pt上でBiが均一に担持されていると推測される。そして、Pt上でBiが均一に担持された結果、実施例1で調整した触媒は、活性が向上し、かつ金属溶出が抑制されたと考えられる。
【0170】
<XPS測定方法>
触媒を銅プレートに接着したカーボン両面テープ上に散布したものを分析サンプルとした。分析に使用した装置と条件は以下の通りである。
【0171】
分析に使用した装置と測定条件
・装置:PHI Quantera SXM (ULVAC-PHI Inc.)
・X線源:単色化AlKα 1486.6 eV, 25W, 15kV
・ビーム径:100μm
・測定範囲:500×500μm
・Pass energy:280.0 eV (survey) 112.0 eV (narrow)
・Step:1.00 eV (survey) 0.20 eV (narrow)
・帯電補正:NeutralizerおよびAr+照射
・光電子取り出し角度:45°
・検出元素:C1s (5), O1s (10), Na1s (20), Pt4f (30), Bi4f (30)
・結合エネルギー値の補正は、炭素のCHに由来するC1s 284.8 eVで行った
図1